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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
F24C3/12 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018158098
(22)【出願日】2018-08-27
(65)【公開番号】P2020034173
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】柘植 真吾
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-029690(JP,A)
【文献】特開2006-221950(JP,A)
【文献】特開平11-225881(JP,A)
【文献】特開2012-202675(JP,A)
【文献】特開2004-241220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/00-3/14
F23D 14/00-14/84
A47J 27/00
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の外向きの炎口が形成されたバーナの燃焼により加熱される調理器具の底部温度の計測が可能である加熱調理器であって、
第1赤外線センサを有し、バーナの炎から発せられ、調理器具の底面で反射する反射赤外線を第1赤外線センサが受光するように設けられた第1赤外線受光部と、
第2赤外線センサを有し、加熱された調理器具の底部から放射される放射赤外線を第2赤外線センサが受光するように設けられた第2赤外線受光部と、
第1赤外線センサが反射赤外線を受光して出力する反射赤外線強度と調理器具底部の放射率との相関関係を記憶している記憶部と、
バーナの燃焼時に第1赤外線センサが反射赤外線を受光して出力する反射赤外線強度から記憶部が記憶している相関関係に基づいて調理器具底部の放射率を算出する第1演算部と、
バーナの燃焼時に第2赤外線センサが放射赤外線を受光して出力する放射赤外線強度から、第1演算部が算出した放射率に基づいて調理器具の底部温度を算出する第2演算部と
を備えていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
第1赤外線センサは、バーナの中央に位置する上方に開放された中空な空間部の内部に、第1赤外線センサの受光面が略水平の姿勢で調理器具の底面を向くように設けられ、且つ第1赤外線受光部には、第1赤外線センサと調理器具の底面との間に介在して第1赤外線センサへの放射赤外線の入射を抑制する薄膜状又は平板状の第1遮光部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
第1赤外線センサは、バーナの中央に位置する上方に開放された中空な空間部の内部に、第1赤外線センサの受光面が水平面に対して傾斜した姿勢で調理器具の底面を向くように設けられていることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項4】
第2赤外線センサは、バーナの中央に位置する上方に開放された中空な空間部の内部に、調理器具の底面に対向して設けられ、且つ第2赤外線受光部には、調理器具の底面に向かって延びるように立設され、第2赤外線センサへの反射赤外線の入射を抑制する筒状の第2遮光部が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の外向きの炎口が形成されたバーナの燃焼により加熱される調理器具の底部温度の計測が可能である加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理器として、バーナの中央に位置する筒状部の内部に赤外線センサが設けられ、バーナの燃焼により加熱される調理器具の底部から放射される放射赤外線を赤外線センサが受光して赤外線量を検出し、検出した赤外線量を、データ比較手段において、記憶手段が予め記憶している正常及び異常加熱状態並びに失火状態の赤外線量の分布データと比較し、バーナの燃焼継続又は停止を判断するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
然し、上記加熱調理器では、記憶手段が記憶している赤外線量の分布データや赤外線センサが検出する赤外線量には、放射赤外線に関するものばかりでなく、バーナの炎から発せられ、調理器具の底面で反射する反射赤外線に関するものも含まれる。従って、調理器具の底部温度の計測精度という観点からすると、上記加熱調理器には改善が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-150613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、バーナの燃焼により加熱される調理器具の底部温度を高い精度で計測できる加熱調理器を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、複数の外向きの炎口が形成されたバーナの燃焼により加熱される調理器具の底部温度の計測が可能である加熱調理器であって、第1赤外線センサを有し、バーナの炎から発せられ、調理器具の底面で反射する反射赤外線を第1赤外線センサが受光するように設けられた第1赤外線受光部と、第2赤外線センサを有し、加熱された調理器具の底部から放射される放射赤外線を第2赤外線センサが受光するように設けられた第2赤外線受光部と、第1赤外線センサが反射赤外線を受光して出力する反射赤外線強度と調理器具底部の放射率との相関関係を記憶している記憶部と、バーナの燃焼時に第1赤外線センサが反射赤外線を受光して出力する反射赤外線強度から記憶部が記憶している相関関係に基づいて調理器具底部の放射率を算出する第1演算部と、バーナの燃焼時に第2赤外線センサが放射赤外線を受光して出力する放射赤外線強度から、第1演算部が算出した放射率に基づいて調理器具の底部温度を算出する第2演算部とを備えていることを特徴とする。
【0007】
本願発明者は、バーナの炎から発せられ、調理器具の底面で反射する反射赤外線を受光して出力する赤外線センサ(第1赤外線センサ)の反射赤外線強度と、材質や色等に起因する調理器具底部の反射率との間には、線形の相関関係があることを見出した。ここで、ある波長の光が物体に当たった時の反射率、透過率、吸収率の総和はエネルギー保存則より1である。また、キルヒホッフの法則より吸収率は放射率に等しく、物体が十分に厚いときの透過率はゼロとみなし得るから、反射率と放射率とは、次式(1)で示される、
放射率=1-反射率・・・(1)
という関係にあることから、反射赤外線強度と放射率との間についても、線形の相関関係が成り立っている。
【0008】
そして、第1赤外線センサが出力する反射赤外線強度と調理器具底部の放射率との上記相関関係が記憶部に記憶され、記憶部が記憶している相関関係に基づいて第1演算部は反射赤外線強度から放射率を算出する。ここで、放射赤外線強度と温度との相関関係は、ステファン・ボルツマンの法則として知られている。即ち、次式(2)で示される。
I=εσT・・・(2)
(I:放射発散度(放射赤外線強度と同義)、ε:放射率、σ:ボルツマン定数、T:温度)
【0009】
第2演算部は、加熱された調理器具の底部から放射される放射赤外線を受光した第2赤外線センサが出力する放射赤外線強度Iを、第1算出部が算出した放射率εとボルツマン定数σとで除し、除した値の4乗根を取ることにより、調理器具の底部温度を算出できる。このため、本発明によれば、調理器具の底部温度の計測精度を高めることができる。
【0010】
また、本発明において、第1赤外線センサは、バーナの中央に位置する上方に開放された中空な空間部の内部に、第1赤外線センサの受光面が略水平の姿勢で調理器具の底面を向くように設けられ、且つ第1赤外線受光部には、第1赤外線センサと調理器具の底面との間に介在して第1赤外線センサへの放射赤外線の入射を抑制する薄膜状又は平板状の第1遮光部が設けられていることが望ましい。これによれば、第1遮光部により第1赤外線センサで放射赤外線を受光するのが抑制され、第1赤外線センサは、調理器具の底面で反射する反射赤外線を選択的に受光できる。従って、第1演算部が行う放射率の算出精度を高めることができる。
【0011】
更に、本発明において、第1赤外線センサは、バーナの中央に位置する上方に開放された中空な空間部の内部に、第1赤外線センサの受光面が水平面に対し傾斜した姿勢で調理器具の底面を向くように設けられていることが望ましい。これによれば、調理器具の底面全周での反射赤外線が第1赤外線受光部に入射されず、第1赤外線センサは局所的な反射赤外線を受光でき、放射赤外線の受光をより抑制できる。従って、第1演算部が行う放射率の算出精度を高めることができる。
【0012】
そして、本発明において、第2赤外線センサは、バーナの中央に位置する上方に開放された中空な空間部の内部に、調理器具の底面に対向して設けられ、且つ第2赤外線受光部には、調理器具の底面に向かって延びるように立設され、第2赤外線センサへの反射赤外線の入射を抑制する筒状の第2遮光部が設けられていることが望ましい。これによれば、第2遮光部により第2赤外線センサで反射赤外線を受光するのが抑制され、第2赤外線センサは、調理器具底部からの放射赤外線を選択的に受光できる。従って、第2演算部が行う調理器具の底部温度の算出精度をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の加熱調理器の第1実施形態の要部を示す一部切欠斜視図。
図2図1に示す加熱調理器を調理器具の底部と共に示す断面図。
図3図2に示す加熱調理器のバーナキャップとその周辺とを拡大して示す拡大断面図。
図4図1に示す加熱調理器が備えるコントローラを示すブロック図。
図5】本発明の加熱調理器の第2実施形態の要部を調理器具の底部と共に示す断面図。
図6】本発明の加熱調理器の第3実施形態の要部を調理器具の底部と共に示す断面図。
図7】本発明の加熱調理器の第4実施形態の要部を調理器具の底部と共に示す断面図。
図8】本発明の加熱調理器の第5実施形態の要部を調理器具の底部と共に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
図1図4を参照して、本発明の第1実施形態である加熱調理器1を説明する。加熱調理器1はガスコンロであり、天板2に開設したバーナ用開口21に臨ませてバーナ3が配置されている。バーナ3は、混合管4の下流端から上方に延びてバーナ用開口21に挿通されるバーナボディ31と、バーナボディ31上に載置される環状のバーナキャップ32とを備えている。バーナキャップ32の周囲一箇所にはターゲット部32aが突設され、ターゲット部32aに対向する点火電極5がバーナ3に付設されている。
【0015】
バーナボディ31は、内筒31aと外筒31bとで中空環状に形成されている。外筒31bの上端部には内曲げフランジ部31bが形成されている。また、外筒31bには、バーナ用開口21を上方から覆うカバーリング6が外挿されている。更に、カバーリング6には、調理器具Cをバーナ3の上方に所定間隔で載置する五徳7が外挿されている。尚、図2図4には調理器具Cの底部のみを図示している。
【0016】
バーナキャップ32の中央に位置する内周部には、内筒31aの上端部に内嵌するシール筒部32bが垂設されている。また、バーナキャップ32の下面外周部には、バーナボディ31の上面外周部を形成する外筒31bの内曲げフランジ部31bの上面に当接する環状壁32cが突設されている。そして、環状壁32cに、周方向の間隔を存して溝から成る複数の外向きの炎口32dが形成され、混合管4からの混合気(燃料ガスと一次空気との混合ガス)が炎口32dから噴出して燃焼するようにしている。尚、バーナボディ31の上面外周部にバーナキャップ32の下面外周部に当接する環状壁を突設してこの環状壁に炎口を形成することも可能である。
【0017】
また、バーナキャップ32の下面一箇所には、内曲げフランジ部31bの周方向一箇所に形成した凹欠部31bに係合する位相決め用の突起部32eが設けられている。更に、バーナ3の中央に位置するシール筒部32bで囲われた上下方向に延びる中空な空間部33の内部に第1赤外線受光部8と第2赤外線受光部9とが設けられている。
【0018】
第1赤外線受光部8は、空間部33の中央に配置され、第1赤外線センサ81と、第1赤外線センサ81を上方から覆う第1受光キャップ82とを有している。第1赤外線センサ81は、バーナ3の炎から発せられ、調理器具Cの底面で反射する反射赤外線RIRを受光する。本実施形態では、第1赤外線センサ81と第1受光キャップ82とによりサーモパイルを構成している。具体的には、第1赤外線センサ81は、多数の熱電対を直列に接続して成り、受光面を有する第1受光素子81aと、第1受光素子81aが上端に接続された第1プラス電極81bと、第1受光素子81aから絶縁された第1マイナス電極81cと、第1プラス電極81b及び第1マイナス電極81cを上下方向に貫通させて支持する板状の第1基部81dとを備えている。第1プラス電極81b及び第1マイナス電極81cの下端には空間部33の下端よりも下方に配線される第1リード線10が接続されている。そして、第1赤外線センサ81は、空間部33の内部に、第1受光素子81aの受光面が略水平の姿勢で調理器具Cの底面を向くように設けられている。
【0019】
第1受光キャップ82は、ハット型の断面形状を有し、中央上面部に円形の第1窓孔82aが開設されて、調理器具Cの底面全周での反射赤外線RIRの入射が可能となっている。第1窓孔82aには、第1受光キャップ82の上面部を下側から覆い、赤外線を選択的に透過する第1光学フィルタ82bが設けられている。第1光学フィルタ82bの下面には薄膜状の遮光膜82cが第1遮光部82cとして設けられている。遮光膜82cは、第1赤外線センサ81と調理器具Cの底面との間に介在し、バーナ3の燃焼により加熱された調理器具Cの底部から放射される放射赤外線が第1赤外線センサ81に入射するのを抑制して、第1赤外線センサ81が反射赤外線RIRを選択的に受光できるようにするためのものである。従って、遮光膜82cの大きさ、厚み等は、調理器具Cの底面の形状及び性状、第1受光素子81aの大きさ等を考慮して適宜変更が可能である。第1遮光部82cは、遮光膜82cに限られることはなく、平板状のものとすることもできる。また、遮光膜82c等の第1遮光部82cは、第1赤外線受光部8の空間部33の内部での位置、第1窓孔82aの大きさや形状、また、第1受光素子81aの大きさ等により第1受光素子81aへの放射赤外線の入射が極力抑えられる場合には省略可能である。
【0020】
第2赤外線受光部9は、空間部33におけるシール筒部32b寄りの一箇所に配置され、第2赤外線センサ91と、第2赤外線センサ91を上方から覆う第2受光キャップ92とを有している。第2赤外線センサ91は、バーナ3の燃焼により加熱された調理器具Cの底部から放射される放射赤外線を受光する。本実施形態では、第2赤外線センサ91と第2受光キャップ92とによりサーモパイルを構成している。具体的には、第2赤外線センサ91は、第1赤外線センサ81と同様に、多数の熱電対を直列に接続して成り、受光面を有する第2受光素子91aと、第2受光素子91aが上端に接続された第2プラス電極91bと、第2受光素子91aから絶縁された第2マイナス電極91cと、第2プラス電極91b及び第2マイナス電極91cを上下方向に貫通させて支持する板状の第2基部91dとを備えている。第2プラス電極91b及び第2マイナス電極91cの下端には空間部33の下端よりも下方に配線される第2リード線11が接続されている。そして、第2赤外線センサ91は、空間部33の内部に、調理器具Cの底面に対向して設けられている。
【0021】
第2受光キャップ92は、第1受光キャップ82と同様に、ハット型の断面形状を有し、第2受光キャップ92には、中央上面部に円形の第2窓孔92aが開設されている。第2窓孔92aには、第2受光キャップ92の上面部を下側から覆う第2光学フィルタ92bが設けられている。第2光学フィルタ92bは、バーナ3の炎から発生られる波長の赤外線を遮断するものである。
【0022】
第1赤外線受光部8の第1基部81dと、第2赤外線受光部9の第2基部91dとは、共に筐体12の上端外周部に設けられたフランジに固定されるカバー13の上面に固定されている。筐体12は、第1受光キャップ82及び第2受光キャップ92の上面がバーナキャップ32の上面と同一位置に配置されるようにして空間部33の内部に固定されている。カバー13には、第1プラス電極81b及び第1マイナス電極81c、並びに第2プラス電極91b及び第2マイナス電極91cに対応する部位に開口が開設されている。この開口を通じて、第1基部81dの下面から下方に突出する第1プラス電極81b及び第1マイナス電極81cと、第2基部91dの下面から下方に突出する第2プラス電極91b及び第2マイナス電極91cとが、筐体12の内部に第1リード線10及び第2リード線11と共に収納される。また、筐体12の下面一箇所には、空間部33を下方に延び、シール筒部32bの下端より下方に突出する直管14の上端が接続されている。直管14は、空間部33の中央に配置され、その内部に第1リード線10及び第2リード線11が配線され、第1リード線10及び第2リード線11の末端は、図4に示すコントローラ15に接続されている。
【0023】
コントローラ15には、第1赤外線受光部8の第1赤外線センサ81が反射赤外線RIRを受光して出力する反射赤外線強度が入力される。この反射赤外線強度の入力はコントローラ15が備える第1演算部151に対してなされる。また、コントローラ15には、第2赤外線受光部9の第2赤外線センサ91が放射赤外線を受光して出力する放射赤外線強度が入力される。この放射赤外線強度の入力はコントローラ15が備える第2演算部152に対してなされる。コントローラ15は、第1赤外線センサ81が出力する反射赤外線強度と調理器具Cの底部の放射率との相関関係を記憶している記憶部153も備えている。第1演算部151は、バーナ3の燃焼時に第1赤外線センサ81が出力する反射赤外線強度から記憶部153が記憶している相関関係に基づいて調理器具Cの底部の放射率を算出する。第2演算部152は、バーナ3の燃焼時に第2赤外線センサ91が放射赤外線を受光して出力する放射赤外線強度から、第1演算部151が算出した放射率に基づいて調理器具Cの底部温度を算出する。
【0024】
前述の通り、第1赤外線センサ81が出力する反射赤外線強度と、材質や色等に起因する調理器具Cの底部の反射率との間には、線形の相関関係があることから、反射赤外線強度と放射率との間についても、線形の相関関係が成り立っている。この線形の相関関係を記憶部153が記憶している。ここで、反射率と放射率とは、次式(1)で示される、
放射率=1-反射率・・・(1)
という関係にあり、放射赤外線強度と温度との相関関係は次式(2)で示される。
I=εσT・・・(2)
(I:放射発散度(放射赤外線強度と同義)、ε:放射率、σ:ボルツマン定数、T:温度)
【0025】
従って、加熱された調理器具Cの底部から放射される放射赤外線を受光した第2赤外線センサ91が出力する放射赤外線強度Iを、第2演算部152において、第1算出部151が算出した放射率εとボルツマン定数σとで除し、除した値の4乗根を取ることにより、調理器具Cの底部温度を算出できる。こうして、加熱調理器1は、調理器具Cの底部温度の計測精度を高めることができ、第1演算部151が行う放射率の算出精度を高めることもできる。尚、コントローラ15はマイクロコンピュータ等から構成できる。また、記憶部153が記憶している、第1赤外線センサ81が出力する反射赤外線強度と調理器具Cの底部の放射率との相関関係は、バーナ3の火力によらず一定であることが好ましいが、バーナ3の燃焼性能等によって必ずしも一定でない場合、バーナ3の火力毎に相関関係を予め求め、記憶部153に個別に記憶させておくことができる。この場合、第1演算部151による放射率の算出は、バーナ3の燃焼時の火力に対応する適当な相関関係を記憶部153から選択することにより実行できる。
【0026】
(第2実施形態)
図5を参照して、本発明の第2実施形態である加熱調理器1aを説明する。加熱調理器1aに関し、図1図3に示す加熱調理器1の各部位に相当する部位には同一の符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0027】
加熱調理器1aでは、第2赤外線センサ91と第2受光キャップ92とを有する第2赤外線受光部9が、シール筒部32bで囲われた上下方向に延びる中空な空間部33の中央に配置されている。また、第1赤外線センサ81と第1受光キャップ82とを有する第1赤外線受光部8が、空間部33の内部におけるシール筒部32b寄りの一箇所に配置されている。更に、図3に示す筐体12及びカバー13は加熱調理器1aには存せず、第1赤外線受光部8と第2赤外線受光部9とは独立している。そして、第1赤外線受光部8では、空間部33の内部を下方に延び、シール筒部32bの下端より下方に突出する直管141の上端に、上端が空間部33の中央を向く曲管16が接続され、曲管16の上端に第1赤外線センサ81及び第1受光キャップ82が設けられている。
【0028】
また、加熱調理器1aでは、第1赤外線センサ81が備える、図3に示す第1プラス電極81b及び第1マイナス電極81cは共に曲管16の内部に収納され、両電極81b,81cの夫々に接続された第1リード線10が直管141の内部に配線されている。こうして、第1赤外線センサ81は、空間部33の内部に、図3に示す第1受光素子81aの受光面が水平面に対して傾斜した姿勢で調理器具Cの底面を向くように設けられている。尚、第1赤外線受光部8には図3に示す第1遮光部82cとしての遮光膜82cは設けられていない。更に、第2赤外線受光部9では、空間部33の内部を下方に延び、シール筒部32bの下端より下方に突出する直管142の上端に第2赤外線センサ91及び第2受光キャップ92が設けられている。また、第2赤外線センサ91が備える、図3に示す第2プラス電極91b及び第2マイナス電極91cと共に両電極91b,91cの夫々に接続された第2リード線11が直管142の内部に配線されている。第1赤外線受光部8の図3に示す第1窓孔82aには、調理器具Cの底面全周での反射赤外線RIRが入射されず、且つ第1受光素子81aの受光面は上記の通り傾斜姿勢であるので、第1赤外線センサ8は局所的な反射赤外線RIRを受光する。このような局所的な反射赤外線RIRの受光によって放射赤外線の受光を抑制できる。尚、第1赤外線受光部8に、図3に示す第1光学フィルタ82bが設けられる場合、第1赤外線センサ81は反射赤外線RIRを選択的に受光できる。また、第1受光素子81aの受光面の水平面に対する傾斜角度は、第1赤外線センサ8が放射赤外線の受光を抑制できる角度範囲において任意とすることができる。
【0029】
更に、加熱調理器1aでは、第1受光キャップ82及び第2受光キャップ92の上面は、図1図3に示す加熱調理器1と異なり、空間部33の内部の上端部に配置され、空間部33の上端には赤外線透過板17が装着されている。このような加熱調理器1aにおいても、図1図3に示す加熱調理器1と同様に、第1赤外線センサ81が出力する反射赤外線強度は、図4に示すコントローラ15の第1演算部151に入力され、第2赤外線センサ91が出力する放射赤外線強度は第2演算部152に入力される。従って、加熱調理器1aによる調理器具Cの底部温度の計測精度は向上し、第1演算部151が行う放射率の算出精度を高めることもできる。
【0030】
(第3実施形態)
図6を参照して、本発明の第3実施形態である加熱調理器1bを説明する。加熱調理器1bに関し、図1図3に示す加熱調理器1の各部位に相当する部位には同一の符号を付し、以下ではその説明を省略する。
【0031】
加熱調理器1bでは、図1図3に示す加熱調理器1の第2赤外線受光部9が、空間部33の内部からカバーリング6の上端部の一箇所に移設されている。このようにしても、図3に示す第2光学フィルタ92bにより、バーナ3の炎から発せられる波長の赤外線が、第2赤外線受光部9の第2赤外線センサ91に入射するのを抑制でき、第2赤外線センサ91は放射赤外線を選択的に受光できる。また、加熱調理器1bにおいても、図1図3に示す加熱調理器1と同様に、第1赤外線センサ81が出力する反射赤外線強度は、図4に示すコントローラ15の第1演算部151に入力され、第2赤外線センサ91が出力する放射赤外線強度は第2演算部152に入力される。従って、加熱調理器1bによる調理器具Cの底部温度の計測精度は向上し、第1演算部151が行う放射率の算出精度を高めることもできる。
【0032】
(第4実施形態)
図7を参照して、本発明の第4実施形態である加熱調理器1cを説明する。加熱調理器1cに関し、図1図3に示す加熱調理器1の各部位に相当する部位には同一の符号を付し、以下ではその説明を省略する。また、図7は第1赤外線受光部8を図示省略しているが、加熱調理器1cは、図2及び図5に示す加熱調理器1,1aと同様に、第1赤外線受光部8を同一位置に備えることができる。
【0033】
加熱調理器1cでは、第2赤外線線受光部9aが図5に示す加熱調理器1aの第2赤外線受光部9と同一位置に設けられている。一方、第2赤外線受光部9aは、第2受光キャップ92が設けられず、第2遮光部93が図3に示す第2受光素子91aを囲繞して設けられている点において、図2及び図5に示す第2赤外線受光部9と相違している。第2遮光部93は、図2及び図5に示す反射赤外線RIRの入射を抑制する筒状(具体的には円筒状)の部材であり、調理器具Cの底面に向かって延びるように直管142の上端に設けられている。第2遮光部93の上端は、調理器具Cの底部から放射される放射赤外線を受光できるように、図2及び図5に示す第2受光キャップ92と同様に第2窓孔92aを有している。本実施形態では、図3に示す第2光学フィルタ92bは、必要に応じて第2窓孔92aをその下側から覆うように設けることができ、不要な場合は省略できる。そして、第2赤外線受光部9aは、第2遮光部93の上端がバーナキャップ32の上面とほぼ同一位置に配置されて空間部33の内部に固定されている。
【0034】
このような第2遮光部93は、光学系における絞りとして機能し、上記の通り、反射赤外線RIRの入射を抑制でき、また、バーナ3の燃焼に伴い加熱されるバーナキャップ32からの放射赤外線EIRの入射抑制にも寄与する。このため、第2赤外線受光部9aは、調理器具Cの底部からの放射赤外線を選択的に受光できる。従って、図4に示す第2演算部152が行う調理器具Cの底部温度の算出精度をより高めることができる。また、第2遮光部93により第2赤外線センサ91の位置が各種熱源から遠ざけられるため、第2赤外線センサ91が高熱になりにくく、耐熱性の向上が図られる。
【0035】
(第5実施形態)
図8を参照して、本発明の第5実施形態である加熱調理器1dを説明する。加熱調理器1dは、図7に示す加熱調理器1cをベースしたものであるので、図7に示す加熱調理器1cの各部位に相当する部位には同一の符号を付し、以下ではその説明を省略する。また、図8図7と同様に第1赤外線受光部8を図示省略しているが、加熱調理器1dは、図2及び図5に示す加熱調理器1,1aと同様に、第1赤外線受光部8を同一位置に備えることができる。
【0036】
加熱調理器1dでは、図7に示す加熱調理器1cと同様に、第2遮光部93aが図3に示す第2受光素子91aを囲繞して設けられている。加熱調理器1cとの相違点は、第2遮光部93aの形状である。第2遮光部93aは、円筒形状のものではなく、上端から下端にかけて口径が連続的に減少するすり鉢形状を有する。すり鉢状の第2遮光部93aは、上端に存する図3に示す第2窓孔92aを通じ、万一反射赤外線RIR等の、調理器具Cの底部からの放射赤外線以外の赤外線が入射したとしても、入射した赤外線は第2遮光部93aの内面で反射を繰り返し、その結果として、第2受光素子91aが、受光すべき放射赤外線以外の赤外線を受光するのをより効果的に抑制できる。従って、図4に示す第2演算部152が行う調理器具Cの底部温度の算出精度を更に高めることができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して説明したが、本発明は以上の実施形態に限定されない。バーナの構造をはじめ、第1赤外線受光部及び第2赤外線受光部の構造、第1赤外線センサ及び第2赤外線センサの種類等の細部については様々な態様が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1,1a,1b,1c,1d…加熱調理器、3…バーナ、33…空間部、32d…炎口、8…第1赤外線受光部、81…第1赤外線センサ、81a…第1受光素子、82c…第1遮光部、9,9a…第2赤外線受光部、91…第2赤外線センサ、91a…第2受光素子、93,93a…第2遮光部、151…第1演算部、152…第2演算部、153…記憶部、C…調理器具、RIR…反射赤外線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8