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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】パンツタイプ使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/494 20060101AFI20220524BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20220524BHJP
   A61F 13/496 20060101ALI20220524BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20220524BHJP
   A61F 13/53 20060101ALN20220524BHJP
【FI】
A61F13/494 200
A61F13/49 410
A61F13/496
A61F13/51
A61F13/53 300
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018106828
(22)【出願日】2018-06-04
(65)【公開番号】P2019208813
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高石 美奈
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/141808(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/138360(WO,A1)
【文献】特開2018-064698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃から後身頃にわたる一体的な外装体、又は前身頃及び後身頃に別々に設けられた外装体と、
前記外装体の幅方向中間部に取り付けられた、前記前身頃から前記後身頃にわたる内装体と、
前身頃における外装体の両側部と後身頃における外装体の両側部とがそれぞれ接合されたサイドシール部と、
ウエスト開口及び左右一対の脚開口と、
前記内装体の後端部を含む範囲に設けられた吸収体と、
前記後身頃における、前記吸収体の後端部よりウエスト側に、幅方向に収縮した伸縮領域が設けられている、
パンツタイプ使い捨ておむつにおいて、
前記吸収体の後端よりも前側の位置からそれよりも後側に延びるとともに、前記吸収体の両側縁の幅方向の位置よりも幅方向外側に延びるバリアシートを有し、
前記バリアシートは、裏側の部材に接合されていない自由部分と、裏側の部材に接合された固定部分とを有しており、
前記自由部分は、前記バリアシートにおける少なくとも前記吸収体と重なる部分の幅方向中間に位置するとともに、前記バリアシートにおける前縁から前後方向の中間まで連続しており、
前記固定部分は、前記自由部分の後側及び幅方向両側を取り囲むとともに、前記固定部分のうち前記自由部分の幅方向両側に位置する部分の幅方向内側の縁が、前記内装体の側縁よりも幅方向外側でかつ前記内装体の側縁に隣接しているか、又は前記内装体上に位置しており、
前記バリアシートの自由部分により、股間側に入口が開口するポケット状の背側バリアが形成され、
前記吸収体の後端部を含む所定部分のねじりかたさが0.18~0.32N・cm/cmであ
前記バリアシートの自由部分は、弾性部材により収縮した幅方向の伸縮部分を有しない、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記外装体は、前記バリアシートの前記自由部分と前記吸収体との重なり部分に、前記伸縮領域を有しない、
請求項1記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記吸収体の後端部を含む所定部分は、パルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子の総目付けが350~600g/m2、パルプ繊維に対する高吸収性ポリマー粒子の重量比率が40~60%、かつ厚みが6~12mmである、
請求項1又は2記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記バリアシートの自由部分における前端部に目印が設けられている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記内装体は、幅方向の両側から起き上がる起き上がりギャザーを有し、
前記起き上がりギャザーは、前記内装体の表面の両側部から幅方向中央側に延びる本体部分と、この本体部分における前後方向両端部が倒伏状態で前記内装体の表面に固定された部分である倒伏部分と、前後の倒伏部分の間に位置する非固定の起き上がり部分と、この起き上がり部分の少なくとも先端部に前後方向に沿って設けられたギャザー弾性部材とを有しており、
前記バリアシートは、前記起き上がりギャザーの上を通るように設けられており、
前記バリアシートの少なくとも一部が、前記起き上がりギャザーの起き上がり部分と重なっている、
請求項1~4のいずれか1項に記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【請求項6】
前記バリアシートは、少なくとも外面がポリエチレン樹脂からなる繊維の不織布である、
請求項のいずれか1項に記載のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背漏れ防止機能を有するパンツタイプ使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
背側部分の両側部を腹側部分の外面に連結するテープタイプ使い捨ておむつは、一般に、装着者の背中とおむつとの間に隙間が生じやすく、背漏れが発生しやすいものである。このため、テープタイプ使い捨ておむつでは、背側部分の内面に、股間側に入口を有するポケット状の背側バリアの採用が好まれている(例えば特許文献5、6参照)。
【0003】
これに対して、パンツタイプ使い捨ておむつは、胴周り領域に幅方向の伸縮性を有し、装着者の背中とおむつとの間に隙間が生じにくいため、背中側から尿等の排泄物が漏れ出る事態(いわゆる背漏れ)が発生しにくいものである。
【0004】
すなわち、一般的なパンツタイプ使い捨ておむつは、少なくとも前身頃の胴周り部及び後身頃の胴周り部を構成する外装体と、前身頃から後身頃にわたるように外装体に取り付けられた、吸収体を含む内装体とを備え、前身頃の外装体の両側縁部と後身頃の外装体の両側縁部とが接合されてサイドシール部が形成されることにより、ウエスト開口及び左右一対の脚開口が形成されているものである。そして、外装体には、サイドシール部を有する前後方向範囲(ウエスト開口から脚開口の上端に至る前後方向範囲)として定まる胴周り領域に、弾性部材が設けられることにより、幅方向の伸縮性が付加されている。弾性部材としては、糸ゴム等の細長状の弾性部材を用いるもののほか、弾性フィルムを用いるものも知られている。(例えば特許文献1~4参照)。
【0005】
このような背漏れ防止性の高さから、夜間等の長時間就寝時にパンツタイプ使い捨ておむつを積極的に利用する使用者も存在する。このような使用形態では、パンツタイプ使い捨ておむつであっても、背側バリアの装備が望ましいことはいうまでもない。
【0006】
しかしながら、パンツタイプ使い捨ておむつは、弾性部材によるフィット性の高さが原因で、背側バリアの入口が狭くなりやすいという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2004-532758号公報
【文献】特表2009-536845号公報
【文献】国際公開2008/126708号
【文献】特開2017-64226号公報
【文献】特開2001-245922号公報
【文献】特開平9-215709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、背側バリアの入口がより広く開口しやすいパンツタイプ使い捨ておむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決したパンツタイプ使い捨ておむつは以下のとおりである。
<第1の態様>
前身頃から後身頃にわたる一体的な外装体、又は前身頃及び後身頃に別々に設けられた外装体と、
前記外装体の幅方向中間部に取り付けられた、前記前身頃から前記後身頃にわたる内装体と、
前身頃における外装体の両側部と後身頃における外装体の両側部とがそれぞれ接合されたサイドシール部と、
ウエスト開口及び左右一対の脚開口と、
前記内装体の後端部を含む範囲に設けられた吸収体と、
前記後身頃における、前記吸収体の後端部よりウエスト側に、幅方向に収縮した伸縮領域が設けられている、
パンツタイプ使い捨ておむつにおいて、
前記吸収体の後端よりも前側の位置からそれよりも後側に延びるとともに、前記吸収体の両側縁の幅方向の位置よりも幅方向外側に延びるバリアシートを有し、
前記バリアシートは、裏側の部材に接合されていない自由部分と、裏側の部材に接合された固定部分とを有しており、
前記自由部分は、前記バリアシートにおける少なくとも前記吸収体と重なる部分の幅方向中間に位置するとともに、前記バリアシートにおける前縁から前後方向の中間まで連続しており、
前記固定部分は、前記自由部分の後側及び幅方向両側を取り囲むとともに、前記固定部分のうち前記自由部分の幅方向両側に位置する部分の幅方向内側の縁が、前記内装体の側縁よりも幅方向外側でかつ前記内装体の側縁に隣接しているか、又は前記内装体上に位置しており、
前記バリアシートの自由部分により、股間側に入口が開口するポケット状の背側バリアが形成され、
前記吸収体の後端部を含む所定部分のねじりかたさが0.18~0.32N・cm/cmである、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0010】
(作用効果)
本態様では、吸収体の後端よりも前側の位置からそれよりも後側に延びるとともに、吸収体の両側縁の幅方向の位置よりも幅方向外側に延びるバリアシートにより、ポケット状の背側バリアが形成されている。特徴的には、吸収体の後端部を含む所定部分のねじりかたさが0.18~0.32N・cm/cmと、変形に対して強くなっている。この結果、吸収体におけるバリアシートの自由部分と重なる部分は、両方の臀部の膨らみに外接するように緩やかに外側に膨らみ、波打つような変形や、臀裂に食い込むような屈曲変形が発生しにくく、幅方向の収縮がより小さいものとなる。そして、バリアシートの自由部分は、この緩やかに外側に膨らむ強固な吸収体を基盤として、吸収体の膨らみと反対側に浮き上がり、股間側に入口が開口するポケット状の背側バリアを形成することとなる。したがって、背側バリアの入口がより広く開口しやすいものとなる。
【0011】
これに対して、吸収体の後端部を含む所定部分のねじりかたさが弱すぎると、当該部分に、脚の動きにより加わるねじれ方向の力と、弾性部材による幅方向の収縮力とが加わることにより、波打つような変形や、臀裂に食い込むような屈曲変形が発生し、幅方向の収縮が大きくなりやすい。そしてこの場合、バリアシートの基盤となる吸収体が外側に膨らみにくくなること、及びバリアシートの自由部分の幅方向寸法が余分になりすぎることにより、バリアシートの自由部分が浮き上がりにくくなったり、不規な波状に変形したりし、背側バリアの入口や内空が不必要に狭くなる状況が発生しやすくなる。
【0012】
なお、吸収体の後端部を含む所定部分のねじりかたさの測定方法については後述する。
【0013】
<第2の態様>
前記外装体は、前記バリアシートの前記自由部分と前記吸収体との重なり部分に、前記伸縮領域を有しない、
第1の態様のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0014】
(作用効果)
前述のように、吸収体におけるバリアシートの自由部分と重なる部分が、幅方向に収縮しやすいものであると、背側バリアの入口や内空が不必要に狭くなる状況が発生しやすくなる。よって、本態様のように、バリアシートの自由部分と吸収体との重なり部分に、伸縮領域を有しないことが好ましい。
【0015】
<第3の態様>
前記吸収体の後端部を含む所定部分は、パルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子の総目付けが350~600g/m2、パルプ繊維に対する高吸収性ポリマー粒子の重量比率が40~60%、かつ厚みが6~12mmである、
第1又は2の態様のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0016】
(作用効果)
パンツタイプ使い捨ておむつの技術分野では、吸収体として、パルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子の集積体が汎用されている。このような吸収体を用いる場合、本態様のようにパルプ目付けを十分に高くし、かつ十分に厚みを持たせることにより、前述のねじりかたさの吸収体を得ることができる。
【0017】
<第4の態様>
前記バリアシートの自由部分は、弾性部材により収縮した幅方向の伸縮部分を有しない、
第1~3のいずれか1つの態様のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0018】
(作用効果)
従来の背側バリアは、バリアシートの自由部分の前端部に弾性部材を取り付け、弾性部材の収縮力により自由部分を浮き上がらせることが多い。これに対し、前述のように、バリアシートの自由部分が、緩やかに外側に膨らむ強固な吸収体を基盤として、吸収体の膨らみと反対側に浮き上る場合、弾性部材を設けなくても、バリアシートの自由部分は幅方向中央側に向かって僅かに押されるために、自然に吸収体の膨らみと反対側に浮き上りやすいものとなる。よって、本態様のように、バリアシートの自由部分に、弾性部材により収縮した幅方向の伸縮部分を設けずに、構造の簡素化及びそれによる低コスト化を図るのも好ましい。
【0019】
<第5の態様>
前記バリアシートの自由部分における前端部に目印が設けられている、
第4の態様のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0020】
(作用効果)
特にバリアシートの自由部分を浮き上がらせるための弾性部材を有しない場合に、バリアシートが周囲の部材に溶け込んで見えると、例えばバリアシートの自由部分が不適切に折れ曲がっていた場合等に、使用者がこれに気付かずに使用してしまい、漏れ防止効果が不十分になるおそれがある。よって、本態様のように、バリアシートの存在に気付きやすくなるように、バリアシートの自由部分における前端部に目印が設けられているのも好ましい。
【0021】
<第6の態様>
前記内装体は、幅方向の両側から起き上がる起き上がりギャザーを有し、
前記起き上がりギャザーは、前記内装体の表面の両側部から幅方向中央側に延びる本体部分と、この本体部分における前後方向両端部が倒伏状態で前記内装体の表面に固定された部分である倒伏部分と、前後の倒伏部分の間に位置する非固定の起き上がり部分と、この起き上がり部分の少なくとも先端部に前後方向に沿って設けられたギャザー弾性部材とを有しており、
前記バリアシートは、前記起き上がりギャザーの上を通るように設けられており、
前記バリアシートの少なくとも一部が、前記起き上がりギャザーの起き上がり部分と重なっている、
第4又は5の態様のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0022】
(作用効果)
特にバリアシートの自由部分を浮き上がらせるための弾性部材を有しない場合、バリアシートの自由部分の浮き上がりが不十分になるおそれはある。よって、本態様のように、内装体の幅方向両側に通常設けられる起き上がりギャザーの起き上がり部分により、バリアシートの自由部分が浮き上がるようになっていると好ましい。
【0023】
<第7の態様>
前記バリアシートは、少なくとも外面がポリエチレン樹脂からなる繊維の不織布である、
第4~6のいずれか1つの態様のパンツタイプ使い捨ておむつ。
【0024】
(作用効果)
ポリエチレン系繊維の不織布は肌に付着しやすい性質を有する。よって、前述のバリアシートとして本態様の不織布を用いると好ましい。
【発明の効果】
【0025】
以上のとおり、本発明によれば、背側バリアの入口がより広く開口しやすいものとなる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの平面図(内面側)である。
図2】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの平面図(外面側)である。
図3】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの要部を示した平面図(内面側)である。
図4図1の1-1断面図である。
図5図1の2-2断面図である。
図6図1の3-3断面図である。
図7】パンツタイプ使い捨ておむつの装着状態の斜視図である。
図8図1の4-4断面図である。
図9】装着状態の要部を示す断面図である。
図10】装着状態の要部を示す断面図である。
図11】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの平面図(内面側)である。
図12図11の1-1断面図である。
図13】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの要部を示した平面図(内面側)である。
図14】装着状態の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、パンツタイプ使い捨ておむつの例について、添付図面を参照しつつ詳説する。なお、図中の点模様部分はその表側及び裏側に位置する各構成部材を接合する接合手段としての接着剤を示しており、ホットメルト接着剤のベタ、ビード、カーテン、サミット若しくはスパイラル塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)などにより、あるいは弾性部材の固定部分はこれに代えて又はこれとともにコームガンやシュアラップ塗布などの弾性部材の外周面への塗布により形成されるものである。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。
【0028】
図1図7はパンツタイプ使い捨ておむつを示している。このパンツタイプ使い捨ておむつ(以下、単におむつともいう。)は、前身頃F及び後身頃Bにわたる一体的な外装体20と、前身頃Fから後身頃Bにわたるように外装体20の内面に固定された内装体10とを有しており、内装体10は液透過性のトップシート11と液不透過性シート12との間に吸収体13が介在されてなるものである。製造に際しては、外装体20の内面(上面)に対して内装体10の裏面がホットメルト接着剤などの接合手段によって接合(図2の点模様部分)された後に、内装体10及び外装体20が前身頃F及び後身頃Bの境界である前後方向LD(縦方向)の中央で折り畳まれ、その両側部が相互に熱溶着又はホットメルト接着剤などによって接合されてサイドシール部21が形成されることによって、ウエスト開口及び左右一対の脚開口が形成されたパンツタイプ使い捨ておむつとなる。外装体20は、前身頃F及び後身頃Bに別々に設けられていてもよい。
【0029】
(内装体の構造例)
内装体10は、図4図6に示すように、トップシート11と液不透過性シート12との間に、吸収体13を介在させた構造を有しており、トップシート11を透過した排泄液を吸収体13により吸収保持するものである。内装体10の平面形状は特に限定されないが、図示形態のようにほぼ長方形とすることが一般的である。
【0030】
吸収体13の表側(肌当接面側)を覆うトップシート11としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。トップシート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになる。図示形態では、トップシート11は、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏側まで延在されている。
【0031】
吸収体13の裏側(非肌当接面側)を覆う液不透過性シート12は、ポリエチレン又はポリプロピレンなどの液不透過性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートとしては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に、炭酸カルシウム等の無機微粒子を溶融混練してシートを形成した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを好適に用いることができる。図示形態では、液不透過性シート12は、トップシート11とともに吸収体13の幅方向WDの両側で裏側に折り返されているが、このような構造に限定されず、公知の他の構造を採用することができる。
【0032】
吸収体13としては、公知のもの、例えばパルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。吸収体13の全体形状は、股間部分に前後両側よりも幅の狭い括れ部分を有する略砂時計状に形成するほか、長方形状等、適宜の形状とすることができる。吸収体13は、内装体10の後端部を含む範囲に設けられる限り、内装体10の一部の範囲にのみ設けることもできるが、通常の場合、内装体10の前後端部を除く領域のほぼ全体にわたり設けることが望ましい。
【0033】
吸収体13は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シート14によって包装することができる。包装シート14としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMS不織布(SMS、SSMMS等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。包装シート14の目付けは、5~40g/m2、特に10~30g/m2のものが望ましい。
【0034】
包装シート14の包装形態は適宜定めることができるが、製造容易性や前後端縁からの高吸収性ポリマー粒子の漏れ防止等の観点から、吸収体13の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻き付け、且つその前後縁部を吸収体13の前後からはみ出させ、巻き重なる部分及び前後はみ出し部分の重なり部分をホットメルト接着剤、素材溶着等の接合手段により接合する形態が好ましい。
【0035】
内装体10の幅方向WDの両側には起き上がりギャザー90が設けられている。起き上がりギャザー90は、内装体10の側部から起き上がる起き上がり部分94を有しており、この起き上がり部分94が、装着者の鼠径部から脚周りを経て臀部までの範囲に接して横漏れを防止するものである。より詳細には、図示例の起き上がりギャザー90は、図5及び図6に示されるように、内装体10の裏面の側部に固定されたギャザー固定部91と、このギャザー固定部91から内装体10の側方を経て内装体10の表面の側部まで延在する本体部分92と、本体部分92の前後端部が倒伏状態で内装体10の表面の側部に固定されて形成された倒伏部分93と、この倒伏部分93間が非固定とされて形成された起き上がり部分94とを有している。そして、これらの部分はギャザーシート95が折り返されて形成された二層構造を有しており、その層間には、起き上がり部分94の先端部等に細長状のギャザー弾性部材96が配設されている。そしてこのような構造により、起き上がりギャザー90の起き上がり部分94が、装着者の肌に接するように立ち上がることとなる。ギャザーシート95としては撥水性とされた不織布が好適に用いられる。
【0036】
ギャザー弾性部材96としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコーン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、外側から見え難くするため、太さは925dtex以下、テンションは150~350%、間隔は7.0mm以下として配設するのがよい。なお、ギャザー弾性部材96としては、図示形態のような糸状の他、ある程度の幅を有するテープ状のものを用いることもできる。
【0037】
前述のギャザーシート95を構成する素材繊維もトップシート11と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法に得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。さらにギャザーシート95については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌触り(ドライ感)を高めるために、シリコーン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロライド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
【0038】
(外装体の構造例)
外装体20は、図4図6にも示されるように、それぞれ不織布等からなる押えシート20A及びバックシート20Bからなる2層構造とされ、押えシート20Aとバックシート20Bとの間、及びバックシート20Bをウエスト開口縁で内面側に折り返してなる折り返し部分20Cの不織布間に弾性部材24~27が配設され、自然長状態で弾性部材24~27の収縮力により外装体20が収縮することにより、外装体20に伸縮性が付与されている。外装体20の平面形状は、前後方向LDの中間における両側部にそれぞれ脚開口を形成するために形成された凹状の脚周りライン29により、全体としてほぼ砂時計形状をなしている。
【0039】
図示形態の外装体20においては、弾性部材として、図1及び図2に示される展開形状において、ウエスト開口近傍23に配置されたウエスト部弾性部材24と、前身頃F及び後身頃Bに、縦方向に間隔をおいて幅方向WDに沿って配置された複数のウエスト下方部弾性部材25とを有するとともに、前身頃F及び後身頃Bのそれぞれにおいて、ウエスト下方部弾性部材25とは別に、一方のサイドシール部21から一方の脚開口に沿って股間部分に向かい、股間部分を横断し、かつ他方の脚開口に沿って他方のサイドシール部21に至るパターンで湾曲しつつ延在する、互いに交差することなく間隔をおいて配置された複数本の湾曲弾性部材26,27を備えている。これら、弾性部材24~27は、それぞれその延在方向に沿って所定の伸長率で伸長された状態で固定されている。なお、本外装体20では、脚周りライン29に沿って前身頃Fのサイドシール部から後身頃Bのサイドシール部まで連続する、所謂脚周り弾性部材は設けられていない。
【0040】
ウエスト部弾性部材24は、前身頃Fと後身頃Bとが接合されたサイドシール部21の範囲の内、ウエスト開口縁近傍に縦方向に間隔をおいて配置された複数条の糸ゴム等の細長状弾性部材であり、身体の胴周りを締め付けるように伸縮力を与えることによりおむつを身体に装着するためのものである。このウエスト部弾性部材24は、図示例では糸ゴムを用いたが、例えばテープ状の伸縮部材を用いてもよい。また、図示形態のウエスト部弾性部材24は、ウエスト部におけるバックシート20Bの折り返し部分20Cの不織布間に挟持されているが、押えシート20Aとバックシート20Bとの間に挟持しても良い。
【0041】
ウエスト下方部弾性部材25は、サイドシール部21の内、おおむね上部から下部までの範囲にわたり、縦方向に間隔をおいて配置された糸ゴム等の細長状弾性部材であり、前身頃F及び後身頃Bの腰周り部分にそれぞれ幅方向WDの伸縮力を与え、おむつを身体に密着させるためのものである。なお、ウエスト部弾性部材24とウエスト下方部弾性部材25との境界は必ずしも明確でなくてよい。例えば、前身頃F及び後身頃Bに縦方向に間隔をおいて幅方向WDに配置された弾性部材の内、数は特定できなくても、上部側の何本かがウエスト部弾性部材として機能し、残りの弾性部材がウエスト下方部弾性部材として機能していればよい。
【0042】
後身頃Bにおいて、ウエスト下方部弾性部材25とは別に配設された背側湾曲弾性部材26は、糸ゴム等の細長状弾性部材であり、所定の曲線に沿って配置されている。背側湾曲弾性部材26は、一本であっても良いが複数本であるのが好ましく、図示例では4本の糸ゴム等の細長状弾性部材であり、これら背側湾曲弾性部材26は互いに交差することなく、間隔をおいて配置されている。この背側湾曲弾性部材26は、2,3本程度の弾性部材を間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように3~20mm、好ましくは6~16mm程度の間隔を空けて、3本以上、好ましくは4本以上配置される。
【0043】
外装体20の前身頃Fにおいて、ウエスト下方部弾性部材25とは別に配設された腹側湾曲弾性部材27は糸ゴム等の細長状弾性部材であり、所定の曲線に沿って配置されている。腹側湾曲弾性部材27は、一本であっても良いが複数本であるのが好ましく、図示例では4本の糸状弾性部材であり、これら腹側湾曲弾性部材27は、互いに交差することなく、間隔をおいて配置されている。この腹側湾曲弾性部材27も、2,3本程度の弾性部材を間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように3~20mm、好ましくは6~16mm程度の間隔を空けて、3本以上、好ましくは4本以上配置される。
【0044】
なお、図2に示すように、前身頃F及び後身頃Bに配置されたウエスト下方部弾性部材25及び湾曲弾性部材26,27は、製造時に外装体20に対して連続的に固定した後に、吸収体13と重なる部分の幅方向WDの中間部(図中の二点鎖線で囲まれた部分)を、所定の切断パターンで細かく切断して収縮力が作用しない非収縮部分とし、この非収縮部分より側方に延在する部分を収縮力の作用する収縮部分(つまり、ウエスト下方部弾性部材25及び湾曲弾性部材26,27が連続的に残された部分)とすることができる。これにより、内装体(特に吸収体13)の幅方向WDの不必要な収縮を防止することができる。もちろん、ウエスト下方部弾性部材25及び湾曲弾性部材26,27を、内装体10を横切って連続的に配置することもできる。
【0045】
この例からも分かるように、弾性部材24~27が配置された部位のうち収縮部分が伸縮領域となる。伸縮領域は、後身頃Bにおける、吸収体13の後端部よりウエスト側にのみ設けられていてもよいが、図示例又は他の公知例のように各部に設けることができる。
【0046】
上述した外装体20は、例えば特開平4-28363号公報や、特開平11-332913号公報記載の技術により製造することができる。また、湾曲弾性部材26,27を内装体10上で切断し不連続化するには、特開2002-35029号公報、特開2002-178428号公報及び特開2002-273808号公報に記載される切断方法が好適に採用される。
【0047】
図示例とは異なり、湾曲弾性部材26,27を、前身頃F及び後身頃Bのいずれか一方にのみ設けるだけでも良い。また、湾曲弾性部材26,27を、前身頃F及び後身頃Bの両方に設ける場合、前身頃F側に配置された湾曲弾性部材27の群の一部又は全部と、後身頃B側に配置された湾曲弾性部材26の群の一部又は全部とが交差する形態(図示せず)も採用できるが、図示例のように、前身頃F側に配置された湾曲弾性部材27の群と、後身頃B側に配置された湾曲弾性部材26の群とは互いに交差することなく前後方向LDの中間部、特に前身頃Fに若干偏った位置で縦方向に離間している形態が好適である。
【0048】
さらに、湾曲弾性部材26,27はその全体が湾曲していなくても良く、部分的に直線状の部分を有していても良い。
【0049】
弾性部材24~27の固定時の伸長率は適宜定めることができるが、通常の成人用の場合、ウエスト部弾性部材24は160~320%程度、ウエスト下方部弾性部材25は160~320%程度、湾曲弾性部材26,27は230~320%程度とすることができる。
【0050】
(カバーシート)
図1及び図4にも示されるように、外装体20の内面上に取り付けられた内装体10の前後端部をカバーし、かつ内装体10の前後縁からの漏れを防ぐために、カバーシート50,60が設けられていても良い。図示形態についてさらに詳細に説明すると、前側のカバーシート50は、前身頃F内面のうちウエスト側端部の折り返し部分20Cの内面から内装体10の前端部と重なる位置まで幅方向WDの全体にわたり延在しており、後側のカバーシート60は、後身頃B内面のうちウエスト側端部の折り返し部分20Cの内面から内装体10の後端部と重なる位置まで幅方向WDの全体にわたり延在している。カバーシート50,60の股間側の縁部に幅方向WDの全体にわたり(中央部のみでも良い)若干の非接着部分を設けると、接着剤がはみ出さないだけでなく、この部分をトップシートから若干浮かせて防漏壁として機能させることができる。
【0051】
図示形態のように、カバーシート50,60を別体として取り付けると、素材選択の自由度が高くなる利点があるものの、資材や製造工程が増加する等のデメリットもある。そのため、外装体20をおむつ内面に折り返してなる折り返し部分20Cを、内装体10と重なる部分まで延在させて、前述のカバーシート50,60と同等の部分を形成することもできる。なお、図3は外装体20の内面に対するカバーシート50,60の接着部分72を示している。
【0052】
(背側バリア)
パンツタイプ使い捨ておむつの内面には、吸収体13の後端よりも前側の位置からそれよりも後側に延びるとともに、吸収体13の両側縁の幅方向WDの位置よりも幅方向外側に延びるバリアシート71が設けられている。バリアシート71は、専用のシートを配置してもよいが、図示例のように後身頃Bのカバーシート60を股間側に延長して形成することが望ましい。バリアシート71のうち、吸収体13の後端よりも前側に延びる部分の寸法は適宜定めることができ、例えば製品全長Lの5~10%程度(成人用使い捨ておむつの場合は40~80mm程度)とすることができる。バリアシート71の前端はサイドシール部21よりも股間側に位置させることができる。
【0053】
図3に示されるバリアシート71(カバーシート60)の接着部分72からも分かるように、バリアシート71は、裏側の部材に接合されていない自由部分73と、裏側の部材(図示例では押えシート20A、折り返し部分20C)に接合された固定部分74とを有している。自由部分73は、バリアシート71における少なくとも吸収体13と重なる部分の幅方向WDの中間に位置するとともに、バリアシート71における前縁から前後方向LDの中間まで連続する部分である。また、固定部分74は、自由部分73の後側及び幅方向WD両側を取り囲むとともに、固定部分74のうち自由部分73の幅方向両側に位置する部分の幅方向内側の縁が、内装体10の側縁よりも幅方向外側でかつ内装体10の側縁に隣接している。このような自由部分73及び固定部分74を有するバリアシート71により、図4及び図9に示すように、股間側に入口が開口するポケット状の背側バリア70が形成される。図13に示すように、固定部分74のうち自由部分73の幅方向WD両側に位置する部分の幅方向内側の縁は、内装体10上の幅方向両側(図示例では起き上がりギャザー90上に位置しているが、自由部分73が形成される限り、トップシート11上に位置していてもよい)に位置していてもよい。
【0054】
自由部分73の幅方向WDの寸法73Wは、内装体10の幅方向WDの寸法10Wとほぼ同じか又はそれよりも狭いものとすることができる。自由部分73の幅方向WDの寸法は、背側バリア70の入口の幅に等しいため、狭すぎると漏れ防止性に乏しくなるため、内装体10の幅方向WDの寸法10Wの70~90%であることが好ましい。
【0055】
自由部分73の前後方向LDの寸法73Lは適宜定めることができ、バリアシート71と内装体10とが重なる領域の前後方向LDの寸法70Lと同じかそれよりも長くしても、反対にそれよりも短くしてもよい。自由部分73の前後方向LDの寸法73Lが長いと、背側バリア70のポケットは深くなるが、長すぎるとバリアシート71が不規則に変形しやすいため、吸収体13の後縁の前後±10mmの範囲内に位置していると好ましい。
【0056】
特徴的には、吸収体13の後端部を含む所定部分のねじりかたさ(測定方法については後述する)が0.18~0.32N・cm/cm、特に好ましくは0.22~0.28N・cm/cmとされる。吸収体13の後端部を含む所定部分のねじりかたさがこの範囲内であると、吸収体13におけるバリアシート71の自由部分73と重なる部分は、図9に示すように、両方の臀部の膨らみに外接するように緩やかに外側に膨らみ、波打つような変形や、臀裂に食い込むような屈曲変形が発生しにくく、幅方向WDの収縮がより小さいものとなる。そして、バリアシート71の自由部分73は、この緩やかに外側に膨らむ強固な吸収体13を基盤として、吸収体13の膨らみと反対側に浮き上がり、股間側に入口が開口するポケット状の背側バリア70を形成することとなる。したがって、背側バリア70の入口がより広く開口しやすいものとなる。
【0057】
これに対して、吸収体13の後端部を含む所定部分のねじりかたさが弱すぎると、図14に示すように、当該部分に、脚の動きにより加わるねじれ方向の力と、弾性部材による幅方向WDの収縮力とが加わることにより、波打つような変形や、臀裂に食い込むような屈曲変形が発生し、幅方向WDの収縮が大きくなりやすい。そしてこの場合、バリアシート71の基盤となる吸収体13が外側に膨らみにくくなること、及びバリアシート71の自由部分73の幅方向寸法が余分になりすぎることにより、バリアシート71の自由部分73が浮き上がりにくくなったり、不規な波状に変形したりし、背側バリア70の入口や内空が不必要に狭くなる状況が発生しやすくなる。
【0058】
前述のように、吸収体13におけるバリアシート71の自由部分73と重なる部分が、幅方向WDに収縮しやすいものであると、背側バリア70の入口や内空が不必要に狭くなる状況が発生しやすくなる。よって、図示例の外装体20のように、バリアシート71の自由部分73と吸収体13との重なり部分に、伸縮領域を有しないことが好ましい。
【0059】
吸収体13は、後端部を含む所定部分のねじりかたさが前述の範囲内である限り、素材等により限定されるものではないが、パルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子の集積体である場合、少なくとも後端部を含む所定部分は、パルプ繊維及び高吸収性ポリマー粒子の総目付けが350~600g/m2、かつパルプ繊維に対する高吸収性ポリマー粒子の重量比率が40~60%、厚みが6~12mmであると好ましい。このようにパルプ目付けを十分に高くし、かつ十分に厚みを持たせることにより、前述のねじりかたさの吸収体13を得ることができる。
【0060】
前述のように、バリアシート71の自由部分73が、緩やかに外側に膨らむ強固な吸収体13を基盤として、吸収体13の膨らみと反対側に浮き上る場合、弾性部材を設けなくても、バリアシート71の自由部分73は幅方向WD中央側に向かって僅かに押されるために、自然に吸収体13の膨らみと反対側に浮き上りやすいものとなる。よって、図4図8及び図9に示す例のように、バリアシート71の自由部分73に、弾性部材75により収縮した幅方向WDの伸縮部分を設けずに、構造の簡素化及びそれによる低コスト化を図るのも好ましい。もちろん、図11及び図12に示すように、バリアシート71の自由部分73の前端部に弾性部材75を取り付け、弾性部材75の収縮力により自由部分73を浮き上がらせることも可能である。
【0061】
特にバリアシート71の自由部分73を浮き上がらせるための弾性部材75を有しない場合に、バリアシート71が周囲の部材に溶け込んで見えると、例えばバリアシート71の自由部分73が不適切に折れ曲がっていた場合等に、使用者がこれに気付かずに使用してしまい、漏れ防止効果が不十分になるおそれがある。よって、図1及び図3に示すように、バリアシート71の存在に気付きやすくなるように、バリアシート71の自由部分73における前端部に目印79が設けられているのも好ましい。目印79は、図示例のような直線とするほか、模様、あるいはマークや文字等の任意の形状とすることができる。目印79は、目印79が付加された部材、又は目印79状に形成された部材を自由部分73に貼り付けることにより設けてもよいが、自由部分73に直に印刷することにより設けることが望ましい。
【0062】
また、特にバリアシート71の自由部分73を浮き上がらせるための弾性部材75を有しない場合、バリアシート71の自由部分73の浮き上がりが不十分になるおそれがある。この場合、図1及び図9に示すように、バリアシート71を、起き上がりギャザー90の上を通るように設け、バリアシート71の少なくとも一部を、起き上がりギャザー90の起き上がり部分94と重なるように配置するのは好ましい。これにより、起き上がりギャザー90の起き上がり部分94により、バリアシート71の自由部分73が浮き上がりやすくなる。この場合、バリアシート71における起き上がりギャザー90と重なる部分は、図1及び図9に示すように起き上がりギャザー90の表面に接合されていなくても、また図13に示すように接合されていてもよい。もちろん、図10に示すように、バリアシート71の自由部分73が起き上がりギャザー90の起き上がり部分94に位置しない(バリアシート71の前端が起き上がりギャザー90の倒伏部分93に位置する)ようにしてもよい。
【0063】
バリアシート71の素材は、特に限定されないが、ギャザーシート95と同様の素材を用いることが望ましい。特に、バリアシート71の自由部分73を浮き上がらせるための弾性部材を有しない場合、バリアシート71が少なくとも外面がポリエチレン樹脂からなる繊維の不織布であると、バリアシート71が肌に付着しやすくなり、バリアシート71の自由部分73の浮き上がりが助長されるため好ましい。また、同様の理由から、バリアシート71は剛性が高いものが好ましい。
【0064】
<効果確認実験>
吸収体の後端部を含む所定部分のねじりかたさが異なる以外は共通とした、図1図9に示されるパンツタイプ使い捨ておむつのサンプルを作製し、ダミー人形に装着してバリアシートの状態を観察した。各サンプルのねじりかたさ及び観察結果は以下のようになった。
【0065】
(サンプル1)
・ねじりかたさ:0.22N・cm/cm
図9に示す例と同じように、バリアシートの自由部分が、吸収体の膨らみと反対側に浮き上がり、背側バリアの入口が股間側にしっかりと開口した。
【0066】
(サンプル2)
・ねじりかたさ:0.28N・cm/cm
図9に示す例と同じように、バリアシートの自由部分が、吸収体の膨らみと反対側に浮き上がり、背側バリアの入口が股間側にしっかりと開口した。
【0067】
(サンプル3)
・ねじりかたさ:0.15N・cm/cm
図14に示す例と同じように、吸収体の幅方向の収縮が大きくなり、バリアシートの基盤となる吸収体が外側に膨らみにくくなった。この結果、背側バリアの入口が潰れて狭いものとなった。
【0068】
(サンプル4)
・ねじりかたさ:0.35N・cm/cm
図14に示す例のように吸収体が変形するのではないが、吸収体が外側に緩やかに膨らみにくく、サンプル1,2と比較して背側バリアの入口が狭いものとなった。
【0069】
<明細書中の用語の説明>
明細書中で以下の用語が使用される場合、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・「前後方向」とは図中に符号LDで示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中にWDで示す方向(左右方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から1平米あたり、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
・「ねじりかたさ」は、以下の試験による測定値を意味する。吸収体に可能な限り力を加えないように、吸収体の後端を含むように前後方向寸法60mm×幅方向寸法140mmの部分を切り出し、その全体を一重のクレープ紙(目付15g/m2)で包んで供試体を作製する。ねじり試験機(カトーテック社製、KES-YN-1-B)を用い、供試体の幅方向の両端部を、チャック間距離110mmのチャックでつかみ、長手方向中心軸回りに70度ねじったときの最大荷重(ねじりかたさ)を測定する。試験機の諸条件は、SENS(記録感度):10、ねじれ角度:7、CONTROL:7、スピード12cm/sとする。なお、試験は、5個の供試体について行い、その平均値をねじれかたさの測定値とする。
・吸収体の「厚み」は、株式会社尾崎製作所の厚み測定器(ピーコック、デジタルタイプ、型式FFD-7(測定範囲0~20mm))を用い、試料と厚み測定器を水平にして、測定する。
・上記以外の「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
・「吸水量」は、JIS K7223-1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
・「吸水速度」は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、上記例のようなパンツタイプ使い捨ておむつに利用できるものである。
【符号の説明】
【0071】
10…内装体、11…トップシート、12…液不透過性シート、13…吸収体、14…包装シート、20…外装体、20C…折り返し部分、21…サイドシール部、24…ウエスト部弾性部材、25…ウエスト下方部弾性部材、26,27…湾曲弾性部材、26…背側湾曲弾性部材、27…腹側湾曲弾性部材、29…脚周りライン、90…起き上がりギャザー、91…ギャザー固定部、92…本体部分、93…倒伏部分、94…起き上がり部分、95…ギャザーシート、96…ギャザー弾性部材、F…前身頃、B…後身頃、LD…前後方向、WD…幅方向、70…背側バリア、71…バリアシート、73…自由部分、74…固定部分、75…弾性部材、79…目印。
図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図10
図11
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