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特許7078580貯蔵タンク、および、貯蔵タンクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】貯蔵タンク、および、貯蔵タンクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 88/06 20060101AFI20220524BHJP
   F28D 1/06 20060101ALI20220524BHJP
   F25D 17/02 20060101ALN20220524BHJP
【FI】
B65D88/06 Z
F28D1/06 Z
F25D17/02 301
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019152059
(22)【出願日】2019-08-22
(65)【公開番号】P2021031097
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000207562
【氏名又は名称】タキロンシーアイシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】時吉 充亮
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-243562(JP,A)
【文献】特開2017-083104(JP,A)
【文献】特開2005-247038(JP,A)
【文献】特開2000-302188(JP,A)
【文献】特開昭56-074482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/06
F28D 1/06
F25D 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状に巻回された管状体の接合体であるタンク周壁と、
前記タンク周壁に溶着された被接合部と、を備え、
前記タンク周壁、および、前記被接合部の少なくとも一方が切断面を備え、
前記タンク周壁と前記被接合部とが溶着された部分である溶着部に前記切断面が含まれ
前記切断面は、前記タンク周壁が有する貫通孔の内周面を含み、
前記被接合部は、前記貫通孔を通る配管を含み、
前記貫通孔の内周面と前記配管の外周面とが溶着され、
前記配管の外周面は、前記タンク周壁の外周面から突き出る部分を備え、
前記突き出る部分と、前記タンク周壁の外周面との間に、前記溶着部につながり、かつ前記突き出る部分と前記タンク周壁の外周面とを溶着する肉盛りをさらに備える
貯蔵タンク。
【請求項2】
前記貫通孔の内周面は、前記管状体の通路に通じる複数の開口を備え、
前記溶着部は、前記通路における気密を保つように各開口を閉塞する
請求項1に記載の貯蔵タンク。
【請求項3】
前記切断面は、前記タンク周壁の天面、および、底面の少なくとも1つである対象面を含み、
前記被接合部は、前記対象面を溶着によって閉塞する閉塞壁を含む
請求項1または2に記載の貯蔵タンク。
【請求項4】
前記切断面は、錘状を形成する天板の外周面を含み、
前記被接合部は、前記タンク周壁の内周面と溶着される前記天板を含む
請求項1から3のいずれか一項に記載の貯蔵タンク。
【請求項5】
前記配管の外周面は、前記タンク周壁の外側から内側に向けて先細る錘台筒面状を有し、
前記配管の外周面を前記タンク周壁の内側に向けて仮想的に延長した錘筒面の中心角は、8°以上16°以下である
請求項2に記載の貯蔵タンク。
【請求項6】
管状体を螺旋状に巻回して接合することによってタンク周壁を形成すること、
前記タンク周壁に溶着される被接合部を準備すること、および、
前記被接合部が備える被接合面と前記タンク周壁が備える接合面とを加熱して前記被接合面と前記接合面とを溶着すること、を含み、
前記被接合面、および、前記接合面の少なくとも一方が切断面であり、
前記切断面を形成することは、前記タンク周壁に貫通孔を形成することによって、当該貫通孔の内周面を前記切断面に含めることであり、
前記溶着することは、前記貫通孔の内周面を加熱し、かつ、前記タンク周壁の外側から内側に向けて先細る錘台筒面状を有した外周面を備える配管の前記外周面を加熱して、前記タンク周壁の外側から内側に向けて前記配管を前記貫通孔に差し込み、前記貫通孔の内周面と前記配管の外周面とを溶着することによって、前記配管を前記被接合部に含めることであり、かつ、
前記溶着することは、前記配管の前記外周面の一部を、前記タンク周壁の外周面から突き出るように、前記配管を前記貫通孔に差し込み、前記外周面の前記一部と、前記タンク周壁の外周面との間に、前記配管の外周面と前記貫通孔の内周面との溶着した部分につながり、かつ前記外周面の前記一部と前記タンク周壁の外周面とを溶着する肉盛りをさらに形成する
貯蔵タンクの製造方法。
【請求項7】
前記貫通孔の内周面は、前記管状体の通路に通じる複数の開口を備え、
前記通路における気密を保つように前記配管の外周面と前記貫通孔の内周面との溶着によって各開口を閉塞する
請求項6に記載の貯蔵タンクの製造方法。
【請求項8】
前記切断面を形成することは、前記タンク周壁の天面および底面の少なくとも1つである対象面を切断することによって、当該対象面を前記切断面に含めることであり、
前記溶着することは、前記対象面を加熱し、かつ、前記対象面が区画する開口を閉塞する閉塞壁のなかで前記対象面と当接する環状部分を加熱し、前記対象面と前記環状部分とを溶着することによって、前記閉塞壁を前記被接合部に含めることである、
請求項6または7に記載の貯蔵タンクの製造方法。
【請求項9】
前記接合面と前記切断面とを溶着した後に、前記管状体の内部に媒体を流して、前記管状体の内部での気密が保たれていることを検査すること、をさらに含む
請求項6から8のいずれか一項に記載の貯蔵タンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、螺旋状に巻回された管状体の接合体であるタンク周壁を備えた貯蔵タンク、および、貯蔵タンクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次亜塩素酸ナトリウム溶液のような液体を内容物として貯蔵する貯蔵タンクは、天板や底板とタンク周壁とを接合することによって製造される。タンク周壁は、螺旋状に巻回されて接合された管状体から構成される。管状体は、貯蔵タンクの内容物を温調するための媒体を流す。貯蔵タンクは、内容物をタンクのなかに入れたり、内容物をタンクのなかから出したりするために、タンク周壁に接合された配管をさらに備える(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-083104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、上述した配管などの被接合部は、通常、溶着棒による環状の肉盛りによって、タンク周壁の外周面や内周面と接合される。タンク周壁と被接合部とが線状の肉盛りによって接合された構造は、貯蔵タンクの耐久性を高める観点において、依然として改善の余地を残すものである。
【0005】
本発明の目的は、耐久性を向上可能にした貯蔵タンク、および、貯蔵タンクの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための貯蔵タンクは、螺旋状に巻回された管状体の接合体であるタンク周壁と、前記タンク周壁に溶着された被接合部と、を備え、前記タンク周壁、および、前記被接合部の少なくとも一方が切断面を備え、前記タンク周壁と前記被接合部とが溶着された部分である溶着部に前記切断面が含まれる。この構成によれば、タンク周壁と被接合部とが溶着によって面状に接合されるため、肉盛りのような線状の接合と比べて、タンク周壁と被接合部との接合面積を拡大させて、それによって、貯蔵タンクの耐久性を向上できる。
【0007】
上記貯蔵タンクにおいて、前記切断面は、前記タンク周壁が有する貫通孔の内周面を含み、前記被接合部は、前記貫通孔を通る配管を含み、前記貫通孔の内周面と前記配管の外周面とが溶着されていてもよい。この構成によれば、タンク周壁と配管との接合の強度を向上できる。
【0008】
上記貯蔵タンクにおいて、前記切断面は、前記タンク周壁の天面、および、底面の少なくとも1つである対象面を含む。そして、前記被接合部は、前記対象面を溶着によって閉塞する閉塞壁を含んでもよい。この構成によれば、天面と閉塞壁との接合の強度、および、底面と閉塞壁との接合の強度の少なくとも1つを向上できる。
【0009】
上記貯蔵タンクにおいて、前記切断面は、錘状を形成する天板の外周面を含み、前記被接合部は、前記タンク周壁の内壁と溶着される前記天板を含む。この構成によれば、タンク周壁と天板との溶着の強度を向上できる。
【0010】
上記貯蔵タンクにおいて、前記配管の外周面は、前記タンク周壁の外側から内側に向けて先細る錘台筒面状を有し、前記配管の外周面を前記タンク周壁の内側に向けて仮想的に延長した錘筒面の中心角は、8°以上16°以下であってもよい。この構成によれば、例えば、配管を貫通孔に差し込み、配管の外周面と貫通孔の内周面とを溶着することによって、タンク周壁と配管とを接合することができる。そして、貫通孔の開口が配管によって押し広げられる限度において、配管の差し込みは停止される。そのため、貫通孔の内周面と配管の外周面との間に空隙が生じることが抑制できる。
【0011】
上記課題を解決するための貯蔵タンクの製造方法は、管状体を螺旋状に巻回して接合することによってタンク周壁を形成すること、前記タンク周壁に溶着される被接合部を準備すること、および、被接合部が備える被接合面と前記タンク周壁が備える接合面とを加熱して前記被接合面と前記接合面とを溶着すること、を含み、前記被接合面、および、前記接合面の少なくとも一方が切断面である。この方法によれば、タンク周壁が備える接合面、および、被接合部が備える被接合面の少なくとも一方が切断面であって、これらが溶着によって接合される。すなわち、タンク周壁と被接合部とが面状に接合されるため、肉盛りのような線状の接合と比べて、タンク周壁と被接合部との接合面積を拡大させて、それによって、貯蔵タンクの耐久性を向上できる。
【0012】
上記貯蔵タンクの製造方法において、前記切断面を形成することは、前記タンク周壁に貫通孔を形成することによって、当該貫通孔の内周面を前記切断面に含めることであってもよい。また、前記溶着することは、前記貫通孔の内周面を加熱し、かつ、前記タンク周壁の外側から内側に向けて先細る錘台筒面状を有した外周面を備える配管の前記外周面を加熱して、前記タンク周壁の外側から内側に向けて前記配管を前記貫通孔に差し込み、前記貫通孔の内周面と前記配管の外周面とを溶着することによって、前記配管を前記被接合部に含めることであってもよい。この方法によれば、タンク周壁に形成された貫通孔の内周面と、配管が備える外周面とが溶着されるため、タンク周壁と配管との接合の強度を向上できる。
【0013】
上記貯蔵タンクの製造方法において、前記切断面を形成することは、前記タンク周壁の天面、および、底面の少なくとも1つである対象面を切断することによって、当該対象面を前記切断面に含めることであってもよい。また、前記溶着することは、前記対象面を加熱し、かつ、前記対象面が区画する開口を閉塞する閉塞壁のなかで前記対象面と当接する環状部分を加熱し、前記対象面と前記環状部分とを溶着することによって、前記閉塞壁を前記被接合部に含めることである。この方法によれば、タンク周壁に形成された対象面と、当該対象面が区画する開口を閉塞する閉塞壁とが溶着されるため、タンク周壁と閉塞壁との接合の強度を高めることが可能である。
【0014】
上記貯蔵タンクの製造方法において、前記接合面と前記切断面とを溶着した後に、前記管状体の内部に媒体を流して、前記管状体の内部での気密が保たれていることを検査すること、をさらに含んでもよい。管状体は、管状体の延在方向に延びる孔を備える。タンク周壁に形成された切断面は、管状体が備える孔を、管状体の延在方向における途中で開口する。こうした切断面と接合面との溶着は、延在方向の途中に形成される開口を、接合面によって閉塞する。この点、この方法によれば、管状体の内部での気密が保たれていることが検査されるため、切断面と接合面との溶着に欠陥が無いことを検査できる。これにより、上述した効果を奏することの実効性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】貯蔵タンクの構成を示す構成図。
図2】配管とタンク周壁との接合構造の一部を示す貯蔵タンクの部分断面図。
図3】貯蔵タンクの製造方法に含まれる工程を示す工程図。
図4】貯蔵タンクの製造方法に含まれる工程を示す工程図。
図5】変更例1における配管とタンク周壁との接続構造の一部を示す部分断面図。
図6】変更例2における配管とタンク周壁との接続構造の一部を示す部分断面図。
図7】変更例3における貯蔵タンクの製造方法に含まれる工程を示す工程図。
図8】変更例4における天板を形成するための板部材の平面構造を示す平面図。
図9】変更例4における天板とタンク周壁との接合構造を示す部分断面図。
図10】変更例5における天板と天板配管との接合構造を示す部分断面図。
図11】変更例6および7における管状体が備える通路と貫通孔の内周面との関係を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1から図4を参照して、貯蔵タンク、および、貯蔵タンクの製造方法の一実施形態を説明する。まず、図1、および、図2を参照して、貯蔵タンクの構成を説明し、次いで、図3、および、図4を参照して、貯蔵タンクの製造方法を説明する。なお、図1では、貯蔵タンクの全体的な構成を説明する便宜上から、螺旋状に巻回された管状体を左右方向に延在する管体の繰り返しとして簡略化している。
【0017】
[貯蔵タンク]
図1が示すように、貯蔵タンクは、両端が閉塞された円筒状を有している。貯蔵タンクは、例えば、施設の屋上に設置される屋上設置型のタンク、地面に設置される地面設置型のタンク、地面に埋設される埋設型のタンク、室内に置かれる室内型のタンク、屋外に置かれる屋外型のタンクとして用いられる。貯蔵タンクに貯蔵される内容物は、例えば、次亜塩素酸ナトリウム溶液、アンモニア水、塩素水、塩酸、過酸化水素、クエン酸、水酸化ナトリウム、炭酸マグネシウム、塩水、ポリ塩化アルミニウムなどの液体、あるいは、各種の樹脂の原材料である樹脂粒体である。
【0018】
貯蔵タンクは、内周壁11、管状体12、および、配管20を備える。内周壁11は、円筒状を有した樹脂製の筒体である。管状体12は、内周壁11の外周面に螺旋状に巻回されて内周壁11の外周面に接合されている。内周壁11と管状体12とは、一体の樹脂成型物であって、タンク周壁の一例である。タンク周壁は、タンク周壁の径方向に沿ってタンク周壁を貫通する貫通孔43Aを有する。貫通孔43Aは、内周壁11、および、管状体12にわたり形成されている。貫通孔43Aは、例えば、ホールソーやドリルを用いた削孔によって形成される。貫通孔43Aの内周面は、切断面の一例である。
【0019】
タンク周壁を構成する材料は、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ガラス繊維強化ポリエチレン(Glass Fiber Reinforced Polyethylene(PE-GF))からなる群から選択されるいずれか1つである。タンク周壁を構成する材料は、例えば、貯蔵タンクの耐候性を高めるためのカーボンブラックがこれらの樹脂に含まれる耐候性樹脂や、貯蔵タンクを構成する樹脂よりも高い熱伝導性を有した無機フィラーがこれらの樹脂に含まれる熱伝導性樹脂である。
【0020】
管状体12は、通路12P、導入部13B1、13B2、および、導出部13A1、13A2を備える。通路12Pは、貯蔵タンクに内容物を貯蔵する際は、貯蔵タンクの温度を調整するための媒体を通し、通路12Pの気密性を検査する際には、気密状態の検査を目的とした媒体を通す。気密状態の検査を目的とした媒体は、空気などの気体や水などの液体である。通路12Pは、管状体12のほぼ中心を通る空間であって、管状体12の外形と同じく、内周壁11の周方向に巻回されて、内周壁11の下端から内周壁11の上端に向けて延びる螺旋状を有する。導入部13B1、13B2は、通路12Pに媒体を導入する。導出部13A1、13A2は、通路12Pに導入された媒体を通路12Pから導出する。
【0021】
配管20は、貫通孔43Aの内周面に接合されている。すなわち、配管20は、内周壁11、および、管状体12に接合されている。配管20をタンク周壁に接合する際は、例えば、配管20が貫通孔43Aに差し込まれた後に、配管20の外周面と貫通孔43Aの内周面との溶着が行われる。配管20とタンク周壁とは、溶着による溶着痕40を備える。
【0022】
配管20は、巻回された1本の管状体12を、第1管状部12Aと第2管状部12Bとに分割する。内周壁11の外周面には、その外周面のうちで上半分に位置する第1管状部12Aと、その外周面のうちで下半分に位置する第2管状部12Bとが溶着されている。第2管状部12Bは、第1管状部12Aに追従する螺旋の延長線上に位置している。
【0023】
第1管状部12Aは、第1媒体を通す通路である第1通路を構成する。第1管状部12Aは、第1通路の基端に接続された第1導入部13B1と、第1通路の先端に接続された第1導出部13A1とを備える。第1導入部13B1と、第1導出部13A1とは、各別に第1循環装置14Aに接続されている。第1循環装置14Aは、例えば、第1媒体の一例である第1液体を第1管状部12Aに循環させるためのポンプである。第1循環装置14Aは、第1導入部13B1に向けて第1液体を導出すると共に、第1導出部13A1から第1液体が導入されるように構成されている。
【0024】
第1循環装置14Aが循環させる第1液体は、例えば、貯蔵タンクに貯蔵された内容物の温度を外気とは異なる温度に調整するための温度を有した液体であり、特に、貯蔵タンクの上半分に位置する内容物の温度の調整に適した液体である。
【0025】
第2管状部12Bは、第2媒体を通す通路である第2通路を構成する。第2管状部12Bは、第2通路の基端に接続された第2導入部13B2と、第2通路の先端に接続された第2導出部13A2とを備える。第2導入部13B2と、第2導出部13A2とは、各別に第2循環装置14Bに接続されている。第2循環装置14Bは、例えば、第2媒体の一例である第2液体を第2管状部12Bに循環させるためのポンプである。第2循環装置14Bは、第2導入部13B2に向けて第2液体を導出すると共に、第2導出部13A2から第2液体が導入されるように構成されている。
【0026】
第2循環装置14Bが循環させる第2液体は、例えば、貯蔵タンクに貯蔵された内容物の温度を外気とは異なる温度に調整するための温度を有した液体であり、特に、貯蔵タンクの下半分に位置する内容物の温度の調整に適した液体である。
【0027】
なお、各循環装置14A、14Bは、例えば、ドレインタンクを備える。各循環装置14A、14Bは、管状体12に循環させた液体の全てを管状体12からドレインタンクに抜き取り、抜き取られた液体に代えて、管状体12に形成された通路に空気を封入するように構成されてもよい。空気が封入された管状体12は、液体が循環する管状体12よりも、貯蔵タンクに貯蔵された内容物とその外部との熱の伝導を抑え、それによって、貯蔵タンクが貯蔵する内容物の温度を保つ機能を有する。
【0028】
貯蔵タンクに貯蔵された内容物のうちで貯蔵タンクの上半分に位置する内容物の温度は、貯蔵タンクの下半分に位置する内容物の温度よりも高くなりやすい。この際に、第1循環装置14Aの循環させる第1液体の温度は、第2循環装置14Bの循環させる第2液体の温度よりも低いことが好ましく、また、第1循環装置14Aの循環させる第1液体の流速は、第2循環装置14Bの循環させる第2液体の流速よりも高いことが好ましい。
【0029】
[配管20の接合構造]
次に、図2を参照して、タンク周壁と配管20との接合構造について説明する。
図2が示すように、上下方向において互いに隣り合う管状体12の線分は、上下方向において接合されており、かつ、内周壁11に接合されている。内周壁11と管状体12とは、一体の樹脂成型物である。タンク周壁は、螺旋状に巻回された管状体12の接合体である。管状体12には、管状体12の延在方向に延びる通路12Pが形成されている。通路12Pは、管状体12の延在方向と直交する断面においてほぼ円形を有する。
【0030】
なお、管状体12は、上下方向において互いに隣り合う管状体12の間に、隙間を空けてもよいし、隙間を空けなくともよい。通路12Pの断面は、楕円形状であってもよいし、矩形状であってもよいし、不定形状であってもよい。
【0031】
タンク周壁の径方向において、内周壁11と管状体12とが有する厚みの合計は、タンク肉厚Taである。タンク肉厚Taのなかで通路12Pよりも内側の厚みは、内側肉厚Tinである。タンク肉厚Taのなかで通路12Pよりも外側の厚みは、外側肉厚Toutである。内側肉厚Tinは、外側肉厚Tout以上であってもよいし、外側肉厚Toutよりも小さくてもよい。内側肉厚Tinと外側肉厚Toutとは、タンク周壁の内側と外側との間での熱の授受や、タンク周壁に求められる剛性に基づいて適宜設定される。
【0032】
貯蔵タンクが有する容積は、例えば、約20m以上約100m以下である。タンク周壁が有する高さと、タンク肉厚Taとの関係は、貯蔵タンクを構成する樹脂、貯蔵タンクが有する重量、貯蔵タンクが有する容積など、貯蔵タンクに求められる剛性に関わる各種のパラメータに基づいて適宜設計される。例えば、貯蔵タンクを形成する樹脂が高密度ポリエチレンであり、貯蔵タンクの内径が約3000mmであり、貯蔵タンクの高さが約3500mmであるとき、貯蔵タンクが有するタンク肉厚Taは32mmである。また、例えば、タンクの内径が約3000mmであり、タンクの高さが約5000mmであるとき、タンクが有するタンク肉厚Taは44mmである。また、例えば、タンクの内径が約3000mmであり、タンクの高さが約12500mmであるとき、タンクが有するタンク肉厚Taは114mmである。
【0033】
配管20は、錘台部20S、凹部21、および、フランジ部22を備える。タンク周壁の外側から内側に向けて、フランジ部22、凹部21、および、錘台部20Sが、この順に位置する。フランジ部22、凹部21、および、錘台部20Sの一部は、タンク周壁の外側に位置する。
【0034】
錘台部20Sは、タンク周壁の外側から内側に向けて先細る錘台筒状を有する。タンク周壁の外側から内側に向けた方向は、差し込み方向である。錘台部20Sが有する外表面の中心角である差し込み角度θ1は、例えば、8°以上16°以下である。差し込み角度θ1は、錘台部20Sが有する外表面を差し込み方向に延長した錘筒面の中心角である。差し込み角度θ1が8°以上である場合には、錘台部20Sの外周面と貫通孔43Aの内周面とを接触させやすい。差し込み角度θ1が16°以下である場合には、貫通孔43Aに配管20を差し込みやすい。
【0035】
フランジ部22は、他の配管部材や蓋体31などと接続される。凹部21は、フランジ部22と錘台部20Sとの間であって、タンク周壁の外側に位置する。配管20と他の配管などとは、例えば、ナット32とボルト33とによって締結される。ナット32は、凹部21に入り込む。凹部21は、ナット32とボルト33との締結作業を容易とする。
【0036】
配管20の外径は、配管外径Rである。錘台部20Sの配管外径Rは、差し込み方向において凹部21に近い部位ほど大きい。凹部21の配管外径Rは、凹部21のなかのフランジ部22側の端で最も小さく、錘台部20Sに近い部位ほど大きい。すなわち、凹部21は、フランジ部22と錘台部20Sとの間で縮径された部分である。こうした構造を有する凹部21は、例えば、ナット32とボルト33との締結時に工具と配管20とが干渉することを抑えて締結の作業を容易にすることができる。
【0037】
錘台部20Sは、差し込み方向での長さである錘台長さHAを有する。錘台長さHAは、タンク肉厚Taより長い。すなわち、錘台長さHAとタンク肉厚Taとの差分に相当する長さ分だけ、タンク周壁の内側にさらに差し込まれ得る長さを配管20が有する。タンク周壁の内側にさらに差し込まれ得る構造は、例えば、貫通孔43Aに配管20を差し込む製法において、配管20と貫通孔43Aとの間に隙間が空くことを抑制して、配管20と貫通孔43Aとの接合強度を向上する。
【0038】
配管20の外周面は、タンク周壁の外周面との間に、さらに肉盛り溶着により形成される肉盛り44を備える。肉盛り44は、配管20の外周面における周方向の全体にわたる環状を有する。肉盛り44の形状は、配管20の外周面などが有する面状とは異なり、配管20の外周面と、タンク周壁の外表面とを接合する1本の線状を有する。
【0039】
[貯蔵タンクの製造方法]
次に、図2図3、および、図4を参照して、貯蔵タンクの製造方法を説明する。貯蔵タンクの製造方法は、管状体を螺旋状に巻回して接合することによってタンク周壁を形成すること、前記タンク周壁、および、前記被接合部の少なくとも一方を切断することによって切断面を形成すること、および、被接合部が備える被接合面と前記タンク周壁が備える接合面とを加熱して前記被接合面と前記接合面とを溶着すること、を含む。
【0040】
タンク周壁を形成することでは、内周壁11と管状体12とが準備されて、内周壁11において加熱された外周面に、加熱された管状体12が巻回される。これによって、螺旋状に巻回された管状体12の接合体であるタンク周壁が形成される。
【0041】
切断面を形成することでは、ホールソーやドリルを用いたタンク周壁の削孔によって、タンク周壁の外側と内側とを繋ぐように、貫通孔43Aが形成される。これによって、貫通孔43Aの内周面である切断面が形成される。
【0042】
配管20の外周面と切断面とを溶着することでは、まず、配管20の錘台部20Sにおいて外周面が溶解するように、錘台部20Sの外周面が加熱される。また、貫通孔43Aの内周面が溶解するように、貫通孔43Aの内周面が加熱される。そして、錘台部20Sが貫通孔43Aに差し込まれて、錘台部20Sの外周面と貫通孔43Aの内周面とが、溶着によって接合される。なお、錘台部20Sの外周面は、接合面の一例である。
【0043】
図3は、貫通孔43Aに差し込まれる前の配管20の断面構造を示す。
図3が示すように、貫通孔43Aは、タンク周壁の径方向に延在する円形孔である。貫通孔43Aが有する内径は、錘台部20Sの外径における最小値よりも若干大きく、かつ、錘台部20Sの外径における最大値よりも十分に小さい。貫通孔43Aが有する内径は、例えば、錘台部20Sの外径における平均値よりも最小値寄りの大きさである。
【0044】
貫通孔43Aに差し込まれる前の配管20は、錘台部20Sの外周面として被溶着部42を有する。配管20が差し込まれる前の貫通孔43Aの内周面は、貫通孔43Aの内周面として溶着部41を有する。被溶着部42、および、溶着部41は、加熱される対象であって、配管20が貫通孔43Aに差し込まれたとき、被溶着部42と溶着部41とが合一した溶着痕40を形成する。
【0045】
タンク周壁と配管20との接合に際して、溶着部41、および、被溶着部42は、溶着温度まで昇温される。溶着温度は、例えば、220℃以上240℃以下に加熱される。溶着部41、および、被溶着部42を加熱するための熱源は、例えば、電気炉、ヒーター、電熱線などである。
【0046】
溶着部41の加熱時間は、周壁加熱時間である。周壁加熱時間は、例えば、下式を満たす。周壁加熱時間が、タンク肉厚Ta(mm)×1.5(秒)以上であれば、溶着部41を溶着温度まで十分に昇温できる。周壁加熱時間が、タンク肉厚Ta(mm)×3.0(秒)以下であれば、貫通孔43Aの周辺における形状を十分に保つことができる。好ましくは、Ta(mm)×2.0(秒)である。
【0047】
Ta(mm)×1.5(秒)≦周壁加熱時間≦Ta(mm)×3.0(秒)
被溶着部42の加熱時間は、配管加熱時間である。配管加熱時間は、例えば、下式を満たす。配管加熱時間が、タンク肉厚Ta(mm)×2+60(秒)以上であれば、被溶着部42を溶着温度まで十分に昇温できる。配管加熱時間が、タンク肉厚Ta(mm)×2+45(秒)以下であれば、配管20の形状を十分に保つことができる。好ましくは、Ta(mm)×2+45(秒)である。
【0048】
Ta(mm)×2+30(秒)≦配管加熱時間≦Ta(mm)×2+60(秒)
図4は、配管20が貫通孔43Aに差し込まれた直後の配管20の断面構造を示す。
図4が示すように、配管20は、例えば、タンク周壁の外側から押圧装置によって押圧されることによって、錘台部20Sの先端から貫通孔43Aに差し込まれる。このとき、配管20の錘台部20Sは、貫通孔43Aの開口を徐々に押し広げながら差し込み方向に進む。配管20の差し込みは、配管20の先端が内周壁11の内側に突き出るまで続けられる。そして、配管20の差し込みは、押圧装置から受ける押圧と、貫通孔43Aの内周面から受ける反力とがほぼ釣り合う位置で停止される。
【0049】
貫通孔43Aに差し込まれた配管20は、例えば、クランプやバイスによってタンク周壁に固定される。配管20とタンク周壁とが外部から固定されることによって、配管20とタンク周壁との接合強度が高められる。そして、溶着部41と被溶着部42とは、これらが合一した溶着痕40を形成する。
【0050】
なお、配管20とタンク周壁とを固定するための面圧、および、配管20とタンク周壁とを接合するための時間は、配管20とタンク周壁との間に、十分な接合強度が得られる範囲であって、かつ、配管20やタンク周壁の構造的な劣化が生じない範囲のなかから、適宜選択される。また、配管20の先端は、内周壁11の内周面と面一となるように、切削されてもよいし、貯蔵タンクの内部に残存してもよい。
【0051】
そして、溶着痕40が形成された後に、配管20の外周面とタンク周壁の外表面とを接合する肉盛り44が形成されてもよい。肉盛り44は、溶着痕40の外側端部を覆うよう形成される。肉盛り44による化粧溶着によって、配管20の外周面と貫通孔43Aの内周との間からはみ出る溶着痕40を覆い、配管20の外周面における見栄えを向上させることが可能ともなる。また、配管20の外周面と、タンク周壁の外表面との接合強度を、さらに向上させることが可能ともなる。
【0052】
以上、上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)貫通孔43Aの内周面と錘台部20Sの外周面とが溶着によって接合されている。すなわち、タンク周壁と配管20とが面状に接合されている。そのため、肉盛りのような線状の接合と比べて、タンク周壁と配管20との接合面積が広げられて、貯蔵タンクの耐久性が向上する。
【0053】
(2)貫通孔43Aが円形孔であって、かつ、錘台部20Sの差し込み角度θ1が8°以上16°以下である場合、配管20を貫通孔43Aに差し込むことによって、これらの接合が可能であって、かつ、配管20を貫通孔43Aに差し込むことが容易でもある。
【0054】
(3)配管20を貫通孔43Aに差し込むことによって、溶着部41と被溶着部42とが流動するため、貫通孔43Aと配管20との間に隙間が生じることが抑制される。
(4)貫通孔43Aの開口が配管20によって押し広げられる限度において、配管20の差し込みが停止するため、配管20の差し込みが過剰になることに起因して配管20やタンク周壁が変形することが抑制される。
【0055】
(5)配管20の先端を内周壁11の内側まで差し込む方法であれば、貫通孔43Aの内周面の全体と、錘台部20Sの外周面とが接合される。すなわち、配管20とタンク周壁との接合面積が最大となる。そのため、上記(1)から(3)に準じた効果を得ることの実効性を高めることが可能となる。
【0056】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。
[変更例1:配管]
・凹部21の配管外径Rは、差し込み方向において一定であってもよい。
【0057】
例えば、図5が示すように、凹部21の配管外径Rは、貫通孔43Aの開口径とほぼ等しく、フランジ部22から錘台部20Sまで一定である。本変更例によれば、配管20と他の配管との締結に際して、工具と配管20とが干渉することを、さらに抑えられる。
【0058】
・配管20に位置する凹部21の配管外径Rは、差し込み方向においてフランジ部22に近い部位ほど大きくてもよい。
・配管20は、差し込み方向において一定の配管外径を有する直管状に変更可能である。この変更例においても、上記(1)に準じた効果は得られる。なお、配管20が錘台部20Sを備える構成であれば、上記(2)(3)(4)に準じた効果が得られる。
【0059】
[変更例2:切断面]
・貫通孔43Aの内周面は、切断面の一例であって、通路12Pの途中に開口を形成する面であってもよい。
【0060】
例えば、図6が示すように、貫通孔43Aの内周面は、通路12Pの断面を半円状に区画するように、通路12Pの一部を貫通孔43Aの内側に向けて開口している。通路12Pのなかで、貫通孔43Aの上方や、貫通孔43Aの下方に位置する部分の断面積は、貫通孔43Aの形成によって縮小されている。
【0061】
配管20の外周面は、通路12Pに形成された開口を塞いでいる。すなわち、通路12Pのなかで、断面が半円状を有する通路12Pは、流路の抵抗を高める一方で、配管20によって開口を塞がれて、通路12Pにおける全体での気密性を保っている。
【0062】
[変更例3:被接合部]
・被接合部は、配管20に限らず、貯蔵タンクが備える閉塞板に変更可能である。閉塞板は、タンク周壁の底面43B2に接合される底板、および、タンク周壁の天面43B1に接合される天板の少なくとも一方である。タンク周壁において、閉塞板の接合される面は、切断面、および、対象面である。閉塞板において、タンク周壁の接合される面は、接合面である。
【0063】
図7は、閉塞板を底板とした貯蔵タンクの製造方法の工程図を示す。本変更例における貯蔵タンクの製造方法は、タンク周壁を形成すること、タンク周壁に切断面を形成すること、および、底板の上面と切断面とを溶着することを含む。切断面を形成することでは、タンク周壁の底面を平坦面とするように、タンク周壁の中心軸と直交する面に沿って、巻回された管状体12を切断する。切断によって形成された底面は、管状体12の通路12Pを底面に開口させる。
【0064】
図7が示すように、底板50の上面は、被溶着部42を備える。被溶着部42は、タンク周壁の内径と等しい内径を有した円環状を有する。被溶着部42と切断面であるタンク周壁の底面とを溶着することでは、まず、底板50の被溶着部42を加熱し、また、タンク周壁の底面を加熱する。そして、底板50の被溶着部42とタンク周壁の底面とを重ね合わせて、底板50とタンク周壁とを溶着する。この際、底板50の被溶着部42とタンク周壁の底面とを重ねるように面圧を加えながら、底板50とタンク周壁とを固定し、底板50の被溶着部42とタンク周壁の底面とから溶着痕40を形成する。
【0065】
なお、底板50とタンク周壁とを固定するための面圧、および、配管20とタンク周壁とを固定する時間は、配管20とタンク周壁との間に、十分な接合強度が得られる範囲であって、かつ、底板50やタンク周壁の構造的な劣化が生じない範囲のなかから、適宜選択される。底板50とタンク周壁とを固定するための面圧は、底板50とタンク周壁との間の接合強度が得られる観点において、0.1MPa以上0.3MPa以下が好ましい。
【0066】
・変更例3において、被溶着部42の内径は、タンク周壁の内径よりも小さくてもよく、被溶着部42の外径は、タンク周壁の外径よりも大きくてもよい。すなわち、被溶着部42の範囲は、底板50の上面にタンク周壁が載置された状態で、タンク周壁の底面よりも大きい範囲であってもよい。この構成によれば、タンク周壁の底面と被溶着部42との位置の整合が容易ともなる。
【0067】
・変更例3において、底板や天板のなかで、タンク周壁の外側にはみ出す部分は、閉塞板とタンク周壁との接合後に、閉塞板から切断されてもよい。
・変更例3において、閉塞板の形状は、平板状に限らず、椀状などの曲板状を有してもよい。要は、閉形状は、タンク周壁の開口を閉塞する形状であればよい。
【0068】
[変更例4:天板]
貯蔵タンクが備える天壁は、平板状に限らず、錘状に変更可能である。
図8が示すように、錘状の天板51は、扇形状の板部材から形成可能である。扇形状の板部材は、例えば、板状部材から切り出される。扇形状の板部材における外周端面43Cは、切り出しによって形成される切断面である。扇形状の板部材において、円弧に接続される2つの辺45は、天板51において相互に接合される。2つの辺45の接合は、熱溶着であってもよいし、肉盛り溶接であってもよい。天板51は、扇形状の板部材における中心51aを頂点として、2つの辺45が相互に接合することによって、錘状に形成される。扇形状の板部材における外周端面43Cは、切断面であって、錘状の天板51における外周端面を構成する。なお、扇形状の板部材における中心角は、天板51の鉛直断面における錘体中心角度θ2を定める。
【0069】
図9が示すように、天板51とタンク周壁との接合に際しては、まず、錘状の天板51における外周端面である被溶着部42と、内周壁11の一部である溶着部41とが加熱される。次に、天板51の被溶着部42と、内周壁11の一部である溶着部41とが重ね合わせられた状態で、これらの間に面圧が加えられる。これによって、天板51がタンク周壁に固定される。そして、天板51の被溶着部42と、タンク周壁の溶着部41とが合一し、溶着痕40が形成される。
【0070】
なお、錘状の天板51は、錘状を扇形状に戻すような残留応力を有する。すなわち、錘状の天板51は、被溶着部42を径方向の外側に向けて広げるような残留応力を有する。こうした残留応力は、天板51が平板状である構成と比べて、被溶着部42と溶着部41との接合強度を高める。天板51が有する残留応力は、天板51の錘体中心角度θ2によって調整可能である。
【0071】
また、内周壁11の内周面は、天板51の位置決めをする突起16を備えてもよい。突起16は、内周壁11から内側に向けて突出し、天板51を下方から支持する。突起16は、タンク周壁の上方から内周壁11の内側に下げられる天板51と当接し、それによって、高さ方向での天板51の位置を定める。また、突起16は、タンク周壁の上部から天板51が下がることを抑制する。突起16によって天板51の位置が定められることで、天板51と溶着する溶着部41の位置決めも容易となる。
【0072】
・突起16は、タンク周壁の周方向の全体にわたり設けられてもよいし、タンク周壁の周方向に点在する数ケ所に設けられてもよい。突起16がタンク周壁の周方向の全体にわたり設けられる場合は、天板51を支持する強度を高めることが可能ともなる。突起16がタンク周壁の周方向に点在する場合は、突起16の設置が簡便となり、突起16を形成するための材料の消費量を抑えることが可能となる。
【0073】
・外周端面43Cは、タンク周壁の内周面とほぼ平行な円筒面であってもよい。天板51の端部の切断によって、外周端面43Cとタンク周壁の内周面とがほぼ平行である場合、溶着部41と被溶着部42との接合面積を確保することが容易であって、接合強度の向上を図ることが可能でもある。
【0074】
[変更例5:天板における配管の溶着]
・天板51は、例えば、貯蔵タンクを点検するための点検部や天板配管17を備えてもよい。点検部として機能する天板配管17は、貯蔵タンクの内部を視認可能に構成される。天面ノズルとして機能する天板配管17は、貯蔵タンクの内部に内容物を充填可能に構成される。なお、貯蔵タンクは、作業員が天板51に登るための梯子を有していてもよい。
【0075】
図10に示されるように、天板配管17は、天板51に形成された貫通孔の内周面と接合されている。天板51の貫通孔は、天板51を削孔することによって形成される。配管20と同様に、天板配管17を天板51と接合する際は、例えば、天板配管17が天板の貫通孔に差し込まれた後に、天板配管17の外周面と天板の貫通孔の内周面との溶着が行われる。天板配管17と天板51とは、溶着による溶着痕40を備える。
【0076】
・天板配管17は、天板の外側から内側に向けて先細る錘台筒状を先端に有していてもよい。天板の外側から内側に向けた方向は、差し込み方向である。天板配管17が有する錘台筒状の外表面を差し込み方向へ延長した錘筒面の中心角である天板差し込み角度θ3は、例えば、8°以上16°以下である。天板差し込み角度θ3が8°以上である場合には、天板配管17の外周面と天板51貫通孔の内周面とを接触させやすい。天板差し込み角度θ3が16°以下である場合には、天板51貫通孔に天板配管17を差し込みやすい。
【0077】
[変更例6:気密状態の検査1]
・貯蔵タンクの製造方法は、接合面と切断面とを溶着した後に、通路12Pに媒体を流して、管状体12の内部で気密が保たれていることを検査すること、をさらに含めてもよい。管状体12の内部で気密が保たれていることは、管状体12内の圧力や、媒体が流れているときの管状体12の温度や、通路12Pに流れている媒体の温度などに基づいて判断される。管状体12の気密状態の検査は、検査部によって行われる。
【0078】
検査部は、第1検査部15A1、15B1と第2検査部15A2、15B2とを含む。管状体12の通路12Pは、配管20によって、第1管状部12Aの通路12Pと、第2管状部12Bの通路12Pと、に分割され得る。管状体12の通路12Pが配管20によって分割される場合、第1管状部12Aの気密状態を検査する検査部は、上部検査部15A1、15A2である。また、第2管状部12Bの気密状態を検査する検査部は、下部検査部15B1、15B2である。第1検査部15A1、15B1は、導出部13A1、13A2であってもよいし、第2検査部15A2、15B2は、導入部13B1、13B2であってもよい。
【0079】
図11は、通路12Pを構成する複数の線分が貫通孔43Aを横切る構成において、貫通孔43Aの内周面と通路12Pとの相対位置の一例を示す断面図である。
図11が示すように、貫通孔43Aの内周面には、通路12Pに通じる複数の開口12Hが位置する。複数の開口12Hのうち、貫通孔43Aの中心よりも上方に位置する1つの開口12Hは、第2検査部15A2に接続された第1管状部12Aの流入端12H1である。複数の開口12Hのうち、貫通孔43Aの中心よりも下方に位置する1つの開口12Hは、第1検査部15B1に接続された第2管状部12Bの流出端12H2である。
【0080】
各開口12Hは、貫通孔43Aの内周面と配管20の外周面との接合によって、配管20の外周面により閉塞されている。各開口12Hが閉塞されることによって、管状体12内部の気密は保たれている。
【0081】
気密状態の検査の一例として、まず、管状体12内の圧力を測定する例を説明する。次いで、管状体12の温度を測定する例を説明する。
管状体12内の圧力を測定する例では、検査に用いる媒体が貯蔵タンクの内部に漏れ出た際のメンテナンスが容易である観点から、媒体として空気などの気体を用いることが好ましい。以下、媒体が気体である場合について説明する。
【0082】
管状体12の外周面と貫通孔43Aの内周面との間に隙間が生じていない場合、気密状態を検査するための気体を第2検査部15A2、15B2から第1検査部15A1、15B1に流すと、流出端から流入端への移動はなく、第1管状部12A、および、第2管状部12Bはそれぞれ独立した内部の気密状態、および、内圧を保っている。
【0083】
一方、管状体12の外周面と貫通孔43Aの内周面との間に隙間が生じる場合には、第1検査部15B1に通じる通路12Pと、第2検査部15A2に通じる通路12Pとが連通し得る。つまり、流入端12H1と流出端12H2との間で気体の漏れが生じる。そのため、第1管状部12Aと第2管状部12Bとが連通することで、独立した内部の気密状態、および、内圧が保たれなくなる。
【0084】
このように、管状体12の内部で気密が保たれていることは、管状体12内の圧力に基づいて判断される。すなわち、配管20とタンク周壁との接合の度合いは、管状体12内の圧力に基づいて判断され得る。
【0085】
すなわち、貫通孔43Aの内周面と配管20の外周面との間に隙間が生じる場合、その隙間を通じて、1つの開口12Hと別の開口12Hとが通じてしまう。例えば、流入端12H1と流出端12H2とが通じてしまい、第1管状部12Aと第2管状部12Bとの間において気体の漏れが生じ得る。そして、管状体12の内部で気密が保たれているならば圧力が保たれるはずの部位で、変圧が認められるようになる。
【0086】
なお、気密状態の検査を目的とした気体は、第2検査部15A2、15B2から気体を圧送する加圧ポンプによって供給される。この際、加圧ポンプが供給する圧力は、検査の精度が得られ、かつ、取り扱いが容易である観点から、0.01MPa以上0.1MPa以下であることが好ましい。
【0087】
また、管状体12内の圧力は、検査を行うための負荷を軽減できる観点から、第1検査部15A1、15B1において測定されることが好ましい。この際、第1検査部15A1、15B1は、例えば、圧力計であり、管状体12内の圧力を測定する。なお、検査部は、検査後に塞いでもよいし、コックを取り付けることで再度使用できるようにしてもよい。
【0088】
[変更例7:気密状態の検査方法2]
次に、気密状態を検査する一例として、管状体12の温度を測定する例について説明する。管状体12内の温度を測定する例では、検査の精度が高められる観点から、媒体として水などの液体を用いることが好ましい。以下、媒体が液体である場合について説明する。
【0089】
なお、検査を目的とした媒体は、第2検査部15A2、15B2から供給してもよいし、導入部13B1、13B2から供給してもよい。媒体の温度は、第1検査部15A1、15B1で測定されてもよいし、第2検査部15A2、15B2で測定されてもよい。また、媒体の温度は、管状体12の表面温度から推定されてもよい。
【0090】
上述したように、管状体12の外周面と貫通孔43Aの内周面との間に隙間が生じていない場合、内容物の冷却を目的とした液体を導入部13B1から導出部13A1に流すと、導入部13B1から管状体12に向けて流し込まれる液体の温度は、導出部13A1から流れ出る液体の温度よりも低い。
【0091】
一方、管状体12の外周面と貫通孔43Aの内周面との間に隙間が生じる場合には、導入部13B1に通じる通路12Pと、導出部13A2に通じる通路12Pとが連通し得る。そして、導出部13A2に到達した比較的に高い温度の液体が、導入部13B1から管状体12に向けて流し込まれる液体と混ざる。
【0092】
このように、管状体12の内部で気密が保たれていることは、導入部13B1と導出部13A2との近傍での液体の温度に基づいて判断される。すなわち、配管20とタンク周壁との接合の度合いは、導入部13B1と導出部13A2との近傍での液体の温度に基づいて判断され得る。
【0093】
各開口12Hは、貫通孔43Aの内周面と配管20の外周面との接合によって、配管20の外周面によって閉塞されている。管状体12の内部で気密が保たれている。
内容物の冷却を目的とした液体を導入部13B1、13B2から導出部13A1、13A2に流すとき、流入端12H1に位置する液体の温度は相対的に低く、流出端12H2に位置する液体の温度は相対的に高くなる。
【0094】
ここで、貫通孔43Aの内周面と配管20の外周面との間に隙間が生じる場合、その隙間を通じて、1つの開口12Hと別の開口12Hとが通じてしまう。例えば、流入端12H1と流出端12H2とが通じてしまい、流入端12H1の近傍では、相対的に低い温度の液体と相対的に高い温度の液体とが混ざってしまう。そして、管状体12の内部で気密が保たれているならば温度が低いはずの流入端12H1の近傍で、昇温が認められるようになる。あるいは、流入端12H1や流出端12H2と他の開口12Hとが通じてしまい、液体が入り得ないはずの通路12Pに液体が流れ込んでしまう。そして、管状体12の内部で気密が保たれているならば温度が保たれるはずの部位で、変温が認められるようになる。
【0095】
・被接合部とタンク周壁との接合は、溶着棒による線状の肉盛りによってタンク周壁の外周面や内周面と接合されることをさらに備えてもよい。
・通路12Pは、断面円形状でなくともよい。例えば、断面矩形状であってもよいし、断面楕円状であってもよい。例えば、断面矩形状である通路12Pは、通路12Pが断面円形である場合と比べ、内側肉厚Tinが最短である領域を増やすことが可能である。そのため、断面矩形状である通路12Pは、管状体12による温調効果を向上させることが可能ともなる。
【0096】
・冷却を目的とした媒体を管状体12内で循環させた状態において、管状体12内の温度を測定することが可能である。すなわち、管状体12内の気密状態の検査を常時実施することが可能であり、気密状態の不備を早く検知することができる。
【符号の説明】
【0097】
11…タンク周壁、12…管状体、12A…第1管状部、12B…第2管状部、12H…開口、12P…通路、13A1…第1導出部、13A2…第2導出部、13B1…第1導入部、13B2…第2導入部、14A…第1循環装置、14B…第2循環装置、16…突起、20…配管、20S…錘台部、21…凹部、22…フランジ、31…蓋体、32…ナット、33…ボルト、40…溶着痕、41…溶着部、42…被溶着部、43A…貫通孔、43B1…天面、43B2…底面、44…肉盛り、50…底板、51…天板。
図1
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図11