(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】HUD対応ウインドシールドを製造する方法及びその方法によって得られるウインドシールド
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20220524BHJP
B60J 1/02 20060101ALI20220524BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
G02B27/01
B60J1/02 M
C03C27/12 C
(21)【出願番号】P 2018563051
(86)(22)【出願日】2017-05-12
(86)【国際出願番号】 EP2017061494
(87)【国際公開番号】W WO2017207250
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-04-23
(32)【優先日】2016-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】アヨウブ, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】シュレーダー, ブリジット
(72)【発明者】
【氏名】ダド, カルメロ
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02883693(EP,A1)
【文献】特開2006-096331(JP,A)
【文献】特開2007-223883(JP,A)
【文献】特開2010-024138(JP,A)
【文献】米国特許第05812332(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0000095(KR,A)
【文献】特開平07-195959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
B32B 17/10
B60J 1/02
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HUD対応ウインドシールド(2)であって、前記ウインドシールド(2)の外面及び内面(9、8)において反射で発生する二重像を補償するための適切な楔角度(1)を有する楔形PVBシートの部分(21)の領域によって提供されるHUD視野(22)を含むHUD対応ウインドシールド(2)を製造する方法であって、
- 前記楔形PVBシート
の部分(21)を提供するステップと、
- 平面PVBシートの部分(23)を提供するステップと、
- 前記楔形及び平面PVBシートの前記2つのそれぞれの部分(21、23)を一緒に組み立てるステップと、
- 前記ウインドシールド(2)を形成するステップと
を含む方法において、
前記平面PVBシート
の部分(23)は、前記ウインドシールド(2)の上部(33)にあるために、前記楔形PVBシート
の部分(21)の上で前記楔形PVBシート
の部分(21)に組み立てられること
、及び前記2つの楔形及び平面PVBシートの部分(21、23)の組立体の厚さプロファイルにおいて、前記楔形PVBシートの部分(21)の厚さは、前記ウインドシールド(2)の下部から上部に向かって単調な傾きで増加し、かつ前記平面PVBシートの部分(23)に隣接する縁において、前記平面PVBシートの部分(23)の厚さと同じであることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記2つの楔形及び平面PVBシート
の部分(21、23)の組立体は、2つのガラスシート(8、9)間に張り合わされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2つの部分(21、23)の前記組立体は、超音波溶接によって形成される、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記2つの部分(21、23)の前記組立体は、熱風溶接によって形成される、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法によって得られることを特徴とするウインドシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HUD(ヘッドアップディスプレイ)対応ウインドシールドを製造する方法に関する。
【0002】
本発明は、前記方法によって得られるウインドシールドにも関する。
【背景技術】
【0003】
HUDとしても知られているヘッドアップディスプレイは、ユーザの通常の視点から目をそらすことをユーザ(一般的に運転者)に要求することなくデータを示す透明ディスプレイである。HUDは、最初に軍用航空のために開発されたが、現在、HUDは、民間航空機、陸上車両及び他の主に専門的な用途で使用されている。典型的なHUDは、3つの主な構成要素:投影機ユニット、コンバイナ及び映像生成コンピュータを含む。コンバイナは、一般的に、視認者の直接前に設置されたガラス、例えば車両のウインドシールドの傾斜平片であり、この傾斜平片は、視野及び投影像を同時に見るように投影機から投影像を向け直す。
【0004】
HUDを有する車両において、ウインドシールドの外面及び内面において反射で発生する二重像は、通常、これらの外面及び内面間に適切な楔角度を含むことによって補償される。このような楔角度のため、ウインドシールドの内面及び外面からの反射像は、視認者の眼で実質的に重なり合う。楔角度の適切な値は、ウインドシールドにおけるHUD視野の幾何学的特徴及び位置、投影機の位置、並びに運転者の視点に左右される。一般的に、異なる運転者の高さに対する最良の妥協点と考えられる一定の楔角度値が選択され、ウインドシールドに含められる。異なる運転者の高さにより良く適合するように可変の楔角度も場合により使用される。
【0005】
このような楔角度シートを有するウインドシールドは、通常、2つのガラスシート間に楔形PVB(ポリビニルブチラール)シートを挟むことによって作られる。このようなウインドシールドは、例えば、文献米国特許第5013134号明細書に開示されている。
【0006】
問題は、楔形PVBシートが、ウインドシールドの製造コストに重大な影響を与える高価な製品であることである。
【0007】
文献欧州特許第2883693号明細書は、HUD対応ウインドシールドであって、ウインドシールドの外面及び内面において反射で発生する二重像を補償するための適切な楔角度を有する楔形PVBシートの部分の領域によって提供されるHUD視野を含むHUD対応ウインドシールドを製造する方法であって、
- 前記楔形PVBシート部分を提供するステップと、
- 平面PVBシートの部分を提供するステップと、
- 楔形及び平面PVBシートの前記2つのそれぞれの部分を一緒に組み立てるステップと、ウインドシールドを形成するステップと
を含む方法を教示している。
【0008】
しかし、先行技術のこの方法では、楔形PVBシート部分は、楔形PVBシート部分及び平面PVBシート部分を互いの上部で組み立てることにより、又は平面PVBシート部分の一部を楔形PVBシート部分で置き換えることにより平面PVBシート部分で囲まれるか、又は2つの平面PVBシート部分間に含まれるかのいずれかである。
【0009】
平面PVBシートは、楔形PVBシートよりもはるかに安価であるが、このような製造工程は、依然としてコストが高過ぎる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の第1の目的は、依然としてより低いコストでHUD対応ウインドシールドを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、本発明は、まず、HUD対応ウインドシールドであって、ウインドシールドの外面及び内面において反射で発生する二重像を補償するための適切な楔角度を有する楔形PVBシートの部分の領域によって提供されるHUD視野を含むHUD対応ウインドシールドを製造する方法であって、
- 前記楔形PVBシート部分を提供するステップと、
- 平面PVBシートの部分を提供するステップと、
- 楔形及び平面PVBシートの前記2つのそれぞれの部分を一緒に組み立てるステップと、
- ウインドシールドを形成するステップと
を含む方法において、
- 平面PVBシートの部分は、ウインドシールドの上部にあるために、楔形PVBシートの部分の上で楔形PVBシートの部分に組み立てられることを特徴とする、方法に関する。
【0012】
本発明により、ウインドシールドの楔形シートは、製造工程中、以前のように平面PVBシート部分の一部を切断するか、又は2つのPVBシート部分を互いの上部に有するかのいずれかの必要なく、排他的に2つの部分を含む。従って、製造コストが有利に削減される。本発明の製造工程は、非常に単純である。
【0013】
本発明の方法の好ましい実装形態において、2つの楔形及び平面PVBシート部分の組立体は、2つのガラスシート間に張り合わされる。
【0014】
本発明の方法の有利な実装形態において、2つの平面及び楔形PVBシート部分の隣接する縁は、同じ厚さを有する。
【0015】
このような特徴は、平面及び楔形PVBシート部分間に最適な接合を有することを可能にする。
【0016】
本出願は、本発明の方法によって得られるウインドシールドにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、添付図面を参照して下記の説明を読むことでより良く理解されるであろう。
【0018】
【
図1】楔形ウインドシールドを有する先行技術からのHUDを示す。
【
図2】本発明のウインドシールドのPVBシート部分の組立体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照すると、車両のウインドシールド2は、楔角度1、即ちウインドシールドの厚さの非ゼロ導関数を有するHUDを有する。このようなHUDにおいて、像源5における同じ点から発する光線3及び4は、ウインドシールド2の内面8及び外面9で反射される前に、平面鏡6及び非球面鏡7によって反射される。適切な楔角度がなければ、このような反射により、視認者の眼10に対して2つの別々の像が生成される。楔角度1の存在により、HUDは、これらの2つの別々の像を重ね合わせて単一の虚像11を形成することを可能にする。
【0020】
図2は、ウインドシールド2のPVBシート部分の組立体を示す。楔形PVBシート部分21は、ウインドシールド領域の下部を覆い、平面PVBシート部分23は、ウインドシールド領域の上部を覆い、ゾーン22は、ウインドシールドのHUD視野に対応する。HUD投影機によって生成される反射における二重像の補償のために楔角度がこのゾーンで必要とされるため、このようなゾーン22は、楔形PVBシート21の領域に完全に含まれる。線24は、楔形PVBシート部分21と平面PVBシート部分23との間の接合に対応する。ここで、熱風溶接又は超音波溶接によってこのような接合を行うことができる。PVBシート部分の組立体は、ウインドシールドの寸法を有する。ここで、各PVBシート部分上で別々に、溶接ステップ前にPVBシートのサイズへの切断を行う。切断は、溶接後、PVBシート部分の組立体上で直接行うこともできる。切断及び溶接ステップ後、ここで、ウインドシールドを形成するために、PVBシート部分の組立体が2つのガラスシート間に張り合わされる。ガラス真空バッグ、真空リング又はニップロールを用いて、このような張り合わせステップを実行することができる。
【0021】
図3は、ウインドシールドの下部から上部への、
図2のPVBシート部分の組立体の厚さプロファイルを表す。第1の部分31は、楔形PVBシート部分21に対応する。第2の部分33は、平面PVBシート部分23に対応する。平面PVBシート部分23及び楔形PVBシート部分21の隣接する縁35、36は、同じ厚さ34を有する。これにより、平面及び楔形PVBシート部分23及び21間の最適な接合が可能になる。