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特許7078517鋼棒の伸び量測定装置及び鋼棒の伸び量測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】鋼棒の伸び量測定装置及び鋼棒の伸び量測定方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/12 20060101AFI20220524BHJP
   G01B 11/16 20060101ALI20220524BHJP
   G01B 21/32 20060101ALI20220524BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20220524BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20220524BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
E04G21/12 104Z
G01B11/16 Z
G01B21/32
G01B11/00 B
G01B21/00 A
G01C15/00 104Z
G01C15/00 103Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018209495
(22)【出願日】2018-11-07
(65)【公開番号】P2020076235
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 安彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友晴
(72)【発明者】
【氏名】畠中 重義
(72)【発明者】
【氏名】中川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】伊井 敬二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄二
(72)【発明者】
【氏名】田川 篤人
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-102776(JP,A)
【文献】特開平01-147302(JP,A)
【文献】特開2016-075073(JP,A)
【文献】特開昭54-158957(JP,A)
【文献】特開2005-264505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/12
G01B 11/16
G01B 21/32
G01B 11/00
G01B 21/00
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼棒の両端部のうち少なくとも一端部に締結具が係合され、前記締結具が金属製プレートを介して構造体に支持された状態で前記一端部を引張した際の前記鋼棒の伸び量を測定する装置であって、
前記金属製プレートに取り付けられる取付部と、前記取付部に連結された連結部と、前記連結部に固定された測長器を有し、前記測長器で前記一端部との間の長さを計る測長ユニットと、を備え、
前記連結部は、前記取付部に対する前記測長器の位置を移動不能な構成とされ、
前記取付部は、前記金属製プレートに着脱自在とされた磁石を有し、
前記取付部の前記磁石を前記金属製プレートに当てることで、前記金属製プレートに対する前記連結部の取付角度が固定され、前記測長器と前記一端部との間の長さが固定され
ことを特徴とする鋼棒の伸び量測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載された鋼棒の伸び量測定装置において、
前記連結部は、前記取付部に近い第一アーム部と、前記測長ユニットに近い第二アーム部と、前記第一アーム部と前記第二アーム部とを一体化する段差部とを有し、前記鋼棒の軸芯に対する寸法は、前記第一アーム部が前記第二アーム部より大きい
ことを特徴とする鋼棒の伸び量測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された鋼棒の伸び量測定装置において、
前記測長ユニットは、前記一端部の端面に向けてレーザ光を発信するレーザ発信部と、前記一端部の端面で反射されたレーザ光を受信するレーザ受信部と、前記レーザ受信部で受信された信号に基づいて前記一端部の端面との間の長さを演算する演算部と、前記演算部の演算結果を表示する表示部と、を備え、
前記レーザ発信部及び前記レーザ受信部は、前記測長器に配置されている
ことを特徴とする鋼棒の伸び量測定装置。
【請求項4】
請求項に記載された鋼棒の伸び量測定装置において、
前記演算部及び前記表示部は、前記測長器とは別に設けられたモニターに配置され、
前記モニターは、前記演算部で演算された結果を0として設定する0点設定部を有し、前記演算部は、前記一端部の端面との間の長さを前記0点設定部で0として設定された演算結果に対する差として演算する
ことを特徴とする鋼棒の伸び量測定装置。
【請求項5】
求項4に記載された鋼棒の伸び量測定装置を用いて前記一端部を引張した際の前記鋼棒の伸び量を測定する方法であって、
前記一端部を引張する前に、前記取付部を前記金属製プレートに取り付けて前記測長器を前記構造体に設置し、前記レーザ発信部からレーザ光を前記一端部の端面に向けて発信し、前記一端部の端面で反射されたレーザ光を前記レーザ受信部で受信し、前記レーザ受信部で受信された信号に基づいて前記一端部の端面との間の長さを前記演算部で演算して前記一端部の端面と前記測長器との間の長さを演算し、この演算結果を前記0点設定部で0とした鋼棒引張前工程と、
前記取付部を前記金属製プレートから離して前記測長器を前記構造体から取り外す装置取外工程と、
前記鋼棒の一端部を前記締結具により引張する鋼棒引張工程と、
前記一端部を引張した後に、前記取付部を前記金属製プレートに取り付けて前記測長器を前記構造体に設置し、前記レーザ発信部からレーザ光を前記一端部の端面に向けて発信し、前記一端部の端面で反射されたレーザ光を前記レーザ受信部で受信し、前記レーザ受信部で受信された信号に基づいて前記一端部の端面と前記測長器との間の長さを前記0点設定部で0として設定された演算結果に対する差として演算し、この演算値を前記表示部で表示する鋼棒引張後工程と、を備えた
ことを特徴とする鋼棒の伸び量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼棒の伸び量測定装置及び鋼棒の伸び量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PC鋼棒、その他の鋼棒は建築や土木の分野で利用されている。例えば、PC鋼棒は、コンクリートの構造体にプレストレスを導入するために用いられており、構造体にPC鋼棒の両端部を係合し、PC鋼棒の一端部に締結具であるナットをねじ込んでアンカープレートを介してPC鋼棒に引張力(緊張力)を付与する。
【0003】
PC鋼棒の引張力を管理するために、PC鋼棒の伸び量が測定される。PC鋼棒の伸び量は、PC鋼棒に引張力を付与する前後におけるPC鋼棒の一端部のナットから突出する長さの差として求められるものであり、伸び量を測定するために、測長ノギスが用いられることがある(特許文献1)。
PC鋼棒は、複数本配置されるものであるため、作業員は、複数本のPC鋼棒のそれぞれの伸び量を、測長ノギスをPC鋼棒の端部に当てて測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-102776号公報(段落0003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で示される従来例では、PC鋼棒の伸び量を測定するために、測長ノギスを用いている。
PC鋼棒の伸び量を測定するにあたり、測長ノギスを正しい位置からずれてPC鋼棒の端部に当てると、測長ノギスで読み取る数値に誤差が生じる。
そのため、測長ノギスのPC鋼棒に対する角度等を調整して測長ノギスを正しくセットする作業が必要であるが、この作業は、熟練度が要求されるものであり、全ての作業員が容易に行えるものではない。
つまり、測長ノギスを用いた従来の鋼棒の伸び量測定は、測定精度が必ずしも高いものではないという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、測定精度を高くすることができる鋼棒の伸び量測定装置及び鋼棒の伸び量測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の鋼棒の伸び量測定装置は、鋼棒の両端部のうち少なくとも一端部に締結具が係合され、前記締結具が金属製プレートを介して構造体に支持された状態で前記一端部を引張した際の前記鋼棒の伸び量を測定する装置であって、前記金属製プレートに取り付けられる取付部と、前記取付部に連結された連結部と、前記連結部に設けられ前記一端部との間の長さを計る測長ユニットと、を備え、前記取付部は、前記金属製プレートに着脱自在とされた磁石を有することを特徴とする。
【0008】
本発明では、構造体に予め設けられている金属製プレート、例えば、アンカープレートに取付部の磁石を取り付ける。取付部は、磁石の磁力によって金属製プレートに確実かつ正確に取り付けられることになり、取付部に連結部を介して設けられた測長ユニットは、鋼棒に対して正確に位置決めされる。測長ユニットが鋼棒に対して位置決めされたら、測長ユニットによって鋼棒の一端部までの長さを求める。鋼棒の一端部と測長ユニットとの間の長さが求められたら、取付部を金属製プレートから外す。
そのため、本発明では、従来例のように、角度調整等の作業を作業員が行うことなく、測長ユニットの鋼棒への位置決めが行えるので、作業員の熟練度にかかわらず、測定精度を高くすることができる。
【0009】
本発明では、前記測長ユニットは、前記一端部の端面に向けてレーザ光を発信するレーザ発信部と、前記一端部の端面で反射されたレーザ光を受信するレーザ受信部と、前記レーザ受信部で受信された信号に基づいて前記一端部の端面との間の長さを演算する演算部と、前記演算部の演算結果を表示する表示部と、を備え、前記レーザ発信部及び前記レーザ受信部は、測長器に配置され、前記測長器は、前記連結部に固定されている構成でもよい。
この構成では、レーザ発信部から発信されたレーザ光が鋼棒の一端部の端面で反射されてレーザ受信部で受信される。レーザ受信部で受信された信号は演算部に送られ、演算部では、鋼棒の一端部の端面と測長器との間の長さを演算する。演算結果は表示部に表示される。
鋼棒の伸び量を測定するには、鋼棒の一端部の端面と測長器との長さの演算を鋼棒が引張される前後で実施する。鋼棒の伸び量は、鋼棒の引張前の長さと引張後の長さとの差から求められる。
そのため、レーザ発信部、レーザ受信部、演算部及び表示部により、PC鋼棒の一端部の端面と測長器との間の寸法を非接触の状態で測定できるので、鋼棒の伸び量を容易に求めることができる。
しかも、レーザ発信部及びレーザ受信部は測長器に配置されており、演算部や表示部は測長器とは別の装置に配置することが可能となるので、測長器を小型化することができる。測長器が小型化することで、測長器を狭いスペースに配置することが可能となる。
【0010】
本発明では、前記演算部及び前記表示部は、前記測長器とは別に設けられたモニターに配置され、前記モニターは、前記演算部で演算された結果を0として設定する0点設定部を有し、前記演算部は、前記一端部の端面との間の長さを前記0点設定部で0として設定された演算結果に対する差として演算する構成でもよい。
この構成では、0点設定部により、演算部で演算された鋼棒の引張前の端面と測長器との間の長さを0とし、演算部では、鋼棒の引張後の端面と測長器との間の長さを0点設定部で0として設定された演算結果に対する差として演算する。そのため、PC鋼棒の伸び量が自動的に演算されることになり、測定作業が容易となる。
【0011】
本発明では、前記連結部は、前記取付部に近い第一アーム部と、前記測長ユニットに近い第二アーム部と、前記第一アーム部と前記第二アーム部とを一体化する段差部とを有し、前記鋼棒の軸芯に対する寸法は、前記第一アーム部が前記第二アーム部より大きい構成でもよい。
この構成では、段差部により、連結部の取付部に近い第一アーム部が第二アーム部に比べて鋼棒の軸芯から離れることで、連結部が締結具と干渉することなく金属製プレートに取り付けることができる。そのため、装置の金属製プレートへの設置作業を容易に行うことができる。
【0012】
本発明の鋼棒の伸び量測定方法は、前述の鋼棒の伸び量測定装置を用いて前記一端部を引張した際の前記鋼棒の伸び量を測定する方法であって、前記一端部を引張する前に、前記取付部を前記金属製プレートに取り付けて前記測長器を前記構造体に設置し、前記レーザ発信部からレーザ光を前記一端部の端面に向けて発信し、前記一端部の端面で反射されたレーザ光を前記レーザ受信部で受信し、前記レーザ受信部で受信された信号に基づいて前記一端部の端面との間の長さを前記演算部で演算して前記一端部の端面と前記測長器との間の長さを演算し、この演算結果を前記0点設定部で0とした鋼棒引張前工程と、前記取付部を前記金属製プレートから離して前記測長器を前記構造体から取り外す装置取外工程と、前記鋼棒の一端部を前記締結具により引張する鋼棒引張工程と、前記一端部を引張した後に、前記取付部を前記金属製プレートに取り付けて前記測長器を前記構造体に設置し、前記レーザ発信部からレーザ光を前記一端部の端面に向けて発信し、前記一端部の端面で反射されたレーザ光を前記レーザ受信部で受信し、前記レーザ受信部で受信された信号に基づいて前記一端部の端面と前記測長器との間の長さを前記0点設定部で0として設定された演算結果に対する差として演算し、この演算値を前記表示部で表示する鋼棒引張後工程と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明では、前述の一連の工程により、鋼棒の伸び量を容易に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態にかかる鋼棒の伸び量測定装置の概略を示す側面図。
図2】鋼棒の伸び量測定装置の要部を示す側面図。
図3】鋼棒の伸び量測定装置の要部を示す平面図。
図4図3のIV-IV線に沿う矢視図。
図5】取付部と連結部の接続構造を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
全体構成を示す図1において、鋼棒の伸び量測定装置は、コンクリート製の構造体1に両端部2A,2Bが係合されたPC鋼棒2を引張した際の鋼棒の伸び量を測定する装置である。図1では、1本のPC鋼棒2が示されているが、紙面貫通方向に沿って複数のPC鋼棒2が構造体1に取り付けられている。
構造体1は、マンションのベランダや外側通路等、コンクリート製建物の外部に突出して施工される構造物であり、底面部10と、底面部10に設けられたブロック部11,12,13とを有する。
ブロック部11とブロック部12とはPC鋼棒2の両端部2A,2Bに係合される。PC鋼棒2は、構造体1にプレストレスを加えるものである。PC鋼棒2によってプレストレスが加えられた構造体1の凹部やブロック部12,13の外部にはコンクリート14が打設される。
【0016】
PC鋼棒2の両端部には雄ねじが形成されている。
PC鋼棒2の一端部2Aは、ブロック部11を貫通し、ブロック部11とブロック部13との間の空間に位置する。
PC鋼棒2の一端部2Aにはナットからなる締結具3が螺合されており、締結具3とブロック部11との間には金属製のアンカープレート4が配置されている。締結具3は、アンカープレート4を介してブロック部11に支持されている。アンカープレート4はブロック部11に埋設されている。
PC鋼棒2の他端部2Bにはナット30が螺合されており、他端部2B、アンカープレート4及びナット30は、ブロック部12の内部に埋設されている。
これにより、PC鋼棒2の一端部2Aに螺合された締結具3をねじ込むことで、PC鋼棒2の一端部2Aが引張されて構造体1にプレストレスが生じる。
【0017】
本実施形態の鋼棒の伸び量測定装置は、位相差距離方式やパルス伝播方式等の公知の測長方法によって、PC鋼棒2を引張した際にPC鋼棒2の伸び量を測定する装置であり、アンカープレート4に着脱自在に取り付けられる取付部5と、取付部5に連結された連結部6と、連結部6に設けられPC鋼棒2の一端部2Aの端面20との間の長さを測る測長ユニット40とを備えて構成されている。
測長ユニット40は、連結部6に固定された測長器7と、測長器7とケーブル9を介して接続されるモニター8と、を備えている。
取付部5、連結部6及び測長器7は、一体化され、かつ、ブロック部11とブロック部13との間の空間に配置可能とされている。
【0018】
鋼棒の伸び量測定装置の要部の具体的な構成が図2から図5に示されている。
図2から図4に示される通り、取付部5は、磁石50を備えている。磁石50は、周面501と、周面501に直交する平面502とを有する短寸円柱状の永久磁石である。
平面502は、アンカープレート4の平面に磁力により密着されている。
磁石50は、アンカープレート4の平面に取り付けられている状態では、その軸芯がアンカープレート4の平面と直交する。磁石50をアンカープレート4に対して傾けることで、磁石50がアンカープレート4から取り外される。アンカープレート4から磁石50を外しやすくするために、磁石50の外周縁部を全周に渡り切り欠いてもよい。
なお、本実施形態は、磁石50の周面にカラーを設けて取付部5を構成するものでもよい。また、磁石50の形状は円柱状に限定されるものではなく、例えば、角柱状であってもよい。
【0019】
連結部6は、アルミ製であり、取付部5に近い第一アーム部61と、測長器7に近い第二アーム部62と、第一アーム部61と第二アーム部62とを一体化する段差部63と、第二アーム部62に設けられた取付片部64とを有する。
第一アーム部61は、角柱状に形成されており、その軸芯が取付部5の軸芯と一致する。
第二アーム部62は、第一アーム部61の軸芯と平行な軸芯を有する角柱状に形成されている。
取付片部64は、測長器7の側面が図示しないボルトで取り付けられる長板状の部材であり、第二アーム部62に対して直交配置されている(図2参照)。
段差部63は、第一アーム部61を第二アーム部62に対して測長器7から離れる方向にオフセットさせるものである。取付部5がアンカープレート4に取り付けられた状態では、PC鋼棒2の軸芯Cの第一アーム部61の軸芯C1に対する寸法L1は、第二アーム部62の軸芯C2に対する寸法L2より大きい。
【0020】
第一アーム部61と磁石50との接続構造が図5に示されている。
図5において、磁石50の軸芯には雌ねじ部50Sが形成されている。
第一アーム部61の磁石50側の端部には、軸芯に沿って雌ねじ部61Sが形成されている。
雌ねじ部50Sと雌ねじ部61Sとは、それぞれ1本の雄ねじ51と螺合される。
【0021】
図1に戻り、測長器7は、筐体70と、筐体70の締結具3側の端面にそれぞれ設けられたレーザ発光素子711及びレーザ受光素子721と、筐体70の内部にそれぞれ配置されたレーザ発信回路712及びレーザ受信回路722と、乾電池73と、操作ボタン74と、を備えている。
レーザ発光素子711は、レーザ発信回路712からの信号を受けてレーザ光を発信するものであり、取付部5がアンカープレート4に取り付けられた状態では、レーザ光がPC鋼棒2の一端部2Aの端面20に向けられる。
レーザ発光素子711及びレーザ発信回路712からレーザ発信部71が構成される。
【0022】
レーザ受光素子721は、PC鋼棒2の一端部2Aの端面20で反射されたレーザ光を受信するものであり、レーザ発光素子711に近接配置されている。
レーザ発光素子711で受光されたレーザ光はレーザ受信回路722を通じてモニター8に送られる。
レーザ受光素子721及びレーザ受信回路722からレーザ受信部72が構成される。
【0023】
モニター8は、筐体80と、筐体80の内部にそれぞれ配置されたアンプ81、演算部82、表示駆動回路831、0点設定回路841、記憶部842及び乾電池85と、筐体80の正面にそれぞれ設けられた表示パネル(図示せず)及び0点設定ボタン843と、を備えている。
アンプ81、演算部82、表示駆動回路831、0点設定回路841及び記憶部842は1枚あるいは複数枚の電子基板から構成されている。
演算部82は、レーザ受信回路722から送られてアンプ81で増幅された信号に基づいてPC鋼棒2の一端部2Aの端面20とレーザ発光素子711との間の長さを演算するものである。
演算部82で演算された結果は、表示駆動回路831を介して表示パネルで表示される。表示駆動回路831及び表示パネルから表示部83が構成される。
【0024】
0点設定回路841、記憶部842及び0点設定ボタン843から0点設定部84が構成される。
0点設定ボタン843が押されると、0点設定回路841を介して演算部82で演算された長さのデータが記憶部842で長さ0として記憶される。例えば、演算結果が長さaである場合、aは0として記憶部842で記憶される。
0点設定ボタン843が押された後では、演算部82で求められた演算値は、0点設定ボタン843を押す前の演算結果に対する差として演算される。例えば、0点設定ボタン843が押された後の測定操作による演算部82の演算結果が長さbであるとすると、記憶部842から0点設定前の値aが呼び出され、演算部82の演算値は、(b-a)となり、この値が表示パネルに表示される。
【0025】
次に、本実施形態の鋼棒の伸び量を測定する方法を説明する。
(鋼棒引張前工程)
PC鋼棒2を設置して構造体1を施工する。そして、PC鋼棒2の一端部2Aを引張する前に、測長ユニット40の取付部5、連結部6及び測長器7を構造体1のブロック部11とブロック部13との間に配置し、モニター8を所定位置に配置する。そして、操作ボタン74を操作し、モニター8の電源を入れる。
測長器7を構造体1に設置するために、取付部5を締結具3に近接させた状態で、取付部5の磁石50をアンカープレート4に当てる。磁石50の磁力により、測長ユニット40がアンカープレート4に取り付けられる。
そして、測長器7の位置決めをする。そのため、操作ボタン74を操作してレーザ発信回路712を駆動し、レーザ発光素子711からレーザ光を発信する。レーザ光がPC鋼棒2の一端部2Aの端面20に照射される状態が目視等で確認されるまで、磁石50をアンカープレート4の上でずらして測長ユニット40の位置決めをする。
【0026】
測長器7のレーザ発光素子711から発信されるレーザ光はPC鋼棒2の一端部2Aの端面20で反射されてレーザ受光素子721で受光される。レーザ受光素子721からレーザ受信回路722に信号が送られ、この信号がケーブル9を介してモニター8に送られる。
モニター8では、信号がアンプ81で増幅されて演算部82に送られる。演算部82では、測長器7と一端部2Aの端面20との間の長さを演算する。演算部82で演算された結果は表示駆動回路831を介して表示パネルで表示される。
ここで、0点設定ボタン843を押すと、0点設定回路841を介して演算部82で演算された長さのデータが記憶部842で長さ0として記憶されるとともに、表示パネルでは0として表示される。
【0027】
(装置取外工程)
その後、磁石50をアンカープレート4に対して傾けて、取付部5を、一度、構造体1から取り外す。
(鋼棒引張工程)
PC鋼棒2の一端部2Aに螺合されている締結具3を図示しない工具を用いて締め付ける。これにより、PC鋼棒2は引張されて一端部2Aがアンカープレート4に対して伸びることになる。
【0028】
(鋼棒引張後工程)
PC鋼棒2の一端部2Aを引張した後に、測長ユニット40の取付部5、連結部6及び測長器7を、再度、構造体1のブロック部11とブロック部13との間に配置し、モニター8を所定位置に配置する。前述と同様に、取付部5をアンカープレート4に取り付けて測長器7を構造体1に設置する。
レーザ発光素子711から発信されたレーザ光は、PC鋼棒2の一端部2Aの端面20で反射されてレーザ受光素子721で受光される。レーザ受光素子721からレーザ受信回路722を経由して信号がモニター8に送られる。
【0029】
モニター8では、測長器7からの信号がアンプ81を経由して演算部82に送られる。演算部82では、測長器7と一端部2Aの端面20との間の長さを演算し、記憶部842から呼び出した演算結果0に対する差として演算値を演算し、この演算値を表示パネルで表示する。表示パネルで表示される演算値は、鋼棒引張後のPC鋼棒2の端面20と測長器7との間の絶対的な長さではなく、引張前後の相対的な長さであり、PC鋼棒2の伸び量そのものである。
(装置取外工程)
前述と同様に、測長ユニット40を構造体1から取り外し、鋼棒引張工程と、鋼棒引張後工程の測定とを繰り返し、所定の値になれば緊張を終了し、異なるPC鋼棒2の伸び量を前述と同様の方法で測定する。
【0030】
本実施形態では、次の効果を奏することができる。
(1)鋼棒の伸び量測定装置は、金属製のアンカープレート4に取り付けられる取付部5と、取付部5に連結された連結部6と、連結部6に設けられPC鋼棒2の一端部2Aの端面20との間の長さを計る測長ユニット40とを備え、取付部5は、アンカープレート4に着脱自在とされた磁石50を有する構成とした。取付部5は、磁石50の磁力によってアンカープレート4に確実かつ正確に取り付けられるので、取付部5に連結部6を介して設けられた測長ユニット40は、PC鋼棒2に対して正確に位置決めされることになる。従って、角度調整等の作業を作業員が行うことなく、測長ユニット40のPC鋼棒2への位置決めが行えるので、作業員の熟練度にかかわらず、測定精度を高くすることができる。
【0031】
(2)測長ユニット40は、PC鋼棒2の一端部2Aの端面20に向けてレーザ光を発信するレーザ発信部71と、一端部2Aの端面20で反射されたレーザ光を受信するレーザ受信部72と、レーザ受信部72で受信された信号に基づいて一端部2Aの端面20との間の長さを演算する演算部82と、演算部82の演算結果を表示する表示部83と、を備えて構成されているから、PC鋼棒2の一端部2Aの端面20と測長ユニット40との間の寸法を非接触の状態で測定できるので、PC鋼棒2の伸び量を容易に求めることができる。
【0032】
(3)レーザ発信部71及びレーザ受信部72が測長器7に配置されており、演算部82と表示部83はモニター8に配置されているので、測長器7を小型化して狭いスペースに配置することが可能となる。
【0033】
(4)モニター8は、演算部82で演算された結果を0として設定する0点設定部84を有し、演算部82は、一端部2Aの端面20との間の長さを0点設定部84で0として設定された演算結果に対する差として演算するから、PC鋼棒2の伸び量が自動的に演算されることになり、測定作業が容易となる。
【0034】
(5)連結部6は、取付部5に近い第一アーム部61と、測長器7に近い第二アーム部62と、第一アーム部61と第二アーム部62とを連結する段差部63とを有し、PC鋼棒2の軸芯Cの第一アーム部61の軸芯C1に対する寸法L1が第二アーム部62の軸芯C2に対する寸法L2より大きい。そのため、連結部6が締結具3と干渉することなくアンカープレート4に取り付けることができるので、測長器7のアンカープレート4への設置作業を容易に行うことができる。
【0035】
(6)測長器7を乾電池73で駆動させ、モニター8を乾電池85で駆動させているので、これらの装置を商用電源で駆動させる場合に比べて、取り扱い性がよく、防水性も確保できる。
【0036】
なお、本発明は前述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、レーザ発信部71とレーザ受信部72とを備えてレーザ光により測長する構成としたが、本発明では、レーザ光に代えて超音波を用いて測長する構成としてもよい。つまり、PC鋼棒2の一端部2Aに向けて超音波を発信する超音波発信部と、一端部2Aの端面20から反射する超音波を受信する超音波受信部とを備えた構成としてもよい。
さらに、レーザ光や超音波を用いた非接触タイプに代えて、ノギスを連結部6に設けたものでもよい。
【0037】
連結部6は、第一アーム部61、第二アーム部62及び段差部63を備えて構成したが、本発明では、段差部63のない直線状のアームから連結部6を構成してもよい。
また、磁石50は、永久磁石ではなく、電磁石としてもよい。ただし、永久磁石とすれば電源等が不要となる。
【0038】
さらに、PC鋼棒2の両端部2A,2Bにそれぞれ締結具3が係合され、これらの締結具3を用いてPC鋼棒2をそれぞれ引張した場合にも本発明を適用することができる。
また、本発明では、モニター8を省略し、測長器7に演算部82及び表示部83を含めて構成するものでもよい。
さらに、本発明では、0点設定部84を必ずしも設けることを要しない。0点設定部84を設けない場合では、PC鋼棒2の引張前後における測長器7とPC鋼棒2の一端部2Aの端面20との間の寸法をそれぞれ求めておき、これらの値の差を別途演算する。
また、本発明に適用できる鋼棒は、PC鋼棒2に限定されない。
【符号の説明】
【0039】
1…構造体、2…PC鋼棒、20…端面、2A…一端部、3…締結具、4…アンカープレート(金属製プレート)、40…測長ユニット、5…取付部、50…磁石、6…連結部、61…第一アーム部、62…第二アーム部、63…段差部、7…測長器、71…レーザ発信部、72…レーザ受信部、8…モニター、82…演算部、83…表示部、84…0点設定部、841…0点設定回路、842…記憶部、843…0点設定ボタン
図1
図2
図3
図4
図5