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特許7078491ガスセンサ素子、ガスセンサおよびガスセンサ素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】ガスセンサ素子、ガスセンサおよびガスセンサ素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
G01N27/416 371G
G01N27/416 376
G01N27/416 371Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018155442
(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公開番号】P2019144225
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2018029867
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】古田 斉
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲生
(72)【発明者】
【氏名】小島 章敬
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-034814(JP,A)
【文献】特開2013-221930(JP,A)
【文献】特開2010-038806(JP,A)
【文献】特開2012-220293(JP,A)
【文献】特開2012-173146(JP,A)
【文献】特開2011-214853(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0161242(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/406-27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガス中の第1成分および第2成分を検出するガスセンサ素子であって、
軸線方向に延びる長尺形状に形成されて、前記軸線方向の先端に形成される先端面と、前記軸線方向の後端に形成される後端面と、前記先端面から前記後端面に至る複数の側面と、を有する素子本体部と、
前記複数の側面のうち少なくとも1つに形成された多孔質部を介して前記被測定ガスを汲み出しまたは汲み込み、前記第1成分を検出する第1検出部と、
前記多孔質部の先端よりも後端側に備えられ、前記第2成分を検出する第2検出部と、
前記素子本体部のうち前記多孔質部を少なくとも覆う素子保護部と、
を備え、
前記複数の側面は、自身の面上に前記第2検出部が備えられる第2検出側面と、前記第2検出側面ではない通常側面と、を備えており、
前記軸線方向の領域のうち前記第2検出部の形成領域を第2検出領域とし、前記多孔質部の形成領域を多孔質領域とした場合に、
前記素子保護部は、前記通常側面においては、前記多孔質領域および前記多孔質領域よりも先端側の領域を少なくとも覆うように形成され、前記第2検出側面においては、前記第2検出部は覆わず、前記第2検出部より先端側の領域のうち少なくとも一部を覆うように形成されている、
ガスセンサ素子。
【請求項2】
前記素子本体部は、前記第1検出部および前記第2検出部を加熱するヒータを備え、
前記ヒータは、前記軸線方向における前記第1検出部の形成領域および前記第2検出領域の少なくとも一方と重複するように配置された発熱部を備えており、
前記第2検出部は、一対の検知電極を備えており、
前記一対の検知電極は、前記素子本体部の幅方向において、前記発熱部の配置領域よりも内側に配置されている、
請求項1に記載のガスセンサ素子。
【請求項3】
前記素子保護部は、前記素子本体部に当接する内側保護部と、前記内側保護部を覆う外側保護部と、を備えており、
前記内側保護部は、前記外側保護部よりも気孔率が大きい多孔質構造であり、
前記外側保護部は、前記内側保護部よりも後端側において前記素子本体部に当接する、
請求項1または請求項2に記載のガスセンサ素子。
【請求項4】
前記第2検出側面に垂直な高さ方向において、前記素子保護部のうち前記第2検出部よりも高い部分を特定保護部とした場合に、
前記軸線方向における前記第2検出部の先端と前記特定保護部の後端との間隔寸法は、2.0mm以上である、
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載のガスセンサ素子。
【請求項5】
前記第2検出側面のうち、前記第2検出部と前記特定保護部との間の領域に、前記第2検出部よりも高さの低い予備保護層を備える、
請求項4に記載のガスセンサ素子。
【請求項6】
被測定ガス中の第1成分および第2成分を検出するガスセンサ素子と、
前記ガスセンサ素子を保持するハウジングと、
を備えるガスセンサであって、
前記ガスセンサ素子は、請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載のガスセンサ素子である、
ガスセンサ。
【請求項7】
被測定ガス中の第1成分および第2成分を検出するガスセンサ素子の製造方法であって、
前記ガスセンサ素子は、素子本体部と、第1検出部と、第2検出部と、素子保護部と、を少なくとも備えるとともに、請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載のガスセンサ素子であり、
前記素子本体部、前記第1検出部、前記第2検出部を備える素子部材における前記第2検出部を覆うように加熱により消失する消失材を塗布する、または、焼成後に前記素子部材となる未焼成素子部材において、焼成後に前記第2検出部となる焼成前検出部材を覆う
ように前記消失材を塗布する第1ステップと、
前記第1ステップの後、前記素子部材または前記未焼成素子部材のうち、前記第2検出領域および前記第2検出領域よりも先端側の領域の全てを覆うように、焼成後に前記素子保護部となる焼成前保護材料を塗布する第2ステップと、
前記焼成前保護材料を焼成して前記素子保護部を形成するとともに、前記消失材を消失させる第3ステップと、
前記焼成前保護材料の焼成により生成された素子保護部のうち前記第2検出部を覆う部分を除去する第4ステップと、
を有するガスセンサ素子の製造方法。
【請求項8】
被測定ガス中の第1成分および第2成分を検出するガスセンサ素子の製造方法であって、
前記ガスセンサ素子は、素子本体部と、第1検出部と、第2検出部と、素子保護部と、を少なくとも備えるとともに、請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載のガスセンサ素子であり、
当該ガスセンサ素子の製造方法は、焼成により前記素子保護部となる保護部液に対して前記素子本体部を浸漬し、前記素子本体部に前記保護部液を付着させる保護部液付着工程を有しており、
前記保護部液付着工程では、前記第1検出部の前記多孔質部が下側となり、前記第2検出部が上側となるとともに、前記保護部液の液面に対して前記素子本体部が斜めとなる状態で、前記多孔質部が前記保護部液に浸漬され、かつ前記第2検出部が前記保護部液に浸漬されない位置まで、前記素子本体部を下降させることで、前記素子本体部に前記保護部液を付着させる、
ガスセンサ素子の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のガスセンサ素子の製造方法であって、
前記第2検出側面に垂直な高さ方向において、前記素子保護部のうち前記第2検出部よりも高い部分を特定保護部とした場合に、
前記ガスセンサ素子は、前記第2検出部と前記特定保護部との間の領域に、前記第2検出部よりも高さの低い予備保護層を備えており、
前記保護部液付着工程よりも前に実行する工程として、焼成により前記予備保護層となる予備ペーストを前記素子本体部に形成する予備ペースト形成工程を有する、
ガスセンサ素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスセンサ素子、ガスセンサおよびガスセンサ素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象ガスに含まれる特定ガスを検出するガスセンサ素子を備えるガスセンサが知られている。
ガスセンサは、例えば、自動車などの内燃機関の排気管に備えられて、内燃機関の排気ガス中の特定成分(酸素、NOx等)の濃度を検出する用途に用いられる。ガスセンサ素子としては、固体電解質体および電極を有するセルと、セルに対して積層される絶縁保護層と、を備えるものがある。絶縁保護層は、自身の一部に、セルの電極を保護するための多孔質部が埋設された構成のものがある。
【0003】
このようなガスセンサ素子は、多孔質部がセルの電極を覆うように構成されている。多孔質部は、ガスセンサ素子の外部と電極との間におけるガスの通過を許容しつつ、ススなどの異物が電極に直接接触することを抑制することで、電極を保護する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-080684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のガスセンサ素子は、水分が多孔質部に含まれた状態で氷点下まで温度が低下すると、水分の体積変化により生じる応力によってガスセンサ素子(特に絶縁保護層と多孔質部との境界)が破損(クラック発生など)する場合がある。
【0006】
つまり、ガスセンサの設置場所が水分の多い環境である場合には、多孔質部に水分が含まれて、温度低下により水分の体積変化が生じてガスセンサ素子が破損する場合がある。例えば、内燃機関の排気管は、冬季のような低温環境下では内燃機関の停止期間中に凝縮水が発生しやすく、内燃機関の始動時に排気ガスとともに凝縮水がガスセンサに到達して、多孔質部に水分が含まれる場合がある。
【0007】
そこで、本開示は、多孔質部を有する絶縁保護層を備えるガスセンサ素子において、低温環境下で使用する場合でも破損が生じがたいガスセンサ素子を提供すること、そのようなガスセンサ素子を備えるガスセンサを提供すること、およびそのようなガスセンサ素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、被測定ガス中の第1成分および第2成分を検出するガスセンサ素子であって、素子本体部と、第1検出部と、第2検出部と、素子保護部と、を備える。
素子本体部は、軸線方向に延びる長尺形状に形成されて、軸線方向の先端に形成される先端面と、軸線方向の後端に形成される後端面と、先端面から後端面に至る複数の側面と、を有する。第1検出部は、複数の側面のうち少なくとも1つに形成された多孔質部を介して被測定ガスを汲み出しまたは汲み込み、第1成分を検出する。第2検出部は、多孔質部の先端よりも後端側に備えられ、第2成分を検出する。素子保護部は、素子本体部のうち多孔質部を少なくとも覆うように構成されている。
【0009】
複数の側面は、自身の面上に第2検出部が備えられる第2検出側面と、第2検出側面ではない通常側面と、を備えている。
軸線方向の領域のうち第2検出部の形成領域を第2検出領域とし、多孔質部の形成領域を多孔質領域とした場合に、素子保護部は、通常側面においては、多孔質領域および多孔質領域よりも先端側の領域を少なくとも覆うように形成され、第2検出側面においては、第2検出部は覆わず、第2検出部より先端側の領域のうち少なくとも一部を覆うように形成されている。
【0010】
つまり、このガスセンサ素子は、多孔質部と多孔質部よりも先端領域を覆う素子保護部を備える。素子保護部が温度低下及び温度上昇の熱衝撃を和らげる為、多孔質部または多孔質部の境界で発生する破損を抑制することができる。また、素子保護部は、第2検出部を覆うことなく、第1検出部の多孔質部を覆うように形成される。これにより、第2検出部に到達しようとする被測定ガスが素子保護部によって遮られることがなくなる。
【0011】
よって、このガスセンサ素子は、素子保護部が熱衝撃を緩和するため、ガスセンサ素子の破損を抑制できる。また、被測定ガスが第2検出部に到達しやすくなるため、第2検出部での検出精度の低下を抑制できる。
【0012】
なお、多孔質部は、複数の側面のうち素子本体部を軸線方向に2等分した2つの領域のうち先端領域に形成されている。
次に、本開示のガスセンサ素子においては、素子本体部は第1検出部および第2検出部を加熱するヒータを備えてもよい。
【0013】
ヒータは、発熱部を備えている。発熱部は、軸線方向における第1検出部の形成領域および第2検出領域の少なくとも一方と重複するように配置されている。
第2検出部は、一対の検知電極を備えている。一対の検知電極は、素子本体部の幅方向において、発熱部の配置領域よりも内側に配置されている。
【0014】
このように構成された一対の検知電極は、発熱部の配置領域よりも広い領域に配置される場合に比べて、全体が発熱部の熱を受け取りやすくなる。
よって、このガスセンサ素子は、一対の電極における温度分布に偏りが生じるのを抑制でき、第2検出部の検出精度が低下することを抑制できる。
【0015】
次に、本開示のガスセンサ素子においては、素子保護部は、素子本体部に当接する内側保護部と、内側保護部を覆う外側保護部と、を備えてもよい。
内側保護部は、外側保護部よりも気孔率が大きい多孔質構造である。外側保護部は、内側保護部よりも後端側において素子本体部に当接する。
【0016】
このガスセンサ素子は、内側保護層の気孔率が外側保護部の気孔率よりも大きい構成を採ることで、多孔質部と内側保護層との間でのガスの移動量が少なくなりすぎるのを抑制できる。
【0017】
次に、本開示のガスセンサ素子においては、第2検出側面に垂直な高さ方向において、素子保護部のうち第2検出部よりも高い部分を特定保護部とした場合に、軸線方向における第2検出部の先端と特定保護部の後端との間隔寸法は、2.0mm以上であってもよい。
【0018】
このように、第2検出部の先端が特定保護部の後端から一定距離以上離れるように、素子保護部を形成することで、第2検出部への被測定ガスの供給における素子保護部の影響を低減できる。つまり、このガスセンサ素子は、素子保護部が無い場合と比べて、第2検出部に供給される被測定ガスの量が低減するのを抑制でき、素子保護部を備えつつ第2検出部でのガス検出が良好になる。
【0019】
次に、本開示のガスセンサ素子においては、第2検出側面のうち、第2検出部と特定保護部との間の領域に、第2検出部よりも高さの低い予備保護層を備えてもよい。このような予備保護層を備えることで、素子本体部(第2検出側面)を保護しつつ、第2検出部に供給される被測定ガスの量が低減するのを抑制できる。
【0020】
なお、予備保護層は、素子保護部と同じ材料で形成しても良いし、素子保護部と異なる材料で形成しても良い。予備保護層は、素子本体部を破損から保護できるものであれば任意の材料を用いることができる。
【0021】
次に、本開示の他の態様は、被測定ガス中の第1成分および第2成分を検出するガスセンサ素子と、ガスセンサ素子を保持するハウジングと、を備えるガスセンサであって、ガスセンサ素子が上述のうちいずれかのガスセンサ素子である。
【0022】
このようなガスセンサは、上述のガスセンサ素子と同様に、被測定ガスが第2検出部に到達しやすくなるため、第2検出部での検出精度の低下を抑制できる。
次に、本開示の他の態様は、被測定ガス中の第1成分および第2成分を検出するガスセンサ素子の製造方法であって、ガスセンサ素子は、素子本体部と、第1検出部と、第2検出部と、素子保護部と、を少なくとも備えるとともに、上述のうちいずれかのガスセンサ素子であり、ガスセンサ素子の製造方法は、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップと、第4ステップと、を有する。
【0023】
第1ステップでは、素子本体部、第1検出部、第2検出部を備える素子部材における第2検出部を覆うように加熱により消失する消失材を塗布するか、または、焼成後に素子部材となる未焼成素子部材において、焼成後に第2検出部となる焼成前検出部材を覆うように消失材を塗布する。
【0024】
第2ステップでは、第1ステップの後、素子部材または未焼成素子部材のうち、第2検出領域および第2検出領域よりも先端側の領域の全てを覆うように、焼成後に前記素子保護部となる焼成前保護材料を塗布する。第3ステップでは、焼成前保護材料を焼成して素子保護部を形成するとともに、消失材を消失させる。第4ステップでは、焼成前保護材料の焼成により生成された素子保護部のうち第2検出部を覆う領域を除去する。
【0025】
この製造方法では、第1ステップ、第3ステップおよび第4ステップを有することで、第2ステップにおいて焼成前保護材料を塗布するにあたり、第2検出領域および第2検出領域よりも先端側の領域の全てを覆うように、焼成前保護材料を塗布することができる。つまり、第2検出部を覆わない素子保護部を備えるガスセンサ素子の製造にあたり、焼成前保護材料の塗布作業において第2検出部を避けるなどの特別対応が必要ないため、作業負担の増加を抑制できる。
【0026】
また、この製造方法により得られるガスセンサ素子は、上述のガスセンサ素子と同様に、素子保護部が熱衝撃を緩和するため、ガスセンサ素子の破損を抑制できる。また、被測定ガスが第2検出部に到達しやすくなるため、第2検出部での検出精度の低下を抑制できる。
【0027】
次に、本開示の他の態様は、被測定ガス中の第1成分および第2成分を検出するガスセンサ素子の製造方法であって、保護部液付着工程を有している。
ガスセンサ素子は、素子本体部と、第1検出部と、第2検出部と、素子保護部と、を少なくとも備えるとともに、上述のうちいずれかに記載のガスセンサ素子である。
【0028】
保護部液付着工程は、焼成により素子保護部となる保護部液に対して素子本体部を浸漬し、素子本体部に保護部液を付着させる工程である。保護部液付着工程では、第1検出部の多孔質部が下側となり、第2検出部が上側となるとともに、保護部液の液面に対して素子本体部が斜めとなる状態で、多孔質部が保護部液に浸漬され、かつ第2検出部が保護部液に浸漬されない位置まで、素子本体部を下降させることで、素子本体部に保護部液を付着させる。
【0029】
これにより、第2検出部を覆うようにカーボン(昇華材)を設ける工程と、素子保護部を除去する工程と、を行うことなく、多孔質領域は覆いつつ第2検出部は覆わない素子保護部を形成することができる。よって、このガスセンサ素子の製造方法によれば、工程を簡略化することができ、ガスセンサ素子の製造の煩雑さを軽減できる。
【0030】
次に、本開示のガスセンサ素子の製造方法においては、ガスセンサ素子が予備保護層を備える場合には、予備ペースト形成工程を有してもよい。予備保護層は、第2検出側面のうち、第2検出部と特定保護部との間の領域に設けられた保護層であり、第2検出部よりも高さの低い保護層である。予備ペースト形成工程は、保護部液付着工程よりも前に実行する工程であり、焼成により予備保護層となる予備ペーストを素子本体部に形成する工程である。
【0031】
これにより、素子保護部に加えて予備保護層を設けることができ、第2検出側面のうち第2検出部と特定保護部との間の領域における素子本体部に破損が生じるのを抑制できる。つまり、先に予備ペースト形成工程を行い、その後、保護部液付着工程を行うことで、素子本体部(第2検出側面)を保護しつつ、第2検出部に供給される被測定ガスの量が低減するのを抑制できるガスセンサ素子を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】マルチガスセンサの内部構造を示す断面図である。
図2】マルチガス検出装置1の概略構成を示す図である。
図3】第1アンモニア検出部と第2アンモニア検出部の構造を示す断面図である。
図4】センサ素子部の外観を表した斜視図である。
図5】センサ素子部の先端部分のうち第1アンモニア検出部および第2アンモニア検出部が備えられる部分を拡大した斜視図である。
図6】ヒータの発熱部とアンモニア検出部における一対の電極との相対位置を説明するための模式図である。
図7】素子保護部の形成方法における(A)第1ステップから(D)第4ステップまでを段階的に示した説明図である。
図8】第2実施形態の第2センサ素子部の先端部分の構成を示す説明図である。
図9】第2センサ素子部における予備保護層および保護層(第1アンモニア検出部、第2アンモニア検出部)の形成位置を示す説明図である。
図10】保護部液付着工程において、第2素子保護部が形成される前段階の第2センサ素子部を、容器に貯められた保護部液に浸漬する状態を表した説明図である。
図11】間隔寸法D1に対するガス流速率の変化状態をシミュレーション解析した解析結果である。
図12】第1実施形態のセンサ素子部および第2実施形態の第2センサ素子部のガス検出精度を比較した測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
尚、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0034】
[1.第1実施形態]
[1-1.全体構成]
第1実施形態として、自動車などの内燃機関に備えられるマルチガスセンサ2について説明する。
【0035】
マルチガスセンサ2は、図1に示すような構成であり、酸素濃度、NOx濃度およびアンモニア濃度(NH濃度)を検出するように構成されている。マルチガスセンサ2は、マルチガス検出装置1の一部を構成する。
【0036】
マルチガス検出装置1は、車両に搭載され、ディーゼルエンジンから排出される排気ガスに含まれる窒素酸化物を浄化する尿素SCRシステムに用いられるものである。より具体的には、マルチガス検出装置1は、排気ガスに含まれるアンモニア、二酸化窒素および窒素酸化物の濃度を検出する。以下、マルチガス検出装置1を搭載する車両を自車両という。二酸化窒素および窒素酸化物をそれぞれ、NOおよびNOxともいう。また、SCRは、Selective Catalytic Reductionの略である。
【0037】
マルチガス検出装置1は、マルチガスセンサ2と、図2に示す制御部3とを備える。
制御部3は、自車両に搭載された電子制御装置200(ECU200ともいう)と電気的に接続されている。電子制御装置200は、制御部3で算出された排気ガス中のNO濃度、NOx濃度およびアンモニア濃度(NH濃度)を示すデータを受信し、受信データに基づいてディーゼルエンジンの運転状態の制御処理を実行したり、触媒に蓄積されたNOxの浄化処理を実行したりする。
【0038】
[1-2.マルチガスセンサ]
マルチガスセンサ2は、図1に示すように、センサ素子部5と、主体金具10と、セパレータ34と、接続端子38とを備える。なお、以下の説明では、マルチガスセンサ2のセンサ素子部5が配置されている側(すなわち、図1の下側)を先端側、接続端子38が配置されている側(すなわち、図1の上側)を後端側という。
【0039】
センサ素子部5は、軸線O方向に延びる板形状を有する。センサ素子部5の後端には電極端子部5A,5Bが配置されている。図1においては、図示を容易にするために、センサ素子部5に形成された電極端子部を、電極端子部5Aおよび電極端子部5Bのみとしているが、実際には、後述するNOx検出部101、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103が有する電極等の数に応じて複数の電極端子部が形成されている。
【0040】
主体金具10は、マルチガスセンサ2をディーゼルエンジンの排気管に固定するネジ部11が外表面に形成された筒状の部材である。主体金具10は、軸線O方向に貫通する貫通孔12と、貫通孔12の径方向内側に突出する棚部13とを備える。棚部13は、貫通孔12の径方向外側から中心に向かって先端側へ近づく傾きを有する内向きのテ―パ面として形成されている。
【0041】
主体金具10は、センサ素子部5の先端側を、貫通孔12から先端側に突出させ、センサ素子部5の後端側を貫通孔12の後端側に突出させた状態で保持する。
主体金具10の貫通孔12の内部には、先端側から後端側に向かって順に、センサ素子部5の径方向周囲を取り囲む筒状の部材であるセラミックホルダ14と、粉末充填層である滑石リング15,16と、セラミックスリーブ17とが積層されている。
【0042】
セラミックスリーブ17と主体金具10の後端側の端部との間には、加締めパッキン18が配置されている。セラミックホルダ14と主体金具10の棚部13との間には、金属ホルダ19が配置されている。金属ホルダ19は、内部に滑石リング15とセラミックホルダ14が収容され、滑石リング15が圧縮充填されることによって金属ホルダ19と滑石リング15とは気密状に一体化されている。主体金具10の後端側の端部は、加締めパッキン18を介してセラミックスリーブ17を先端側に向かって押し付けるように加締められる部分である。また、滑石リング16が主体金具10の内部で圧縮充填されることで、主体金具10の内周面とセンサ素子部5の外周面との間の気密が確保されている。
【0043】
主体金具10の先端側の端部には、ガス流通孔付きの外部プロテクタ21およびガス流通孔付きの内部プロテクタ22が設けられている。外部プロテクタ21および内部プロテクタ22は、先端側の端部が閉塞されたステンレス鋼などの金属材料から形成された筒状の部材である。内部プロテクタ22は、センサ素子部5の先端側の端部を覆った状態で主体金具10に溶接され、外部プロテクタ21は、内部プロテクタ22を覆った状態で主体金具10に溶接されている。
【0044】
主体金具10の後端側の端部外周には、筒状に形成された外筒31の先端側の端部が溶接によって固定されている。さらに、外筒31の後端側の端部である開口には、この開口を閉塞するグロメット32が配置されている。
【0045】
グロメット32には、リード線41が挿入されるリード線挿入孔33が形成されている。リード線41は、センサ素子部5の電極端子部5Aおよび電極端子部5Bに電気的に接続される。
【0046】
セパレータ34は、センサ素子部5の後端側に配置された筒状に形成された部材である。セパレータ34の内部に形成された空間は、軸線O方向に貫通する挿入孔35である。セパレータ34の外表面には、径方向外側に突出する鍔部36が形成されている。
【0047】
セパレータ34の挿入孔35には、センサ素子部5の後端部が挿入され、電極端子部5A,5Bがセパレータ34の内部に配置される。
セパレータ34と外筒31との間には、筒状に形成された金属製の保持部材37が配置されている。保持部材37は、セパレータ34の鍔部36と接触するとともに外筒31の内面と接触することにより、セパレータ34を外筒31に対して固定した状態で保持する。
【0048】
接続端子38は、セパレータ34の挿入孔35内に配置される部材であり、センサ素子部5の電極端子部5Aおよび電極端子部5Bと、リード線41とをそれぞれ独立に電気的に接続する導電部材である。なお、図1では、図示を容易にするために、2つの接続端子38のみが図示されている。
【0049】
センサ素子部5は、NOx検出部101と、第1アンモニア検出部102と、第2アンモニア検出部103と、素子保護部124と、を備える。なお、第2アンモニア検出部103は、図2には示されておらず、図3に示されている。第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103は、NOx検出部101の長手方向(すなわち、図2の左右方向)における基準電極143と略同位置において、NOx検出部101の幅方向(すなわち、図2の奥行き方向)における位置が互いに異なるように並列に配置されている。このため、図2では、第1アンモニア検出部102と第2アンモニア検出部103のうち、第1アンモニア検出部102のみを示している。
【0050】
NOx検出部101は、絶縁層113、セラミック層114、絶縁層115、セラミック層116、絶縁層117、セラミック層118、絶縁層119および絶縁層120が順次積層されて構成されている。絶縁層113,115,117,119,120、および、セラミック層114,116,118は、アルミナを主体として形成されている。
【0051】
NOx検出部101は、セラミック層114とセラミック層116との間に形成される第1測定室121を備える。NOx検出部101は、第1測定室121に隣接するようにしてセラミック層114とセラミック層116との間に配置された拡散抵抗体122を介して、外部から第1測定室121の内部に排気ガスを導入する。拡散抵抗体122は、アルミナ等の多孔質材料で形成されている。
【0052】
NOx検出部101は、第1ポンピングセル130を備える。第1ポンピングセル130は、固体電解質層131と、ポンピング電極132,133を備える。
固体電解質層131は、酸素イオン導電性を有するジルコニアを主体として形成されている。第1測定室121と接触する領域における一部分のセラミック層114が除去され、固体電解質層131が充填(埋設)されている。
【0053】
ポンピング電極132,133は、白金を主体として形成されている。ポンピング電極132は、固体電解質層131において第1測定室121と接触する面上に配置される。ポンピング電極133は、固体電解質層131を挟んでポンピング電極132とは反対側で固体電解質層131の面上に配置される。ポンピング電極133が配置された領域とその周辺の領域の絶縁層113は除去され、多孔質体134が充填される。多孔質体134は、ポンピング電極133と外部との間でガス(例えば、酸素)の出入りを可能とする。
【0054】
NOx検出部101は、酸素濃度検出セル140を備える。酸素濃度検出セル140は、固体電解質層141と、検知電極142と、基準電極143を備える。
固体電解質層141は、酸素イオン導電性を有するジルコニアを主体として形成されている。固体電解質層131よりも後端側(すなわち、図2の右側)の領域における一部分のセラミック層116が除去され、固体電解質層141が充填(埋設)されている。
【0055】
検知電極142と基準電極143は、白金を主体として形成されている。検知電極142は、固体電解質層141における第1測定室121と接触する面上に配置される。基準電極143は、固体電解質層141を挟んで検知電極142とは反対側で固体電解質層141の面上に配置される。
【0056】
NOx検出部101は、基準酸素室146を備える。基準酸素室146は、基準電極143が配置された領域とその周辺の領域の絶縁層117が除去されることにより形成された貫通孔である。
【0057】
NOx検出部101は、第1測定室121の下流側に第2測定室148を備える。第2測定室148は、検知電極142および基準電極143よりも後端側で固体電解質層141および絶縁層117を貫通して形成される。NOx検出部101は、第1測定室121から排出された排気ガスを第2測定室148の内部に導入する。
【0058】
NOx検出部101は、第2ポンピングセル150を備える。第2ポンピングセル150は、固体電解質層151と、ポンピング電極152,153を備える。
固体電解質層151は、酸素イオン導電性を有するジルコニアを主体として形成されている。基準酸素室146および第2測定室148と接触する領域とその周辺の領域のセラミック層118が除去され、セラミック層118の代わりに固体電解質層151が充填(埋設)されている。
【0059】
ポンピング電極152,153は、白金を主体として形成されている。ポンピング電極152は、固体電解質層151において第2測定室148と接触する面上に配置される。ポンピング電極153は、基準酸素室146を挟んで基準電極143とは反対側で固体電解質層151の面上に配置される。基準酸素室146の内部において、ポンピング電極153を覆うように多孔質体147が配置されている。
【0060】
NOx検出部101は、ヒータ160を備える。ヒータ160は、白金を主体として形成され、通電されることで発熱する発熱抵抗体であり、絶縁層119と絶縁層120との間に配置される。
【0061】
第1アンモニア検出部102は、NOx検出部101の外表面、より具体的には、絶縁層120の上に形成されている。第1アンモニア検出部102は、NOx検出部101における基準電極143と軸線O方向(すなわち、図2の左右方向)における同位置に配置されている。
【0062】
第1アンモニア検出部102は、絶縁層120の上に形成される第1基準電極211と、第1基準電極211の表面および側面を覆う第1固体電解質体212と、第1固体電解質体212の表面に形成される第1検知電極213とを備える。同様に、第2アンモニア検出部103は、図3に示すように、絶縁層120の上に形成される第2基準電極221と、第2基準電極221の表面および側面を覆う第2固体電解質体222と、第2固体電解質体222の表面に形成される第2検知電極223とを備える。
【0063】
第1基準電極211および第2基準電極221は、電極材として白金を主体に構成されており、具体的には、Ptおよび酸化ジルコニウムを含む材料から構成されている。第1固体電解質体212および第2固体電解質体222は、イットリア安定化ジルコニア等の酸素イオン伝導性材料で構成されている。第1検知電極213および第2検知電極223は、電極材として金を主体に構成されており、具体的には、Auおよび酸化ジルコニウムを含む材料から構成されている。なお、第1検知電極213および第2検知電極223の電極材は、アンモニアに対する感度とNOに対する感度との比が第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103において異なるように、選択されている。
【0064】
また、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103は、多孔質材料を用いた保護層230によって一体に覆われている。保護層230は、第1検知電極213および第2検知電極223への被毒物質の付着を防止するとともに、外部から第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103に流入するアンモニアの拡散速度を調整するものである。このように、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103は混成電位式のセンシング部として機能する。
【0065】
[1-3.素子保護部]
センサ素子部5は、図2および図4に示すように、NOx検出部101の先端側領域を覆う素子保護部124を備えている。
【0066】
素子保護部124は、多孔質構造であり、ガスが通過可能に構成されている。
素子保護部124は、NOx検出部101のうち少なくとも多孔質体134を覆うように形成されている。素子保護部124は、NOx検出部101のうち拡散抵抗体122も覆っている。
【0067】
NOx検出部101は、自身の外表面として、先端面101aと、後端面101bと、3つの通常側面101cと、1つのアンモニア検出側面101dと、を備える。3つの通常側面101cは、多孔質体134が露出する通常側面101cと、その両側に連なる2つの通常側面101cである。アンモニア検出側面101dは、第1アンモニア検出部102と第2アンモニア検出部103とが形成されている。
【0068】
NOx検出部101における軸線方向の領域のうち、第1アンモニア検出部102(第2アンモニア検出部103)(詳細には、保護層230)の形成領域を第2検出領域RE2と定義し、第2検出領域RE2よりも先端側の領域を第1検出領域RE1と定義し、第2検出領域RE2よりも後端側の領域を第3検出領域RE3と定義する。また、多孔質体134の形成領域を第4検出領域RE4と定義し、第4検出領域RE4よりも先端側の領域を第5検出領域と定義し、第4検出領域RE4よりも 後端側の領域を第6検出領域RE6と定義する。ここで、軸線方向において、第2検出領域RE2の先端は、第4検出領域RE4の後端よりも先端側に位置しており、第2検出領域RE2の一部と第4検出領域RE4の一部とが重複する。
【0069】
なお、多孔質体134は、複数の側面(3つの通常側面101cおよび1つのアンモニア検出側面101d)のうちNOx検出部101を軸線方向に2等分した2つの領域のうち先端領域に形成されている。また、第1検出領域RE1は、NOx検出部101のうち先端面101aの全部と側面の一部(3つの通常側面101cの一部および1つのアンモニア検出側面101dの一部)である。
【0070】
素子保護部124は、3つの通常側面101cにおいては、第4検出領域RE4および第5検出領域RE5を少なくとも覆うように形成されている。さらに、素子保護部124は、3つの通常側面101cにおいては、第6検出領域RE6の一部を覆うように構成されている。詳細には、素子保護部124は、第2ポンピングセル150の形成領域を少なくとも覆うように形成されている。ここで、素子保護部124が第4検出領域RE4および第6検出領域RE6の少なくとも一部を覆う事で、多孔質体134と絶縁層113との境界も素子保護部124により覆われる。
【0071】
素子保護部124は、図2および図5に示すように、アンモニア検出側面101dにおいては、第1アンモニア検出部102(第2アンモニア検出部103)(詳細には、保護層230)は覆わず、第1検出領域RE1のうち少なくとも一部を覆うように形成されている。また、素子保護部124は、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103の幅方向外側に形成される連通部124cを有している。この連通部124cは、素子保護部124のうちアンモニア検出側面101dの上に形成される部分であって、アンモニア検出側面101dのうち第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103を除く領域に形成される。また、連通部124cは、素子保護部124のうち通常側面101cに形成される部分に連通する形態で備えられる。素子保護部124は、連通部124cを有することで、通常側面101cおよびアンモニア検出側面101dからの剥離を低減できる。
【0072】
つまり、センサ素子部5は、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103を覆うことなく、多孔質体134(NOx検出部101の多孔質部)を覆うように形成された素子保護部124を備える。これにより、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103に到達しようとする排気ガス(被測定ガス)が素子保護部124によって遮られることがなくなる。
【0073】
素子保護部124は、図2に示すように、NOx検出部101に当接する内側保護部124aと、内側保護部124aを覆う外側保護部124bと、を備える。
内側保護部124aは、アルミナを用いて構成されており、気孔率が70%の多孔質構造である。外側保護部124bは、アルミナを用いて構成されており、気孔率が46%の多孔質構造である。つまり、内側保護部124aは、外側保護部124bよりも気孔率が大きい多孔質構造である。
【0074】
外側保護部124bは、3つの通常側面101cにおいては、内側保護部124aよりも後端側においてNOx検出部101に当接する。
[1-4.アンモニア検出部およびヒータ部]
NOx検出部101は、上述のように、ヒータ160を備えている。
【0075】
ヒータ160は、第1ポンピングセル130、酸素濃度検出セル140、第2ポンピングセル150、第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103を加熱する。
ヒータ160は、図6に示すように、発熱部160aと、一対のヒータリード部160bと、を備える。発熱部160aは、ヒータリード部160bを介した電流通電により発熱する発熱抵抗体を用いて構成されている。
【0076】
発熱部160aは、軸線方向において、「第1ポンピングセル130、酸素濃度検出セル140、第2ポンピングセル150の形成領域」および「第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103の形成領域」のうち少なくとも一方と重複するように配置されている。
【0077】
発熱部160aは、NOx検出部101の幅方向において、NOx検出部101の中心軸C1を中央として幅方向(図6の上下方向)にヒータ幅寸法L1ずつ拡がる配置領域の内側に配置されている。
【0078】
第1アンモニア検出部102は、一対の検知電極(第1基準電極211,第1検知電極213)を備えている。第2アンモニア検出部103は、一対の検知電極(第2基準電極221,第2検知電極223)を備えている。
【0079】
第1アンモニア検出部102における一対の電極(第1基準電極211と第1検知電極213)、および、第2アンモニア検出部103における一対の電極(第2基準電極221と第2検知電極223。)は、NOx検出部101の幅方向において、NOx検出部101の中心軸C1を中央として幅方向(図6の上下方向)に検知幅寸法L2ずつ拡がる配置領域の内側に配置されている。
【0080】
検知幅寸法L2は、ヒータ幅寸法L1よりも小さい。つまり、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103におけるそれぞれの一対の電極は、NOx検出部101の幅方向において、発熱部160aの配置領域の内側に配置されている。
【0081】
このように構成された第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103におけるそれぞれの一対の電極は、発熱部160aの配置領域よりも広い領域に配置される場合に比べて、全体が発熱部160aの熱を受け取りやすくなる。
【0082】
[1-5.センサ素子部の製造方法]
センサ素子部5の製造方法について説明する。
最初に、センサ素子部5のベースとなるNOx検出部101、第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103の製造方法について説明する。
【0083】
まず、イットリアの安定化剤を固溶させたジルコニア粉末に、アルミナ粉末20質量%を含有させ、バインダ(ポリビニルブチラール)と共に混練した生素地を用いて、固体電解質層および固体電解質体となる未焼成固体電解質シートを作製する。なお、この未焼成固体電解質シートは複数の固体電解質層や固体電解質体を切り出すことができる大きさである。
【0084】
また、アルミナ粉末を、バインダ(ポリビニルブチラール)と共に混練した生素地を用いて、焼成後に絶縁層またはセラミック層となる未焼成アルミナシートを作製する。なお、焼成後にスルーホール(図示省略)を有する絶縁層またはセラミック層となる未焼成アルミナシートにおいては、スルーホールとなる貫通孔を形成する。
【0085】
焼成後にセラミック層となる未焼成アルミナシートにおいては、固体電解質層などを配置するための開口部を形成する。この未焼成アルミナシートの開口部に対して未焼成固体電解質シートを埋設(または、生素地を充填)した後、シート上の所定領域に、白金を主体とする導電ペーストを所定のパターンに印刷し、乾燥させて、電極(ポンピング電極132,133など)やリード部となる導体パターンを形成する。スルーホールとなる貫通孔を有する未焼成アルミナシートにおいては、貫通孔の内壁面に対して導電ペーストを施す。これにより、焼成後にセラミック層となる未焼成アルミナシートを得られる。
【0086】
また、ヒータ160が形成される未焼成アルミナシートにおいては、所定領域に、前述と同様の導電ペーストを所定のパターン形状に印刷・乾燥し、発熱部160aおよびヒータリード部160bとなる導電パターンを形成すると共に、スルーホールとなる貫通孔の内壁面に対して導体ペーストを充填する。この未焼成アルミナシートの導電パターンが印刷された面に対して、別の未焼成アルミナシートを積層・減圧圧着することにより、ヒータ用未焼成シートを得られる。
【0087】
そして、焼成後に絶縁層となる未焼成アルミナシート、焼成後にセラミック層となる未焼成アルミナシート、ヒータ用未焼成シートなどを所定の順番で積層し、減圧圧着して組立体を得る。
【0088】
このとき、アルミナ粉末、造孔剤としてのカーボン粉末、ポリビニルブチラールからなるバインダ、分散剤を混合したスラリーを、多孔質体134や拡散抵抗体122などが形成される部位に充填する。また、造孔剤としてのカーボン粉末を混合したスラリーを、第1測定室121および第2測定室148などが形成される部位に充填する。
【0089】
そして、この組立体を公知の手法により切断し、複数(例えば、10個)の未焼成積層体を切り出す。そして、この未焼成積層体を大気雰囲気下にて脱脂し脱バインダ処理した後、1500℃で1時間焼成することで、NOx検出部101が得られる。
【0090】
この後、NOx検出部101の所定位置に、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103を形成する。第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103を形成した後、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103を覆うように、保護層230を形成する。
【0091】
なお、第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103、保護層230の製造方法は、公知の製造方法を採用できるため、ここでは詳細な説明は省略する。
このようにして、素子保護部124が形成される前段階のセンサ素子部5(換言すれば、NOx検出部101、第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103、保護層230を備える素子部材)が得られる。
【0092】
次に、素子保護部124の形成方法について説明する。
まず、第1ステップでは、図7(A)に示すように、素子保護部124が形成される前段階のセンサ素子部5(NOx検出部101、第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103、保護層230を備える素子部材)において、保護層230(第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103)を覆うように、消失材171を塗布する。消失材171は、カーボン粉末を主体とするスラリーである。
【0093】
次の第2ステップでは、図7(B)に示すように、第1ステップの後、素子部材のうち、第2検出領域RE2および第1検出領域RE1の全てを覆うとともに、第3検出領域RE3の一部を覆うように、焼成前保護材料124pを塗布する。焼成前保護材料124pは、焼成後に素子保護部124となる材料であり、スラリー液である。
【0094】
このスラリー液は、アルミナ粉末(平均粒径<1μm)、アルミナ繊維(平均繊維長さ50μm)、カーボン粉末(平均粒径20μm)、アルミナゾル(外配合)に、有機溶剤(例えばエタノール、プロピレングリコール、ブチルカルビトール)を添加し、攪拌し、適度な粘度となるように調整して調製した。なお、スラリー液の各成分の含有量は、例えば、アルミナ粉末(平均粒径<1μm)とアルミナ繊維(平均繊維長さ50μm)の合計量60~80体積%、カーボン粉末(平均粒径20μm)20~40体積%、アルミナゾル(外配合)10重量%である。
【0095】
なお、スラリー液を構成する粉末の平均粒径は、レーザー回折散乱法によって求め、セラミック繊維長さはスラリー液に混合する前にセラミック繊維それぞれの長さを平均化して求めることができる。
【0096】
焼成前保護材料124pは、焼成後に内側保護部124aとなる焼成前内側材料124apと、焼成後に外側保護部124bとなる焼成前外側材料124bpと、を備える。なお、焼成前内側材料124apおよび焼成前外側材料124bpのそれぞれにおける各成分の含有量を調整することで、焼成後の内側保護部124aおよび外側保護部124bそれぞれの気孔率を異なる値に制御できる。例えば、気孔化材としてのカーボン粉末の含有量を調整することで、内側保護部124aの気孔率を外側保護部124bの気孔率よりも大きくするように制御できる。
【0097】
第2ステップでは、まず、素子部材(素子保護部124が形成される前段階のセンサ素子部5)の先端を、焼成前内側材料124apのスラリー液に漬けて、素子部材の先端の周囲に所定厚み(例えば、100μm)の内側塗布層を形成する。この後、内側塗布層における余分な有機溶剤を消失させるために、内側塗布層を備えた素子部材を、20~200℃に設定した乾燥機内に配置し、数時間乾燥させる。
【0098】
次に、乾燥した内側塗布層が形成された素子部材の先端を、焼成前外側材料124bpのスラリー液に漬けて、素子部材の先端の周囲に所定厚み(例えば、400μm)の外側塗布層を形成する。厚み寸法の制御は、例えば、スラリー液へ漬ける回数やスラリー液の粘度などの調整により実現できる。この後、外側塗布層における余分な有機溶剤を消失させるために、外側塗布層を備えた素子部材を、20~200℃に設定した乾燥機内に配置し、数時間乾燥させる。
【0099】
次の第3ステップでは、図7(C)に示すように、内側塗布層及び外側塗布層を備えた素子部材を、大気中において900~1100℃で3時間焼成することで、内側保護部124aおよび外側保護部124bを有する素子保護部124が得られる。この焼成時に、消失材171が高温により消失することで、保護層230(第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103)と素子保護部124の内面との間に空間が設けられる。
【0100】
次の第4ステップでは、図7(D)に示すように、焼成前保護材料124p(焼成前内側材料124ap、焼成前外側材料124bp)の焼成により生成された素子保護部124(内側保護部124a、外側保護部124b)のうち、保護層230(第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103)を覆う部分を除去する。素子保護部124の一部の除去作業は、例えば、レーザー加工機や超音波カッターなどを用いて実現できる。
【0101】
これにより、保護層230(第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103)が露出するとともに、素子保護部124が形成されたセンサ素子部5が得られる。
なお、ここでは、内側塗布層および外側塗布層の形成後に同時焼成したが、内側塗布層を焼成した後に、外側塗布層を焼成してもよい。
【0102】
そして、上述した方法によって製造されたセンサ素子部5を、所定の方法に従ってハウジング(主体金具10、外筒31など)に組み付けることによりマルチガスセンサ2を製造することができる。
【0103】
[1-6.制御部]
図2に示すように、制御部3は、制御回路180と、マイクロコンピュータ190(以下、マイコン190)を備える。
【0104】
制御回路180は、回路基板上に配置されたアナログ回路である。制御回路180は、Ip1ドライブ回路181、Vs検出回路182、基準電圧比較回路183、Icp供給回路184、Vp2印加回路185、Ip2検出回路186、ヒータ駆動回路187および起電力検出回路188を備える。
【0105】
そして、ポンピング電極132、検知電極142およびポンピング電極152は、基準電位に接続される。ポンピング電極133は、Ip1ドライブ回路181に接続される。基準電極143は、Vs検出回路182とIcp供給回路184に接続される。ポンピング電極153は、Vp2印加回路185とIp2検出回路186に接続される。ヒータ160は、ヒータ駆動回路187に接続される。
【0106】
Ip1ドライブ回路181は、ポンピング電極132とポンピング電極133との間に電圧Vp1を印加して第1ポンピング電流Ip1を供給するとともに、供給した第1ポンピング電流Ip1を検出する。
【0107】
Vs検出回路182は、検知電極142と基準電極143との間の電圧Vsを検出し、検出した結果を基準電圧比較回路183へ出力する。
基準電圧比較回路183は、基準電圧(例えば、425mV)とVs検出回路182の出力(すなわち、電圧Vs)とを比較し、比較結果をIp1ドライブ回路181へ出力する。そしてIp1ドライブ回路181は、電圧Vsが基準電圧と等しくなるように、第1ポンピング電流Ip1の流れる向きと第1ポンピング電流Ip1の大きさとを制御するとともに、第1測定室121内の酸素濃度を、NOxが分解しない程度の所定値に調整する。
【0108】
Icp供給回路184は、検知電極142と基準電極143との間に微弱な電流Icpを流す。これにより、酸素が第1測定室121から固体電解質層141を介して基準酸素室146に送り込まれるため、基準酸素室146は、基準となる所定の酸素濃度に設定される。
【0109】
Vp2印加回路185は、ポンピング電極152とポンピング電極153との間に、一定電圧Vp2(例えば、450mV)を印加する。これにより、第2測定室148では、第2ポンピングセル150を構成するポンピング電極152,153の触媒作用によって、NOxが解離される。この解離により得られた酸素イオンがポンピング電極152とポンピング電極153との間の固体電解質層151を移動することにより第2ポンピング電流Ip2が流れる。Ip2検出回路186は、第2ポンピング電流Ip2を検出する。
【0110】
ヒータ駆動回路187は、発熱抵抗体であるヒータ160の一端にヒータ通電用の正電圧を印加するともに、ヒータ160の他端にヒータ通電用の負電圧を印加することにより、ヒータ160を駆動する。
【0111】
起電力検出回路188は、第1基準電極211と第1検知電極213との間の起電力(以下、第1アンモニア起電力)と、第2基準電極221と第2検知電極223との間の起電力(以下、第2アンモニア起電力)を検出し、検出結果を示す信号をマイコン190へ出力する。
【0112】
マイコン190は、CPU191、ROM192、RAM193および信号入出力部194を備える。
CPU191は、ROM192に記憶されたプログラムに基づいて、センサ素子部5を制御するための処理を実行する。信号入出力部194は、Ip1ドライブ回路181、Vs検出回路182、Ip2検出回路186、ヒータ駆動回路187および起電力検出回路188に接続される。信号入出力部194は、Ip1ドライブ回路181、Vs検出回路182、Ip2検出回路186および起電力検出回路188からのアナログ信号の電圧値をディジタルデータに変換してCPU191へ出力する。
【0113】
またCPU191は、信号入出力部194を介してヒータ駆動回路187へ駆動信号を出力することにより、ヒータ160に供給する電力をパルス幅変調により通電制御して、ヒータ160が目標の温度になるようにしている。なお、ヒータ160の通電制御は、NOx検出部101を構成するセル(例えば、酸素濃度検出セル140)のインピーダンスを検出し、検出したインピーダンスが目標値となるように供給電力量を制御する公知の手法によって実現することができる。
【0114】
またCPU191は、ROM192から各種データを読み込み、第1ポンピング電流Ip1の値、第2ポンピング電流Ip2の値、第1アンモニア起電力の値および第2アンモニア起電力の値から種々の演算処理を行う。
【0115】
CPU191が実行する演算処理は、公知の手法を用いることができ、ここでの詳細な説明は省略する。なお、CPU191は、例えば、まず、第1ポンピング電流Ip1、第2ポンピング電流Ip2、第1アンモニア起電力および第2アンモニア起電力に基づいて、酸素濃度、NOx濃度出力、第1アンモニア濃度出力および第2アンモニア濃度出力を求める演算処理を行う。そして、CPU191は、酸素濃度、NOx濃度出力、第1アンモニア濃度出力および第2アンモニア濃度出力を用いて、所定の補正式を用いた演算を行うことで、排気ガス中のアンモニア濃度、NO濃度およびNOx濃度を求める。
【0116】
なお、マイクロコンピュータ190の各種機能は、CPUが非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROMが、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。なお、制御部3を構成するマイクロコンピュータの数は1つでも複数でもよい。また、マイクロコンピュータが実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。
【0117】
このように構成された制御部3を備えるマルチガス検出装置1は、NOx検出部101と第1アンモニア検出部102と第2アンモニア検出部103とを備えるマルチガスセンサ2を用いて、排気ガスに含まれるアンモニア、NOおよびNOxの濃度を算出する。
【0118】
[1-7.効果]
以上説明したように、本実施形態のマルチガスセンサ2は、素子保護部124を有するセンサ素子部5を備えている。
【0119】
センサ素子部5は、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103を覆うことなく、多孔質体134(NOx検出部101の多孔質部)を覆うように形成された素子保護部124を備える。これにより、熱衝撃を緩和し、センサ素子部5の破損を抑制できる。また、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103に到達しようとする排気ガス(被測定ガス)が素子保護部124によって遮られることがなくなる。
【0120】
よって、センサ素子部5は、排気ガスが第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103に到達しやすくなるため、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103での検出精度の低下を抑制できる。
【0121】
次に、センサ素子部5においては、内側保護部124aの気孔率が外側保護部124bの気孔率よりも大きい。このため、センサ素子部5は、多孔質体134(NOx検出部101の多孔質部)と内側保護部124aとの間でのガスの移動量が少なくなりすぎるのを抑制できる。
【0122】
次に、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103におけるそれぞれの一対の電極(第1基準電極211と第1検知電極213。第2基準電極221と第2検知電極223。)は、NOx検出部101の幅方向において、発熱部160aの配置領域の内側に配置されている。
【0123】
このように構成された第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103におけるそれぞれの一対の電極は、発熱部160aの配置領域よりも広い領域に配置される場合に比べて、全体が発熱部160aの熱を受け取りやすくなる。
【0124】
よって、センサ素子部5は、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103におけるそれぞれの一対の電極における温度分布に偏りが生じるのを抑制でき、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103の検出精度が低下することを抑制できる。
【0125】
また、センサ素子部5を備えるマルチガスセンサ2は、センサ素子部5と同様に、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103での検出精度の低下を抑制できる。
【0126】
次に、センサ素子部5の製造方法では、第1ステップ、第3ステップおよび第4ステップを有することで、第2ステップにおいて焼成前保護材料124p(焼成前内側材料124ap、焼成前外側材料124bp)を塗布するにあたり、第2検出領域RE2および第1検出領域RE1の全てを覆うように、焼成前保護材料124pを塗布することができる。つまり、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103を覆わない素子保護部124を備えるセンサ素子部5の製造にあたり、焼成前保護材料124pの塗布作業において第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103を避けるなどの特別対応が必要ない。このため、焼成前保護材料124pの塗布方法として、素子部材をスラリー液へ浸漬する方法(ディップ法)を採用できる。この方法は、素子部材をそのままの状態でスラリー液に漬けるという簡便な方法であるため、焼成前保護材料124pの塗布作業における作業負担の増加を抑制できる。
【0127】
[1-8.文言の対応関係]
ここで、文言の対応関係について説明する。
センサ素子部5がガスセンサ素子に相当し、NOx検出部101が素子本体部および第1検出部に相当する。先端面101aが先端面に相当し、後端面101bが後端面に相当し、3つの通常側面101cおよび1つのアンモニア検出側面101dが複数の側面に相当し、アンモニア検出側面101dが第2検出側面に相当し、通常側面101cが通常側面に相当し、多孔質体134が多孔質部に相当する。
【0128】
第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103が第2検出部の一例に相当し、素子保護部124が素子保護部の一例に相当し、内側保護部124aが内側保護部の一例に相当し、外側保護部124bが外側保護部の一例に相当する。消失材171が消失材の一例に相当し、焼成前保護材料124p,焼成前内側材料124ap、焼成前外側材料124bpが焼成前保護材料の一例に相当する。
【0129】
第2検出領域RE2が第2検出領域に相当し、第1検出領域RE1が第2検出領域よりも先端側の領域に相当し、ヒータ160がヒータに相当し、発熱部160aが発熱部に相当し、第1基準電極211および第1検知電極213が一対の検知電極に相当し、第2基準電極221および第2検知電極223が一対の検知電極に相当する。第4検出領域RE4が多孔質領域に相当する。
【0130】
マルチガスセンサ2がガスセンサの一例に相当し、主体金具10がハウジングの一例に相当する。
[2.第2実施形態]
[2-1.第2センサ素子部]
第2実施形態として、第2センサ素子部105について説明する。第2センサ素子部105は、第1実施形態のセンサ素子部5と比べて、素子保護部の形態が異なるため、異なる部分を中心に説明する。
【0131】
なお、以下の説明では、第2センサ素子部105のうち、第1実施系態と同様の構成については、同一符号を付しており、それらの詳細説明は省略する。
図8に示すように、第2センサ素子部105は、NOx検出部101と、第1アンモニア検出部102と、第2アンモニア検出部103と、第2素子保護部224と、予備保護層232と、を備える。
【0132】
なお、図8では、第2センサ素子部105のうち先端部分を図示しており、後端部分の図示を省略している。また、図8では、第2素子保護部224を点線で表し、第2センサ素子部105のうち第2素子保護部224で覆われる部分(NOx検出部101の一部、予備保護層232の一部など)を実線で表している。
【0133】
第2素子保護部224は、第1実施形態の素子保護部124と同じ材料で構成されている。第2素子保護部224は、アンモニア検出側面101dを覆う部分の後端部(以下、第1後端部224aともいう)よりも、多孔質体134が形成される通常側面101cを覆う部分の後端部(以下、第2後端部224bともいう)の方が、NOx検出部101の後端側に位置するように形成されている。また、第2素子保護部224は、第1後端部224aが保護層230よりも先端側に位置し、第2後端部224bが保護層230よりも後端側に位置するように形成されている。
【0134】
ここで、第2素子保護部224のうち、アンモニア検出側面101dに垂直な方向(高さ方向。図8の上下方向。)において、保護層230(第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103)よりも高い部分(図8において斜線で表した領域)を特定保護部224cとする。第2センサ素子部105の軸線方向(図8の左右方向)において、保護層230(第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103)の先端と特定保護部224cの後端との間隔寸法D1は、2.5mmである。つまり、第2センサ素子部105は、間隔寸法D1が2.0mm以上となるように構成されている。
【0135】
予備保護層232は、第2素子保護部224と同じ材料で構成されている。図8に示すように、予備保護層232は、保護層230よりも低く構成されている。予備保護層232の高さ寸法H2は0.10mmであり、保護層230の高さ寸法H1は0.15mmである。予備保護層232は、図9に示すように、NOx検出部101のアンモニア検出側面101dのうち、保護層230(第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103)よりも軸線方向の先端側に配置されている。また、予備保護層232は、その先端側領域が第2素子保護部224により覆われている。
【0136】
つまり、予備保護層232は、図8に示すように、アンモニア検出側面101dのうち、第1アンモニア検出部102(第2アンモニア検出部103)と特定保護部224cとの間の領域に、備えられる。
【0137】
次に、第2センサ素子部105の製造方法について説明する。
まず、第2センサ素子部105のベースとなるNOx検出部101、第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103、保護層230の製造方法については、第1実施形態のセンサ素子部5と同様であるため、説明を省略する。
【0138】
第2素子保護部224および予備保護層232が形成される前段階の第2センサ素子部105(換言すれば、NOx検出部101、第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103、保護層230を備える素子部材)を得た後、予備ペースト形成工程および保護部液付着工程を実行する。
【0139】
予備ペースト形成工程は、保護部液付着工程よりも前に実行される工程である。予備ペースト形成工程は、NOx検出部101のアンモニア検出側面101dのうち所定領域(図9参照)に対して、予備ペースト232aを塗布する工程である。
【0140】
予備ペースト232aは、焼成により予備保護層232となるペーストである。この予備ペースト232aは、アルミナ粉末(平均粒径<1μm)、アルミナ繊維(平均繊維長さ50μm)、カーボン粉末(平均粒径20μm)、アルミナゾル(外配合)に、有機溶剤(例えばエタノール、プロピレングリコール、ブチルカルビトール)を添加し、攪拌し、適度な粘度となるように調整して調製した。なお、予備ペースト232aの各成分の含有量は、例えば、アルミナ粉末(平均粒径<1μm)とアルミナ繊維(平均繊維長さ50μm)の合計量60~80体積%、カーボン粉末(平均粒径20μm)20~40体積%、アルミナゾル(外配合)10重量%である。
【0141】
この後、予備ペースト232aにおける余分な有機溶剤を消失させるために、予備ペースト232aが塗布された素子部材(第2素子保護部224が形成される前段階の第2センサ素子部105)を、20~200℃に設定した乾燥機内に配置し、数時間乾燥させる。
【0142】
保護部液付着工程は、第2素子保護部224が形成される前段階の第2センサ素子部105を保護部液225に浸漬し、保護部液225をNOx検出部101の所定領域に付着させる工程である。
【0143】
保護部液225は、焼成により第2素子保護部224となるスラリー液である。このスラリー液は、アルミナ粉末(平均粒径<1μm)、アルミナ繊維(平均繊維長さ50μm)、カーボン粉末(平均粒径20μm)、アルミナゾル(外配合)に、有機溶剤(例えばエタノール、プロピレングリコール、ブチルカルビトール)を添加し、攪拌し、適度な粘度となるように調整して調製した。なお、スラリー液の各成分の含有量は、例えば、アルミナ粉末(平均粒径<1μm)とアルミナ繊維(平均繊維長さ50μm)の合計量60~80体積%、カーボン粉末(平均粒径20μm)20~40体積%、アルミナゾル(外配合)10重量%である。
【0144】
保護部液付着工程では、図10に示すように、容器226に貯められた保護部液225に対して、素子部材(第2素子保護部224が形成される前段階の第2センサ素子部105)を浸漬する。このとき、素子部材について、NOx検出部101の多孔質体134が下側となり、第1アンモニア検出部102(第2アンモニア検出部103)が上側となるとともに、保護部液225の液面に対してNOx検出部101が斜めとなる状態とした上で、素子部材を保護部液225に浸漬する。また、このとき、多孔質体134が保護部液225に浸漬され、かつ第1アンモニア検出部102(第2アンモニア検出部103)が保護部液225に浸漬されない位置まで、素子部材を下降させる。このようにして、素子部材(第2素子保護部224が形成される前段階の第2センサ素子部105)に対して、保護部液225を付着させることができる。
【0145】
この後、保護部液225における余分な有機溶剤を消失させるために、保護部液225を備えた素子部材を、20~200℃に設定した乾燥機内に配置し、数時間乾燥させる。
次に、予備ペーストおよび保護部液225を備えた素子部材を、大気中において900~1100℃で3時間焼成することで、予備保護層232および第2素子保護部224が形成された第2センサ素子部105が得られる。
【0146】
そして、このようにして製造された第2センサ素子部105を、所定の方法に従ってハウジング(主体金具10、外筒31など)に組み付けることによりマルチガスセンサ2を製造することができる。
【0147】
[2-2.シミュレーション解析結果および測定結果]
ここで、第2センサ素子部105に被測定ガスを供給するにあたり、第2センサ素子部105の間隔寸法D1を変化させた場合に、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103へ到達する被測定ガスの流速の変化状態をシミュレーション解析した解析結果について説明する。
【0148】
なお、間隔寸法D1は、保護層230(第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103)の先端と特定保護部224cの後端との軸線方向における距離である。
流速の変化状態のシミュレーション解析は、第2素子保護部224を備えていないセンサ素子部に被測定ガスを供給した場合に、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103へ到達する被測定ガスの流速を基準値(100%)としてシミュレーション解析を実施した。シミュレーション解析では、間隔寸法D1が異なる複数の第2センサ素子部105を用いており、各第2センサ素子部105のそれぞれで解析した流速について、基準値に対する相対割合を算出し、算出結果をガス流速率とした。
【0149】
図11に示すシミュレーション解析結果によれば、間隔寸法D1が1.5mm以上であれば、ガス流速率が90%以上となり、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103に供給される被測定ガスの量が大幅に低減するのを抑制でき、ガス検出精度の低下を抑制できることが分かる。さらに、間隔寸法D1が2.0mm以上であれば、ガス流速率がほぼ100%となり、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103に対して被測定ガスを十分に供給でき、ガス検出精度が良好となることが分かる。
【0150】
このシミュレーション解析結果によれば、第1アンモニア検出部102(第2アンモニア検出部103)の先端が特定保護部224cの後端から一定距離以上離れるように、第2素子保護部224を形成することで、第1アンモニア検出部102(第2アンモニア検出部103)への被測定ガスの供給における第2素子保護部224の影響を低減できる。つまり、間隔寸法D1が2.0mm以上の第2センサ素子部105は、素子保護部が無い場合と比べて、第1アンモニア検出部102(第2アンモニア検出部103)に供給される被測定ガスの量が低減するのを抑制でき、第2素子保護部224を備えつつ第1アンモニア検出部102(第2アンモニア検出部103)でのガス検出が良好になる。
【0151】
次に、第1実施形態のセンサ素子部5および第2実施形態の第2センサ素子部105のガス検出精度を比較した測定結果について説明する。本測定では、同一の被測定ガスを供給した場合の第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103の検出信号を、センサ素子部5および第2センサ素子部105のそれぞれについて測定した。そして、その記録結果に基づいて、素子保護部の形状の違いによって検出精度(検出信号の大きさ)がどのように異なるのかを評価した。
【0152】
素子保護部の形状の違いに関しては、センサ素子部5の素子保護部124は、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103の幅方向外側に形成される連通部124c(図5参照)を備えている。これに対して、第2センサ素子部105の第2素子保護部224は、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103の幅方向外側に形成される部分を備えていない(図8参照)。
【0153】
なお、本測定では、比較基準として、素子保護部を備えていないセンサ素子部(図12では「素子保護部無し」と表記)を用いた場合の、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103それぞれの検出信号を基準値(100%)として用いた。測定結果は、基準値に対する相対値(出力変化率)として算出した。
【0154】
図12に示すように、第2センサ素子部105およびセンサ素子部5は、いずれも、出力変化率が約80%を超えており、素子保護部が無い場合と比べて、ガス検出精度が大きく低下するのを抑制できることがわかる。なお、図12では、素子保護部を備えていないセンサ素子部の出力変化率を「素子保護部無し」と表記している。
【0155】
とりわけ、第2センサ素子部105は、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103のいずれの出力変化率も、センサ素子部5に比べて大きくなっている。このため、センサ素子部5の素子保護部124のように連通部124cを備える構成に比べて、第2センサ素子部105の第2素子保護部224のように、第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103の幅方向外側に形成される部分を有しない構成は、被測定ガスに含まれるアンモニアの検出精度に優れていることが分かる。
【0156】
[2-3.効果]
以上説明したように、本第2実施形態の第2センサ素子部105は、第2素子保護部224を備えている。第2センサ素子部105は、軸線方向における第1アンモニア検出部102(第2アンモニア検出部103)の先端と特定保護部224cの後端との間隔寸法D1が2.0mm以上である。
【0157】
上述のシミュレーション解析結果(図11)に示すように、第1アンモニア検出部102(第2アンモニア検出部103)の先端が特定保護部224cの後端から一定距離以上離れるように、第2素子保護部224を形成することで、第1アンモニア検出部102(第2アンモニア検出部103)への被測定ガスの供給における第2素子保護部224の影響を低減できる。つまり、第2センサ素子部105は、素子保護部が無い場合と比べて、第1アンモニア検出部102(第2アンモニア検出部103)に供給される被測定ガスの量が低減するのを抑制でき、第2素子保護部224を備えつつ第1アンモニア検出部102(第2アンモニア検出部103)でのガス検出が良好になる。
【0158】
次に、第2センサ素子部105は、アンモニア検出側面101dのうち、保護層230(第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103)と特定保護部224cとの間に、予備保護層232を備えている。このような予備保護層232を備えることでNOx検出部101(アンモニア検出側面101d)を保護しつつ、保護層230(第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103)に供給される被測定ガスの量が低減するのを抑制できる。
【0159】
次に、第2センサ素子部105の製造方法においては、保護部液付着工程が実行される。これにより、第1アンモニア検出部102(第2アンモニア検出部103)を覆うようにカーボン(昇華材)を設ける工程と、素子保護部を除去する工程と、を行うことなく、多孔質体134は覆いつつ第1アンモニア検出部102(第2アンモニア検出部103)は覆わない第2素子保護部224を形成することができる。
【0160】
よって、第2センサ素子部105の製造方法によれば、第1実施形態のセンサ素子部5の製造方法に比べて、工程を簡略化することができ、ガスセンサ素子の製造の煩雑さを軽減できる。
【0161】
次に、第2センサ素子部105の製造方法においては、予備ペースト形成工程が実行される。これにより、第2素子保護部224に加えて予備保護層232を設けることができ、NOx検出部101のアンモニア検出側面101dのうち、保護層230(第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103)と特定保護部224cとの間の領域におけるNOx検出部101に破損が生じるのを抑制できる。
【0162】
つまり、先に予備ペースト形成工程を行い、その後、保護部液付着工程を行うことで、NOx検出部101(アンモニア検出側面101d)を保護しつつ、保護層230(第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103)に供給される被測定ガスの量が低減するのを抑制できるガスセンサ素子を製造できる。
【0163】
[2-4.文言の対応関係]
ここで、文言の対応関係について説明する。
第2センサ素子部105がガスセンサ素子の一例に相当し、第2素子保護部224が素子保護部の一例に相当し、特定保護部224cが特定保護部の一例に相当し、予備保護層232が予備保護層の一例に相当し、保護部液225が保護部液の一例に相当する。
【0164】
[3.他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0165】
例えば、上記実施形態では、焼成後の素子部材(NOx検出部101、第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103、保護層230を備える素子部材)に対して、焼成前保護材料124pを塗布し、焼成前保護材料124pを焼成して素子保護部124を形成する製造方法について説明したが、このような製造方法に限られることはない。具体的には、焼成前の素子部材に対して焼成前保護材料124pを塗布して、未焼成の素子部材および焼成前保護材料124pを同時に焼成しても良い。
【0166】
また、上記実施形態では、センサ素子部として、NOx検出部101の側面のうちヒータ160に近い側面に第2検出部(第1アンモニア検出部102および第2アンモニア検出部103)が形成されたセンサ素子部5について説明したが、このような形態に限られることはない。具体的には、NOx検出部101における3つの通常側面101cのいずれかに第2検出部を備えても良い。
【0167】
さらに、上記第1実施形態のセンサ素子部5においては、軸線方向における保護層230(第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103)と素子保護部124との隙間部分の寸法(間隔寸法)が2.0mm以上である構成であっても良い。
【0168】
さらに、上記第1実施形態のセンサ素子部5においては、NOx検出部101のアンモニア検出側面101dのうち、保護層230(第1アンモニア検出部102、第2アンモニア検出部103)と素子保護部124との間の領域に、予備保護層を備えても良い。
【0169】
また、予備保護層232は、第2素子保護部224と同じ材料で形成されるものに限られることはなく、第2素子保護部224と異なる材料で形成しても良い。予備保護層232は、NOx検出部101(素子本体部)を破損から保護できるものであれば任意の材料を用いることができる。
【0170】
また、上述した各種数値(粒径、含有量、体積%、厚み寸法など)は、上記数値に限られることはなく、特許請求の範囲に記載の技術的範囲において、任意の値を採ることができる。
【0171】
次に、上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を、省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0172】
上述したマイコン190の他、当該マイコン190を構成要素とするシステム、当該マイコン190としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、濃度算出方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0173】
1…マルチガス検出装置、2…マルチガスセンサ、5…センサ素子部、10…主体金具
、101…NOx検出部、101a…先端面、101b…後端面、101c…通常側面、101d…アンモニア検出側面、102…第1アンモニア検出部、103…第2アンモニア検出部、105…第2センサ素子部、122…拡散抵抗体、124…素子保護部、124a…内側保護部、124ap…焼成前内側材料、124b…外側保護部、124bp…焼成前外側材料、124p…焼成前保護材料、130…第1ポンピングセル、134…多孔質体、140…酸素濃度検出セル、150…第2ポンピングセル、160…ヒータ、160a…発熱部、171…消失材、211…第1基準電極、212…第1固体電解質体、213…第1検知電極、221…第2基準電極、222…第2固体電解質体、223…第2検知電極、224…第2素子保護部、224c…特定保護部、225…保護部液、230…保護層、232…予備保護層、L1…ヒータ幅寸法、L2…検知幅寸法、RE1…第1検出領域、RE2…第2検出領域。
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