(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】液中アブレシブ切断装置
(51)【国際特許分類】
B24C 9/00 20060101AFI20220524BHJP
B24C 5/02 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
B24C9/00 D
B24C5/02 B
B24C9/00 Z
(21)【出願番号】P 2018163693
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】賀田 昭
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴昭
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-054384(JP,A)
【文献】特開2014-065128(JP,A)
【文献】実開昭62-140903(JP,U)
【文献】実開昭51-080787(JP,U)
【文献】特開昭63-016999(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0298342(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 9/00
B24C 5/02
B26F 3/00
B23P 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの切断加工を液中で行うためのキャッチャ槽と、アブレシブを混入させた超高圧水を前記ワークに対して噴射する噴射ノズルと、を備えた液中アブレシブ切断装置であって、
前記キャッチャ槽は、前記ワークを載置するためのワーク受部と、
前記ワーク受部の下方に配置された流れ調整部と、を備え、
前記流れ調整部は、複数の傾斜板を備えて構成され、液中に導入された超高圧水の流れ方向を整流することによって、液中に沈下するアブレシブを設定した特定方向に誘導
し、
前記傾斜板は、前記キャッチャ槽の底部に配置された傾斜板支持板の上部に設置されていること、
を特徴とする液中アブレシブ切断装置。
【請求項2】
ワークの切断加工を液中で行うためのキャッチャ槽と、アブレシブを混入させた超高圧水を前記ワークに対して噴射する噴射ノズルと、を備えた液中アブレシブ切断装置であって、
前記キャッチャ槽は、前記ワークを載置するためのワーク受部と、
前記ワーク受部の下方に配置された流れ調整部と、を備え、
前記流れ調整部は、複数の傾斜板を備えて構成され、液中に導入された超高圧水の流れ方向を整流することによって、液中に沈下するアブレシブを設定した特定方向に誘導
し、
前記傾斜板は、前記キャッチャ槽の底部に配置された傾斜板支持板との連結部の旋回に追従して回動し、旋回角度が0~45度であること、
を特徴とする液中アブレシブ切断装置。
【請求項3】
前記ワーク受部は、前記ワークを支持する複数の薄板を備えていること、
を特徴とする請求項1
または請求項2に記載の液中アブレシブ切断装置。
【請求項4】
前記傾斜板の傾斜角度は、10~90度であること、
を特徴とする請求項
1に記載の液中アブレシブ切断装置。
【請求項5】
前記キャッチャ槽の底部には、前記アブレシブが誘導される方向に液体および前記アブレシブを排出するためのアブレシブ吸込口が設けられていること、
を特徴とする請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の液中アブレシブ切断装置。
【請求項6】
前記アブレシブ吸込口の外部側には、アブレシブ吸引装置が設けられていること、
を特徴とする請求項
5に記載の液中アブレシブ切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの切断加工を液中で行う液中アブレシブ切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液中アブレシブ切断装置では、キャッチャ槽(キャッチャタンク)内でワークの切断加工が行われるため、切断加工を行うと、キャッチャ槽の内底にアブレシブ(研磨材)が沈殿する。沈殿したアブレシブを回収する装置としては、キャッチャ槽の内底付近に設置した撹拌用水エジェクタ(ノズル)によってアブレシブの沈降を阻害する撹拌流を発生させて、アブレシブを回収するアブレシブ回収装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のアブレシブ回収装置は、循環ポンプ(35)によって発生された圧力水を、撹拌用水エジェクタ(26)と、移送用水エジェクタ(24)と、で噴射することで、キャッチャタンク(20)内のアブレシブを回収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-260030号公報(特許請求の範囲、
図2および
図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のアブレシブ回収装置では、キャッチャ槽(キャッチャタンク(20))内に沈殿するアブレシブを回収するためには数多いノズル(水エジェクタ(26,24))が不可欠であった。
また、多数のノズルから適宜な噴射量の圧力流体を噴射するためには、循環ポンプ(35)などの水供給装置が不可欠であった。
【0006】
このため、特許文献1に記載のアブレシブ回収装置は、ノズル(水エジェクタ(26,24))、循環ポンプ(35)などの部品点数が増加し、アブレシブ回収装置全体が複雑化するという問題点があった。
【0007】
また、特許文献1に記載のアブレシブ回収装置は、ノズル(水エジェクタ(26,24))を使用しているので、目詰まりを起こすことがあるため、定期的なメンテナンスを行う必要がある。その場合、ノズル(水エジェクタ(26,24))の数が多いので、その数に応じてメンテナンスの作業工数が多いという問題点があった。
【0008】
また、そのアブレシブ回収装置は、定期的に撹拌運転を行うことで、アブレシブ(研磨材)を押し流していたが、キャッチャ槽内のアブレシブの流れる方向が定まっていないため、効率よくアブレシブを回収することができなかった。
このため、キャッチャ槽内で噴射ノズルを移動させてワークを切断する装置の場合、アブレシブを効率よく排出するには、多数の排出口や、吸引装置を設けるなどして対策を講じることが不可欠であった。
【0009】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、効率よくアブレシブを排出させることができる液中アブレシブ切断装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、ワークの切断加工を液中で行うためのキャッチャ槽と、アブレシブを混入させた超高圧水を前記ワークに対して噴射する噴射ノズルと、を備えた液中アブレシブ切断装置であって、前記キャッチャ槽は、前記ワークを載置するためのワーク受部と、前記ワーク受部の下方に配置された流れ調整部と、を備え、前記流れ調整部は、複数の傾斜板を備えて構成され、液中に導入された超高圧水の流れ方向を整流することによって、液中に沈下するアブレシブを設定した特定方向に誘導し、前記傾斜板は、前記キャッチャ槽の底部に配置された傾斜板支持板の上部に設置されていることを特徴とする。
また、本発明は、ワークの切断加工を液中で行うためのキャッチャ槽と、アブレシブを混入させた超高圧水を前記ワークに対して噴射する噴射ノズルと、を備えた液中アブレシブ切断装置であって、前記キャッチャ槽は、前記ワークを載置するためのワーク受部と、前記ワーク受部の下方に配置された流れ調整部と、を備え、前記流れ調整部は、複数の傾斜板を備えて構成され、液中に導入された超高圧水の流れ方向を整流することによって、液中に沈下するアブレシブを設定した特定方向に誘導し、前記傾斜板は、前記キャッチャ槽の底部に配置された傾斜板支持板との連結部の旋回に追従して回動し、旋回角度が0~45度であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、効率よくアブレシブを排出させることができる液中アブレシブ切断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る液中アブレシブ切断装置の一例を示す説明図である。
【
図2】撹拌ユニットの一部を省略したキャッチャ槽の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1~
図4を参照して本発明の実施形態に係る液中アブレシブ切断装置100を説明する。液中アブレシブ切断装置100を説明する前に、液中アブレシブ切断装置100に使用されるワークWについて説明する。
【0014】
<ワーク>
図1に示すように、ワークWは、例えば、適宜な材質で、適宜な形状の材料から成る。つまり、ワークWは、材質および形状は特に限定されない。液中アブレシブ切断装置100に使用されるワークWは、例えば、ステンレス、アルミ、チタン、ガラス、石材、合成樹脂、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などに切断加工を施す場合に最適である。以下、ワークWは、全体が細長い略平板状に形成された厚板材を例に挙げて説明する。
ワークWは、
図1に示すように、浸漬液10の液中に配置されたワーク受部21上に載置されて、噴射ノズル1から噴射されるアブレシブウォータージェットAWJ(超高圧水)によって切断加工される。
【0015】
<液中アブレシブ切断装置>
図1に示すように、液中アブレシブ切断装置100は、200~600MPaの高圧で供給された加工用流体QにアブレシブG(研磨材)を混入し、アブレシブウォータージェットAWJを噴射して、ワークWを切断加工する加工装置である。そして、液中アブレシブ切断装置100は、アブレシブウォータージェットAWJ(超高圧水)を音速以上の高速で噴射させることができる。このため、ガラス、金属などの硬い材質であっても、合成樹脂などの比較的柔らかい材質であっても、また、硬い材料と柔らかい材料などの多種類の材料からなる複合材料であっても、高品質な形状に切断加工することができる。
【0016】
液中アブレシブ切断装置100は、噴射ノズル1と、キャッチャ槽2と、キャッチャ槽2に配置されたワーク受部21および撹拌ユニット22と、水位調整タンク26と、液位調整装置27(
図3参照)と、を備えて構成されている。液中アブレシブ切断装置100には、浸漬液10、アブレシブGおよび切粉を回収してそれぞれ分離するアブレシブ回収装置200が設けられている。
【0017】
<アブレシブ>
図1に示すように、アブレシブGは、液中アブレシブ切断装置100でワークWを加工する際に、加工用流体Q中に混入される砥粒である。液中アブレシブ切断装置100において、アブレシブGは、ワークWの種類、用途、加工条件などに応じて適宜な研磨材が利用される。例えば、アブレシブGは、ワークWの種類などに応じて、ガーネット、サファイア、超硬合金などの一般的な研磨材を適宜使用することができる。
【0018】
<噴射ノズル>
図1に示すように、噴射ノズル1は、アブレシブGを混入させたアブレシブウォータージェットAWJをワークWに対して噴射するアブレシブウォータージェットノズルから成る。噴射ノズル1は、例えば、噴射ノズル1内に形成された混合室と、加工用流体Qを噴出するウォーターノズル部と、ウォーターノズル部から噴出された加工用流体QにアブレシブGを混入させたウォータージェットを生成してワークWを加工するアブレシブウォータージェットAWJを噴射するアブレシブノズル部と、を備えている。噴射ノズル1には、噴射ノズル1にアブレシブGを供給するアブレシブ供給装置(図示省略)と、噴射ノズル1に加工用流体Qを供給する高圧水供給装置(図示省略)と、が接続されている。
噴射ノズル1は、加工するワークWの形状に合わせて、例えば、
図2に示すように、矢印a,b方向に移動させるなどしてワークWを切断加工する。
【0019】
<キャッチャ槽>
図3に示すように、キャッチャ槽2は、浸漬液10を貯留する水槽である。キャッチャ槽2内では、ワークWを浸漬液10の液中に浸漬させた状態で切断加工が行われる。キャッチャ槽2には、ワーク受部21と、撹拌ユニット22(流れ調整部)と、水位調整タンク26と、液位調整装置27と、アブレシブ吸込口2fと、オーバーフロー部2g(
図1参照)、などが設けられている。
【0020】
キャッチャ槽2は、水位調整タンク26を隣接した状態で一体に設けられて構成されている。キャッチャ槽2は、キャッチャ槽本体2aと、底部2bと、底板2cと、受部支持部2eと、アブレシブ吸込口2fと、オーバーフロー部2g(
図1参照)と、を有して構成されている。
【0021】
図3に示すように、キャッチャ槽本体2aは、浸漬液10を貯留する略容器状のタンク部材である。
底部2bは、キャッチャ槽2内における下層部位である。底部2bには、撹拌ユニット22が配置されている。
底板2cは、キャッチャ槽2の内底面を形成する板部材である。底板2cには、複数の撹拌ユニット保持部25が適宜な間隔で設けられている。
受部支持部2eは、
図2および
図3に示すように、キャッチャ槽本体2aの内壁に突出した状態に設置されている。
【0022】
図3に示すように、アブレシブ吸込口2fは、浸漬液10、アブレシブGおよび切粉を第1エジェクタ31および第2エジェクタ32(
図1参照)で吸引して排出させるための排出口である。アブレシブ吸込口2fは、キャッチャ槽2内に連通する水位調整タンク26の第1エジェクタ31を設置した壁部の底部b(下層部位)に形成されている。
【0023】
図1に示すように、オーバーフロー部2gは、キャッチャ槽2内の浸漬液10の上澄み液、浮遊するアブレシブGおよび切粉などをキャッチャ槽2外に排出する装置である。オーバーフロー部2gは、キャッチャ槽2の上層の側壁に設けられている。
【0024】
<ワーク受部>
図3に示すように、ワーク受部21は、加工するワークWを載置するための部材である。
図4に示すように、ワーク受部21は、薄板21aと、下板21bと、受部支持体21cと、支柱21dと、を備えて構成されている。
【0025】
図3および
図4に示すように、薄板21aは、ワークWを下側から支持する複数の板部材である。薄板21aは、厚さの薄い横長の平板部材の平面を縦にしてキャッチャ槽2の幅方向に延設され、キャッチャ槽2内の浸漬液10の液面に沿ってスリット状空間を介在して適宜な間隔で多数並設されて、ワークWが載置されて水中切断加工が行われるようになっている。
【0026】
下板21bは、薄板21aを垂直な状態に支持する板部材である。
受部支持体21cは、下板21bを保持する部材である。受部支持体21cは、複数の支柱21dの上端と、キャッチャ槽2の内壁の複数箇所に対向配置された受部支持部2eと、の上に載置されている。
【0027】
図4に示すように、支柱21dは、受部支持体21cを下側から支持する柱状部材である。支柱21dは、上端部が受部支持体21cに当接した状態に配置され、下端部が床面に当接した状態に配置されている。支柱21dは、受部支持体21cの下側の複数箇所に設置されている。
【0028】
<撹拌ユニット>
図3に示すように、撹拌ユニット22(流れ調整部)は、キャッチャ槽2の液中に導入されたアブレシブウォータージェットAWJ(浸漬液10)の流れ方向を整流させることで、液中に沈下するアブレシブGを設定した特定方向に誘導させる撹拌装置である。撹拌ユニット22は、ワーク受部21の下方に配置されている。撹拌ユニット22は、複数の傾斜板23と、傾斜板支持板24と、撹拌ユニット保持部25と、を備えて構成されている。
ここで、「特定方向」とは、アブレシブ吸込口2fが設置されている方向(矢印e,f方向)である。
【0029】
また、撹拌ユニット22は、底板2cからの高さが120mm程度の位置に配置される。撹拌ユニット22の位置が高すぎるとアブレシブウォータージェットAWJ(浸漬液10)のアブレシブ吸込口2f側方向(矢印e方向)への流れが弱くなり、アブレシブGが沈下してしまう。さらに、撹拌ユニット22の位置が低すぎてもアブレシブウォータージェットAWJ(浸漬液10)の矢印e方向への流れる隙間が小さくなるため、アブレシブGが沈下してしまう。そのため、撹拌ユニット22の上層および下層の隙間が最適になる位置に配置することで、液中に導入されたアブレシブウォータージェットAWJ(浸漬液10)の流れを最適化することができる。
【0030】
<傾斜板>
傾斜板23は、キャッチャ槽2の上層から下層(矢印c方向)に向けて沈降するアブレシブGを、傾斜板23の隙間から通過させ、アブレシブ吸込口2f側方向に流して指向性を持った撹拌を行わせるための部材である。傾斜板23は、斜めの状態で水平方向に延設された横長の板部材から成る。傾斜板23は、キャッチャ槽2の底部2bに配置された傾斜板支持板24の上部に、傾斜板23の下端がアブレシブ吸込口2f側になるように傾斜した状態で設置されている。傾斜板23は、傾斜板支持板24に、適宜な間隔で多数配置された横長の板部材から成る(
図2参照)。
【0031】
傾斜板23の傾斜角度θ1は、10~90度であり、好ましくは、45~60度である。傾斜板23は、キャッチャ槽2の底部2bに配置された傾斜板支持板24との連結部22aの旋回に追従して回動し、傾斜方向調整機構(図示省略)によって旋回角度が0~45度に調整可能とすることもできる。
【0032】
傾斜板支持板24は、複数の傾斜板23を適宜な間隔に支持する支持部材である。傾斜板支持板24は、傾斜板23に対して直交する方向に長い板部材から成る。
【0033】
連結部22aは、傾斜板23と傾斜板支持板24との連結部分である。連結部22aは、傾斜板23の下端部に配置されている。傾斜板23は、この連結部22aを回動させると、傾斜板23の傾斜角度を所望の角度にすることが可能な傾斜方向調整機構(図示省略)を備えている。
【0034】
傾斜方向調整機構(図示省略)は、連結部22aを旋回させることで、連結部22aを進退させて傾斜板23の傾き角度(旋回角度)を調整して、アブレシブGの流れ具合(流動性)を向上させるための装置である。なお、傾斜方向調整機構(図示省略)の連結部22aを旋回させる手段は、手動式でも、電動モータを使用した電動式であってもよい。
【0035】
撹拌ユニット保持部25は、傾斜板支持板24を支える部材である。撹拌ユニット保持部25は、上端部が傾斜板支持板24の下端部に連結されて、下端部がキャッチャ槽2の底板2cに設置された柱状の部材から成る。
【0036】
<水位調整タンク>
図3に示すように、水位調整タンク26は、キャッチャ槽2内の浸漬液10の液位を調整するためのタンクである。水位調整タンク26は、下側に開口部を有する逆容器形状のタンクから成る。水位調整タンク26には、気密室26aと、仕切壁26bと、下部トラフ部26cと、ポンプP2と、水位検出センサ27aと、が設けられている。
【0037】
なお、水位調整タンク26には、浸漬液10、アブレシブG及び切粉をキャッチャ槽2外に排出するための排出口(図示省略)を設けてもよい。排出口は、キャッチャ槽2の水位を最高水位になるように維持して、最高水位を越える浸漬液10およびアブレシブGをキャッチャ槽2外に排出するための水位の上限を調整するオーバーフロー排出口の役目も果たす。また、排出口は、キャッチャ槽2の水位を最低水位になるように変位させて、最高水位を越える浸漬液10およびアブレシブGをキャッチャ槽2外に排出するための水位の下限を調整するオーバーフロー排出口の役目も果たす。
【0038】
気密室26aは、容器を逆さにした形状の水位調整タンク26の内側天井部位に形成された空気溜まりである。気密室26a内は、ポンプP2によって気密室26a内の空気量が調整されて、水位調整タンク26内の浸漬液10の水位が調整されるようになっている。
【0039】
仕切壁26bは、水位調整タンク26とキャッチャ槽2とを仕切る隔壁である。仕切壁26bの下方には、下部トラフ部26cが形成されている。仕切壁26bは、水位調整タンク26内の浸漬液10の水位と、キャッチャ槽2内の浸漬液10の水位と、が連動するようにするための壁である。
下部トラフ部26cは、水位調整タンク26内の浸漬液10の変動に応じて、水位調整タンク26内の浸漬液10がキャッチャ槽2内に行き来する流路を形成する部位である。下部トラフ部26cは、仕切壁26bの下方に切欠形成されて、水位調整タンク26とキャッチャ槽2内の水充填領域と連通させている。
【0040】
ポンプP2は、気密室3a内の上部に空気を導出入させるためのエア供給装置である。ポンプP2は、正逆転させることによって、空気供給管28を介して気密室26a内へ空気を送り込んで、気密室26a内の圧力上昇に伴って水位調整タンク26内の浸漬液10の水位を下げて、下部トラフ部26cを介してキャッチャ槽2内に押出してキャッチャ槽2の浸漬液10の水位を上昇させている。
【0041】
<液位調整装置>
図3に示すように、液位調整装置27は、キャッチャ槽2内の浸漬液10の液位を可変させて調整する装置である。液位調整装置27は、浸漬液10の液面をコントロールする水位検出センサ27aを備えて構成されている。
【0042】
<アブレシブ回収装置>
図1に示すように、アブレシブ回収装置200は、浸漬液10、アブレシブGおよび切粉を回収する装置である。なお、アブレシブ回収装置200は、キャッチャ槽2内の使用済のアブレシブGを回収することができるものであればよく、その構造は特に限定されない。以下、その一例を説明する。
【0043】
アブレシブ回収装置200は、例えば、アブレシブ移送装置3と、浸漬液10、アブレシブGおよび切粉をそれぞれ分離して回収するアブレシブ分離回収装置(図示省略)と、を備えて構成されている。
【0044】
<アブレシブ移送装置>
アブレシブ移送装置3は、キャッチャ槽2内の浸漬液10と、浸漬液10中のアブレシブGおよび切粉を吸引してアブレシブ分離回収装置(図示省略)に送り込むための移送装置である。アブレシブ移送装置3は、アブレシブ吸込口2fからアブレシブGおよび切粉を吸引してアブレシブ分離回収装置(図示省略)に移送する装置である。
【0045】
アブレシブ移送装置3は、第1エジェクタ31と、第2エジェクタ32と、アブレシブ吸引管33と、アブレシブ移送管34と、回収液供給管35と、回収液バイパス供給管36と、を備えて構成されている。
【0046】
第1エジェクタ31は、ポンプP1から回収液供給管35を介して供給された流体の圧力を利用して、低圧のキャッチャ槽2内のアブレシブGを含む浸漬液10を吸込んで、中圧にてアブレシブ分離回収装置(図示省略)側に送る排出装置である。第1エジェクタ31は、アブレシブ吸込口2fに設けられて、アブレシブGなどの移送力や、アブレシブ吸込口2fからアブレシブGなどを吸引する吸引力を高めることができる。
【0047】
第2エジェクタ32は、第1エジェクタ31と同じ構造の排出装置であって、アブレシブGなどの移送力や、アブレシブ吸込口2fからアブレシブGなどを吸引する吸引力を高めることができる。第2エジェクタ32は、第1エジェクタ31からアブレシブ吸引管33を介して送られて来たアブレシブGを含む浸漬液10をアブレシブ分離回収装置(図示省略)に連結したアブレシブ移送管34に送り込むように接続されている。
【0048】
アブレシブ吸引管33は、一端が第1エジェクタ31に接続され、他端が第2エジェクタ32に接続されている。
アブレシブ移送管34は、一端が第2エジェクタ32に接続され、他端がアブレシブ分離回収装置(図示省略)に接続されている。
回収液供給管35は、一端がポンプP1を介して不図示のアブレシブ分離回収装置の回収液貯留タンクに接続され、他端が第1エジェクタ31に接続されている。
回収液バイパス供給管36は、一端が回収液供給管35の中間部位に接続され、他端が第2エジェクタ32に接続されている。
ポンプP1は、アブレシブ分離回収装置(図示省略)で分離した回収液を第1エジェクタ31および第2エジェクタ32に送り出すポンプである。
【0049】
≪作用≫
次に、
図1~
図4を参照しながら本発明の実施形態に係る液中アブレシブ切断装置の作用を説明する。
【0050】
図3に示すように、作業を開始する前、ポンプP2は、OFF状態になっている。気密室26a内の空気は、ポンプP2がOFFになっていることにより、ポンプP2から大気中に排出されて、気密室26aの内圧が低下した状態になっている。このため、キャッチャ槽2側の浸漬液10が水位調整タンク26内に入り込んで、キャッチャ槽2内の浸漬液10の水位は、所定水位まで低下した状態になっている。このように、キャッチャ槽2内の水位が低下した状態で、まず、キャッチャ槽2内のワーク受部21にワークWを取り付ける。
【0051】
次に、水供給装置(図示省略)を駆動させてキャッチャ槽2内に浸漬液10を供給する。キャッチャ槽2内に浸漬液10の水位は、ワークWよりも高い位置にあるオーバーフロー部2g(
図1参照)まで上昇させることができる。キャッチャ槽2内に浸漬液10は、ワークWよりも高い位置の状態(水中)で加工したりすることができる。
【0052】
続いて、高圧水供給装置(図示省略)を駆動させて、噴射ノズル1に高圧の加工用流体Qを供給するとともに、アブレシブ供給装置(図示省略)を駆動させてアブレシブGを噴射ノズル1に供給し、アブレシブウォータージェットAWJによってワークWの切断加工を行う。加工の際には、ワークWの材質に合った加工条件(送り速度など)に調整して加工を行う。
【0053】
液中アブレシブ切断装置100は、アブレシブウォータージェットAWJによってワークWを加工することにより、アブレシブウォータージェットAWJで撹拌させながら切断させることができる。アブレシブGおよび切粉は、底部2b方向に沈降して撹拌ユニット22上に流れ落ちる。すると、アブレシブGおよび切粉は、多数並設された傾斜板23の傾斜面に沿って、アブレシブ吸込口2fがある方向側に斜めに沈降する。そして、ポンプP1をONさせれば、浸漬液10、アブレシブGおよび切粉は、第1エジェクタ31および第2エジェクタ32の吸引力によってアブレシブ吸込口2fから吸引されてキャッチャ槽2から排出される。
【0054】
この場合、アブレシブ移送装置3は、アブレシブ吸込口2fに連通するアブレシブ吸引管33に、第1エジェクタ31と、第2エジェクタ32との2つの装置から成るアブレシブ吸引装置を設けたことによって、吸引力を向上させて、アブレシブGおよび切粉がキャッチャ槽2および水位調整タンク26の内底に堆積するのを抑制することができる。
【0055】
このように、本発明は、
図1に示すように、ワークWの切断加工を液中で行うためのキャッチャ槽2と、アブレシブGを混入させた超高圧水をワークWに対して噴射する噴射ノズル1と、を備えた液中アブレシブ切断装置100であって、キャッチャ槽2は、ワークWを載置するためのワーク受部21と、ワーク受部21の下方に配置された撹拌ユニット22(流れ調整部)と、を備え、撹拌ユニット22は、複数の傾斜板23を備えて構成され、液中に導入された超高圧水の流れ方向を整流することによって、液中に沈下するアブレシブGを設定した特定方向に誘導することを特徴とする。
【0056】
このように、本発明の液中アブレシブ切断装置100は、ワーク受部21の下方に支持された撹拌ユニット22を備えていることで、ワーク受部21に載置したワークWを加工した際に発生するアブレシブGおよび切粉を効率よく捕えることができる。また、撹拌ユニット22は、複数の傾斜板23で液中に導入された超高圧水を整流することで、液中に沈下するアブレシブGをアブレシブ吸込口2fがある方向に誘導して、効率よくアブレシブGを排出させることができる。
【0057】
また、ワーク受部21は、ワークWを支持する複数の薄板21aを備えていることが好ましい。
このように、ワーク受部21は、複数の薄板21aを備えて構成されていることで、液中のアブレシブGが薄板21a上に沈殿したアブレシブGを撹拌ユニット22がある方向に寄った斜め内底方向に流れるよう規制することができる。
【0058】
また、傾斜板23は、キャッチャ槽2の底部2bに配置された傾斜板支持板24の上部に設置されていることが好ましい。
このように傾斜板23は、傾斜板支持板24の上部に設置されていることで、アブレシブGが複数の傾斜板23にガイドされて傾斜板23の表面を底部2bに向けて滑り落ちるため、アブレシブGが傾斜板23上に堆積するのを抑制することができる。
【0059】
また、傾斜板23の傾斜角度θ1は、10~90度であることが好ましい。
このように傾斜板23は、10~90度の傾斜角度θ1で斜めに配置されていることで、キャッチャ槽2内の液中で、傾斜板23上にアブレシブGが沈降しても傾斜板23上を底部2bに向けて滑り落ちる。このため、傾斜板23上にアブレシブGが堆積するのを抑制することができる。
【0060】
また、傾斜板23は、キャッチャ槽2の底部2bに配置された傾斜板支持板24との連結部22aの旋回に追従して回動し、旋回角度が0~45度であることが好ましい。
このように、傾斜板23は、傾斜板支持板24との連結部22aの旋回に追従して回動することで、傾斜板23の傾斜角度θ1を浸漬液10中のアブレシブGの流れ具合に応じて適宜な角度に調整することができる。このため、複数の傾斜板23は、浸漬液10中で噴射ノズル1から噴射された超高圧水による浸漬液10の流れを傾斜板23の傾斜する方向に誘導して指向化させることができる。また、傾斜板23は、垂直方向に対する旋回角度を0~45度にすることによって、アブレシブGを含む浸漬液10の流れを整流化して、キャッチャ槽2の内底を流れる水流よりも、遠くまでアブレシブGが流れるように調整することができる。その結果、キャッチャ槽2および水位調整タンク26の底部2bにアブレシブGおよび切粉が堆積するのを抑制することができる。
【0061】
また、キャッチャ槽2の底部2bには、アブレシブGが誘導される方向に浸漬液10およびアブレシブGを排出するためのアブレシブ吸込口2fが設けられていることが好ましい。
このように、アブレシブ吸込口2fは、キャッチャ槽2の底部2bに設けられていることで、浸漬液10液体及びアブレシブGを排出する方向に誘導してスムーズに排出させることができる。
【0062】
また、アブレシブ吸込口2fの外部側には、アブレシブ吸引装置(第1エジェクタ31及び第2エジェクタ32)が設けられていることが好ましい。
このように、アブレシブ吸引装置は、アブレシブ吸込口2fの外部側に設けたことで、キャッチャ槽2内の液中のアブレシブGを吸引してスムーズに排出させることができる。
【0063】
≪変形例≫
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造および変更が可能であり、本発明はこれら改造および変更された発明にもおよぶことは勿論である。
【0064】
前記実施形態では、撹拌ユニット22(流れ調整部)の一例として、傾斜板23の傾斜を調整する傾斜方向調整機構(図示省略)を備えた場合を説明したが、撹拌ユニット22は、傾斜方向調整機構(図示省略)を備えていないものでもよい。つまり、傾斜板23は、アブレシブGが整流化されてアブレシブ吸込口2f側方向に流れるように傾けてあればよく、所定の傾斜角度で傾斜板支持板24に固定したものであってもよい。
【0065】
また、
図1に示すアブレシブ回収装置200は、キャッチャ槽2の内底に沈下している使用後のアブレシブGを回収して、アブレシブGを浸漬液10および切粉から分離するアブレシブ回収用フィルタや、濾過器などを備えたものであっても構わない。
【0066】
また、液中アブレシブ切断装置100は、撹拌ユニット22の周辺から浸漬液10やアブレシブGの流れを促すためのノズルをキャッチャ槽2に設け、外付けのポンプ(図示省略)から流体を供給する構造としてもよい。
【0067】
また、アブレシブ吸込口2fは、その設置例として
図3に示すように、水位調整タンク26の内壁の低部に設置した場合を説明したが、水位調整タンク26またはキャッチャ槽2の壁部や底部2bに限定されるものではない。
例えば、アブレシブ吸込口2fは、水位調整タンク26のサイズが小さなものの場合、アブレシブ吸込口2fを水位調整タンク26の下部トラフ部26cまでアブレシブ吸引管33を延設して、下部トラフ部26cに配置してもよい。
【0068】
また、アブレシブ吸込口2fは、キャッチャ槽2内の撹拌ユニット22によってアブレシブGなどが流動して来る下層部位に配置してもよい。
【0069】
また、アブレシブ吸込口2fは、キャッチャ槽2に複数(三箇所以上)設けてもよい。このようにアブレシブ吸込口2fの数を増やすことで、アブレシブGおよび切粉の排出をさらにスムーズに行えるようにすることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 噴射ノズル
2 キャッチャ槽
2b 底部
2f アブレシブ吸込口
3 アブレシブ移送ユニット
21 ワーク受部
21a 薄板
22 撹拌ユニット(流れ調整部)
22a 連結部
23 傾斜板
24 傾斜板支持板
31 第1エジェクタ(アブレシブ吸引装置)
32 第2エジェクタ(アブレシブ吸引装置)
100 液中アブレシブ切断装置
200 アブレシブ回収装置
AWJ アブレシブウォータージェット(超高圧水)
G アブレシブ
W ワーク
θ1 傾斜板の傾斜角度