(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】物質特性検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20220524BHJP
G01N 21/85 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
G01N21/17 Z
G01N21/85 A
(21)【出願番号】P 2018214832
(22)【出願日】2018-11-15
【審査請求日】2020-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】布施 匡章
(72)【発明者】
【氏名】塩入 健
(72)【発明者】
【氏名】谷本 隆生
(72)【発明者】
【氏名】坂本 英之
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-131220(JP,A)
【文献】特開平04-344444(JP,A)
【文献】特開平08-285768(JP,A)
【文献】特開平06-058877(JP,A)
【文献】米国特許第06809819(US,B1)
【文献】特開平11-133022(JP,A)
【文献】特開2009-229140(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063547(WO,A1)
【文献】特開2012-052998(JP,A)
【文献】特開2003-083887(JP,A)
【文献】特開2014-025720(JP,A)
【文献】特開2012-184950(JP,A)
【文献】特表2011-515509(JP,A)
【文献】特開2003-285043(JP,A)
【文献】特開2012-215519(JP,A)
【文献】特開2006-122579(JP,A)
【文献】特開2014-122791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01N 33/00 - G01N 33/46
B07C 1/00 - B07C 99/00
A61J 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打錠された被検査物(W)を搬送し、光透過性ベルトで構成されるベルトコンベアを含む搬送部(2)と、
前記搬送部にて搬送される前記被検査物の物質特性によって該被検査物の透過光の光強度が変化する波長の光源(3)と、
前記光源を前記被検査物に照射する照射部(4)と、
前記被検査物の前記透過光を受光する受光部(5)と、
前記受光部からの出力信号から前記透過光の光強度を検出する信号検出部(6)と、
物質特性値が既知である複数のテストピースの物質特性値を入力する物質特性値入力部(7)と、
前記被検査物の良否を判定するための検査設定値を入力する検査設定値入力部(8)と、
前記信号検出部で検出した前記透過光の光強度
と前記物質特性値入力部で入力した前記物質特性値に基づいて前記被検査物の物質特性値を求める処理部(9)と、
前記被検査物に照射される光に一定周期の変調を加える光チョッパ(12)と、を備え、
前記信号検出部は、前記光チョッパにて変調した変調光に同期した参照信号を用いたロックインアンプ方式にて同期検波し、
前記処理部は、前記物質特性値入力部で入力した前記複数のテストピースの物質特性値と前記信号検出部で検出した前記複数のテストピースの透過光の光強度から物質特性値と光強度の関係式を算出し、前記信号検出部で検出した前記被検査物の透過光の光強度と前記関係式から前記被検査物の物質特性値を算出し、算出した前記被検査物の物質特性値と前記検査設定値入力部より入力された検査設定値とを比較して前記被検査物の良否を判定し、前記物質特性は打錠圧あるいは空隙率であることを特徴とする物質特性検査装置。
【請求項2】
前記検査設定値と、前記関係式を算出する際に得た統計データとから前記被検査物(W)の良否を判定するための判定範囲を自動的に設定することを特徴とする請求項1に記載の物質特性検査装置。
【請求項3】
前記物質特性値入力部(7)は、複数の物質特性から選択し、選択した物性特性に対する前記テストピースの既知の物質特性値を入力することを特徴とする請求項1または2に記載の物質特性検査装置。
【請求項4】
前記物質特性値はリニアデータであり、前記光強度は対数データであることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の物質特性検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や薬品などに含まれる任意の物質の含有量や、密度、打錠圧、空隙率などの物質特性を検査する物質特性検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品や薬品などの試料を定量分析する方法としては、試料に赤外線を照射し、分子の固有振動に起因する吸収を測定する赤外吸収スペクトル分析(赤外分光分析)や、物質の大きさ・吸着力・電荷・質量・疎水性などの違いを利用して、物質を成分ごとに分離するクロマトグラフィー分析や、強力磁場中で原子核のエネルギー遷移を試料に加えた電磁エネルギーの吸収として測定し、同時に核周囲の電子による反磁性の差などで生じた化学シフトで分子の構造や運動状態などの性質を調べる核磁気共鳴吸収分析や、電子ビームやX線などの高エネルギー源で試料をイオン化し、電磁界などを用いて質量数ごとにイオン量を測定する質量分析などが知られている。
【0003】
しかし、上述した何れの方法も装置構成が大規模で、しかも高価である。また、赤外吸収スペクトル分析(赤外分光分析)は、広帯域赤外線を照射する投光器と分光器が用いられ、上述した方法の中では装置が比較的に小型で安価であるが、透過性が悪い被検査物を測定する場合には高出力の広帯域赤外線を被検査物に照射する必要があり、高出力の広帯域赤外線を照射することによって被検査物にダメージを与えることもある。また、吸収スペクトルを測定するため、測定に時間がかかる。
【0004】
しかしながら、錠剤などの製造工程における検査では、被検査物にダメージを与えることなく、非破壊でかつ高速で測定することが要求される。
【0005】
ところで、食品などに含まれる成分含有量を推定する技術として、従来、下記特許文献1に開示される近赤外分光分析による成分含有量推定法が知られている。この特許文献1は、成分含有量既知のサンプルに対して所定成分を吸収する領域の波長の近赤外線を照射して吸光度を測定し、その吸光度を演算して説明変数にするとともに前記サンプルの所定成分の含有量を目的変数にして回帰分析を行い、検量線を求め、その検量線により成分含有量未知のサンプルの所定成分の含有量を推定する成分含有量推定法において、前記検量線を求めるにあたり主波長で構成される項の温度依存性が正または負のとき、負または正の逆特性の波長の吸収量で構成される項を用いたことを特徴とするものである。
【0006】
なお、波長λにおける吸光度Aは、入射光の光強度Iiと透過光の光強度Iの比(透過率)の常用対数をとったA=-log10(I/Ii)の式にて得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、吸光度Aは、入射光の光強度Iiと透過光の光強度Iをそれぞれ測定する必要があるが、損失の大きな被検査物を検査する場合には、入射光の光強度Iiと透過光の光強度Iの比が大きく測定が難しくなり、実現しようとした場合には高価な測定系を必要とするという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、小型かつ安価で、測定時間が短く、被検査物にダメージを与え難い検査が可能な物質特性検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る物質特性検査装置は、打錠された被検査物Wを搬送し、光透過性ベルトで構成されるベルトコンベアを含む搬送部2と、
前記搬送部にて搬送される前記被検査物の物質特性によって該被検査物の透過光の光強度が変化する波長の光源3と、
前記光源を前記被検査物に照射する照射部4と、
前記被検査物の前記透過光を受光する受光部5と、
前記受光部からの出力信号から前記透過光の光強度を検出する信号検出部6と、
物質特性値が既知である複数のテストピースの物質特性値を入力する物質特性値入力部7と、
前記被検査物の良否を判定するための検査設定値を入力する検査設定値入力部8と、
前記信号検出部で検出した前記透過光の光強度と前記物質特性値入力部で入力した前記物質特性値に基づいて前記被検査物の物質特性値を求める処理部9と、
前記被検査物に照射される光に一定周期の変調を加える光チョッパ12と、を備え、
前記信号検出部6は、前記光チョッパにて変調した変調光に同期した参照信号を用いたロックインアンプ方式にて同期検波し、
前記処理部は、前記物質特性値入力部で入力した前記複数のテストピースの物質特性値と前記信号検出部で検出した前記複数のテストピースの透過光の光強度から物質特性値と光強度の関係式を算出し、前記信号検出部で検出した前記被検査物の透過光の光強度と前記関係式から前記被検査物の物質特性値を算出し、算出した前記被検査物の物質特性値と前記検査設定値入力部より入力された検査設定値とを比較して前記被検査物の良否を判定し、前記物質特性は打錠圧あるいは空隙率であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る物質特性検査装置は、前記検査設定値と、前記関係式を算出する際に得た統計データとから前記被検査物Wの良否を判定するための判定範囲を自動的に設定するようにしてもよい。
【0013】
本発明に係る物質特性検査装置において、前記物質特性値入力部7は、複数の物質特性から選択し、選択した物性特性に対する前記テストピースの既知の物質特性値を入力するようにしてもよい。
【0014】
本発明に係る物質特性検査装置において、前記物質特性値がリニアデータ、前記光強度が対数データであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、吸光度ではなく、物質特性値が既知のテストピースを用いることにより、小型かつ安価で、測定時間が短く、被検査物にダメージを与え難い任意の物質特性値(含有量、密度、打錠圧、空隙率など)の検査が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る物質特性検査装置のブロック構成図である。
【
図2】物質特性値と光強度の関係式に関する説明図である。
【
図3】テストピースを用いた処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】検査時の処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】本発明に係る物質特性検査装置の他の形態を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
[本発明の概要]
本発明は、食品や薬品などに含まれる任意の物質の含有量、密度、打錠圧、空隙率などの物質特性を検査する物質特性検査装置である。
【0019】
本発明では、物質特性を検査するにあたって、特許文献1に開示されるような吸光度ではなく、透過光(または反射光)の光強度を測定し、測定した透過光(または反射光)の光強度を物質特性値の算出(推定)に利用する。しかし、透過光(または反射光)の光強度測定は、さまざまな条件(例えば照射光の光強度の変化)により測定値が変化する相対値測定である。このため、本発明では、あらかじめ算出(推定)する物質特性値として既知のテストピースを用いた測定値を利用することにより、さまざまな条件による測定値の変化の影響を抑えた検査を実現する。
【0020】
[物質特性検査装置の構成について]
図1に示すように、物質特性検査装置1(1A)は、搬送部2、光源3、照射部4、受光部5、信号検出部6、物質特性値入力部7、検査設定値入力部8、処理部9、記憶部10、表示部11を備えて概略構成される。
【0021】
搬送部2は、被検査物Wを搬送路上で所定間隔おきに順次搬送するもので、例えば装置本体に対して水平に配置されたベルトコンベアで構成される。
【0022】
搬送部としてのベルトコンベア2は、被検査物Wの検査を行う際に、被検査物Wを搬送するための搬送ベルトが予め設定された搬送速度により駆動制御される。これにより、被検査物Wは、ベルトコンベア2上を
図1の搬送方向Xに所定間隔おきに搬送される。
【0023】
なお、ベルトコンベア2は、受光部5が被検査物Wからの透過光を受光する場合は、光源3から照射部4を介して照射される光を透過するように、搬送ベルトが光透過性ベルトで構成される。
【0024】
光源3は、被検査物Wの任意の物質特性によって被検査物Wの透過光または反射光の光強度が変化する波長の光を出力する。
【0025】
照射部4は、光源3が出力する光を被検査物Wに照射するものであり、例えば光源3が出力する光を光ファイバにて伝搬し、光ファイバの端面から出射される光をコリメートレンズにて平行光にして被検査物Wに照射する。
【0026】
受光部5は、照射部4から被検査物Wへの光の照射に伴う被検査物Wからの透過光または反射光を受光する。
【0027】
信号検出部6は、受光部5にて検出した被検査物Wからの透過光または反射光の光強度を検出する。
【0028】
物質特性値入力部7は、被検査物Wと同一種類で物質特性値が既知である複数のテストピースの物質特性値を入力するもので、各テストピースの物質特性値として、複数の物質特性(含有量、密度、打錠圧、空隙率など)から一つの物質特性を選択して既知の値を表示部11の入力画面上で入力する。
【0029】
これにより、任意の物質特性の検査項目を選択することができ、選択した検査項目に対応した被検査物Wの測定および表示が可能となる。
【0030】
検査設定値入力部8は、被検査物Wの良否を判定するための検査設定値を表示部11の入力画面上で入力する。検査設定値は、処理部9にて算出される物質特性値と比較するもので、被検査物Wを良品として判定するための物質特性値の範囲を示す判定範囲値である。
【0031】
処理部9は、被検査物Wの検査に関わる処理を行うものであり、物質特性値入力部7で入力した複数のテストピースの物質特性値と、複数のテストピースに光源3からの光を照射したときに信号検出部6にて検出した各テストピースの透過光または反射光の光強度とから物質特性値と光強度の関係式を算出し、算出した物質特性値と光強度の関係式(検量線)、関係式の算出時に得られた統計データを記憶部10に記憶する。
【0032】
ここで、物質特性値と光強度の関係式(検量線)の算出方法について
図2を参照しながら説明する。ここでは、物質特性値を成分含有量とし、成分含有量が既知の2つのテストピースを用いて透過光の光強度を測定する場合を例にとって説明する。
【0033】
成分含有量が既知の2つのテストピースに対して順番に光源3からの光を照射部4から照射して透過光の光強度を測定し、成分含有量と光強度の関係式を求める。なお、成分特性値はリニアデータ、光強度は対数データとする。
【0034】
成分含有量(M[mg])と光強度(A[dB])とがM=aA+b…式(1)の関係にある場合、信号検出部6にて検出した成分含有量M1のテストピース1の透過光の光強度をT1(リニア値)、成分含有量M2のテストピース2の透過光の光強度をT2(リニア値)とすると、テストピース1の光強度(吸収量)A1=-Log(T1)…式(2)、テストピース2の光強度(吸収量)A2=-Log(T2)…式(3)となる。
【0035】
また、上記式(1)より、M1=aA1+b…式(4)、M2=aA2+b…式(5)となる。
【0036】
以上より、テストピース1とテストピース2の光強度(A1,A2)、および成分含有量(M1,M2)から成分含有量Mと光強度Aの関係式M=aA+b(
図2に示す直線による検量線)を算出し、算出した関係式のパラメータ、関係式の算出時のデータ(成分含有量、透過光の光強度、吸収量)を記憶部10に記憶する。
【0037】
なお、上述した例では、既知の成分含有量M1,M2の2つのテストピースの透過光の光強度を1回測定し、この1回の測定で得られる透過光の光強度から成分含有量と光強度の関係式を求める場合であるが、これに限定されるものではない。例えば既知の成分含有量M1,M2の2つのテストピースの透過量の光強度の測定を複数回試行し、この複数回の測定で得られる透過光の光強度の平均値を求め、この透過光の光強度の平均値から2つのテストピースの光強度(吸収量)A1,A2を求め、2つのテストピースの光強度(A1,A2)、および成分含有量(M1,M2)から成分含有量Mと光強度Aの関係式M=aA+bを算出してもよい。このときのデータ(成分含有量、透過光の光強度、吸収量)とそれらから算出した統計データ(例えば平均値、分散など)は記憶部10に記憶される。
【0038】
また、物質特性値によっては、生産設備の設定値(例えば打錠圧)や環境(温度、湿度)の違いなどにより、検量線に変化が発生するため、定期的にテストピースによる検量線の算出を行って記憶部10に更新記憶するのが好ましい。これにより、より精度の高い検査を行うことが可能となる。
【0039】
また、検査設定値入力部8から入力した検査設定値と、物質特性値と光強度の関係式を算出する際に得た統計データとから被検査物Wの良否を判定するための検査設定値の判定範囲を自動的に設定してもよい。
【0040】
処理部9は、信号検出部6にて検出した被検査物Wの透過光または反射光の光強度と記憶部10に記憶した物質特性値と光強度の関係式(検量線)とから被検査物Wの物質特性値を算出し、算出した物質特性値と検査設定値入力部8で入力した検査設定値(判定範囲値)とを比較して被検査物の良否を判定する。すなわち、処理部9は、算出した物質特性値が判定範囲値の範囲内に有れば被検査物Wを良品と判定し、算出した物質特性値が判定範囲値の範囲内に無ければ被検査物Wを不良品と判定する。
【0041】
記憶部10は、処理部9が算出した物質特性値と光強度の関係式(検量線)のパラメータ、関係式の算出時の統計データを記憶する。また、記憶部10は、物質特性値入力部7から入力された物質特性値、検査設定値入力部8から入力された検査設定値を含め、被測定物Wの検査に関する各種設定情報を記憶する。
【0042】
表示部11は、例えば液晶表示器などの表示装置で構成され、物質特性値入力部7からの物質特性値や検査設定値入力部8からの検査設定値(判定範囲値)を入力するための入力画面、被検査物Wの検査総数、処理部9による被検査物Wの判定結果(良品数、不良品数)を含む測定検査画面などを表示画面に表示する。
【0043】
[物質特性検査装置の動作について]
次に、上記のように構成される物質特性検査装置1を用いて被検査物Wの物質特性を検査する場合の動作について
図3および
図4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0044】
まず、表示部11の入力画面において、使用する複数のテストピースの既知の物質特性値を物質特性値入力部7から入力する(ST1)。
【0045】
そして、物質特性値が既知の複数のテストピースを搬送部2にて順次搬送し、光源3からの光を照射部4から複数のテストピースに対して順番に照射する(ST2)。そして、それぞれのテストピースを透過した光を受光部5にて受光し、信号検出部6にてそれぞれのテストピースの透過光の光強度を測定する(ST3)。このとき測定した透過光の光強度は対数値として得られる。
【0046】
次に、それぞれのテストピースにおける物質特性値と透過光の光強度から、それぞれのテストピースの光強度(吸収量)を算出し、それぞれのテストピースの物質特性値と光強度から物質特性値と光強度の関係式に基づく検量線を算出する(ST4)。そして、算出した検量線データと、検量線の算出時に得られた統計データをそれぞれのテストピースの物質特性値とともに記憶部10に記憶する(ST5)。
【0047】
そして、上述した処理を終えると、表示部11の入力画面において、検査対象となる被検査物Wの良否を判定するための検査設定値(判定範囲値)を検査設定値入力部8から入力する(ST11)。
【0048】
次に、検査対象となる被検査物Wを搬送部2にて順次搬送し、光源3からの光を照射部4から被検査物Wに対して順番に照射する(ST12)。そして、被検査物Wを透過した光を受光部5にて受光し、信号検出部6にて透過光の光強度を測定する(ST13)。このとき測定した透過光の光強度は対数値として得られる。
【0049】
次に、信号検出部6にて測定した透過光の光強度と検量線データから、被検査物Wの物質特性値を算出し(ST14)、算出した被検査物Wの物質特性値と検査設定値とを比較して被検査物Wの良否を判定する(ST15)。
【0050】
[物質特性検査装置の他の形態について]
ところで、他の形態の物質特性検査装置1(1B)として、
図5に示すように、光チョッパ12を備えた構成としてもよい。なお、
図5において、
図1と同一の構成要素には同一番号を付し、その説明を省略している。
【0051】
光チョッパ12は、光源3から照射部4を介して被検査物Wに照射される光に一定周期の変調を加える。
【0052】
また、信号検出部6は、光チョッパ12にて変調した変調光に同期した参照信号を用いたロックインアンプ方式にて同期検波する。
【0053】
図5の物質特性検査装置1Bによれば、照射部4から被検査物Wに照射される光に変調を加えた変調光を被測定光として用い、信号検出部6にて同期検波するので、被検査物Wの透過光または反射光に含まれる不要光を除去し、より高感度な測定が可能になる。
【0054】
このように、本実施の形態の物質特性検査装置は、上記のように吸光度(絶対値)ではなく、物質特性値が既知のテストピースを用いた測定により物質特性値と光強度の関係式を算出する。そして、算出したテストピースの物質特性値と光強度の関係式を元に、被検査物の光強度から算出される物質特性値と検査設定値(判定範囲値)との比較により被検査物の良否を検査する。
【0055】
そして、本実施の形態の物質特性検査装置は、小型かつ安価にて実現することができ、任意の波長成分のみの光を被検査物に照射した際に得られる透過光または反射光の光強度から波長成分の減衰量を算出するので、広帯域スペクトル測定を行う必要がなく、測定時間の短縮を図ることができる。
【0056】
また、必要とする波長成分のみの光を被検査物に照射するため、広帯域光源を用いた場合と比較して、被検査物への全照射光パワーを抑えることができ、光の照射による被検査物へのダメージを抑えて食品や薬品などに含まれる任意の物質特性値(含有量、密度、打錠圧、空隙率など)の検査を行うことができる。
【0057】
以上、本発明に係る物質特性検査装置の最良の形態について説明したが、この形態による記述および図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例および運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1(1A,1B) 物質特性検査装置
2 搬送部
3 光源
4 照射部
5 受光部
6 信号検出部
7 物質特性値入力部
8 検査設定値入力部
9 処理部
10 記憶部
11 表示部
12 光チョッパ
W 被検査物