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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】熱線式流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/708 20220101AFI20220524BHJP
   G01F 1/696 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
G01F1/708
G01F1/696 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018135659
(22)【出願日】2018-07-19
(65)【公開番号】P2019138892
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2018019854
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116633
【氏名又は名称】愛知時計電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】田中 善人
(72)【発明者】
【氏名】五明 智夫
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-248118(JP,A)
【文献】特開2006-145212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/68-1/716
G01P 5/10-5/12
G01P 5/18-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測流体が流れる流路と、
当該流路内に配置された、被計測流体を加熱する加熱手段と、
当該流路内に、前記加熱手段より下流側に配置された、被計測流体の温度を測定する第1測温手段と、
当該流路内に、前記第1測温手段より下流側に配置された、被計測流体の温度を測定する第2測温手段と、
前記加熱手段から少なくとも2つの山を持つ熱信号を発生させて、前記流路内を流れる被計測流体に当該熱信号を重畳させるように、当該加熱手段を制御する制御手段と、
被計測流体の温度についての複数の閾値を生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された閾値毎に、前記第1測温手段によって測定された被計測流体の温度が当該閾値を超えてから再度超えるまでの第1時間を計時する第1計時手段と、
前記生成手段によって生成された閾値毎に、前記第2測温手段によって測定された被計測流体の温度が当該閾値を超えてから再度超えるまでの第2時間を計測する第2計時手段と、
前記第1計時手段によって前記第1時間の計時が終了してから、前記第2計時手段によって前記第2時間の計時が終了するまでの第3時間を計時する第3計時手段と、
前記第1~第3計時手段によってそれぞれ計時された前記第1~第3時間に基づいて、被計測流体の流量を算出する算出手段と、
を有することを特徴とする熱線式流量計。
【請求項2】
前記第1及び第2時間のうち、少なくとも一方が計時されなかったときには、前記算出手段は、被計測流体の流量の算出を行わないことを特徴とする請求項1に記載の熱線式流量計。
【請求項3】
前記第1及び第2時間の双方が計時されたときには、前記算出手段は、前記第1時間と前記第2時間とが等しい場合に、被計測流体の流量の算出を行う一方、前記第1時間と前記第2時間とが異なっている場合には、被計測流体の流量の算出を行わないことを特徴とする請求項1に記載の熱線式流量計。
【請求項4】
前記生成手段によって生成された閾値のうち、前記熱信号の重畳された被計測流体の温度が2回超える閾値について、最初に超えてから再度超えるまでの経過時間を想定する想定手段をさらに有し、
前記第1及び第2時間の双方が計時されたときには、前記算出手段は、前記経過時間、前記第1時間及び前記第2時間のすべてが等しい場合に、被計測流体の流量の算出を行う一方、前記経過時間と前記第1時間及び前記第2時間うちの少なくとも一方とが異なっている場合には、被計測流体の流量の算出を行わないことを特徴とする請求項1に記載の熱線式流量計。
【請求項5】
前記熱信号の山は、同じ高さであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱線式流量計。
【請求項6】
前記算出手段は、前記流路内の前記第1測温手段が配置された位置から前記第2測温手段が配置された位置までの距離を前記第3計時手段によって計時された前記第3時間で除算して被計測流体の流速を算出し、当該流速に前記流路の断面積を乗算することにより、被計測流体の流量を算出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱線式流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被計測流体の流量を計測する熱線式流量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、被計測流体の流量を計測する熱線式流量計に関する技術が種々提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載された流量計測装置は、流路を流れる流体をヒータにより加熱し、当該加熱流体の温度を下流側の温度センサで検出して、その検出値に基づいて流量を測定する。
【0004】
この流量計測装置と同様に、加熱流体の温度を下流側の温度センサで検出するが、この流量計測装置とは異なり、加熱流体の温度を下流側の2つの温度センサで検出し、その2つの検出値に基づいて流量を測定するようにしたものもある。
【0005】
図15は、後者の従来の流量計測装置である、熱線式流量計による流量計測方法の一例を示している。同図の流量計測方法で用いられている従来の熱線式流量計は、流路内に、その上流側から下流側にかけて、1つのヒータ及び2つの測温センサ(以下、上流側の温度センサを「第1測温センサ」と言い、下流側の測温センサを「第2測温センサ」と言う)をこの順序で設置したものである。
【0006】
まず、ヒータに所定の電圧を印加して、ヒータから1つ山の温度変化を有する熱信号s50を発生させる。次に、熱信号s50が下流側に流れて行き、第1及び第2測温センサによって温度測定される熱信号s50に対応する熱信号が、おのおの熱信号s51、s52である。第1及び第2測温センサに対して、それぞれ同じ閾値Thを設定し、ヒータへの電圧印加を開始した時点から、第1及び第2測温センサがそれぞれ閾値Thを超えた温度を検出した時点までの時間を計測する。
【0007】
例えば、ヒータへの電圧印加を開始した時点から第1測温センサが閾値Thを超えた温度を検出した時点までの時間を“A”とし、ヒータへの電圧印加を開始した時点から第2測温センサが閾値Thを超えた温度を検出した時点までの時間を“B”とすると、時間Bと時間Aとの時間差B-Aが、被計測流体が第1測温センサと第2測温センサとの間を流れたときに経過した時間となる。
【0008】
そして、第1測温センサから第2測温センサまでの距離をLとすると、流速Vは、距離L/時間差B-Aによって算出され、流路の断面積をSとすると、流量は、流速V×断面積Sによって算出される。
【0009】
図15に示す従来の流量計測方法では、このようにして被計測流体の流量を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第4947463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記従来の流量計測方法では、被計測流体自体に温度変化があると、当該被計
測流体の流量を精度良く計測できない場合が生じた。
【0012】
図16は、この場合の一例を説明するための図である。同図中、二点鎖線で示す直線V1は、被計測流体の温度変化を示している。
【0013】
上記図15を用いて説明したように、ヒータから発生した熱信号s50は、被計測流体の流れに従って下流側に流れて行き、第1及び第2測温センサによって温度測定される。図16中、熱信号s53,s54がそれぞれ、第1及び第2測温センサによって測定された、熱信号s50に対応する熱信号を示している。
【0014】
熱信号s53,s54は、図16に示されるように、ヒータからの熱信号s50を被計測流体の温度変化分だけ上昇させたものになっている。このような状況で、同じ閾値Thを設定して、上述した時間A,Bにそれぞれ相当する時間A′,B′を計測すると、時間A′と時間B′はそれぞれ、熱信号s50の曲線上の異なった場所を計測することになる。したがって、時間差B′-A′は、上述した時間差B-Aと一致しないので、この時間差B′-A′に基づいて算出された流量は、精度良く計測されたものとは言い得ない。
【0015】
図16の例では、温度変化V1は、説明の都合上、直線状、つまり一定になっているので、第1測温センサと第2測温センサで異なる閾値を設定すれば、時間差B′-A′を正しい時間差B-Aに近づけることは可能であるが、被計測流体の温度変化は通常、一定ではないため、異なる閾値を設定したとしても、時間差B′-A′は、正確なものではない。
【0016】
このように、上記従来の熱線式流量計では、被計測流体に温度変化がある状態で、当該被計測流体の流量を精度良く測定することは困難であった。
【0017】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、被計測流体に温度変化がある状態でも、当該被計測流体の流量を精度良く測定することが可能となる熱線式流量計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この課題を解決するためになされた請求項1に係る発明は、被計測流体が流れる流路と、当該流路内に配置された、被計測流体を加熱する加熱手段と、当該流路内に、加熱手段より下流側に配置された、被計測流体の温度を測定する第1測温手段と、当該流路内に、第1測温手段より下流側に配置された、被計測流体の温度を測定する第2測温手段と、加熱手段から少なくとも2つの山を持つ熱信号を発生させて、流路内を流れる被計測流体に当該熱信号を重畳させるように、当該加熱手段を制御する制御手段と、被計測流体の温度についての複数の閾値を生成する生成手段と、生成手段によって生成された閾値毎に、第1測温手段によって測定された被計測流体の温度が当該閾値を超えてから再度超えるまでの第1時間を計時する第1計時手段と、生成手段によって生成された閾値毎に、第2測温手段によって測定された被計測流体の温度が当該閾値を超えてから再度超えるまでの第2時間を計測する第2計時手段と、第1計時手段によって第1時間の計時が終了してから、第2計時手段によって第2時間の計時が終了するまでの第3時間を計時する第3計時手段と、第1~第3計時手段によってそれぞれ計時された第1~第3時間に基づいて、被計測流体の流量を算出する算出手段と、を有することを特徴とする。
【0019】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の熱線式流量計であって、第1及び第2時間のうち、少なくとも一方が計時されなかったときには、算出手段は、被計測流体の流量の算出を行わないことを特徴とする。
【0020】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の熱線式流量計であって、第1及び第2時間の双方が計時されたときには、算出手段は、第1時間と第2時間とが等しい場合に、被計測流体の流量の算出を行う一方、第1時間と第2時間とが異なっている場合には、被計測流体の流量の算出を行わないことを特徴とする。
【0021】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載の熱線式流量計であって、生成手段によって生成された閾値のうち、熱信号の重畳された被計測流体の温度が2回超える閾値について、最初に超えてから再度超えるまでの経過時間を想定する想定手段をさらに有し、第1及び第2時間の双方が計時されたときには、算出手段は、経過時間、第1時間及び第2時間のすべてが等しい場合に、被計測流体の流量の算出を行う一方、経過時間と第1時間及び第2時間うちの少なくとも一方とが異なっている場合には、被計測流体の流量の算出を行わないことを特徴とする。
【0022】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか一つに記載の熱線式流量計であって、熱信号の山は、同じ高さであることを特徴とする。
【0023】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか一つに記載の熱線式流量計であって、算出手段は、流路内の第1測温手段が配置された位置から第2測温手段が配置された位置までの距離を第3計時手段によって計時された第3時間で除算して被計測流体の流速を算出し、当該流速に流路の断面積を乗算することにより、被計測流体の流量を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に記載の発明によれば、加熱手段から発生させる熱信号として、少なくとも2つの山を持つ特別な形状のものを発生させて被計測流体に重畳させ、第1及び第2測温手段によって測定された被計測流体の温度がそれぞれ、同一閾値(ただし、第1測温手段と第2測温手段に対してそれぞれ設定される閾値が同一という意味ではなく、1つの熱信号に対して第1又は第2測温手段のおのおので用いる閾値が同一という意味である)を2回超える時間を、第1及び第2時間として計時するようにしているので、1つの山を持つ形状の熱信号を被計測流体に重畳させて、同一閾値を1回超える時間を計時する従来の熱線式流量計と比較して、加熱手段に起因した熱信号を検知しているかどうかの判定を正確に行うことができる。
【0025】
そして、第3時間は、正確に判定された第1及び第2時間に基づいて計時されているので、第3時間も正確なものとなり、このような正確な第1~第3時間に基づいて算出された被計測流体の流量も精度の高いものとなる。
【0026】
また、請求項1に記載の発明では、複数の閾値を生成し、当該生成した閾値毎に第1~第3時間を計測するようにしたので、被計測流体に温度変化がある状態でも、第1~第3時間を正確に計測することができる。
【0027】
したがって、請求項1に記載の発明によれば、被計測流体に温度変化がある状態でも、当該被計測流体の流量を精度良く測定することが可能となる。
【0028】
請求項2に記載の発明によれば、第1及び第2時間のうち、少なくとも一方が計時されなかったときには、被計測流体の流量の算出はなされない。
【0029】
つまり、第1及び第2時間のうち、少なくとも一方が計時されないということは、熱信号に由来する温度測定が正しくなされなかったことを意味する。
【0030】
したがって、請求項2に記載の発明によれば、正しくない測定結果を除外し、正しい測定結果のみに基づいて被計測流体の流量を算出するようにしたので、当該被計測流体の流量を精度良く測定することが可能となる。
【0031】
請求項3に記載の発明によれば、第1及び第2時間の双方が計時されたときには、第1時間と第2時間とが等しい場合に、被計測流体の流量の算出がなされる一方、第1時間と第2時間とが異なっている場合には、被計測流体の流量の算出がなされない。
【0032】
つまり、第1及び第2時間の双方が計時されたとしても、両者が同じ時間でない場合には、加熱手段によって発生された熱信号の異なる位置を検知している等、被計測流体の温度測定が正しくなされなかったことを意味する。
【0033】
したがって、請求項3に記載の発明によれば、正しく判定される虞のある、正しくない測定結果を除外し、真に正しい測定結果のみに基づいて被計測流体の流量を算出するようにしたので、当該被計測流体の流量をさらに精度良く測定することが可能となる。
【0034】
請求項4に記載の発明によれば、第1及び第2時間の双方が計時されたときには、経過時間、第1時間及び第2時間のすべてが等しい場合に、被計測流体の流量の算出がなされる一方、経過時間と第1時間及び第2時間のうちの少なくとも一方とが異なっている場合には、被計測流体の流量の算出がなされない。
【0035】
つまり、第1及び第2時間の双方が計時されたとしても、経過時間と第1時間及び第2時間のうちの少なくとも一方とが異なっている場合には、加熱手段によって発生された熱信号の異なる位置を検知している等、被計測流体の温度測定が正しくなされなかったことを意味する。
【0036】
したがって、請求項4に記載の発明によっても、請求項3に記載の発明と同様に、正しく判定される虞のある、正しくない測定結果を除外し、真に正しい測定結果のみに基づいて被計測流体の流量を算出するようにしたので、当該被計測流体の流量をさらに精度良く測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る熱線式流量計の概略構成を示す模式図((a))及び縦断面図((b))である。
図2図1の熱線式流量計に備えられた制御回路の構成を示すブロック図である。
図3図1の熱線式流量計で発生される熱信号の形状、波長及び伝達時間の一例を示す図である。
図4図2の制御回路に備えられた第1~第3カウンタの動作の一例を示す図である。
図5図2の制御回路に備えられた第3判定部が実行する制御処理の手順を示すフローチャートである。
図6図1の熱線式流量計に備えられた第1及び第2測温センサによって測定された熱信号の一例を示す図である。
図7図1の熱線式流量計に備えられた第1及び第2測温センサによって測定された、図6の例とは異なる熱信号の一例を示す図である。
図8】被計測流体に温度変化があるときに、図1の熱線式流量計に備えられた第1及び第2測温センサによって測定された熱信号の一例を示す図である。
図9】本発明の第2の実施の形態に係る熱線式流量計に備えられた制御回路の構成を示すブロック図である。
図10図9の制御回路に備えられた第1~第3カウンタの動作の一例を示す図である。
図11】本発明の第3の実施の形態に係る熱線式流量計に備えられた制御回路の構成を示すブロック図である。
図12図11の制御回路に備えられた第1の1、第1の2、第2の1、第2の2及び第3カウンタの動作の一例を示す図である。
図13図11の制御回路に備えられた第1の1、第1の2、第2の1、第2の2及び第3カウンタの図12とは異なる動作の一例を示す図である。
図14図11の制御回路に備えられた第1の1、第1の2、第2の1、第2の2及び第3カウンタの図12及び図13とはさらに異なる動作の一例を示す図である。
図15】従来の熱線式流量計による流量計測方法の一例を示す図である。
図16】被計測流体に温度変化があるときに、図15の流量計測方法を用いて流量測定を行った場合に生ずる誤測定を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の各実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0039】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態に係る熱線式流量計は、熱線式MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)流量計であり、TOF(Time of Flight)方式により、被計測流体の流量を計測するものである。用途としては、微量な医療薬品の流量管理や、生物化学試験の試薬・培養液の管理等が考えられる。被計測流体の流量範囲は、1~100μl/minを想定するが、これに限られる訳ではない。
【0040】
本実施形態の熱線式流量計100は、図1(a)に示すように、ヒータ101、第1測温センサ102、第2測温センサ103、信号線104~106、及び流路107等を備えている。本実施形態の熱線式流量計100は、平面視、矩形状で、その寸法は、例えば10mm(縦)×20mm(横)である。
【0041】
ヒータ101と、第1及び第2測温センサ102,103は、シリコンウェハ108上に形成される(図1(b)参照)。
【0042】
流路107は、矩形状の溝を形成した流路形成部109をシリコンウェハ108の表面上に重ねることにより、形成されている。そして、流路形成部109は、流路107の両端部に相当する位置にそれぞれ孔109a,109bを形成している。この孔109a,109bにはそれぞれ、シリコンチューブ110,111が挿入される。
【0043】
シリコンチューブ110は、被計測流体を流路107内に導入する導入管としての役割を果たし、シリコンチューブ111は、流路107から被計測流体を排出する排出管としての役割を果たしている。
【0044】
ヒータ101、第1測温センサ102及び第2測温センサ103は、流路107内に、上流側から下流側に亘って、この順序で配置されている。
【0045】
ヒータ101と、第1及び第2測温センサ102,103には、それぞれ、信号線104~106の一端が接続され、その他端は、図2に示す制御回路200と接続されている。
【0046】
被計測流体が流路107内を通っている状態で、ヒータ101からは、所定の形状の熱信号が発生される。図3(a)は、この熱信号s1の一例を示している。当該熱信号s1は、同図(a)に示すように、温度変化の山を2つ有するM字状のものであり、10°Cの振幅値(温度上昇幅)を有している。図示例では、各山の高さは同一としているが、異なっていてもよい(図6図8参照)。また、振幅値も、10°Cに限らず、どのような温度を採用してもよい。ヒータ101に印加する電圧値を変更することにより、振幅値は自由に変更することができる。
【0047】
熱信号s1が重畳された被計測流体は、つまり、被計測流体の元々の温度(以下、「制御前温度」という)が熱信号s1によって上昇した被計測流体は、当該被計測流体の流れに従って下流側に流れて行く。そして、まず第1測温センサ102が、当該温度上昇した被計測流体の温度を計測し、次に第2測温センサ103が、当該温度上昇した被計測流体の温度を計測する。
【0048】
図3(b)が、第1測温センサ102によって被計測流体の温度が計測された結果の一例を示し、図3(c)が、第2測温センサ103によって被計測流体の温度が計測された結果の一例を示している。
【0049】
第1測温センサ102によって計測された被計測流体の温度変化、つまり、熱信号s1に応じた温度変化(以下、これも「熱信号」という(熱信号s2))は、図3(b)の例では、熱信号s1の温度変化と変わっていない。このため、熱信号s2の振幅値も、熱信号s1と同様に、10°Cである。また、熱信号s2の波長は、100msecとなっているため、熱信号s1の波長も、図3(a)には記載されていないが、100msecである。
【0050】
第2測温センサ103によって計測された被計測流体の温度変化、つまり、熱信号s3も、図3(c)の例では、熱信号s1の温度変化と変わっていない。このため、熱信号s3の振幅値及び波長も、図3(c)には記載されていないが、それぞれ10°C及び100msecである。
【0051】
被計測流体の流量は、本実施形態の熱線式流量計100でも、[背景技術]欄で上述した計測方法、具体的には、被計測流体が所定距離を流れるのに経過した時間(以下、「移動時間」という)を計測し、その計測された移動時間を所定距離で除算することによって、被計測流体の流速を算出し、その算出された流速に流路107の断面積を乗算することによって、被計測流体の流量を測定する。そして、本発明の特徴は、被計測流体の移動時間を計測する方法にあるので、つまり、当該移動時間の計測後、流量の算出に至るまでの方法は、上述した従来の熱線式流量計と異ならないので、以下、当該移動時間を計測する方法を中心に説明する。
【0052】
移動時間の計測は、その詳細は後述するが、複数の閾値を設定し、熱信号s2,s3毎に、各閾値について、当該閾値を超えてから再度超えるまでの時間を測定するとともに、熱信号s2が当該閾値を再度超えてから、熱信号s3が当該閾値(ただし、この閾値は、熱信号s2と熱信号s3で異なる場合がある)を再度超えるまでの時間を測定し、これら測定された3種類の時間に基づいてなされる。
【0053】
図3(b)中、5°Cの閾値Thは、設定された複数の閾値のうちの1つを示している。また、図3(c)中の閾値Thも、図3(b)中の閾値Thと同じ、5°Cである。そして、熱信号s2,s3がそれぞれ、閾値Thを超えてから、再度閾値Thを超えるまでの時間は、同一の50msecであるので、熱信号s2と熱信号s3は、正しい計測結果と判定して、熱信号s2が閾値Thを再度超えてから、熱信号s3が閾値Thを再度超えるまでの時間、つまり被計測流体が第1測温センサ102の位置から第2測温センサ103の位置まで移動した時間は、10msecと計測される。
【0054】
なお、閾値Thは、実際には、上記制御前温度が加算されたものが使用される。これは、第1及び第2測温センサ102,103が被計測流体の温度として、制御前温度に熱信号s2,s3の重畳されたものを測定するからである。したがって、図3の各グラフの温度軸は、被計測流体の制御前温度を除外したもの、つまり「温度差」を示している。この事情は、他の図4図6図8でも同様である。
【0055】
上記制御回路200は、図2に示すように、制御部201、熱印加部202、第1温度検知部203及び第2温度検知部204を備えている。なお、図2には示されていないが、上記信号線104~106は、それぞれ、熱印加部202、第1温度検知部203及び第2温度検知部204と接続されている。
【0056】
制御部201は、熱印加部202、第1温度検知部203及び閾値生成部205と接続されている。制御部201は、熱印加部202に対して、印加電圧値を指示することで、ヒータ101から上記M字状の熱信号を発生させる。
【0057】
また、制御部201は、第1温度検知部203から、熱信号を発生させる前の第1測温センサ102周辺の被計測流体の温度、つまり上記制御前温度を取得する。制御部201は、この取得した制御前温度と、ヒータ101から発生する熱信号の振幅値を閾値生成部205に出力する。ここで、ヒータ101から発生する熱信号の振幅値は、熱印加部202に指示する印加電圧値から事前に確定することができるので、制御部201は、この確定値を閾値生成部205に出力する。
【0058】
閾値生成部205は、上記確定値に基づいて被計測流体の温度上昇幅を決定し、当該温度上昇幅に所定の余裕分を加算し、その加算結果を所定の数に等分割して、閾値を生成する。具体的には、図3(a)に示すように、ヒータ101から発生される熱信号s1の振幅値が10°Cであるとし、余裕分を5°Cとする。この加算結果である15°Cを、例えば6等分すると、各閾値の差は、2.5°Cとなる。そして、被計測流体の制御前温度が50°Cであるとすると、閾値生成部205は、52.5°C,55°C,57.5°C,60°C,62.5°C,65°Cの6個の閾値を生成する。
【0059】
閾値生成部205は、このようにして生成した複数個の閾値を、第1及び第2判定部206,208に出力する。
【0060】
第1温度検知部203は、第1判定部206と接続され、第1判定部206は、第1カウンタ207及び第3カウンタ210と接続されている。また、第1判定部206には、閾値生成部205も接続されている。
【0061】
第1判定部206は、上述のようにして閾値生成部205から出力された複数個の閾値を記憶し、当該各閾値と、第1温度検知部203から出力された被計測流体の温度とを比較し、被計測流体の温度が当該各閾値を超えたかどうかを判定する。
【0062】
第1判定部206は、図3(b)又は図4に示すように、被計測流体の温度と閾値Thとを比較し、被計測流体の温度が閾値Thを超えると、第1カウンタ207のカウントを開始(ON)させる。図4では、時刻T1で、被計測流体の温度が閾値Thを超え、第1カウンタ207がON状態になった様子が示されている。なお、図4中、時刻T0は、ヒータ101への電圧印加を開始した時点を示している。
【0063】
第1判定部206は、被計測流体の温度と閾値Thとの比較動作を継続し、再度被計測流体の温度が閾値Thを超えると、第1カウンタ207のカウントを停止(OFF)させるとともに、第3カウンタ210のカウントを開始(ON)させる。図4には、時刻T2で、被計測流体の温度が再度閾値Thを超え、第1カウンタ207がOFF状態になるとともに、第3カウンタ210がON状態になった様子が示されている。
【0064】
同様に、第2温度検知部204は、第2判定部208と接続され、第2判定部208は、第2カウンタ209及び第3カウンタ210と接続され、さらに、第2判定部208には、閾値生成部205も接続されている。
【0065】
第2温度検知部204、第2判定部208及び第2カウンタ209の各動作と、上述した第1温度検知部203、第1判定部206及び第1カウンタ207の各動作との違いは、前者が第1測温センサ102からの計測温度に基づいて制御を行うのに対して、後者が第2測温センサ103からの計測温度に基づいて制御を行うことと、第2判定部208が第3カウンタ210に行う制御が異なることである。したがって、第2判定部208が第3カウンタ210に行う制御についてのみ説明する。
【0066】
第2判定部208は、被計測流体の温度が閾値Thを超えたとしても、第3カウンタ210に対しては何も指示しないので、第3カウンタ210は、ON状態を継続する。そして、被計測流体の温度が再度閾値Thを超えると、第2判定部208は、第2及び第3カウンタ209,210の両方のカウントを停止(OFF)させる。図4には、時刻T3で、被計測流体の温度が閾値Thを超え、第2カウンタ209がON状態になった後、時刻T4で、被計測流体の温度が再度閾値Thを超え、第2及び第3カウンタ209,210がともにOFF状態になった様子が示されている。
【0067】
第3カウンタ210は、第3判定部211と接続され、第3判定部211は、第1及び第2カウンタ207,209及び出力部212と接続されている。
【0068】
第3判定部211は、第1カウンタ207によってカウントされたカウント値と、第2カウンタ209によってカウントされたカウント値とを比較し、両カウント値が一致している場合、第3カウンタ210によってカウントされたカウント値を出力部212に出力する。
【0069】
第1~第3カウンタ207,209,210はそれぞれ、所定時間毎に“1”ずつカウントアップするものであるので、当該第1~第3カウンタ207,209,210のカウント値は、間接的に経過時間を示している。つまり、図4中、時間a,b,Tはそれぞれ、第1~第3カウンタ207,209,210の各カウント値を上記所定時間倍したものとなる。ここで、時間aは、熱信号s2が閾値Thを超えてから再度閾値Thを超えるまでの時間を示し、時間bは、熱信号s3が閾値Thを超えてから再度閾値Thを超えるまでの時間を示し、時間Tは、被計測流体が第1測温センサ102の位置から第2測温センサ103の位置まで移動したときに経過した時間を示している。
【0070】
なお、図4中、熱信号s2,s3の時間経過に従った温度推移を示すグラフは、実際の測定結果と異なっている。図3を用いて上述したように、被計測流体が第1測温センサ102の位置から第2測温センサ103の位置まで移動した時間は、10msecであるのに対して、熱信号s2,s3の波長は、100msecである。このため、時間軸上に、2つの熱信号s2,s3を並べた場合、両者の大部分が重なるが、図4では、両者に重なりはないからである。これは、説明の都合上そのようにしているのであって、その他の理由はない。もちろん、図4は、図3とは異なる被計測流体についてのものと見れば、矛盾は生じない。この事情は、図6図8についても、同様である。
【0071】
出力部212は、この第3カウンタ210のカウント値を外部に出力する。この外部には、演算処理部(図示せず)が設けられ、演算処理部は、当該出力されたカウント値に基づいて被計測流体の移動時間を算出し、上述したようにして、この移動時間から被計測流体の流速を算出し、この流速から被計測流体の流量を算出する。
【0072】
以下、以上のように構成された熱線式流量計100が実行する制御処理を、さらに詳細に説明する。
【0073】
図5は、第3判定部211が実行する測定データ判定処理の手順を示すものであり、この測定データ判定処理について、図6図8を参照して説明する。
【0074】
図6は、第1及び第2測温センサ102,103によってそれぞれ測定された熱信号s11,s12を示している。図6には示されていないが、ヒータ101からは、熱信号s11,s12と同様の熱信号s10(図8参照)が発生されている。図6の例では、ヒータ101から発生された熱信号s10が、その形状を崩すことなく、第1及び第2測温センサ102,103に到達していることを示している。
【0075】
図5に戻り、測定データ判定処理が開始されると、第3判定部211は、まず、ヒータ101がONされてから所定時間経過したかどうか、つまり、ヒータ101からの熱信号s10が第2測温センサ103の位置を通過したかどうかを判定する(ステップ1)。これは、続くステップ2以降の処理を、熱信号s10が第2測温センサ103の位置を通過した後に実行したいからである。なお、上記所定時間は、ヒータ101に印加する電圧の継続時間、ヒータ101から第2測温センサ103までの距離、及び被計測流体のおおよその流速等から、簡単に想定できる。
【0076】
ステップ1の判定の結果、ヒータ101がONされてから所定時間経過していないときには、本測定データ判定処理を終了する一方、ヒータ101がONされてから所定時間経過したときには、次のステップ2に進む。
【0077】
ステップ2では、第3判定部211は、第1カウンタ207のカウント値(以下、「第1カウンタ値」という)が“1”以上であるか否かを判定する。これは、第1カウンタ207が有効なカウント値をカウントしているかどうかを判定している。第3判定部211は、第1カウンタ207が所定のカウント値以上をカウントした場合には、第1カウンタ207のカウントを停止させて、リセットするようにしている。
【0078】
図6において、例えば、閾値Th1が設定されている場合、熱信号s11は再度閾値Th1を超えることはないので、第1カウンタ207は、カウント動作を停止せずに継続する。このため、第1カウンタ207が、例えば熱信号s11の波長に相当する時間以上カ
ウントした場合には、第3判定部211は、第1カウンタ207のカウントを停止させて、リセットする。
【0079】
したがって、第1カウンタ207のカウント値が“0”であるときは、第1カウンタ207が有効なカウント値をカウントしていないことになる。この事情は、第2カウンタ209についても、同様である。
【0080】
ステップ2の判定の結果、第1カウンタ値が“1”以上のときには、次のステップ3に進む一方、第1カウンタ値が“0”のときには、ステップ6に進み、第3判定部211は、第1~第3カウンタ207,209,210のカウントを停止させた後、当該第1~第3カウンタ207,209,210をリセットする。
【0081】
さらに、第3判定部211は、出力部212に、誤判定を示す値を出力した(ステップ7)後、本測定データ判定処理を終了する。
【0082】
ステップ3では、第3判定部211は、第2カウンタ209のカウント値(以下、「第2カウンタ値」という)が“1”以上であるか否かを判定する。この判定の結果、第2カウンタ値が“1”以上のときには、次のステップ4に進む一方、第2カウンタ値が“0”のときには、上記ステップ6に進む。
【0083】
ステップ4では、第3判定部211は、第1カウンタ値と第2カウンタ値とが等しいかどうか判定する。この判定は、第1測温センサ102によって測定された熱信号と、第2測温センサ103によって測定された熱信号が、ともに正しい熱信号であるかどうかを判定するためになされる。つまり、第1カウンタ値=第2カウンタ値の場合に、当該各熱信号は、ヒータ101からの熱信号を正しく検知したものと判定する。一方、第1カウンタ値≠第2カウンタ値の場合は、当該2つの熱信号のいずれか一方、あるいは双方ともに、ヒータ101からの熱信号を正しく検知したものではないと判定する。
【0084】
ステップ4の判定の結果、第1カウンタ値=第2カウンタ値のときには、次のステップ5に進む一方、第1カウンタ値≠第2カウンタ値のときには、上記ステップ6に進む。
【0085】
ステップ5では、第3判定部211は、第3カウンタ210のカウント値(以下、「第3カウンタ値」という)を出力部212に出力する。第3判定部211から第3カウンタ値が出力されると、出力部212は、この第3カウンタ値を外部に出力する。これ以降の処理は、上述したので、その説明を省略する。
【0086】
図6の例では、熱信号s11と熱信号s12は、ともにヒータ101からの熱信号s10を正しく検知したものであるので、閾値Th2が設定されたときに、第1カウンタ207は、時刻T1から時刻T2までの時間aに相当するカウント値をカウントする一方、第2カウンタ209は、時刻T3から時刻T4までの時間bに相当するカウント値をカウントする。そして、時間aと時間bは等しいので、第3カウンタ210がカウントした、時刻T2から時刻T4までの時間Tに相当するカウント値が、出力部212に出力される。
【0087】
図7は、第1測温センサ102によって計測された熱信号s21は、ヒータ101からの熱信号s10を正しく検知したものであるのに対して、第2測温センサ103によって計測された熱信号s22は、周囲の温度の急激な変化により、ヒータ101からの熱信号s10を正しく検知したものでない場合の一例を示している。
【0088】
図7中、二点鎖線で示される3角形状の曲線V2は、第2測温センサ103周辺の被計測流体の温度変化の一例を示している。
【0089】
図7の計測結果を、上述した測定データ判定処理に適用した場合、閾値Th2が設定されたときには、熱信号s21は、上記図6中の熱信号s11と同様に、第1カウンタ207により、時刻T1から時刻T2までカウントされるものの、熱信号s22は、閾値Th2を含む、閾値Th1~Th5のいずれが設定されたとしても、当該閾値Th1~Th5を再度超えることがないので、第2カウンタ209は停止されて、リセットされる。
【0090】
したがって、この場合には、図5のステップ3で、第2カウンタ値=0となって、ステップ7で、出力部212には、誤判定を示す値が出力される。これにより、上記演算処理部は、被計測流体の流速及び流量の算出を行わない。
【0091】
図8は、第1及び第2測温センサ102,103の周囲の温度が変化した場合でも、被計測流体の移動時間が正しく検知されたときの一例を示している。同図中、二点鎖線で示される直線V1は、上記図16中の直線V1と同様の被計測流体の温度変化を示している。
【0092】
図8の計測結果を、上述した測定データ判定処理に適用した場合、閾値Th12が設定されたときには、熱信号s31は、上記図6中の熱信号s11と同様に、第1カウンタ207により、時刻T1から時刻T2までカウントされるが、熱信号s32は、閾値Th12を再度超えることがないので、第2カウンタ209は停止され、リセットされる。
【0093】
しかし、第2カウンタ209に対して、閾値Th13が設定されると、熱信号s32は、時刻T3で閾値Th13を超え、さらに時刻T4で閾値Th13を再度超える。そして、時刻T1から時刻T2までの時間aと、時刻T3から時刻T4までの時間bとは、等しいので、熱信号s31と熱信号s32はともに、正しい計測結果と判定する必要がある。
【0094】
そこで、これに対処するためには、上述した測定データ判定処理を変更する必要がある。具体的には、次のように変更すればよい。すなわち、
(1)第1カウンタ207がリセットの指示を受けるまで、第3カウンタ210のカウントを継続する。
(2)設定された複数の閾値のうちの1つでも、第1カウンタ207が有効なカウント値をカウントした後は、第3カウンタ210のカウント動作を継続する。
(3)第3カウンタ210がカウント動作を継続している間に、第2測温センサ103によって測定された温度が、設定された閾値を再度超えた場合は、再度超えた閾値毎に、当該各閾値に対応付けて、第3カウンタ210の第3カウンタ値を記憶しておく。
(4)各閾値に対応付けて記憶された第3カウンタ値は、第2カウンタ209がリセットされる度に、当該閾値に対応付けられた第3カウンタ値を消去する。
(5)第1カウンタ値及び第2カウンタ値が、ともに有効なカウント値であり、かつ、等しい場合に、消去されずに残っている第3カウンタ値を出力部212に出力する。
【0095】
以上のようにして、本実施形態の熱線式流量計100には、被計測流体が流れる流路107と、流路107内に配置された、被計測流体を加熱するヒータ101と、流路107内に、ヒータ101より下流側に配置された、被計測流体の温度を測定する第1測温センサ102と、流路107内に、第1測温センサ102より下流側に配置された、被計測流体の温度を測定する第2測温センサ103とが設けられている。
【0096】
さらに、本実施形態の熱線式流量計100には、ヒータ101から少なくとも2つの山を持つ熱信号を発生させて、流路107内を流れる被計測流体に当該熱信号を重畳させるように、当該ヒータ101を制御する制御部201と、被計測流体の温度についての複数の閾値を生成する閾値生成部205と、閾値生成部205によって生成された閾値毎に、第1測温センサ102によって測定された被計測流体の温度が当該閾値を超えてから再度超えるまでの第1時間をカウントする第1カウンタ207と、閾値生成部205によって生成された閾値毎に、第2測温センサ103によって測定された被計測流体の温度が当該閾値を超えてから再度超えるまでの第2時間をカウントする第2カウンタ209と、第1カウンタ207によって第1時間のカウントが終了してから、第2カウンタ209によって第2時間のカウントが終了するまでの第3時間をカウントする第3カウンタ210とが設けられている。
【0097】
そして、本実施形態の熱線式流量計100では、第1~第3カウンタ207,209,210によってそれぞれカウントされた第1~第3時間に基づいて、被計測流体の流量が算出される。
【0098】
つまり、本実施形態の熱線式流量計100では、ヒータ101から発生させる熱信号として、少なくとも2つの山を持つ特別な形状のものを発生させて被計測流体に重畳させ、第1及び第2測温センサ102、103によって測定された被計測流体の温度がそれぞれ、同一閾値(ただし、第1測温センサ102と第2測温センサ103に対してそれぞれ設定される閾値が同一という意味ではなく、1つの熱信号に対して第1又は第2測温センサ102,103のおのおので用いる閾値が同一という意味である)を2回超える時間を、第1及び第2時間としてカウントするようにしているので、1つの山を持つ形状の熱信号を被計測流体に重畳させて、同一閾値を1回超える時間を計時する従来の熱線式流量計と比較して、ヒータ101に起因した熱信号を検知しているかどうかの判定を正確に行うことができる。
【0099】
そして、第3時間は、正確に判定された第1及び第2時間に基づいてカウントされているので、第3時間も正確なものとなり、このような正確な第1~第3時間に基づいて算出された被計測流体の流量も精度の高いものとなる。
【0100】
また、本実施形態の熱線式流量計100では、複数の閾値を生成し、当該生成した閾値毎に第1~第3時間をカウントするようにしたので、被計測流体に温度変化がある状態でも、第1~第3時間を正確にカウントすることができる。
【0101】
したがって、本実施形態の熱線式流量計100によれば、被計測流体に温度変化がある状態でも、当該被計測流体の流量を精度良く測定することが可能となる。
【0102】
また、本実施形態の熱線式流量計100では、第1及び第2時間のうち、少なくとも一方がカウントされなかったときには、被計測流体の流量の算出はなされない。
【0103】
つまり、第1及び第2時間のうち、少なくとも一方がカウントされないということは、熱信号に由来する温度測定が正しくなされなかったことを意味する。
【0104】
したがって、本実施形態の熱線式流量計100によれば、正しくない測定結果を除外し、正しい測定結果のみに基づいて被計測流体の流量を算出するようにしたので、当該被計測流体の流量を精度良く測定することが可能となる。
【0105】
さらに、第1及び第2時間の双方がカウントされたときには、第1時間と第2時間とが等しい場合に、被計測流体の流量の算出がなされる一方、第1時間と第2時間とが異なっている場合には、被計測流体の流量の算出がなされない。
【0106】
つまり、第1及び第2時間の双方がカウントされたとしても、両者が同じ時間でない場合には、ヒータ101によって発生された熱信号の異なる位置を検知している等、被計測流体の温度測定が正しくなされなかったことを意味する。
【0107】
したがって、本実施形態の熱線式流量計100によれば、正しく判定される虞のある、正しくない測定結果を除外し、真に正しい測定結果のみに基づいて被計測流体の流量を算出するようにしたので、当該被計測流体の流量をさらに精度良く測定することが可能となる。
【0108】
ちなみに、本実施形態において、ヒータ101は、「加熱手段」の一例である。第1、第2測温センサ102,103は、「第1、第2測温手段」の一例である。制御部201は、「制御手段」の一例である。閾値生成部205は、「生成手段」の一例である。第1~第3カウンタ207,209,210は、「第1~第3計時手段」の一例である。
【0109】
[第2の実施の形態]
上記第1実施形態の熱線式流量計100は、第3カウンタ210の第3カウンタ値を出力部212に出力する場合、つまり、ヒータ101から発生された熱信号に由来する温度測定が正しくなされた場合を判断する基準として、「第1カウンタ値=第2カウンタ値であること」を採用している。これに対して、本発明の第2の実施の形態に係る熱線式流量計は、上記判断基準として、「ヒータ101から発生される熱信号が重畳された被計測流体の温度が所定の閾値を超えてから再度超えるまでの時間Theat=第1カウンタ値、かつ当該時間Theat=第2カウンタ値であること」を採用している点が異なっている。
【0110】
このような判断基準を採用したため、本実施形態の熱線式流量計は、上記第1実施形態の熱線式流量計100に対して、制御回路200の構成要素の一部と、各構成要素が実行する処理の一部を変更している。したがって、本実施形態の熱線式流量計の制御回路300(図9参照)中、上記第1実施形態の熱線式流量計100の制御回路200(図2参照)と同様の構成要素には、同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0111】
図9において、制御部201′は、第3判定部311と接続され、第3判定部311と出力部212との間には、第3カウンタ210が挿入されている。
【0112】
制御部201′は、閾値生成部205によって生成された閾値毎に、ヒータ101から発生されるM字状の熱信号が重畳された被計測流体の温度が当該閾値を超えてから再度当該閾値を超えるまでの時間を想定する。ここで、当該熱信号は、生成されたすべての閾値について、当該閾値を2回超えるとは限らず、1回しか超えないものもある。
【0113】
例えば、上記第1実施形態の図6において、熱信号s11,s12の基となる熱信号s10(図8参照)は、閾値Th1については、1回しか超えないものの、図10に示す熱信号s1は、閾値Thを2回超える。
【0114】
後者の場合、制御部201′は、熱信号s1が閾値Thを最初に超えてから再度超えるまでの時間Theatを算出(想定)する。なお、制御部201′によって算出される時間Theatは、実際には、時間Theatに相当する「カウント値」であり、「時間」ではない。しかし、以下、時間Theatも、当該時間Theatに相当するカウント値も、「時間Theat」と言うことにする。
【0115】
次に、制御部201′は、算出した時間Theatを第3判定部311に出力する。第3判定部311は、この時間Theatを記憶する。
【0116】
第1判定部306は、上記第1実施形態における第1判定部206と同様に、被計測流体の温度が閾値Thを超えると、第1カウンタ207のカウントを開始(ON)させる。なお、本実施形態では、第1判定部306は、第3カウンタ210と接続されていないので、当該第3カウンタ210に対する制御を行わない。図10には、時刻T1で、被計測流体の温度が閾値Thを超え、第1カウンタ207がON状態になった様子が示されている。
【0117】
第1判定部306は、被計測流体の温度と閾値Thとの比較動作を継続し、再度被計測流体の温度が閾値Thを超えると、第1カウンタ207のカウントを停止(OFF)させる。これと同時に、第3判定部311は、第3カウンタ210のカウントを開始(ON)させる。図10には、時刻T2で、被計測流体の温度が再度閾値Thを超え、第1カウンタ207がOFF状態になり、第3カウンタ210がON状態になった様子が示されている。
【0118】
第2判定部308も、上記第1実施形態における第2判定部208と同様に、被計測流体の温度が閾値Thを超えると、第2カウンタ209のカウントを開始(ON)させる。なお、本実施形態では、第2判定部308も、第3カウンタ210と接続されていないので、当該第3カウンタ210に対する制御を行わない。図10には、時刻T3で、被計測流体の温度が閾値Thを超え、第2カウンタ207がON状態になり、第3カウンタ210がON状態を継続している様子が示されている。
【0119】
第2判定部308は、被計測流体の温度と閾値Thとの比較動作を継続し、再度被計測流体の温度が閾値Thを超えると、第2カウンタ209のカウントを停止(OFF)させる。これと同時に、第3判定部311は、第3カウンタ210のカウントを停止(OFF)させる。図10には、時刻T4で、被計測流体の温度が再度閾値Thを超え、第2及び第3カウンタ209,210がいずれもOFF状態になった様子が示されている。
【0120】
第3判定部311は、第1カウンタ207のカウント値(第1カウンタ値)と上記時間Theatを比較するとともに、第2カウンタ209のカウント値(第2カウンタ値)と上記時間Theatを比較する。この比較の結果、第1カウンタ値=時間Theatかつ第2カウンタ値=時間Theatである場合、第3判定部311は、第3カウンタ210のカウント値(第3カウンタ値)を出力部212に出力する。
【0121】
図10の例では、第1カウンタ値a=時間Theatかつ第2カウンタ値b=時間Theatであるので、第3判定部311は、第3カウンタ値、つまり時間Tに相当するカウント値を出力部212に出力する。
【0122】
なお、第1カウンタ値≠時間Theat及び第2カウンタ値≠時間Theatのうち、少なくともいずれか一方が成立する場合には、上記第1実施形態と同様に、第3判定部311は、第3カウンタ値に代えて、誤判定を示す値を出力部212に出力する。
【0123】
このように、本実施形態の熱線式流量計でも、上記第1実施形態の熱線式流量計と同様の制御を行うことができる。
【0124】
本実施形態の熱線式流量計では、第1及び第2時間(第1及び第2カウント値)の双方が計時されたときには、時間Theat、第1時間及び第2時間のすべてが等しい場合に、被計測流体の流量の算出がなされる一方、時間Theatと第1時間及び第2時間のうちの少なくとも一方とが異なっている場合には、被計測流体の流量の算出がなされない。
【0125】
つまり、第1及び第2時間の双方が計時されたとしても、時間Theatと第1時間及び第2時間のうちの少なくとも一方とが異なっている場合には、ヒータ101によって発生された熱信号の異なる位置を検知している等、被計測流体の温度測定が正しくなされなかったことを意味する。
【0126】
したがって、本実施形態の熱線式流量計によっても、上記第1実施形態の熱線式流量計と同様に、正しく判定される虞のある、正しくない測定結果を除外し、真に正しい測定結果のみに基づいて被計測流体の流量を算出するようにしたので、当該被計測流体の流量をさらに精度良く測定することが可能となる。
【0127】
ちなみに、本実施形態において、制御部201′は、「想定手段」の一例である。
【0128】
[第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態に係る熱線式流量計は、上記第2実施形態の熱線式流量計に対して、第1及び第2カウンタ207,209に相当するカウンタをそれぞれ2つずつ設けるようにした点が異なっている。したがって、本実施形態の熱線式流量計の制御回路400中、上記第2実施形態の熱線式流量計の制御回路300と同様の構成要素には、同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0129】
図11において、第1温度検知部203は、第1の1判定部406a及び第1の2判定部406bと接続されている。また、第1の1判定部406a及び第1の2判定部406bには、閾値生成部205も接続されている。そして、第1の1判定部406a及び第1の2判定部406bはそれぞれ、第1の1カウンタ407a及び第1の2カウンタ407bと接続されている。さらに、第1の1カウンタ407a及び第1の2カウンタ407bは、第3判定部411と接続されている。
【0130】
同様にして、第2温度検知部204は、第2の1判定部408a及び第2の2判定部408bと接続されている。また、第2の1判定部408a及び第2の2判定部408bには、閾値生成部205も接続されている。そして、第2の1判定部408a及び第2の2判定部408bはそれぞれ、第2の1カウンタ409a及び第2の2カウンタ409bと接続されている。さらに、第2の1カウンタ409a及び第2の2カウンタ409bは、第3判定部411と接続されている。
【0131】
制御部201′は、上記第2実施形態における制御部201′と同様に、ヒータ101から発生されるM字状の熱信号が1つの閾値を超えてから再度同じ閾値を超えるまでの時間を算出(想定)する。例えば、図12に示す熱信号s2,s3の基となる熱信号s1(上記第2実施形態における図10参照)は、閾値Th22を2回超える。したがって、この場合、制御部201′は、上記第2実施形態における制御部201′と同様に、熱信号s1が閾値Th22を最初に超えてから再度超えるまでの時間Theatを算出し、この時間Theatを第3判定部411に出力する。第3判定部411は、上記第2実施形態における第3判定部311と同様に、この時間Theatを記憶する。
【0132】
第1の1判定部406aと第1の2判定部406bにはそれぞれ、閾値生成部205から異なった閾値が出力されて、記憶される。図12の例では、閾値Th21が第1の1判定部406aに記憶され、閾値Th22が第1の2判定部406bに記憶されている。
【0133】
同様にして、第2の1判定部408aと第2の2判定部408bにもそれぞれ、閾値生成部205から異なった閾値が出力されて、記憶される。図12の例では、閾値Th21が第2の1判定部408aに記憶され、閾値Th22が第2の2判定部408bに記憶されている。
【0134】
第1の1判定部406aは、被計測流体の温度と閾値Th21とを比較し、被計測流体の温度が閾値Th21を超えると、第1の1カウンタ407aのカウントを開始(ON)させる。図12には、時刻T11で、被計測流体の温度が閾値Th21を超え、第1の1カウンタ407aがON状態になった様子が示されている。
【0135】
第1の1判定部406aは、被計測流体の温度と閾値Th21との比較動作を継続し、再度被計測流体の温度が閾値Th21を超えると、第1の1カウンタ407aのカウントを停止(OFF)させる。図12の例では、被計測流体の温度は、1回だけ閾値Th21を超え、再度閾値Th21を超えないので、第1の1カウンタ407aはカウント動作を継続する。
【0136】
この場合、上記第1実施形態における第3判定部211は、第1及び第2カウンタ207,209が所定のカウント値、つまり熱信号s1の波長に相当するカウント値以上カウントした場合には、タイムアウト(Timeout)したとみなして、そのカウントを停止させ、リセットするようにしている。
【0137】
この第3判定部211の動作と同様の動作を、第1の1判定部406aでも実行するようにしている。このため、図12に示されるように、第1の1カウンタ407aが熱信号s2の波長以上カウントした場合には、第1の1判定部406aは、タイムアウトしたとみなして、第1の1カウンタ407aのカウントを停止(OFF)させ、リセットする。
【0138】
一方、第1の2判定部406bは、第1の2カウンタ407bに対して、第1の1判定部406aが第1の1カウンタ407aに対して行う上記制御処理と同様の制御処理を行う。ただし、第1の2判定部406bでは、被計測流体の温度と比較する比較対象が閾値Th21ではなく、閾値Th22である点が異なっている。したがって、第1の2判定部406bが第1の2カウンタ407bに対して行う制御処理についての説明は省略する。
【0139】
図12の例では、被計測流体の温度は閾値Th22を2回超えるので、同図には、時刻T12で、被計測流体の温度が閾値Th22を超え、第1の2カウンタ407bがON状態になった後、時刻T13で、再度被計測流体の温度が閾値Th22を超え、第1の2カウンタ407bがOFF状態になった様子が示されている。
【0140】
第2の1判定部408a及び第2の2判定部408bもそれぞれ、被計測流体の温度と閾値Th21及び閾値Th22とを比較し、被計測流体の温度が閾値Th21及び閾値Th22を超えるタイミングで、第2の1カウンタ409a及び第2の2カウンタ409bに対して、第1の1判定部406a及び第1の2判定部406bがそれぞれ第1の1カウンタ407a及び第1の2カウンタ407bに対して行う上記制御処理と同様の制御処理を行う。したがって、第2の1判定部408a及び第2の2判定部408bがそれぞれ第2の1カウンタ409a及び第2の2カウンタ409bに対して行う制御処理についての説明は省略する。
【0141】
図12の例では、上述のように、被計測流体の温度は、閾値Th21については1回のみ超え、閾値Th22については2回超える。このため、同図には、時刻T14で、被計測流体の温度が閾値Th21を超え、第2の1カウンタ409aがON状態になるものの、その後、タイムアウトとみなされて、カウントの途中で停止されて、リセットされた様子が示されている。そして、同図には、時刻T15で、被計測流体の温度が閾値Th22を超え、第2の2カウンタ409bがON状態になった後、時刻T16で、再度被計測流体の温度が閾値Th22を超え、第2の2カウンタ409bがOFF状態になった様子も示されている。
【0142】
第3判定部411は、第1の1カウンタ407a及び第1の2カウンタ407bのうちのいずれかがカウントを停止すると、当該カウントを停止した方のカウンタのカウント値と上記時間Theatとを比較する。その比較の結果、当該カウント値と時間Theatが等しい場合には、第3判定部411は、第3カウンタ210のカウントを開始(ON)させる。
【0143】
また、第3判定部411は、第2の1カウンタ409a及び第2の2カウンタ409bのうちのいずれかがカウントを停止すると、当該カウントを停止した方のカウンタのカウント値と上記時間Theatとを比較する。その比較の結果、当該カウント値と時間Theatが等しい場合には、第3判定部411は、第3カウンタ210のカウントを停止(OFF)させる。
【0144】
図12には、第1の2カウンタ407bのカウント値a2=時間Theatであるため、第1の2カウンタ407bがカウントを停止した時刻T13で、第3カウンタ210がON状態になり、第2の2カウンタ409bのカウント値b2=時間Theatであるため、第2の2カウンタ409bがカウントを停止した時刻T16で、第3カウンタ210がOFF状態になった様子が示されている。
【0145】
さらに、第3判定部411は、第3カウンタ210のカウント値を出力部212に出力する。
【0146】
図13は、第1の1カウンタ407a及び第2の1カウンタ409aの各カウント値≠時間Theatであり、かつ第1の2カウンタ407b及び第2の2カウンタ409bの各カウント値=時間Theatである場合に、第3カウンタ210のカウント動作を示す図である。
【0147】
上述のように、第3判定部411は、第1の1カウンタ407a及び第1の2カウンタ407bのいずれかがカウントを停止する度に、当該停止したカウンタのカウント値と時間Theatとを比較し、両者が一致したときのみ、第3カウンタ210のカウントを開始(ON)させる。図15の例では、第1の1カウンタ407aが停止したときのカウント値a1≠時間Theatであるので、第3判定部411は、このタイミング(時刻T23)では、第3カウンタ210のカウントを開始させない。その後、第1の2カウンタ407bが停止したときのカウント値a2=時間Theatであるので、第3判定部411は、このタイミング(時刻T24)で、第3カウンタ210のカウントを開始させる。
【0148】
また、上述のように、第3判定部411は、第2の1カウンタ409a及び第2の2カウンタ409bのいずれかがカウントを停止する度に、当該停止したカウンタのカウント値と時間Theatとを比較し、両者が一致したときのみ、第3カウンタ210のカウントを停止(OFF)させる。図13の例では、第2の1カウンタ409aが停止したときのカウント値b1≠時間Theatであるので、第3判定部411は、このタイミング(時刻T27)では、第3カウンタ210のカウントを停止させない。その後、第2の2カウンタ409bが停止したときのカウント値b2=時間Theatであるので、第3判定部411は、このタイミング(時刻T28)で、第3カウンタ210のカウントを停止させる。
【0149】
図14は、すべてのカウンタ407a,407b,409a,409bの各カウント値=時間Theatである場合に、第3カウンタ210のカウント動作を示す図である。
【0150】
上述のように、第3判定部411は、第1の1カウンタ407a及び第1の2カウンタ407bのいずれかがカウントを停止する度に、当該停止したカウンタのカウント値と時間Theatとを比較し、両者が一致したときのみ、第3カウンタ210のカウントを開始(ON)させる。したがって、図14の例では、第1の1カウンタ407aが停止したときのカウント値a1=時間Theatであるので、第3判定部411は、このタイミング(時刻T33)で、第3カウンタ210のカウントを開始させる。つまり、第3判定部411は、第1の2カウンタ407bが停止し、そのカウント値a2=時間Theatであったとしても、そのタイミング(時刻T24)で、第3カウンタ210のカウント動作を制御しない。
【0151】
また、上述のように、第3判定部411は、第2の1カウンタ409a及び第2の2カウンタ409bのいずれかがカウントを停止する度に、当該停止したカウンタのカウント値と時間Theatとを比較し、両者が一致したときのみ、第3カウンタ210のカウントを停止(OFF)させる。したがって、図14の例では、第2の1カウンタ409aが停止したときのカウント値b1=時間Theatであるので、第3判定部411は、このタイミング(時刻T37)では、第3カウンタ210のカウントを停止させる。つまり、第3判定部411は、第2の2カウンタ409bが停止し、そのカウント値b2=時間Theatであったとしても、そのタイミング(時刻T28)で、第3カウンタ210のカウント動作を制御しない。
【0152】
図13の例は、第1の1カウンタ407a及び第2の1カウンタ409aの各カウント値a1,b1がともに時間Theatと等しくなく、第1の2カウンタ407b及び第2の2カウンタ409bの各カウント値a2,b2がともに時間Theatと等しい場合を示している。しかし、第1の2カウンタ407bと第2の1カウンタ409aの各カウント値a2,b1がともに時間Theatと等しくなく、第1の1カウンタ407a及び第2の2カウンタ409bの各カウント値a1,b2がともに時間Theatと等しい場合もあり得る。
【0153】
上記第1実施形態における図8に示す被計測流体を本実施形態の熱線式流量計に適用し、第1の1判定部406a及び第2の1判定部408aに閾値Th12を設定し、第1の2判定部406b及び第2の2判定部408bに閾値Th13を設定したとする。
【0154】
この場合、第1の1カウンタ407aは、時間aをカウントする。この時間aは、時間Theatと等しいので、第3カウンタ210は、時刻T2で、ON状態となる。
【0155】
一方、第2の1カウンタ409aは、タイムアウトするものの、第2の2カウンタ409bは、時間bをカウントする。この時間bは、時間Theatと等しいので、第3カウンタ210は、時刻T4で、OFF状態となる。
【0156】
したがって、本実施形態の熱線式流量計によれば、第1及び第2測温センサ102,103の周囲の温度が変化した場合でも、被計測流体の移動時間を正しく検知することができる。
【0157】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0158】
(1)上記各実施形態では、ヒータ101から、温度変化の山を2つ有するM字状の熱信号を発生させるようにしたが、山の数は、2つに限らず、3つ以上であってもよい。
【0159】
(2)上記第1~第3実施形態では、温度検知部毎に1つのカウンタを用い、上記第4実施形態では、温度検知部毎に2つのカウンタを用いて、被計測流体の温度が閾値を超えてから再度超えるまでの時間をカウントしているが、カウンタの個数は、これに限られる訳ではなく、いくつであってもよい。ただし、カウンタの個数が多くなればなるほど、処理が複雑化し、メモリ容量が増大化する。
【符号の説明】
【0160】
101 ヒータ
102 第1測温センサ
103 第2測温センサ
107 流路
200,300,400 制御回路
201,201′ 制御部
202 熱印加部
203 第1温度検知部
204 第2温度検知部
205 閾値生成部
206,306 第1判定部
208,308 第2判定部
211,311,411 第3判定部
207 第1カウンタ
209 第2カウンタ
210 第3カウンタ
406a 第1の1判定部
406b 第1の2判定部
408a 第2の1判定部
408b 第2の2判定部
407a 第1の1カウンタ
407b 第1の2カウンタ
409a 第2の1カウンタ
409b 第2の2カウンタ
212 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16