(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】施解錠装置
(51)【国際特許分類】
E05B 55/12 20060101AFI20220524BHJP
E05B 13/08 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
E05B55/12
E05B13/08 B
(21)【出願番号】P 2018182207
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】見置 真吾
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-36471(JP,A)
【文献】特開平8-120984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉の表裏面に配設される操作部材と、
前記扉に設けられ、該扉の表面と裏面のそれぞれの前記操作部材からの入力を受ける表側機構と裏側機構を備えるとともに、該表側機構または裏側機構に連動し、前記扉を開放可能状態または開放不可状態とする連動機構を備えた錠機構と、
該錠機構を内蔵し、前記扉から表出する戸先部を有するケースと、
を具備する施解錠装置であって、
該ケースに設けた揺動軸を中心に揺動自在となる連結揺動部材と、
前記連結揺動部材に前記揺動軸を中心に対称位置となり前記戸先部から奥方向に向かい互いに略平行となって延設され、前記連結揺動部材の揺動によって連動し従動することで前記表側機構または前記裏側機構に対してそれぞれが交互に前進または後退し、前記表側機構または前記裏側機構と、前記連動機構とによる前記扉の開放可能状態または開放不可状態を選択的に切り換える一対の係止杆と、
を具備することを特徴とする施解錠装置。
【請求項2】
前記連結揺動部材は、前記ケースを構成する戸先部裏面に略平行な軸線で配設される揺動軸を中心に、揺動自在な切替操作部を具備することを特徴とする請求項1記載の施解錠装置。
【請求項3】
前記一対の係止杆には、前記ケースを構成する戸先部に穿設される貫通孔を介して表出する操作端部をそれぞれ備え、一方の係止杆の操作端部の押動にて該係止杆の先端部が前記奥方向に前進するとともに前記連結揺動部材の揺動によって他方の係止杆の先端部が後退するように従動されることを特徴とする請求項1記載の施解錠装置。
【請求項4】
前記操作部材が、扉に対して回転自在に配設され、前記表側機構及び裏側機構に対して回転力を入力し、
前記表側機構及び裏側機構は、前記操作部材に連結され回転を伝達するカム板を具備しており、
前記係止杆は、前記カム板の回転を許容または阻止することを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の施解錠装置。
【請求項5】
前記表側機構と裏側機構が、前記連動機構との連動を行うまたは連動を解除するリンク部材を具備し、該リンク部材に対して前記係止杆が進退自在に配設され、該係止杆の前進または後退によって、前記連動機構の連動が行われるまたは連動が解除されることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の施解錠装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施解錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばホテルの客室の扉などは、緊急時に室内からの解錠操作を不要として、迅速に開扉が可能となることが好ましい。この種の施解錠装置として、アンチパニック式錠が知られている(例えば特許文献1,2参照)。アンチパニック式錠は、室内側の把手と室外側の把手とに、それぞれ内外の駆動カムを連結する。これら内外の駆動カムは、それぞれ独立して回動する。アンチパニック式錠では、室外側の駆動カムの回動のみを規制する施解錠手段を設ける。ところで、ホテルの客室などに取付けられる扉は、左開きがあれば右開きもある。すなわち、左右勝手がある。従って、アンチパニック式錠には、扉が左右いずれの側から開くかにより上記した室内側の面と室外側の面とが入れ換わることとなり錠ケースに組み込まれた一対の駆動カムを内外に選択的に設定する機構(内外選択機構)が設けられている。
【0003】
この内外選択機構としては、例えばフロント板に押え具、例えば雄ねじ等を2つ設け、一対の駆動カムを2つの押え具により、内外に選択的に設定するものがある。また、フロント板に左右2つの垂直レバーを設け、ハンドルカムとラッチストッパー間のリンク機構を接続または非接続とすることにより、内外に選択的に設定するものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-120984号公報
【文献】特開2008-127904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一対の駆動カムに対応させて2つの押え具や2つの垂直レバーを設けると、部品点数が増えて機構が複雑となる。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、開閉体の表裏面におけるアンチパニックの状態が簡単・簡素な機構で切り換えできる施解錠装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の施解錠装置11は、扉21の表裏面に配設される操作部材19と、
前記扉21に設けられ、該扉21の表面27と裏面29のそれぞれの前記操作部材19からの入力を受ける表側機構31と裏側機構33を備えるとともに、該表側機構31または裏側機構33に連動し、前記扉21を開放可能状態または開放不可状態とする連動機構を備えた錠機構25と、
該錠機構25を内蔵し、前記扉21から表出する戸先部39を有するケース13と、
を具備する施解錠装置11であって、
該ケース13に設けた揺動軸55を中心に揺動自在となる連結揺動部材15と、
前記連結揺動部材15に前記揺動軸55を中心に対称位置となり前記戸先部39から奥方向に向かい互いに略平行となって延設され、前記連結揺動部材15の揺動によって連動し従動することで前記表側機構31または前記裏側機構33に対してそれぞれが交互に前進または後退し、前記表側機構31または前記裏側機構33と、前記連動機構とによる前記扉21の開放可能状態または開放不可状態を選択的に切り換える一対の係止杆17と、
を具備することを特徴とする。
【0008】
この施解錠装置11では、ケース13に設けられた連結揺動部材15が揺動軸55を中心に揺動される。揺動する連結揺動部材15は、戸先部39からケース13の奥方向に向かい互いに平行となって延設された一対の係止杆17を、表側機構31または裏側機構33に対してそれぞれを交互に前進または後退させる。表側機構31または裏側機構33は、一対の係止杆17のそれぞれが前進または後退することにより、作動が許容または作動が阻止される。表側機構31または裏側機構33は、係止杆17により作動が阻止されることで、操作部材19から連動機構への操作力の入力を断つ。つまり、扉21を開放不可状態とする。一方、表側機構31または裏側機構33は、係止杆17により作動が許容されることで、操作部材19から連動機構へ操作力を入力する。つまり、扉21を開放可能状態とする。従って、連結揺動部材15が揺動することによって、一対の係止杆17を交互に進退させる簡単な機構で、アンチパニックの設定状態を選択的に切り換えることができる。
【0009】
本発明の請求項2記載の施解錠装置11は、請求項1記載の施解錠装置であって、
前記連結揺動部材15は、前記ケース13を構成する戸先部39裏面に略平行な軸線で配設される揺動軸55を中心に、揺動自在な切替操作部59を具備することを特徴とする。
【0010】
この施解錠装置11では、連結揺動部材15が、扉21に設けられたケース13の戸先部39裏面に略平行、例えば垂直方向の揺動軸55により揺動自在に支持される。従って、連結揺動部材15は、水平方向に揺動することができる。水平方向に揺動する連結揺動部材15は、切替操作部59が水平方向に移動する。すなわち、切替操作部59は、扉21の表面27または裏面29に向けられて揺動可能となる。この連結揺動部材15の揺動方向は、係止杆17の表側機構31または裏側機構33への突出方向と一致させることができる。これにより、切替操作部59が向けられた側の表側機構31または裏側機構33は、係止杆17の突出により扉21が開放可能状態とする設定となる。また、揺動軸55は水平方向とすることも可能であり、連結揺動部材15を垂直方向に揺動させることもできる。
【0011】
本発明の請求項3記載の施解錠装置11は、請求項1記載の施解錠装置11であって、
前記一対の係止杆17には、前記ケース13を構成する戸先部39に穿設される貫通孔40を介して表出する操作端部17aをそれぞれ備え、一方の係止杆17の操作端部17aの押動にて該係止杆17の先端部18が前記奥方向に前進するとともに前記連結揺動部材15の揺動によって他方の係止杆17の先端部18が後退するように従動されることを特徴とする。
【0012】
この施解錠装置11では、一方の係止杆17の操作端部17aを押動することで、この係止杆17の先端部18を奥方向に前進させる。また、この押動により、連結揺動部材15の揺動で、他方の係止杆17の先端部18が後退する。そして、これら係止杆17の前進と後退によって、扉21の開放可能状態と開放不可状態を選択的に切り換える。
【0013】
本発明の請求項4記載の施解錠装置11は、請求項1~3のいずれか1つに記載の施解錠装置11であって、
前記操作部材19が、扉21に対して回転自在に配設され、前記表側機構31及び裏側機構33に対して回転力を入力し、
前記表側機構31及び裏側機構33は、前記操作部材19に連結され回転を伝達するカム板69を具備しており、
前記係止杆17は、前記カム板69の回転を許容または阻止することを特徴とする。
【0014】
この施解錠装置11では、扉21の表裏面に設けられたそれぞれの操作部材19には、操作部材19と一体に回転するカム板69が固定されている。従って、扉21の表裏面におけるそれぞれの操作部材19は、カム板69を介して、係止杆17により回転が許容または阻止される。
【0015】
本発明の請求項5記載の施解錠装置11は、請求項1~3のいずれか1つに記載の施解錠装置11であって、
前記表側機構31と裏側機構33が、前記連動機構との連動を行うまたは連動を解除するリンク部材を具備し、該リンク部材に対して前記係止杆17が進退自在に配設され、該係止杆17の前進または後退によって、前記連動機構の連動が行われるまたは連動が解除されることを特徴とする。
【0016】
この施解錠装置11では、表側機構31及び裏側機構33のそれぞれがリンク部材を有する。リンク部材は、係止杆17が前進または後退されることにより、表側機構31または裏側機構33と、連動機構との連動を行うまたは連動を解除する。つまり、表側機構31または裏側機構33と、連動機構との連動が、リンク部材を介することによる係止杆17の間接的な進退動作により制御される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る請求項1記載の施解錠装置によれば、一対の係止杆が連結揺動部材で連結され、前進と後退を交互に動作して、確実に表裏両側の切替が可能であり、扉の表裏面におけるアンチパニックの状態が簡単・簡素な機構で分かりやすく切り換えできる。
【0018】
本発明に係る請求項2記載の施解錠装置によれば、切替操作部によって連結揺動部材の揺動方向が設定され、例えば揺動軸を垂直にすることで、扉の表裏面におけるアンチパニックの設定方向と、連結揺動部材の切替操作部の方向とを関連づけることができる。
【0019】
本発明に係る請求項3記載の施解錠装置によれば、一方の係止杆の操作端部の押動にて、この係止杆の先端部を奥方向に前進させ、また、他方の係止杆の先端部を後退とすることができ、これら係止杆の前進と後退によって、扉の開放可能状態と開放不可状態を選択的に切り換えることが可能となる。
【0020】
本発明に係る請求項4記載の施解錠装置によれば、扉の表裏面におけるそれぞれの操作部材を、表側機構及び裏側機構のそれぞれに設けられたカム板に係止杆を係止する簡単な構造で回転制御できる。
【0021】
本発明に係る請求項5記載の施解錠装置によれば、係止杆が、リンク部材を介して連動機構の連動許容または阻止を制御するので、係止杆の強度を小さく設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る施解錠装置の分解斜視図である。
【
図2】
図1に示した施解錠装置の一部分を省略した斜視図である。
【
図3】
図2に示したボルト、表側機構及び裏側機構の分解斜視図である。
【
図5】
図4に示した内外選択機構の分解斜視図である。
【
図6】(a)はレバー部材の摘み部が裏面側に設定された内外選択機構の平面図、(b)はレバー部材の摘み部が表面側に設定された内外選択機構の平面図である。
【
図7】
図6(a)の状態の施解錠装置の正面図である。
【
図8】
図6(b)の状態の施解錠装置の正面図である。
【
図9】ロック装置によりロックが解除された施解錠装置の正面図である。
【
図10】レバー部材の摘み部が中間位置で設定された施解錠装置の平面図である。
【
図11】他の第1実施形態の施解錠装置の正面図である。
【
図12】他の第2実施形態の施解錠装置の正面図である。
【
図13】他の第3実施形態の施解錠装置の要部拡大正面図を示した図である。
【
図14】他の第4実施形態の施解錠装置の要部拡大正面図を示した図である。
【
図15】他の第5実施形態の施解錠装置の正面図である。
【
図16】他の第6実施形態の施解錠装置の要部拡大正面図である。
【
図17】他の第7実施形態の施解錠装置の要部拡大正面図である。
【
図18】他の第8実施形態の施解錠装置の要部拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係る施解錠装置11の分解斜視図である。
本実施形態に係る施解錠装置11は、操作部材と、連動機構と、ケース13と、連結揺動部材としてのレバー部材15と、係止杆17とを主要な構成部材として有する。
【0024】
本実施形態において、操作部材は、レバーハンドル19である。連動機構は、ボルト23を主要部材として含む。なお、操作部材は、ノブであってもよい。
【0025】
レバーハンドル19は、扉21の表裏面に配設される。錠機構25は、扉21の内方に設けられ、扉21の表面27と裏面29のそれぞれのレバーハンドル19からの入力を受ける。この錠機構25は、扉21の表面27(室外面)に配置される表側機構31と、扉21の裏面29(室内面)に配置される裏側機構33とを備える。本実施形態において、表側機構31は、第1ハンドルカム35を主要部材として含む。裏側機構33は、第2ハンドルカム37を主要部材として含む。錠機構25は、第1ハンドルカム35または第2ハンドルカム37に連動し、扉21を開放可能状態または開放不可状態とするボルト23を備えている。
【0026】
ケース13は、扉21の厚み方向に扁平な金属製の直方体の箱で形成される。ケース13は、一方の長辺側の側面を扉21の木口に一致させて扉21に取り付けられる。ケース13は、錠機構25を内蔵するとともに、扉21の木口に表出する戸先部としてのフロント板39を備える。
【0027】
扉21の表裏面に取り付けられるそれぞれのレバーハンドル19は、角軸61がケース13に挿入される。この挿入部は、化粧枠43により覆われる。フロント板39とケース13との間には、ケース13に固定される裏板45が挟持される。裏板45は、後述するレバー部材15の切替操作部である摘み部59、ボルト23、トリガー47を突出させる。フロント板39には、ボルト23を突出させるボルト穴49、トリガー47を突出させるトリガー穴51が穿設される。フロント板39は、フロント板固定ビス53により裏板45を挟んでケース13に固定される。
本実施形態では、ボルト23の形状として先端にテーパ面を備えたものを図示しているが、このボルト23は、デッドロッキングラッチボルトと言われるものであり、ラッチボルトとデッドボルトの機能を兼ね備えたものである。
ここで、扉21を閉じた状態で保持する機能を具備する部材であるボルト23には、大きく分けて角柱状や円柱状の軸棒形状のデッドボルトと、先端にテーパ面を備えたラッチボルトとがある。デッドボルトは、閉扉状態における戸先から突出(前進)することで、扉枠側のストライク穴に進入し、このストライク穴に嵌入することで扉の開放を不可能とし、後退することでストライク穴から退出して扉の開放を可能とする。また、ラッチボルトは、閉扉時にテーパ面が扉枠のストライク板に当接することでラッチボルト自身が後退し、その後ストライク穴に進入するものであり、この進入状態において扉の閉鎖を保持するものである。
本実施形態のデッドロッキングラッチボルトは、上述したラッチボルトと同様の動作を可能とするとともに、閉扉時における施解錠操作によって上述したデッドボルトと同様の動作が行われる2つの機能を併せ持つボルト23である。すなわち扉21の閉鎖の際には、ラッチボルトと同様にストライク板に当接後、ストライク穴へ進入となり、閉扉と同時にさらに突出(前進)動作となって、ストライク穴への進入長さを延ばし、テーパ面の無い側面でストライク穴に嵌まる。これにより扉は施錠状態となり、ハンドル操作では開扉不可能な閉扉状態となる。なお、閉扉と同時にボルトがさらに突出する上記の動作は、上述したトリガー47のストライク板に当接することによる後退動作をタイミングとする機械的制御機構など様々な手段によるものがある。
【0028】
図2は
図1に示した施解錠装置11の一部分を省略した斜視図である。
レバー部材15は、ケース13を構成するフロント板裏面の近傍に位置する。レバー部材15は、フロント板裏面に平行な軸線で配設される揺動軸55を備える。レバー部材15は、フロント板裏面に沿って設けられる裏板45に、揺動軸55の軸線に直交する方向を長軸として形成される長穴57を貫通する摘み部59を有する。レバー部材15は、揺動軸55を中心に長穴57の長手に沿って揺動自在となる。レバー部材15は、摘み部59が、フロント板裏面に係合し、揺動が規制される。
【0029】
本実施形態の施解錠装置11は、揺動軸55が垂直方向を軸線方向とし、レバー部材15が水平方向に揺動自在とされる。
【0030】
第1ハンドルカム35及び第2ハンドルカム37には、レバーハンドル19における軸部41の角軸部61が挿入される角穴63がそれぞれに形成されている。第1ハンドルカム35及び第2ハンドルカム37は、それぞれの角穴63に角軸部61を挿入した表裏面のレバーハンドル19により独立に回転操作が可能となる。ボルト23は、表裏面何れかのレバーハンドル19が回転され、第1ハンドルカム35及び第2ハンドルカム37が回転すると、後端の係合板65が押圧されてケース内へと後退する。すなわち、解錠する。
【0031】
図3は
図2に示したボルト23、表側機構31及び裏側機構33の分解斜視図である。
第1ハンドルカム35及び第2ハンドルカム37は、双方の間に分離板67が挟まれる。分離板67は、双方の角軸部61が相手側へ貫通することを阻止する。レバーハンドル19は、扉21に対して回転自在に配設され、第1ハンドルカム35及び第2ハンドルカム37に対して回転力を入力する。第1ハンドルカム35及び第2ハンドルカム37は、レバーハンドル19に連結され回転を伝達するカム板69を備える。
【0032】
第1ハンドルカム35及び第2ハンドルカム37は、それぞれがハンドルカムバネ71によりフロント板39にカム板69が接近する回転方向に付勢される。第1ハンドルカム35及び第2ハンドルカム37は、ハンドルカムバネ71による回転が、ストッパ73を当接ピン75(
図7参照)に当てることにより停止される。
【0033】
図4は
図2に示した内外選択機構77の斜視図である。
施解錠装置11は、内外選択機構77を有する。内外選択機構77は、レバー部材15と、揺動軸55と、基板79と、ガイド軸81と、第1スライド板83と、第2スライド板85とを主要な部材として有するとともに、第1回転阻止カム87と、第2回転阻止カム89と、回転阻止カム用バネ91とを具備する。
【0034】
第1ハンドルカム35と第2ハンドルカム37は、ボルト23との連動を許容または阻止するリンク部材を備える。本実施形態において、リンク部材は、第1回転阻止カム87及び第2回転阻止カム89となる。係止杆17は、これら第1回転阻止カム87及び第2回転阻止カム89に対して進退自在に配設される。施解錠装置11は、第1回転阻止カム87及び第2回転阻止カム89に対して係止杆17が進出または後退することによって、ボルト23の連動が許容または阻止される。
【0035】
レバー部材15は、摘み部59を有する。第1スライド板83及び第2スライド板85は、それぞれが係止杆17を有する。係止杆17は、カム板69の回転を許容または阻止する。第1回転阻止カム87及び第2回転阻止カム89は、それぞれがハンドルカム当接面93と、係止杆当接軸部95とを有する。第1回転阻止カム87及び第2回転阻止カム89は、それぞれの係止杆当接軸部95がフロント板39に接近する方向(ハンドルカム当接面93がカム板69に係合する位置)に回転阻止カム用バネ91により回転が付勢される。
【0036】
図5は
図4に示した内外選択機構77の分解斜視図である。
レバー部材15は、略三角形の板状に形成され、頂角部に摘み部59が突出する。底辺側には、底辺に沿って離間する一対の係合軸97が垂設される。レバー部材15は、中央部に形成された軸穴99に、基板79に立設された揺動軸55を挿入することにより、揺動自在に基板79に支持される。基板79には、揺動軸55を挟んでフロント板39の反対側に、ガイド軸81が立設される。
【0037】
第1スライド板83及び第2スライド板85は、フロント板39から離反する方向に長尺な短冊板状に形成される。第1スライド板83及び第2スライド板85は、フロント板39に近接する側の端部に、係合軸97が挿入される係合軸連結穴101が穿設される。第1スライド板83及び第2スライド板85には、この係合軸連結穴101を挟んでフロント板39の反対側に、フロント板39から離間する方向に長いスライドガイド穴103が穿設される。そして、第1スライド板83及び第2スライド板85は、スライドガイド穴103の近傍に、基板79に対して垂直に起立してフロント板39から離反する方向に延出する係止杆17が形成されている。
【0038】
係止杆17は、レバー部材15の本体部に揺動軸55を中心に対称位置となりフロント板39から奥方向に向かい互いに平行となって延設される。係止杆17は、レバー部材15の揺動に従動することで、第1ハンドルカム35または第2ハンドルカム37に対してそれぞれが交互に突出または後退する。それぞれの係止杆17は、第1ハンドルカム35とボルト23、または第2ハンドルカム37とボルト23による扉21の開放可能状態または開放不可状態を選択的に切り換える。
【0039】
内外選択機構77は、レバー部材15が揺動軸55に支持された基板79上に、第1スライド板83及び第2スライド板85が重ねられて組み付けられる。重ねられた第1スライド板83及び第2スライド板85の双方のスライドガイド穴103には、ガイド軸81が貫通する。レバー部材15は、一対の係合軸97が、第1スライド板83及び第2スライド板85のそれぞれの係合軸連結穴101に挿入される。
【0040】
レバーハンドル19は、扉21の表裏面に平行な方向を回転方向としこの表裏面に直交する方向を軸線とする軸部41を有する。軸部41は、第1ハンドルカム35と第2ハンドルカム37とに連結される。係止杆17は、軸部41に対して略直交方向から進退自在に配設され、係止杆17の後退時に軸部41の回転を阻止する。
【0041】
次に、施解錠装置11の動作を説明する。
図6(a)はレバー部材15の摘み部59が裏面側に設定された内外選択機構77の平面図、(b)はレバー部材15の摘み部59が表面側に設定された内外選択機構77の平面図、
図7は
図6(a)の状態の施解錠装置11の正面図、
図8は
図6(b)の状態の施解錠装置11の正面図である。
施解錠装置11は、内外選択機構77の摘み部59が、
図6(a)に示すように、扉21の裏面29(室内面)側に向けられて揺動されると、第2スライド板85がフロント板39から離反する方向に後退し、
図7に示すように、係止杆17が第2回転阻止カム89を回転する。回転された第2回転阻止カム89は、第2ハンドルカム37の回転規制を解除する。すなわち、裏面29のレバーハンドル19がアンチパニックの設定状態となる。一方、第1スライド板83は、フロント板39に接近する方向に進出する。進出した第1スライド板83は、係止杆17が第1回転阻止カム87を回転させない。これにより、
図7に示すように、第1ハンドルカム35は、第1回転阻止カム87により回転が阻止されたまま(非アンチパニック設定)の状態となる。すなわち、扉21の表面27側のレバーハンドル19が操作できない。
【0042】
一方、施解錠装置11は、内外選択機構77の摘み部59が、
図6(b)に示すように、扉21の表面27(室外面)側に向けられて揺動されると、第1スライド板83がフロント板39から離反する方向に後退し、
図8に示すように、係止杆17が第1回転阻止カム87を回転させる。回転された第1回転阻止カム87は、第1ハンドルカム35の回転規制を解除する。すなわち、表面27のレバーハンドル19がアンチパニックの設定状態となる。一方、第2スライド板85は、フロント板39に接近する方向に進出する。進出した第2スライド板85は、係止杆17が第2回転阻止カム89を回転させない。これにより、
図8に示すように、第2ハンドルカム37は、第2回転阻止カム89により回転が阻止されたまま(非アンチパニック設定)の状態となる。
【0043】
図9はロック装置によりロックが解除された施解錠装置11の正面図である。
なお、本実施形態での施解錠装置11は、ケース13の上半部にシリンダー錠やサムターンと連動連結される機構部分を備えて錠機構25を構成しており、シリンダー錠やサムターンの操作により錠機構25が回転されると、ギヤカム105が
図9の反時計回りに回転される。これにより、第1回転阻止カム87または第2回転阻止カム89が時計回りに揺動され、第1ハンドルカム35または第2ハンドルカム37の回転規制を解除する。つまり、施解錠装置11は、シリンダー錠側またはサムターン側のレバーハンドル19が回転操作可能となる。
【0044】
次に、上記した構成の作用を説明する。
本実施形態に係る施解錠装置11では、裏板45の長穴57に、レバー部材15の摘み部59が配置される。レバー部材15は、摘み部59が長穴57の長軸方向に揺動される。摘み部59を介して揺動されたレバー部材15は、フロント板39から奥方向に向かい互いに平行となって延設された一対の係止杆17を、第1ハンドルカム35または第2ハンドルカム37に対してそれぞれを交互に突出または後退させる。第1ハンドルカム35または第2ハンドルカム37は、一対の係止杆17のそれぞれが突出または後退することにより、作動が許容または作動が阻止される。第1ハンドルカム35または第2ハンドルカム37は、係止杆17により作動が阻止されることで、レバーハンドル19からボルト23への操作力の入力を断つ。つまり、扉21を開放不可状態とする。一方、第1ハンドルカム35または第2ハンドルカム37は、係止杆17により作動が許容されることで、レバーハンドル19からボルト23へ操作力を入力する。つまり、扉21を開放可能状態とする。従って、レバー部材15の揺動により、一対の係止杆17を交互に進退させる簡単な機構で、アンチパニックの設定状態を選択的に切り換えることができる。
【0045】
そして、施解錠装置11では、レバー部材15が揺動されると、摘み部59が裏板45に形成された長穴57の長軸に沿う方向で移動する。裏板45は、ケース13に取り付けられるフロント板39により覆われる。レバー部材15は、裏板45にフロント板39が取り付けられることにより、摘み部59がフロント板裏面に係合する。これにより、レバー部材15は、フロント板39が取り付けられた際に設定された位置で、揺動が規制された状態で保持される。その結果、アンチパニックの設定を容易に行えるとともに、設定状態を確実に保持することができる。
【0046】
また、施解錠装置11では、レバー部材15が、扉21に設けられたケース13に対して垂直方向の揺動軸55により揺動自在に支持される。従って、レバー部材15は、水平方向に揺動する。水平方向に揺動するレバー部材15は、摘み部59が水平方向となった長穴57の長軸に沿って移動する。すなわち、摘み部59は、扉21の表面27または裏面29に向けられて揺動する。このレバー部材15の揺動方向は、係止杆17の第1ハンドルカム35または第2ハンドルカム37への突出方向と一致する。これにより、摘み部59が向けられた側の第1ハンドルカム35または第2ハンドルカム37は、係止杆17の突出により扉21が開放可能状態となる。その結果、扉21の表裏面におけるアンチパニックの設定方向と、レバー部材15の摘み部59の方向とを関連づけることができ、設定時の操作性を向上させ、設定状態の確認が判りやすくなる。
【0047】
さらに、施解錠装置11では、扉21の表裏面に設けられたそれぞれのレバーハンドル19には、レバーハンドル19と一体に回転するカム板69が固定されている。従って、扉21の表裏面におけるそれぞれのレバーハンドル19は、カム板69を介して、係止杆17により回転が許容または阻止される。その結果、扉21の表裏面におけるそれぞれのレバーハンドル19を、第1ハンドルカム35及び第2ハンドルカム37のそれぞれに設けられたカム板69に係止杆17を係止する簡単な構造で回転制御できる。
【0048】
また、施解錠装置11では、一対のレバーハンドル19は、それぞれが軸部41を有する。それぞれの係止杆17は、軸部41に向かって交互に進退する。それぞれの軸部41に連結された第1ハンドルカム35及び第2ハンドルカム37は、進出した係止杆17により、回転が許容される。一対のレバーハンドル19は、回転が許容された第1ハンドルカム35または第2ハンドルカム37により、軸部41を介して回転が許容される。その結果、レバーハンドル19の軸部41の回転を、軸部41を中心とした円の接線方向で進退移動する係止杆17により確実に規制できる。
【0049】
さらに、施解錠装置11では、第1ハンドルカム35及び第2ハンドルカム37のそれぞれがリンク部材(第1回転阻止カム87及び第2回転阻止カム89)を有する。第1回転阻止カム87及び第2回転阻止カム89は、係止杆17が進出または後退されることにより、第1ハンドルカム35または第2ハンドルカム37とボルト23との連動を許容または阻止する。つまり、第1ハンドルカム35または第2ハンドルカム37とボルト23との連動が、第1回転阻止カム87及び第2回転阻止カム89を介することによる係止杆17の間接的な進退動作により制御される。その結果、係止杆17が、第1回転阻止カム87及び第2回転阻止カム89を介してボルト23の連動許容または阻止を制御するので、係止杆17の強度を小さく設定できる。
【0050】
図10はレバー部材15の摘み部59が中間位置で設定された施解錠装置11の平面図である。
なお、施解錠装置11は、摘み部59の揺動範囲が、長穴57の長手方向一端と他端の2つの位置と、この2つの位置の中間の1つの位置との3つの位置を含み、摘み部59の3つの位置のそれぞれで一対の係止杆17の各進退位置の組合せが異なる。
【0051】
この施解錠装置11では、扉21の表裏面のうち、摘み部59が向けられた側の係止杆17がフロント板39の反対側へ進出すると、第1ハンドルカム35または第2ハンドルカム37とボルト23との連動が許容可能な状態となる。つまり、扉21は、摘み部59が向けられた表面27または裏面29での2通りのアンチパニックの設定が可能となる。また、一対の係止杆17は、摘み部59が長穴57の長軸に沿う中央位置に配置されると、第1ハンドルカム35及び第2ハンドルカム37に対して同一距離の進退位置となる。これにより、扉21は、アンチパニックの設定が、表裏面の何れかがアンチパニック設定される2通りと、表裏面の双方がアンチパニック設定、または非アンチパニック設定とされる1通りの合計3通りの設定が可能となる。その結果、摘み部59を長穴57に沿って配置することで、扉21の表裏面におけるアンチパニックの状態を3通りで設定できる。
【0052】
従って、本実施形態に係る施解錠装置11によれば、扉21の表裏面におけるアンチパニックの状態が簡単・簡素な機構で分かりやすく切り換えできる。
【0053】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。本明細書の記載に基づいて当業者が周知の技術で変更し得る技術思想は本発明の保護を求める範囲に含まれる。
【0054】
特に、本発明の上記実施形態における
図5に示す内外選択機構77は、上述した錠機構25の構成の他に、種々の錠機構に組み込むことが可能であり、すなわち、レバー部材15と一対の係止杆17がケース13に配設されて、レバー部材15の揺動操作にて一対の係止杆17がそれぞれに交互に突出または後退する動作が行われ、解錠状態などの開放可能状態と施錠状態などの開放不可状態とを選択的に切り換えることが可能となっている。以下に、種々の錠機構として例をあげ、本発明の内外選択機構77が組み込まれた他の実施形態1~8を説明をする。なお、上述した実施形態と同等の個所については説明を省略し同一の符号を付して説明する。
【0055】
図11は他の第1実施形態の施解錠装置の正面図である。
例えば、
図11に示すように、ハンドルカム35のカム板69の先端に、連動カム201が位置し、この連動カム201には連係カム203が接する。ボルト23の上面には、ロックアーム205が上下方向に揺動することで進退し係脱するよう配置される。ロックアーム205の上方には、本発明の内外選択機構77が配置される。この内外選択機構77の係止杆17には、スライダ207が連結されており、スライダ207の下端にはヘ字状の揺動アーム209が揺動自在に設けられる。内外選択機構77のレバー部材15を作動させることで、係止杆17が突出または後退する動作となり、これに連結されるスライダ207が図中左右方向にスライド移動する。このスライド移動により、下端の揺動アーム209がロックアーム205と連係カム203との間に介設する位置(図中二点鎖線)または後退する位置(図中実線)となる。揺動アーム209が係止杆17により突出方向に移動されると、カム板69及び連動カム201の揺動から連係カム203の揺動が伝わって揺動し、その揺動をロックアーム205に伝える。これにより、ロックアーム205はボルト23から離れ、ボルト23の動作を干渉することがない。すなわちハンドルカム35の回転によりボルト23の後退移動を行うことが可能となる。この他の第1実施形態では、錠機構25の内部に配設される揺動アーム209や連動カム201,連係カム203で構成される連動機構の一部である揺動アーム209を、内外選択機構77の係止杆17と連係させて、連なって構成される連動機構から離脱させたり介設状態とさせることで、つまり連動を伝達する中途の部材を配置したり除いたりして動作の切替が行えるようになる。
【0056】
図12は他の第2実施形態の施解錠装置の正面図である。
また、
図12に示すように、錠機構25には、上下方向に移動自在な連係杆部材301が上下に亘って配設され、この連係杆部材301の上端には連動ピン303が設けられ、下端には揺動板305が設けられている。上端の連動ピン303は、内外選択機構77の係止杆17に係合しており、具体的には係止杆17の上縁に形成される斜辺部17A上に摺動自在となって連動ピン303が配置される。つまり、係止杆17の水平移動に連動して連係杆部材301が斜辺部17A上を摺動する連動ピン303によってケース13内を上下動するようになっている。下端の揺動板305は略中央が軸307によって連係杆部材301の下端と連結されており、図中右方に延出する一端側305aは下面が湾曲形成された略半月形状とされ、他端側は短尺な押下片305bとされている。一端側305aは、カム板69の上部に位置し、このカム板69と接離自在となる。また、押下片305bは、ストッパー309の基端部に設けられるピン311に当接する。ストッパー309は略中央を揺動軸313に揺動自在となって設けられ、ボルト23の上部に、ボルト23に沿って配置される。揺動軸313にはコイルバネ315が取り付けられ、このコイルバネ315はストッパー309の先端をボルト23の段部317に係合させる付勢力を備える。
このように構成された施解錠装置では、レバー部材15により係止杆17をスライドさせることで連係杆部材301が下降した状態(図中実線)と上昇した状態(図中二点鎖線)とに切り換えられ、これにより揺動板305のカム板69に対する位置が切り換えられる。
図12の実線にて示す連係杆部材301の下降した状態では、揺動板305がカム板69に当接する。カム板69の回動によって、揺動板305は軸307を中心に揺動し、押下片305bがピン311を介してストッパー309をバネ315の付勢力に抗してその先端をボルト23の段部317から後退させ係止しない位置に揺動させる。このことから、カム板69の回動によって、ボルト23が後退が可能となる。一方、レバー部材15によって係止杆17を介して連係杆部材301を上昇させる(図中二点鎖線)と、揺動板305はカム板69から離脱する。これにより、ストッパー309はバネ315の付勢力によって先端がボルト23の段部317に係合状態となる。すなわち、ボルト23は突出状態が維持され、カム板69の回動が行えない状態となる。
この他の第2実施形態では、錠機構25の内部に配設される連係杆部材301を、係止杆17の斜辺部17Aにて昇降可能に構成させ、この連係杆部材301に設けられる揺動板305の配置位置を切り換えることを可能とし、ボルト23の進退の可否をストッパー309の切り換え動作で行い、そして、カム板69の回動の可否を行えるようにした。上述した他の第1実施形態と同様ではあるが、係止杆17に形成した斜辺部17Aにて係止杆17のスライド移動方向を直交方向である上下方向に変換して連係杆部材301の移動方向を変換させており、これによって選択的な切り換えが可能となっている。
【0057】
図13は、他の第3実施形態の施解錠装置の要部拡大正面図を示した図である。
さらに、
図13に示すように錠機構では、内外選択機構77はボルト23の下方に配置され、ボルト23頭部の下部にレバー部材15が位置し、係止杆17の先端がハンドルカム35の近傍に向いている。この施解錠装置では、ハンドルカム35の回動によってリトラクター401を揺動させ、このリトラクター401に係合するボルト23の係合板65を介してボルト23を進退動作させる。ハンドルカム35には、その軸線方向に直交する方向に凹設される係合凹部407が形成されている。内外選択機構77の係止杆17には連結ピン415が設けられており、係止杆17と直交する上下方向にスライド移動自在に配設された連動板403の傾斜穴413内に摺動自在に挿着されている。連動板403にはピン412が突設されており、内外選択機構77とハンドルカム35との間に配設される連動アーム409の連動片411と係止する。連動アーム409は円筒状の基部を有し、ケース13に設けられる軸417に回動自在に設けられ、外側面に連動片411と連動腕419とが突設されている。連動腕419には、ロック杆405が連結される。ロック杆405は、ハンドルカム35に対して進退自在に設けられており、ハンドルカム35の係合凹部407に嵌入または離脱するよう配設されている。このように構成された施解錠装置は、レバー部材15の操作で係止杆17のスライド移動が行われ、これに連動する連動板403の上下動が連動片411を介して連動アーム409を回動させ、この回動にて連動腕419を揺動させ、ロック杆405のスライド移動を行う。ロック杆405は、進出することでハンドルカム35の係合凹部407に嵌入し、これによりハンドルカム35の回動を抑止する。またロック杆405が後退すると、ハンドルカム35の抑止が解除され、ハンドルカム35は回動自在となる。すなわち、ハンドルカム35の回動がリトラクター401を揺動させ、ボルト23の後退動作を可能とする。
この他の第3実施形態では、内外選択機構77の操作にて、係止杆17の突出または後退の移動が、連動板403,連動アーム409,ロック杆405を動作させて、ロック杆405をハンドルカム35に嵌合または後退させることとなって、ハンドルカム35の回動を直接的に規制または規制解除とする。これにより、ハンドルレバーなどの操作部材の操作を無効にすることが可能となるとともに、通常操作を可能とし、これらの操作を切り換えることが可能となる。
【0058】
図14は、他の第4実施形態の施解錠装置の要部拡大正面図を示した図である。
また、
図14に示すように、
図13と同様のハンドルカム35の構成として、この例においては係止杆17の先端を直接ハンドルカム35の係合凹部501に嵌入または後退とする。上記
図13の構成に比べ簡素に構成できるとともに、係止杆17がハンドルカム35の操作の可否を切り換えでき、リトラクター503の揺動を規制または規制解除とすることができる。
【0059】
図15は、他の第5実施形態の施解錠装置を示す正面図である。
また、
図15に示すように、錠機構25に電磁プランジャ601が具備されており、この電磁プランジャ601の作動杆603の進退動作により、作動片603の先端に連結されている駆動片605が図中左右方向に移動自在とされる。駆動片605はケース13に固定される固定軸607をガイドとして設けられる。固定軸607には従動片609が揺動自在に設けられる。従動片609には、ヘ字状のガイド溝611が縦方向に沿って形成され、下端には突片613が延設される。この突片613は、L字状のロック部材615の上端に設けられる可動ピン617と係合する。ロック部材615は、中央が揺動軸621にて軸支され揺動自在とされており、下端619は、ハンドルカム(図示せず)のカム板69の先端と係脱自在とされる。内外選択機構77は、電磁プランジャ601の上部に配置される。この例での係止片17は、先端の上縁に傾斜辺17Aが形成される。係止片17に近接して、係止片17の上方には、レバー623が配設される。レバー623は、基端を軸625にて軸支され先端側を揺動自在とされる。このレバー623の先端は、連結ピン627を介して昇降レバー629が連結される。また、レバー623の中途にはピン631が設けられ、係止杆17の傾斜辺17Aに摺動自在に当接している。昇降レバー629には摺動ピン633が設けられており、この摺動ピン633は、従動片609のガイド溝611にスライド移動自在に挿着されている。
この第5実施形態では、レバー部材15の操作で係止片17が進退自在にスライドされ、これにより、レバー62が揺動される。
図15(a)に示すように、係止片17が進出し、レバー623の先端が下方位置の際には、昇降レバー629が降下しており、従動片609のガイド溝611の屈曲によって突片613が略垂直位置となって、ロック部材615を傾かせ、これによりロック部材615とカム板69とを係合状態とする。すなわち、カム板69の揺動を規制して、ハンドルカムの回動を規制する。このことから、扉の開放操作を不能とし、開放不可状態とする。一方、
図15(b)に示すように係止杆17を後退させるとレバー623を揺動し、昇降レバー629を上昇させる。すると摺動ピン633を上方へと移動させ、従動片609を揺動させる。これにより、ロック部材615を揺動させ、カム板69との係合状態を解除する。すなわちハンドルカムが回動自在となる。このことから、扉の開放操作を可能とし、開放可能状態とする。このように、内外選択機構77のレバー部材15の操作によって、カム板69の回動の可否を切り換えることが可能となる。
【0060】
図16は、他の第6実施形態の施解錠装置の要部拡大正面図である。
図16に示すように、ボルト23の進退スライドを支持する側板701には、先端が下向きに折曲形成されたL字状の係合片703が配設される。内外選択機構77は、ボルト23の下方に配設される。係止片17の先端側には、揺動ロック片705が配設される。揺動ロック片705は、基端がハンドルカム35のカム板69先端に枢軸707を介して揺動自在に設けられる。揺動ロック片705は先端が上向き鉤状に形成されているとともに、係合凹部709を有し、係合凹部709は係止片17の先端に近接配置され、この係止片17と係脱自在とされる。この第6実施形態では、レバー部材15の操作によって、係止片17を進退操作すると、揺動ロック片705に対して係脱することとなる。係止片17が突出し、図中右方向にスライドすると、二点鎖線で描いたように揺動ロック片705と係合し、揺動ロック片705の先端を下降させた状態とする。すると、揺動ロック片705の先端は係合片703と係合しない。一方、係止片17が後退した状態では、揺動ロック片705の先端が上昇位置となって、これにより係合片703と係合しあうこととなる。すなわち、ハンドルカム35の回動を規制することになる。このハンドルカム35の回動は、上記ボルト23とは別体のラッチボルト(図示せず)の引き込み操作を行うもので、扉の開放を可能とする。すなわち、上述した実施形態のように、表側機構と裏側機構とが構成される場合に、一方ではハンドルカム35の回転が可能とされ、他方では回転を不可とする。このように係止片17の進退操作にて、扉の開閉の操作を切替が可能となる。
【0061】
図17は、他の第7実施形態の施解錠装置の要部拡大正面図である。
図17に示すように、ハンドルカム35には、略L字状の係合板801が連動連結され、この係合板801には作動レバー803が連結されている。作動レバー803は、先端805が垂直上方向に延び、ボルト23の基端に係止する。すなわち、レバーハンドルなどの操作部材による操作にてハンドルカム35を回動させ、これに連動して揺動する係合板801を介し、作動レバー803を揺動させてボルト23の後退操作を行うようになっている。内外選択機構77は、ボルト23の下部に配置される。この実施形態では、係止杆17の先端に押し当て部807が延設される。内外選択機構77の下部には、揺動片809が設けられる。揺動片809は、基端が軸支されて先端が上下方向に揺動自在とされ、先端に向けて下面が緩やかに湾曲して形成されるとともに、先端には当接片811が上方向に突設されている。この当接片811は、押し当て部807と対向する。揺動片809と係合板801の上縁との間には、係止片813が配設される。係止片813は、基部が作動レバー813の中途部分に軸支され、先端がL字状に形成されて、係合板801の上縁凹部815に係脱自在になっている。また、この係止片813の上面は、揺動片809の下面と接離自在とされる。
このように構成された施解錠装置では、
図17に示すようにレバー部材15にて係止杆17を進出させると、押し当て部807が当接片811を押し、揺動片809の先端側を下方へ揺動させる。揺動片809は、下面にて係止片813を押し下げる方向に揺動させる。係止片813は、その先端が係合板801の凹部815に係合し、これにより、作動レバー803と係合板801とを連動連結状態とし、共軸817を中心に同時に揺動可能となる。すなわち、ハンドルカム35の回動により係合板801が揺動するとともに、作動レバー803を揺動させ、先端805がボルト23の引き込み動作を行う。一方、係止杆17が後退し(図中二点鎖線)、揺動片809の揺動を行わないと、係止片813は下方に揺動せず、係合板801の上縁から離間する位置となる。すると、ハンドルカム35の回動にて揺動する係合板801は共軸817を中心に揺動するが、作動レバー803と連結されていないことから作動レバー803は揺動を行わない。これにより、ボルト23の引き込み操作が行われないこととなる。このように、係止杆17の進退によって、作動レバー813と係合板801との連結が行われるか行われないかを切り換えることが可能となる。
【0062】
図18は、他の第8実施形態の施解錠装置の要部拡大平面図である。
図18に示すように、連結揺動部材15をケース13の内方に配設し、このケース13内に配設される一対の係止杆17は、一端である操作端部17aを戸先部であるフロント板39に穿設される貫通孔40を介して表出させる構成とする。すなわち、この他の第8実施形態では、上述した各実施形態での内外選択機構77を前後逆に配置して構成している。連結揺動部材15は、ケース13奥方に位置し、中央を軸支される構成とし、軸線を垂直方向とする。一対の係止杆17は、他端である先端部18が、連結揺動部材15の両端部に連動連結される。一対の係止杆17は、基板79に立設されるガイド軸81に案内され、連結揺動部材15を支持する揺動軸55を挟んで配置される。そして、連結揺動部材15の縁部と係止杆17の先端部18が、当接軸部96に当接している。当接軸部96は、前述した第1回転阻止カム87及び第2回転阻止カム89と同様な部材(図示せず)に設けられ、それぞれの当接軸部96がフロント板39に接近する方向にカム用バネ(図示せず)により常時付勢されることとしてもよい。
このように構成された施解錠装置では、例えば
図18(a)に示すように、一方の係止杆17である図中上側の操作端部17aを押動し、貫通孔40に押し込むように操作することで、この係止杆17の先端部18がケース13の奥方向に前進し、この先端部18に連結される連結揺動部材15を揺動させる。連結揺動部材15は揺動軸55を中心に揺動し、この揺動によって、他方の係止杆17の先端部18を後退させるよう従動させる。他方の係止杆17は操作端部17aが貫通孔40より突出する。同様に
図18(b)に示すように、他方の係止杆17を押動操作することで、一方の係止杆17の操作端部17aは貫通孔40より突出するように従動する。これにより、各当接軸部96は連動し、この当接軸部96の交互の動きによって、図示しないカムやリンク部材等が作動し、上述した各実施形態と同様に扉21の開放可能状態と開放不可状態を選択的に切り換えることとなる。
なお、この一対の係止杆17としては、操作端部17aをケース13内に押し込むように操作するような説明としたが、この操作端部17aを引き出すような操作でも同様に動作し、すなわち、これら一対の係止杆17が、連結揺動部材15にて連動連結されていることで、一方の先端部18がケース13内を前進すれば他方の先端部18が後退するものであり、一対の係止杆17が連結揺動部材15にて交互に動作して内外選択機構77となり、この揺動によって一対の係止杆17がそれぞれに交互に突出または後退する動作が行われ、解錠状態などの開放可能状態と施錠状態などの開放不可状態とを選択的に切り換えることが可能となっている。
【0063】
以上の記載からして本明細書は次の事項が含まれるものである。
(1)扉の表裏面に配設される操作部材と、
前記扉に設けられ、該扉の表面と裏面のそれぞれの前記操作部材からの入力を受ける第1ハンドルカムと第2ハンドルカムを備えるとともに、該第1ハンドルカムまたは第2ハンドルカムに連動し、前記扉の解錠状態または施錠状態を実現する進退自在なボルトを備えた錠機構と、
を具備する施解錠装置であって、
前記扉に設けられ、前記錠機構を内蔵するとともに、前記扉の木口面に表出するフロント板を備えるケースと、
該ケースを構成するフロント板裏面の近傍に位置し該フロント板裏面に平行で垂直な軸線で配設される揺動軸を備え、前記フロント板裏面に沿って設けられる裏板に前記揺動軸の軸線に直交する水平方向を長軸として形成される長穴を貫通する先端を有する操作杆を有し、前記揺動軸を中心に前記長穴の長手に沿って水平方向に揺動自在となるレバー部材と、
該レバー部材の本体部に前記揺動軸を中心に対称位置となり、該揺動軸の軸線と平行な軸線で揺動自在に連動連結される一対で構成されて、前記フロント板から前記ケース奥方向に向かい互いに平行となって延設され、一方が第1ハンドルカムに他方が第2ハンドルカムに対して突出または後退し、突出状態時に該第1ハンドルカムまたは第2ハンドルカムの動作を阻止し、後退状態時に該第1ハンドルカムまたは第2ハンドルカムの動作を許容して、該第1ハンドルカムと前記ボルトまたは前記第2ハンドルカムと前記ボルトによる連動連結を選択的に切り換え、前記扉のいずれか一方の面側で該扉の施錠状態を継続させ、いずれか他方の面側では前記操作部材による連動操作を可能とする係止杆と、
を具備することを特徴とする施解錠装置。
この施解錠装置によれば、上記した実施の形態に係る施解錠装置と同様の作用により、扉の表裏面におけるアンチパニックの状態が簡単・簡素な機構で分かりやすく切り換えできる。
【符号の説明】
【0064】
11…施解錠装置
13…ケース
15…連結揺動部材(レバー部材)
17…係止杆
17a…操作端部
18…先端部
19…操作部材(レバーハンドル)
21…扉
23…連動機構(ボルト)
25…錠機構
27…表面
29…裏面
31…表側機構
33…裏側機構
35…第1ハンドルカム
37…第2ハンドルカム
39…戸先部(フロント板)
41…軸部
45…裏板
55…揺動軸
57…長穴
59…切替操作部(摘み部)
69…カム板
87…リンク部材(第1回転阻止カム)
89…リンク部材(第2回転阻止カム)