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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】テンター装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/04 20060101AFI20220524BHJP
   B29C 55/20 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
B29C55/04
B29C55/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019186192
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021059101
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390002015
【氏名又は名称】ヒラノ技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】田中 敦士
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-264647(JP,A)
【文献】特開2020-163762(JP,A)
【文献】特開平4-41354(JP,A)
【文献】特開昭59-136226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/00-55/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のテンターチェーンの間に、左右一対の支持部材でフィルムを支持して左右対称に延伸させるテンター装置において、
左側の前記支持部材を有した左側の前記テンターチェーンは、左側の駆動スプロケットと従動スプロケットの間に掛け渡され、
右側の前記支持部材を有した右側の前記テンターチェーンは、右側の駆動スプロケットと従動スプロケットの間に掛け渡され、
左右一対の前記駆動スプロケットは、回動自在に、かつ、前後方向に移動できないように固定され、
左側の前記従動スプロケットは、回動自在に、かつ、左エアーシリンダによって前後方向に移動可能に取り付けられ、
左側の前記テンターチェーンの延び縮みの長さに対応した左側の前記従動スプロケットの前後方向の移動距離を測定する磁歪式直線変位センサーよりなる左センサが設けられ、
右側の前記従動スプロケットは、回動自在に、かつ、右エアーシリンダによって前後方向に移動可能に取り付けられ、
右側の前記テンターチェーンの延び縮みの長さに対応した右側の前記従動スプロケットの前後方向の移動距離を測定する磁歪式直線変位センサーよりなる右センサが設けられ、
左右一対の前記支持部材の位置を左右対称に位置させる制御部を有し、
前記制御部は、
左電空レギュレータを用いて前記左エアーシリンダを制御し、かつ、右電空レギュレータを用いて前記右エアーシリンダを制御し、
(1)前記左センサが検出した左側の前記従動スプロケットの位置が、基準位置範囲内のときは、左側の前記従動スプロケットを前記左エアーシリンダによって基準圧力で押圧し、
(2)前記右センサが検出した右側の前記従動スプロケットの位置が、前記基準位置範囲内のときは、右側の前記従動スプロケットを前記右エアーシリンダによって前記基準圧力で押圧し、
(3)左側の前記テンターチェーンが縮んで前記左センサが検出した左側の前記従動スプロケットの位置が、前記基準位置範囲外のときは、左側の前記従動スプロケットを前記左エアーシリンダによって押圧する圧力を前記基準圧力より高い最大圧力とし、
(4)右側の前記テンターチェーンが縮んで前記右センサが検出した右側の前記従動スプロケットの位置が、前記基準位置範囲外のときは、右側の前記従動スプロケットを前記右エアーシリンダによって押圧する圧力を前記最大圧力とし、
(5)左側の前記テンターチェーンが延びて前記左センサが検出した左側の前記従動スプロケットの位置が、前記基準位置範囲外のときは、左側の前記従動スプロケットを前記左エアーシリンダによって押圧する圧力を前記基準圧力より低い最小圧力とし、
(6)右側の前記テンターチェーンが延びて前記右センサが検出した右側の前記従動スプロケットの位置が、前記基準位置範囲外のときは、右側の前記従動スプロケットを前記右エアーシリンダによって押圧する圧力を前記最小圧力とする、
テンター装置。
【請求項2】
前記フィルムが、光学系フィルム、二次電池系フィルム、又は、太陽電池系フィルムである、
請求項1に記載のテンター装置。
【請求項3】
前記フィルムが、位相差フィルムであり、
前記位相差フィルムを幅方向に延伸させることにより、所定のレターデーション及び光軸方向に製造する、
請求項1に記載のテンター装置。
【請求項4】
前記支持部材は、クリップ、又は、ピンである、
請求項1に記載のテンター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムを左右対称に幅方向に延伸させるテンター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィルムを左右対称に延伸させるためにテンター装置が使用されている。しかし、左右一対のテンターチェーンの間にフィルムを拡布状態で張設し、走行させていると、一方のテンターチェーンが延びたり摩耗すると、左右対称の位置にあるクリップやピンの位置がずれて、フィルムを左右対称に延伸できなくなる。
【0003】
そこで従来より、左右対称のクリップやピンの位置が左右対称になるように、左右一対の従動スプロケットの位置を調整できるテンター装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5230523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記テンター装置において、左右一対の従動スプロケットの位置を調整する方法は複雑であるという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は上記問題点に鑑みて、フィルムを支持する左右対称の支持部材の位置が左右対称の位置になるように制御できるテンター装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、左右一対のテンターチェーンの間に、左右一対の支持部材でフィルムを支持して左右対称に延伸させるテンター装置において、左側の前記支持部材を有した左側の前記テンターチェーンは、左側の駆動スプロケットと従動スプロケットの間に掛け渡され、右側の前記支持部材を有した右側の前記テンターチェーンは、右側の駆動スプロケットと従動スプロケットの間に掛け渡され、左右一対の前記駆動スプロケットは、回動自在に、かつ、前後方向に移動できないように固定され、左側の前記従動スプロケットは、回動自在に、かつ、左エアーシリンダによって前後方向に移動可能に取り付けられ、左側の前記テンターチェーンの延び縮みの長さに対応した左側の前記従動スプロケットの前後方向の移動距離を測定する磁歪式直線変位センサーよりなる左センサが設けられ、右側の前記従動スプロケットは、回動自在に、かつ、右エアーシリンダによって前後方向に移動可能に取り付けられ、右側の前記テンターチェーンの延び縮みの長さに対応した右側の前記従動スプロケットの前後方向の移動距離を測定する磁歪式直線変位センサーよりなる右センサが設けられ、左右一対の前記支持部材の位置を左右対称に位置させる制御部を有し、前記制御部は、左電空レギュレータを用いて前記左エアーシリンダを制御し、かつ、右電空レギュレータを用いて前記右エアーシリンダを制御し、(1)前記左センサが検出した左側の前記従動スプロケットの位置が、基準位置範囲内のときは、左側の前記従動スプロケットを前記左エアーシリンダによって基準圧力で押圧し、(2)前記右センサが検出した右側の前記従動スプロケットの位置が、前記基準位置範囲内のときは、右側の前記従動スプロケットを前記右エアーシリンダによって前記基準圧力で押圧し、(3)左側の前記テンターチェーンが縮んで前記左センサが検出した左側の前記従動スプロケットの位置が、前記基準位置範囲外のときは、左側の前記従動スプロケットを前記左エアーシリンダによって押圧する圧力を前記基準圧力より高い最大圧力とし、(4)右側の前記テンターチェーンが縮んで前記右センサが検出した右側の前記従動スプロケットの位置が、前記基準位置範囲外のときは、右側の前記従動スプロケットを前記右エアーシリンダによって押圧する圧力を前記最大圧力とし、(5)左側の前記テンターチェーンが延びて前記左センサが検出した左側の前記従動スプロケットの位置が、前記基準位置範囲外のときは、左側の前記従動スプロケットを前記左エアーシリンダによって押圧する圧力を前記基準圧力より低い最小圧力とし、(6)右側の前記テンターチェーンが延びて前記右センサが検出した右側の前記従動スプロケットの位置が、前記基準位置範囲外のときは、右側の前記従動スプロケットを前記右エアーシリンダによって押圧する圧力を前記最小圧力とする、テンター装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、左右一対のテンターチェーンの延びた長さがそれぞれ基準長さ範囲内に収まるため、左右一対の支持部材が左右対称の位置にあるため、拡布されたフィルムの左右にずれが生じることがなく、左右対称に延伸できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態のテンター装置の平面図である。
図2】本実施形態のテンター装置の側部から見た要部拡大図である。
図3】本実施形態のテンター装置のブロック図である。
図4】テンター装置の第1~第3制御方法を示す図である。
図5】テンター装置の第4~第6制御方法を示す図である。
図6】テンター装置の第7~第9制御方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態のテンター装置10について図1図6に基づいて説明する。本実施形態のテンター装置10は、例えば、光学系フィルム、二次電池系フィルム、又は、太陽電池系フィルムなどの熱可塑性樹脂のフィルムFを左右対称に延伸して熱処理するものである。なお、本明細書において、「前後方向」とは、テンター装置10におけるフィルムFの搬入口側から搬出口側に向かう走行方向を意味し、「左右方向」とはフィルムFの幅方向を意味する。
【0011】
(1)テンター装置10
テンター装置10について図1及び図2に基づいて説明する。テンター装置10は、フィルムFを左右対称に延伸するものであり、左右一対のテンターチェーン12,14を有している。左テンターチェーン12は、左従動スプロケット16と左駆動スプロケット18に掛け渡された無端チェーンであり、右テンターチェーン14は、右従動スプロケット20と右駆動スプロケット22との間に掛け渡された無端チェーンである。左従動スプロケット16と右従動スプロケット20は、フィルムFの搬入口側に配され、左駆動スプロケット18と右駆動スプロケット22はフィルムFの搬出口側に配されている。
【0012】
このテンター装置10は、クリップテンター装置であり、左右一対のテンターチェーン12,14には、所定間隔毎にクリップ60がそれぞれ設けられ、各クリップ60は、フィルムFの左右両側部(両耳部)を挟持しながら、左右一対のテンターレール24,26に沿って移動する。この場合にフィルムFを左右対称に延伸するために、左右一対のクリップ60,60は、左右対称の位置を移動する。
【0013】
左テンターレール24と右テンターレール26はテンター台28の上に設置されている。搬出口側にある左駆動スプロケット18と右駆動スプロケット22は、前後方向に移動しないようにテンター台28の上に固定されている。左駆動スプロケット18は左モータ52によって回転し、右駆動スプロケット22は右モータ54によって回転する。
【0014】
左右一対のテンターチェーン12,14の間隔は、搬入口から搬出口に向かって拡がるように設置され、この拡がりによってフィルムFを左右対称に延伸させる。
【0015】
テンター装置10によって搬送されるフィルムFを加熱処理するための熱処理室30が、テンター装置10の経路上に設けられている。この熱処理室30内部を左右一対のテンターチェーン12,14が走行し、フィルムFの走行路の上下に不図示のノズルが配され、フィルムFに対し熱風を噴射して熱処理して左右対称に拡げる。
【0016】
(2)左従動スプロケット16、右従動スプロケット20
左従動スプロケット16、右従動スプロケット20について図1図2を参照して説明する。
【0017】
左テンターチェーン12を移動させるための左従動スプロケット16は、左スライド部32の上に回動自在に取り付けられている。この左スライド部32は、テンター台28に設けられたレール62に沿って前後方向に移動自在に配され、左エアーシリンダ34によって前側(搬入口側)に押圧されている。この左エアーシリンダ34の押圧力によって、左テンターチェーン12は、一定の張力を保持して、左駆動スプロケット18と掛け渡されている。左エアーシリンダ34の押圧力は、左電空レギュレータ56によって調整される。
【0018】
右テンターチェーン14を移動させるための右従動スプロケット20は、右スライド部36の上に回動自在に取り付けられている。この右スライド部36は、テンター台28に設けられたレール62に沿って前後方向に移動自在に配され、右エアーシリンダ38によって前側(搬入口側)に押圧されている。この右エアーシリンダ38によって、右テンターチェーン14は、一定の張力を保持して、右駆動スプロケット22と掛け渡されている。右エアーシリンダ38の押圧力は、右電空レギュレータ58によって調整される。
【0019】
左従動スプロケット16には、磁歪式直線変位センサよりなる左センサ40が設けられている。磁歪式直線変位センサーとは、磁歪効果(ウィーデマン効果)を利用して磁歪棒の周囲にある検出用マグネットの位置を検出するセンサである。テンター台28に設けられたセンサ本体44から磁歪棒46が水平に突出し、左スライド部32の底面から検出用マグネット48が突出している。そして、左テンターチェーン12が熱処理室30の熱などによって延びると、左従動スプロケット16が取り付けられた左スライド部32の検出用マグネット48が、磁歪棒46の周囲を直線状に移動し、左テンターチェーン12の延びた長さを測定できる。
【0020】
また、右テンターチェーン14側にも同様に、磁歪式直線変位センサよりなる右センサ42が設けられ、右テンターチェーン14の延びた長さを測定できる。
【0021】
(3)テンター装置10の電気的構成
テンター装置10の電気的構成について図3のブロック図を参照して説明する。
【0022】
コンピュータよりなる制御部50には、左駆動スプロケット18及び右駆動スプロケット22を駆動させる左モータ52、右モータ54が接続されている。また、制御部50には、左エアーシリンダ34を動作させる左電空レギュレータ56、右エアーシリンダ38を動作させる右電空レギュレータ58、左センサ40、右センサ42が接続されている。
【0023】
(4)テンター装置10の動作状態
テンター装置10の動作状態について説明する。熱処理室30内部のノズルから熱風を吹き出し、熱処理室30内部を150℃~190℃に設定する。左右一対のテンターチェーン12,14の間に、左右一対のクリップ60,60によってフィルムFを左右対称に拡布し、左モータ52と右モータ54によって左駆動スプロケット18と右駆動スプロケット22を駆動し、フィルムFを30~60m/分で前後方向に走行させる。これによって、フィルムFが熱処理されて幅方向に左右対称に延伸し、目的のフィルムFが製造できる。
【0024】
しかし、製造を行なっていると、熱処理室30の熱などによって左テンターチェーン12又は右テンターチェーン14の長さが延びたり摩耗すると、左右一対のクリップ60,60の位置が左右対称の位置からずれてくる。左右対称の位置からずれてくるとフィルムFが、左右対称に延伸されず不良品となる。そこで、制御部50は、左センサ40と右センサ42の検出結果に基づいて左右一対のクリップ60,60の位置が左右対称の位置になるように、次の第1制御方法から第9制御方法の中の一つの制御方法を所定時間毎(例えば、1秒毎)に行う。これら第1制御方法から第9制御方法について図4図6の各段を参照して説明する。
【0025】
なお、図4図6の各段の左側が左従動スプロケット16の位置と、左エアーシリンダ34の押圧力を示し、中央部分は右従動スプロケット20の位置と右エアーシリンダ38の押圧力を示し、右側の図面は左従動スプロケット16と右従動スプロケット20の位置関係を示したものであり、黒矢印は、フィルムFの搬入方向を示している。
【0026】
また、「基準位置」とは、左右一対のクリップ60,60が搬入口から搬出口において全て左右対称の位置にある左従動スプロケット16と右従動スプロケット20の位置をいい(図4図6では「Nor」で表示する)、「基準位置範囲」とは、その位置を多少誤差を含めて許容できる範囲という。
【0027】
(5)第1制御方法
第1制御方法について図4の上段の図面を参照して説明する。第1制御方法は、テンター装置10の基本の制御方法となるものである。
【0028】
この制御方法が実行される条件は、左センサ40が検出した左従動スプロケット16の位置は、基準位置範囲内にあり、右センサ42が検出した右従動スプロケット20の位置は、準位置範囲内にあるとする。この場合、左テンターチェーン12と右テンターチェーン14は伸びや摩耗が無く、左右一対のクリップ60,60は、搬入口から搬出口において全て左右対称の位置にある。
【0029】
このときには、左エアーシリンダ34の押圧力は基準押圧力(図4図6では「Nor」で表示する)で押圧し、右エアーシリンダ38の圧力は基準押圧力で押圧する。
【0030】
これによって、左右一対のクリップ60,60が左右対称の位置にあり、フィルムFを左右対称に延伸できる。
【0031】
(6)第2制御方法
次に、第2制御方法について図4の中段を参照して説明する。
【0032】
この制御方法が実行される条件は、右センサ42が検出した右従動スプロケット20の位置は、基準位置範囲内にあり、左センサ40が検出した左従動スプロケット16の位置は、左テンターチェーン12が縮み、基準位置範囲よりも搬出口側に移動した位置(以下、「短距離位置」といい、図4図6では「Min」で表示する)にあるとする。
【0033】
このときには、右エアーシリンダ38は、基準押圧力で右従動スプロケット20を押圧する。一方、左エアーシリンダ34は、基準押圧力よりも高い押圧力(以下、「高押圧力」といい、図4図6では「Max」で表示する)で左従動スプロケット16を押圧する。これによって縮んでいる左テンターチェーン12を引っ張る力が強まり、左テンターチェーン12が延びる。
【0034】
これによって、左従動スプロケット16と右従動スプロケット20の位置が基準位置範囲内になり、左右一対のクリップ60,60が左右対称の位置になり、フィルムFを左右対称に延伸できる。
【0035】
(7)第3制御方法
次に、第3制御方法について図4の下段に基づいて説明する。
【0036】
この制御方法が実行される条件は、右センサ42が検出した右従動スプロケット20の位置は、基準位置範囲内にあり、左従動スプロケット16の位置は、左テンターチェーン12が延びて、基準位置範囲よりも搬入口側に移動した位置(以下、「長距離位置」といい、図4図6では「Max」で表示する)にあるとする。
【0037】
このときには、右エアーシリンダ38は、基準押圧力で右従動スプロケット20を押圧する。一方、左エアーシリンダ34は、基準押圧力よりも低い押圧力(以下、「低押圧力」といい、図4図6では「Min」で表示する)で左従動スプロケット16を押圧する。左テンターチェーン12が延びている状態であるため、それを押している左エアーシリンダ34の押圧力を下げるので延びている状態が解消して縮み、基準位置範囲内に左従動スプロケット16の位置が移動する。
【0038】
これによって、左従動スプロケット16と右従動スプロケット20の位置が基準位置範囲内になり、左右一対のクリップ60,60は、左右対称の位置になり、フィルムFを左右対称に延伸できる。
【0039】
(8)第4制御方法
次に、第4制御方法について図5の上段を参照して説明する。
【0040】
この制御方法が実行される条件は、左センサ40が検出した左従動スプロケット16の位置は、基準位置範囲内にあり、右センサ42が検出した右従動スプロケット20の位置は、右テンターチェーン14が延びることにより、長距離位置にあるとする。
【0041】
このときには、左エアーシリンダ34は、基準押圧力で左従動スプロケット16を押圧する。一方、右エアーシリンダ38は、低押圧力で右従動スプロケット20を押圧する。右テンターチェーン14が延びている状態であるため、それを押している右テンターチェーン14の押圧力を下げるので延びている状態が解消して縮み、基準位置範囲内に右従動スプロケット20の位置が移動する。
【0042】
これによって、左従動スプロケット16と右従動スプロケット20の位置が基準位置範囲内になり、左右一対のクリップ60,60は、左右対称の位置になり、フィルムFを左右対称に延伸できる。
【0043】
(9)第5制御方法
次に、第5制御方法について図5の中段を参照して説明する。
【0044】
この制御方法が実行される条件は、右センサ42が検出した右従動スプロケット20の位置は、右テンターチェーン14が延びることにより長距離位置にあり、左センサ40が検出した左従動スプロケット16の位置は、左テンターチェーン12が縮むことにより短距離位置にあるとする。
【0045】
このときには、右エアーシリンダ38が、低押圧力で右従動スプロケット20を押圧して、右テンターチェーン14を縮ませる。一方、左エアーシリンダ34が、高押圧力で左従動スプロケット16を押圧して、左テンターチェーン12を延ばす。
【0046】
これによって、左従動スプロケット16と右従動スプロケット20の位置が基準位置範囲内になり、左右一対のクリップ60,60は、左右対称の位置になり、フィルムFを左右対称に延伸できる。
【0047】
(10)第6制御方法
第6制御方法について図5の下段を参照して説明する。
【0048】
この制御方法が実行される条件は、左センサ40と右センサ42が検出した左従動スプロケット16と右従動スプロケット20の位置は、左テンターチェーン12と右テンターチェーン14が両方共に延び、長距離位置にあるとする。
【0049】
このときには、左エアーシリンダ34と右エアーシリンダ38の押圧力を低押圧力にして、左テンターチェーン12と右テンターチェーン14を縮ませて、左従動スプロケット16と右従動スプロケット20を基準位置範囲内に移動させる。
【0050】
これによって、左従動スプロケット16と右従動スプロケット20の位置が基準位置範囲内になり、左右一対のクリップ60,60は、左右対称の位置になり、フィルムFを左右対称に延伸できる。
【0051】
(11)第7制御方法
次に、第7制御方法について図6の上段を参照して説明する。
【0052】
この制御方法が実行される条件は、右センサ42が検出した右従動スプロケット20の位置は、右テンターチェーン14が縮むことにより短距離位置にあり、左センサ40が検出した左従動スプロケット16の位置は、基準位置範囲内にあるとする。
【0053】
このときには、右エアーシリンダ38が、高押圧力で右従動スプロケット20を押圧し、右テンターチェーン14を延ばして右従動スプロケット20の位置を基準位置範囲内に移動させる。一方、左エアーシリンダ34は、基準押圧力で左従動スプロケット16を押圧する。
【0054】
これによって、左従動スプロケット16と右従動スプロケット20の位置が基準位置範囲内になり、左右一対のクリップ60,60は左右対称となる。
【0055】
(12)第8制御方法
次に、第8制御方法について図6の中段を参照して説明する。
【0056】
この制御方法が実行される条件は、左センサ40と右センサ42が検出した左従動スプロケット16と右従動スプロケット20の位置は、左テンターチェーン12と右テンターチェーン14が両方共に縮み、低距離位置にあるとする。
【0057】
このときには、左エアーシリンダ34と右エアーシリンダ38の押圧力を高押圧力とし、左テンターチェーン12と右テンターチェーン14を延ばす。
【0058】
これによって、左従動スプロケット16と右従動スプロケット20の位置が基準位置範囲内になり、左右一対のクリップ60,60は左右対称となる。
【0059】
(13)第9制御方法
次に、第9制御方法について図6の下段を参照して説明する。
【0060】
この制御方法が実行される条件は、右センサ42が検出した右従動スプロケット20の位置は、右テンターチェーン14が縮むことにより短距離位置にあり、左センサ40が検出した左従動スプロケット16の位置は、左テンターチェーン12が延びることにより長距離位置にあるとする。
【0061】
このときに、右エアーシリンダ38が、高押圧力で右従動スプロケット20を押圧して右テンターチェーン14を延ばす。一方、左エアーシリンダ34が、低押圧力で左従動スプロケット16を押圧し、左テンターチェーン12を縮ませる。
【0062】
これによって、左従動スプロケット16と右従動スプロケット20の位置が基準位置範囲内になり、左右一対のクリップ60,60は左右対称となる。
【0063】
(14)効果
本実施形態によれば、左テンターチェーン12が延びたり縮んだりしても、左従動スプロケット16の位置を基準位置範囲内に簡単に移動させることができる。また、右テンターチェーン14が延びたり縮んだりしても、右従動スプロケット20の位置を基準位置範囲内に簡単に移動させることができる。これによって、左右一対のクリップ60,60を常に左右対称の位置とすることができ、フィルムFを左右対称に延伸することができる。
【0064】
(15)変更例
上記実施形態では、クリップテンター装置で説明したが、これに代えてピンでフィルムFを固定するピンテンター装置であってもよい。
【0065】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
F・・・フィルム、10・・・テンター装置、12・・・左テンターチェーン、14・・・右テンターチェーン、16・・・左従動スプロケット、18・・・左駆動スプロケット、20・・・右従動スプロケット、22・・・右駆動スプロケット、24・・・左テンターレール、26・・・右テンターレール、28・・・テンター台、30・・・熱処理室、32・・・左スライド部、34・・・左エアーシリンダ、36・・・右スライド部、38・・・右エアーシリンダ、40・・・左センサ、42・・・右センサ、44・・・センサ本体、46・・・磁歪棒、48・・・検出用マグネット、50・・・制御部、52・・・左モータ、54・・・右モータ、56・・・左電空レギュレータ、58・・・右電空レギュレータ、60・・・クリップ、62・・・レール
図1
図2
図3
図4
図5
図6