(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】包装シート、及び包装吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20220524BHJP
B65D 75/26 20060101ALI20220524BHJP
B65D 75/20 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
A61F13/15 220
A61F13/15 210
B65D75/26
B65D75/20
(21)【出願番号】P 2018182549
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】田篭 純太
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/080757(WO,A1)
【文献】特表2007-521117(JP,A)
【文献】特開2014-198064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15
B65D 75/26
B65D 75/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品用の包装シートであって、
長手方向一端を含む第1領域が長手方向他端を含む第2領域に重なるように吸収性物品を包み、短手方向縁部で開封可能にシールされシール部が形成されることによって前記吸収性物品を包装することができ、
前記吸収性物品を包装した状態で外部に露出する露出領域
の外面の、前記シール部も含む全体にわたって、前記吸収性物品が外部から視認されにくいように
30%超~100%以下の面積率で着色剤層が形成されており、
前記シール部において、前記第1領域と前記第2領域との間には着色剤層が形成されていないか又は30%以下の面積率で着色剤層が形成されて
おり、
前記第2領域のうち前記露出領域の外面全体にわたって、30%超~100%以下の前記面積率で着色剤層が形成されており、且つ前記第2領域のうち前記第1領域が重ねられる領域の外面全体にわたって、着色剤層が形成されていないか又は30%以下の面積率で着色剤層が形成されている、包装シート。
【請求項2】
前記シール部は、5~25mmの幅を有する、請求項
1に記載の包装シート。
【請求項3】
前記第2領域のうち前記露出領域に含まれる領域は、前記長手方向他端から離れるにつれ漸次又は段階的に面積率が大きくなるよう着色剤層が形成された部分を含む、請求項
1又は2に記載の包装シート。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一項に記載の包装シートと、前記包装シートによって包装された吸収性物品とを備える包装吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装シート、及び包装吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッドといった吸収性物品は、衛生面から、また持ち運びを便利にするために、包装シートによって包装された状態で提供されるのが一般的である。このような包装された吸収性物品としては、吸収性物品を細長形状の包装シート上に載置し、包装シートを長手方向に巻き三つ折り(tri-fold)することで吸収性物品を包み、短手方向縁部をヒートシール等でシールしたものが知られている(例えば、特許文献1の
図8等)。巻き三つ折りでは、包装シートは、シートの一端側の領域の外面上に他端側の領域の内面が接触するようにして重ねられ、折り畳まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吸収性物品が人の目に触れられることは、あまり望まれていない。そのため、包装シートによって包装された吸収性物品は、一見してその中身が分からないようになっていることが好ましい。よって、包装シートに遮蔽機能を付与すべく、包装シートの面に印刷等が施されて着色剤層が形成されていることが多い。
【0005】
しかしながら、包装シートの、例えば外面に着色剤層が形成されている場合、包装シートを巻き三つ折りしてシールすると、一端側の領域の外面とその上に重ねられる他端側の領域の内面との間に着色剤層が存在することになるため、シール性が低下し、シール部分が開きやすくなる場合がある。
【0006】
上記の点に鑑みて、本発明の一態様は、遮蔽機能を有するとともに、シール性の高い包装吸収性物品を構成することのできる吸収性物品用の包装シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、吸収性物品用の包装シートであって、長手方向一端を含む第1領域が長手方向他端を含む第2領域に重なるように吸収性物品を包み、短手方向縁部で開封可能にシールされシール部が形成されることによって前記吸収性物品を包装することができ、前記吸収性物品を包装した状態で外部に露出する露出領域には、前記吸収性物品が外部から視認されにくいように着色剤層が形成されており、前記シール部において、前記第1領域と前記第2領域との間には着色剤層が形成されていないか又は30%以下の面積率で着色剤層が形成されている。
【0008】
上記第一の態様による包装シートは、長手方向一端を含む第1領域が長手方向他端を含む第2領域に重なるように吸収性物品を包み、短手方向縁部のシールゾーンが開封可能にシールされることによって吸収性物品を包装することができるものである。よって、シール性の高い包装吸収性物品を、複雑な工程を経ることなく構成することができる。
【0009】
そして、本態様では、露出領域には、吸収性物品が外部から視認されにくいように着色剤層が形成されているので、一見して包装吸収性物品の中身が分かりにくく、十分な遮蔽機能を備えている。その一方で、シール部において、第1領域と第2領域との間に着色剤層が形成されていないか又は30%以下の面積率で着色剤層が形成されているので、上記の遮蔽機能を維持しつつ、シール部におけるシール性の高い包装吸収性物品を提供することができる。
【0010】
本発明の第二の態様では、前記露出領域には、30%超~100%以下の面積率で着色剤層が形成されている。
【0011】
上記第二の態様によれば、所定の面積率で着色剤層が形成されているため、遮蔽機能を高めることができ、またデザイン性も高めることができる。
【0012】
本発明の第三の態様では、前記シール部は、5~25mmの幅を有する。
【0013】
上記第三の態様によれば、シール部が所定の幅を有することで、十分なシール性を確保できるとともに、再開封を容易にすることができる。
【0014】
本発明の第四の態様では、前記第2領域のうち前記露出領域に含まれる領域は、前記長手方向他端から離れるにつれ漸次又は段階的に面積率が大きくなるよう着色剤層が形成された部分を含む。
【0015】
上記第四の態様によれば、第1領域を第2領域に重ねる際に位置ずれした場合であっても、第2領域における露出領域と非露出領域との間の境界を目立たないようにすることができ、デザイン性を高めることができる。
【0016】
本発明の第五の態様は、上記第一から第四のいずれかの態様に記載の包装シートと、前記包装シートによって包装された吸収性物品とを備える包装吸収性物品である。
【0017】
上記第五の態様によれば、上記第一から第四のいずれかの態様で得られる効果と同様の効果を奏する包装吸収性物品を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一形態によれば、遮蔽機能を有するとともに、シール性の高い包装吸収性物品を構成することのできる吸収性物品用の包装シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一形態による包装シートの展開状態を外面から見た図である。
【
図2】吸収性物品を
図1の包装シートで包装してなる包装吸収性物品を示す図である。
【
図7】本発明の別の形態による包装シートの展開状態を外面から見た図である。
【
図8】吸収性物品を
図7の包装シートで包装してなる包装吸収性物品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳説する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、図面は、発明の理解を助けるための模式的なものでる。
【0021】
図1に、吸収性物品用の包装シート10の一形態を示す。
図1は、広げられた包装シート10の内面に吸収性物品1が載置された状態を、外面(吸収性物品1が載置された面の反対側の面)から見た図である。
図1は、包装吸収性物品100が展開された状態を示す図ともいえる。また、
図2に、包装シート10により吸収性物品1を包装した後の状態、すなわち包装吸収性物品100の平面図を示す。さらに、
図3に、
図2のI-I線断面図を、
図4に、
図2のII-II線断面図を示す。
【0022】
図1に示すように、包装シート10は長方形の細長形状を有している。
図1における第1方向D1が、包装シート10の長手方向となっており、第1方向D1に直交する方向が短手方向D2となっている。包装シート10の寸法は、包装する吸収性物品1の大きさや形状にもよるが、例えば、包装シート10を広げた状態(
図1)で、第1方向D1の長さは120~500mm程度であってよく、第2方向D2の長さは75~180mm程度であってよい。また、折り畳まれた状態(
図2)では、第1方向D1の長さは50~160mm程度であってよい。
【0023】
包装シート10としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリエステル、ポリビニルアルコール等の樹脂フィルムや、不織布、ラミネート不織布(ポリラミ不織布を含む)等を用いることができる。印刷によるデザイン等を重視するのであれば樹脂フィルムが好ましく、風合いやソフト感等を重視するのであれば不織布等が好ましい。
【0024】
包装シート10は、吸収性物品1を内面に載置した後、巻き三つ折り(tri-fold)することによって吸収性物品1を包むことができる。すなわち、吸収性物品1を覆って収容することができる。ここで、巻き三つ折りとは、シート状体を一方向で3つの領域に分割して、その3領域のうちの両端の領域を同じ側に折って少なくとも部分的に重ね合せるようにして折る折り方を指す。本形態では、長手方向D1の一端11を含む第1領域R1を、長手方向D2の他端12を含む第2領域R2の上に重なるようにして折ることができる。より具体的には、
図1の状態で見て、第2領域R2を折線L2にて山折りし、続いて第1領域R1を折り線L1にて山折りすることによって、包装シート10を折り畳むことができる。
【0025】
包装シート10は、吸収性物品1とともに折り畳まれ、これにより、
図2~
図4に示すような包装吸収性物品100が得られる。包装シート10の一端11には、タグテープ15が設けられており、包装シート10を吸収性物品1とともに折り畳んだ後には、このタグテープ15によって第1領域R1を第2領域R2に止めることができる。また、開封時には、タグテープ15を持って引っ張ることで包装吸収性物品100を展開させることができる。
【0026】
なお、第1領域R1と第2領域R2との間の中央の領域は、第3領域R3とする。また、第1領域R1のうち第2領域R2に重ねられる領域を第1重なり領域RA1とし、第2領域R2のうち第2領域R2が重ねられる領域を第2重なり領域RA2とする。
【0027】
包装シート10を巻き三つ折りして吸収性物品1をくるんだ直後の状態では、短手方向D2の縁部13、13は開いたままであるので、短手方向D2縁部13、13を開封可能にシールすることで、包装シート10によって形成される空間内に吸収性物品1を封入することができる。これにより、吸収性物品1が埃や汚れに曝されないようにすることができるため、吸収性物品1を、包装吸収性物品100として衛生的に持ち運びできるようになる。図示の包装吸収性物品100においては、短手方向D2の両縁部13、13が開封可能にシールされることによって、シール部S、Sが形成される(
図2及び
図4にて斜線で図示)。
【0028】
図4に示すように、シール部S、Sは、包装シート10の折り返しによって形成された複数の層が互いに接合された部分である。よって、包装シート10の3以上の層が重ね合された場合には、そのうちの接触する2層同士が接合された状態となっている。
【0029】
なお、本明細書において、開封可能なシールとは、使用前の持ち運び等の通常の扱いにおいて自然に開かないように、且つ使用者が使用時に手で開くことができるように、接合されて形成されるシールである。また、開封可能なシールの強度は特に限定されないが、使用者が開封する際に包装シート10が破れにくくなっているものが好ましい。
【0030】
シール部S、Sのシールの形式は、使用者が、特別な道具を使わなくとも手で開封できるような強さでシールできるものであれば特に限定されず、ヒートシール、超音波シール等によって形成することもできるし、接着剤を用いることもできる。
【0031】
シール部S、Sは、包装シート10の短手方向の端縁から25mmまでの範囲内に形成されていてよい。また、シール部S、Sは、上記範囲内で、5~25mm程度の幅で形成することができる。よって、シール部S、Sは、例えば、短手方向の端縁から20mm以下の距離だけ離れて形成することができる。図示の形態では、シール部S、Sは、包装シート10の短手方向の端縁から所定の位置にわたって、且つ吸収性物品1を包装した状態の包装シート10の長手方向D1にわたって同じ幅で形成されている。シール部S、Sの幅は、長手方向D1にわたって一定でなく、変化していてもよい。
【0032】
展開された包装シート10においては、シール部S、Sが形成される領域をシールゾーンSZとする(
図1)。シールゾーンSZ、SZは、
図1に斜線で示すように、包装シート10の短手方向の両縁部13、13においてそれぞれ、長手方向D1の一端11から他端12まで延在している。
【0033】
なお、シール部S(シールゾーンSZ)は、シール処理が実際に行われた部分に加え、その処理の影響を受けて性質や状態が変化した周囲の部分を含み得る。例えばシールの方式がヒートシールである場合、ヒートシールによって形成される接合部のみならず、接合部の周囲で熱変性する等して材料が変化した部分又は変形した部分を含む。
【0034】
図5(a)に、
図1に示した包装シート10のシールゾーンSZの拡大図を示す。
図5(a)は、第2領域R2の他端12付近のシールゾーンSZ(ゾーンSZ
A1)の部分拡大図である。シールゾーンSZは所定の幅を有する帯状のゾーンであるが、微視的に見ると、
図5(a)に示すように、ドット状のシール処理部SDの集合体となっている。このシールゾーンSZのシール処理部SDのパターンは、包装吸収性物品100におけるシール部Sの接合部のパターンに相当する。
【0035】
シール処理部SDのパターンは、シールの形式に関わらず、シールゾーンSZ内で不連続になっていてもよいし(
図5(a))、また連続していてもよい。例えば、シール処理部SDが、シールゾーンSZ全体にわたって広がっていてもよい。すなわち、包装シート10の層同士がシール部Sの範囲全体にわたって接合していてもよい。また、線状のシール処理部が、並列して又は網目状に設けられていてもよい。
【0036】
図5(a)の形態では、シールゾーンSZの輪郭(シールゾーンSZとそれ以外の領域との境界線)は、曲線を含んでおり、離れて見ると波線として認識することができる。シールゾーンSZの輪郭を波線等にしてシールゾーンSZの幅を変化させることで、デザイン性を向上させるとともに、局所的にシール強度の弱い部分を構成してシール処理の強さとのバランスを図ることができる。
【0037】
図5(b)に、シールゾーンSZの変形例を示す。
図5(a)のシールゾーンSZも、ドット状のシール処理部SDが集合して構成されているが、本例では、シール処理部SDの平面視形状は正方形であり、また、シールゾーンSZの輪郭は直線となっている。
【0038】
なお、シール処理部SDの平面視形状は、円形及び正方形の他に、楕円形、多角形(三角形、正方形以外の四角形等を含む)、ハート形、滴形、星形、又はこれらの形状の一部とすることができる。
【0039】
包装シート10の、第1領域R1及び第3領域R3の全体、並びに第2領域R2の一部は、露出領域Reを形成している(
図1)。露出領域Reは、吸収性物品1を包装した状態で、外部に露出する領域である(
図2、
図3等)。この露出領域Reには、吸収性物品1が包装された状態で吸収性物品1が外部から視認されにくいように着色剤層18が形成されている。
【0040】
本明細書において、視認されにくいとは、包装吸収性物品100が人の視界に入った場合に、その中身が吸収性物品1であることをその人が直ちに認識できないことを指す。よって、例えば吸収性物品100を手にとって光にかざす等してよく観察した場合に、中身が吸収性物品1であることを認識できるかどうかは問わない。
【0041】
一般に、吸収性物品が携帯される際には、なるべく他人の目に触れないようにすることが望まれている。そのため、外出時等に吸収性物品を携帯する場合には、包装吸収性物品をさらに布で包んだりポーチに収容したりして、中身が吸収性物品であることが分からないようにするための努力をする使用者もいる。これに対し、本形態では、露出領域Reにおいて、包装シート10によって包装された吸収性物品1が外部から視認されにくいように着色剤層18が形成されているので、十分な遮蔽機能が発揮されている。よって、使用者は、吸収性物品を布に包んだりすることなく、例えばポケットティッシュやハンカチといった持ち物と同等又はそれに近い感覚で、気軽に携帯することができる。
【0042】
着色剤層の形成は、例えば、包装シート10の面にインクや塗料を塗布することによって行うことができる。インクの塗布方法としては、印刷、より具体的には、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、スクリーン印刷等が挙げられる。着色剤層の形成によって、包装シート10上に模様を描くこともできるし、文字や記号を記すこともできる。また、着色剤層の形成で用いられる着色剤(インク又は塗料)の色は問わない。着色剤の色には、赤、青、黄、黒等の色の他、白も含まれる。
【0043】
包装シート10に形成される着色剤層は、吸収性物品が外部から視認されにくいように形成されるのであれば、包装シート10のどちらの面に形成されていてもよい。また、着色剤層は、包装シート10の両面に形成されていてもよい。
図1~
図4に示す形態では、着色剤層18が包装シート10の外面に部分的に形成されており、内面には形成されていない。
【0044】
着色剤の種類や量によっては接触した物体に色移りしやすいものもあるが、図示のように、包装シート10の内面に着色剤層を形成しない、又は内面に形成される着色剤層の量を低減した場合には、着色剤層の着色剤が吸収性物品1に付着しにくくなる。一方、包装シート10の外面に着色剤層を形成しない、又は外面に形成される着色剤層の両を低減した場合には、包装吸収性物品を携帯する際に接触する物体に着色剤層の着色剤が付着することを低減又は防止することができる。
【0045】
露出領域Reには、着色剤層を、30%超~100%の面積率で形成することができる。本明細書において、着色剤層の面積率(着色剤面積率ともいう)とは、所定領域において塗布された着色剤が占める領域の面積の割合(%)を指す。よって、着色剤層をインクの印刷によって包装シート10の片面の所定領域に形成する場合、着色剤面積率は、その所定領域において印刷が施されている面積の割合となる。この場合、所定領域が全く印刷されていなければ面積率0%であり、所定領域全体を覆うように印刷されていれば(いわゆるベタ刷りされていれば)面積率は100%となる。
【0046】
露出領域Reにおける着色剤面積率が30%以下であると、遮蔽機能が低下し、外部から中味が視認されやすくなる可能性がある。また、露出領域Reにおける着色剤面積率は、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは65%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上とすることができる。
【0047】
上述のように、着色剤層が形成される面は、露出領域Reの外面であっても内面であってもよい。よって、露出領域Reにおける着色剤面積率は、包装シート10の露出領域Re全体の面積に対する、外面及び内面のどちらに形成されているかに関わらず露出領域Reに付着した着色剤層が延在する部分の平面視面積の割合とすることができる。
【0048】
包装シート10における着色剤面積率の調整は、所定領域全体で着色剤の濃淡を調整することによって行うこともできるし、着色剤によって100%覆われたベタ刷り部分と着色剤のない非印刷部分とを局所的に形成し、それらを組み合わせて行うこともできる。例えば、帯状のベタ刷り部分又はベタ刷りでないが着色剤面積率が比較的高い部分と、同様の帯状の非印刷部分を交互に配置することもできる。また、所定面積を有するベタ刷りの又はベタ刷りでないが着色剤面積率が比較的高い小部分(例えば円形、四角形等の平面視形状を有する部分)を局所的に形成し、それ以外の部分を非印刷部分とすることもできる。
【0049】
包装シート10は、第1領域R1が第2領域R2に重なるように吸収性物品1を包んで包装吸収性物品100を構成することができる(
図1~
図4)。そのため、吸収性物品1を包装シート10で包装した状態では、第1領域R1の内面と第2領域R2の外面とが少なくとも部分的に接触することとなる。よって、包装シート10の短手方向D2縁部13、13をシールする場合、例えばヒートシール又は超音波シールする場合には、通常は、第1領域R1の内面の材料と第2領域R2の外面の材料とが部分的に溶融して融着されることによって、第1領域R1の内面と第2領域R2の外面とが接合される。
【0050】
しかしながら、第1領域R1と第2領域R2との間に着色剤層が形成されている場合、例えば、第1領域R1の内面若しくは第2領域R2の外面又はその両方に印刷が施されている場合、第1領域R1が第2領域R2に単に重ねた状態では(力や熱を加えず、第1領域R1及び第2領域R2の材料が変形や変性していない状態では)、第1領域R1の内面の材料と第2領域R2の外面の材料とが直接的に接触することができない部分が生じる。そのため、包装シート10を巻き三つ折りして吸収性物品1を包んだ後に、短手方向D2縁部13、13でシールをしたとしても、着色剤層が妨げとなってシール性が低下する部分が生じ、シール部分全体のシール性が低下することになることがある。
【0051】
これに対し、本形態では、シール部S、Sにおいて、第1領域R1と第2領域R2との間に着色剤層が形成されていないか、又は面積率30%以下で着色剤層が形成されている。すなわち、第1領域R1の内面及び第2領域R2の外面のどちらに形成されるかに関わらず、シール部S、Sのうち第1領域R1と第2領域R2とが直に重なり合う、重なりシール部S
A、S
A(
図2において網掛けで示す)の面積に対する、第1領域R1と第2領域R2との間に存在する着色剤が占める平面視面積が、0~30%となっている。すなわち、重なりシール部S
A、S
Aには、第1領域R1と第2領域R2との間に着色剤層が存在しないか、又は30%以下の着色剤面積率で存在している。
【0052】
このように、本形態では、上述のように露出領域Reに吸収性物品が外部から視認されにくいように着色剤層18が形成されている一方で、シール部S、Sのうち、第1領域R1と第2領域R2とが重なり合う部分(重なりシール部)SA、SAにおける着色剤層の平面視面積率を30%以下としているので、包装シート10の遮蔽機能を維持しつつ、シール部S、Sにおけるシール性を向上させることができる。また、露出領域Reに着色剤層18が設けられていることで、デザイン性が向上する。
【0053】
なお、
図1においては、重なりシール部S
A、S
Aとなるシールゾーンを、第1領域R1ではゾーンSZ
A1、SZ
A1として、また第2領域R2ではゾーンSZ
A2、SZ
A2として示す(いずれも網掛けで図示)。ゾーンSZ
A1は第1重なり領域R
A1に含まれ、ゾーンSZ
A2は第2重なり領域R
A2に含まれる。
【0054】
重なりシール部SA、SAおける着色剤面積率は、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下とすることができる。また、重なりシール部SA、SAに着色剤層が実質的に形成されていないとさらに好ましい。ここで、実質的に着色剤層が形成されていないとは、1%以下、好ましくは0.5%以下であることを指す。
【0055】
また、重なりシール部SA、SAにおいて、第1領域R1の内面及び第2領域R2の外面にはベタ印刷部分がないか、又は連続するベタ印刷部分があっても、その部分の最小長さが5mm未満であると好ましく、3mm未満であるとより好ましい。
【0056】
重なりシール部SA、SAにおいて着色剤面積率は、部分的に異なっていてもよい。例えば、重なりシール部SA、SAの長手方向D1の一端11付近(タグテープ15付近)の部分SE、SEの着色剤面積率を、重なりシール部SA、SAの他の部分より小さくすることができる。この部分SE、SEは、シール部S、Sが最初に開封(封止解除)される部分であり、力がかかりやすいので、部分SE、SEのシール性が小さいと口開きが起こりやすい傾向がある。これに対し、例えば、部分SE、SEに、着色剤層を実質的に存在させない又は着色剤層を存在させないよう構成することによって、吸収性物品1の使用前に意図せず開封されることを防止することができる。なお、上記部分SE、SEは、長手方向D1の一端11から5~15mm離れた部分とすることができる。
【0057】
図示の形態では、シール部S、Sは、包装シート10の短手方向D2の両縁部13、13にそれぞれ形成されており、重なりシール部SA、SAも、包装シート10の短手方向D2の両縁部13、13にそれぞれ存在する。この2つの重なりシール部SA、SAのそれぞれの着色剤面積率は同じであってもよいし異なっていてもよい。両者の着色剤面積率が同じであると、短手方向D2の両縁部13、13におけるシール部S、Sのシール性が同様になってバランスがとれるため、好ましい。なお、本明細書において、別途言及がなければ、重なりシール部における着色剤面積率は、2つの重なりシール部SA、SAの着色剤面積率の平均とすることができる。
【0058】
なお、重なりシール部SA、SAの着色剤面積率は、露出領域Reの着色剤面積率より小さくなっている。また、重なりシール部SA、SAに着色剤層が存在する場合には、重なりシール部SA、SAの着色剤面積率の、露出領域Reの着色剤面積率に対する比の値は、0.001~0.8程度であると好ましい。
【0059】
図1~
図4に示す形態では、包装シート10の内面には着色剤層は形成されておらず、且つ第2領域R2の、第1領域R1が重ねられる領域の外面、すなわち第2重なり領域R
A2の外面には、実質的に着色剤層が形成されていない。よって、吸収性物品1を包装した状態で第2領域R2と第1領域R1とが重なり合う範囲全体にわたって、第1領域R1と第2領域R2との間には実質的に着色剤層が形成されていない。
【0060】
このように、重なりシール部SA、SAのみならず、吸収性物品1を包装した状態で第2領域R2と第1領域R1とが重なり合う範囲全体にわたって、第1領域R1と第2領域R2との間に着色剤層が形成されていない、又は形成されていたとしても着色剤面積率30%以下である構成とした場合、第1重なり領域RA1において、シールゾーンSZA1とそれ以外の領域との領域分けを行うか、又は第2重なり領域RA2において、シールゾーンSZA2とそれ以外の領域との領域分けを行う必要がない。よって、例えば、ロール状シートに印刷を施した後に切断することによって包装シート10を製造する工程において、ロール状シートの幅が包装シート10の長手方向D1長さに対応するようにし、且つ短手方向D2を印刷時の搬送方向とした場合、短手方向D2にズレが生じても、重なりシール部SA、SAの着色剤面積率を所望の値の範囲に維持することが容易となる。
【0061】
図6(a)及び(b)に、包装吸収性物品100の変形例を示す。
図6(a)及び(b)に示す例は、
図2に示した形態と同様であるが、第2領域R2のうち露出領域Reに含まれる領域(第2領域R2における第2重なり領域R
A2以外の領域)の着色剤層の構成が異なる。
【0062】
第2重なり領域RA2における着色剤面積率を低くした場合、シール部でのシール性は向上するが、第1領域R1における着色剤面積率と顕著に相違する場合がある。例えば、第2重なり領域RA2において着色剤層が実質的に形成されておらず、一方で第1領域R1における着色剤面積率が例えば90%という場合がある。そのような場合、第1領域R1と第2領域R2との重なり位置がずれた場合、第2重なり領域RA2が露出して、第1領域R1の着色剤面積率と、第2重なり領域RA2の着色剤面積率とが目立って不自然に見える場合が生じる。特に、第2重なり領域RA2の他端12から離れた方の端部付近の着色剤面積率と、第1領域R1の一端11付近の着色剤面積率とが顕著に異なっている場合には、包装吸収性物品100を平面視した時には第1領域R1の一端11の周辺における着色剤面積率の差が、目につきやすくなる。
【0063】
これに対し、第2領域R2の露出部分(第2領域R2における第2重なりR
A2以外の領域)の着色剤面積率が、長手方向D1他端12から離れるにつれ、漸次又は段階的に大きくなる部分を含むように構成することで、着色剤面積率の差を目立たなくすることができる。例えば、
図6(a)に示す例では、第2領域R2の露出部分(第2領域R2における第2重なりR
A2以外の領域)の着色剤面積率が、長手方向D1他端12から離れるにつれ、段階的に大きくなるように構成されている。これにより、第2領域R2において、第2重なり領域R
A2と第2領域R2の露出部分との境界付近において、両者の着色剤面積率の差を小さくしつつ、露出領域Reの着色剤面積率を、遮蔽機能が損なわれない程度に維持することができる。なお、
図6(a)における着色剤面積率は3段階以上とすることができ、また4段階以上とすることが好ましい。そして、着色剤面積率を増加させる段階数を増やしていくと、視覚的には着色剤面積率が漸次大きくなるように使用者に認識され得る。
【0064】
また、
図6(b)に示すように、第2領域R2の露出部分(第2領域R2における第2重なりR
A2以外の領域)の着色剤面積率を、局所的に変化させることができる。本例では、第2領域R2の露出部分に、着色剤層が実質的に存在しないか又は存在しない部分と、着色剤層が例えば90%以上の部分とを、それぞれ短手方向D2に延びる帯状部分として交互に配置することができる。第1領域R1と第2領域R2との重なりの位置ズレは±5mm程度であるため、上記帯状部分の幅(長手方向D1長さ)は、3~7mmとすると好ましい。
【0065】
本形態による包装シート10によって包装される吸収性物品1は、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、失禁パッド等である。その具体的な構成としては、不透液性の裏面シートと、透液性の表面シートと、これらの両シート間に設けられた吸収体を有する本体(吸収性物品本体)とを備えたものであってよい。吸収性物品1は、包装シート10と同様に、
図1における第1方向(包装シート10の長手方向)D1を長手方向、第2方向(包装シート10の短手方向)D2を短手方向とする細長形状を有していてよい。
【0066】
吸収性物品1の裏面シートとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シート等の少なくとも遮水性を有するシート材を用いることができる。また、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、ムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられることがさらに望ましい。
【0067】
表面シートは、経血、おりもの、尿等の体液を速やかに透過させる透液性のシートである。表面シートとしては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、融点の異なる合成繊維を組み合わせた複合繊維を用いることもできる。
【0068】
裏面シートと表面シートとの間に介在される吸収体は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。化学パルプの原料材としては、広葉樹材、針葉樹材等が用いられるが、繊維長が長いこと等から針葉樹材が好適に使用される。また、吸収体には合成繊維を混合してもよい。
【0069】
吸収性物品1の厚みは1~20mmの範囲内とすることができ、2~10mmの範囲であると好ましい。この厚みは吸収性物品1の全面にわたって均一でなくともよく、吸収体の厚みを変えることで、長手方向D1の中央部分、また臀部の溝に対応する部分等を膨出させた構造とすることもできる。
【0070】
以上、包装シートが長手方向に三つ折りされてなる形態(長手方向に2箇所で折られている形態)について主として説明したが、包装シートの折り方は、三つ折りに限られない。例えば、包装シートは、四つ折り以上、すなわち長手方向に3箇所以上で折り畳まれる形態であってもよい。そして、吸収性物品が包装シートとともに折り畳まれる場合、吸収性物品も四つ折り以上で折り畳まれるように構成することもできる。
【0071】
図7に、長手方向に四つ折りされる包装シート210を示す。
図7は、
図1と同様に、包装シート210の内面に吸収性物品201が載置された状態を外面から見た図であって、包装吸収性物品200が展開された状態を示す図でもある。また、
図8に、包装シート210によって吸収性物品201を包装した後の状態、すなわち包装吸収性物品200の平面図を示す。さらに、
図9に、
図8のIII-III線断面図を示し、
図10に、
図8のIV-IV線断面図を示す。
図9の断面図は
図3に対応しており、
図10の断面図は
図4に対応するものである。
図7~
図10に示す構成は、別途言及がない事項に関しては、
図1~4に記載された構成と同様とすることができる。
【0072】
包装シート210は、包装シート10(
図1等)と同様に、長手方向D1の一端211を含む第1領域R1を、長手方向D1の他端212を含む第2領域R2の上に重なるようにして折ることができる。すなわち、
図7で見て、第2領域を第2折り線L2にて山折りした後、第1領域R1を折り線L1にて山折りすることによって包装シート210を折り畳むことができる。但し、
図7に示す形態では、第2折り線L2にて折る前に、第2領域R2の一部が、第3折り線にて
図1で見て山折りして折り返される。より具体的には、第2領域R2のうち他端212に近い側の折込み領域R
Bが、吸収性物品201が載置された側に予め折り返される。すなわち、包装シート210は、折込み領域R
Bを折り込んだ後に巻き三つ折りされる。
【0073】
第1領域R1の第2領域R2に重ねられる領域を第1重なり領域RA1とし、第2領域R2の、第2領域R2が重ねられる領域を第2重なり領域RA2とする。第1重なり領域RA1は、第2領域R2と接触して重ねられる領域であり、第2重なり領域RA2は、第1領域R1と接触して重ねられる領域である。
【0074】
包装シート210及び吸収性物品201は、ともに折り畳まれた後、
図8及び
図10に示すように、短手方向D2の両縁部213、213を開封可能にシールすることができ、シール部S、Sを形成することができる(
図8及び
図10にて斜線で図示)。シール部S、Sは、包装シート210の折返しによって形成された複数の層が互いに接合された部分であり、
図7~
図10に示す形態におけるシール部S、Sは、2層の接合部、3層の接合部、及び4層の接合部を含むことになる。
【0075】
包装吸収性物品200においては、包装吸収性物品100(
図1~
図4)と同様、露出領域Reに吸収性物品が外部から視認されにくいように着色剤層218が形成されている。その一方で、シール部S、Sのうち、第1領域R1と第2領域R2とが重なり合う部分である重なりシール部S
A、S
A(
図8及び
図10)における着色剤層の平面視面積率(着色剤面積率)を30%以下としている。これにより、包装シート210の遮蔽機能、デザイン性を維持しつつ、シール部S、Sにおけるシール性を向上させることができる。
【0076】
展開された包装シート210において、シール部S、Sが形成される領域をシールゾーンSZとする(
図7に斜線で図示)。シールゾーンSZ、SZは、包装シート210の短手方向D2の両縁部213、213においてそれぞれ、長手方向D1の一端211から他端212まで延在している。そして、重なりシール部S
A、S
Aとなるシールゾーンを、第1領域R1ではゾーンSZ
A1、SZ
A1として、また第2領域R2ではゾーンSZ
A2、SZ
A2として示す(いずれも網掛けで図示)。
【0077】
第2領域R2のうちの折込み領域R
Bの着色剤面積率は、特に限定されないが、第2重なり領域R
A2の着色剤面積率と同様にすることができる。第2重なり領域R
A2と折込み領域R
Bとを同じ着色剤面積率で印刷することができるので、構成がより簡単になる。例えば、
図7に示すように、第2重なり領域R
A2及び折込み領域R
Bにおいて着色剤層が実質的に形成されていない構成とすることができる。
【0078】
なお、五つ折り以上の場合には、包装シートの長手方向D1の一端及び/又は他端を含む部分を折返して、その後に巻き三つ折りすることが好ましい。
【符号の説明】
【0079】
1、201 吸収性物品
10、210 包装シート
11、211 長手方向一端
12、212 長手方向他端
15、215 タグテープ
18、218 着色剤層
100、200 包装吸収性物品
D1 長手方向
D2 短手方向(幅方向)
L1 第1折り線
L2 第2折り線
L3 第3折り線
S シール部
SA 重なりシール部
SD シール処理部
SZ シールゾーン
SZA1 第1領域R1における重なりシール部SAとなるゾーン
SZA2 第2領域R2における重なりシール部SAとなるゾーン
R1 第1領域
R2 第2領域
R3 第3領域
RA1 第1重なり領域
RA2 第2重なり領域
RB 折込み領域
Re 露出領域