(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】可逆熱変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料
(51)【国際特許分類】
C09K 9/02 20060101AFI20220524BHJP
B41M 5/28 20060101ALI20220524BHJP
C09D 11/50 20140101ALI20220524BHJP
C09D 11/32 20140101ALI20220524BHJP
C09D 13/00 20060101ALI20220524BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20220524BHJP
C09D 5/06 20060101ALI20220524BHJP
C09D 7/41 20180101ALI20220524BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20220524BHJP
B41M 5/323 20060101ALI20220524BHJP
B41M 5/337 20060101ALI20220524BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20220524BHJP
C09D 5/29 20060101ALI20220524BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
C09K9/02 C
B41M5/28 280
C09D11/50
C09D11/32
C09D13/00
C09D11/101
C09D5/06
C09D7/41
C09D201/00
B41M5/323
B41M5/337 212
B41M5/337 220
B41M5/28 250
B41M5/00 120
C09D5/29
C09B67/20 F
(21)【出願番号】P 2018239021
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】梅本 寛
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-46556(JP,A)
【文献】国際公開第2018/186479(WO,A1)
【文献】特開2018-150475(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0075675(US,A1)
【文献】特開2020-100739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 9/02
B41M 5/00
B41M 5/28
B41M 5/323
B41M 5/337
C09D 1/00 - 13/00
C09B 67/08
C09B 67/20
B43K 29/02
C07D 213/00 - 213/90
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)電子供与性呈色性有機化合物として下記一般式(1)で示されるピリジン誘導体と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とからなる可逆熱変色性組成物。
【化1】
[式中、R
1~R
5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基またはハロゲン原子であり、Arは下記式(2)または下記式(3)のいずれか一方から選択され、
【化2】
【化3】
式(2)または(3)中、R
6およびR
7は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基または置換もしくは無置換のフェニル基である。]
【請求項2】
前記式(1)におけるR
6およびR
7が、メチル基またはp-トリル基である請求項1記載の可逆熱変色性組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料。
【請求項4】
請求項3記載の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、ビヒクルとからなる可逆熱変色性液状組成物。
【請求項5】
印刷インキ、筆記具インキ、塗布具用インキ、インクジェット用インキ、塗料、紫外線硬化型インキ、絵の具、化粧料、繊維用着色液から選ばれる請求項4記載の可逆熱変色性液状組成物。
【請求項6】
請求項3記載の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、成形用樹脂とからなる可逆熱変色性成形用樹脂組成物。
【請求項7】
支持体上に、請求項3記載の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を含む可逆熱変色層を設けてなる可逆熱変色性積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可逆熱変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料に関する。更に詳細には、発色時には橙色乃至赤色を呈し、消色時には無色になる可逆熱変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子供与性呈色性有機化合物と、電子受容性化合物と、前記電子供与性呈色性有機化合物と電子受容性化合物の電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体を必須成分とする黄色乃至橙色から無色に変色する可逆熱変色性組成物に関して幾つかの提案が開示されている(例えば、特許文献1又は2参照)。
前記した従来の可逆熱変色性組成物は、黄色乃至橙色を呈することのできる電子供与性呈色性有機化合物としてピリジン系化合物を用いてなり、蛍光性を有して鮮やかな色を呈するものの、これらのピリジン系化合物の多くは、深色化が難しく、所望の色相のピリジン化合物を得ることが困難であった。一方、キナゾリン系およびビスキナゾリン系化合物は蛍光発色性が低い場合があり、視認性に劣ることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-186540号公報
【文献】特開平8-127768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記した従来の問題を解消するものであって、即ち、発色状態においては鮮やかな橙色乃至赤色を呈し、且つ、消色状態においては無色に色変化する可逆熱変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物として下記一般式(1)で示されるピリジン誘導体と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とからなる可逆熱変色性組成物を要件とする。
【化1】
[式中、R
1~R
5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基またはハロゲン原子であり、Arは下記式(2)または下記式(3)のいずれか一方から選択され、
【化2】
【化3】
式(2)または(3)中、R
6およびR
7は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基または置換もしくは無置換のフェニル基である。]
更には、前記式(1)におけるR
6およびR
7が、メチル基またはp-トリル基であることを要件とする。
更には、前記可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を要件とする。
更には、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、ビヒクルとからなる可逆熱変色性液状組成物、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、成形用樹脂とからなる可逆熱変色性成形用樹脂組成物、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を含む可逆熱変色層を設けてなる可逆熱変色性積層体を要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、特定のピリジン誘導体を電子供与性呈色性有機化合物として用いることにより、発色時に鮮明な橙色乃至赤色を呈し、消色時には無色になる商品性の高い可逆変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】加熱消色型の可逆熱変色性組成物の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【
図2】色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【
図3】加熱発色型の可逆熱変色性組成物の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前記可逆熱変色性組成物としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体の必須三成分を少なくとも含む加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物が挙げられる。
前記可逆熱変色性組成物は、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち特定の温度域ではいずれか一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば元の状態に戻る、ヒステリシス幅(ΔH)が比較的小さい特性を有する(
図1参照)。
また、大きなヒステリシス特性を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t
1)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t
4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t
2~t
3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物も適用できる(
図2参照)。
【0009】
以下に各(イ)、(ロ)、(ハ)成分について具体的に説明する。
前記(イ)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物は、色を決める成分であって、顕色剤である(ロ)成分に電子を供与し、発色する化合物である。
前記一般式(1)で示されるピリジン誘導体は、一般的なトリフェニルピリジン化合物とは異なり、ピリジン環の4位にフェニル基ではなく、2以上の縮環した芳香族炭化水素基(具体的には、ナフタレン基またはアントラセン基)を有することで、一般的なトリフェニルピリジン化合物が蛍光性を有する黄色を示すのに対し、鮮やかな蛍光性を有する橙色~赤色を示す。
【0010】
一般式(1)で示されるピリジン誘導体のピリジン環の4位の置換基であるArは、従来のピリジン化合物と異なり、前記式(2)または前記式(3)で表される2つ以上のベンゼン環が縮合した芳香族炭化水素基である。前記式(2)および(3)中において、二級アミノ基(-NR6R7)は芳香族炭化水素基のいずれの個所にも置換基として結合し得るので、そのことを表すために窒素(N)と芳香族炭化水素基(具体的には、ナフチル基またはアントラニル基)との結合線が芳香族炭化水素基の中に入り込んで更に芳香族炭化水素基を貫くように記載している。
【0011】
前記ピリジン環の4位への置換基であるArが式(2)で表されるナフチル基である場合、そのピリジン環との結合位置はナフチル基の1位または2位が好ましい。またR6およびR7の置換基を有するアミノ基の置換位置としては共役系を延長する観点から、ナフチル基の5位~8位が好ましい。特に共役系の延長効果を得るためのアミノ基の置換位置としては、ナフチル基の5位または6位がより好ましい。
【0012】
前記ピリジン環の4位への置換基であるArが式(3)で表されるアントラニル基である場合、そのピリジン環との結合位置はアントラニル基の1位または2位が好ましい。またR6およびR7の置換基を有するアミノ基の置換位置としては共役系を延長する観点から、アントラニル基の5位~8位が好ましい。特に共役系の延長効果を得るためのアミノ基の置換位置としては、アントラニル基の5位または6位がより好ましい。
【0013】
前記式(2)または前記式(3)のR6およびR7は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基または置換もしくは無置換のフェニル基を表す。R6およびR7が炭素数1~6のアルキル基である場合、発色濃度が高くなる。一方、R6およびR7が置換または無置換のフェニル基である場合、発色濃度が高くなる、もしくは溶解性が向上する。そのためR6およびR7は好ましくはメチル基またはp-トリル基である。
【0014】
前記式(2)または前記式(3)のR6およびR7における、炭素数1~6のアルキル基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、neo-ペンチル基またはn-へキシル基などが挙げられる。好ましくは、R6およびR7は、炭素数1~4のアルキル基であって、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基またはt-ブチル基である。
【0015】
前記式(2)または前記式(3)のR6およびR7におけるフェニル基の置換基の例としてはメチル基、エチル基、n一プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基またはt-ブチル基などの炭素数1~4のアルキル基、F、Cl、BrまたはIなどのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、カルボン酸基または炭素数1~3のアルコキシ基が挙げられる。前記置換基は、発色濃度、溶解性の観点において、炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~3のアルコキシ基などが好ましい。
【0016】
前記一般式(1)のピリジン環の2位及び6位のフェニル基の置換基であるR1~R5は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基またはハロゲン原子である。具体的には、ハロゲン原子はF、Cl、BrまたはIなどであり、好ましくはClまたはBrである。炭素数1~8のアルキル基はメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t一ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、neo-ペンチル基、n-へキシル基、n-オクチル基または2-エチルヘキシル基などである。炭素数1~6のアルコキシ基はメトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、i-プロピルオキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基またはn-へキシルオキシ基などが挙げられる。R1~R5の炭素数1~6のアルコキシ基の好ましい例として具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基またはi-プロピルオキシ基などが挙げられる。得られたピリジン化合物の可視光発色性、蛍光発色性、溶解安定性の観点からR1~R5のうち、少なくとも1つは炭素数1~6のアルコキシ基であることが好ましい。さらにR1~R5のうち2つが炭素数1~6のアルコキシ基であるとより好ましい。
【0017】
前記ピリジン誘導体は電子受容性化合物の存在下で、蛍光性を有するが、その蛍光性はピリジン環に置換するフェニル基の置換基の置換位置により影響を受けると考えられる。このことから前記ピリジン誘導体においてピリジン環に置換するフェニル基の置換基の置換位置は、2位および/または4位であることが好ましい。
前記ピリジン誘導体が、電子受容性化合物の存在下で蛍光性を有する燈色~赤色を呈するためには、一般式(1)におけるR1~R5のうち、少なくとも1つは炭素数1~6のアルコキシ基であることが好ましく、さらにR1~R5のうち、2つが炭素数1~6のアルコキシ基であることがより好ましい。アルコキシ基の置換位置は特に限定されないが、オルト位および/またはパラ位に置換されていると鮮やかな蛍光を発色する。
前記ピリジン化合物が電子受容性化合物の存在下でより蛍光性を有する赤色を呈するためには、ピリジン化合物のπ電子共役系を伸長することが好ましい。その為、例えばナフチル基の2位にピリジン環が、ナフチル基の6位にアミノ基が結合した場合、ピリジン化合物のπ電子共役系が延長し、極大吸収波長が長波長シフトし、鮮やかな蛍光性を有する赤色が視認される。
また、前記ピリジン誘導体は、一般的なトリフェニルピリジン化合物に比べ、耐光性、耐熱性が良好である。
【0018】
前記ピリジン誘導体は、J.Am.Chem.Soc.,1952,74(1),200-202などに記載の公知の方法で合成することができる。より詳しくはアンモニアまたはアンモニア発生剤の存在下、アセトフェノン誘導体とベンズアルデヒド誘導体を酢酸などの酸触媒下で加熱縮合し環化体を合成する環化体合成ステップと、得られた環化体をアミン化するアミン化ステップを経ることにより得ることができる。
【0019】
前記(ロ)成分、即ち電子受容性化合物は、(イ)成分から電子を受け取り、(イ)成分の顕色剤として機能する化合物である。
前記電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群及びその誘導体、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して(イ)成分を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等から選択される化合物があり、これらの中でも活性プロトンを有する化合物群から選択される化合物が好ましい。
活性プロトンを有する化合物及びその誘導体としては、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物及びその金属塩、カルボン酸及びその金属塩、好ましくは、芳香族カルボン酸、炭素数2乃至5の脂肪族カルボン酸及びそれらの金属塩、酸性リン酸エステル及びその金属塩、並びにアゾ-ル系化合物及びその誘導体、1,2,3-トリアゾール及びその誘導体等が挙げられ、これらの中でも、有効な熱変色特性を発現させることができることから、フェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。
前記フェノール性水酸基を有する化合物はモノフェノール化合物からポリフェノール化合物まで広く含まれ、更にビス型、トリス型フェノール等及びフェノール-アルデヒド縮合樹脂等もこれに含まれる。フェノール性水酸基を有する化合物の中でも、少なくともベンゼン環を2以上有するものが好ましい。また、これら化合物は置換基を有していてもよく、置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等が挙げられる。
前記活性プロトンを有する化合物の金属塩が含む金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、コバルト、スズ、銅、鉄、バナジウム、チタン、鉛、及びモリブデン等が挙げられる。
【0020】
以下にこれらの化合物を例示する。
フェノール、o-クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ドデシルフェノール、n-ステアリルフェノール、p-クロロフェノール、p-ブロモフェノール、o-フェニルフェノール、p-ヒドロキシ安息香酸n-ブチル、p-ヒドロキシ安息香酸n-オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,3-ジメチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,7-ジメチルオクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1-フェニル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-へプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス〔2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕ベンゼン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられる。
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2乃至5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1,2,3-トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0021】
前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。
前記(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類が挙げられる。
前記化合物を用いてマイクロカプセル化及び二次加工に応用する場合は、低分子量のものは高熱処理を施すとカプセル外に蒸散するので、安定的にカプセル内に保持させるために炭素数10以上の化合物が好適に用いられる。
アルコール類としては、炭素数10以上の脂肪族一価の飽和アルコールが有効であり、具体的にはデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール等が挙げられる。
【0022】
エステル類としては、炭素数10以上のエステル類が有効であり、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類が挙げられ、具体的にはカプリル酸エチル、カプリル酸オクチル、カプリル酸ステアリル、カプリン酸ミリスチル、カプリン酸ドコシル、ラウリン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸n-デシル、ミリスチン酸3-メチルブチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ネオペンチル、パルミチン酸ノニル、パルミチン酸シクロヘキシル、ステアリン酸n-ブチル、ステアリン酸2-メチルブチル、ステアリン酸3,5,5-トリメチルヘキシル、ステアリン酸n-ウンデシル、ステアリン酸ペンタデシル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸シクロヘキシルメチル、ベヘン酸イソプロピル、ベヘン酸ヘキシル、ベヘン酸ラウリル、ベヘン酸ベヘニル、安息香酸セチル、p-tert-ブチル安息香酸ステアリル、フタル酸ジミリスチル、フタル酸ジステアリル、シュウ酸ジミリスチル、シュウ酸ジセチル、マロン酸ジセチル、コハク酸ジラウリル、グルタル酸ジラウリル、アジピン酸ジウンデシル、アゼライン酸ジラウリル、セバシン酸ジ-(n-ノニル)、1,18-オクタデシルメチレンジカルボン酸ジネオペンチル、エチレングリコールジミリステート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールジステアレート、ヘキシレングリコールジパルミテート、1,5-ペンタンジオールジステアレート、1,2,6-ヘキサントリオールトリミリステート、1,4-シクロヘキサンジオールジデシル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジミリステート、キシレングリコールジカプリネート、キシレングリコールジステアレート等が挙げられる。
【0023】
又、飽和脂肪酸と分枝脂肪族アルコールのエステル、不飽和脂肪酸又は分枝もしくは置換基を有する飽和脂肪酸と分岐状であるか又は炭素数16以上の脂肪族アルコールのエステル、酪酸セチル、酪酸ステアリル及び酪酸ベヘニルから選ばれるエステル化合物も有効である。
具体的には、酪酸2-エチルヘキシル、ベヘン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-エチルヘキシル、カプリン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸3,5,5-トリメチルヘキシル、パルミチン酸3,5,5-トリメチルヘキシル、ステアリン酸3,5,5-トリメチルヘキシル、カプロン酸2-メチルブチル、カプリル酸2-メチルブチル、カプリン酸2-メチルブチル、パルミチン酸1-エチルプロピル、ステアリン酸1-エチルプロピル、ベヘン酸1-エチルプロピル、ラウリン酸1-エチルヘキシル、ミリスチン酸1-エチルヘキシル、パルミチン酸1-エチルヘキシル、カプロン酸2-メチルペンチル、カプリル酸2-メチルペンチル、カプリン酸2-メチルペンチル、ラウリン酸2-メチルペンチル、ステアリン酸2-メチルブチル、ステアリン酸2-メチルブチル、ステアリン酸3-メチルブチル、ステアリン酸1-メチルヘプチル、ベヘン酸2-メチルブチル、ベヘン酸3-メチルブチル、ステアリン酸1-メチルヘプチル、ベヘン酸1-メチルヘプチル、カプロン酸1-エチルペンチル、パルミチン酸1-エチルペンチル、ステアリン酸1-メチルプロピル、ステアリン酸1-メチルオクチル、ステアリン酸1-メチルヘキシル、ラウリン酸1,1-ジメチルプロピル、カプリン酸1-メチルペンチル、パルミチン酸2-メチルヘキシル、ステアリン酸2-メチルヘキシル、ベヘン酸2-メチルヘキシル、ラウリン酸3,7-ジメチルオクチル、ミリスチン酸3,7-ジメチルオクチル、パルミチン酸3,7-ジメチルオクチル、ステアリン酸3,7-ジメチルオクチル、ベヘン酸3,7-ジメチルオクチル、オレイン酸ステアリル、オレイン酸ベヘニル、リノール酸ステアリル、リノール酸ベヘニル、エルカ酸3,7-ジメチルオクチル、エルカ酸ステアリル、エルカ酸イソステアリル、イソステアリン酸セチル、イソステアリン酸ステアリル、12-ヒドロキシステアリン酸2-メチルペンチル、18-ブロモステアリン酸2-エチルヘキシル、2-ケトミリスチン酸イソステアリル、2-フルオロミリスチン酸2-エチルヘキシル、酪酸セチル、酪酸ステアリル、酪酸ベヘニル等が挙げられる。
【0024】
更に、色濃度-温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して変色し、温度変化に依存して色彩記憶性を与えるためには、特公平4-17154号公報に記載された5℃以上50℃未満のΔT値(融点-曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が挙げられる。
【0025】
炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n-ペンチルアルコール又はn-ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n-ペンタデシル、酪酸n-トリデシル、酪酸n-ペンタデシル、カプロン酸n-ウンデシル、カプロン酸n-トリデシル、カプロン酸n-ペンタデシル、カプリル酸n-ノニル、カプリル酸n-ウンデシル、カプリル酸n-トリデシル、カプリル酸n-ペンタデシル、カプリン酸n-ヘプチル、カプリン酸n-ノニル、カプリン酸n-ウンデシル、カプリン酸n-トリデシル、カプリン酸n-ペンタデシル、ラウリン酸n-ペンチル、ラウリン酸n-ヘプチル、ラウリン酸n-ノニル、ラウリン酸n-ウンデシル、ラウリン酸n-トリデシル、ラウリン酸n-ペンタデシル、ミリスチン酸n-ペンチル、ミリスチン酸n-ヘプチル、ミリスチン酸n-ノニル、ミリスチン酸n-ウンデシル、ミリスチン酸n-トリデシル、ミリスチン酸n-ペンタデシル、パルミチン酸n-ペンチル、パルミチン酸n-ヘプチル、パルミチン酸n-ノニル、パルミチン酸n-ウンデシル、パルミチン酸n-トリデシル、パルミチン酸n-ペンタデシル、ステアリン酸n-ノニル、ステアリン酸n-ウンデシル、ステアリン酸n-トリデシル、ステアリン酸n-ペンタデシル、エイコサン酸n-ノニル、エイコサン酸n-ウンデルシ、エイコサン酸n-トリデシル、エイコサン酸n-ペンタデシル、ベヘニン酸n-ノニル、ベヘニン酸n-ウンデシル、ベヘニン酸n-トリデシル、ベヘニン酸n-ペンタデシル等が挙げられる。
【0026】
ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2-デカノン、3-デカノン、4-デカノン、2-ウンデカノン、3-ウンデカノン、4-ウンデカノン、5-ウンデカノン、2-ドデカノン、3-ドデカノン、4-ドデカノン、5-ドデカノン、2-トリデカノン、3-トリデカノン、2-テトラデカノン、2-ペンタデカノン、8-ペンタデカノン、2-ヘキサデカノン、3-ヘキサデカノン、9-ヘプタデカノン、2-ペンタデカノン、2-オクタデカノン、2-ノナデカノン、10-ノナデカノン、2-エイコサノン、11-エイコサノン、2-ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、ステアロン等が挙げられる。
更には、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n-オクタデカノフェノン、n-ヘプタデカノフェノン、n-ヘキサデカノフェノン、n-ペンタデカノフェノン、n-テトラデカノフェノン、4-n-ドデカアセトフェノン、n-トリデカノフェノン、4-n-ウンデカノアセトフェノン、n-ラウロフェノン、4-n-デカノアセトフェノン、n-ウンデカノフェノン、4-n-ノニルアセトフェノン、n-デカノフェノン、4-n-オクチルアセトフェノン、n-ノナノフェノン、4-n-ヘプチルアセトフェノン、n-オクタノフェノン、4-n-ヘキシルアセトフェノン、4-n-シクロヘキシルアセトフェノン、4-tert-ブチルプロピオフェノン、n-ヘプタフェノン、4-n-ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル-n-ブチルケトン、4-n-ブチルアセトフェノン、n-ヘキサノフェノン、4-イソブチルアセトフェノン、1-アセトナフトン、2-アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等が挙げられる。
【0027】
エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等が挙げられる。
【0028】
酸アミド類としては、アセトアミド、プロピオン酸アミド、酪酸アミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベンズアミド、カプロン酸アニリド、カプリル酸アニリド、カプリン酸アニリド、ラウリン酸アニリド、ミリスチン酸アニリド、パルミチン酸アニリド、ステアリン酸アニリド、ベヘニン酸アニリド、オレイン酸アニリド、エルカ酸アニリド、カプロン酸N-メチルアミド、カプリル酸N-メチルアミド、カプリン酸N-メチルアミド、ラウリン酸N-メチルアミド、ミリスチン酸N-メチルアミド、パルミチン酸N-メチルアミド、ステアリン酸N-メチルアミド、ベヘニン酸N-メチルアミド、オレイン酸N-メチルアミド、エルカ酸N-メチルアミド、ラウリン酸N-エチルアミド、ミリスチン酸N-エチルアミド、パルミチン酸N-エチルアミド、ステアリン酸N-エチルアミド、オレイン酸N-エチルアミド、ラウリン酸N-ブチルアミド、ミリスチン酸N-ブチルアミド、パルミチン酸N-ブチルアミド、ステアリン酸N-ブチルアミド、オレイン酸N-ブチルアミド、ラウリン酸N-オクチルアミド、ミリスチン酸N-オクチルアミド、パルミチン酸N-オクチルアミド、ステアリン酸N-オクチルアミド、オレイン酸N-オクチルアミド、ラウリン酸N-ドデシルアミド、ミリスチン酸N-ドデシルアミド、パルミチン酸N-ドデシルアミド、ステアリン酸N-ドデシルアミド、オレイン酸N-ドデシルアミド、ジラウリン酸アミド、ジミリスチン酸アミド、ジパルミチン酸アミド、ジステアリン酸アミド、ジオレイン酸アミド、トリラウリン酸アミド、トリミリスチン酸アミド、トリパルミチン酸アミド、トリステアリン酸アミド、トリオレイン酸アミド、コハク酸アミド、アジピン酸アミド、グルタル酸アミド、マロン酸アミド、アゼライン酸アミド、マレイン酸アミド、コハク酸N-メチルアミド、アジピン酸N-メチルアミド、グルタル酸N-メチルアミド、マロン酸N-メチルアミド、アゼライン酸N-メチルアミド、コハク酸N-エチルアミド、アジピン酸N-エチルアミド、グルタル酸N-エチルアミド、マロン酸N-エチルアミド、アゼライン酸N-エチルアミド、コハク酸N-ブチルアミド、アジピン酸N-ブチルアミド、グルタル酸N-ブチルアミド、マロン酸N-ブチルアミド、アジピン酸N-オクチルアミド、アジピン酸N-ドデシルアミド等が挙げられる。
【0029】
また、前記(ハ)成分として、下記一般式(4)で示される化合物を用いることもできる。
【化4】
〔式中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、mは0~2の整数を示し、X
1、X
2のいずれか一方は-(CH
2)
nOCOR
2又は-(CH
2)
nCOOR
2、他方は水素原子を示し、nは0~2の整数を示し、R
2は炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y
1及びY
2は水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1~3の整数を示す。〕
前記式(1)で示される化合物のうち、R
1が水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、更にR
1が水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
なお、式(11)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(5)で示される化合物が用いられる。
【化5】
式中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10~24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12~22のアルキル基である。
前記化合物として具体的には、オクタン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチルを例示できる。
【0030】
更に、前記(ハ)成分として、下記一般式(6)で示される化合物を用いることもできる。
【化6】
(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1~3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。)
前記化合物として具体的には、オクタン酸1,1-ジフェニルメチル、ノナン酸1,1-ジフェニルメチル、デカン酸1,1-ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1-ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1-ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1-ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1-ジフェニルメチルを例示できる。
【0031】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(7)で示される化合物を用いることもできる。
【化7】
(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、マロン酸と2-〔4-(4-クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、こはく酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、こはく酸と2-〔4-(3-メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2-〔4-(4-クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-〔4-(3-メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-〔4-(4-クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-〔4-(2,4-ジクロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-〔4-(2-メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステルを例示できる。
【0032】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(8)で示される化合物を用いることもできる。
【化8】
(式中、Rは炭素数1乃至21のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは1乃至3の整数を示す。)
前記化合物としては、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとウンデカン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステル、1,4-ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンと酪酸とのジエステル、1,4-ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンとイソ吉草酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと酢酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとプロピオン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと吉草酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプロン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリル酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステルを例示できる。
【0033】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(9)で示される化合物を用いることもできる。
【化9】
(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、こはく酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、スベリン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、セバシン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステルを例示できる。
【0034】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(10)で示される化合物を用いることもできる。
【化10】
(式中、Rは炭素数4乃至22のアルキル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキル基、炭素数4乃至22のアルケニル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、nは0又は1を示す。)
前記化合物としては、4-フェニル安息香酸デシル、4-フェニル安息香酸ラウリル、4-フェニル安息香酸ミリスチル、4-フェニル安息香酸シクロヘキシルエチル、4-ビフェニル酢酸オクチル、4-ビフェニル酢酸ノニル、4-ビフェニル酢酸デシル、4-ビフェニル酢酸ラウリル、4-ビフェニル酢酸ミリスチル、4-ビフェニル酢酸トリデシル、4-ビフェニル酢酸ペンタデシル、4-ビフェニル酢酸セチル、4-ビフェニル酢酸シクロペンチル、4-ビフェニル酢酸シクロヘキシルメチル、4-ビフェニル酢酸ヘキシル、4-ビフェニル酢酸シクロヘキシルメチルを例示できる。
【0035】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(11)で示される化合物を用いることもできる。
【化11】
(式中、Rは炭素数3乃至18のアルキル基、炭素数3乃至18の脂肪族アシル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1乃至3のアルキル基、炭素数1又は2のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、メチル基のいずれかを示し、Zは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数1又は2のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示す。)
前記化合物としては、4-ブトキシ安息香酸フェノキシエチル、4-ペンチルオキシ安息香酸フェノキシエチル、4-テトラデシルオキシ安息香酸フェノキシエチル、4-ヒドロキシ安息香酸フェノキシエチルとドデカン酸とのエステル、バニリン酸フェノキシエチルのドデシルエーテルを例示できる。
【0036】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(12)で示される化合物を用いることもできる。
【化12】
(式中、Rは炭素数4乃至22のアルキル基、炭素数4乃至22のアルケニル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキル基のいずれかを示し、Xは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、nは0又は1を示す。)
前記化合物としては、p-ヒドロキシ安息香酸オクチルの安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸デシルの安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸ヘプチルのp-メトキシ安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸ドデシルのo-メトキシ安息香酸エステル、p-ヒドロキシ安息香酸シクロヘキシルメチルの安息香酸エステルを例示できる。
【0037】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(13)で示される化合物を用いることもできる。
【化13】
(式中、(式中、Rは炭素数3乃至18のアルキル基、炭素数6乃至11のシクロアルキルアルキル基、炭素数5乃至7のシクロアルキル基、炭素数3乃至18のアルケニル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数1乃至3のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示す。)
前記化合物としては、p-ヒドロキシ安息香酸ノニルのフェノキシエチルエーテル、p-ヒドロキシ安息香酸デシルのフェノキシエチルエーテル、p-ヒドロキシ安息香酸ウンデシルのフェノキシエチルエーテル、バニリン酸ドデシルのフェノキシエチルエーテルを例示できる。
【0038】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(14)で示される化合物を用いることもできる。
【化14】
(式中、Rは炭素数3乃至8のシクロアルキル基又は炭素数4乃至9のシクロアルキルアルキル基を示し、nは1乃至3の整数を示す。)
前記化合物としては、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとシクロヘキサンカルボン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとシクロヘキサンプロピオン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとシクロヘキサンプロピオン酸とのジエステルを例示できる。
【0039】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(15)で示される化合物を用いることもできる。
【化15】
(式中、Rは炭素数3乃至17のアルキル基、炭素数3乃至8のシクロアルキル基、炭素数5乃至8のシクロアルキルアルキル基を示し、Xは水素原子、炭素数1乃至5のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子を示し、nは1乃至3の整数を示す。)
前記化合物としては、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとシクロヘキサンカルボン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールジエチレングリコールエーテルとラウリン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールトリエチレングリコールエーテルとシクロヘキサンカルボン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとオクタン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとノナン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとデカン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとミリスチン酸とのジエステルを例示できる。
【0040】
また、電子受容性化合物として炭素数3乃至18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物を用いたり(特開平11-129623号公報、特開平11-5973号公報)、特定のヒドロキシ安息香酸エステルを用いたり(特開2001-105732号公報)、没食子酸エステル等を用いた(特公昭51-44706号公報、特開2003-253149号公報)加熱発色型(加熱により発色し、冷却により消色する)の可逆熱変色性組成物及びそれを内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(可逆熱変色性顔料)を適用することもできる(
図3参照)。
【0041】
本発明の可逆熱変色性組成物は、前記(イ)、(ロ)、(ハ)成分を必須成分とする相溶体であり、各成分の割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1~100、好ましくは0.1~50、より好ましくは0.5~20、(ハ)成分5~200、好ましくは5~100、より好ましくは10~100の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。
【0042】
更に、各種光安定剤を必要により添加することができる。
前記光安定剤は、(イ)、(ロ)、(ハ)成分からなる可逆熱変色性組成物の光劣化を防止するために含有され、(イ)成分1質量%に対して0.3~24質量%、好ましくは0.3~16質量%の割合で含有される。又、前記光安定剤のうち、紫外線吸収剤は、太陽光等に含まれる紫外線を効果的にカットして、(イ)成分の光反応による励起状態によって生ずる光劣化を防止する。又、酸化防止剤、一重項酸素消光剤、スーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消光剤等は光による酸化反応を抑制する。
前記光安定剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0043】
前記光安定剤のうち紫外吸収収剤としては、
2,4-ヒドロキシベンゾフェノン
2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン
2,2′-ジヒドロキシ-4,4′-ジメトキシベンゾフェノン
2,2′,4,4′-テトラヒドロキシベンゾフェノン
2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸
2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン
ビス-(2-メトキシ-4-ヒドロキシ-5-ベンゾイルフェニル)-メタン 2-〔2′-ヒドロキシ-3′-5′-ジ-t-アミルフェニル〕-ベンゾフェノン
2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシ-ベンゾフェノン〔商品名:シーソーブ103、シプロ化成(株)製〕
2-ヒドロキシ-4-オクタデシルオキシベンゾフェノン
2,2′-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン
2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン
2-〔2′-ヒドロキシ-3′-5′-ジ-t-アミルフェニル〕-ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤。
サリチル酸フェニル
サリチル酸パラ-t-ブチルフェニル
サリチル酸パラオクチルフェニル
2-4-ジ-t-ブチルフェニル-4-ヒドロキシベンゾエート
1-ヒドロキシベンゾエート
1-ヒドロキシ-3-t-ブチル-ベンゾエート
1-ヒドロキシ-3-t-オクチルベンゾエート
レゾシノールモノベンゾエート等のサリチル酸系紫外線吸収剤。
【0044】
エチル-2-シアノ-3,3′-ジフェニルアクリレート
2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3′-ジフェニルアクリレート
2-エチルヘキシル-2-シアノ-3-フェニールシンナート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤。
2-〔5-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル〕-ベンゾトリアゾール〔商品名:チヌビン-PS、チバガイギー社製〕
2-〔5-メチル-2-ヒドロキシフェニル〕-ベンゾトリアゾール
2-〔2、ヒドロキシ-3,5-ビス(a,a-ジメチルベンジル)フェニル〕-2Hベンゾトリアゾール
2-〔3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル〕-ベンゾトリアゾール
2-〔3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル〕-5-クロロベンゾトリアゾール
2-〔3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル〕-5-クロロベンゾトリアゾール
2-〔3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル〕-ベンゾトリアゾール〔商品名:チヌビン328、チバガイギー社製〕
メチル-3-〔3-t-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル〕プロピオネート-ポリエチレングリコール分子量300〔商品名:チヌビン1130、チバガイギー社製〕
2-〔3-ドデシル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル〕ベンゾトリアゾール
メチル-3-〔3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル〕プロピオネート-ポリエチレングリコール分子量300
2-〔3-t-ブチル-5-プロピルオクチレート-2-ヒドロキシフェニル〕-5-クロロベンゾトリアゾール
2-〔2-ヒドロキシフェニル-3,5-ジ-(1,1′-ジメチルベンジル)フェニル〕-2H-ベンゾトリアゾール
2-〔2-ヒドロキシ-5-t-オクチルフェニル〕-2H-ベンゾトリアゾール
2-〔3-t-ブチル-5-オクチルオキシカルボニルエチル-2-ヒドロキシフェニル〕-ベンゾトリアゾール〔商品名:チヌビン384、チバガイギー社製〕
2-〔2-ヒドロキシ-5-テトラオクチルフェニル〕-ベンゾトリアゾール 2-〔2-ヒドロキシ-4-オクトオキシ-フェニル〕-ベンゾトリアゾール 2-〔2′-ヒドロキシ-3′-(3”4”5”6”-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5′-メチルフェニル〕-ベンゾトリアゾール
2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤。
エタンジアミド-N-(2-エトキシフェニル)-N′-(4-イソドデシルフェニル)
2,2,4,4-テトラメチル-20-(β-ラウリル-オキシカルボニル)-エチル-7-オキサ-3,20-ジアゾジスピロ(5,1,11,2)ヘンエイコ酸-21-オン等の蓚酸アニリド系紫外線吸収剤。
【0045】
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ペントキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-(2-ブトキシエトキシ)フェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-ペントキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-(2-ヘキシルオキシエトキシ)フェニル)-1,3,5-トリアジン、
2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2′-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2-(2-ヒドロキシ-4-[(1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0046】
酸化防止剤(老化防止剤)としては、
コハク酸ジメチル-1-(2、ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6,テトラメチルピペリジン重縮合物
ポリ〔「6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2-4-シイル」「(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ」〕
2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタペチル-4-ピペリジル)
N,N′-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス〔N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタペチル-4-ピペリジル)アミノ〕-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物
ビス〔1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバシン酸〕
4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン
ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート
8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ「4,5〕デカン-2,4-ジオン等のヒンダードアミン系酸化防止剤。
【0047】
2,6、ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール
2-t-ブチル-4-メトキシフェノール
2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール
オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート
2,2-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)
4,4-チオビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)
2,2-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)
4,4-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)
3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-〔β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕-ウンデカン
1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン
1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン
テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕-メタン
2,2-エチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)
ビス〔3,3′-ビス-(4′-ヒドロキシ-3′-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕-グリコールエステル
1,3,5-トリス(3′5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン
トコフェノール
1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート
ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)
トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕
1,6-ヘキサジオール-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕
2,2-チオエチレンビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕
N,N′-ヘキサメチレンビス(3,5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)
トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイト
2,2,4-トリメチル-1,2-ハイドロキノン
スチレートフェノール
2,5-ジ-t-ブチル-ハイドロキノン
ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4、ピペリジル)セバケート等のフェノール系酸化防止剤。
【0048】
ジラウリル-3,3′-チオジプロピオネート
ジミリスチル-3,3′-チオジプロピオネート
ジステアリル-3,3′-チオジプロピオネート
ステアリルチオプロピルアミド等の硫黄系酸化防止剤。
【0049】
トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト
ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト
3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルホスファネート-ジエチルエステル
トリフェニルホスファイト
ジフェニルイソデシルホスファイト
フェニルイソデシルフォスファイト
4,4′-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト
オクタデシルホスファイト
トリス(ノニルフェニル)ホスファイト
ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト
9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン
10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド
10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン
サイクリックネオペンタテトライルビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト
サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6,-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト
2,2-メチレンビス(4,6-ジーt-ブチルフェニル)オクチルホスファイト
2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン
オクチル化ジフェニルアミン等のリン酸系酸化防止剤等が挙げられる。
【0050】
一重項酸素消光剤としては、
カロチン類、色素類、アミン類、フェノール類、ニッケル錯体類、スルフィド類等が挙げられ、例えば、1・4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン(DABCO)、β-カロチン、1・3-シクロヘキサジエン、2-ジエチルアミノメチルフラン、2-フェニルアミノメチルフラン、9-ジエチルアミノメチルアントラセン、5-ジエチルアミノメチル-6-フェニル-3・4-ジヒドロキシピラン、ニッケルジメチルジチオカルバメート、ニッケル3・5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルO-エチルホスホナート、ニッケル3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルO-ブチルホスホナート、ニッケル〔2・2′-チオビス(4-t-オクチルフェノラート)〕(n-ブチルアミン)、ニッケル〔2・2′-チオ-ビス(4-t-オクチルフェノラート)〕(2-エチルヘキシルアミン)、ニッケルビス〔2・2′-チオ-ビス(4-t-オクチルフェノラート)〕、ニッケルビス〔2・2′-スルホン-ビス(4-オクチルフェノラート)〕、ニッケルビス〔2-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル-N-n-ブチルアルドイミン)、ニッケルビス(ジチオベンジル)、ニッケルビス(ジチオビアセチル)等がある。
【0051】
スーパーオキシドアニオン消光剤としては、
スーパーオキシドジスムターゼとコバルト、及びニッケルの錯体等が挙げられる。
【0052】
オゾン消光剤としては、4,4′-チオビス(6-t-ブチル-m-クレソール)、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、1,4-ジアザビシクロ〔2・2・2〕オクタン、N-フェニル-β-ナフチルアミン、α-トコフェロール、4,4′-メチレン-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、P,P′-ジアミノジフェニルメタン、2,2′-メチレン-ビス(6-t-ブチル-P-クレゾール)、N,N′-ジフェニル-P-フェニレンジアミン、N,N′-ジフェニルエチレンジアミン、N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0053】
前記可逆熱変色性組成物は、そのままの適用でも有効であるが、マイクロカプセルに内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料として使用することが好ましい。これは、種々の使用条件において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
尚、マイクロカプセル化は、従来より公知の界面重合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
前記マイクロカプセルに内包させることにより、化学的、物理的に安定な顔料を構成でき、粒子径0.01~50μm、好ましくは0.1~30μm、より好ましくは0.5~20μmの範囲が実用性を満たす。
なお、平均粒子径の測定は、マウンテック社製の画像解析式粒度分布測定ソフトウェア「マックビュー」を用いて粒子の領域を判定し、粒子の領域の面積から投影面積円相当径(Heywood径)を算出し、その値による等体積球相当の粒子の平均粒子径として測定した値である。
また、全ての粒子或いは大部分の粒子の粒子径が0.2μmを超える場合は、粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製、製品名:Multisizer 4e)を用いてコールター法により等体積球相当の粒子の平均粒子径として測定することも可能である。
さらに、前記ソフトウェアまたはコールター法による測定装置を用いて計測した数値を基にしてキャリブレーションを行ったレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(装置名:LA-300、株式会社堀場製作所製)を用いて、体積基準の粒子径および平均粒子径を測定しても良い。
【0054】
前記マイクロカプセル顔料は、内包物/壁膜=7/1~1/1(質量比)の範囲であることが好ましく、壁膜の比率が前記範囲内にあることにより、発色時の色濃度及び鮮明性の低下を防止することができ、より好適には、内包物/壁膜=6/1~1/1(質量比)である。
【0055】
前記可逆熱変色性組成物及びそれを内包したマイクロカプセル顔料は、水及び/又は有機溶剤と必要により各種添加剤を含むビヒクル中に分散してスクリーン印刷、オフセット印刷、プロセス印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷等に用いられる印刷インキ、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等に用いられる塗料、インクジェット用インキ、紫外線硬化型インキ、マーキングペン用、ボールペン用、万年筆用、筆ペン用等の筆記具又は塗布具用インキ、絵の具、化粧料、繊維用着色液等の可逆熱変色性液状組成物として利用できる。
前記液状組成物には各種添加剤を添加することができ、樹脂、架橋剤、硬化剤、乾燥剤、可塑剤、粘度調整剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、沈降防止剤、平滑剤、ゲル化剤、消泡剤、つや消し剤、浸透剤、pH調整剤、発泡剤、カップリング剤、保湿剤、防かび剤、防腐剤、防錆剤等が挙げられる。
【0056】
そのうち、筆記具用インキに用いられる筆記具用ビヒクルとしては、有機溶剤を含む油性ビヒクル、或いは、水と、必要により有機溶剤を含む水性ビヒクルが挙げられる。
前記有機溶剤としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等を挙げることができる。
【0057】
前記筆記具用インキとしては、ビヒクル中に剪断減粘性付与剤を含む剪断減粘性インキ、ビヒクル中に水溶性高分子凝集剤を含み、顔料を緩やかな凝集状態に懸濁させた凝集性インキを挙げることができる。
前記剪断減粘性付与剤を添加することにより、顔料の凝集、沈降を抑制することができると共に、筆跡の滲みを抑制することができるため、良好な筆跡を形成できる。
更に、前記インキを充填する筆記具がボールペン形態の場合、不使用時のボールとチップの間隙からのインキ漏れを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止することができる。
前記剪断減粘性付与剤としては、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100万乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万~15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アミド等のHLB値が8~12のノニオン系界面活性剤、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸の塩類。N-アルキル-2-ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物を例示できる。
【0058】
前記水溶性高分子凝集剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、水溶性多糖類等が挙げられる。
前記水溶性多糖類としてはトラガントガム、グアーガム、プルラン、サイクロデキストリン、水溶性セルロース誘導体等が挙げられ、水溶性セルロース誘導体の具体例としてはメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
【0059】
前記高分子凝集剤と共に、側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤及び有機窒素硫黄化合物を併用することにより、前記高分子凝集剤によるマイクロカプセル顔料のゆるい凝集体の分散性を向上させることができる。
前記側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤としては、側鎖に複数のカルボキシル基を有する櫛型高分子化合物であれば特に限定されるものではないが、側鎖に複数のカルボキシル基を有するアクリル高分子化合物が好適であり、前記化合物として日本ルーブリゾール社製の商品名:ソルスパース43000を例示できる。
【0060】
前記有機窒素硫黄化合物は、インキ組成物を筆記具に充填して実用に供する際、振動によるマイクロカプセル顔料の沈降をいっそう抑制する。
これは、マイクロカプセル顔料のゆるい凝集体を側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤によって分散させる分散性をより向上させるものである。
前記有機窒素硫黄化合物としては、チアゾール系化合物、イソチアゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾイソチアゾール系化合物から選ばれる化合物が用いられる。
前記有機窒素硫黄化合物として具体的には、2-(4-チアゾイル)-ベンズイミダゾール(TBZ)、2-(チオシアネートメチルチオ)-1,3-ベンゾチアゾール(TCMTB)、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンから選ばれる一種又は二種以上の化合物が用いられ、好ましくは2-(4-チアゾイル)-ベンズイミダゾール(TBZ)、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンから選ばれる一種又は二種以上の化合物が用いられる。
前記有機窒素硫黄化合物としては、(株)パーマケム・アジア製、商品名:トップサイド88、同133、同170、同220、同288、同300、同400、同500、同600、同700Z、同800、同950、北興産業(株)製、商品名:ホクスターHP、同E50A、ホクサイドP200、同6500、同7400、同MC、同369、同R-150を例示できる。
なお、前記側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤と、有機窒素硫黄化合物の質量比率は1:1~1:10、好ましくは1:1~1:5であり、前記範囲を満たすことにより、マイクロカプセル顔料のゆるい凝集体の分散性、及び、振動によるマイクロカプセル顔料の沈降抑制を十分に発現させることができる。
【0061】
更に、筆跡の紙面への固着性や粘性を付与するために適用される水溶性樹脂を添加すると、前述の側鎖にカルボキシル基を有する櫛型高分子分散剤と有機窒素硫黄化合物を含むインキ中でマイクロカプセル顔料の安定性を高める機能がいっそう向上する。
前記水溶性樹脂としては、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等が挙げられ、好ましくはポリビニルアルコールが用いられる。
更に、前記ポリビニルアルコールは、けん化度が70~89モル%の部分けん化度型ポリビニルアルコールがインキが酸性域でも可溶性に富むため、より好適に用いられる。
前記水溶性樹脂の添加量としては、インキ中に0.3~3.0質量%、好ましくは0.5~1.5質量%の範囲で添加される。
【0062】
また、前記インキをボールペンに充填して用いる場合は、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等の潤滑剤を添加してボール受け座の摩耗を防止することが好ましい。
【0063】
その他、必要に応じてアクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等の樹脂を添加して紙面への固着性や粘性を付与したり、炭酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1、2-ベンズチアゾリン3-オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ノニオン系界面活性剤、還元又は非還元デンプン加水分解物、トレハロース等のオリゴ糖類、ショ糖、サイクロデキストリン、ぶどう糖、デキストリン、ソルビット、マンニット、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、消泡剤、分散剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系の界面活性剤を添加してもよい。
【0064】
前記インキの全質量に対し、好ましくは5~40質量%、より好ましくは10~40質量%、さらに好ましくは10~30質量%の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を含有することができる。マイクロカプセル顔料の含有量が上記の範囲であることにより、望ましい発色濃度が達成でき、更にインキ流出性の低下を防止することができる。
【0065】
前記インキを収容するボールペン、マーキングペンについて説明する。
ボールペンに充填する場合、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内に剪断減粘性インキを充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したボールペンチップに連通しており、さらにインキの端面には逆流防止用の液栓が密接しているボールペンを例示できる。
前記ボールペンチップについて更に詳しく説明すると、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けたチップ、或いは、前記チップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を適用できる。
又、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.3~2.0mm、好ましくは0.3~1.5mm、より好ましくは0.3~1.0mm径程度のものが適用できる。
前記インキを収容するインキ収容管は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる成形体、金属製管状体が用いられる。
前記インキ収容管にはチップを直接連結する他、接続部材を介して前記インキ収容管とチップを連結してもよい。
尚、前記インキ収容管はレフィルの形態として、前記レフィルを樹脂製、金属製等の軸筒内に収容するものでもよいし、先端部にチップを装着した軸筒自体をインキ収容体として、前記軸筒内に直接インキを充填してもよい。
また、前記インキ組成物を出没式のボールペンに収容する場合、出没式ボールペンの構造、形状は特に限定されるものではなく、ボールペンレフィルに設けられた筆記先端部が外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、出没機構の作動によって軸筒開口部から筆記先端部が突出する構造であれば全て用いることができる。
出没機構の操作方法としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
前記ノック式は、軸筒後端部や軸筒側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部を押圧することにより、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記回転式は、軸筒後部に回転部を有し、該回転部を回すことによりボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライドを操作することによりボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部をスライドさせることにより、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記出没式ボールペンは軸筒内に複数のボールペンレフィルを収容してなり、出没機構の作動によっていずれかのボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合タイプの出没式ボールペンであってもよい。
【0066】
前記インキ収容管に収容したインキの後端にはインキ逆流防止体が充填される。
前記インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α-オレフィン、α-オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
前記不揮発性液体及び/又は難揮発性液体は、増粘剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、前記増粘剤としては表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物等を挙げることができる。
更に、前記液状のインキ逆流防止体と、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
【0067】
マーキングペンに充填する場合、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内に繊維集束体からなるインキ吸蔵体を内蔵し、毛細間隙が形成された繊維加工体からなるマーキングペンチップを直接或いは中継部材を介して軸筒に装着してなり、前記インキ吸蔵体とチップが連結されてなるマーキングペンの前記インキ吸蔵体に凝集性インキを含浸させたマーキングペンや、チップの押圧により開放する弁体を介してチップとインキ収容管とを配置し、該インキ収容管内にインキを直接収容させたマーキングペン等を例示できる。
前記チップは、繊維の樹脂加工体、熱溶融性繊維の融着加工体、フェルト体等の従来より汎用の気孔率が概ね30~70%の範囲から選ばれる連通気孔の多孔質部材であり、一端を砲弾形状、長方形状、チゼル形状等の目的に応じた形状に加工して実用に供される。
前記インキ吸蔵体は、捲縮状繊維を長手方向に集束させたものであり、プラスチック筒体やフィルム等の被覆体に内在させて、気孔率が概ね40~90%の範囲に調整して構成される。
また、前記弁体は、従来より汎用のポンピング式形態が使用できるが、筆圧により押圧開放可能なバネ圧に設定したものが好適である。
【0068】
更に、前記ボールペンやマーキングペンの形態は前述したものに限らず、相異なる形態のチップを装着させたり、相異なる色のインキを導出させるペン先を装着させた両頭式筆記具であってもよい。
【0069】
なお、前記筆記具用インキ組成物を収容した筆記具を用いて被筆記面に筆記して得られる筆跡は、加熱具又は冷却具により変色させることができる。
前記加熱具としては、抵抗発熱体を装備した通電加熱変色具、温水等を充填した加熱変色具、ヘアドライヤーの適用が挙げられるが、好ましくは、簡便な方法により変色可能な手段として摩擦部材が用いられる。
前記摩擦部材としては、弾性感に富み、擦過時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好適である。
なお、消しゴムを使用して筆跡を摩擦することもできるが、摩擦時に消しカスが発生するため、消しカスが殆ど発生しない前述の摩擦部材が好適に用いられる。
前記摩擦部材の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブタジエンスチレンブロック共重合体)、ポリエステル系樹脂等が用いられる。
前記摩擦部材は筆記具と別体の任意形状の部材(摩擦体)とを組み合わせて筆記具セットを得ることもできるが、筆記具に摩擦部材を設けることにより、携帯性に優れる。
キャップを備える筆記具の場合、摩擦部材を設ける箇所は特に限定されるものではないが、例えば、キャップ自体を摩擦部材により形成したり、軸筒自体を摩擦部材により形成したり、クリップを設ける場合はクリップ自体を摩擦部材により形成したり、キャップ先端部(頂部)或いは軸筒後端部(筆記先端部を設けていない部分)に摩擦部材を設けることができる。
出没式の筆記具の場合、摩擦部材を設ける箇所は特に限定されるものではないが、例えば、軸筒自体を摩擦部材により形成したり、クリップを設ける場合はクリップ自体を摩擦部材により形成したり、軸筒開口部近傍、軸筒後端部(筆記先端部を設けていない部分)或いはノック部に摩擦部材を設けることができる。
前記冷却具としては、ペルチエ素子を利用した冷熱変色具、冷水、氷片等の冷媒を充填した冷熱変色具、冷蔵庫や冷凍庫の適用が挙げられる。
【0070】
前記可逆熱変色性液状組成物を塗布又は印刷する場合、支持体の材質は特定されず、総て有効であり、紙、合成紙、繊維、布帛、合成皮革、レザー、プラスチック、ガラス、陶磁材、金属、木材、石材等を例示でき、平面状に限らず、凹凸状であってもよい。
前記支持体上に、可逆熱変色性組成物を含む可逆熱変色層を設けて積層体(印刷物)が得られる。
前記支持体上に非熱変色性着色層(像を含む)が予め形成されているものにあっては、温度変化により前記着色層を、可逆熱変色層によって隠顕させることができ、変化の様相を更に多様化させることができる。
更に、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ワックス類等に溶融ブレンドしてペレット、粉末、又はペースト形態として可逆熱変色性成形用樹脂組成物として利用することもでき、汎用の射出成形、押出成形、ブロー成形、又は注型成形等の手段により、任意形象の立体造形物、フイルム、シート、板、フィラメント、棒状物、パイプ等の形態の成形体が得られる。
また、熱可塑性樹脂やワックス類に溶融ブレンドしてクレヨン、鉛筆芯、シャープペンシル芯、トナー、粉体塗料を得ることもできる。
なお、前記液状組成物や樹脂組成物中には、一般の染顔料(非熱変色性)を配合し、有色(1)から有色(2)への変色挙動を呈することもできる。
前記積層体、或いは、樹脂組成物を用いて成形した成形体上には、光安定剤及び/又は透明性金属光沢顔料を含む層を積層することによって耐光性を向上させたり、或いは、トップコート層を設けて耐久性を向上させることもできる。
前記光安定剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、一重項酸素消光剤、スーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消光剤を例示できる。
前記透明性金属光沢顔料としては、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆した顔料を例示できる。
【0071】
前記可逆熱変色性組成物及びそれを内包したマイクロカプセル顔料を用いた製品として具体的には、以下のものを例示することができる。
(1)玩具類
人形又は動物形象玩具、人形又は動物形象玩具用毛髪、人形の家や家具、衣類、帽子、鞄、および靴等の人形用付属品、アクセサリー玩具、ぬいぐるみ、描画玩具、玩具用絵本、ジグソーパズル等のパズル玩具、積木玩具、ブロック玩具、粘土玩具、流動玩具、こま、凧、楽器玩具、料理玩具、鉄砲玩具、捕獲玩具、背景玩具および乗物、動物、植物、建築物、および食品等を模した玩具等、
(2)衣類
Tシャツ、トレーナー、ブラウス、ドレス、水着、レインコート、およびスキーウェア等の被服、靴や靴紐等の履物、ハンカチ、タオル、およびふろしき等の布製身の回り品、手袋、ネクタイ、帽子等、
(3)屋内装飾品
絨毯、カーテン、カーテン紐、テーブル掛け、敷物、クッション、額縁、造花、写真立て等、
(4)家具
布団、枕、マットレス等の寝具、照明器具および冷暖房器具等、
(5)装飾品
指輪、腕輪、ティアラ、イヤリング、髪止め、付け爪、リボン、およびスカーフ等時計、眼鏡等、
(6)文房具類
筆記具、スタンプ具、消しゴム、下敷き、定規、粘着テープ等、
(7)日用品
口紅、アイシャドー、マニキュア、染毛剤、付け爪、付け爪用塗料等の化粧品、歯ブラシ等、
(8)台所用品
コップ、皿、箸、スプーン、フォーク、鍋、フライパン等、
(9)その他
カレンダー、ラベル、カード、記録材、および偽造防止用の各種印刷物、絵本等の書籍、鞄、包装用容器、刺繍糸、運動用具、釣り具、コースター、楽器、カイロ、蓄冷剤、財布等の袋物、傘、乗物、建造物、温度検知用インジケーター、および教習具等。
【実施例】
【0072】
以下に実施例を示す。なお、実施例中の部は質量部を示す。
実施例1
可逆熱変色性組成物の調製
(イ)成分として2,6-ビス(2,4-ジエトキシフェニル)-4-(4-(ビス(4-メチルフェニル)アミノ)ナフタレン-1-イル)ピリジン1部、(ロ)成分として1,1-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)n-デカン5部、2,2-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4部、(ハ)成分としてミリスチルアルコール25部、ステアリン酸ブチル25部を混合し、加温溶解して蛍光性を有する橙色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を得た。
前記可逆熱変色性組成物の完全発色温度(t1)は7℃、発色開始温度(t2)は12℃、消色開始温度(t3)は10℃、完全消色温度(t4)は15℃、ヒステリシス幅(ΔH)は3℃であった。
【0073】
実施例2及び3
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
以下の表に示す(イ)成分、(ロ)成分、(ハ)成分を用いて実施例1と同一の方法により可逆熱変色性組成物を調製し、界面重合法によりマイクロカプセルに内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、平均粒子径が2μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
なお、表中の括弧内の数字は質量部を示す。
【0074】
【0075】
比較例1
可逆熱変色性組成物の調製
(イ)成分として2,6-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)ピリジン1部、(ロ)成分として1,1-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)n-デカン4部、2,2-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4部、(ハ)成分としてミリスチルアルコール25部、ステアリン酸ブチル25部を混合し、加温溶解して蛍光性を有する橙色から無色に変色する可逆熱変色性組成物を得た。
前記可逆熱変色性組成物の完全発色温度(t1)は7℃、発色開始温度(t2)は11℃、消色開始温度(t3)は9℃、完全消色温度(t4)は15℃、ヒステリシス幅(ΔH)は3℃であった。
【0076】
比較例2及び3
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の調製
以下の表に示す(イ)成分、(ロ)成分、(ハ)成分を用いて比較例1と同一の方法により可逆熱変色性組成物を調製し、界面重合法によりマイクロカプセルに内包したマイクロカプセル顔料懸濁液を得た。
前記マイクロカプセル顔料懸濁液から顔料を遠心分離により単離し、平均粒子径が2μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を得た。
なお、表中の括弧内の数字は質量部を示す。
【0077】
【0078】
測定試料の作製
実施例1及び比較例1の可逆熱変色性組成物を均一に加熱溶融させた後、濾紙[東洋濾紙(株)製、No.2濾紙]に含浸させて測定試料を得た。
実施例2及び3及び比較例2及び3の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料40部を、エチレン-酢酸ビニル樹脂エマルジョン50部、レベリング剤1部、消泡剤1部、粘度調整剤0.5部、水7.5部からなる水性インキビヒクルに均一に分散させて可逆熱変色性インキを調製した。
前記インキを用いて上質紙にベタ柄をスクリーン印刷して測定試料を得た。
【0079】
ヒステリシス特性の測定
前記測定試料を色差計(TC-3600型色差計、東京電色株式会社製)の測定部分にセットし、試料部分を2℃/分の速度で昇温、降温させ、各温度における色濃度として明度値を測定し、色濃度-温度曲線を作成した。前記色濃度-温度曲線よりt1、t2、t3、t4、ΔH(ヒステリシス幅:t3とt4の中間の温度-t1とt2の中間の温度)を求めた。
以下の表に試験結果を示す。
【0080】
【0081】
耐光性試験
前記各測定試料を完全発色温度(t1)以下に冷却して着色状態とした後、消色開始温度(t3)を上回らない温度環境下においてキセノン耐光試験機(スガ試験機(株)製、テーブルサンXT75L)で170w/m2の放射照度で1時間毎に4時間まで光を照射した。
着色時及び消色時のY色濃度を反射濃度計(コニカミノルタ製、FD-7)にて測定し、その濃度差(着色時濃度-消色時濃度)を求めた。
光照射0時間での濃度差を100%として、照射時間毎の濃度差の変化を測定した。
以下の表に耐光性試験結果を示す。
【0082】
【表4】
実施例の可逆熱変色性組成物は比較例よりも耐光性に優れていた。
【0083】
応用例1
可逆熱変色性表示体の調製
支持体として白色ポリエステルフィルム(厚み25μm)の表面に、実施例2で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料をバインダー樹脂を含むビヒクル中に分散させたインキを用いて印刷して可逆変色層を設け、更にその上面に厚み16μmの透明ポリエステルフィルムでラミネート処理して、可逆的熱変色性表示体を得た。
前記表示体を、一旦、-18℃以下に冷却し、可逆熱変色層を完全に橙色に発色させた後、熱転写プリンターを用いて印字して白色の抜き文字を形成した。
前記白色の抜き文字は、前記表示体が-18℃~64℃の温度域に保持されている限り視認される。
また、前記表示体を再び-18℃以下に冷却し、可逆熱変色層を完全に橙色に発色させると白色の抜き文字は視認されなくなり、前記熱転写プリンターを用いて白色の抜き文字を形成することにより、繰り返し何度も使用することができた。
【0084】
応用例2
可逆熱変色性ミニチュアカーの調製
実施例3で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料15部、50%アクリル樹脂/キシレン溶液40部、キシレン20部、メチルイソブチルケトン20部、ポリイソシアネート系硬化剤5部からなるビヒクル中に攪拌混合して可逆熱変色性スプレー塗料を得た。
前記、可逆熱変色性スプレー塗料を、白色のミニチュアカーのボディ全体にスプレー塗装を施して乾燥して可逆熱変色層を設け、可逆熱変色性ミニチュアカー(玩具)を得た。
前記ミニチュアカーを、一旦、13℃以下に冷却し、可逆熱変色層を完全に赤色に発色させた後、32℃の温水に浸漬すると白色となった。温水から取り出して13℃の冷水に浸漬すると再び赤色になり、前記の様相は繰り返し行うことができた。
【0085】
応用例3
可逆熱変色性マグカップの調製
実施例3で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料30部、硬質液状エポキシ樹脂60部、紫外線吸収剤2部、揺変性付与剤2部、消泡剤0.5部を混合し、更に常温硬化型の脂肪族ポリアミン40部を添加して可逆熱変色性エポキシインキを得た。
前記可逆熱変色性エポキシインキを用いて、陶器製マグカップの側面に曲面印刷機を用いてステンレススクリーン版にてハート柄の印刷を施し、70℃で1時間加熱硬化させて可逆熱変色層を設け、可逆熱変色性マグカップを得た。
前記マグカップに、一旦、13℃以下の冷水が注がれると可逆熱変色層が赤色に発色してハート柄が視認されるが、この状態から冷水を取り除き32℃の湯が注がれると可逆熱変色層が消色して無色になる。さらにこの状態から湯を取り除き、13℃の冷水が注がれると可逆熱変色層が発色して再び赤色のハート柄が視覚される。
なお、この様相変化は温度変化により繰り返し行うことができた。
【0086】
応用例4
ボールペンの調製
実施例2で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(予め-18℃以下に冷却して橙色に発色させたもの)20部、キサンタンガム0.3部、尿素10部、グリセリン10部、ノニオン系浸透剤性付与剤0.5部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防腐剤0.2部、水58.9部からなる可逆熱変色性インキ組成物を調製した。
前記可逆熱変色性インキ組成物をポリプロピレン製パイプに吸引充填し、樹脂製ホルダーを介して0.5mmステンレス鋼ボールを先端に抱持したボールペンチップと連結させた。
次いで、前記ポリプレン製パイプの後端より、ポリブテンを主成分とする粘弾性を有するインキ逆流防止体(液栓)を充填し、更に尾栓をパイプの後部に嵌合させ、先軸胴、後軸胴を組み付け、キャップを嵌めた後、遠心分離により脱気処理を行い、ボールペンを得た。
なお、前記後軸筒後部に摩擦体としてSEBS樹脂を装着してなる。
前記ボールペンを用いて紙面に筆記して橙色の文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は、室温(25℃)で橙色を呈しており、摩擦体を用いて文字を擦過すると、該文字は消色して無色となり、この状態は-18℃以下に冷却しない限り維持することができた。
なお、前記紙面を冷凍庫に入れて-18℃以下に冷却すると、再び文字が橙色になる変色挙動を示し、前記変色挙動は繰り返し再現することができた。
【0087】
応用例5
マーキングペンの調製
実施例2で調製した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(予め-18℃以下に冷却して橙色に発色させたもの)25.0部、櫛型高分子分散剤〔日本ルーブリゾール(株)製、商品名:ソルスパース43000〕0.5部、有機窒素硫黄化合物〔北興化学工業(株)製、商品名:ホクサイドR-150、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンと5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの混合物〕1.0部、ポリビニルアルコール0.5部、グリセリン35.0部、消泡剤0.02部、水37.98部を混合して可逆熱変色性インキ組成物を得た。
ポリエステルスライバーを合成樹脂フィルムで被覆したインキ吸蔵体内に前記インキ組成物を含浸させ、ポリプロピレン樹脂からなる軸筒内に収容し、軸筒先端部にポリエステル繊維の樹脂加工ペン体(チゼル型)をホルダーを介して接続状態に組み立て、キャップを装着してマーキングペンを得た。
前記軸筒後端部には摩擦部材としてSEBS樹脂を装着してなる。
前記マーキングペンを用いて紙面に筆記して橙色の文字(筆跡)を形成した。
前記筆跡は、室温(25℃)で橙色を呈しており、摩擦体を用いて文字を擦過すると、該文字は消色して無色となり、この状態は-18℃以下に冷却しない限り維持することができた。
なお、前記紙面を冷凍庫に入れて-18℃以下に冷却すると、再び文字が橙色になる変色挙動を示し、前記変色挙動は繰り返し再現することができた。
【符号の説明】
【0088】
t1 完全発色温度
t2 発色開始温度
t3 消色開始温度
t4 完全消色温度
T1 完全消色温度
T2 消色開始温度
T3 発色開始温度
T4 完全発色温度
ΔH ヒステリシス幅