(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】光中継器及び光ファイバ伝送システム
(51)【国際特許分類】
H04B 10/297 20130101AFI20220524BHJP
H04B 10/077 20130101ALI20220524BHJP
H04B 10/071 20130101ALI20220524BHJP
【FI】
H04B10/297
H04B10/077
H04B10/071
(21)【出願番号】P 2019084387
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【氏名又は名称】前田 浩次
(74)【代理人】
【識別番号】100166660
【氏名又は名称】吉田 晴人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英憲
(72)【発明者】
【氏名】釣谷 剛宏
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-077758(JP,A)
【文献】特開平09-179151(JP,A)
【文献】特開平03-125125(JP,A)
【文献】特開平02-260837(JP,A)
【文献】特開平7-79041(JP,A)
【文献】特開昭63-74221(JP,A)
【文献】特開2000-59306(JP,A)
【文献】特開2000-31907(JP,A)
【文献】特開平2-2228(JP,A)
【文献】特表2017-528995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/29 - 10/299
H04B 10/077
H04B 10/071
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列の複数のファイバ経路で構成された光ファイバ伝送路の途中に配置される、光ファイバ伝送システムの光中継器であって、
前記複数のファイバ経路のうちの特定のファイバ経路に配置され、前記特定のファイバ経路を伝搬して前記光中継器の第1入出力ポート及び第2入出力ポートの一方から入力されて他方から出力される光信号を一方向にのみ通過させる第1光学素子及び第2光学素子と、前記第1光学素子と前記第2光学素子との間に接続された、光信号を増幅する増幅媒体とを有する光増幅器であって、前記第1光学素子及び前記第2光学素子は、光信号を通過させる方向を、前記第1入出力ポートから前記第2入出力ポートへの第1方向と、前記第1方向とは逆方向の第2方向との間で切り替え可能である、前記光増幅器と、
前記第1入出力ポート及び前記第2入出力ポートからそれぞれ入力される光信号の検出結果に基づいて、前記第1方向又は前記第2方向に光信号を通過させるよう前記第1光学素子及び前記第2光学素子を制御することで、前記特定のファイバ経路の方路を可変にするコントローラと、
を備え、
前記複数のファイバ経路は、前記第1方向に方路が固定された第1ファイバ経路と、前記第2方向に方路が固定された第2ファイバ経路と、方路可変の前記特定のファイバ経路である第3ファイバ経路と、を少なくとも含み、
前記光ファイバ伝送システムは、前記光ファイバ伝送路に接続された第1監視装置及び第2監視装置を備え、
前記第1監視装置は、前記光中継器の前記第1入出力ポート側に配置され、前記第3ファイバ経路に対して前記第1方向の方路が設定されている場合に第2波長の監視信号を前記第3ファイバ経路に出力し、
前記第2監視装置は、前記光中継器の前記第2入出力ポート側に配置され、前記第3ファイバ経路に対して前記第2方向の方路が設定されている場合に第1波長の監視信号を前記第3ファイバ経路に出力し、
前記光中継器は、
前記第3ファイバ経路に対して前記第1方向の方路が設定されている場合に、前記第1監視装置から出力されて前記第3ファイバ経路を伝搬する前記第2波長の監視信号を、前記光増幅器を通過した後に前記第3ファイバ経路から前記第2ファイバ経路に導く第1ループバック経路であって、前記第1監視装置が、前記第2ファイバ経路を介して受信した前記第2波長の監視信号のパワーの測定結果に基づいて、前記光中継器の出力パワーを監視する、前記第1ループバック経路と、
前記第3ファイバ経路に対して前記第2方向の方路が設定されている場合に、前記第2監視装置から出力されて前記第3ファイバ経路を伝搬する前記第1波長の監視信号を、前記光増幅器を通過した後に前記第3ファイバ経路から前記第1ファイバ経路に導く第2ループバック経路であって、前記第2監視装置が、前記第1ファイバ経路を介して受信した前記第1波長の監視信号のパワーの測定結果に基づいて、前記光中継器の出力パワーを監視する、前記第2ループバック経路と、
を更に備えることを特徴とす
る光中継器。
【請求項2】
前記第1ループバック経路は、前記第3ファイバ経路を前記第1方向に伝搬する光信号の一部を前記第1ループバック経路に分岐する光タップと、当該分岐された光信号が入力され、前記第2波長の光信号を通過させる第1光フィルタと、前記第1光フィルタを通過した光信号を前記第2ファイバ経路に入力する光カプラと、を含み、
前記第2ループバック経路は、前記第3ファイバ経路を前記第2方向に伝搬する光信号の一部を前記第2ループバック経路に分岐する光タップと、当該分岐された光信号が入力され、前記第1波長の光信号を通過させる第2光フィルタと、前記第2光フィルタを通過した光信号を前記第1ファイバ経路に入力する光カプラと、を含む
ことを特徴とする請求項
1に記載の光中継器。
【請求項3】
前記複数のファイバ経路は、それぞれ方路可変の前記特定のファイバ経路である複数の第3ファイバ経路を含み、
前記第1ループバック経路は、前記複数の第3ファイバ経路のそれぞれから分岐された光信号を合波して前記第1光フィルタへ出力する合波器を更に含み、
前記第2ループバック経路は、前記複数の第3ファイバ経路のそれぞれから分岐された光信号を合波して前記第2光フィルタに入力する合波器を更に含む
ことを特徴とする請求項
2に記載の光中継器。
【請求項4】
並列の複数のファイバ経路で構成された光ファイバ伝送路の途中に配置される、光ファイバ伝送システムの光中継器であって、
前記複数のファイバ経路のうちの特定のファイバ経路に配置され、前記特定のファイバ経路を伝搬して前記光中継器の第1入出力ポート及び第2入出力ポートの一方から入力されて他方から出力される光信号を一方向にのみ通過させる第1光学素子及び第2光学素子と、前記第1光学素子と前記第2光学素子との間に接続された、光信号を増幅する増幅媒体とを有する光増幅器であって、前記第1光学素子及び前記第2光学素子は、光信号を通過させる方向を、前記第1入出力ポートから前記第2入出力ポートへの第1方向と、前記第1方向とは逆方向の第2方向との間で切り替え可能である、前記光増幅器と、
前記第1入出力ポート及び前記第2入出力ポートからそれぞれ入力される光信号の検出結果に基づいて、前記第1方向又は前記第2方向に光信号を通過させるよう前記第1光学素子及び前記第2光学素子を制御することで、前記特定のファイバ経路の方路を可変にするコントローラと、
を備え、
前記複数のファイバ経路は、前記第1方向に方路に固定された第1ファイバ経路と、前記第2方向に方路が固定された第2ファイバ経路と、方路可変の前記特定のファイバ経路である第3ファイバ経路と、を少なくとも含み、
前記光ファイバ伝送システムは、前記光ファイバ伝送路に接続された第1監視装置及び第2監視装置を備え、
前記第1監視装置は、前記第3ファイバ経路に対して前記第1方向の方路が設定されている場合に第4波長の監視信号を前記第3ファイバ経路に出力し、
前記第2監視装置は、前記第3ファイバ経路に対して前記第2方向の方路が設定されている場合に第3波長の監視信号を前記第3ファイバ経路に出力し、
前記光中継器は、
前記第1監視装置から出力され、前記第3ファイバ経路において前記光中継器を前記第1方向に通過した前記第4波長の監視信号から生じ、前記第2方向に戻ってきて前記光中継器に入力されたレイリー散乱光を、前記第3ファイバ経路から前記第2ファイバ経路に導く第1戻り経路であって、前記第1監視装置が、前記第2ファイバ経路における前記レイリー散乱光の受信結果に基づいて、前記第3ファイバ経路上の破断点を検出する、前記第1戻り経路と、
前記第2監視装置から出力され、前記第3ファイバ経路において前記光中継器を前記第2方向に通過した前記第3波長の監視信号から生じ、前記第1方向に戻ってきて前記光中継器に入力された前記レイリー散乱光を、前記第3ファイバ経路から前記第1ファイバ経路に導く第2戻り経路であって、前記第2監視装置が、前記第1ファイバ経路における前記レイリー散乱光の受信結果に基づいて、前記第3ファイバ経路上の破断点を検出する、前記第2戻り経路と、
を更に備えることを特徴とす
る光中継器。
【請求項5】
前記第1戻り経路は、前記第3ファイバ経路を前記第2方向に伝搬する光信号の一部を前記第1戻り経路に分岐する光タップと、当該分岐された光信号が入力され、前記第4波長の光信号を通過させる第3光フィルタと、前記第3光フィルタを通過した光信号を前記第2ファイバ経路に入力する光カプラと、を含み、
前記第2戻り経路は、前記第3ファイバ経路を前記第1方向に伝搬する光信号の一部を前記第2戻り経路に分岐する光タップと、当該分岐された光信号が入力され、前記第3波長の光信号を通過させる第4光フィルタと、前記第4光フィルタを通過した光信号を前記第1ファイバ経路に入力する光カプラと、を含む
ことを特徴とする請求項
4に記載の光中継器。
【請求項6】
前記第1戻り経路は、前記第3ファイバ経路を前記第2方向に伝搬する光信号の一部を前記第1戻り経路に分岐する光タップと、当該分岐された光信号が入力され、当該入力された光信号を透過させるか否かを切り替え可能な第1光スイッチと、前記第1光スイッチを透過した光信号を前記第2ファイバ経路に入力する光カプラと、を含み、
前記第2戻り経路は、前記第3ファイバ経路を前記第1方向に伝搬する光信号の一部を前記第2戻り経路に分岐する光タップと、当該分岐された光信号が入力され、当該入力された光信号を透過させるか否かを切り替え可能な第2光スイッチと、前記第2光スイッチを透過した光信号を前記第1ファイバ経路に入力する光カプラと、を含む
ことを特徴とする請求項
4に記載の光中継器。
【請求項7】
並列の複数のファイバ経路で構成された光ファイバ伝送路の途中に配置される、光ファイバ伝送システムの光中継器であって、
前記複数のファイバ経路のうちの特定のファイバ経路に配置され、前記特定のファイバ経路を伝搬して前記光中継器の第1入出力ポート及び第2入出力ポートの一方から入力されて他方から出力される光信号を一方向にのみ通過させる第1光学素子及び第2光学素子と、前記第1光学素子と前記第2光学素子との間に接続された、光信号を増幅する増幅媒体とを有する光増幅器であって、前記第1光学素子及び前記第2光学素子は、光信号を通過させる方向を、前記第1入出力ポートから前記第2入出力ポートへの第1方向と、前記第1方向とは逆方向の第2方向との間で切り替え可能である、前記光増幅器と、
前記第1入出力ポート及び前記第2入出力ポートからそれぞれ入力される光信号の検出結果に基づいて、前記第1方向又は前記第2方向に光信号を通過させるよう前記第1光学素子及び前記第2光学素子を制御することで、前記特定のファイバ経路の方路を可変にするコントローラと、
を備え、
前記複数のファイバ経路は、前記第1方向に方路に固定された第1ファイバ経路と、前記第2方向に方路が固定された第2ファイバ経路と、方路可変の前記特定のファイバ経路である第3ファイバ経路と、を少なくとも含み、
前記光ファイバ伝送システムは、前記光ファイバ伝送路に接続された第1監視装置及び第2監視装置を備え、
前記第1監視装置は、前記光中継器の前記第1入出力ポート側に配置され、前記第3ファイバ経路に対して前記第1方向の方路が設定されている場合に第1波長の監視信号を前記第3ファイバ経路に出力し、
前記第2監視装置は、前記光中継器の前記第2入出力ポート側に配置され、前記第3ファイバ経路に対して前記第2方向の方路が設定されている場合に第2波長の監視信号を前記第3ファイバ経路に出力し、
前記光中継器は、
前記第1光学素子として方向性可変の第1サーキュレータを備え、
前記第2光学素子として方向性可変の第2サーキュレータを備え、
前記第2サーキュレータと前記第2入出力ポートとの間に設けられ、前記第1方向に伝搬する光信号の一部を分岐する第1光タップと、
前記第1光タップから分岐された光信号が入力され、前記第1波長の光信号を通過させる第1フィルタと、
前記第1サーキュレータと前記第1入出力ポートとの間に設けられ、前記第2方向に伝搬する光信号の一部を分岐する第2光タップと、
前記第2光タップから分岐された光信号が入力され、前記第2波長の光信号を通過させる第2フィルタと、を更に備え、
前記第3ファイバ経路に対して前記第1方向の方路が設定されている場合に、
前記光中継器において、前記第1方向に伝搬する前記第1波長の監視信号が、前記第1サーキュレータ、前記増幅媒体、及び前記第2サーキュレータを順に通過した後に、前記第1光タップ及び前記第1フィルタを介して前記第2サーキュレータに入力され、前記第2サーキュレータから前記第2方向に前記第1監視装置に向けて伝搬するように前記第3ファイバ経路へ出力される経路が設定され、
前記第1監視装置が、前記第3ファイバ経路を介して受信した前記第1波長の監視信号のパワーの測定結果に基づいて、前記光中継器の出力パワーを監視し、
前記第3ファイバ経路に対して前記第2方向の方路が設定されている場合に、
前記光中継器において、前記第2方向に伝搬する前記第2波長の監視信号が、前記第2サーキュレータ、前記増幅媒体、及び前記第1サーキュレータを順に通過した後に、前記第2光タップ及び前記第2フィルタを介して前記第2サーキュレータに入力され、前記第2サーキュレータから前記第2方向に伝搬するように前記第3ファイバ経路へ出力される経路が設定され、
前記第2監視装置が、前記第3ファイバ経路を介して受信した前記第2波長の監視信号のパワーの測定結果に基づいて、前記光中継器の出力パワーを監視する
ことを特徴とす
る光中継器。
【請求項8】
前記第1サーキュレータは、前記第1波長及び前記第2波長の光信号を通過させる第3フィルタと接続されており、
前記第2サーキュレータは、前記第1波長及び前記第2波長の光信号を通過させる第4フィルタと接続されており、
前記第1サーキュレータは、前記第3ファイバ経路に対して前記第1方向の方路が設定されている場合に、前記第2サーキュレータから前記第2方向へ出力された前記第1波長の監視信号を前記第3フィルタに導き、前記第3フィルタを通過した前記第1波長の監視信号を前記第2方向に向けて前記第3ファイバ経路へ出力するように設定され、
前記第2サーキュレータは、前記第3ファイバ経路に対して前記第2方向の方路が設定されている場合に、前記第1サーキュレータから前記第1方向に出力された前記第2波長の監視信号を前記第4フィルタに導き、前記第4フィルタを通過した前記第2波長の監視信号を前記第1方向に向けて前記第3ファイバ経路へ出力するように設定される
ことを特徴とする請求項
7に記載の光中継器。
【請求項9】
前記第3ファイバ経路に対して前記第1方向の方路が設定されている場合に、
前記第2サーキュレータは、前記第2入出力ポートから入力された、前記第2方向に伝搬する前記第1波長の監視信号を前記第4フィルタに導き、前記第4フィルタを通過した前記第1波長の監視信号を前記第2方向に向けて前記第3ファイバ経路へ出力するように設定され、
前記第1サーキュレータは、前記第2サーキュレータから出力された、前記第2方向に伝搬する前記第1波長の監視信号を前記第3フィルタに導き、前記第3フィルタを通過した前記第1波長の監視信号を前記第2方向に向けて前記第3ファイバ経路へ出力するように設定される
ことを特徴とする請求項
8に記載の光中継器。
【請求項10】
前記第3ファイバ経路に対して前記第2方向の方路が設定されている場合に、
前記第1サーキュレータは、前記第1入出力ポートから入力された、前記第1方向に伝搬する前記第2波長の監視信号を前記第3フィルタに導き、前記第3フィルタを通過した前記第2波長の監視信号を前記第1方向に向けて前記第3ファイバ経路へ出力するように設定され、
前記第2サーキュレータは、前記第1サーキュレータから出力された、前記第1方向に伝搬する前記第2波長の監視信号を前記第4フィルタに導き、前記第4フィルタを通過した前記第2波長の監視信号を前記第1方向に向けて前記第3ファイバ経路へ出力するように設定される
ことを特徴とする請求項
8又は
9に記載の光中継器。
【請求項11】
前記第1監視装置は、更に、前記第3ファイバ経路に対して前記第1方向の方路が設定されている場合に第3波長の監視信号を前記第3ファイバ経路に出力し、
前記第2監視装置は、更に、前記第3ファイバ経路に対して前記第2方向の方路が設定されている場合に第3波長の監視信号を前記第3ファイバ経路に出力し、
前記第3フィルタ及び前記第4フィルタは、前記第1波長、前記第2波長及び前記第3波長の光信号を通過させ、
前記第3ファイバ経路に対して前記第1方向の方路が設定されている場合に、
前記光中継器において、前記第1監視装置から出力され、前記第3ファイバ経路において前記光中継器を前記第1方向に通過した前記第3波長の監視信号から生じ、前記第2方向に戻ってきて前記光中継器に入力されたレイリー散乱光を、前記第3フィルタ及び前記第4フィルタを介して前記第1監視装置に向けて前記第2方向へ導く経路が設定され、
前記第1監視装置が、前記第3ファイバ経路における前記レイリー散乱光の受信結果に基づいて、前記第3ファイバ経路上の破断点を検出し、
前記第3ファイバ経路に対して前記第2方向の方路が設定されている場合に、
前記光中継器において、前記第2監視装置から出力され、前記第3ファイバ経路において前記光中継器を前記第2方向に通過した前記第3波長の監視信号から生じ、前記第1方向に戻ってきて前記光中継器に入力されたレイリー散乱光を、前記第4フィルタ及び前記第3フィルタを介して前記第2監視装置に向けて前記第1方向へ導く経路が設定され、
前記第2監視装置が、前記第3ファイバ経路における前記レイリー散乱光の受信結果に基づいて、前記第3ファイバ経路上の破断点を検出する
ことを特徴とする請求項
8から
10のいずれか1項に記載の光中継器。
【請求項12】
前記光中継器は、
前記第3ファイバ経路において前記第1サーキュレータと前記第2サーキュレータとの間に設けられた第1増幅媒体と、
前記第1監視装置又は前記第2監視装置に向かう監視信号又はレイリー散乱光を増幅するための第2増幅媒体と、を備え、
前記第3ファイバ経路に対して前記第1方向の方路が設定されている場合に、前記光中継器において、前記第1フィルタから出力された前記第1波長の監視信号が前記第2増幅媒体を通過して前記第2サーキュレータに入力される経路が設定され、
前記第3ファイバ経路に対して前記第2方向の方路が設定されている場合に、前記光中継器において、前記第2フィルタから出力された前記第2波長の監視信号が前記第2増幅媒体を通過して前記第1サーキュレータに入力される経路が設定される
ことを特徴とする請求項
7に記載の光中継器。
【請求項13】
前記光中継器は、
前記第3ファイバ経路において前記第1サーキュレータと前記第2サーキュレータとの間に設けられた第1増幅媒体と、
前記第1監視装置又は前記第2監視装置に向かう監視信号又はレイリー散乱光を増幅するための第2増幅媒体と、を備え、
前記第3ファイバ経路に対して前記第1方向の方路が設定されている場合に、前記光中継器において、前記第3フィルタから出力された前記第3波長のレイリー散乱光が、前記第2増幅媒体を通過して前記第4フィルタに入力される経路が設定され、
前記第3ファイバ経路に対して前記第2方向の方路が設定されている場合に、前記光中継器において、前記第4フィルタから出力された前記第3波長のレイリー散乱光が、前記第2増幅媒体を通過して前記第3フィルタに入力される経路が設定される
ことを特徴とする請求項
11に記載の光中継器。
【請求項14】
並列の複数のファイバ経路で構成された光ファイバ伝送路の途中に配置される、光ファイバ伝送システムの光中継器であって、
前記複数のファイバ経路のうちの特定のファイバ経路に配置され、前記特定のファイバ経路を伝搬して前記光中継器の第1入出力ポート及び第2入出力ポートの一方から入力されて他方から出力される光信号を一方向にのみ通過させる第1光学素子及び第2光学素子と、前記第1光学素子と前記第2光学素子との間に接続された、光信号を増幅する増幅媒体とを有する光増幅器であって、前記第1光学素子及び前記第2光学素子は、光信号を通過させる方向を、前記第1入出力ポートから前記第2入出力ポートへの第1方向と、前記第1方向とは逆方向の第2方向との間で切り替え可能である、前記光増幅器と、
前記第1入出力ポート及び前記第2入出力ポートからそれぞれ入力される光信号の検出結果に基づいて、前記第1方向又は前記第2方向に光信号を通過させるよう前記第1光学素子及び前記第2光学素子を制御することで、前記特定のファイバ経路の方路を可変にするコントローラと、
を備え、
前記第1入出力ポートと前記光増幅器との間に配置された、方向性可変の第3サーキュレータと、
前記第2入出力ポートと前記光増幅器との間に配置された、方向性可変の第4サーキュレータと、
前記第3サーキュレータに接続された第1利得等化フィルタと、
前記第4サーキュレータに接続された第2利得等化フィルタと、を更に備え、
前記コントローラは、
前記特定のファイバ経路に対して前記第1方向の方路が設定されている場合に、前記第1方向に伝搬する光信号が、前記第1利得等化フィルタを通過せず、かつ、前記光増幅器を通過した後に前記第2利得等化フィルタを通過するように、前記第3サーキュレータ及び前記第4サーキュレータを設定し、
前記特定のファイバ経路に対して前記第2方向の方路が設定されている場合に、前記第2方向に伝搬する光信号が、前記第2利得等化フィルタを通過せず、かつ、前記光増幅器を通過した後に前記第1利得等化フィルタを通過するように、前記第3サーキュレータ及び前記第4サーキュレータを設定する
ことを特徴とす
る光中継器。
【請求項15】
前記複数のファイバ経路はマルチコアファイバで構成される
ことを特徴とする請求項1から
14のいずれか1項に記載の光中継器。
【請求項16】
第1端局装置と、
並列の複数のファイバ経路で構成された光ファイバ伝送路を介して前記第1端局装置と接続された第2端局装置と、
前記光ファイバ伝送路の途中に配置され、各ファイバ経路を伝送される光信号を増幅する光増幅器を備える、請求項
14に記載の光中継器と、
を備えることを特徴とする光ファイバ伝送システム。
【請求項17】
前記第1監視装置を含む第1端局装置と、
並列の複数のファイバ経路で構成された光ファイバ伝送路を介して前記第1端局装置と接続された、前記第2監視装置を含む第2端局装置と、
前記光ファイバ伝送路の途中に配置される、各ファイバ経路を伝送される光信号を増幅する光増幅器を備える、請求項
1から
13のいずれか1項に記載の光中継器と、
を備えることを特徴とする光ファイバ伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光海底ケーブルシステム等の光ファイバ伝送システムにおける光中継器、及び光ファイバ伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光海底ケーブルシステム等の光ファイバ伝送システムでは、一般に、双方向の通信用に、2本の光ファイバを対(ペア)とするファイバペア(FP)単位で光ファイバ伝送路が構成される(例えば、特許文献1)。このため、一方向の通信容量と逆方向の通信容量とが同一となる。また、1ケーブル内に複数のFPを設ける構成が一般的である。
【0003】
しかし、光ファイバ伝送システムでは、それぞれの通信方向で通信トラフィック量が著しく異なることがある。この場合、一方向の通信については通信トラフィック量が光ファイバの通信容量に達したとしても、通信トラフィックが少ない逆方向の通信については、通信トラフィック量が光ファイバの通信容量に達していないことになる。それにもかかわらず、通信トラフィック需要の増加に応じて、FP単位で光ファイバ伝送路を新たに敷設すると、通信トラフィック量が少ない通信方向に対応する光ファイバが有効利用されず、敷設コストに無駄が生じる。このため、対向する方路間で通信容量を非対称にすることで、搬送される通信トラフィック量に柔軟に対応した光ファイバ伝送システムを実現することが必要とされる。
【0004】
そこで、光ファイバ伝送システムにおいて対向する方向間で通信容量を非対称にするための技術として、光ファイバ伝送路の通信方向(方路)を反転させる技術がある。例えば、特許文献2には、光ファイバ伝送路の途中に設けられた光中継装置において、複数の光ファイバのうちの一部の光ファイバについて光再生中継の方向を切り替え可能にする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2007-531476号公報
【文献】特開昭63-074221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近年の光ファイバ伝送システムでは、光信号の中継方式として光再生中継ではなく光増幅中継が主流となっている。光増幅中継に用いられる光増幅中継器では、入出力の方向が一般的には一方向に定められる。このため、情報トラヒックの需要に応じて光増幅中継器における方路の反転を実現するためには、上述の従来技術のような光再生中継器とは異なる仕組みが必要になる。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。本発明は、光ファイバ伝送システムにおいて光ファイバ伝送路の通信容量を方路間で非対称にするために、光ファイバ伝送路の敷設後であっても光増幅中継器でファイバ経路の方路を切り替え可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の係る光中継器は、並列の複数のファイバ経路で構成された光ファイバ伝送路の途中に配置される、光ファイバ伝送システムの光中継器であって、前記複数のファイバ経路のうちの特定のファイバ経路に配置され、前記特定のファイバ経路を伝搬して前記光中継器の第1入出力ポート及び第2入出力ポートの一方から入力されて他方から出力される光信号を一方向にのみ通過させる第1光学素子及び第2光学素子と、前記第1光学素子と前記第2光学素子との間に接続された、光信号を増幅する増幅媒体とを有する光増幅器であって、前記第1光学素子及び前記第2光学素子は、光信号を通過させる方向を、前記第1入出力ポートから前記第2入出力ポートへの第1方向と、前記第1方向とは逆方向の第2方向との間で切り替え可能である、前記光増幅器と、前記第1入出力ポート及び前記第2入出力ポートからそれぞれ入力される光信号の検出結果に基づいて、前記第1方向又は前記第2方向に光信号を通過させるよう前記第1光学素子及び前記第2光学素子を制御することで、前記特定のファイバ経路の方路を可変にするコントローラと、を備え、前記複数のファイバ経路は、前記第1方向に方路が固定された第1ファイバ経路と、前記第2方向に方路が固定された第2ファイバ経路と、方路可変の前記特定のファイバ経路である第3ファイバ経路と、を少なくとも含み、前記光ファイバ伝送システムは、前記光ファイバ伝送路に接続された第1監視装置及び第2監視装置を備え、前記第1監視装置は、前記光中継器の前記第1入出力ポート側に配置され、前記第3ファイバ経路に対して前記第1方向の方路が設定されている場合に第2波長の監視信号を前記第3ファイバ経路に出力し、前記第2監視装置は、前記光中継器の前記第2入出力ポート側に配置され、前記第3ファイバ経路に対して前記第2方向の方路が設定されている場合に第1波長の監視信号を前記第3ファイバ経路に出力し、前記光中継器は、前記第3ファイバ経路に対して前記第1方向の方路が設定されている場合に、前記第1監視装置から出力されて前記第3ファイバ経路を伝搬する前記第2波長の監視信号を、前記光増幅器を通過した後に前記第3ファイバ経路から前記第2ファイバ経路に導く第1ループバック経路であって、前記第1監視装置が、前記第2ファイバ経路を介して受信した前記第2波長の監視信号のパワーの測定結果に基づいて、前記光中継器の出力パワーを監視する、前記第1ループバック経路と、前記第3ファイバ経路に対して前記第2方向の方路が設定されている場合に、前記第2監視装置から出力されて前記第3ファイバ経路を伝搬する前記第1波長の監視信号を、前記光増幅器を通過した後に前記第3ファイバ経路から前記第1ファイバ経路に導く第2ループバック経路であって、前記第2監視装置が、前記第1ファイバ経路を介して受信した前記第1波長の監視信号のパワーの測定結果に基づいて、前記光中継器の出力パワーを監視する、前記第2ループバック経路と、を更に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光ファイバ伝送システムにおいて、光ファイバ伝送路の敷設後であっても光増幅中継器でファイバ経路の方路を切り替えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】監視装置による光中継器出力の監視用の光中継器の構成例を示す図。
【
図4】監視装置による光中継器出力の監視用の光中継器の構成例を示す図。
【
図5】監視装置によるファイバ経路の状態の監視用の光中継器の構成例を示す図。
【
図6】監視装置によるファイバ経路の状態の監視用の光中継器の構成例を示す図。
【
図7】監視信号及びレイリー散乱光の伝搬経路の例を示す図。
【
図8】監視信号及びレイリー散乱光の伝搬経路の例を示す図。
【
図9】監視信号及びレイリー散乱光の伝搬経路の例を示す図。
【
図10】監視信号及びレイリー散乱光の伝搬経路の例を示す図。
【
図11】監視信号及びレイリー散乱光の伝搬経路の例を示す図。
【
図12】監視信号及びレイリー散乱光の伝搬経路の例を示す図。
【
図13】監視装置による監視用の光中継器の構成例を示す図。
【
図14】監視装置による監視用の光中継器の構成例を示す図。
【
図17】監視信号及びレイリー散乱光の伝搬経路の例を示す図。
【
図21】監視信号及びレイリー散乱光の伝搬経路の例を示す図。
【
図22】監視装置による監視用の光中継器の構成例を示す図。
【
図23】監視装置による監視用の光中継器の構成例を示す図。
【
図24】GFFを備える光中継器の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一又は同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
[実施例1]
まず、
図1乃至
図5を参照して、本発明の実施例1について説明する。
【0013】
<光ファイバ伝送システム>
図1は、本発明の実施例1に係る光ファイバ伝送システムの構成例を示す図である。
図1に示す光ファイバ伝送システムは、端局装置100と端局装置300とを含み、端局装置100と端局装置300は光ファイバ伝送路を介して接続されている。また、光ファイバ伝送路の途中に光増幅中継器(以下、「光中継器」と称する。)200(200-1,2,3)が配置されている。本実施例では、光ファイバ伝送システムとして光海底ケーブルシステムを想定しており、端局装置100は、西側の陸上設備に相当し、端局装置300は、東側の陸上設備に相当する。また、光ファイバ伝送路の一部は、西側の陸上設備と東側の陸上との間の海底に敷設される。
【0014】
図1に示すように、端局装置100,300間の光ファイバ伝送路は、第1ファイバ経路(FB1)、第2ファイバ経路(FB2)、第3ファイバ経路(FB3)、及び第4ファイバ経路(FB4)で構成され、即ち、並列の複数のファイバ経路で構成される。本実施例では、FB1~4のうち、FB1及びFB2については、光ファイバ伝送路の方路が固定されている。一方、FB3及びFB4については、光中継器200により光ファイバ伝送路の方路を切り替え(反転)可能であり、即ち、方路の設定が可変である。光ファイバ伝送路の方路の反転は、光中継器200内に設けられた、方路を反転可能な光増幅器(可反転光増幅器)によって実現される。光ファイバ伝送路を構成する複数のファイバ経路のうちの1つ以上のファイバ経路の方路を可変にすることで、光ファイバ伝送路の通信容量を方路間で非対称にすることができる。
【0015】
図1の例では、FB1に対しては、端局装置100から端局装置300の方向(西から東の方向、以下では「WE方向」と称する。)の方路が予め設定されており、FB2に対しては、端局装置300から端局装置100の方向(東から西の方向、以下では「EW方向」と称する。)の方路が予め設定されている。また、一例として、WE方向に伝送される情報トラフィック量よりもEW方向に伝送される情報トラフィック量の方が多いことを想定し、FB3及びFB4に対しては、EW方向の方路が設定されている。
【0016】
光ファイバ伝送路は、ファイバ経路ごとに、光ファイバと光中継器200とを縦続して接続することで構成される。端局装置100,300間の海底設備として、ケーブル内に含まれる光ファイバを介して、複数の光中継器200が縦続して接続された状態で配置される。
図1の例では、光ファイバ伝送路において、3つの光中継器200-1,2,3が縦続して接続されている。それぞれのファイバ経路において同じスパンに設けられた光中継器200は、同じ中継器筐体に含まれる。同様に、同じスパンに設けられた光ファイバは、同じケーブルに含まれる。
【0017】
端局装置100,300には、それぞれ複数の上位通信機器(CE)が接続される。端局装置100に接続された各上位CEと、端局装置300に接続された、対応する上位CEとの間で、情報トラフィックの送受信が行われる。端局装置100は、各上位CEから受信した、情報トラフィックを含むクライアント信号をライン側の光信号に変換する。その際、端局装置100は、複数の上位CEから受信したクライアント信号を、WE方向の伝送用に使用可能なFBの数に応じて集約してライン側光信号を生成する。端局装置100は、生成したライン側光信号を、FB1~FB4のうちでWE方向の方路が設定されたFB(
図1の例ではFB1)を介して端局装置300へ送信する。
【0018】
端局装置100から出力されたライン側光信号は、光ファイバ(ファイバ経路)を、対向する端局装置300へ向けて伝搬する。ファイバ経路を伝搬するライン側光信号は、光中継器200に達するごとに増幅されることにより、光ファイバによる減衰の補償が繰り返され、対向側の陸上設備である端局装置300に到着する。
【0019】
端局装置300は、WE方向の方路が設定されたFB1を介して受信したライン側光信号からクライアント信号を取り出す。端局装置300は、取り出したクライアント信号を、対応する上位CEへ送信する。このようにして、西側の端局装置100に接続された各上位CEから、東側の端局装置300に接続された、対応する上位CEに対して情報トラフィックが伝送される。なお、東側の端局装置300に接続された各上位CEから、西側の端局装置100に接続された、対応する上位CEへの情報トラフィックの伝送も同様に行われる。
図1の例では、端局装置300から端局装置100へのライン側光信号の伝送にはFB2~FB4が使用される。
【0020】
<光中継器>
上述のように、
図1の光ファイバ伝送システムでは、FB3及びFB4は、方路の設定が可変のファイバ経路として構成される。本実施例では、光ファイバ伝送路の敷設後であっても、ファイバ経路の方路を容易に切り替えられるように、各光中継器200を、端局装置100,300からの制御信号に従って方路の切り替えが可能な光増幅中継器で構成する。以下では、本実施例の光中継器200の具体的な構成及び動作の例について説明する。
【0021】
図2(A)は、本実施例の光中継器200の構成例を示す図であり、方路可変のファイバ経路であるFB3及びFB4に対する構成例を示している。
図2(A)に示す光中継器200は、入力された光信号を増幅する光増幅器10、光タップ21、光タップ22、及び光SWコントローラ23を備えている。光タップ21は、ファイバ経路上で光増幅器10の端局装置100側(西側)に接続される。光タップ22は、ファイバ経路上で光増幅器10の端局装置300側(東側)に接続される。また、光タップ21,22は、光SWコントローラ23に接続される。光中継器200は、西側の入出力ポート1と、東側の入出力ポート2とを有する。
【0022】
光増幅器10は、複数のファイバ経路のうちの特定のファイバ経路(FB3,FB4)に配置された可反転光増幅器である。光増幅器10は、希土類添加ファイバを備える光増幅器であり、本例ではエルビウム添加ファイバ(EDF)11を備えるエルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)である。光増幅器10は、EDF11と、可変アイソレータ12,13と、励起光源14と、アイソレータ15と、WDMカプラ16とを備える。EDF11は、ファイバ経路上で可変アイソレータ12と可変アイソレータ13との間に配置され、可変アイソレータ12とEDF11との間に、WDMカプラ16が配置される、光信号を増幅する増幅媒体である。励起光源14は、アイソレータ15を介してWDMカプラ16に励起光を入力することで、WDMカプラ16を介してEDF11に、WE方向に伝搬する励起光を供給する。即ち、
図2(A)の光増幅器10では、WE方向に光信号がEDF11を通過する場合には前方励起が行われ、逆方向のEW方向に光信号がEDF11を通過する場合には後方励起が行われる。
【0023】
一般的には、EDFAは、EDFの前段及び後段の少なくともいずれかにアイソレータを備えており、方路は固定される。これに対して、本実施例では、方向性が可変のアイソレータ(可変アイソレータ12,13)を光増幅器10に使用することで、FB3及びFB4の方路を切り替え(反転)可能にする。なお、
図1に示す、方路固定のFB1及びFB2には、入力側から出力側へ通過する光信号を増幅する、方向性を有する一般的な光増幅器が使用される。
【0024】
可変アイソレータ12,13は、光が通過する方向を外部からの制御信号により切り替え(反転)可能な、方向性可変のアイソレータである。本実施例では、可変アイソレータ12,13は、特定のファイバ経路(FB3,FB4)を伝搬して光中継器200の入出力ポート1及び入出力ポート2の一方から入力されて他方から出力される光信号を一方向にのみ通過させる。また、可変アイソレータ12,13は、光信号を通過させる方向を、入出力ポート1から入出力ポート2へのWE方向(第1方向)と、WE方向とは逆方向のEW方向(第2方向)との間で切り替え可能である。
【0025】
本実施例では、光SWコントローラ23からの制御信号によって可変アイソレータ12,13の方向性が切り替えられる。光SWコントローラ23は、後述するように、入出力ポート1及び入出力ポート2からそれぞれ入力される光信号の検出結果に基づいて、第1方向又は第2方向に光信号を通過させるよう可変アイソレータ12,13を制御することで、特定のファイバ経路の方路を可変にする。
【0026】
可変アイソレータ12,13は、例えば、印加する電界の方向を切り替えることで方向性を切り替えとなるように構成される。アイソレータは磁気光学効果により実現されているため、可変アイソレータ12,13は、磁石の位置を180°反転させること、又は電磁石の電流方向を反転させてその磁界の方向を反転させることによって、方向性を切り替え可能であってもよい。
【0027】
光中継器200において、光タップ21は、光中継器200の西側から入力される、WE方向に伝搬する光の一部を、光SWコントローラ23へ分岐する。光タップ22は、光中継器200の東側から入力される、EW方向に伝搬する光の一部を、光SWコントローラ23へ分岐する。
【0028】
光SWコントローラ23は、光タップ21及び22を介して受信したそれぞれの光信号のパワーを測定する。即ち、光SWコントローラ23は、光タップ21及び22から分岐される光信号をモニタする。光SWコントローラ23は、測定したパワーに応じて、可変アイソレータ12,13の方向性を設定する機能を有する。光SWコントローラ23は、可変アイソレータ12,13へ出力する制御信号によって可変アイソレータ12,13の方向性の切り替えを制御する。
【0029】
例えば、光SWコントローラ23は、端局装置100側(西側)からの光を検出し、端局装置300側(東側)からの光を検出していない場合には、WE方向に光が通過するように可変アイソレータ12,13の方向性を設定する。一方、光SWコントローラ23は、端局装置300側(東側)からの光を検出した場合には、EW方向に光が通過するように可変アイソレータ12,13の方向性を設定する。
【0030】
このように、光SWコントローラ23は、光中継器200の入出力ポート1から入力される光信号を検出し、かつ、入出力ポート2から入力される光信号を検出していない場合には、WE方向(第1方向)に光信号を通過させるよう、可変アイソレータ12,13を制御する。一方、光SWコントローラ23は、光中継器200の入出力ポート2から入力される光信号を検出した場合には、EW方向(第2方向)に光信号を通過させるよう、可変アイソレータ12,13を制御する。
【0031】
なお、本実施例では、光増幅器10が可変アイソレータ12,13を備える例について説明したが、光増幅器10は、可変アイソレータ12,13に代えて、可変サーキュレータを備えていてもよい。即ち、光増幅器10は、可変アイソレータ及び可変サーキュレータのように、光を一方向にのみ透過(通過)させ、光の入出力方向(光が通過する方向)を制御信号により外部から切り替えることが可能な光学素子を用いて実現される。
【0032】
以上説明したように、本実施例の光中継器200は、複数のファイバ経路のうちの特定のファイバ経路(FB3,FB4)に配置された光増幅器10を備える。光増幅器10は、可変アイソレータ12(第1光学素子)及び可変アイソレータ13(第2光学素子)と、第1光学素子と第2光学素子との間に接続された、光信号を増幅するEDF11(増幅媒体)とを有する。可変アイソレータ12,13は、特定のファイバ経路を伝搬して光中継器200の入出力ポート1及び入出力ポート2の一方から入力されて他方から出力される光信号を一方向にのみ通過させる。また、可変アイソレータ12,13は、光信号を通過させる方向を、入出力ポート1から入出力ポート2への第1方向(WE方向)と、第1方向(WE方向)とは逆方向の第2方向(EW方向)との間で切り替え可能である。光SWコントローラ23は、入出力ポート1及び入出力ポート2からそれぞれ入力される光信号の検出結果に基づいて、第1方向又は第2方向に光信号を通過させるよう可変アイソレータ12,13を制御することで、特定のファイバ経路の方路を可変にする。
【0033】
このように、本実施例では、光SWコントローラ23は、端局装置100,300からそれぞれ出力される光をモニタし、その光の検出結果に基づいて、可変アイソレータ12,13の方向性を切り替える。これにより、ファイバ経路(FB3及びFB4)の方路を反転させることができる。したがって、本実施例によれ、光ファイバ伝送路の敷設後であっても、ファイバ経路の方路を容易に切り替えられる光ファイバ伝送システムを実現することが可能になる。
【0034】
[実施例2]
実施例1の光増幅器10では、WE方向に光信号がEDF11を通過する場合には前方励起が行われ、逆方向のWE方向に光信号がEDF11を通過する場合には後方励起が行われる。このため、ファイバ経路の方路の切り替えにより、光増幅器10の利得特性が変化する可能性がある。そこで、実施例2では、ファイバ経路の方路によらず光増幅器の利得特性が同等になるように光増幅器を構成する。以下では、主に実施例1と相違する点について説明し、実施例1と共通する点については説明を省略する。
【0035】
図2(B)は、本実施例の本実施例の光中継器200の構成例を示す図である。実施例1の構成(
図2(A))との相違点は光増幅器10の構成にあり、具体的には、ファイバ経路上でEDF11の両側にWDMカプラ及び励起光源を設けている点である。本実施例では、実施例1と同様の励起光源14、アイソレータ15、及びWDMカプラ16に加えて、ファイバ経路上で東側の可変アイソレータ13とEDF11との間に、励起光源17、アイソレータ18、及びWDMカプラ19が設けられている。
【0036】
励起光源14は、実施例1と同様、アイソレータ15を介してWDMカプラ16に励起光を入力することで、WDMカプラ16を介してEDF11に、WE方向に伝搬する励起光を供給する。励起光源17は、アイソレータ18を介してWDMカプラ19に励起光を入力することで、WDMカプラ19を介してEDF11に、EW方向に伝搬する励起光を供給する。これにより、光増幅器10では双方向励起が行われることになり、ファイバ経路の方路によらず光増幅器の利得特性を同等にすることが可能になる。
【0037】
なお、
図2(B)の構成は一例にすぎず、種々の変形が可能である。例えば、1つの励起光源から出力された励起光を光スプリッタにより2系統に分岐し、分岐された光をそれぞれWDMカプラ16,19に入力してもよい。あるいは、ファイバ経路の方路の設定に応じて、光SWコントローラ23が、光増幅器10において前方励起を行うか、後方励起を行うか、又は双方向励起を行うかを選択できるように、光中継器200を構成することも可能である。例えば、前方励起と後方励起とのいずれかを選択可能にする場合には、1つの励起光源からの励起光の出力先を、光スイッチにより、WDMカプラ16とWDMカプラ19とで切り替え可能にしてもよい。その場合、光スイッチの切り替えが光SWコントローラ23によって制御される。また、
図2(B)に示す励起光源14,17に対する給電回路のオン及びオフを、光SWコントローラ23が個別に切り替え可能であってもよい。その場合、光SWコントローラ23は、各給電回路のオン及びオフを制御することにより、光増幅器10において前方励起を行うか、後方励起を行うか、又は双方向励起を行うかを選択できる。
【0038】
このような変形例によれば、光増幅器10において前方励起と後方励起と双方向励起とを必要に応じて選択して使用することが可能になる。例えば、ファイバ経路の方路の設定によらず常に前方励起又は後方励起を行うように、光増幅器10を制御することが可能になる。
【0039】
[実施例3]
実施例3では、方路可変の1つ以上のファイバ経路を含む光ファイバ伝送システムにおいて、端局装置(監視装置)が各ファイバ経路において光中継器を監視する例について説明する。以下では、主に上述の実施例と相違する点について説明し、上述の実施例と共通する点については説明を省略する。
【0040】
まず、本実施例の前提として、光ファイバ伝送システムにおける、
図1のFB1及びFB2のように方路が固定された2つのファイバ経路で構成されるファイバペアを用いた光中継器の監視方法の例について説明する。
【0041】
具体的には、端局装置(監視装置)から一方のファイバ経路へ監視用の光信号(監視信号)を出力し、監視対象の光中継器のループバック経路を通過して、他方のファイバ経路を介して戻ってきた監視信号のパワーを測定することで、光中継器の出力パワーを監視する。光中継器には、一方のファイバ経路上の光増幅器の出力側で光を分岐させ、分岐した光を、監視信号の波長λ1のみを通過させるフィルタを介して、他方のファイバ経路上の光増幅器の入力側に設けた合波器に入力するループバック経路を設ける。これにより、監視装置から一方のファイバ経路を介して送信された波長λ1の監視信号を、光中継器のループバック経路及び他方のファイバ経路を介して、送信元の監視装置で受信できる。
【0042】
また、
図1のように複数の光中継器が縦続接続されている場合、波長λ
1の監視信号として、例えば存在時間が短いパルス信号を送信すると、監視装置からそれぞれの光中継器までの距離に応じて、監視装置と光中継器との間のパルス信号の往復時間が異なる。このため、パルス信号の往復時間の測定により、いずれの光中継器のループバック経路を通過して戻ってきたパルス信号が受信されたのかを判別できる。また、戻ってきたパルス信号のパワーを常時又は定期的に測定し、測定したパワーの低下を検出した場合、光中継器の出力パワーが低下していると判定できる。このようにして、監視装置は光ファイバ伝送路を介して遠隔で光中継器の出力パワーを監視できる。
【0043】
上述の監視方法では、一方向の伝送用のファイバ経路と逆方向の伝送用のファイバ経路とのファイバペア(即ち、双方向伝送のためのファイバペア)が必要とされる。しかし、本実施例では、上述の実施例と同様、方路可変のファイバ経路を設けることで、それぞれの方向の伝送用のファイバ経路の数が異なることを前提としている。このため、ファイバペアの使用を前提とする上述の監視方法を本実施例にそのまま適用することはできない。
【0044】
そこで、本実施例では、光ファイバ伝送システムにおいて方路可変のファイバ経路における光中継器200の監視を行う例について説明する。
【0045】
図3は、端局装置100,300に配置された監視装置110,310による光中継器200の監視のための構成を有する、光中継器200の構成例を示す図である。実施例1と同様、光ファイバ伝送を構成するファイバ経路(FB1~FB4)のうち、FB1及びFB2については方路が固定されている。FB1についてはWE方向に方路が設定され、FB2についてはEW方向に方路が設定されている。また、FB3及びFB4については、光中継器200により方路を切り替え可能なファイバ経路である。また、
図4は、光中継器200の構成の一部を示しており、
図3の構成における本実施例の説明に必要な構成のみを示している。
【0046】
西側の端局装置100に配置された監視装置110は、各ファイバ経路における光中継器200の監視に用いる光信号として、波長λ2の監視信号を使用する。一方、東側の端局装置300に配置された監視装置310は、各ファイバ経路における光中継器200の監視に用いる光信号として、波長λ1の監視信号を使用する。各監視信号としては、上述のように、短パルスのパルス信号が使用されうる。
【0047】
以下では、
図4を参照して、光中継器200の構成及び各ファイバ経路における光中継器200の監視方法について説明する。
【0048】
FB1及びFB2における光中継器200の監視は、FB1及びFB2をファイバペアとして用いて、上述の監視方法と同様に行われる。具体的には、FB1における光中継器200の監視では、監視装置110から出力され、FB1をWE方向に伝搬して光増幅器40aを通過した、波長λ2の監視信号は、光タップ42で分岐される。その後、監視信号は、合波器34を介して、波長λ2の光信号を通過させる光フィルタ36を通過し、FB2上の光増幅器40bの入力側の光カプラ44に入力される。
【0049】
このように、FB1上の光増幅器40aを通過した監視信号は、光タップ42、合波器34、光フィルタ36、及び光カプラ44で構成されたループバック経路を介して、逆方向(EW方向)に伝搬する光信号としてFB2に入力される。FB2に入力された監視信号は、光増幅器40bを通過し、FB2を伝搬して監視装置110によって受信される。監視装置110は、各光中継器200から受信される、波長λ2の監視信号のパワーの測定結果に基づいて、FB1における各光中継器200の出力パワーを監視できる。
【0050】
また、FB2における光中継器200の監視では、監視装置310から出力され、FB2をEW方向に伝搬して光増幅器40bを通過した、波長λ1の監視信号は、光タップ43で分岐される。その後、監視信号は、合波器33を介して、波長λ1の光信号を通過させる光フィルタ35を通過し、FB1上の光増幅器40aの入力側の光カプラ41に入力される。
【0051】
このように、FB2上の光増幅器40bを通過した監視信号は、光タップ43、合波器33、光フィルタ35、及び光カプラ41で構成されたループバック経路を介して、逆方向(WE方向)に伝搬する光信号としてFB1に入力される。FB1に入力された監視信号は、光増幅器40aを通過し、FB1を伝搬して監視装置310によって受信される。監視装置310は、各光中継器200から受信される、波長λ1の監視信号のパワーの測定結果に基づいて、FB2における各光中継器200の出力パワーを監視できる。
【0052】
次に、FB3における光中継器200の監視について説明する。なお、FB4における光中継器200の監視についてはFB3と同様であるため説明を省略する。
【0053】
FB3上には、光増幅器10cの端局装置100側(西側)と、光増幅器10cの端局装置300側(東側)との両方に光タップ(光タップ31c,32c)が設けられている。これにより、監視装置110,310のいずれかから出力された監視信号を、FB3とは逆方向の方路が設定されたファイバ経路(FB1又はFB2)に導くためのループバック経路に分岐する。
【0054】
FB3の方路がWE方向に設定されている場合には、以下のように光中継器200の監視が行われる。この場合、監視装置110から出力され、FB3をWE方向に伝搬して光増幅器10cを通過した、波長λ2の監視信号は、光タップ32cで分岐される。その後、監視信号は、合波器34を介して光フィルタ36を通過し、FB3とは逆方向の方路に固定されているFB2上の光増幅器40bの入力側の光カプラ44に入力される。
【0055】
このように、FB3上の光増幅器10cを通過した監視信号は、光タップ32c、合波器34、光フィルタ36、及び光カプラ44で構成されたループバック経路を介して、逆方向(EW方向)に伝搬する光信号としてFB2に入力される。FB2に入力された監視信号は、光増幅器40bを通過し、FB2を伝搬して監視装置110によって受信される。監視装置110は、各光中継器200から受信される、波長λ2の監視信号のパワーの測定結果に基づいて、FB3における各光中継器200の出力パワーを監視できる。
【0056】
一方、FB3の方路がEW方向に設定されている場合には、以下のように光中継器200の監視が行われる。この場合、監視装置310から出力され、FB3をEW方向に伝搬して光増幅器10cを通過した、波長λ1の監視信号は、光タップ31cで分岐される。その後、監視信号は、合波器33を介して光フィルタ35を通過し、FB3とは逆方向の方路に固定されているFB1上の光増幅器40aの入力側の光カプラ41に入力される。
【0057】
このように、FB3上の光増幅器10cを通過した監視信号は、光タップ31c、合波器33、光フィルタ35、及び光カプラ41で構成されたループバック経路を介して、逆方向(WE方向)に伝搬する光信号としてFB1に入力される。FB1に入力された監視信号は、光増幅器40aを通過し、FB1を伝搬して監視装置310によって受信される。監視装置310は、各光中継器200から受信される、波長λ1の監視信号のパワーの測定結果に基づいて、FB3における各光中継器200の出力パワーを監視できる。
【0058】
以上説明したように、本実施例の光中継器200の構成によれば、端局装置100,300(監視装置110,310)が、方路可変のファイバ経路において光中継器200を監視することが可能になる。
【0059】
なお、光ファイバ伝送路を構成するファイバ経路の数には制限はなく、M本のファイバ経路(Mは1以上の整数)のうち、(M-2)本のファイバ経路を方路可変のファイバ経路として構成することが可能である。即ち、一方向の方路に固定されたファイバ経路とそれと逆方向の方路に固定されたファイバ経路とのファイバペア(FB1及びFB2)を残し、残りの任意の数のファイバ経路を方路可変にファイバ経路とすることが可能である。この場合、合波器33,34の入力の数は、ファイバ経路の数に等しいMとなる。
【0060】
[実施例4]
実施例4では、方路可変の1つ以上のファイバ経路を含む光ファイバ伝送システムにおいて、端局装置(監視装置)が各ファイバ経路の状態を監視(破断の発生及び破断点を検出)する例について説明する。以下では、主に上述の実施例と相違する点について説明し、上述の実施例と共通する点については説明を省略する。
【0061】
まず、本実施例の前提として、光ファイバ伝送システムにおける、
図1のFB1及びFB2のように方路が固定された2つのファイバ経路で構成されるファイバペアを用いた、ファイバ経路の状態の監視方法の例について説明する。
【0062】
具体的には、ファイバ経路の途中に生じた破断点を検出するためには、例えば、コヒーレント光時間領域反射測定(C-OTDR:Coherent-Optical Time Domain Reflectometry)が用いられる。例えば、端局装置に配置された監視装置(C-OTDR装置)から、ファイバペアの一方のファイバ経路に短パルスのパルス信号を出力すると、ファイバ経路上のあらゆる位置において発生するレイリー散乱光が逆方向に戻ってくる。この散乱光を、光中継器に設けられた戻り経路(散乱光経路)を通じて、他方のファイバ経路に導く。これにより、レイリー散乱光が、他方のファイバ経路を通じて、パルス信号の送信元の監視装置に到達する。
【0063】
レイリー散乱は、ファイバ経路の長手方向のあらゆる位置で発生する。このため、パルス信号を送信してからレイリー散乱光が送信元まで戻るまでの時間を測定することで、受信した散乱光が、ファイバ経路上のいずれの位置で発生した散乱光であるかを判定できる。光ファイバ内を伝搬する光は伝搬距離に応じてパワーが減衰するため、正常であれば伝搬距離に応じて連続的にパワーが減衰する。即ち、急激に散乱光が減衰している位置を判定できると、その位置において光ファイバが破断していると推定することができる。
【0064】
上述の監視方法では、一方向の伝送用のファイバ経路と逆方向の伝送用のファイバ経路とのファイバペア(即ち、双方向伝送のためのファイバペア)が必要とされる。しかし、本実施例では、上述の実施例と同様、方路可変のファイバ経路を設けることで、それぞれの方向の伝送用のファイバ経路の数が異なることを前提としている。このため、ファイバペアの使用を前提とする上述の監視方法を本実施例にそのまま適用することはできない。
【0065】
そこで、本実施例では、方路可変の1つ以上のファイバ経路を含む光ファイバ伝送システムにおいて、各ファイバ経路の状態の監視を行う例について説明する。
【0066】
図5は、端局装置100,300に配置された監視装置110,310による各ファイバ経路の監視(破断の発生及び破断点の検出)のための構成を有する、光中継器200の構成例を示す図である。なお、
図5では、光中継器200が、光中継器200の監視のための構成(実施例3)に加えて、各ファイバ経路の状態の監視のための構成を有する例を示している。上述の実施例と同様、光ファイバ伝送を構成するファイバ経路(FB1~FB4)のうち、FB1及びFB2については方路が固定されている。FB1についてはWE方向に方路が設定され、FB2についてはEW方向に方路が設定されている。また、FB3及びFB4については、光中継器200により方路を切り替え可能なファイバ経路である。また、
図6は、光中継器200の構成の一部を示しており、
図5の構成における本実施例の説明に必要な構成のみを示している。
【0067】
西側の端局装置100に配置された監視装置110は、各ファイバ経路の状態の監視に用いる光信号として、波長λ4の監視信号を使用する。一方、東側の端局装置300に配置された監視装置310は、各ファイバ経路における光中継器200の監視に用いる光信号として、波長λ3の監視信号を使用する。各監視信号としては、上述のように、短パルスのパルス信号が使用されうる。
【0068】
FB1及びFB2における各ファイバ経路の状態の監視は、FB1及びFB2をファイバペアとして用いて、上述の監視方法と同様に行われる。具体的には、FB1におけるファイバ経路の状態の監視では、
図7に示すように、監視装置110から出力された波長λ
4の監視信号は、FB1をWE方向に伝搬して光増幅器40aを通過して、光中継器200から東側へ出力される。光中継器200の東側で生じたレイリー散乱光が、FB1を通じて光中継器200に戻ってくる。光中継器200に東側から入力されたレイリー散乱光は、光タップ62で分岐される。その後、レイリー散乱光は、合波器54を介して、波長λ
4の光信号を通過させる光フィルタ56を通過し、FB2上の光増幅器40bの入力側の光カプラ64に入力される。
【0069】
このように、FB1を通じて光中継器200に戻ってきたレイリー散乱光は、光タップ62、合波器54、光フィルタ56、及び光カプラ64で構成された戻り経路(散乱光経路)を介して、逆方向(EW方向)に伝搬する光としてFB2に入力される。FB2に入力されたレイリー散乱光は、光増幅器40bを通過し、FB2を伝搬して監視装置110によって受信される。監視装置110は、このレイリー散乱光の受信結果に基づいて、FB1上の破断点を検出(推定)できる。
【0070】
また、FB2におけるファイバ経路の状態の監視では、
図8に示すように、監視装置310から出力された波長λ
3の監視信号は、FB2をEW方向に伝搬して光増幅器40bを通過して、光中継器200から西側へ出力される。光中継器200の西側でファイバ経路の破断が生じると、その破断点で生じたレイリー散乱光が、FB2を通じて光中継器200に戻ってくる。光中継器200に西側から入力されたレイリー散乱光は、光タップ63で分岐される。その後、レイリー散乱光は、合波器53を介して、波長λ
3の光信号を通過させる光フィルタ55を通過し、FB1上の光増幅器40aの入力側の光カプラ61に入力される。
【0071】
このように、FB2を通じて光中継器200に戻ってきたレイリー散乱光は、光タップ63、合波器53、光フィルタ55、及び光カプラ61で構成された戻り経路を介して、逆方向(WE方向)に伝搬する光としてFB1に入力される。FB1に入力されたレイリー散乱光は、光増幅器40aを通過し、FB1を伝搬して監視装置310によって受信される。監視装置310は、このレイリー散乱光の受信結果に基づいて、FB2上の破断点を検出(推定)できる。
【0072】
次に、FB3におけるファイバ経路の状態の監視について説明する。FB3上には、光増幅器10cの端局装置100側(西側)と、光増幅器10cの端局装置300側(東側)との両方に光タップ(光タップ51c,52c)が設けられている。これにより、FB3上で生じたレイリー散乱光を、FB3とは逆方向の方路が設定されたファイバ経路(FB1又はFB2)に導くための戻り経路に分岐する。
【0073】
FB3の方路がWE方向に設定されている場合には、以下のようにFB3の状態の監視が行われる。
図9に示すように、監視装置110から出力された波長λ
4の監視信号は、FB3をWE方向に伝搬して光増幅器10cを通過して、光中継器200から東側へ出力される。光中継器200の東側で生じたレイリー散乱光が、FB3を通じて光中継器200に戻ってくる。光中継器200に東側から入力されたレイリー散乱光は、光タップ52cで分岐される。その後、レイリー散乱光は、合波器54を介して、波長λ
4の光信号を通過させる光フィルタ56を通過し、FB3とは逆方向の方路に固定されているFB2上の、光増幅器40bの入力側の光カプラ64に入力される。
【0074】
このように、FB3を通じて光中継器200に戻ってきたレイリー散乱光は、光タップ52c、合波器54、光フィルタ56、及び光カプラ64で構成された戻り経路を介して、逆方向(EW方向)に伝搬する光としてFB2に入力される。FB2に入力されたレイリー散乱光は、光増幅器40bを通過し、FB2を伝搬して監視装置110によって受信される。監視装置110は、このレイリー散乱光の受信結果に基づいて、FB3上の破断点を検出(推定)できる。
【0075】
一方、FB3の方路がEW方向に設定されている場合には、以下のようにFB3の状態の監視が行われる。
図10に示すように、監視装置310から出力された波長λ
3の監視信号は、FB3をEW方向に伝搬して光増幅器10cを通過して、光中継器200から西側へ出力される。光中継器200の西側で生じたレイリー散乱光が、FB3を通じて光中継器200に戻ってくる。光中継器200に西側から入力されたレイリー散乱光は、光タップ51cで分岐される。その後、レイリー散乱光は、合波器53を介して、波長λ
3の光信号を通過させる光フィルタ55を通過し、FB3とは逆方向の方路に固定されているFB1上の、光増幅器40aの入力側の光カプラ61に入力される。
【0076】
このように、FB3を通じて光中継器200に戻ってきたレイリー散乱光は、光タップ51c、合波器53、光フィルタ55、及び光カプラ61で構成された戻り経路を介して、逆方向(WE方向)に伝搬する光としてFB1に入力される。FB1に入力されたレイリー散乱光は、光増幅器40aを通過し、FB1を伝搬して監視装置310によって受信される。監視装置310は、このレイリー散乱光の受信結果に基づいて、FB3上の破断点を検出(推定)できる。
【0077】
なお、FB4におけるファイバ経路の監視については、
図11及び
図12に例示するとおり、FB3と同様であるため説明を省略する。
【0078】
以上説明したように、本実施例の光中継器200の構成によれば、方路可変の1つ以上のファイバ経路を含む光ファイバ伝送システムにおいて、端局装置100,300(監視装置110,310)が各ファイバ経路の状態を監視(破断の発生及び破断点の検出)することが可能になる。
【0079】
なお、光ファイバ伝送路を構成するファイバ経路の数には制限はなく、M本のファイバ経路(Mは1以上の整数)のうち、(M-2)本のファイバ経路を方路可変のファイバ経路として構成することが可能である。即ち、一方向の方路に固定されたファイバ経路とそれと逆方向の方路に固定されたファイバ経路とのファイバペア(FB1及びFB2)を残し、残りの任意の数のファイバ経路を方路可変にファイバ経路とすることが可能である。この場合、合波器53,54の入力の数は、ファイバ経路の数に等しいMとなる。
【0080】
[実施例5]
上述の実施例4では、西側の監視装置110が各ファイバ経路の状態の監視に用いる監視信号の波長として波長λ4、東側の監視装置310が各ファイバ経路の状態の監視に用いる監視信号の波長として波長λ3を用いている。これに対し、実施例5では、光中継器200による中継伝送が可能な任意の波長(ただし、光中継器200の監視用の波長を除く。)を用いて、各ファイバ経路の状態の監視を行う例について説明する。以下では、主に上述の実施例と相違する点について説明し、上述の実施例と共通する点については説明を省略する。
【0081】
図13は、本実施例の光中継器200の構成例を示す図である。実施例4(
図5)との相違点は、方路可変のファイバ経路であるFB3及びFB4上の光タップ51c,51dと合波器53との間に、光スイッチ(SW)57c,57dが設けられていること、光フィルタ55が無いことである。また、FB3及びFB4上の光タップ52c,52dと合波器54との間に、光SW58c,58dが設けられていること、光フィルタ56が無いことである。光SW57c,57d及び光SW58c,58dは、光SWコントローラ23c,23dからの指示信号に従ってオン/オフを切り替え可能である。各光SWは、オンの場合に光を透過させ、オフの場合に光を阻止する。
【0082】
例えば、FB3の方路がWE方向に設定される場合には、光SWコントローラ23は、光SW57cをオフ、光SW58cをオンにする。これにより、端局装置300側(東側)から戻ってくるレイリー散乱光を、実施例4と同様、光タップ52c、光SW58c、及び合波器54で構成された戻り経路を介して、FB2に導くことが可能である。また、光フィルタ55が存在しなくても、端局装置100側(西側)から光中継器200に入力された光信号については、光SW57cによって阻止されることによって、FB1に入力されることを防止できる。したがって、実施例4と同様、監視装置110は、FB2におけるレイリー散乱光の受信結果に基づいて、FB3上の破断点を推定できる。
【0083】
一方、FB3の方路がEW方向に設定される場合には、光SWコントローラ23は、光SW57cをオン、光SW58cをオフにする。これにより、端局装置100側(西側)から戻ってくるレイリー散乱光を、実施例4と同様、光タップ51c、光SW57c、及び合波器53で構成された戻り経路を介して、FB1に導くことが可能である。また、光フィルタ56が存在しなくても、端局装置300側(東側)から光中継器200に入力された光信号については、光SW58cによって阻止されることによって、FB2に入力されることを防止できる。したがって、実施例4と同様、監視装置310は、FB1におけるレイリー散乱光の受信結果に基づいて、FB3上の破断点を推定できる。
【0084】
なお、FB4におけるファイバ経路の監視については、FB3と同様であるため説明を省略する。
【0085】
本実施例によれば、実施例4と同様、方路可変の1つ以上のファイバ経路を含む光ファイバ伝送システムにおいて、端局装置100,300(監視装置110,310)が各ファイバ経路の状態を監視(破断の発生及び破断点の検出)することが可能になる。
【0086】
[実施例6]
上述の実施例1乃至5では、光中継器200内の光増幅器10が可変アイソレータを備える構成について説明した。実施例6では、光増幅器10に可変アイソレータに代えて可変サーキュレータを設け、上述の実施例のように他のファイバ経路を使用せずに、方路可変のファイバ経路の監視を実現する例について説明する。以下では、主に上述の実施例と相違する点について説明し、上述の実施例と共通する点については説明を省略する。
【0087】
図14は、本実施例の光中継器200の構成例を示す図である。なお、
図14に示す光増幅器10は、
図2に示す構成における可変アイソレータ12,13に代えて、可変サーキュレータ71,72を備えている。なお、
図14では、光増幅器10における励起に関係する構成(
図2の励起光源14、アイソレータ15、及びWDMカプラ16等)の図示を省略している。光増幅器10は、更に、方路可変のファイバ経路(FB3及びFB4)上に配置された光タップ73,74と、光フィルタ75,76と、光カプラ・スプリッタ77,78と、光フィルタ79,80とを備える。
【0088】
可変サーキュレータ71,72は、光Swコントローラ23によってその方向性の設定が切り替えられる。具体的には、可変サーキュレータ71,72は、ファイバ経路の方路がWE方向に設定される場合、ポート1から入力された光をポート2から出力し、ポート2から入力された光をポート3から出力し、ポート4から入力された光をポート1から出力するように設定される。即ち、可変サーキュレータ71,72は、ファイバ経路の方路がWE方向に設定される場合、ポート1からポート2への方向へ伝搬する光を透過させるが、その逆方向(ポート2からポート1の方向)へ伝搬する光を阻止する点で、可変アイソレータ12,13(
図2)と共通するが、ポート2から入力された光をポート3へ出力する点で相違する。
【0089】
一方、可変サーキュレータ71,72は、ファイバ経路の方路がEW方向に設定される場合、後述する
図18(B)に示すように、ポート2から入力された光をポート1から出力し、ポート3から入力された光をポート2から出力し、ポート3から入力された光をポート2から出力するように設定される。即ち、可変サーキュレータ71,72は、ファイバ経路の方路がEW方向に設定される場合、ポート2からポート1への方向へ伝搬する光を透過させるが、その逆方向(ポート1からポート2の方向)へ伝搬する光を阻止する点で、可変アイソレータ12,13(
図2)と共通するが、ポート1から入力された光をポート4へ出力する点で相違する。
【0090】
図14に示すように、可変サーキュレータ71のポート3は、光カプラ・スプリッタ77の共通ポートと接続され、可変サーキュレータ71のポート4と光カプラ・スプリッタ77のポート2との間に光フィルタ79が接続される。また、光カプラ・スプリッタ77のポート1と光タップ73との間に光フィルタ75が接続される。また、可変サーキュレータ72のポート4は、光カプラ・スプリッタ78の共通ポートと接続され、可変サーキュレータ72のポート3と光カプラ・スプリッタ78のポート2との間に光フィルタ80が接続される。また、光カプラ・スプリッタ78のポート1と光タップ74との間に光フィルタ76が接続される。
【0091】
光カプラ・スプリッタ77,78は、共通ポートに入力された光をポート1及びポート2に分岐して出力し、ポート1に入力された光を共通ポートに出力し、ポート2に入力された光を共通ポートに出力するように動作する。光フィルタ75は、波長λ2の光信号を通過させ、光フィルタ76は、波長λ1の光信号を通過させる。また、光フィルタ79,80は、波長λ1,λ2,λ3の光信号を通過させる。
【0092】
次に方路可変のファイバ経路(FB3及びFB4)における光中継器200の出力の監視及び当該ファイバ経路の状態の監視について説明する。以下では、FB3について説明するが、FB4についても同様である。FB3に対してWE方向の方路が設定されている場合、監視装置110は、波長λ
1の監視信号を使用して光中継器200の監視を行う。一方、FB3に対してEW方向の方路が設定されている場合、監視装置310は、波長λ
2の監視信号を使用して光中継器200の監視を行う。また、監視装置110,310のいずれも、FB3の状態の監視には波長λ
3の監視信号を使用する。なお、
図14及び後述する
図15乃至
図21には、情報トラフィックを搬送する光信号を図示していないが、当該光信号は、FB3に対する方路の設定に応じて、可変サーキュレータ71,72のポート1からポート2、又はポート2からポート1へ伝送される。
【0093】
(監視装置110による光中継器200の監視)
次に、FB3に対してWE方向の方路が設定されている場合の、監視装置110による光中継器200の監視について説明する。以下では、
図15(A)に示すように、光中継器200-3を監視対象として、監視装置110による、波長λ
1の監視信号を用いた当該光中継器の監視の例について説明する。なお、監視装置110は、実際には全ての光中継器200を監視する。
【0094】
図15(B)に示すように、西側の端局装置100内の監視装置110から出力され、FB3を伝搬する監視信号は、光中継器200-3に西側から入力される。光中継器200-3の光増幅器10に入力された監視信号は、光タップ73、可変サーキュレータ71、EDF、及び可変サーキュレータ72を通過して、光タップ74に到達する。監視信号は、光タップ74において一部がWE方向の下流側の光中継器200-4へ向かい、一部が光フィルタ76へ向かうように分岐する。各光中継器200には、
図15(B)に示すように、光タップ74を起点として、波長λ
1の監視信号を逆方向(EW方向)に伝搬させるためのループバック経路が設けられている。
【0095】
光タップ74から光フィルタ76の方向へ分岐した監視信号は、波長λ1の光を通過させる光フィルタ76を通過し、光カプラ・スプリッタ78にポート1から入力されて共通ポートから出力される。次に、監視信号は、可変サーキュレータ72にポート4から入力されてポート1から出力されることで、元の伝搬方向であるWE方向とは逆方向の、EW方向に進むことになる。
【0096】
その後、監視信号は、EDFを通過し、可変サーキュレータ71にポート2から入力されてポート3から出力され、更に光カプラ・スプリッタ77に共通ポートから入力されてポート1及び2から出力される。ポート1から出力された監視信号は、波長λ2の光を通過させる光フィルタ75によって阻止される。一方、ポート2から出力された監視信号は、光フィルタ79を通過し、可変サーキュレータ71にポート4から入力されてポート1から出力され、光タップ73に入力される。光タップ73において一部がWE方向の上流側の光中継器200-2へ向かい、一部が光フィルタ75へ向かうように分岐する。波長λ2の光を通過させる光フィルタ75に入力された監視信号は、光フィルタ75によって阻止される。
【0097】
このようにして、光中継器200-3からWE方向の上流側(西側)へ出力された監視装置は、
図16に示すように、光中継器200-3と監視装置110との間にある光中継器200-2,200-1を順に通過する。
【0098】
具体的には、光中継器200-2に東側から入力された、波長λ1の監視信号は、光タップ74を通過して可変サーキュレータ72にポート2から入力されてポート3から出力される。次に、監視信号は、光フィルタ80を通過して光カプラ・スプリッタ78にポート2から入力されて共通ポートから出力され、更に可変サーキュレータ72にポート4から入力されてポート1から出力される。その後、監視信号は、EDFを通過し、上述の光中継器200-3と同様に、光中継器200から西側へ出力されることになる。監視信号は、光中継器200-1も同様に通過し、最終的に監視装置110によって受信される。
【0099】
監視装置110は、各光中継器200から受信される、波長λ1の監視信号のパワーの測定結果に基づいて、FB3における各光中継器200の出力パワーを監視できる。
【0100】
(監視装置110によるファイバ経路の状態の監視)
次に、
図17(A)に示すように、方路可変のファイバ経路(本例ではFB3)を監視対象として、監視装置110による、波長λ
3の監視信号を用いたFB3の状態の監視の例について説明する。本例では、FB3の光中継器200-3と光中継器200-4との間の区間において破断が生じた場合を想定する。
【0101】
図17(B)に示すように、西側の端局装置100内の監視装置110から出力され、FB3を伝搬する監視信号は、各光中継器200を通過する。具体的には、光中継器200に西側から入力された、波長λ
3の監視信号は、光タップ73、可変サーキュレータ71、EDF、可変サーキュレータ72、及び光タップ74を通過して、光中継器200の東側へ出力される。なお、光タップ74で光フィルタ76の方向へ分岐した監視信号は、波長λ
1の光を通過させる光フィルタ76によって阻止される。
【0102】
FB3上で発生したレイリー散乱光は、
図17(B)に示すように、FB3を通じて、監視信号の伝搬方向(WE方向)とは逆方向に戻ってきて、光中継器200に東側から入力される。波長λ
3の監視信号は、光中継器200内において、
図16(B)に示す、波長λ
1の監視信号と同様の経路を通って、光中継器200の西側へ出力される。
【0103】
このようにして、各光中継器200からWE方向の上流側(西側)へ出力されたレイリー散乱光は、監視装置110までの間にある他の光中継器200も同様に順に通過し、最終的に監視装置110によって受信される。監視装置110は、FB3におけるレイリー散乱光の受信結果に基づいて、FB3上の破断点を推定できる。
【0104】
(監視装置310による光中継器200の監視)
次に、FB3に対してEW方向の方路が設定されている場合の、監視装置310による光中継器200の監視について説明する。
図18は、FB3に対してEW方向の方路が設定されている場合の、各光中継器200内の可変サーキュレータ71,72の方向性の設定を示している。以下では、
図18(A)に示すように、光中継器200-3を監視対象として、監視装置310による、波長λ
2の監視信号を用いた当該光中継器の監視の例について説明する。なお、監視装置310は、実際には全ての光中継器200を監視する。
【0105】
図19(B)に示すように、東側の端局装置300内の監視装置310から出力され、FB3を伝搬する、波長λ
2の監視信号は、光中継器200-3に東側から入力される。各光中継器200には、波長λ
2の監視信号を逆方向(WE方向)に伝搬させるためのループバック経路が、光タップ73を起点として設けられている。このループバック経路は、
図15(B)に示される、波長λ
1の監視信号用のループバック経路と対称性を有しているため、その説明は省略する。
【0106】
光中継器200-3から西側に出力された監視信号は、
図20に示すように、光中継器200-3と監視装置310との間にある光中継器200-4,200-5,...を順に通過する。各光中継器200内の監視信号の伝搬経路は、
図16に示す伝搬経路と対称性を有しているため、その説明は省略する。監視信号は、各光中継器200を順に通過し、最終的に監視装置310によって受信される。
【0107】
監視装置310は、各光中継器200から受信される、波長λ2の監視信号のパワーの測定結果に基づいて、FB3における各光中継器200の出力パワーを監視できる。
【0108】
(監視装置310によるファイバ経路の状態の監視)
次に、
図21(A)に示すように、方路可変のファイバ経路(本例ではFB3)を監視対象として、監視装置310による、波長λ
3の監視信号を用いたFB3の状態の監視の例について説明する。本例では、FB3の光中継器200-3と光中継器200-4との間の区間において破断が生じた場合を想定する。
【0109】
図21(B)に示すように、東側の端局装置300内の監視装置310から出力され、FB3を伝搬する監視信号は、各光中継器200を通過する。各光中継器200内の監視信号の伝搬経路は、
図17に示す伝搬経路と対称性を有しているため、その説明は省略する。FB3で生じ、EW方向とは逆方向のWE方向に伝搬するレイリー散乱光は、各光中継器200を順に通過し、最終的に監視装置310によって受信される。監視装置310は、FB3におけるレイリー散乱光の受信結果に基づいて、FB3上の破断点を推定できる。
【0110】
以上説明したように、本実施例によれば、上述の実施例のように他のファイバ経路を使用することなく、方路可変のファイバ経路における光中継器の監視及び当該ファイバ経路の状態の監視を行うことが可能になる。
【0111】
[実施例7]
実施例7では、実施例6の変形例として、光中継器200内の光増幅器10に、監視装置110,310からの監視信号の伝搬方向とは逆方向に戻ってくる監視信号又はレイリー散乱光を増幅するためのEDF(増幅媒体)を設ける例について説明する。以下では、主に実施例6と相違する点について説明し、実施例6と共通する点については説明を省略する。
【0112】
図22及び
図23は、本実施例の光中継器200の構成例を示す図であり、
図22は、ファイバ経路の方路がWE方向に設定されている場合、
図23は、ファイバ経路の方路がWE方向に設定されている場合を示している。実施例6(
図14乃至
図21)と比較すると、光カプラ・スプリッタ77の共通ポートと光カプラ・スプリッタ78の共通ポートとの間にEDF2が接続されている。これにより、光中継器200の監視において、監視装置110,310から出力された監視信号がループバック経路を通じて逆方向に伝搬する間にEDF2を通過する。また、方路可変のファイバ経路(FB3及びFB4)の状態の監視において、監視装置110,310から出力された監視信号のレイリー散乱光が戻り経路を通じて逆方向に伝搬する間にEDF2を通過する。
【0113】
上述の実施例6では、監視信号と、逆方向に戻る監視信号又はレイリー散乱光とが、同じEDF1を双方向に通過するため、光増幅器10において所望の増幅利得が得られない可能性がある。これに対し、本実施例によれば、逆方向に戻る監視信号又はレイリー散乱光がEDF1とは別のEDF2を通過するように光中継器200を構成することで、所望の増幅利得を与えることが可能になる。
【0114】
[実施例8]
上述の実施例1乃至9における光増幅器10の利得特性が波長依存性を有する場合がある。実施例8では、このような光増幅器10の利得特性の波長依存性を補償する構成例について説明する。以下では、主に上述の実施例と相違する点について説明し、上述の実施例と共通する点については説明を省略する。
【0115】
図24は、本実施例の光中継器200の構成例を示す図である。なお、
図24では光増幅器10の構成を簡略化して示している。本実施例では、
図2に示す構成に対して、方路可変のファイバ経路(FB3及びFB4)上で光増幅器10と光タップ21との間に(光増幅器10の端局装置100側(西側)に)光サーキュレータ91が追加される。更に、方路可変のファイバ経路(FB3及びFB4)上で光増幅器10と光タップ22との間に(光増幅器10の端局装置300側(東側)に)光サーキュレータ91が追加される。
【0116】
図24に示すように、光サーキュレータ91のポート1及び2がファイバ経路に接続され、ポート3とポート4との間に利得等化フィルタ(GFF)93が接続される。光サーキュレータ91は、この接続状態において、ポート1から入力された光をポート2から出力し、ポート2から入力された光をポート3から出力し、ポート4から入力された光をポート1から出力するように設定される。また、光サーキュレータ92のポート1及び2がファイバ経路に接続され、ポート3とポート4との間にGFF93が接続される。光サーキュレータ91は、この接続状態において、ポート2から入力された光をポート1から出力し、ポート3から入力された光をポート2から出力し、ポート1から入力された光をポート4から出力するように設定される。
【0117】
図24に示す構成において、光サーキュレータ91は、ファイバ経路をWE方向に伝搬して光増幅器10に入力される光信号を透過させる一方、ファイバ経路をEW方向に伝搬して光増幅器10から出力された光信号を、GFF93を通過するように導く。光サーキュレータ92は、ファイバ経路をEW方向に伝搬して光増幅器10に入力される光信号を透過させる一方、ファイバ経路をWE方向に伝搬して光増幅器10から出力された光信号を、GFF94を通過するように導く。
【0118】
このように、本実施例では、方路可変のファイバ経路(FB3及びFB4)を光信号がWE方向とEW方向とのいずれの方向に伝搬する場合でも、光増幅器10の通過後にのみGFFを通過するように光中継器200を構成する。これにより、光信号がいずれの方向に進む場合であっても、光増幅器10の利得特性の波長依存性を補償することが可能になる。その結果、光増幅器10によって増幅される光信号に対して所望の利得特性を与えることが可能となる。
【0119】
[実施例9]
実施例9では、上述の各実施例の光ファイバ伝送システムに対して、マルチコアファイバを適用する。上述の各実施例において、光ファイバ伝送路のファイバ経路として用いられる光ファイバを、光信号が通過するコアを複数有するマルチコアファイバで構成してもよい。この場合、上述の各実施例における、光ファイバ伝送路のケーブル内のM本の光ファイバは、コア数Mのマルチコアファイバに相当する。
【0120】
また、光中継器200内にある光増幅器が、複数のコアを有するマルチコアEDFであってもよい。上述の実施例では、ファイバ経路の数又は光ファイバのコアの数を4(M=4)としているが、3以上のファイバ経路を有する光ファイバ伝送システムであれば、マルチコアファイバを適用可能である。
【0121】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0122】
100,300:端局装置
200(200-1,2,3,...):光中継器
110,310:監視装置
10,40:光増幅器