(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】画像作成装置、画像作成方法、画像作成プログラム、眼鏡レンズの設計方法および眼鏡レンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02C 7/00 20060101AFI20220524BHJP
G02C 13/00 20060101ALI20220524BHJP
G06T 19/00 20110101ALI20220524BHJP
G06T 15/06 20110101ALI20220524BHJP
【FI】
G02C7/00
G02C13/00
G06T19/00 F
G06T15/06
(21)【出願番号】P 2018546389
(86)(22)【出願日】2017-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2017037741
(87)【国際公開番号】W WO2018074528
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2016205990
(32)【優先日】2016-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】300035870
【氏名又は名称】株式会社ニコン・エシロール
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】岸本 武士
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/044383(WO,A1)
【文献】特開2010-134460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/00
G02C 13/00
G06F 30/10
G06T 19/00
G06T 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想の対象風景における構造物の配置、形状および光学特性に関する対象風景三次元情報と、
眼鏡レンズの配置、形状および光学特性に関する眼鏡レンズ三次元情報と、
前記対象風景を仮想的な前記眼鏡レンズを通して目視する装用者の眼の配置、形状および光学特性に関する眼球三次元情報と
を記憶する記憶部と、
前記対象風景三次元情報、前記眼鏡レンズ三次元情報、及び前記眼球三次元情報に基づいて、前記眼の網膜の各位置へ入射する光線について、前記網膜から前記眼の角膜の方向への第1の光線追跡によって、前記角膜の前面への入射方向および入射位置を算出し、算出された前記入射方向および前記入射位置に基づく、前記角膜から前記対象風景の方向への第2の光線追跡によって、前記対象風景から前記光線が、前記角膜の前面を通って前記網膜の前記各位置へ伝播する光線経路と前記網膜の前記各位置に対応するピクセルの輝度を算出することにより網膜画像を作成する網膜画像作成部
と、
両眼の前記網膜画像のうち、一方の眼の前記網膜画像に設定した複数ピクセルからなる第1ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度と、他方の眼の前記網膜画像に設定した複数ピクセルからなる第2ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度との相関係数に基づいて、前記対象風景における任意の位置に対応する対応点を算出する対応点算出部と、
を備え、
前記網膜画像は、前記装用者が前記眼鏡レンズを通して前記対象風景を目視した際に前記装用者の前記眼の網膜に投影される仮想的な画像であ
り、
前記第1ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度を(fl(xi,yj))とし、前記第1ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度の平均値をfl(エフ・エル・バー;バーはflの上に横棒)とし、前記第2ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度を(fr(xi,yj))とし、前記第2ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度の平均値をfr(エフ・アール・バー;バーはfrの上に横棒)として、前記相関係数であるDcorrが以下の式で求められる、画像作成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像作成装置において、
前記対応点に基づいて、前記位置に対する前記両眼の視差を算出する視差算出部と、
を備える画像作成装置。
【請求項3】
請求項
2に記載の画像作成装置において、
前記両眼の視差と、融像割合を含む視差の補正パラメータとに基づいて、前記両眼の前記網膜画像から合成画像を作成する合成画像作成部を備える画像作成装置。
【請求項4】
請求項
1から
3までのいずれか一項に記載の画像作成装置において、
前記網膜画像に対応する前記両眼の視差の分布を表示する視差表示部を備える画像作成装置。
【請求項5】
請求項1から
4までのいずれか一項に記載の画像作成装置において、
前記装用者の前記眼の形状や光学特性を、前記装用者の処方データから算出する眼球形状算出部を備える画像作成装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の画像作成装置において、
前記眼球形状算出部は、前記眼の形状を、前記装用者の調節力および瞳孔径から算出する画像作成装置。
【請求項7】
請求項1から
6までのいずれか一項に記載の画像作成装置において、
前記眼球三次元情報の変化に基づいて、前記網膜画像、または両眼の前記網膜画像に基づいた合成画像を動画像として表示する動画表示部を備える画像作成装置。
【請求項8】
仮想の対象風景における構造物の配置、形状および光学特性に関する対象風景三次元情報と、眼鏡レンズの配置、形状および光学特性に関する眼鏡レンズ三次元情報と、前記対象風景を前記眼鏡レンズを通して仮想的に目視する装用者の眼の配置、形状および光学特性に関する眼球三次元情報と、に基づいて、前記眼の網膜の各位置へ入射する光線について、前記網膜から前記眼の角膜の方向への第1の光線追跡によって、前記角膜の前面への入射方向および入射位置を算出し、算出された前記入射方向および前記入射位置に基づく、前記角膜から前記対象風景の方向への第2の光線追跡によって、前記対象風景から前記光線が、前記角膜の前面を通って前記網膜の前記各位置へ伝播する光線経路と前記網膜の前記各位置に対応するピクセルの輝度を算出することにより、網膜画像を作成すること
と、
両眼の前記網膜画像のうち、一方の眼の前記網膜画像に設定した複数ピクセルからなる第1ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度と、他方の眼の前記網膜画像に設定した複数ピクセルからなる第2ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度との相関係数に基づいて、前記対象風景における任意の位置に対応する対応点を算出することとを含み、
前記網膜画像は、前記装用者が前記眼鏡レンズを通して仮想的に目視する前記対象風景が、前記装用者の前記眼の網膜に投影される画像であ
り、
前記第1ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度を(fl(xi,yj))とし、前記第1ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度の平均値をfl(エフ・エル・バー;バーはflの上に横棒)とし、前記第2ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度を(fr(xi,yj))とし、前記第2ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度の平均値をfr(エフ・アール・バー;バーはfrの上に横棒)として、前記相関係数であるDcorrが以下の式で求められる、画像作成方法。
【請求項9】
請求項
8に記載の画像作成方法において、
両眼の視差を補正する量を設定した視差補正パラメータに基づいて、前記両眼の前記網膜画像から合成画像を作成する画像作成方法。
【請求項10】
仮想の対象風景における構造物の配置、形状および光学特性に関する対象風景三次元情報と、眼鏡レンズの配置、形状および光学特性に関する眼鏡レンズ三次元情報と、前記対象風景を前記眼鏡レンズを通して仮想的に目視する装用者の眼の配置、形状および光学特性に関する眼球三次元情報と、に基づいて、前記眼の網膜の各位置へ入射する光線について、前記網膜から前記眼の角膜の方向への第1の光線追跡によって、前記角膜の前面への入射方向および入射位置を算出し、算出された前記入射方向および前記入射位置に基づく、前記角膜から前記対象風景の方向への第2の光線追跡によって、前記対象風景から前記光線が、前記角膜の前面を通って前記網膜の前記各位置へ伝播する光線経路と前記網膜の前記各位置に対応するピクセルの輝度を算出することにより、網膜画像を作成する網膜画像作成処理
と、
両眼の前記網膜画像のうち、一方の眼の前記網膜画像に設定した複数ピクセルからなる第1ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度と、他方の眼の前記網膜画像に設定した複数ピクセルからなる第2ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度との相関係数に基づいて、前記対象風景における任意の位置に対応する対応点を算出する対応点算出処理とを、コンピュータに実行させ、
前記網膜画像は、前記装用者が前記眼鏡レンズを通して仮想的に目視する前記対象風景が、前記装用者の前記眼の網膜に投影される画像であ
り、
前記第1ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度を(fl(xi,yj))とし、前記第1ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度の平均値をfl(エフ・エル・バー;バーはflの上に横棒)とし、前記第2ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度を(fr(xi,yj))とし、前記第2ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度の平均値をfr(エフ・アール・バー;バーはfrの上に横棒)として、前記相関係数であるDcorrが以下の式で求められる、画像作成プログラム。
【請求項11】
請求項1から
7までのいずれか一項に記載の画像作成装置における前記網膜画像の作成に用いた前記眼鏡レンズの形状に基づいて、眼鏡レンズを設計する眼鏡レンズの設計方法。
【請求項12】
請求項
11に記載の設計方法により前記眼鏡レンズを設計することと、
前記設計方法により設計された前記眼鏡レンズを製造することと
を含む眼鏡レンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像作成装置、画像作成方法、画像作成プログラム、眼鏡レンズの設計方法および眼鏡レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズを通して、両眼を視野の各物体点に回旋させて観察したときの両眼視性能を示す画像を表示する方法が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、この特許文献1に記載の技術では、装用者が眼鏡レンズをかけたと仮想した際、眼球構造や風景、眼鏡レンズ等に応じて、様々な実際的な場面での視画像の想定を行うことまではできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様によると、画像作成装置は、仮想の対象風景における構造物の配置、形状および光学特性に関する対象風景三次元情報と、眼鏡レンズの配置、形状および光学特性に関する眼鏡レンズ三次元情報と、前記対象風景を仮想的な前記眼鏡レンズを通して目視する装用者の眼の配置、形状および光学特性に関する眼球三次元情報とを記憶する記憶部と、前記対象風景三次元情報、前記眼鏡レンズ三次元情報、及び前記眼球三次元情報に基づいて、前記眼の網膜の各位置へ入射する光線について、前記網膜から前記眼の角膜の方向への第1の光線追跡によって、前記角膜の前面への入射方向および入射位置を算出し、算出された前記入射方向および前記入射位置に基づく、前記角膜から前記対象風景の方向への第2の光線追跡によって、前記対象風景から前記光線が、前記角膜の前面を通って前記網膜の前記各位置へ伝播する光線経路と前記網膜の前記各位置に対応するピクセルの輝度を算出することにより網膜画像を作成する網膜画像作成部
と、両眼の前記網膜画像のうち、一方の眼の前記網膜画像に設定した複数ピクセルからなる第1ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度と、他方の眼の前記網膜画像に設定した複数ピクセルからなる第2ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度との相関係数に基づいて、前記対象風景における任意の位置に対応する対応点を算出する対応点算出部と、を備え、前記網膜画像は、前記装用者が前記眼鏡レンズを通して前記対象風景を目視した際に前記装用者の前記眼の網膜に投影される仮想的な画像であ
り、前記第1ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度を(fl(xi,yj))とし、前記第1ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度の平均値をfl(エフ・エル・バー;バーはflの上に横棒)とし、前記第2ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度を(fr(xi,yj))とし、前記第2ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度の平均値をfr(エフ・アール・バー;バーはfrの上に横棒)として、前記相関係数であるDcorrが以下の式で求められる。
本発明の第2の態様によると、画像作成方法は、仮想の対象風景における構造物の配置、形状および光学特性に関する対象風景三次元情報と、眼鏡レンズの配置、形状および光学特性に関する眼鏡レンズ三次元情報と、前記対象風景を前記眼鏡レンズを通して仮想的に目視する装用者の眼の配置、形状および光学特性に関する眼球三次元情報と、に基づいて、前記眼の網膜の各位置へ入射する光線について、前記網膜から前記眼の角膜の方向への第1の光線追跡によって、前記角膜の前面への入射方向および入射位置を算出し、算出された前記入射方向および前記入射位置に基づく、前記角膜から前記対象風景の方向への第2の光線追跡によって、前記対象風景から前記光線が、前記角膜の前面を通って前記網膜の前記各位置へ伝播する光線経路と前記網膜の前記各位置に対応するピクセルの輝度を算出することにより、網膜画像を作成すること
と、両眼の前記網膜画像のうち、一方の眼の前記網膜画像に設定した複数ピクセルからなる第1ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度と、他方の眼の前記網膜画像に設定した複数ピクセルからなる第2ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度との相関係数に基づいて、前記対象風景における任意の位置に対応する対応点を算出することとを含み、前記網膜画像は、前記装用者が前記眼鏡レンズを通して仮想的に目視する前記対象風景が、前記装用者の前記眼の網膜に投影される画像であ
り、前記第1ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度を(fl(xi,yj))とし、前記第1ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度の平均値をfl(エフ・エル・バー;バーはflの上に横棒)とし、前記第2ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度を(fr(xi,yj))とし、前記第2ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度の平均値をfr(エフ・アール・バー;バーはfrの上に横棒)として、前記相関係数であるDcorrが以下の式で求められる。
本発明の第3の態様によると、画像作成プログラムは、仮想の対象風景における構造物の配置、形状および光学特性に関する対象風景三次元情報と、眼鏡レンズの配置、形状および光学特性に関する眼鏡レンズ三次元情報と、前記対象風景を前記眼鏡レンズを通して仮想的に目視する装用者の眼の配置、形状および光学特性に関する眼球三次元情報と、に基づいて、前記眼の網膜の各位置へ入射する光線について、前記網膜から前記眼の角膜の方向への第1の光線追跡によって、前記角膜の前面への入射方向および入射位置を算出し、算出された前記入射方向および前記入射位置に基づく、前記角膜から前記対象風景の方向への第2の光線追跡によって、前記対象風景から前記光線が、前記角膜の前面を通って前記網膜の前記各位置へ伝播する光線経路と前記網膜の前記各位置に対応するピクセルの輝度を算出することにより、網膜画像を作成する網膜画像作成処理
と、両眼の前記網膜画像のうち、一方の眼の前記網膜画像に設定した複数ピクセルからなる第1ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度と、他方の眼の前記網膜画像に設定した複数ピクセルからなる第2ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度との相関係数に基づいて、前記対象風景における任意の位置に対応する対応点を算出する対応点算出処理とを、コンピュータに実行させ、前記網膜画像は、前記装用者が前記眼鏡レンズを通して仮想的に目視する前記対象風景が、前記装用者の前記眼の網膜に投影される画像であ
り、前記第1ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度を(fl(xi,yj))とし、前記第1ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度の平均値をfl(エフ・エル・バー;バーはflの上に横棒)とし、前記第2ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度を(fr(xi,yj))とし、前記第2ピクセル領域に含まれるそれぞれのピクセルの輝度の平均値をfr(エフ・アール・バー;バーはfrの上に横棒)として、前記相関係数であるDcorrが以下の式で求められる。
本発明の第4の態様によると、眼鏡レンズの設計方法は、第1の態様の画像作成装置における前記網膜画像の作成に用いた前記眼鏡レンズの形状に基づいて、眼鏡レンズを設計する。
本発明の第5の態様によると、眼鏡レンズの製造方法は、第4の態様の設計方法により前記眼鏡レンズを設計することと、前記設計方法により設計された前記眼鏡レンズを製造することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】一実施形態の画像作成装置の構成を示す概略図である。
【
図2】一実施形態の画像作成装置における画像作成方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】入力データの構成を表形式で例示する図である。
【
図4】一実施形態の画像作成装置における外界モデルの構成を示す図である。
【
図5】一実施形態の画像作成装置における眼球モデルの構成を示す図である。
【
図6】一実施形態の画像作成装置における眼球モデルの変化を示す図であり、(a)は眼球レンズの非収縮時、(b)は眼球レンズの収縮時の眼球モデルの構成を示す図である。
【
図7】一実施形態の画像作成装置における光線追跡を説明するための概念図である。
【
図8】一実施形態の画像作成装置における網膜画像の一例を示す図である。
【
図9】一実施形態の画像作成装置における両眼の網膜画像の対応点算出を説明するための概念図であり、(a)は左眼の網膜画像の一例であり、(b)は右眼の網膜画像の一例である。
【
図10】一実施形態の画像作成装置における両眼視画像の構築を説明するための概念図である。
【
図11】一実施形態の画像作成装置における両眼視画像の一例を示す図である。
【
図12】一実施形態の画像作成装置を含む眼鏡レンズ製造システムの構成を示す概念図である。
【
図13】一実施形態の画像作成装置における眼球モデル構築の方法を説明するための図である。
【
図14】一実施形態の画像作成装置の処理を行うプログラムに関する説明をするための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下では、適宜図面を参照しながら、一実施形態の画像作成装置、画像作成方法、画像作成プログラム、眼鏡レンズの設計方法および眼鏡レンズの製造方法等について説明する。本実施形態の画像作成装置は、装用者が仮想的に目視した場合の網膜画像および両眼視画像を作成する。
【0007】
図1は、本実施形態による画像作成装置1の構成を概略的に示した図である。画像作成装置1は、入力部8と、記憶部9と、制御部10と、表示部21と、通信部22とを備える。制御部10は、外界モデル構築部11と、眼球モデル構築部12と、眼鏡レンズモデル構築部13と、網膜画像作成部14と、対応点算出部17と、両眼視画像作成部18と、動画像作成部19とを備える。網膜画像作成部14は、光線追跡部15を備える。
図1の矢印は、画像作成に関する情報の主な流れを示す。
【0008】
入力部8は、キーボード等の入力装置により構成され、後述の外界モデル構築部11、眼球モデル構築部12、眼鏡レンズモデル構築部13での処理に必要な入力データ等の入力を受け付ける。入力部8は、入力データを制御部10の外界モデル構築部11、眼球モデル構築部12、眼鏡レンズモデル構築部13に出力する。
なお、後述の通信部22が入力データを受信し、制御部10に出力する構成にすることもできる。入力データの入力方法は特に限定されず、予め記憶部9に記憶されているデータを入力データとして用いてもよい。
【0009】
記憶部9は、メモリやハードディスク等の不揮発性の記憶媒体で構成され、制御部10とデータを授受し、入力部8が受け付けた入力データや制御部10の処理により得られたモデル、後述の網膜画像および両眼視画像等の各種データを記憶する。
【0010】
制御部10は、CPU等により構成され、画像作成装置1を制御する動作の主体として機能し、記憶部9または制御部10に配置された不揮発性メモリに搭載されているプログラムを実行することにより、画像作成処理を含む各種処理を行う。
【0011】
外界モデル構築部11は、入力部8が受け付けた入力データのうち、後述の外界記述データ(
図3参照)を用いて、三次元座標に幾何オブジェクトを対応させた外界モデルを構築する。外界モデル構築部11は、構築した三次元外界モデルを網膜画像作成部14に出力する。本実施形態では、外界モデルは室内の風景のモデルとし、机、椅子等に見立てた直方体状や円柱状のオブジェクトが配置された例(
図4参照)で説明するが、外界モデルの内容は三次元で記述できるのであれば特に限定されない。
なお、本実施形態において、「風景」とは、視認できる外界を指し、特に内容は限定されない。
【0012】
眼球モデル構築部12は、入力部8が受け付けた入力データのうち、後述の眼球記述データ(
図3参照)を用いて、眼球の三次元モデルを構築し、外界モデルでの眼球モデルの位置情報とともに網膜画像作成部14に出力する。
【0013】
眼鏡レンズモデル構築部13は、入力部8が受け付けた入力データのうち、眼鏡レンズ記述データ(
図3参照)を用いて眼鏡レンズの三次元モデルを構築し、外界モデルでの眼鏡レンズモデルの位置情報とともに網膜画像作成部14に出力する。
【0014】
網膜画像作成部14は、外界モデル構築部11から入力する外界モデルのデータと、眼球モデル構築部12から入力する眼球モデルのデータおよび外界モデルでの位置情報と、眼鏡レンズモデル構築部13から入力する眼鏡レンズモデルのデータおよび外界モデルでの位置情報に基づいて、網膜画像を作成する。本実施形態の網膜画像とは、装用者が眼鏡レンズを通して仮想的に目視する風景が、装用者の両眼のそれぞれの網膜に投影される仮想的な画像である。
【0015】
網膜画像作成部14の光線追跡部15は、二段階の光線追跡により、眼球モデルの両眼の網膜の各位置に入射する光の輝度を算出する。第一段階では、眼球モデルの網膜の各位置から入射光線を逆向きに追跡し眼球モデルの角膜前面での対応する入射光の位置および入射方向を算出する。第二段階では、第一段階で算出された角膜前面での入射光を逆向きに追跡し、外界モデルでの対応する物体点での散乱光から網膜の対応する位置での光の輝度を算出する。光線追跡部15は、得られた両眼の網膜画像を対応点算出部17に出力する。
【0016】
対応点算出部17は、両眼の網膜画像の画素値の相関係数や差分を基に、左右の網膜画像の対応点を算出する。この場合の対応点とは、外界モデルにおいてある物体点からの光が入力する、左眼の網膜画像の位置と、右眼の網膜画像の位置とを指す。また、対応点算出部17は、左右眼の網膜画像の対応点どうしの画素位置(x, y)の差分を視差として計算する。対応点算出部17は、両眼の網膜画像と、網膜画像上の複数の位置における対応点および視差の情報を両眼視画像作成部18に出力する。
【0017】
対応点算出部17は、視差補正前、および/または視差補正後の両眼視画像の視差分布を示す視差表示画像を作成することができる。また、対応点算出部17は、得られた視差表示画像を表示部21に出力して表示させたり、通信部22に出力して外部の装置に送信させたり、動画像作成部19に出力して動画像を作成させたり、適宜記憶部9に出力し記憶させたりすることができる。
【0018】
両眼視画像作成部18は、対応点算出部17から入力する両眼の網膜画像と、対応点および視差の情報とに基づいて、両眼視画像を作成する。両眼視画像作成部18は、視差の補正量の指標となる視差補正パラメータにより、網膜画像の位置により視差の補正量を異ならせることができる。両眼視画像作成部18は、得られた両眼視画像を表示部21に出力して表示させたり、通信部22に出力して外部の装置に送信させたり、動画像作成部19に出力して動画像を作成させたり、適宜記憶部9に出力し記憶させたりすることができる。
【0019】
動画像作成部19は、両眼視画像作成部18や記憶部9から入力する画像について、入力データを構成するデータや視差補正パラメータ等の各種パラメータを時間的に変化させ、それによる網膜画像、両眼視画像または視差表示画像等の変化を示す動画像を作成する。動画像作成部19は、得られた動画像を表示部21に出力して表示させたり、通信部22に出力して外部の装置に送信させたり、適宜記憶部9に出力し記憶させたりすることができる。
【0020】
表示部21は、液晶モニタ等の画像を表示可能な装置により構成され、両眼視画像作成部18や動画像作成部19等から入力する画像を表示する。通信部22は、インターネット等により通信可能な通信装置により構成され、画像作成装置1が作成した画像を送信したり、適宜必要なデータを送受信する。
【0021】
なお、制御部10の各機能は、複数の装置に分散されて配置され、装置間で情報を通信しながら全体で一つのシステムとして上述の画像作成処理を行うように構成してもよい。また、記憶部9、表示部21、通信部22は、画像作成装置1の外付けの装置を用いて構成してもよい。
【0022】
図2は、本実施形態の画像作成装置が行う画像作成方法および眼鏡レンズの設計・製造の流れを示すフローチャートである。以下では、
図2のフローチャートに沿い、上記画像作成方法等を詳述する。
【0023】
ステップS1001において、入力部8は、モデルの構築に必要な入力データを受け付ける。
【0024】
図3は、入力データの構成を示したものである。入力データは、外界モデルの内容を定める外界記述データと、眼球モデルの内容を定める眼球記述データと、眼鏡レンズモデルの内容を定める眼鏡レンズ記述データとを含んで構成される。
なお、入力データに含まれるデータは、
図3に例示されたものに限定されず、また、
図3に例示されたものの一部を予め定められた固定の値としてもよく、適宜設計変更することができる。
【0025】
外界記述データは、外界モデル構築部11が外界モデルを構築するために用いるデータを含んで構成され、外界モデルに配置される幾何オブジェクトの区分・形状、幾何オブジェクトの位置情報、材料特性情報、照明の情報、注視点の情報等を備える。幾何オブジェクトは、球、平面、円筒面、立方体等の幾何要素と、それらが合成されて定義される壁・机・椅子等の構造物を表す合成オブジェクトを備える。ここでは、幾何オブジェクトは幾何要素と合成オブジェクトの2つの区分に分けられている。それぞれの幾何オブジェクトは外界モデルでどこでどの向きに配置されるかを示す位置情報が設定されており、幾何オブジェクトの表面での光の反射率および透過率、色、テクスチャについての情報等が設定されている。幾何オブジェクトの微細な立体構造等は、テクスチャとしての幾何オブジェクトの平面の情報で置き換えて表現することもできる。照明の情報は、照明の位置、照明の光の色、波長分布、光の強さ等を備える。注視点の情報は、注視点の位置等を備える。
【0026】
眼球記述データは、眼球モデル構築部12が眼球モデルを構築するために用いるデータを含んで構成され、装用者の眼球構造の幾何情報、装用者の眼球構造の材料特性情報、網膜の情報、眼球モデルの位置情報等を備える。眼球構造の幾何情報は、水晶体、網膜、角膜、瞳孔等の眼球が備える光学的要素の位置、曲率半径や瞳孔径等を備える。眼球構造の材料特性情報は、眼球が備える上記光学的要素の屈折率等の光学特性を備える。網膜の情報は、外界モデルが投影される網膜投影範囲等を備える。網膜投影範囲は、光線追跡を網膜から逆向きに行う際、光線追跡の開始点の存在する範囲となる。眼球モデルの位置情報は、眼球モデルの外界モデルにおけるどこでどの向きに配置されるかを示す位置情報を備える。
【0027】
眼鏡レンズ記述データは、眼鏡レンズの幾何情報、眼鏡レンズの材料特性情報、眼鏡レンズモデルの位置情報を備える。眼鏡レンズの幾何情報は、眼鏡レンズの外形情報、中心厚、眼鏡レンズの物体側および眼球側の前後二面ならびに周囲面の形状データを備える。これらの眼鏡レンズのレンズ面の形状データは、例えばスプライン表現により記述されている。眼鏡レンズの材料特性情報は、屈折率等のデータを備える。眼鏡レンズモデルの位置情報は、眼鏡レンズモデルの外界モデルにおけるどこでどの向きに配置されるかを示す位置情報を備える。
【0028】
例えば、眼鏡レンズ店の販売員が装用者の処方データを取得し、適宜モデル構築に必要なデータを眼鏡レンズ店で実測して取得し入力することができる。外界記述データについては、販売員が装用者の日常の行動や、どのような環境にいることが多いか等を聞き出して、予め用意された外界モデルのうちから選択したり、装用者に選択させたりすることができる。眼球モデルについては、X線等を用いた形状測定装置からのデータを取得してもよいし、グルストランドの模型眼を参考にして公知の値を用いてもよいし、装用者の年齢や性別等に基づいて、一般的、平均的な値を入力してもよい。眼鏡レンズ記述データについては、設計装置から取得され、装用者の処方データや、装用者が選んだフレームに基づいて算出、取得することができる。
図3に示した入力データの取得方法は、特に限定されない。
入力データが入力されたら、ステップS1003に進む。
【0029】
ステップS1003において、外界モデル構築部11は、ステップS1001で入力された外界記述データに基づいて、外界モデルを構築する。外界モデル構築部11は、三次元座標により位置が指定される仮想空間において、幾何オブジェクトをそれぞれの位置に配置し、照明と注視点とを定める。
【0030】
図4は、外界モデルの一例を示す図である。説明をわかりやすくするため、左右の眼球モデル30L,30Rも配置された図を示している。外界モデル5は、注視点51と、照明52と、オブジェクト53と、壁58と、床59と、を備える。注視点51は、眼球モデル30L,30Rが仮想的に目視する位置を示す。照明52は、外界モデルで表現された対象風景を照らす照明である。オブジェクト53は、幾何オブジェクトか、または複数の幾何オブジェクトを合成して構成される合成オブジェクトであり、対象風景における絵画、置物、机、椅子等のインテリア等である。壁58、床59は、予め定められたデータセットを使用してもよいし、入力データにより設定してもよい。
なお、オブジェクト53としては、視力表等の視力測定用の対象物を置いてもよい。これにより、仮想的な視力の参考にすることができる。外界モデル5では、床59の中心もしくは中央部のいずれかの位置を座標系の原点としてもよいし、またはその他の任意の位置を原点として設定してもよい。
外界モデルが構築されたら、ステップS1005に進む。
【0031】
ステップS1005において、眼球モデル構築部12は、ステップS1001で入力された眼球記述データに基づいて、眼球モデルを構築する。
なお、ステップS1005からステップS1009について、それぞれの処理を両眼について行ってから次のステップに進むように構成されているが、片方の眼についてステップS1005~ステップS1009までの処理を行ってから、もう一方の眼についてステップS1005~ステップS1009までの処理を行ってもよい。
【0032】
図5は、眼球モデルの一例を示す図である。眼球モデル30は、水晶体31と、網膜32と、瞳孔35と、角膜36と、硝子体37と、前房38とを備える。水晶体31は、水晶体辺縁部33と、水晶体コア34とを備える。水晶体辺縁部33は、水晶体後面330pと、水晶体前面330aとを備える。水晶体コア34は、水晶体コア後面340pと、水晶体コア前面340aとを備える。角膜36は、角膜後面360pと、角膜前面360aとを備える。眼球モデル30では、水晶体31、網膜32、瞳孔35、角膜36を含んで構成される眼光学系の光軸39が定義されている。眼球モデル30は三次元形状構造データであるので、光軸39は偏心させたり、傾けたりさせることができる。
【0033】
網膜32は、ハッチングをかけた部分で示した。網膜32は、入力データで定義された不図示の網膜投影範囲が定義され、網膜投影範囲へ入射する光を後述の光線追跡の対象とする。実際の眼球における水晶体では、中心部と辺縁部とで屈折率が異なるため、眼球モデル30では、異なる屈折率を有する水晶体辺縁部33と水晶体コア34の2つの部分で光学的に等価な屈折率等の特性になるように水晶体をモデル化している。
【0034】
瞳孔35は、絞りとしての光学特性を反映するよう、中央の開口部において光を透過させるようにモデル化されている。角膜36は、角膜前面360aが生体外部からの光の入射部位になる一方、角膜36全体で光を屈折させる。ガラス体37は、水晶体後面330pと網膜の間の光路の媒質となっており、前房38は、水晶体前面330aと角膜後面360pとの間の光路の媒質となっている。
【0035】
眼球モデル30において、眼光学系を構成する各光学的要素の位置が定義されている。また、角膜36、硝子体37、前房38、水晶体辺縁部33および水晶体コア34には屈折率等が定義され、また、角膜前面360a、角膜後面360p、水晶体前面330a、水晶体後面330p、水晶体コア前面340a、水晶体コア後面340pにはそれぞれ曲率半径等が定義されている。
なお、水晶体31をさらに複数の部分に分けてモデル化する等、眼球モデルの構成は適宜設計することができ、また、眼球モデルの各構成要素の向きや基準となる位置等を変化させてもよい。
【0036】
また、眼球モデル構築部12は、装用者の調節機能をシミュレーションするため、水晶体辺縁部33および水晶体コア34の厚さを変化させた場合の眼球モデル30も構築する。
【0037】
図6は、
図5の眼球モデル30における水晶体辺縁部33、水晶体コア34、瞳孔35、角膜36を含んだレンズ系を示した図である。
図6(a)(b)では、
図5に対応する部位は適宜同じ参照番号を振って説明を省略する。
図6(a)の水晶体辺縁部33および水晶体コア34は、収縮前(非収縮時)の状態であり、水晶体コア前面340a-1および水晶体コア後面340p-1、水晶体前面330a-1および水晶体後面330p-1のそれぞれの間は、収縮時の状態を示す後述の
図6(b)の場合よりも狭くなっている。
【0038】
図6(b)は、
図6(a)のレンズ系において、装用者が調節力を変化させた場合をシミュレーションしたものである。水晶体辺縁部33および水晶体コア34は、光軸に沿った厚さが大きくなっており、水晶体前面330a-2と水晶体後面330p-2との間の距離、および、水晶体コア前面340a-2と水晶体コア後面340p-2との間の距離は大きくなっている。また、水晶体前面330a-2、水晶体後面330p-2、水晶体コア前面340a-2および水晶体コア後面340p-2の曲率半径の絶対値は小さくなっている。動画像の作成のため、眼球モデル構築部12は、水晶体辺縁部33および水晶体コア34の収縮に関して、
図6(a)の状態から
図6(b)の状態まで、水晶体前面330a、水晶体後面330p、水晶体コア前面340a、水晶体コア後面340pの位置および曲率半径を異なる複数の段階に分けた複数の眼球モデル30を作成する。眼球モデル30が構築されたら、ステップS1007に進む。
なお、角膜36、角膜前面360a、角膜後面360p、瞳孔35やその他の光学的要素を変化させて眼球モデル30を複数構築してもよい。外界モデル5の照明等の環境に応じて異なる複数の眼球モデル30を構築してもよく、例えば、瞳孔35は、後述の光線追跡で得た網膜32へ到達する光の強さをフィードバックして取得し、開口部の大きさを変化させてもよい。また、装用者の調節力に基づいて、水晶体辺縁部33および水晶体コア34の変化量を定め、眼球モデル30を決定してもよい。
【0039】
ステップS1007において、眼鏡レンズモデル構築部13は、ステップS1001で入力された眼鏡レンズ記述データに基づいて、眼鏡レンズモデルを構築する。眼鏡レンズモデル構築部13は、眼鏡レンズの外形情報、中心厚、眼鏡レンズの物体側および眼球側の前後二面ならびに周囲面の面形状データに基づいて眼鏡レンズの三次元モデルを構築する。ここで、面形状データはスプライン表現で表されており、累進屈折力レンズを含めた任意の形状の眼鏡レンズをモデル化することができる。眼鏡レンズモデルが構築されたら、ステップS1009に進む。
なお、三次元の眼鏡レンズモデルを構築できれば、特にその方法は限定されず、販売店に形状データがあればそれを利用して構築してもよい。
【0040】
ステップS1009において、網膜画像作成部14の光線追跡部15は、光線追跡により、網膜32の各位置に入射する外界モデル5からの光の光路、光の強さ、波長分布等を算出する。第一段階である眼球モデル30の内部での光線追跡について、光線追跡部15は、網膜32の網膜投影範囲の各位置に入射する光を進行方向と逆向きに光線追跡し、角膜前面360aでの入射位置および入射方向を算出する。
【0041】
図7は、光線追跡部15の眼球モデル30の内部での光線追跡の方法を模式的に示した図である。網膜投影範囲は、
図7では、網膜球面の経度および緯度が90°の範囲部分とした。光線追跡の方法としては、網膜32の網膜投影範囲の各位置から出射する光43を追跡し、角膜前面360aから出射する対応する光45の位置および進行方向を算出すればよい。角膜前面360aから出射する光45の進行方向で向きを逆向きにすれば、網膜32の位置に対応する角膜前面360aでの入射位置および入射方向を算出することができる。
【0042】
第二段階での外界モデル5における光線追跡について、光線追跡部15は、第一段階で得られた角膜前面360aに入射する光の位置、進行方向に基づいて、逆向きに光線追跡して外界のオブジェクトとの交点計算、反射・透過光線追跡、照明計算を行う。例えば、光線追跡部15は、角膜前面360aに入射する光の位置、進行方向から、当該光が外界モデルのどの物体点からの散乱光かを計算することができ、当該物体点における反射率等の情報から照明から当該物体点への光に基づいて光の強さ、波長等を算出することができる。光線追跡部15は、得られた外界モデルの物体点から入射する光の強さや波長に基づいて、網膜32における各点のRGB等で示される輝度を算出する。得られた網膜32の各点での輝度のデータは、網膜画像を構成する。
【0043】
図8は、網膜画像を例示する図である。
図8の網膜画像は、
図4の外界モデル5の右眼球モデル30Rから注視点51(
図4参照)を仮想的に目視した際の、外界モデル5が右眼球モデル30Rに投影される画像である。
図8では、網膜画像70に、壁58、床59およびオブジェクト53が投影されていることが分かる。
網膜画像70は、曲面である網膜32を二次元座標に割り当てた画像である。網膜画像生成部14は、網膜32の形状を球面である網膜球の一部として近似し、光線追跡部15が算出した網膜32での各点での輝度のデータを、網膜球上の緯度、経度等の角度と平面上の座標位置とを対応付けてマッピングする。網膜画像生成部14は、例えば網膜球上の経度θ0~θ1、緯度φ0~φ1の範囲の輝度データを、Nh×Nv画素の網膜画像70にマッピングする。ここで、Nhは水平方向の画素数、Nvは垂直方向の画素数を表す。また、一つの画素(ピクセル)の大きさSh×Svは、Sh=(θ1-θ0)/Nh、Sv=(φ1-φ0)/Nvで算出される。各画素の対応位置は、θ=θ0+(i+1/2)・Sh、φ=φ0+(j+1/2)・Sv(但し、0≦i<Nh、0≦j<Nv)等、適宜設定することができる。両眼の網膜画像70が構築されたら、ステップS1011に進む。
なお、上記では、網膜球上の角度に基づいて二次元にマッピングしているが、三次元球面座標系(r、θ、φ)を三次元直交座標系(x、y、z)で表した後に、XZ平面等、任意の平面に直接投影してもよい。例えば、網膜画像生成部14は、眼球モデル30の光軸39と網膜32との交点に座標の原点を設定し、網膜32上の各点の輝度データを、原点を通り光軸に垂直な平面に射影してもよい。なお、三次元球面座標系(r、θ、φ)から三次元直交座標系(x、y、z)への変換の計算には、公知の変換式を用いることができる。原点の取り方等、所望の変換が実現できれば座標系の設定の方法は特に限定されない。
【0044】
ステップS1011では、対応点算出部17は、左右の網膜画像70の対応点を算出する。対応点とは、外界モデル5の任意の物体点に対応するピクセルについて、当該物体点が投影されている左右の網膜画像70の位置または当該位置に対応するピクセルのことを指す。
【0045】
図9は、対応点算出の方法を説明するための図である。
図9(a)は、
図4における、左眼眼球モデル30Lの網膜画像70Lに、対応点算出の際の計算範囲を示すテンプレート60Lを加えたものである。
図9(b)は、
図4における、右眼眼球モデル30Rの網膜画像70Rに、対応点算出の際の計算範囲を示すテンプレート60Rを加えたものである。本実施形態では、テンプレート60Lとテンプレート60Rとは共に、対応するピクセルを中心とした11×11の四角形の範囲のピクセルで構成される。
なお、注目しているピクセルに対応するテンプレートの設定の仕方は適宜調整することができる。例えば、テンプレートの大きさを3×3、5×5、17×17等の正方形に設定することができる。
【0046】
対応点算出部17は、左眼の網膜画像70Lのあるピクセル61Lに対応するテンプレート60Lに含まれるピクセルの輝度値と、右眼の網膜画像70Rのあるピクセル61Rに対応するテンプレート60Rに含まれるピクセルの輝度値との間の類似度を算出する。本実施形態では、対応点算出部17は、テンプレート60L,60Rに含まれる複数のピクセル間の輝度値の類似度を、相関係数を利用した方法で算出する。例えば、左右の網膜画像70において、眼球モデル30の光軸39と網膜32との交点に対応する位置に座標の原点を設定し、画像の横方向にX軸、画像の縦方向にY軸をとり、テンプレート内の各画素を局所座標(xi,yj)で指定する。局所座標の関数として、左眼の輝度値をfl(xi,yj)、右眼の輝度値をfr(xi,yj)で表したとき、中心ピクセルが(dx、dy)だけずれたテンプレート60Lと、テンプレート60R間の相関係数Dcorrは、以下の式(1)で算出される。
【数1】
・・・(1)
ここで、上方に横棒のついたfl、frは、テンプレート全体での輝度値の平均を表し、以下の式(2)で算出される。
【数2】
・・・(2)
【0047】
対応点算出部17は、左眼の網膜画像70Lのあるピクセル61Lに対して、右眼の網膜画像70Rでの対応する位置にあるピクセルから、X軸、Y軸それぞれにdx、dyずつずらしたテンプレートと、ピクセル61Lを中心としたテンプレートとで輝度値の相関係数を算出する。対応点算出部17は、dx、dyを0から数ピクセル等の範囲で変えていき、類似度の高い、つまり最も相関係数の高いテンプレートとその中心ピクセルを求める。得られた当該中心ピクセルがピクセル61Lの対応点61Rとなる。
なお、相関係数ではなく、テンプレート間で対応する画素の差分を行い、差分の二乗和を類似度として、差分の二乗和が最も小さいテンプレートを算出して、対応点を算出してもよい。また、類似度の算出に当たり、輝度は、RGBのいずれかの値を用いてもよいし、RGBから算出した輝度信号Y等を用いて計算してもよい。さらに、上記では左眼のあるピクセル61Lに対して右眼の対応点を探索する構成にしたが、右眼のあるピクセルに対して左眼の対応点を探索してもよい。
【0048】
対応点算出部17は、左右の網膜画像70の各ピクセルの対応点を算出したら、両眼の網膜画像70の対応点のXY方向の差分ピクセル数等を視差として、網膜画像70に対応してマッピングした視差分布、または視差分布を表示する視差表示画像を作成する。
対応点の算出と、視差分布等の作成が終わったら、ステップS1013に進む。
【0049】
ステップS1013において、両眼視画像作成部18は、左右の網膜画像70L,70Rを合成して、両眼視画像71を作成する。
【0050】
図10は、左右の網膜画像70をそれぞれ加工せずに重ね合わせた図である。左右の網膜画像70では、視差があるために、網膜画像70を加工せずに合成すると対応点が一致せず、はっきりとした画像にならない。
図10では、左眼の網膜画像70Lのオブジェクト53Lを破線で、右眼の網膜画像70Rのオブジェクト53Rを実線で示すことでずれを模式的に示した。両眼視画像作成部18は、各ピクセルごとの視差情報とその補正パラメータに基づいて左右の画像を局所的にずらして合成する。補正パラメータは、経験に基づいて適宜設定することができる。補正パラメータは、利き目の度合い等により、画像合成時の左右の輝度割合である融像割合の比率や、左右でのずらす割合を調整したりすることができる。
【0051】
図11は、網膜画像70を合成して得られた両眼視画像71を示す図である。
図10の左右の網膜画像70を重ね合わせた図と異なり、はっきりとした画像となっている。
両眼視画像71が作成されたら、ステップS1015に進む。
【0052】
ステップS1015において、両眼視画像作成部18は、ステップS1013で得られた両眼視画像71を表示用に加工する。ステップS1015が終了したら、ステップS1017に進む。
なお、両眼視画像作成部18は、例えばステップS1003~S1013までを繰り返して得た複数の両眼視画像71を動画像作成部19に送り、動画像を作成させてもよい。動画像作成部19は、入力データ等のパラメータを変化させて得られた複数の両眼視画像71を並べて逐次表示するように構成した動画像を作成する。例えば、
図6(a)の状態から
図6(b)の状態まで水晶体辺縁部33および水晶体コア34を変化させた場合を含んだ動画像を、両状態間の異なる複数の段階の眼球モデル30に基づいて作成された両眼視画像71を基に作成する。
作成する動画像は、眼球モデル30の任意のパラメータを時間軸に沿って変化させて構成することができる。また、視線方向を変えた場合等を仮想し、眼球が運動した場合の網膜画像70等の変化を動画像として表してもよい。
【0053】
ステップS1017において、表示部21は、作成された網膜画像70、両眼視画像71、視差表示画像、動画像等を表示する。作成された網膜画像70等が表示されたら、ステップS1019に進む。
【0054】
ステップS1019において、制御部10は、眼鏡レンズを変えて再度網膜画像70等を表示するかを判定する。制御部10は、装用者や眼鏡レンズ販売店の販売員が表示部21に表示された網膜画像70、両眼視画像71、視差表示画像、動画像等を確認して再度眼鏡レンズを変更して網膜画像70等を作成するよう入力した場合は、ステップS1019を肯定判定して、ステップS1007に戻る。それ以外の場合は、ステップS1019を否定判定してステップS1021に進む。
なお、ステップS1007に戻る場合、必要に応じて、制御部10は設計装置93(
図12参照)に再設計の指示を出すことができる。設計装置93は、網膜画像70等の作成に用いた眼鏡レンズの形状や、両眼視画像71の作成の際に用いた補正パラメータや、視差分布等に基づいて眼鏡レンズの設計を行ってもよい。
【0055】
ステップS1021において、制御部10は、設計装置93(
図12参照)に、適宜、眼鏡レンズの加工に必要な情報とともに、網膜画像70の作成に用いた眼鏡レンズの加工指示を送信する。加工指示が送信されたら、ステップS1023に進む。
【0056】
図12は、本実施形態の画像作成装置が網膜画像70の作成に用いた眼鏡レンズを製造する眼鏡レンズ製造システム90を示す。眼鏡レンズ製造システム90は、画像作成装置1と、加工機制御装置91と、眼鏡レンズ加工機92と、設計装置93とを備える。
図12の矢印は、眼鏡レンズの製造に用いるデータの流れを示す。
ステップS1023において、眼鏡レンズ加工機92は、ステップS1021で加工指示が送られた眼鏡レンズを製造する。設計装置93が、例えば入力データの一部として画像作成装置1に送った眼鏡レンズ設計データを加工機制御装置91に送信し、加工機制御装置91の制御により、眼鏡レンズ加工機92が眼鏡レンズを製造する。
【0057】
上述の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)本実施形態の画像作成装置1は、外界モデル5におけるオブジェクト53の配置、形状および反射率等の光学特性に関する外界記述データと、眼鏡レンズの配置、形状および屈折率等の光学特性に関する眼鏡レンズ記述データと、外界モデル5を眼鏡レンズを通して仮想的に目視する装用者の両眼の配置、形状および屈折率等の光学特性に関する眼球記述データと、に基づいて、装用者が眼鏡レンズを通して仮想的に目視する外界モデル5が、装用者の両眼のそれぞれの網膜に投影される網膜画像70を作成する網膜画像作成部14を備える。これにより、装用者が眼鏡レンズをかけたと仮想した際、眼球構造や風景、眼鏡レンズ等に応じて、様々な実際的な場面での視画像の想定を行うことができる。
【0058】
(2)本実施形態の画像作成装置1は、両眼の網膜画像70において、外界モデル5における任意の位置に対応する対応点を算出し、算出した対応点に基づいて、当該位置に対する両眼の視差を算出する対応点算出部17と、を備える。これにより、装用者が眼鏡レンズをかけたと仮想した際の、実際的な場面での視差の想定を行うことができる。
【0059】
(3)本実施形態の画像作成装置1は、左眼の網膜画像70Lに設定した複数ピクセルからなるテンプレート60Lに含まれるそれぞれのピクセルの輝度と、右眼の網膜画像70Rに設定した複数ピクセルからなるテンプレート60Rに含まれるそれぞれのピクセルの輝度との相関係数Dcorrまたは差分に基づいて対応点を算出する。これにより、両眼の網膜画像70の比較から直接対応点を検出することができる。
【0060】
(4)本実施形態の画像作成装置1において、両眼視画像作成部18は、両眼の視差と、左右の画像成分をずらす割合や融像割合等の補正パラメータに基づいて、両眼の網膜画像70から両眼視画像71を作成する。これにより、装用者が眼鏡レンズをかけたと仮想した際の、実際的な場面での両眼視の視画像の想定を行うことができる。
【0061】
(5)本実施形態の画像作成装置1において、表示部21は、網膜画像70に対応する両眼の視差分布を表示する。これにより、装用者が眼鏡レンズをかけたと仮想した際の、実際的な場面での両眼視の視差の想定ができる。
【0062】
(6)本実施形態の画像作成装置1において、光線追跡部15は、両眼の網膜32の各位置へ入射する光線について、両眼の角膜前面360aへの入射方向および入射位置を算出し、当該入射方向および入射位置に基づいて、外界モデル5から光線が、角膜前面360aを通って網膜32の各位置へ伝播する光線経路と網膜32の各位置に対応するピクセルの輝度を算出する。これにより、網膜32に到達する外界モデル5からの光を適切に追跡することができる。
【0063】
(7)本実施形態の画像作成装置1において、表示部21は、眼球記述データの変化に基づいて、網膜画像70、または両眼の網膜画像70に基づいた両眼視画像71を動画像として表示する。これにより、眼球のパラメータを変化させた際の、実際的な場面での視画像の想定をわかりやすく提供することができる。
【0064】
(8)本実施形態の画像作成装置1において、両眼の形状を、装用者の調節力および瞳孔径から算出する。これにより、適切に眼光学系の屈折力や絞りの度合を再現することができる。
【0065】
次のような変形も本発明の範囲内であり、上述の実施形態と組み合わせることが可能である。
(変形例1)
上述の実施形態において、網膜画像作成部14は、屈折異常の眼球構造を考慮して、矯正レンズとの組み合わせで網膜画像70を作成してもよい。これにより、本実施形態の網膜画像70等に基づいて、屈折異常を適切に矯正するレンズを提供することが可能となる。
【0066】
本変形例では、網膜画像70、両眼視画像71、視差分布、動画像等を作成する。その一方で、眼鏡レンズモデル構築部13は、仮想の矯正レンズモデルを構築し、網膜画像作成部14に出力する。網膜画像作成部14は、矯正レンズモデルに基づいた網膜画像70を作成する。仮想の矯正レンズモデルは、入力部8で受け付けた装用者の処方や矯正レンズに関する入力データを基に構築することができる。表示部21は、矯正レンズ有の場合と無しの場合の網膜画像70、両眼視画像71、視差分布、動画像等を比較可能な形で、例えば、同時に、表示することができる。
【0067】
本変形例の画像作成装置1において、網膜画像作成部14は、さらに仮想の矯正レンズの配置、形状および光学特性に関する入力データ等のデータに基づいて、両眼のそれぞれの網膜32に投影される網膜画像70を作成する。これにより、矯正レンズによる効果をわかりやすく表示することができる。
【0068】
(変形例2)
上述の実施形態においては、眼球構造が眼球記述データにより記述されるとしたが、装用者の処方データから眼球記述データを算出するように構成してもよい。これにより、装用者の眼球構造を実測したり、直接計測したデータが取得できなくても、処方データから眼球モデル30を構築することができる。
【0069】
図13は、装用者の処方データから眼球記述データを算出する方法を説明するための図である。本変形例では、球面度数、乱視度数、乱視軸の角度の処方データから眼球構造のパラメータ、特に角膜前面360aおよび角膜後面360pの曲率または曲率半径を反復アルゴリズムにより算出する。
図13の眼鏡レンズモデル30においては、角膜36、水晶体31、一点鎖線で示された光軸39上に位置している網膜位置中心320等が示されている。
【0070】
乱視が無い場合、眼球モデル構築部12は、処方データの球面度数に合わせるように角膜前面360aおよび角膜後面360pの曲率を決定する。まず角膜前面360aおよび角膜後面360pの曲率を任意に設定し、当該曲率に基づいて光線追跡により、網膜位置中心320から瞳孔を通り角膜を出て、眼球の回旋中心から25mmの球面との交点位置での光線波面の屈折力を算出する。眼球の回旋中心から25mmの球面と光線との交点位置での屈折力と処方球面度数とを比較し、差の絶対値が0.02ディオプタ(以下、「D」で表す)未満等の値であれば設定した角膜前面360aおよび角膜後面360pの曲率で決定する。上記交点位置での屈折力と処方球面度数との差の絶対値が0.02D以上であれば、角膜前面360aおよび角膜後面360pの曲率を上記交点位置での屈折力と処方球面度数との差の値に基づいて適宜増減して再設定した後、再度光線追跡を行う。例えば、球面度数が+S度なら曲率をきつくし、-Sなら曲率を平坦化する。この手順を繰り返し、上記交点位置での屈折力と処方球面度数との差が0.02D未満となるまで繰り返す。
なお、上記では、設定した角膜前面360aおよび角膜後面360pの曲率を採用するか否かの基準を0.02Dとしたが、0.01D、0.03D等の値に適宜設定することができる。また、光線波面の屈折力の算出位置も、角膜を出て光軸方向に10~15mmの範囲等から選択する等、適宜設定することができる。以下の乱視の有る場合でも同様である。
【0071】
乱視がある場合は、角膜前面360aおよび角膜後面360pをトーリック面とする。当該トーリック面は、所定の軸を中心に90度ごとに、曲率が最小となるベース曲率となる面、曲率が最大となるクロス曲率となる面とが現れるよう構成され、ベース曲率、クロス曲率、およびベース曲率となる方向とで定まる。眼球モデル構築部12は、ベース曲率、クロス曲率、およびベース曲率となる方向を設定し、光線追跡により角膜を出て眼球の回旋中心から25mmの球面と光線との交点位置での光線波面のベース方向の屈折力、クロス方向の屈折力およびベース屈折力方向を算出する。眼球モデル構築部12は、ベース方向の屈折力と処方球面度数との差、ベース方向の屈折力からクロス方向の屈折力を引いた値と処方乱視度数との差、については絶対値で0.02未満等の値であれば評価基準を満たすとする。眼球モデル構築部12は、ベース屈折力方向については数度未満、例えば1度未満の差であれば評価基準を満たすとする。眼球モデル構築部12は、これらの評価基準が全て満たされた場合、設定したベース曲率、クロス曲率、およびベース曲率となる方向のトーリック面を角膜前後面のモデルとして採用する。眼球モデル構築部12は、いずれかの評価基準が満たされない場合は、再びベース曲率、クロス曲率、およびベース曲率となる方向を設定しなおして評価する。
なお、処方データに対応する眼鏡レンズを眼球前方に配置し、眼鏡レンズ前方から眼鏡レンズの光学中心に向かう平面波の光線追跡をし、網膜中心位置320での屈折力が0.02D未満等になるように角膜前面360aおよび角膜後面360pの曲率等のパラメタを反復アルゴリズムで決定してもよい。これにより、検眼時の状況を反映してより精密なモデル構築が可能となる。
【0072】
(変形例3)
画像作成装置1の情報処理機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録された、上述した画像作成処理およびそれに関連する処理の制御に関するプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行させてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、光ディスク、メモリカード等の可搬型記録媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持するものを含んでもよい。また上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせにより実現するものであってもよい。
【0073】
また、パーソナルコンピュータ(以下、PCと記載)等に適用する場合、上述した制御に関するプログラムは、CD-ROM等の記録媒体やインターネット等のデータ信号を通じて提供することができる。
図14はその様子を示す図である。PC950は、CD-ROM953を介してプログラムの提供を受ける。また、PC950は通信回線951との接続機能を有する。コンピュータ952は上記プログラムを提供するサーバーコンピュータであり、ハードディスク等の記録媒体にプログラムを格納する。通信回線951は、インターネット、パソコン通信などの通信回線、あるいは専用通信回線などである。コンピュータ952はハードディスクを使用してプログラムを読み出し、通信回線951を介してプログラムをPC950に送信する。すなわち、プログラムをデータ信号として搬送波により搬送して、通信回線951を介して送信する。このように、プログラムは、記録媒体や搬送波などの種々の形態のコンピュータ読み込み可能なコンピュータプログラム製品として供給できる。
【0074】
上述した情報処理機能を実現するためのプログラムとして、外界モデル5におけるオブジェクト53の配置、形状および光学特性に関する外界記述データと、眼鏡レンズの配置、形状および光学特性に関する眼鏡レンズ記述データと、外界モデル5を眼鏡レンズを通して仮想的に目視する装用者の両眼の配置、形状および光学特性に関する眼球記述データと、に基づいて、装用者が眼鏡レンズを通して仮想的に目視する外界モデル5が、装用者の両眼のそれぞれの網膜32に投影される網膜画像70を作成する網膜画像作成処理を、コンピュータに実行させる画像作成プログラムが含まれる。
【0075】
本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0076】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特許出願2016年第205990号(2016年10月20日出願)
【符号の説明】
【0077】
1…画像処理装置、5…外界モデル、10…制御部、11…外界モデル構築部、12…眼球モデル構築部、13…眼鏡レンズモデル構築部、14…網膜画像作成部、15…光線追跡部、17…対応点算出部、18…両眼視画像作成部、19…動画像作成部、21…表示部、30…眼球モデル、31…水晶体、32…網膜、33…水晶体辺縁部、34…水晶体コア、35…瞳孔、36…角膜、70…網膜画像、71…両眼視画像、330a…水晶体前面、330p…水晶体後面、340a…水晶体コア前面、340p…水晶体コア後面。