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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】静電気消散性樹脂ホース
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/127 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
F16L11/127
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018500118
(86)(22)【出願日】2017-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2017005298
(87)【国際公開番号】W WO2017141901
(87)【国際公開日】2017-08-24
【審査請求日】2019-11-05
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2016030478
(32)【優先日】2016-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391004746
【氏名又は名称】株式会社八興
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】中野 貞明
【合議体】
【審判長】松下 聡
【審判官】山崎 勝司
【審判官】平城 俊雅
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-211687(JP,A)
【文献】実開平6-54984(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L11/127
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体と接する内層と、第1中間層及び第2中間層の2層からなる中間層と、補強層と、外層から構成される静電気消散性樹脂ホースであって、
前記内層が、耐薬品性を有するエチレン・テトラフルオロエチレン共重合樹脂、ポリフッ化ビニリデン、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシアルカン共重合樹脂、変性パーフルオロアルコキシ系樹脂のいずれかとともに導電性物質で構成され、
前記内層の厚みは0.1~0.5mmであり、
前記第1中間層が、前記内層及び前記第2中間層に対して融着性を有するポリアミド樹脂、ポリアミド系エラストマー、接着性ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂の少なくともいずれかと導電性物質で構成され、
前記第1中間層の厚みは0.01~1.0mmであり、
前記第2中間層が、前記第1中間層及び前記外層に対して融着性を有するポリアミド樹脂、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、接着性ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂の少なくともいずれかと導電性物質で構成され、
前記第2中間層の厚みは0.5~3.0mmであり、
前記外層が、熱可塑性樹脂又はエラストマーで構成され、
前記外層の厚みは0.5~5.0mmであり、
当該静電気消散性ホースの端末間抵抗Rが、1KΩ≦R<1MΩであり、
前記第2中間層と前記外層の間に設けられる前記補強層が、下記(A)~(F)のいずれかであることを特徴とする静電気消散性樹脂ホース。
(A)第2中間層の表面に、線径100~3000デニールの補強糸及び線径100~3000デニールの導電繊維をそれぞれ1本ずつ螺旋状に巻き付けたもの
(B)第2中間層の表面に、2本の線径100~3000デニールの導電繊維のみを交差するように螺旋状に巻き付けたもの
(C)第2中間層の表面に、1本又は複数本の線径100~3000デニールの導電繊維を長手方向に平行に設けたもの
(D)第2中間層の表面に、1本又は複数本の線径100~3000デニールの導電繊維を長手方向に平行に設け、その上に線径100~3000デニールの補強糸を交差する
ように螺旋状に巻き付けたもの
(E)第2中間層の表面に、線径0.1~5mmの金属線のみを螺旋状に巻き付けたもの
(F)第2中間層の表面に、線径100~3000デニールの補強糸を螺旋状に巻き付け、その上に線径0.1~5mmの金属線を螺旋状に巻き付けたもの
【請求項2】
前記外層が、導電性物質又は帯電防止剤を含み、体積抵抗率が10~1010Ωcmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の静電気消散性樹脂ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気消散性樹脂ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、化学(石油)プラント用配管、燃料タンク用配管、塗装工場内配管、電子機器等の半導体部品工場内配管等の可燃性液体や可燃性粉体の輸送用配管には樹脂ホースが用いられている。
【0003】
これらの用途の配管に用いる樹脂ホースにおいては、流体とホース内面の摩擦等により静電気が発生して帯電し、放電することにより火災や爆発等の重大事故を引き起こす虞がある為、十分な静電気対策が求められている。
【0004】
このような従来の輸送用の樹脂ホースの静電気対策としては、通常、ホースの構成部材に導電性材料や金属線を用いることにより導電性を付与して静電気を除電し、ホース内面の帯電を防止している。具体的には、例えば、内層の材料として用いるポリエチレンやポリウレタン、エチレン・酢酸ビニル共重合体やフッ素樹脂等の熱可塑性樹脂に導電性物質を含有させるとともに、外層にも同様の帯電防止効果を付与させた帯電防止ホースが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
また、他の提案として、ホースの内層と外層との間に、該内層の外周面に全長に亘って、所定のピッチで導電線を螺旋状に巻きつけるとともに、外層の長さ方向に所定の間隔をおいて帯状の導電樹脂層を設け、この導電樹脂層に対して横断する導電線を圧着させた帯電防止樹脂ホースも提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
一方、近年の静電気の放電に起因する火災や爆発等の重大事故の発生により、配管に用いるホースについては一層の厳しい静電気対策が求められている。具体的には、「ホースに関する安全指針」として国際電気標準会議(IEC)が制定する技術仕様書において、静電気に関するガイドラインが定義されている(IEC/TS 60079-32-1:2013 7.7.3項 ホース及びホース組立)。
【0007】
この技術仕様書では、静電気及び迷走電流からの危険を制御する為のホース端末間抵抗の分類についての規定があり、これらは、端末間抵抗R基準として「導電性(R<1KΩ)」、「消散性(1KΩ≦R<1MΩ)」及び「絶縁性(1MΩ≦R)」の3つに分類されている。
【0008】
これらの規定の中で、導電性(R<1KΩ)の配管の場合、迷走電流の影響を受けやすく、安全なレベルでの制御が困難であるとされている。迷走電流とは、電気設備から大地に漏れ出す電流を意味し、例えば、金属配管等の導電性に優れる配管を電気鉄道に関する配管に用いた場合、迷走電流の影響を受けて金属が溶解、腐食し、損傷する虞があるため適さないとされている。
【0009】
また、絶縁性(1MΩ≦R)の配管については、帯電した静電気を安全に除去することができない為、使用には適さないとされている。
【0010】
これらの所見から、導電性を付与したホースの端末間抵抗は、消散性(1KΩ≦R<1MΩ)のものが望ましいと考えられる。
【0011】
また、独立行政法人労働安全衛生総合研究所が発行している静電気安全指針2007によると、液体を流すホースの静電気対策としては、1mあたり10~10Ωのホースを使用することとされており、上記国際電気標準会議(IEC)が制定したガイドライン同様に消散性の範囲内でのホース選定を推奨している。
【0012】
これらの静電気に関連する指針に従い、端末間抵抗を消散性(1KΩ≦R<1MΩ)レベルのホースとし、樹脂ホース本来の機能として様々な流体への耐薬品性や柔軟性についても併せ持つホースとすることにより、ホースの使用長さに関係なく、如何なる流体に対しても安全に静電気を除去することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開平7-127769号公報
【文献】特開2010-249172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このような状況において、静電気対策を施した上記特許文献1に記載のホースでは、内層及び外層には導電性を有する熱可塑性樹脂を配しているものの、中間層及び補強層は導電性を有していないため、使用長さが長くなる場合には端末間抵抗が上がってしまうことから、前記ガイドラインに適さなくなる場合があり、これらの点において改良の余地があった。
【0015】
また、上記特許文献2に記載のホースでは、外面からの静電気に対する除電効果は有しているものの、流体と内面との摩擦等により発生する静電気については、静電気がホース内層に帯電し、放電によりホースが破損する等の不具合をもたらす虞があり改良の余地があった。
【0016】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、流体とホース内層との摩擦等によって発生する静電気を安全に除電することができ、迷走電流の影響を受けて損傷する虞がなく、使用長さが伸びても端末間抵抗に大きな変動が少ない、良好な除電機能を有する静電気消散性樹脂ホースを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
即ち、本発明の静電気消散性樹脂ホースは以下のことを特徴としている。
【0018】
本発明の静電気消散性樹脂ホースは、流体と接する内層と、第1中間層及び第2中間層の2層からなる中間層と、補強層と、外層から構成される静電気消散性樹脂ホースであって、前記内層が、耐薬品性を有するエチレン・テトラフルオロエチレン共重合樹脂、ポリフッ化ビニリデン、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシアルカン共重合樹脂、変性パーフルオロアルコキシ系樹脂のいずれかとともに導電性物質で構成され、前記第1中間層が、前記内層及び前記第2中間層に対して融着性を有するポリアミド樹脂、ポリアミド系エラストマー、接着性ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂の少なくともいずれかとともに導電性物質で構成され、前記第2中間層が、前記第1中間層及び前記外層に対して融着性を有するポリアミド樹脂、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、接着性ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂の少なくともいずれかとともに導電性物質で構成され、前記第2中間層と前記外層の間に設けられる前記補強層が、少なくとも導電繊維又は金属線を含み、前記外層が、熱可塑性樹脂又はエラストマーで構成されていることを特徴とする。
【0019】
また、この静電気消散性樹脂ホースにおいては、前記外層が、導電性物質又は帯電防止剤を含み、体積抵抗率が10~1010Ωcmの範囲内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の静電気消散性樹脂ホースによれば、流体とホース内層との摩擦等によって発生する静電気を安全に除電することができ、迷走電流の影響を受けて損傷する虞がなく、使用長さが伸びても端末間抵抗に大きな変動が少ない良好な除電機能を有し、静電気に起因する火災、爆発等の重大事故を未然に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の静電気消散性樹脂ホースの一実施形態の層構成を示した概略斜視図である。
図2】導電繊維を第2中間層の表面に螺旋状に巻きつけた実施形態を示す概略斜視図である。
図3】導電繊維を第2中間層の表面に長手方向に平行に設けた実施形態を示す概略斜視図である。
図4】導電繊維を第2中間層の表面に長手方向に平行に設け、その上に補強糸を螺旋状に巻きつけた実施形態を示す概略斜視図である。
図5】金属線を第2中間層の表面に螺旋状に巻きつけた実施形態を示す概略斜視図である。
図6】補強糸を第2中間層の表面に対して螺旋状に巻きつけ、その上に金属線を螺旋状に巻きつけた実施形態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の静電気消散性樹脂ホースについて、図面に基づいて以下に詳述する。図1は、本発明の静電気消散性樹脂ホースの一実施形態を示した概略斜視図である。
【0023】
図1に示すように、本発明の静電気消散性樹脂ホースは、流体と接する内層1と、第1中間層2及び第2中間層3の2層からなる中間層と、補強層と、外層から構成される静電気消散性樹脂ホースである。
【0024】
内層1は、耐薬品性に優れる樹脂であるエチレン・テトラフルオロエチレン共重合樹脂、ポリフッ化ビニリデン、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシアルカン共重合樹脂、変性パーフルオロアルコキシ系樹脂のいずれかとともに導電性物質で構成されている。導電性物質としては、例えば、カーボンブラックやカーボンナノチューブ等を用いることができる。
【0025】
内層1の体積抵抗率は、流体と内層1の接触により発生する静電気を除電可能な値として、100~10Ωcm程度が好ましい。
【0026】
エチレン・テトラフルオロエチレン共重合樹脂、ポリフッ化ビニリデン、四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシアルカン共重合樹脂、変性パーフルオロアルコキシ系樹脂のいずれかに対する導電性物質の配合割合は、内層1に上記体積抵抗率の導電性を付与できる割合であれば特に限定されるものではないが、通常、上記の樹脂100質量部に対して導電性物質0.1~30質量部程度が好ましい。なお、導電性物質としてカーボンナノチューブを用いる場合には、上記配合割合の範囲以下であっても上記体積抵抗率が得られる場合がある。
【0027】
また、内層1の厚みは、上記体積抵抗値の導電性を有する厚みであれば特に限定されるものではないが、通常、0.01~1.0mm、好ましくは0.1~0.5mmの範囲が考慮される。
【0028】
内層1の表面側には、第1中間層2及び第2中間層3の中間層が形成されている。第1中間層2は、内層1及び第2中間層3に対して融着性を有する樹脂と導電性物質から構成されている。第1中間層2を構成する樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリアミド系エラストマー、接着性ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂等を用いることができる。また、これらの樹脂は一種単独で用いてもよく、また複数種を混合して用いてもよい。本発明の静電気消散性樹脂ホースの第1中間層2においては、これらの中でも特にポリアミド樹脂を好適に用いることができる。
【0029】
第1中間層2で用いる導電性物質としては、内層1に含有させた導電性物質と同様のものを用いることができ、具体的には、例えばカーボンブラックやカーボンナノチューブ等を用いることができる。
【0030】
第1中間層2の体積抵抗率は、内層1で発生した静電気を除電可能な値として、100~10Ωcm程度が好ましい。
【0031】
第1中間層2を構成する樹脂と導電性物質の配合割合は、上記体積抵抗率の導電性を有する層に形成できれば特に限定されるものではないが、樹脂100質量部に対して導電性物質0.1~30質量部程度が好ましい。なお、導電性物質としてカーボンナノチューブを用いる場合には、上記配合割合の範囲以下であっても上記体積抵抗率が得られる場合がある。
【0032】
また、第1中間層2の厚みは、通常、0.01mm~1.0mm、好ましくは0.01~0.3mmの範囲が好ましい。第1中間層2の厚みを上記範囲内とすることにより、内層1で発生した静電気を効率よく除電することができる。
【0033】
また、第2中間層3は、第1中間層2及び外層5に対して融着性を有する樹脂と導電性物質から構成されている。なお、本発明では第2中間層と外層5の間に補強層4を設けるが、第2中間層の樹脂は、外層と融着して補強層4を挟み込む形で固定できればよく、必ずしも補強層4に対して接着性を有する樹脂である必要はない。
【0034】
外層5に対して融着性を有する樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、接着性ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂等を用いることができ、これらの樹脂は一種単独で用いてもよく、また複数種を混合して用いてもよい。本発明の静電気消散性樹脂ホースの第2中間層3においては、これらの中でも特にポリウレタン系エラストマーを好適に用いることができる。
【0035】
第2中間層3で用いる導電性物質としては、内層1や第1中間層2に含有させた導電性物質と同様の導電性を用いることができ、具体的には、例えばカーボンブラックやカーボンナノチューブ等を用いることができる。
【0036】
第2中間層3の体積抵抗率は、内層1で発生し、第1中間層2を通過した静電気を除電可能な値として、100~108Ωcm程度が好ましい。
【0037】
第2中間層3を構成する樹脂と導電性物質の配合割合は、上記体積抵抗率の導電性を有する層に形成できれば特に限定されるものではないが、樹脂100質量部に対して導電性物質0.1~30質量部程度が好ましい。なお、導電性物質としてカーボンナノチューブを用いる場合には、上記配合割合の範囲以下であっても上記体積抵抗率が得られる場合がある。
【0038】
また、第2中間層3の厚みは、通常、0.1~5.0mm、好ましくは0.5~3.0mmの範囲が好ましい。第2中間層3の厚みをこの範囲とすることにより、内層1で発生し、第1中間層2を通過した静電気を効率よく除電することができる。
【0039】
本発明の静電気消散性樹脂ホースにおいては、第2中間層3と外層5の間に補強層4を設ける。補強層4は、内層1で発生し、第1中間層2及び第2中間層3に蓄電した静電気を積極的に長手方向に流し、継手等を通して機械等でアースして放電させるとともに、ホース自体に強度を付与するために設けられる層である。補強層4は、少なくとも1本の導電性材料としての導電繊維42又は金属線43を含む層であり、また、導電繊維42又は金属線43とともに補強糸41を設けることもできる。
【0040】
なお、導電繊維42及び金属線43は、第2中間層3の表面に対して接触していれば、内層1から第1中間層2及び第2中間層3及び補強層4がすべて導体となるため、導電繊維42又は金属線43が切断した場合でも、導体としては繋がっており、安全に静電気を除電することが可能となる。
【0041】
導電繊維42としては、例えば、ステンレス鋼繊維、銅線等を用いることができる。導電繊維42の線径についても特に限定されるものではないが、通常100~3000デニール程度の範囲が考慮される。
【0042】
金属線43の材質としては、例えば、ステンレス鋼線や硬鋼線等の金属線43を用いることができる。金属線43の線径は0.1~5mm程度が望ましい。
【0043】
また、上記導電繊維42又は金属線43とともに用いる補強糸41は、樹脂繊維からなる繊維材料であり、例えば、ポリエステル繊維やナイロン繊維等からなる補強糸41を用いることができる。補強糸41の線径は特に限定されるものではないが、通常100~3000デニール程度の範囲が考慮される。
【0044】
補強層4を構成する導電繊維42、金属線43及び補強糸41は種々の形態で設けることができる。例えば、導電繊維42、金属線43、補強糸41の何れかの組み合わせで平行かつ螺旋状に巻きつけたり、各々が交差するように巻きつけることもできる。また、導電繊維42又は金属線43の複数本を平行又は螺旋状に設けることもできる。具体的には、例えば図1図6の実施形態を例示することができる。
【0045】
図1は、補強糸41及び導電繊維42を第2中間層3の表面に螺旋状に巻きつけた実施形態を示し、図2は、2本の導電繊維42のみを第2中間層3の表面に交差するように螺旋状に巻きつけた実施形態を示している。
【0046】
また、図3に示す実施形態では、導電繊維42を第2中間層3の表面に、静電気消散性樹脂ホースの長手方向に平行に設けている。なお、この場合には、導電繊維42を複数本設けることができる。また、導電繊維42は、幅が比較的広い扁平状の所謂リボン状とすることもできる。図4に示す実施形態では、導電繊維42を第2中間層3の表面に長手方向に平行に設け、その上に補強糸41を螺旋状に巻きつけている。
【0047】
また、図5は、金属線43のみを第2中間層3の表面に螺旋状に巻きつけた実施形態を示しており、図6は、補強糸41を第2中間層3の表面に対して螺旋状に巻きつけ、その上に金属線43を螺旋状に巻きつけた実施形態を示している。
【0048】
補強糸41及び導電繊維42を第2中間層3の表面に螺旋状に巻きつける場合のピッチは1~200mm程度が望ましい。また、金属線43を第2中間層3の表面に螺旋状に巻きつける場合のピッチは1~100mm程度が好ましい。
【0049】
第2中間層3及び補強層4の外側に設けられる外層5は、静電気消散性樹脂ホースの外部からの衝撃を吸収するとともに、静電気消散性樹脂ホースに耐久性及び柔軟性を付与するために設けられるものであり、熱可塑性樹脂又はエラストマーで構成されている。
【0050】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、接着性ポリオレフィン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂等を用いることができ、エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等を用いることができる。また、これらの樹脂及びエラストマーは一種単独で用いてもよく、複数種を混合もしくは複層化して用いてもよい。本発明の静電気消散性樹脂ホースの外層5においては、これらの中でも特にポリウレタン系エラストマーを好適に用いることができる。
【0051】
外層5の厚みは、耐久性、柔軟性及び上記除電、帯電防止機能を有する範囲で適宜設置することができ、特に限定されるものではないが、例えば、0.5~5.0mm程度が考慮される。また、外層にはホースの仕様や用途等に応じて、適宜着色することもできる。
【0052】
また、外層5に対しては、必要に応じて体積抵抗率として10~1010Ωcmの範囲内の材料を用いて除電、帯電防止機能を付与することが好ましい。上記体積抵抗率の範囲とするための材料としては、例えば、カーボンブラックやカーボンナノチューブ等の導電性物質や、界面活性剤や金属酸化物等の帯電防止剤等を挙げることができ、これらを樹脂又はエラストマーに含有させることにより除電、帯電防止機能を付与することができる。
【0053】
上記の実施形態の静電気消散性樹脂ホースの製造は、まず、内層1、第1中間層2、第2中間層3の其々を形成するための3機の押出成型機を用いて熱溶融し、その後金型部分にて樹脂を合流後吐出し、内層1と第1中間層2、第1中間層2と第2中間層3を熱及び金型部分での圧力により融着(接着)させ、冷却を経て3層のチューブを成型する。
【0054】
その後、3層チューブの上に補強層4を螺旋状に巻き付けた後、1機の押出成型機にてチューブの上に外層5の樹脂を被覆する。この際、第2中間層3と外層5は、補強層4を挟み込んだ状態で熱及び金型部分での圧力により融着(接着)される。
【0055】
なお、このときの各層間の融着(接着)強度は10N/25mm以上、好ましくは25N/25mm以上である。各層間の融着強度を10N/25mm以上とすることにより、静電気消散性樹脂ホースをU字に曲げて使用するのに際し、静電気消散性樹脂ホースに対して曲げ応力が継続的にかかった場合でも層間が剥離することがない。
【0056】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。
【0057】
上記の実施形態の静電気消散性樹脂ホースでは、中間層を第1中間層2及び第2中間層3の2層の構成としたが、第1中間層2及び第2中間層3と融着性を有し、かつ導電性を有する第3中間層を第1中間層2と第2中間層3の間に設けることもできる。
【0058】
また外層5に関しても2層以上とし、各層の融着性を有し、且つ柔軟性や摺動性、除電、帯電防止機能を有する静電気消散性樹脂ホースとすることができる。
【実施例
【0059】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
共押出成型機により、内層、第1中間層、第2中間層を積層した3層構造のチューブを成形した後、その上に補強層として補強糸及び導電繊維を螺旋状に巻きつけて外層を被覆し、内径12.0mm、外径18.0mm、厚み3.0mmの実施例1のホースを製造した。各層は以下の材料を用いて以下の条件とした。
内層:導電性フッ素樹脂(旭硝子株式会社製導電性エチレン・テトラフルオロエチレン共重合樹脂(ETFE樹脂))(厚み:0.3mm)
第1中間層:導電性ポリアミド樹脂(宇部興産株式会社製ポリアミド12:カーボンブラックを80:20の割合で配合)(厚み:0.1mm)
第2中間層:導電性ポリウレタン系エラストマー(BASFジャパン株式会社製導電性ポリウレタン)(厚み:1.0mm)
補強層:ポリエステル繊維(補強糸:線径 1000デニール 1本+ステンレス鋼繊維(導電繊維:線径 1000デニール)1本(ピッチ:25mm)
外層:ポリウレタン系エラストマー(ディーアイシーコベストロポリマー株式会社製)(厚み:0.6mm)
[実施例2]
補強層に金属線としてステンレス鋼線(線径:0.7mm)を用い、ピッチ5mmの条件とした以外は、実施例1と同様にして実施例2のホースを製造した。
[実施例3]
外層として、帯電防止剤入りポリウレタン系エラストマー 体積抵抗率:1010Ωcmを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例3のホースを製造した。
【0060】
[比較例1]
内層、第1中間層、第2中間層及び外層を以下のものを用いて以下の条件とした以外は、実施例1と同様にして比較例1のホースを製造した。
内層:フッ素樹脂(旭硝子株式会社製エチレン・テトラフルオロエチレン共重合樹脂(ETFE樹脂) 層厚:0.3mm)
第1中間層:ポリアミド樹脂(宇部興産株式会社製ポリアミド12)(層厚:0.1mm)
第2中間層:ポリウレタン系エラストマー(ディーアイシーコベストロポリマー株式会社製株式会社製 厚み:1.0mm)
外層:ポリウレタン系エラストマー(ディーアイシーコベストロポリマー株式会社製株式会社製 厚み:1.6mm)
[比較例2]
補強層に金属線としてステンレス鋼線(線径:0.7mm)を用い、ピッチ5mmの条件として追加した以外は、比較例1と同様にして比較例2のホースを製造した。
[比較例3]
内層として導電性フッ素樹脂(旭硝子株式会社製導電性エチレン・テトラフルオロエチレン共重合樹脂(ETFE樹脂))(厚み:0.3mm)を用い、補強層の金属線としてステンレス鋼線(線径:0.7mm)を用い、ピッチ5mmの条件とした以外は、比較例1と同様にして比較例3のホースを製造した。
【0061】
[評価]
上記実施例1、2及び比較例1~3のホースについて、以下の条件でホースの端末間抵抗を測定、評価した。評価結果を表1に示す。
(測定方法及び評価基準)
実施例1~3及び比較例1~3のホースについて、それぞれ長さ1m、5m、10m、20mの4種類を用意し、各ホース両端末に継手を差し込み、ホース同士が接触しない状態で絶縁抵抗計を用いて継手間のホース端末間抵抗を測定した。絶縁抵抗計は三和電気機器株式会社製DG7を使用し、定格測定電圧は25Vに設定した。
【0062】
そして、各測定結果について以下の基準で評価した。
○:1000KΩ未満
×:1000KΩ以上
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示す評価結果から、実施例1~3のホースについては、流体と内層の摩擦等によって発生した静電気が内層、中間層の樹脂及び補強層に用いた導電繊維やステンレス鋼線を介し、継手を経由し除電可能であることが確認された。
【0065】
これに対して比較例1、2のホースでは、静電気の除電を確認することができず、比較例3のホースでは、著しく端末間抵抗が大きく、除電が困難であることが確認された。
【0066】
また、実施例1~3のホースでは、使用長さが伸びた場合でも端末間抵抗に大きな変動はなく、良好な除電機能を有する静電気消散性樹脂ホースを提供できることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6