IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノルスク・チタニウム・コンポーネンツ・アーエスの特許一覧

特許7078603立体自由形状造形法のための多室型堆積設備
<>
  • 特許-立体自由形状造形法のための多室型堆積設備 図1
  • 特許-立体自由形状造形法のための多室型堆積設備 図2
  • 特許-立体自由形状造形法のための多室型堆積設備 図3
  • 特許-立体自由形状造形法のための多室型堆積設備 図4
  • 特許-立体自由形状造形法のための多室型堆積設備 図5A
  • 特許-立体自由形状造形法のための多室型堆積設備 図5B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】立体自由形状造形法のための多室型堆積設備
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/04 20060101AFI20220524BHJP
   B23K 37/00 20060101ALI20220524BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220524BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220524BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20220524BHJP
【FI】
B23K9/04 Y
B23K37/00 A
B23K9/04 Z
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y40/00
B23K9/04 G
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019500573
(86)(22)【出願日】2017-03-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2017056388
(87)【国際公開番号】W WO2018007031
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-03-16
(31)【優先権主張番号】15/206,163
(32)【優先日】2016-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512037473
【氏名又は名称】ノルスク・チタニウム・アーエス
【氏名又は名称原語表記】NORSK TITANIUM AS
【住所又は居所原語表記】Flyplassveien 20, N-3514 Hoenefoss, Norway
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100195006
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勇蔵
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【弁理士】
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】フォルセト、トロン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィグダル、ブレデ
(72)【発明者】
【氏名】ラムスラン、アルネ
(72)【発明者】
【氏名】ステインヴィク、スヴェイン
(72)【発明者】
【氏名】ハウゲン、ヨルゲン
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-501627(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0069668(US,A1)
【文献】国際公開第2016/044837(WO,A1)
【文献】特開平07-058093(JP,A)
【文献】特開平06-132224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/04
B23K 37/00
B33Y 30/00
B33Y 10/00
B33Y 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体自由形状造形法のための室システムであって、
個別に制御される1つ又は複数の搬入/搬出室と、
個別に制御される堆積室であって、堆積機器と、母材の位置及び移動を制御するためのアクチュエータとを含む前記堆積室と、
前記堆積室を1つ又は複数の搬入/搬出室の各々と接続する1つ又は複数の扉と、
前記堆積室に接続された個別に制御されるサービス室であって、前記堆積機器を収納するような大きさとされるとともに、ワイヤ供給材を取り外さずに前記堆積機器が前記サービス室の内外に移動できるように前記堆積室、前記堆積機器、及び前記堆積機器への前記ワイヤ供給材と位置合わせされる、前記サービス室と
を備える、立体自由形状造形法のための室システム。
【請求項2】
前記1つ又は複数の搬入/搬出室の各々が、
前記搬入/搬出室へのアクセスを提供する1つ又は複数の扉と、
前記搬入/搬出室の内部に位置するコンベアと、
1つ又は複数の通気孔と
を更に備える、請求項1に記載の室システム。
【請求項3】
各搬入/搬出室が、
前記搬入/搬出室の上部分に位置する少なくとも1つ又は複数の通気孔と、
前記搬入/搬出室の底部分に位置する少なくとも1つ又は複数の通気孔と
を備え、
前記上部分に位置する前記1つ又は複数の通気孔が、真空ポンプと空気供給源とに動作可能に接続され、且つ
前記底部分に位置する前記1つ又は複数の通気孔が、真空ポンプと不活性ガス又は不活性ガス混合物の源とに動作可能に接続される、
請求項2に記載の室システム。
【請求項4】
2つの搬入/搬出室の間に共通の壁を備えた前記2つの搬入/搬出室を更に備え、各搬入/搬出室がまた前記堆積室と共通の壁も有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の室システム。
【請求項5】
前記堆積室が、前記堆積室の上部分に位置する1つ又は複数の通気孔と、前記堆積室の底部分に位置する1つ又は複数の通気孔とを更に備え、
前記上部分に位置する前記1つ又は複数の通気孔が、真空ポンプと空気供給源とに動作可能に接続され、
前記底部分に位置する前記1つ又は複数の通気孔が、真空ポンプと不活性ガス又は不活性ガス混合物の源とに動作可能に接続される、
請求項1~4のいずれか一項に記載の室システム。
【請求項6】
前記堆積室が1つ又は複数の視認ポータルを更に備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の室システム。
【請求項7】
前記堆積室が、ファンと熱交換器とを備える再循環システムを更に備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の室システム。
【請求項8】
前記サービス室が、前記サービス室の上部分における1つ又は複数の通気孔と、前記サービス室の底部分における1つ又は複数の通気孔とを更に備え、
前記上部分に位置する前記1つ又は複数の通気孔が、真空ポンプと空気供給源とに動作可能に接続され、
前記底部分に位置する前記1つ又は複数の通気孔が、真空ポンプと不活性ガス又は不活性ガス混合物の源とに動作可能に接続される、
請求項1~7のいずれか一項に記載の室システム。
【請求項9】
前記サービス室がアクセスポータルを更に備える、請求項7に記載の室システム。
【請求項10】
前記サービス室が1組の手袋を更に備える、請求項7に記載の室システム。
【請求項11】
立体自由形状造形法のための室システムを動作させる方法であって、
前記室システムの堆積室内の雰囲気を不活性雰囲気に個別に置き換えることと、
前記堆積室内の前記不活性雰囲気を維持しながら第1の保持基材を前記堆積室の内部に位置するアクチュエータ上に移送することと、
第1の加工物を形成するために前記堆積室内の堆積機器を使用して立体自由形状造形を行うことと、
前記堆積室内の前記不活性雰囲気を維持しながら前記第1の加工物を前記堆積室の外に移送することとを含み、
前記室システムが、前記堆積室と、1つ又は複数の搬入/搬出室と、サービス室とを備え、前記1つ又は複数の搬入/搬出室及び前記サービス室の各々が、1つ又は複数の個別の開口部を通して前記堆積室と連通し、
前記サービス室が、前記堆積機器を収納するような大きさとされるとともに、ワイヤ供給材を取り外すことを必要とせず前記堆積機器が前記サービス室の内外に移動できるように前記堆積室、前記堆積室内の堆積機器、及び前記堆積機器へのワイヤ供給材と位置合わせされる、
方法。
【請求項12】
前記堆積室の1つ又は複数、前記1つ又は複数の搬入/搬出室、及び前記サービス室が、前記1つ又は複数の開口部を密封するための1つ又は複数の扉を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記堆積室、前記1つ又は複数の搬入/搬出室、並びに前記サービス室の各々を個別に制御することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1つ又は複数のセンサを使用して前記堆積室、前記1つ又は複数の搬入/搬出室、並びに前記サービス室の各々における前記1つ又は複数の扉を監視することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
扉が適切に密閉されていないことを1つ又は複数のセンサが検出した場合に前記立体自由形状造形を停止することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の保持基材を第1の搬入/搬出室の内部に位置するコンベアに搬入することと、
前記第1の搬入/搬出室内の前記雰囲気を前記堆積室内と同じ不活性雰囲気に置き換えることと
前記アクチュエータ上への前記第1の保持基材の移送中及び立体自由形状造形中に前記第1の搬入/搬出室の内部の前記雰囲気を維持することと
を更に含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記堆積室内の前記不活性雰囲気を維持しながら第2の保持基材を第2の搬入/搬出室のコンベアに搬入することと、
前記第2の搬入/搬出室の前記雰囲気を前記堆積室内と同じ不活性雰囲気に置き換えることと
を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の加工物を前記堆積室の外に移送することが、
前記第1の搬入/搬出室内の前記不活性雰囲気を維持しながら前記加工物を前記第1の搬入/搬出室内に移送することと、
前記堆積室から前記第1の搬入/搬出室を密封することと、
前記第1の搬入/搬出室内の前記不活性雰囲気を周囲空気に置き換えることと、
前記加工物を前記第1の搬入/搬出室から搬出することと
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記堆積室から前記第1の搬入/搬出室を密封した後に、前記堆積室内の前記不活性雰囲気を維持しながら第2の保持基材を第2の搬入/搬出室から前記アクチュエータ上に移送することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体自由形状造形法により物体、特にチタン体及びチタン合金体を製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精密な寸法公差を有する金属部品は、チタン又はチタン合金で作製することができ、従来、ビレットから鋳造、鍛造又は機械加工することにより作製されている。これらの技法は、金属部品の造形において、長いリードタイム若しくは高価なチタン金属材料の多量の使用、又はこれらの両方を必要とする可能性がある。
【0003】
十分に稠密な物理的物体は、高速プロトタイピング、高速製造法、積層製造法、立体自由形状造形法(solid freeform fabrication:SFFF)、付加造形法、付加製造法、及び3D印刷として知られる製造技術により作製され得る。この技術は、コンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアを用いて、まず、作製すべき物体の仮想モデルを構築し、次いで、その仮想モデルを、通常水平方向に向けられる薄い平行なスライス又は層に変換する。その後、物理的物体を、例えば溶融した溶接ワイヤからの、溶融金属などの、液体、ペースト、粉末の形態、又は他の積層可能な形態、塗り広げ可能な形態、若しくは流体形態の連続した原料の層、或いは仮想層の形状に類似するシート材料として予備成形された連続した原料の層を物体全体が形成されるまで積み重ねることにより作製することができる。それらの層を合わせて融着させ、立体稠密物体を形成することができる。
【0004】
立体自由形状造形は、典型的には各物体に対して数分から数日の範囲の比較的高速の生産速度でほぼ全ての形状の物体の作成を可能にする柔軟な積層製造技術である。したがって、この技法は、試作品の形成及び少量連続生産に適しており、大量生産に規模を拡大することができる。
【0005】
積層製造法の技術を、複数片の構成材料の堆積(deposition)を含むように拡張することができ、つまり、物体の仮想モデルの各構造層が、並べて置かれたときに層を形成する1組の部片に分割される。これにより、物体の仮想積層モデルに従って各層を形成する連続したストライプ状にワイヤを基材の上に溶接し、物理的物体全体が形成されるまで各層に対してプロセスを繰り返すことにより、金属物体を形成することができる。溶接技術の精度は、通常、許容可能な寸法の物体を直接形成できないほど粗い。したがって、形成される物体は、通常、許容可能な寸法精度まで機械加工する必要がある未加工物体又は予備成形品とみなされる。
【0006】
Taminger and Hafley(“Electron Beam Freeform Fabrication for Cost Effective Near-Net Shape Manufacturing”,NATO/RTOAVT-139 Specialists’Meeting on Cost Effective Manufacture via Net Shape Processing(Amsterdam, the Netherlands,2006)(NATO))(非特許文献1)は、電子ビーム自由形状造形(electron beam freeform fabrication:EBF)と組み合わせてコンピュータ支援設計データから構造金属部品を直接製造する方法及び装置を開示している。構造部品は、電子ビームにより提供される熱エネルギーにより溶接される金属溶接ワイヤの連続した層の上に溶接することにより構築される。EBFプロセスは、高真空環境において集束電子ビームにより作られ維持される溶融池内に金属ワイヤを溶融させることを伴う。電子ビーム及び溶接ワイヤの位置決めは、電子ビーム銃と基材を支持するアクチュエータとが1つ又は複数の軸線(X軸線、Y軸線、Z軸線、及び回転軸線)に沿って移動可能にヒンジ連結されるようにして、4軸運動制御システムにより電子ビーム銃及び支持基材の位置を調整することにより得られる。このプロセスは、材料の使用がほぼ100%効率的であり電力利用が95%効果的であると報告されている。この方法は、バルク金属堆積とより精巧で緻密な堆積の両方に用いることができ、この方法は、金属部品を機械加工する従来の手法と比較して、リードタイムの短縮と材料コスト及び機械加工コストの低減とに対して著しい効果を得ると主張されている。電子ビーム技術には、堆積室において10-1Pa以下の高真空に依存するという不都合がある。
【0007】
TIG溶接トーチを使用して、SFFF(延性の低い金属供給原材料の連続した層が基材の上に付与される)により物体を構築することが知られている(例えば、Adamsの(米国特許出願公開第2010/0193480号明細書(特許文献1)を参照)。アーク電極を使用して流動ガスを励起することによりプラズマ流が生成され、アーク電極には大きさの変化する電流が供給される。堆積前に所定の標的領域を予熱するために、プラズマ流が所定の標的領域に向けられる。電流が調節されるとともに、プラズマ流に供給原材料が導入されて、溶融した供給原料が所定の標的領域に堆積される。電流が調整されるとともに、溶融した供給原料が高温(典型的には供給原材料の脆性-延性遷移温度を超える温度)に徐々に冷却されて、冷却段階において材料応力の発生が最小限に抑えられる。
【0008】
Withers et al.(米国特許出願公開第2006/185473号明細書(特許文献2))はまた、原料のコストを大幅に低減する仕方でチタン供給材料と合金化成分とを組み合わせることによる比較的低コストのチタン供給材料を用いる、立体自由形状造形(SFFF)プロセスにおいて従来使用されてきた高価なレーザの代わりにTIGトーチを使用することを説明している。Withers et al.はまた、合金化元素と混合されワイヤに成形されるチタンスポンジ材料であって、チタン製のニアネットシェイプの構成要素を生産するためにプラズマ溶接トーチ又は他の高出力エネルギービームとの組み合わせでSFFFプロセスにおいて使用できるチタンスポンジ材料の使用を説明している。
【0009】
Abbott et al.(国際公開第2006/133034号公報(特許文献3),2006)は、基材を準備するステップと、レーザ放射及び電気アークを使用して金属供給原料から基材上に第1の溶融金属層を堆積させるステップとを含む、複雑な3次元形状を製造するためのレーザ/アークハイブリッド法を使用する直接金属堆積プロセスを説明している。ガスメタルアーク溶接における電気アークは、金属供給原料を電極として使用することにより提供することができる。Abbott et al.は、ガスメタルアーク溶接との組み合わせでのレーザ放射の使用がアークを安定させてより高い堆積速度を提供するとされることを教示している。Abbott et al.は、ワイヤガイドにより案内されてワイヤガイドの外に出る消耗電極を利用する。消耗電極の金属が端部において溶融され、堆積箇所の上に端部を位置決めすることにより溶融金属が堆積される。消耗電極を溶融させるのに必要な熱は、電極の先端と加工物/堆積基材との間に広がる電気アークにより且つ堆積領域に照射するレーザにより供給される。電気アークにより加熱される消耗電極を溶融させることによる溶接は、非反応性ガスを使用してアークを形成する場合には金属不活性ガス溶接(MIG溶接)とも呼ばれる、ガスメタルアーク溶接(GMAW)として知られている。
【0010】
400℃を超えて加熱されたチタン金属又はチタン合金は、酸素に接触すると酸化する可能性がある。したがって、積層製造により形成される溶接され加熱された物体を周囲雰囲気中の酸素から保護する必要がある。国際公開第2009/068843号公報(特許文献4)は、保護する不活性ガスの均一な流出をもたらす、溶接のための不活性ガスシールドを開示している。保護する必要のある物体の上方にシールドを配置することにより、不活性ガスの均一な流れが、周囲の酸素含有ガスを取り込み得る渦流を生成せずに、周囲雰囲気を置き換える。シールドは、不活性ガスが内部に入り、ボックスの1つの壁に作製された1組の狭い開口部を通ってボックスの内部から漏出することが許容される、中空ボックスとして形成され得る。チタンの酸化を防止する別の解決策は、堆積プロセスを真空下で実施することである。
【0011】
上記プロセスについて、使用される機器は、多くの場合、搬入又は搬出される度に且つ堆積の開始が可能である前に排気される必要があるか又は雰囲気を置き換えなければならない単一の室(chamber)を伴う。同様の種類の単一の室機器も被覆及び加熱プロセスにおいて使用される。いくつかの例は、プラズマコーティングに使用される単一の室機器を開示する米国特許第4,328,257号明細書(特許文献5)に開示されたものを含む。米国特許出願公開第2005/0173380号明細書(特許文献6)は、堆積を達成するために使用される電子ビーム銃を備えた単一の真空室を開示している。米国特許出願公開第2002/0139780号明細書(特許文献7)は、溶接堆積に使用される単一の室機器を開示している。
【0012】
対処すべき問題は、堆積プロセスの速度、及び新たな基材が搬入又は搬出される度に室を排気することにより生じる費用である。また、プラズマアーク堆積中に、過熱を防止するために室及び設備の温度を制御できることが重要である。酸素との接触を防止することにより、400℃を超えて加熱されたチタン金属又はチタン合金が酸化するのを防止しながら、温度制御を達成しなければならない。
【0013】
それゆえ、上記問題の1つ又は複数に対処するより効率的でコスト効果の高いプロセスを提供する室堆積システムが必要である。このシステムは更に、酸化の危険なしに直接金属堆積により形成される製品のスループット及び歩留まりの向上をもたらし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許出願公開第2010/0193480号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/185473号明細書
【文献】国際公開第2006/133034号パンフレット
【文献】国際公開第2009/068843号パンフレット
【文献】米国特許第4,328,257号明細書
【文献】米国特許出願公開第2005/0173380号明細書
【文献】米国特許出願公開第2002/0139780号明細書
【非特許文献】
【0015】
【文献】Taminger and Hafley(“Electron Beam Freeform Fabrication for Cost Effective Near-Net Shape Manufacturing”,NATO/RTOAVT-139 Specialists’Meeting on Cost Effective Manufacture via Net Shape Processing(Amsterdam, the Netherlands,2006)(NATO))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、堆積機器(deposition apparatus)の点検が必要である度に又は保持基材が搬入されるか若しくは加工物が堆積室から搬出される度に堆積室内の雰囲気を置き換える時間及び費用を費やす必要なしに直接金属堆積又はSFFFを使用して形成される製品のスループット及び歩留まりの向上を可能にする機器を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、チタン又はチタン合金での物体の高速積層製造のための機器を提供することである。
【0018】
本発明は、直接金属堆積を行う改良された経済的な方法の必要性に対処する。本発明は更に、直接金属堆積により形成される部品のスループット及び歩留まりを向上させる方法の必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本明細書では、個別に制御される1つ又は複数の搬入/搬出室を有する立体自由形状造形法のための室システムが提供される。室システムは、個別に制御される少なくとも1つの堆積室を含み得、堆積室は、堆積機器と、母材(base material)の位置及び移動を制御するアクチュエータとを含む。1つ又は複数の扉は、堆積室を1つ又は複数の搬入/搬出室の各々と接続する。任意選択的に、個別に制御されるサービス室(service chamber)を堆積室に接続することができ、サービス室は堆積機器を収納するような大きさとされる。
【0020】
1つ又は複数の搬入/搬出室の各々は、搬入/搬出室へのアクセスを提供する1つ又は複数の扉を含むことができる。コンベア又は類似のシステムは、各搬入/搬出室の内部に位置することができる。また、各搬入/搬出室は、1つ又は複数の通気孔を備え得る。1つ又は複数の通気孔は、搬入/搬出室の上部分に位置することができ、且つ1つ又は複数の通気孔は、搬入/搬出室の底部分に位置することができる。上部分に位置する1つ又は複数の通気孔を真空ポンプと空気供給源とに動作可能に接続することができる。底部分に位置する1つ又は複数の通気孔を真空ポンプと不活性ガス又は不活性ガス混合物の源とに動作可能に接続することができる。2つの搬入/搬出室は、これらの間で共有される壁を有することができる。また、2つの搬入/搬出室の各々は、堆積室と共通の壁とを含むことができる。
【0021】
堆積室はまた、堆積室の上部分に位置する1つ又は複数の通気孔と、堆積室の底部分に位置する1つ又は複数の通気孔とを含むことができる。搬入/搬出室と同じように、上部分に位置する1つ又は複数の通気孔を真空ポンプと空気供給源とに動作可能に接続することができ、且つ底部分に位置する1つ又は複数の通気孔を真空ポンプと不活性ガス又は不活性ガス混合物の源とに動作可能に接続することができる。堆積室はまた、1つ又は複数の視認ポータル(viewing portals)を含むことができる。堆積室は、ファンと熱交換器とを有する再循環システムを含むことができる。
【0022】
ワイヤ供給システムからのワイヤを取り外さずに又は湾曲させずに堆積機器がサービス室の内外に移動できるように、サービス室を堆積室及び堆積機器と位置合わせすることができる。サービス室もまた、サービス室の上部分における1つ又は複数の通気孔と、サービス室の底部分における1つ又は複数の通気孔とを含むことができる。上部分に位置する1つ又は複数の通気孔を真空ポンプと空気供給源とに動作可能に接続することができ、且つ底部分に位置する1つ又は複数の通気孔を真空ポンプと不活性ガス又は不活性ガス混合物の源とに動作可能に接続することができる。サービス室は、アクセスポータル(access portal)を含むことができる。サービス室はまた、1組の手袋を含むことができる。
【0023】
本明細書では、SFFFのための室システムを動作させる方法も提供される。立体自由形状造形法のための室システムを動作させる方法は、室システムの堆積室内の雰囲気を不活性雰囲気に個別に置き換えることと、堆積室内の不活性雰囲気を維持しながら第1の保持基材を堆積室の内部に位置するアクチュエータ上に移送することと、第1の加工物を形成するために立体自由形状造形を行うことと、堆積室内の不活性雰囲気を維持しながら第1の加工物を堆積室の外に移送することとを含むことができる。室システムは、少なくとも2つの搬入/搬出室とサービス室とを含むことができ、2つの搬入/搬出室及びサービス室の各々は、1つ又は複数の個別の開口部を通して堆積室と連通する。堆積室の1つ又は複数、少なくとも2つの搬入/搬出室、及びサービス室は、1つ又は複数の開口部を密封するための1つ又は複数の扉を有する。堆積室、第1の搬入/搬出室及び第2の搬入/搬出室、並びにサービス室の各々は、個別に制御することができる。堆積室、第1の搬入/搬出室及び第2の搬入/搬出室、並びにサービス室の各々における1つ又は複数の扉は、1つ又は複数のセンサを使用して制御することができる。少なくとも1つの扉が適切に密閉されていないことを1つ又は複数のセンサが検出した場合に、立体自由形状造形を停止することができる。
【0024】
方法はまた、第1の保持基材を第1の搬入/搬出室の内部に位置するコンベアに搬入することと、第1の搬入/搬出室内の雰囲気を堆積室内と同じ不活性雰囲気に置き換えることと、アクチュエータ上への保持基材の移送中及び立体自由形状造形中に第1の搬入/搬出室の内部の雰囲気を維持することとを含むことができる。方法はまた、第1の搬入/搬出室内の不活性雰囲気を維持しながら第2の保持基材を第2の搬入/搬出室のコンベアに搬入することと、第2の搬入/搬出室の雰囲気を堆積室内と同じ不活性雰囲気に置き換えることとを含むことができる。第1の加工物は、第1の搬入/搬出室内の不活性雰囲気を維持しながら第1の加工物を堆積室から第1の搬入/搬出室内に移送し、堆積室から第1の搬入/搬出室を密封し、第1の搬入/搬出室内の不活性雰囲気を周囲空気に置き換え、且つ加工物を搬入/搬出室から搬出することにより搬出することができる。堆積室から第1の搬入/搬出室を密封した後に、堆積室内の不活性雰囲気を維持しながら第2の保持基材を第2の搬入/搬出室からアクチュエータ上に移送することができる。
【0025】
本発明の追加の特徴及び利点は、以下の説明に記載されており、且つ部分的にその説明から明らかになるか、又は本発明の実施により知ることができる。本発明の目的及び他の利点は、本明細書及び特許請求の範囲並びに添付の図面において特に指摘された構造により実現され達成されるであろう。
【0026】
前述の一般的な説明と以下の詳細な説明の両方が、例示的且つ説明的なものであるとともに、特許請求される本発明の更なる解説を提供するように意図されていることを理解されたい。
【0027】
本発明の更なる理解を提供するために含まれるとともに、本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成する、添付の図面は、本発明の実施形態を図示し、本説明と共に本発明の原理を解説する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、堆積機器が堆積室の内部に位置する例示の実施形態による室システムの例示的な概略上面図である。
図2図2は、堆積機器がサービス室の内部に位置する例示の実施形態による室システムの例示的な概略上面図である。
図3図3は、室、例えば堆積室の雰囲気を冷却するために使用され得る再循環システムの概略図である。
図4図4は、堆積室内などにおける、例示の実施形態における通気孔の配置の概略図である。
図5A図5Aは、搬入/搬出室と堆積室との間の移送機構の例示の実施形態である。
図5B図5Bは、搬入/搬出室と堆積室との間の移送機構の例示の実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
A.定義
別段の定めのない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する当該技術分野の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中の開示全体を通じて参照される、全ての特許、特許出願、公開出願及び刊行物、ウェブサイト、並びに他の公開資料は、別段の断りのない限り、それらの全体が参照により組み込まれる。本明細書中の用語について複数の定義が存在する場合、本節のものが優先する。URL又は他のそのような識別子若しくはアドレスが参照される場合、そのような識別子は変わる可能性があり、インターネット上の特定の情報は現れたり消えたりする可能性があるが、インターネットを検索することにより同等の情報を見出すことができることが理解される。それらの参照により、そのような情報の利用可能性及び公的な普及が証明される。
【0030】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上別段の明確な指示のない限り、複数の指示対象を含む。
【0031】
種々の要素、構成要素、領域、層、及び/又はセクションを説明するために本明細書では第1の、第2の、第3のなどの用語が使用され得るが、本明細書で使用される場合には、これらの要素、構成要素、領域、層、及び/又はセクションがこれらの用語により限定されるべきではない。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層、又はセクションを別の領域、層、又はセクションと区別するためにのみ使用され得る。「第1の」、「第2の」などの用語及び他の数字用語は、本明細書で使用される場合、文脈上別段の明確な指示のない限り、配列又は順序を暗示するものではない。したがって、以下に述べる第1の要素、構成要素、領域、層、又はセクションを、例示の実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、又はセクションと呼ぶことができる。
【0032】
本明細書で使用される場合、範囲及び数量は、「約」特定の値又は範囲として表すことができる。「約」は正確な量も含む。よって、「約5パーセント」とは「約5パーセント」及び「5パーセント」も意味する。「約」とは、意図される用途又は目的に対する典型的な実験誤差の範囲内を意味する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「任意選択の」又は「任意選択的に」とは、続いて説明される事象又は状況が起こるか又は起こらないことと、その説明には事象又は状況が起こる場合及び事象又は状況が起こらない場合が含まれることを意味する。例えば、システム内の任意選択の構成要素は、その構成要素がシステム内に存在してもしなくてもよいことを意味する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「組み合わせ」とは、2つの項目の間又は3つ以上の項目の中での任意の関係を指す。この関係は、空間的な関係とすることができ、又は共通目的のための2つ以上の項目の使用を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「立体自由形状造形法」とは、最終的な物体を形成するために材料の層を順次追加することにより3次元物体が形成される付加プロトタイピング及び付加製造プロセスを指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「加工物」という用語は、立体自由形状造形法を使用して生産された金属体を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「SFFF」とは、立体自由形状造形法を指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「プラズマアーク溶接トーチ」又は「PAWトーチ」とは、プラズマアーク溶接で使用できる溶接トーチを指す。トーチは、ガスが高温に加熱されプラズマを形成して導電性になり、次いで、プラズマが電気アークを母材に移行させ、そして、アークの強烈な熱が金属を溶融させ且つ/又は2つの金属片を互いに融着させることができるように設計される。PAWトーチは、アークを絞るためのノズルを含むことができ、それにより、アークの出力密度を増加させる。プラズマガスは、典型的にはアルゴンである。プラズマガスを電極に沿って送給してカソードの近傍でイオン化し加速することができる。アークは、母材の方に向けることができ、且つ(TIGトーチなどにおける)自由燃焼アークよりも安定している。PAWトーチはまた、典型的には、シールドガスを提供するための外側ノズルを有する。シールドガスは、アルゴン、ヘリウム、又はこれらの組み合わせとすることができ、且つシールドガスは、溶融金属の酸化を最小限に抑えるのを補助する。電流は、典型的には最大400Aであり、且つ電圧は、典型的には約25~35Vの範囲である(但し、最大約14kWとすることができる)。PAWトーチは、プラズマ移行型アークトーチを含む。
【0039】
本明細書で交換可能に使用される「プラズマ移行型アークトーチ」又は「PTAトーチ」という用語は、電気アーク放電によりプラズマへの不活性ガス流を加熱して励起し、その後、オリフィス(ノズルなど)を通して電気アークを含むプラズマガスの流れを移送し、オリフィスから延びてアークの強烈な熱を標的領域に伝達する抑制されたプルームを形成することができる、任意の装置を指す。例示の実施形態において、PTAトーチは、5~6kW以上の効力で動作させることができる。
【0040】
本明細書で使用される「ワイヤ供給材」という用語は、立体自由形状造形中にワイヤ供給材を溶融させる堆積機器に送給されるワイヤを指す。本明細書で使用される「ワイヤ供給材料」という用語は、ワイヤ供給材を構成する材料であって、3次元物体を形成するためにワイヤに成形し且つ立体自由形状造形プロセスで用いることができる任意の既知の若しくは考えられる金属又は金属合金とすることができる材料を指す。好適な材料の例としては、限定されるものではないが、チタン及びチタン合金(すなわちTi-6Al-4V合金など)、ニッケル又はニッケル合金が挙げられる。
【0041】
本明細書で使用される「保持基材」という用語は、加工物を形成するように立体自由形状造形のSFFFの技術を使用して、保持基材の材料と同じか又は異なる、追加の材料が堆積される、最初に室内に搬入されるターゲット基材を指す。例示の実施形態において、保持基材は平坦なシートである。代替的な実施形態において、保持基材は鍛造部品であってもよい。代替的な実施形態において、保持基材は、追加の材料を堆積させるべき物体であってもよい。例示の実施形態において、保持基材は、加工物の一部になることができる。保持基材の材料は、金属又は金属合金とすることができる。例示の実施形態において、保持基材は、ワイヤ供給材料と同じ金属で作製される。
【0042】
本明細書で使用される「母材」という用語は、ターゲット材料を指す。母材は、材料の第1の層を堆積させるときの保持基材となる。材料の1つ又は複数の層が保持基材上に水平に堆積されたときに、母材は、金属材料の新たな層を堆積させるべき堆積した金属材料の上部層となる。母材及び堆積材料は、金属又は金属合金であってもよい。例示の実施形態において、母材は、ワイヤ供給材料と同じものである。
【0043】
本明細書で使用される「堆積機器」という用語は、立体自由形状造形で使用できる任意のシステムを指す。立体自由形状システムの例示の実施形態は、プラズマ移行型アーク(PTA)を含む、プラズマアーク(PAW)、レーザ焼結、電子ビーム、又はこれらの任意の組み合わせを溶接のための熱源として使用するシステムを含む。例示の実施形態において、堆積機器は、PAWトーチ、レーザトーチ又は電子ビーム銃若しくは電子ビームトーチなどの1つ又は複数のトーチを含む。例示の実施形態において、堆積機器は、1つ又は複数の移行型プラズマアークトーチを含む。PAWトーチは、アークを形成するために特に不活性ガス又は希ガスを使用する、ガスメタルアーク溶接(GMAW)トーチ又はタングステン不活性ガス(TIG)トーチなどの、金属ワイヤなどの消耗電極を加熱して溶融させるために電気アークを生成することが可能な任意の構成を有することができる。金属ワイヤは、消耗電極として使用されて、電気アークを使用してトーチにより生み出されたプラズマ中で溶融され、且つ溶融した消耗電極は、母材の表面に又は母材上の溶融池内に堆積されて、金属体又は加工物に加えられ、ニアネットシェイプの金属体又は加工物を形成する。レーザ装置は、金属ワイヤを母材上に溶融させるのに十分な熱エネルギーを有するレーザビームを発生させることができる。好適なレーザ装置の例としては、ネオジム添加イットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)レーザ、COレーザ、COレーザ、イッテルビウムファイバ結合ダイオードレーザ、Nd:ガラスレーザ、ネオジム添加オルトバナジウム酸イットリウム(Nd:YVO)レーザ、Cr:ルビーレーザ、ダイオードレーザ、ダイオード励起レーザ、エキシマレーザ、ガスレーザ、半導体レーザ、固体レーザ、色素レーザ、X線レーザ、自由電子レーザ、イオンレーザ、ガス混合物レーザ、化学レーザ、及びこれらの組み合わせが挙げられる。Nd:YAGレーザ及びCOレーザが好ましい。電子ビーム装置は、金属ワイヤを加熱して母材上に溶融させるために使用することができる。電子ビーム装置は、電子ビーム装置の電子ビームにより生み出された熱エネルギーがワイヤの端部を溶融させて、金属ワイヤの端部の真下の母材上に落下する溶融金属ワイヤの溶滴を形成するように、母材よりも上に位置決めされた金属ワイヤの先端(先端部)に電子ビームを向けるように配設及び配置することができる。電子ビーム装置は、金属ワイヤの実質的に一定の溶融速度を提供する量で金属ワイヤに実質的に一定の電力又はエネルギー量を与えるように調節できる可変電力出力を有することができる。電子ビーム銃は、市販のものであり、且つ当該技術分野において説明されている。電子ビーム銃が電子ビームを変調するための電磁コイルを含むように電子ビーム銃を選択することができる。電子ビーム銃は、金属ワイヤに向かって加速される集中した電子の流れの形態のエネルギーを与えることができる。高電位差を(例えば、約15kVよりも高い、約15kV~約150kVの範囲など)単独で又は磁界と組み合わせて使用して電子を加速することができる。1つ又は複数の加熱されたフィラメントを使用して電子ビーム銃内に電子を発生させてもよい。電子ビーム銃の出力電力は、典型的には、加工物への電子の流れを調整することにより制御することができる。例えば、最大約30kWのビーム出力を使用できるが、ビーム出力は、概して、約2.5kW~約10kW、又は約3kW~約6kWの範囲である。ビーム電流は、概して、約100ミリアンペアよりも大きく、且つ約100ミリアンペア~約600ミリアンペアの範囲とすることができる。ビーム出力は、可変であり、且つ約100V~約500Vの範囲の入力電圧を使用することにより発生させる。例示の入力電圧は約110Vである。
【0044】
本明細書で交換可能に使用される「コンピュータ支援設計モデル」又は「CADモデル」という用語は、本発明の第2の態様による装置の制御システムにおいて用いることができる、形成すべき物体の任意の既知の又は考えられる仮想3次元表現であって、保持基材の位置及び移動を調整するように、且つ、物理的物体が、物体の仮想3次元モデルに従った物理的物体の構築を結果としてもたらすパターンで金属材料の連続した堆積物を保持基材上に融着させることにより構築されるように、ワイヤ送給器の組み込まれた溶接トーチを動作させるように用いることができる仮想3次元表現を指す。これは、例えば、まず仮想3次元モデルを1組の仮想平行層に分割し、次いで、平行層の各々を1組の仮想準1次元部片に分割することにより、3次元モデルの仮想ベクトル化積層モデルを形成することにより得られ得る。そして、物理的物体は、物体の仮想ベクトル化積層モデルの第1の層に従うパターンで、金属材料供給材の一連の準1次元部片(溶滴)を支持基材上に堆積させ融着させるように、制御システムを関与させることにより形成することができる。金属供給材はまた、一続き又は一筋の金属材料を形成できる、溶滴の連続供給として堆積させることができる。その後、物体の仮想ベクトル化積層モデルの第2の層に従うパターンで、先に堆積した層の上に溶接可能な材料の一連の準1次元部片を堆積させ融着させることにより、物体の第2の層に対するシーケンスを繰り返す。物体全体が形成されるまで、物体の仮想ベクトル化積層モデルの各連続した層に対して、層毎に堆積及び融着プロセス中の繰り返しが続く。
【0045】
しかしながら、本発明は、本発明による装置の制御システムを実行するいかなる特定のCADモデル及び/又はコンピュータソフトウェアにも拘束されず、且つ本発明は、いかなる特定の種類の制御システムにも拘束されない。立体自由形状造形により金属3次元物体を構築できる任意の既知の又は考えられる制御システム(CADモデル、コンピュータ支援製造(CAD)システム又はソフトウェア、コンピュータソフトウェア、コンピュータハードウェア、及びアクチュエータなど)が用いられてもよい。例示の実施形態において、制御システムは、母材を予熱するための第1のトーチと、金属材料の供給ワイヤを溶融池内に溶融させるための第2のトーチとを別個に動作させるように調節することができる。第1のトーチは、溶融金属材料を堆積させるべき位置において、母材が溶融金属ワイヤ、すなわち溶融金属材料の溶融液滴に対して受容的になるように、母材を予熱するのに十分なエネルギーを提供することができる。母材の予熱は、溶融金属ワイヤの金属溶滴により提供される金属材料による母材への適切な溶け込みを確実にすることができる。第1のトーチは、母材への溶け込みを深くすることにより母材と溶融金属材料との融着を促進する。いくつかの実施形態において、予熱では母材は溶融しない。代替的な実施形態では、母材をより受容的なものにするために、母材の少なくとも一部分が第1のトーチにより溶融される。いくつかの実施形態では、第1のトーチにより十分な熱が加えられ、金属材料を堆積させるべき位置において母材に溶融池を形成する。
【0046】
B.多室組立体
例示の実施形態については、添付の図面と併せて以下に説明する。以下の説明は、例示的なものに過ぎず、限定的なものとみなされるべきではない。
【0047】
図1は、4つの室110、120、130、及び140を有する例示の室システム100の図を示している。4つの室を互いに接続することができる。本説明の目的で、室110及び120は搬入/搬出室と称され、室130は堆積室と称され、且つ室140はサービス室と称される。
【0048】
搬入/搬出室110及び120は、それぞれの名称が暗示するように、立体自由形状造形により物体を形成するために使用すべき保持基材を搬入するために且つ形成された加工物を搬出するために使用することができる。同様に、堆積室130は、立体自由形状造形プロセスが内部で行われる室である。例示の実施形態において、立体自由形状造形は、プラズマ移行型アークトーチを使用して行われる。例示の実施形態において、堆積機器は、2つのプラズマ移行型アークトーチ、すなわち、ワイヤ供給材からの溶融金属が落下する溶融池を母材に形成するための1つのトーチと、ワイヤ供給金属を溶融させるための第2のトーチとを用いるワイヤ供給材堆積機器である。例示の実施形態において、ワイヤ供給材料及び母材は同じものである。例示の実施形態において、ワイヤ供給材料及び母材は、金属又は金属合金である。例示の実施形態において、ワイヤ供給材料及び母材は、同じ金属又は金属合金である。ワイヤ供給材料及び母材用の例示の金属又は金属合金は、チタン、チタン合金、ニッケル、又はニッケル合金である。他の金属又は金属合金も使用することができる。サービス室140は、堆積機器の保守作業専用の室とすることができる。
【0049】
例示の実施形態は4つの室を有するものとして説明されるが、搬入/搬出室110及び120を単一の搬入/搬出室に置き換えることができることを理解すべきである。代替的に、3つ以上の搬入/搬出室を用いて堆積室に同様に接続することができる。その上、本発明の実施形態がサービス室140を排除し得ることも理解すべきである。
【0050】
室システム100の各室は、封止し、個別に制御することができる。各室は、各室に接続された他の室から封止することができる。各室はまた、外部雰囲気から封止することもできる。1つ若しくは複数の密封型開き扉又は密封型引き戸を使用することにより、各室を他の室から又は外部雰囲気から分離することができる。例示の実施形態において、扉は、室と同じ材料で作製されてもよい。代替的な実施形態において、各扉は、密封材料で作製されてもよい。例示の実施形態において、扉が作製される材料にかかわらず、各扉は、密封部材を備え得る。密封部材は、リング、膜又はガスケットとすることができる。密封部材及び室扉に使用される密封材料は、ガス不透過性密封を提供できなければならない。例示の実施形態において、密封材料は、任意の高真空密封材料である。例示の実施形態において、密封材料は、ポリウレタンとすることができる。代替的な実施形態において、密封材料は、ニトリルゴム、フルオロカーボン、シリコーン、フルオロシリコーン、又はペルフルオロエラストマーのいずれか1つとすることができる。例示の実施形態では、各密封部材又は室扉に2つ以上の密封材料を使用することができる。更に代替的な実施形態において、各扉は、2つ以上の密封部材を備えることができる。例えば、ガス不透過性を高めるために、2つ又は3つの密封部材を扉に配置することができる。
【0051】
各室内の雰囲気は、個別に排気することができる。いくつかの実施形態において、各室は、個別に排気して酸素を含まない雰囲気に置き換えることができる。いくつかの実施形態において、各室は、個別に排気して不活性ガス又はガス混合物を充填することができる。各室は、質量流量制御器又は体積流量制御器などの、室内へのガスの流れを測定し制御できる個々の流量制御器を備えることができる。また、各室内の温度は、個別に監視、制御、及び維持することができる。各室内の圧力もまた、個別に監視、制御、及び維持されてもよい。アルゴンなどの不活性ガスが室に充填される実施形態では、その室の圧力が、好ましくは、大気圧よりも高い圧力に維持される。例示の実施形態において、不活性ガスが充填された室の圧力は、大気圧よりも約1~6ミリバール高い圧力に保たれる。室の圧力を大気圧よりも高く維持することは、酸素又は他のガスが室の外部から室内に漏洩するのを防止するのを補助する。不活性雰囲気を形成するために、任意の不活性ガスが使用され得る。例示の実施形態において、使用される不活性ガスは空気よりも重い。例示の不活性ガスはアルゴンである。他の不活性ガスが、単独で又は組み合わせて使用されてもよい。いくつかの実施形態では、単一ガスではなくガス混合物を使用することができる。例えば、ヘリウム、ネオン、キセノン又はクリプトンのいずれかとアルゴンとの混合物を使用することができる。単独で又は混合物として使用できる他の可能なガスとしては、キセノン及びクリプトンが挙げられる。
【0052】
本明細書の目的で、ガス、ガス混合物又は雰囲気を指す「重い」又は「より重い」という用語、及び同じくガス、ガス混合物又は雰囲気を指す「軽い」又は「より軽い」という用語は、本明細書で説明する室内で使用できる任意の2種類の雰囲気を区別するために使用される。上に例示したように、空気などのより軽い雰囲気と比較して、重い又はより重いガスは、アルゴン又はアルゴン-ヘリウム混合物である。しかしながら、この対は、例示的なものに過ぎず、限定的なものとみなされるべきではない。また、本明細書では、重いガスの通気孔と軽いガスの通気孔とに関して通気孔が説明されているが、重さが等しいか又は非常に近い2つの雰囲気も使用できることが理解されるべきであり、この場合、どちらかの雰囲気を注入又は排気するために任意の通気孔を使用することができる。
【0053】
例示の実施形態では、不活性ガスが充填されていないときに若しくは室に不活性ガスを充填するプロセス中に、又は不活性ガスを室から排気するプロセス中に、室を大気圧に維持することができる。代替的な実施形態において、室は、不活性ガスが充填されていないときに、真空状態に維持されてもよい。また、室に不活性ガスを充填するときに又は不活性ガスを室から排気するときに、その室内の圧力は、大気圧よりも高い又は低い圧力とすることができる。
【0054】
室システム100内の各室は、室の圧力・温度条件に耐え得る任意の好適な材料で作製することができる。例えば、堆積室130を形成するために使用される材料は、その室内で実行される立体自由形状造形プロセスの圧力・温度条件に耐えるべきである。例示の実施形態において、室は金属で作製される。例えば、室は、アルミニウム金属又はアルミニウム合金で作製することができる。代替的な実施形態において、室は鋼で作製することができる。任意の鋼を使用することができる。例示の鋼としては、低炭素鋼、低合金鋼、高炭素鋼、ステンレス鋼、300系ステンレス鋼、400系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、高Crフェライト鋼及びCr-Mo鋼が挙げられる。更に代替的な実施形態において、室は、金属の組み合わせで作製することができる。静電放電の発生の危険性を低減するために、又は何らかの設備誤動作の場合の感電の危険性を最小限に抑えるために、金属製の壁を適切に接地することができる。
【0055】
好ましい実施形態において、室は、大気圧に又は大気圧よりも僅かに高い圧力に維持され、したがって、好適な材料は、少なくとも大気圧で、又は大気圧よりも約1~20ミリバール高い圧力、若しくは大気圧よりも約1~10ミリバール高い圧力、若しくは大気圧よりも約2~8ミリバール高い圧力で、少なくとも物理的完全性を維持できる材料を含むことができる。好ましくは、室に使用される材料はまた、真空下でなど、大気圧よりも低い圧力で物理的完全性を維持することができる。そのような実施形態において、使用される材料は、大気圧よりも低い圧力で、特に使用される真空条件下で物理的完全性を維持できなければならない。
【0056】
室システム100の任意の室はまた、作業者が内部動作を視認することを可能にするために1つ又は複数の視認ポータルを備えることができる。例示の実施形態において、視認ポータルは窓とすることができる。本明細書における説明では、視認ポータルを窓と称するが、視認ポータルは、本明細書では任意の種類の視認ポータルを実装できるので、限定的なものとみなされるべきはない。例示の実施形態において、堆積室130は、作業者が進行中の造形プロセスを視認することを可能にするために少なくとも1つの側面に大きな窓を有し得る。また、好ましい実施形態では、サービス室140は、作業者がサービス室140の内部にいるときに堆積機器150を視認することを可能にするために少なくとも1つの大きな窓を備えることもできる。1つ又は複数の窓は、室の圧力・温度条件にも耐え得る任意の好適な透明材料で作製することができる。例えば、堆積室130に窓を形成するために使用される材料は、その室内で実行される立体自由形状造形プロセスの圧力・温度条件に耐えるべきである。例示の実施形態において、いずれか1つ又は複数の室における窓に使用される材料はアクリル材料である。例示の実施形態において、窓は、ポリ(メチルメタクリレート)で作製される。代替的に、窓の材料はガラスとすることができる。例示の実施形態において、窓は、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスで作製される。ガラスは、電磁放射線の選択された波長を反射できる1つ又は複数の透明金属酸化物層で被覆することができる。いくつかの実施形態において、ガラスは、赤外電磁放射線を反射することができる。いくつかの実施形態において、ガラスは、紫外電磁放射線を反射することができる。ガラスは単一層で存在することができ、又は複数のガラス層を使用することができる。いくつかの実施形態では、空間により分離された少なくとも2つのガラス層が存在する。2つのガラス層の間の空間には、不活性ガスを充填することができる。いくつかの実施形態では、2つのガラス層の間の空間にはアルゴンが充填される。この構成は、窓を透過する紫外放射線の最大約85%を遮断することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのガラス層が存在し、且つポリマーフィルムの中間層が2つのガラス層の間に存在し、合わせガラスを形成する。ポリマーフィルムは、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)などの、任意のポリマー材料を有することができる。合わせガラスは、窓を透過する紫外放射線のほぼ100%を遮断することができる。
【0057】
代替的に、窓材料は、熱可塑性ポリマーとすることができる。例えば、材料は、ポリカーボネート、アクリル又はポリエチレンテレフタレートであってもよい。熱可塑性材料は単層として存在することができ、又は任意選択的にアルゴンを充填できる、空間をシート間に含めるように2つ以上のシートを造形することができ、又は熱可塑性ポリマーの2つのシート間にポリマーフィルムの中間層を含めることによりプラスチック製の合わせ窓を準備することができる。1つの室の1つ又は複数の窓に使用される材料は、他の任意の室の1つ又は複数の窓に使用される材料と同じか又は異なる材料とすることができる。また、1つの室の異なる窓は、同じか又は異なる材料で作製することができる。
【0058】
例示の実施形態において、1つ又は複数の室は、1つ又は複数の視認装置を備えることができる。例示の視認装置は、ビデオカメラとすることができる。1つ又は複数のカメラで撮影された映像は録画することができる。また、映像をライブでストリーミングすることもできる。映像をライブ又は録画モードで再生する映像画面は、映像が撮影されたそれぞれの室の外部に設けることができる。映像は、映像が撮影された室に近接したモニタで視認することができる。映像は、映像が撮影された室から離れた位置に位置するモニタで視認することができる。また、上で説明した映像視認装置の任意の組み合わせを使用することができる。
【0059】
各室はまた、室を照明するための可視光源として1つ又は複数の発光要素を備えることができる。これら発光要素は、より良好な視認性を提供するために、1つ又は複数の室の内部に照明を提供することができる。室内の均一な輝度レベルは、発光要素を室の周囲に対称に位置決めすることにより得ることができる。1つ又は複数の発光要素は、任意の好適な発光装置とすることができる。例えば、発光要素は、照明器具を含むことができる。追加の例は、発光ダイオード装置、ネオン灯、白熱電球若しくは蛍光電球、又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。発光要素の輝度は、調節可能とすることができる。発光要素が内部に位置する室の条件から発光要素を保護するために、光に対して透明である好適な材料の適切な保護カバーを設けることができる。例示の実施形態において、室システム100の各室は、少なくとも発光要素を含む。例示の実施形態において、堆積室130は、1つ又は複数の発光要素を含む。例示の実施形態において、サービス室140は、1つ又は複数の発光要素を含む。例示の実施形態において、搬入/搬出室110及び120の1つ又は複数は各々、1つ又は複数の発光要素を含む。また、これらの照明装置の任意の組み合わせを室システム100に対して実現することができる。各室の発光要素は、個別に制御することができる。代替的に、全ての発光要素を同時にオン/オフできるように関連付けるように制御することができる。代替的に、室システム100の2つ以上の室の発光要素は、同時に制御することができる。照明制御装置は、1つ若しくは複数の手動制御システム又はコンピュータ制御システム又はこれら両方の組み合わせとすることができる。
【0060】
各室はまた、酸素検出器又は酸素監視装置を備えることができる。例示の実施形態において、酸素検出器又は監視装置は、不活性雰囲気下で動作させたときの室内の酸素量を確認するために使用することができる。既に述べたように、堆積中に、金属を高温に加熱して金属を酸化させ易くすることができる。例えば、400℃以上の温度のチタンは、典型的には、酸素の存在下で酸化する。酸化を防止するために、酸素を含まない雰囲気又は代替的に非常に低い酸素含有量を有する雰囲気を維持することが有利である。例示の実施形態では、不活性雰囲気中で動作させる場合に、堆積室は、100ppm未満、概して約0~約100ppmの範囲、又は約0~約50ppmの範囲の酸素含有量で、約10Paの圧力に維持される。代替的な実施形態において、同様の条件下の堆積室の酸素含有量は、約0~約25ppm又は約0~約20ppmに維持されてもよい。
【0061】
例示の実施形態において、酸素含有量、及び室システム100内の他の任意の室の圧力を含む他の雰囲気条件は、堆積室を不活性雰囲気に維持することが望ましい場合に少なくともかかる室が堆積室と大気連通した状態に置かれたときの堆積室の酸素含有量と同様か又はそれよりも低い。同様に、堆積室が真空下に維持される例示の実施形態では、室システム100の他の室もまた、少なくとも堆積室と大気連通しているときに同様の真空条件下にある。堆積室が空気を収容する例示の実施形態において、他の室もまた、少なくとも堆積室と大気連通しているときに空気を収容してもよい。互いに大気連通しているときの室間に同じ又は同様の種類の雰囲気条件を維持することにより、それら室内の所望の条件をより良く維持及び制御することが可能である。このことは、堆積室内で行われる製造プロセス中の望ましくない不純物の導入又は酸化を回避するのに役立つことができるので、堆積室に特に重要である可能性がある。
【0062】
例示の実施形態では、室内の湿度レベルが制御される。湿度レベルは、室内の水素含有量を低減するために低下したレベルに維持される。例えば、金属ワイヤがチタンであるか又はチタンを含有する場合には、室内の高過ぎる水素含有量により、堆積したチタンが脆くなる可能性がある。例示の実施形態では、室システム100における室のいずれか内の湿度レベルを250ppm未満又は200ppm未満のレベルまで低減することができる。例示の実施形態において、堆積室に接続された室の湿度レベルは、堆積室内の低下した湿度レベルを維持することが望ましい場合に、少なくともそのような室が堆積室と大気連通した状態に置かれたときに、堆積室の湿度レベルと同様か又はその湿度レベルよりも低い。
【0063】
各室を個別に動作させることができるが、例示の実施形態では、2つ以上の室に影響を及ぼすために同じ設備を使用できることを理解すべきである。例えば、例示の実施形態では、2つ以上の室内に真空を作り出すために、単一の真空ポンプが用いられてもよい。例示の実施形態において、単一の真空ポンプは、共通の換気システムにより4つの全ての室に接続される。そのような実施形態では、換気システムを各室に別個に接続する弁システムを使用することにより各室内の雰囲気を個別に排気するために真空を使用することができる。したがって、各弁を個別に開放及び閉鎖することにより、同時に又は異なる時間にいずれか1つ又は複数の室に真空を適用することができる。また、1組の弁を制御することにより、室の異なる通気孔を同時に又は異なる時間に真空に接続することができる。同様に、例示の実施形態では、個別に制御される弁によって不活性ガスの単一供給システムを2つ以上の室に接続することができる。したがって、各弁を個別に動作させることにより、他の1つ又は複数の他の室と同時に又は異なる時間に、各室に不活性ガスを提供することができる。
【0064】
そのシステムは、弁が室間の大気連通を許容又は防止できるように構成することができる。例えば、第2の室が排気される一方で、第1の室が、アルゴンなどの、不活性ガス又は希ガスを収容し続けることができるように、第1の室を第2の室から隔離することができる。空気又は他のガスを供給するために、同様のシステムを使用することができる。不活性ガス若しくはガス混合物、空気又は他の雰囲気の供給は、弁の制御を通じて各室におけるいずれか1つ又は複数の通気孔により行うことができる。代替的に、各室は、それ自体の個別の真空ポンプを備えることができる。また、各室は、空気、不活性ガス若しくはガス混合物、又は所望により他のガスの、各室自体の個別の源を備えることができる。
【0065】
室システム100の制御及び各室の動作を、制御システム内に収めることができる。制御システムは、手動で操作することができる。例えば、手動操作制御システムは、手動操作弁、ギヤ、スイッチ、又は同様の装置を含み得る。代替案において、制御システムは自動化することができる。例えば、制御システムは、コンピュータ制御システムからなるものとすることができる。更に代替的な実施形態において、制御システムは、手動制御とコンピュータ制御の組み合わせとすることができる。各室は、それ自体の個々の制御システムを備えることができる。例示の実施形態において、単一の制御システムは、各室を個別に制御することができる。例示の制御システムは、ユーザプログラムを実行するための中央処理装置と、1つ又は複数の電源と、並びに入力及び/又は出力としての信号モジュールとを含むように構成できる、産業用コンピュータを含むことができる。制御システムは、CPUディスプレイとアナログ信号の一体型シールドとを含むことができる。そのような制御システムは、当業者が設計することができる。例示の市販のシステムは、Siemens AG(Munich、Germany)のSIMATIC-S7-1500である。室の内部に位置する設備を調整するために、別個の制御システムを使用することができる。例えば、アクチュエータ131を調整するために、別個の制御システムを使用することができる。例示の市販のシステムは、Bosch Rexroth AG(Lohr am Main,Germany)から入手可能なIndraMotion MTXシステムである。溶接設備を制御するために、別個の制御システムを使用することができる。例示の市販のシステムは、SIGMATEK GmbH & Co.KG(Lamprechtshausen,Austria)から入手可能なSIGMATEK C-IPC(小型の産業用コンピュータシステム)である。各室は、室内で使用される設備のための室自体の別個の制御システムを有することができる。代替的に、各設備は、関連する別個の制御システムを有し得る。また、室の内部に位置する設備を制御するために、中央制御システムを使用することができる。代替的に、中央制御システムは、各々別個の制御システムと通信することができる。
【0066】
搬入/搬出室
例示及び図示の実施形態において、室システム100は、2つの搬入/搬出室110及び120を含むことができる。代替的な実施形態において、室システム100は、1つの搬入/搬出室のみを含むことができる。更に代替的な実施形態において、室システム100は、3つ以上の搬入/搬出室を含むことができる。搬入/搬出室の動作は、変わらず、且つこれらの室のうちのいくつが室システム100に含まれるかとは無関係である。図1に示す例示的な例において、搬入/搬出室110及び120は、搬入/搬出室110及び120が共通の壁を有するように配設することができる。
【0067】
少なくとも2つの搬入/搬出室を有する利点は、保持基材及び加工物をより素早く搬入及び搬出する能力の結果である生産サイクル時間の短縮である。例えば、不活性雰囲気が堆積室130内に維持される実施形態では、搬入/搬出室もまた、堆積室130と大気連通しているときに不活性雰囲気を有さなければならない。しかしながら、搬入/搬出室内への保持基材の搬入により、搬入/搬出室が外部雰囲気に曝露される。したがって、不活性ガス雰囲気にある搬入/搬出室を有するために、堆積室の不活性雰囲気中に空気が導入されないように、搬入/搬出室を堆積室に接続する扉を開放できる前に搬入/搬出室内の空気を流し出して不活性ガスに置き換えなければならない。このことは、堆積室を真空条件下又は空気以外の任意の雰囲気中で動作させた場合も同様である。少なくとも2つの搬入/搬出室を有することにより、1つの搬入/搬出室は次の保持基材の搬入の準備が整っている一方で堆積室から加工物を受け取る準備の整った他の搬入/搬出室を有することが可能である。
【0068】
各搬入/搬出室は、少なくとも2つの扉を備えることができる。例示の実施形態において、搬入/搬出室110は、室の外部から室110へのアクセスを提供する扉111を含む。室110はまた、室110を堆積室130に接続する第2の扉112を備えることができる。同様に、搬入/搬出室120は、同様の扉121及び122を備えることができる。既に述べたように、各扉111、112、121、及び122は、各扉がガス不透過性となるように、密封材料で作製するか又は1つ若しくは複数の密封部材を含むことができる。扉111、112、121及び122は、引き戸又は開き扉とすることができる。例示の実施形態において、扉111、112、121及び122は、左右又は上下にスライドして開放及び閉鎖する引き戸である。扉111、112、121及び122はまた、扉の密封を高めるために閉鎖されたときに扉にかかる圧力を与えるとともに扉を開放すべきときに圧力を解放するためのヒンジを備え得る。例示の実施形態において、扉111、112、121及び122は、手動で動作させることができる。代替的に、扉111、112、121及び122は、自動で又は制御システムにより動作させることができる。例示の実施形態において、扉111、112、121及び122は、手動と自動の両方で動作させることができる。また、各扉111、112、121及び122は、同時に又は個別に動作させることができる2つ以上1組の扉とすることができる。
【0069】
サービス室及び各搬入/搬出室は、それ自体の個別の換気システムを備えることができる。例えば、室110、120及び140の各々には、個別に通気孔を設けることができる。室110、120及び140の各々には、個別にアルゴンなどの不活性ガスを充填することができる。室110、120及び140の各々には、個別に空気を充填することができる。室110、120及び140のいずれかへの流入量は、約100~約1500リットル/minの範囲とすることができる。室内への流れは、質量流量制御器により制御することができる。室内の圧力は、排気弁を開放及び閉鎖することにより閉ループ制御される。例えば、不活性ガス供給源に接続された少なくとも1つの通気孔を開放する一方で真空に接続された通気孔の全てを閉鎖することにより、室内の圧力を高めることができる。ある酸素レベルを達成するために室内の空気雰囲気を不活性ガスに置き換えるのに必要な時間の長さは、室の寸法及び室内の設備の総量によって異なり、それら設備は、設備がなければ室内のガスが占有する必要のある一定の容積を押しのける。
【0070】
室110、120及び140の各々は、個別に真空条件下に保つことができる。各室110、120及び140内の雰囲気は、個別に排気することができる。室110、120及び140の雰囲気を排気するために使用される通気孔は、任意の好適な流量で動作させることができる。流量は、使用されるファンの能力により定められてもよい。例えば、排気孔は、3000~6000Sm/hrで動作することができる。例示の実施形態において、使用されるファンの能力は、4500Sm/hrである。同様に、室110、120、及び140の内部に不活性ガス、希ガス、若しくは他のガス、又は空気を注入する入口通気孔は、任意の好適な流量で動作することができる。いくつかの用途において、室110、120及び140のいずれか1つへの最大流入量は、1500L/minである。質量流量制御器は、室のいずれか1つ内への不活性ガス若しくは他のガス又は空気の流入量を調整するために使用することができる。流入量は、約10~約1500L/min、又は約100~1500L/minの範囲とすることができる。室のいずれか1つ内の圧力は、閉ループ制御システムとすることができ、このシステムでは、排気弁を開放及び閉鎖することにより圧力を調整することができる。システムは、システムが所望の圧力及び酸素レベルに維持されるアイドルモードを含むことができる。アイドルモード中に、約10L/min~約100L/minの範囲の流量などの、室のいずれか1つ内への不活性ガス又は他のガスの低流量は、維持することができ、且つ排気弁を通る流れを増加又は減少させるように出口弁を調節することにより修正することができる。入口通気孔及び出口通気孔はまた、互換的操作性を有する。入口通気孔は出口通気孔として動作することができ、且つ出口通気孔もまた入口通気孔として動作することができる。通気孔は、通気孔を通るガスの流量を制御し、それにより、結果として生じる室内の圧力を調整するための弁を含むことができる。室は、圧力モニタを含むことができ、且つ圧力モニタからの測定値に応答して、室内の圧力を調節するために、不活性ガス源に接続された通気孔の弁を開放又は閉鎖することができる。
【0071】
室110及び120の各々の温度及び圧力は、個別に制御及び維持することができる。空気より重い不活性ガスが室システム100の内部の雰囲気として使用される例示の実施形態において、搬入/搬出室110及び120は、室の底部分に位置する、不活性ガス又はガス混合物を導入する1つ又は複数の通気孔と、室の上部分において空気又は他の軽いガスを排気するために真空に接続された1つ又は複数の通気孔とを含むことができる。このように、より重い不活性ガスが底部から導入され、且つより軽い雰囲気、例えば空気が室の上部分から排出される。各通気孔は、異なるガスのいくつかの異なる源への及び真空源への通気孔の接続を可能にするマニホールドへの接続部を含むことができ、マニホールドは、所与の瞬間にどの源を通気孔が利用できるかを調整するための弁を含む。このことは、より効果的なシステムが雰囲気を完全に流し出して不活性ガスに置き換えることを可能にする。同様に、より重い不活性ガス又はガス混合物が空気などのより軽い雰囲気に置き換えられる場合に、底部通気孔は、不活性ガスを排気するために使用することができ、且つ上部通気孔は、より軽い雰囲気を導入するために使用することができる。例示の実施形態において、1つ又は複数の底部通気孔は、床に位置することができる。例示の実施形態において、1つ又は複数の底部通気孔は、床の直上の室壁の底部に位置することができる。更に代替的な実施形態において、1つ又は複数の底部通気孔は、床と室壁の底部分との両方に位置することができる。例示の実施形態において、1つ又は複数の上部通気孔は、室の天井に位置する。例示の実施形態において、1つ又は複数の上部通気孔は、室の天井直下の室壁の上部分に位置する。例示の実施形態において、1つ又は複数の上部通気孔は、天井と室の天井直下の室壁の上部分との両方に位置する。底部通気孔及び上部通気孔の各々は、個別にファンを備えることができる。
【0072】
室110及び120からガス又は雰囲気を排気するように1つ又は複数の通気孔を動作させるときに、各通気孔を別個の真空ポンプに接続することができる。代替的に、各通気孔は、個別に制御される弁によって、室システム100の全体に対して使用される共通の真空ポンプに接続することができる。各通気孔を各通気孔自体の個別に制御される弁と接続することができる。代替的に、室110を排気するために使用される2つ以上の通気孔を、個別に動作させる共通の弁を介して真空に接続することができる。同様に、室120を排気するために使用される2つ以上の通気孔を、個別に動作させる共通の弁を介して真空に接続することができる。代替的に、個別に動作させる第1の共通の弁を介して室110の全ての上部通気孔を真空に接続することができ、且つ個別に動作させる第2の共通の弁を介して室110の全ての底部通気孔を真空に接続することができる。室120内の頂部通気孔及び底部通気孔を室110内で行われるのと同様に真空に接続することができる。
【0073】
不活性ガス、ガス混合物、空気又は他の雰囲気を室110及び120に導入するために使用される通気孔は、室110及び120を排気するために使用される通気孔と同様に配設することができる。例えば、各通気孔を個別の源に接続することができる。代替的に、2つ以上の通気孔を共通の源に接続することができる。この後者の実施形態において、各通気孔は、個別に制御される弁により個別に制御することができる。代替的に、個別に制御される共通の弁に室110の2つ以上の通気孔を接続することができる。同様に、個別に制御される共通の弁に室120の2つ以上の通気孔を接続することができる。代替的に、個別に動作させる第1の共通の弁を介して室110の全ての上部通気孔を共通の源に接続することができ、且つ個別に動作させる第2の共通の弁を介して室110の全ての底部通気孔を共通の源に接続することができる。室120内の頂部通気孔及び底部通気孔を室110内で行われるのと同様に1つ又は複数の源に接続することができる。
【0074】
各搬入/搬出室110及び120は、温度制御装置を備えることができる。室110及び120各々の温度制御装置は、個別に制御することができる。温度制御装置は、電気ヒータ、ガスヒータ、熱交換器、電気冷却システム、冷凍システム、冷却器、又はこれらの組み合わせを含むことができる。各室110及び120はまた、室の温度を測定するために、1つ若しくは複数の温度計、熱電対又は他の温度検知装置、或いはこれらの組み合わせを備え得る。温度検知装置及び温度制御装置が影響を及ぼす室を制御するそれぞれの制御システムに温度検知装置及び温度制御装置を接続することができる。
【0075】
各搬入/搬出室110及び120はまた、1つ又は複数の圧力計、真空計、又はこれらの組み合わせを備えることができる。計器が測定する室を制御するそれぞれの制御システムに計器を接続することができる。
【0076】
各搬入/搬出室110及び120は各々、移送機構113及び123をそれぞれ備えることができ、各移送機構は、保持基材を受け取って保持基材を堆積室130内に移送することができる。移送機構113及び123はまた、堆積室130から加工物を回収して、加工物を別の位置に、例えば室の外部の作業者空間に移送することができる。
【0077】
保持基材及び加工物の重量、並びに室の雰囲気、温度及び圧力に対応できる任意の移送機構を、移送機構113及び123に使用することができる。例示の実施形態において、移送機構は、コンベアとすることができる。例示の実施形態において、コンベアは、コンベアベルト、チェーンコンベア、又は他の機械式コンベアシステムを含むことができる。コンベアは、保持基材又は加工物を支持して移送できる1組のギヤ及びホイールを含むことができる。例示の実施形態において、移送機構113及び123はまた、保持基材又は加工物の移送、持ち上げ又は位置決めを補助できる1組の機械式及び/又は油圧アームを含むことができる。例示の実施形態において、移送機構113及び123は、堆積室130内部のアクチュエータ131へ延出できる1組のホイールを更に含むことができる。例示の実施形態において、ホイールを備えた1対の延出可能なアームは、アクチュエータ131へ延出するように設計される。延出可能なアームにおけるホイールは、保持基材又は加工物の真下に位置決めされ、次いで、保持基材又は加工物を持ち上げて、保持基材又は加工物をアクチュエータ131上に位置決めするか又は移送機構113又は123上に戻すように設計することができる。
【0078】
例えば、図5A及び図5Bに図示するように、移送機構113は、搬入/搬出室110内に完全に後退させ且つ軌道132及び133に達するように堆積室130内に延出させることができるアームの機能を果たすことができる1対の平行なチェーンコンベア171及び172を含むことができる。互いに直交して移動するように構成できる、軌道132及び133は、アクチュエータ131を扉112の前方に位置決めすることができる。アクチュエータ131が適所にあるときに、移送機構113を構成する1対のチェーンコンベア171及び172を、例えば図5Aに図示するように、一方のチェーンコンベアがアクチュエータ131の一方側に位置し且つ他方のチェーンコンベアがアクチュエータ131の他方側に位置する状態で、室110の外に延出させる。移送機構113の作動により、保持基材を室110の外に移動させ、保持基材をアクチュエータ131よりも上に位置決めすることができる。アクチュエータ131は、保持基材がもはや移送機構113と係合されなくなるように保持基材を移送機構113に対して持ち上げることなどにより保持基材と係合する。ここで係合解除された移送機構113は、例えば図5Bに図示するように室110内に格納可能である。移送機構113を邪魔にならない場所に移動させた状態で、軌道132及び133は、自由形状造形を行うために、取り付けられた保持基材と共にアクチュエータ131を堆積機器150に対して適切な位置に位置決めすることができる。堆積プロセス中に、保持基材又は母材をアクチュエータ131により移動させ続けることができる。堆積が完了した時点で、加工物は、加工物の搬入と同様の仕方で移送して搬入/搬出室内に戻すことができる。例えば、加工物を支えるアクチュエータ131は、それ自体を搬入/搬出室への扉の前方に位置決めすることができ、且つ移送機構113は、搬入/搬出室から堆積室内にアーム171及び172を再び延出させて、加工物をアクチュエータ131から持ち上げることができる。次いで、移送機構113は、加工物を支えながら搬入/搬出室内に後退することにより加工物を搬入/搬出室内に搬送することができる。例示の実施形態では、1組のローラ又は同様の支持及び移送構造(図示せず)がまた、保持基材及び加工物の搬入及び搬出を補助するために、扉111及び121に近接して室110及び120の外部に設けられてもよい。
【0079】
例示の実施形態において、搬入/搬出室110及び120は、堆積室130と連通しているときには堆積室130と同じ雰囲気条件下にある。したがって、例えば、堆積室130を不活性ガス雰囲気下で動作させる場合、搬入/搬出室110及び120もまた、堆積室130と大気連通しているときに不活性ガス雰囲気下で動作させる。そのような例示の実施形態において、不活性ガス雰囲気は、アルゴン、又はアルゴン-ヘリウム混合物を含み得る。
【0080】
搬入/搬出室110及び120へのアクセスを提供する扉のいずれか1つ又は複数は、所与の扉がいつ開放又は閉鎖されたかを検出できる1つ又は複数のセンサを備えることができる。堆積機器150を制御する制御システムに1つ又は複数のセンサを接続することができる。例示の実施形態では、1つ又は複数の扉が閉鎖されるべきときに搬入/搬出室110及び120の扉のいずれか1つ又は複数が開放されていることを1つ又は複数のセンサのいずれか1つが検出した場合に、或いは1つ又は複数の扉が閉じられて密封されるべきときに適切に閉じられて密封されていない場合に、1つ又は複数のセンサは、そのことを室システム100の1つ又は複数の制御システムに伝えることができる。1つ又は複数の制御システムは、進行中であれば造形プロセスを停止するために、又は造形プロセスが開始するのを防止するために、堆積機器150に信号を送信することができる。1つ又は複数のセンサはまた、サイレン、警告音声及び/又はビープ音などの可聴警報、閃光、1つ又は複数の室の内部の発光要素の点滅、1つ又は複数の制御システム上の画面警告などの可視警報、或いはこれらの組み合わせをトリガすることができる。
【0081】
堆積室
例示の実施形態において、室システム100は、少なくとも1つの堆積室130を含む。堆積室130は、SFFFを使用して加工物を生産するのに必要な設備を全て収納するのに十分な大きさとすることができる。例示の実施形態において、堆積室130は、室システム100を構成する室のうちの最大の室である。堆積室130は、立体自由形状造形が内部で実施される室である。堆積室130は、立体自由形状造形中に必要とされる条件に耐え得るように設計することができる。例示の実施形態において、立体自由形状造形は、プラズマ移行型アークを使用して行われる。特に、例示の実施形態では、立体自由形状造形は、2つのプラズマ移行型アークトーチを使用して実行することができる。代替的な実施形態において、立体自由形状造形では、電子ビーム堆積を使用することができる。代替的に、立体自由形状造形では、選択的レーザ焼結を使用することができる。堆積室は、任意の立体自由形状造形方法又は多層造形方法の任意の組み合わせが堆積室130内部で実施され得るように設計及び構成することができる。例示的な目的で、堆積室130は、本明細書ではプラズマ移行型アーク式立体自由形状造形方法と併せて説明される。
【0082】
例示の実施形態において、立体自由形状造形方法は、移動可能な堆積機器100を含み得る。堆積機器150の可動度を所望通りに設計することができる。例示の実施形態では、堆積機器150は、製造プロセス中に堆積機器を任意の方向に移動させることができる、ロボットアーム状、機械式アーム状、及び/又は油圧アーム状の装置に設けられる。例えば、プラズマ移行型アーク造形において、1つ又は複数のプラズマ移行型アークトーチは、加工物を形成するために必要に応じてプラズマ移行型アークトーチを移動させることができる1つ又は複数の機械式アームに接続されてもよい。代替的に、堆積機器150の運動は、1軸線のみに制限されてもよい。他の実施形態において、堆積機器150の運動は、2軸線に制限されてもよい。例えば、図1及び図2に図示するように、堆積機器150の運動は、ワイヤ供給材160と同じ線に沿った前後動に制限されてもよい。例示的な例において、堆積機器150は、軌道、レール、又はコンベアシステムと係合させることができる。軌道、レール、又はコンベアシステムは、例えば堆積室130の天井に位置してもよい。代替的に、軌道、レール、又はコンベアシステムは、堆積室130の壁に沿って位置してもよい。代替的に、軌道、レール、又はコンベアシステムは、堆積室130の床に位置してもよい。例示の実施形態において、堆積機器150は、2つ以上の軌道、レール、又はコンベアシステムに接続されてもよく、且つ軌道、レール、又はコンベアシステムは、室130の天井、壁、及び/又は床の1つ又は複数に位置する。更に代替的な実施形態において、堆積機器150は、固定されて移動可能でなくてもよいが、むしろ移動するのは加工物である。更に代替的な実施形態において、堆積機器150は、垂直方向又はZ方向にのみ移動可能である。更に代替的な実施形態において、堆積機器150は、上で説明したように1つ若しくは複数の軌道、レール、及び/又はコンベアシステムにより堆積室からサービス室に移動するだけでなく、垂直方向に、すなわち上下に移動することができる。
【0083】
堆積機器150の移動を実現するために、モータ、ギヤ、ホイール、プーリシステム、及びコンベアの任意の組み合わせを使用することができる。任意のかかるモータ、ギヤ、ホイール、プーリシステム、及びコンベアは、堆積機器150に設けることができる。代替的に、モータ、ギヤ、ホイール、プーリシステム、及びコンベアは、堆積室130の内部又は外部に設けることができる。例示の実施形態において、モータ、ギヤ、ホイール、プーリシステム、及びコンベアのいくつかは、堆積機器150に設けることができ、またいくつかは堆積室130の内部又は外部に設けることができる。堆積機器150の運動は、堆積室130に関連付けられた制御システムを使用して制御することができる。代替的に、堆積機器150の運動の制御は、個別の制御システムを通じて成し遂げることができる。堆積機器150の運動のための制御システムは、手動、自動、又はこれらの組み合わせとすることができる。
【0084】
例示の実施形態において、堆積室130はまた、アクチュエータ131を含む。アクチュエータ131は、物体の造形中に保持基材又は母材を保持するために使用することができる。アクチュエータ131はまた、保持基材、母材、又は加工物を多方向に移動させるように設計することができる。代替的に、アクチュエータ131の運動は、固定位置に留まるように設計することができる。例示の実施形態では、造形中に堆積機器150が固定位置に留まる一方で、アクチュエータ131は多方向に移動することができる。代替的に、堆積機器150とアクチュエータ131とは両方とも、造形中に移動する。更に代替的な実施形態では、アクチュエータ131が固定位置に留まる一方で、堆積機器150は造形中に移動する。金属ワイヤを溶融させることで得られる金属材料の連続した層を堆積させることにより3次元物体又は加工物を完成させるために、堆積機器150及び/又はアクチュエータ131を移動させることにより、堆積パターンを定めることができる。
【0085】
アクチュエータ131は、任意の所望の方向へのアクチュエータの移動を可能にする軌道システム上に設けることができる。アクチュエータを移動させるために使用される機構は、限定的なものとみなされるべきではない。図1及び図2に図示する例示の実施形態において、アクチュエータ131は、アクチュエータ131を第1の軸線に沿って移動させることができる第1の軌道132上に設けることができる。軌道132自体は、軌道132ひいてはアクチュエータ131を第2の軸線に沿って移動させることができる第2の軌道133上に設けることができる。好ましい実施形態において、軌道132の運動軸線は、軌道133の運動軸線に直交する。図示の配置では、アクチュエータ131に対して360°の回転を含む任意の運動を達成することができる。アクチュエータ131はまた、アクチュエータ131を垂直方向に移動させることができる、昇降アーム又はピストン又は同様の装置を備えることができる。軌道132及び133、並びにアクチュエータ131は、圧力、温度、雰囲気に好適であり且つ立体自由形状造形中に保持基材又は加工物を保持するのに好適である任意の材料で形成することができる。例示の実施形態において、軌道132及び133並びにアクチュエータ131は、同じ材料で作製される。代替的な実施形態において、アクチュエータ131は、軌道132及び133の材料とは異なる材料で作製される。代替的に、軌道132及び133並びにアクチュエータ131の各々は、異なる材料で作製される。使用できる例示の材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金及び鋼などの、金属が挙げられる。
【0086】
また、アクチュエータ131並びに軌道132及び133のいずれか1つ又は複数は、加熱又は冷却システムを備えることができる。例示の実施形態において、アクチュエータ131並びに軌道132及び133の1つ又は複数は、熱交換器を備える。例示の実施形態において、アクチュエータ131並びに軌道132及び133の1つ又は複数は、ヒータを備える。例示の実施形態において、アクチュエータ131並びに軌道132及び133の1つ又は複数は、ヒートシンクを備える。例示の実施形態において、アクチュエータ131並びに軌道132及び133の1つ又は複数は、冷却流体を含む冷却器又は冷却システムを備える。冷却流体は、空気、不活性ガス、若しくは水又は他の好適な流体であってもよい。液体である冷却流体の例としては、水、アルキレングリコール(例えば、エチレン又はプロピレングリコール)、鉱油、シリコーン油、又はこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの用途において、冷却流体は、水とアルキレングリコールとを含む。熱交換器の低温側の冷却流体は、約5℃~約25℃の温度範囲となるように選択することができる。
【0087】
軌道132及び133は、モータ、ギヤ、プーリシステム又は類似の機構の任意の組み合わせにより動作させてもよい。アクチュエータ131の移動は、制御システムにより制御することができる。制御システムは、手動又は自動とすることができる。アクチュエータ131用の制御システムは、堆積室130を制御するのと同じシステムとすることができる。代替的に、アクチュエータ131は、それ自体の個別の制御システムを有することができる。
【0088】
堆積室130の雰囲気、温度及び圧力は、搬入/搬出室110及び120に関して上で説明したのと同じ方式で監視、修正及び制御することができる。例えば、堆積室130は、室130内の圧力を監視するために1つ又は複数の圧力計を備え得る。圧力計は、室130を制御する制御システムと通信することができる。また、堆積室130は、温度制御装置を備えることができる。温度制御装置は、電気ヒータ、ガスヒータ、熱交換器、冷却器、電気冷却システム、又はこれらの組み合わせを含むことができる。堆積室130は、室の温度を測定するために、1つ若しくは複数の温度計、熱電対又は他の温度検知装置、或いはこれらの組み合わせを備えることができる。堆積室130を制御する制御システムに温度検知装置及び温度制御装置を接続することができる。
【0089】
堆積室130は、それ自体の個別の換気システムを備えることができる。堆積室130には、個別にアルゴンなどの不活性ガスを充填することができる。堆積室130には、個別に空気を充填することができる。堆積室130は、個別に真空条件下に保つことができる。堆積室130内の雰囲気は、個別に排気することができる。堆積室130の温度及び圧力は、個別に制御及び維持することができる。図4に図示するように、空気より重い不活性ガス又はガス混合物が立体自由形状造形中に雰囲気として使用される例示の実施形態では、堆積室130は、室の底部分における1つ若しくは複数の真空又は不活性ガス通気孔310と、室の上部分における1つ若しくは複数の真空又は空気又は軽いガス通気孔320とを含むことができる。このように、より重い不活性ガスを底部に導入するか又は底部から排気することができ、且つより軽い雰囲気、例えば空気を室の上部分に導入するか又は室の上部分から排気することができる。このことは、より効果的なシステムが雰囲気を完全に流し出して置き換えることを可能にする。空気のデッドポケットが作り出されるのを回避することを更に促進するために、堆積室130の床330は湾曲状であってもよい。図4に図示するように、例えば、床330は、各室壁に延びる下方に傾斜した側部を有することができる。代替的に、床330は、1つのみ又は2つの下方に傾斜した側部を有し得る。
【0090】
堆積室130の雰囲気を排気するために使用される通気孔は、使用されるファンの能力に応じて任意の好適な流量で動作することができる。例えば、排気孔は、3000~6000Sm/hrで動作することができる。例示の実施形態において、使用されるファンの能力は、4500Sm/hrである。同様に、通気孔は、不活性ガス又は他のガス又は空気を任意の好適な流量で堆積室130の内部に導入する。いくつかの用途において、堆積室130への最大流入量は、1500L/minである。質量流量制御器は、室内への不活性ガス若しくは他のガス又は空気の流入量を調整するために使用することができる。流入量は、約10~約1500L/min、又は約100~1500L/minの範囲とすることができる。室内の圧力は、閉ループ制御システムとすることができ、このシステムでは、排気弁を開放及び閉鎖することにより圧力を調整することができる。システムは、システムが所望の圧力及び酸素レベルに維持されるアイドルモードを含むことができる。アイドルモード中に、約10L/min~約100L/minの範囲の流量などの、室内への不活性ガス又は他のガスの低流量は、維持することができ、且つ排気弁を通る流れを増加又は減少させるように出口弁を調節することにより修正することができる。
【0091】
例示の実施形態において、より重いガス又はガス混合物雰囲気を導入又は排気するために使用される1つ又は複数の通気孔310は床に位置することができる。図4に示すように、例示の実施形態では、1つ又は複数の通気孔310は、床の直上の室壁の底部に位置することができる。例えば、通気孔310は、堆積室130の1つ又は複数の隅部に、床330の下方に傾斜した側部が室壁と交わる場所の真上に位置することができる。更に代替的な実施形態において、1つ又は複数の通気孔310は、床と室壁の底部分との両方に位置することができる。通気孔310はファンを備えることができる。ファンは、(例えば、所望の速度(rpm)及び空気流れ(m/hr)を有するように)選択することができ、且つファンの運転に起因する室内の大気乱流の導入をファンの運転が最小限に抑えるように位置決めすることができる。
【0092】
例示の実施形態において、空気などの軽いガス雰囲気を導入又は排気するために使用される1つ又は複数の通気孔320は、室の天井に位置する。例示の実施形態において、1つ又は複数の通気孔320は、室の天井直下の室壁の上部分に位置する。例示の実施形態において、1つ又は複数の通気孔320は、天井と室の天井直下の室壁の上部分との両方に位置する。通気孔320はファンを備えることができる。
【0093】
堆積室130の通気孔を別個の真空ポンプに接続することができる。代替的に、個別に制御される弁によって堆積室130の通気孔を、室システム100の全体に対して使用される単一の真空ポンプに接続することができる。各通気孔自体の個別に制御される弁を用いて各通気孔を真空に接続することができる。代替的に、個別に動作させる共通の弁によって室130の2つ以上の通気孔を真空に接続することができる。例えば、個別に動作させる第1の共通の弁によって堆積室130の全ての上部通気孔を真空に接続することができ、且つ個別に動作させる第2の共通の弁によって堆積室130の全ての底部通気孔を真空に接続することができる。これらの弁を開放又は閉鎖することにより、室内の圧力を調整することができる。例えば、真空に接続された通気孔を閉鎖して、不活性ガスに接続された通気孔を開放することにより、圧力を高めることができる。逆に、不活性ガスに接続された通気孔を閉鎖して、真空に接続された通気孔を開放することにより、圧力を低下させることができる。
【0094】
堆積室130の通気孔は、ガス源に対して同様に配設することができる。例えば、各通気孔を個別のガス源に接続することができる。代替的に、2つ以上の通気孔を共通のガス源に接続することができる。この後者の実施形態において、各通気孔は、個別に制御される弁により個別に制御することができる。代替的に、個別に制御される共通の弁によって堆積室130の2つ以上の通気孔を源に接続することができる。例えば、個別に動作させる第1の共通の弁によって全ての上部通気孔を第1のガス源に接続することができ、且つ個別に動作させる第2の共通の弁によって全ての底部通気孔を第2のガス源に接続することができる。また、底部通気孔及び上部通気孔は全て、個別に制御される1つ又は複数の弁により動作させる通気孔の各群と共に共通のガス源に接続されてもよい。
【0095】
堆積室130内部の温度を制御する追加の手段として、室130内部のガスの温度を制御するための手段を実装することができる。例えば、図3に図示するように、堆積室130は、ファン220と任意選択的に熱交換器230とを含む再循環システム200を備え得る。ファン220は、堆積室130の内部のガスを吸い込んで、ガスに熱交換器230を通過させるために使用することができる。熱交換器230は、熱交換器230を通過するガスを所望通りに冷却又は加熱することができる。例示の実施形態において、熱交換器230は、熱交換器230を通過するガスを冷却する。熱交換器230を通過した後に、冷却されたガスは、配管及び通気システム240を通して堆積室130内に戻るように導かれる。入口通気孔は、室130の天井に位置することができる。代替的に、通気孔は、室130の室壁のいずれか1つ又は複数に位置することができる。代替的に、入口通気孔は、室130の床に位置することができる。例示の実施形態において、入口通気孔は、堆積室130の天井、室壁、及び床のうちの2つ以上の位置に位置することができる。再循環システム200を通る流量は、ファン220を用いて制御することができる。例示の実施形態において、ファン220は、3000~6000Sm/hrの範囲の能力を有する。例示の実施形態において、ファン220は、4500Sm/hrの能力を有する。室内において所望の条件を達成するために、空気流れを監視及び制御することができる。ファンは、(例えば、所望の速度(rpm)及び空気流れ(Sm/hr)を有するように)選択することができ、且つファンの運転に起因する室内の大気乱流の導入をファンの運転が最小限に抑えるように位置決めすることができる。いくつかの用途において、ファンは、堆積中にオフにすることができる。
【0096】
再循環システム200は、室130の他の任意の換気システムとは独立して動作させることができる。再循環機器200のための制御は、手動、自動、又はこれらの組み合わせとすることができる。例示の実施形態において、室130に作用する制御システムは、再循環システム200を制御することもできる。代替的に、再循環システム200は、それ自体の個別の制御システムを有することができる。例示の実施形態において、再循環システム200は、動作中に堆積室130の温度を変調又は良好に制御するように立体自由形状造形中に動作させることができる。例えば、再循環システム200は、プラズマ移行型アークによる自由形状造形中に堆積室130の内部の雰囲気を冷却するために使用することができる。造形中の堆積室130の冷却は、堆積室130の過熱を防止する利点を有する。堆積室130の冷却はまた、堆積室130内に見られる設備の過熱を防止することができる。堆積室130の冷却は更に、室システム100全体又は少なくとも隣り合う室の過熱を防止することができる。
【0097】
図1に示すように、例示の実施形態では、堆積室130は、好ましくは、少なくとも1つの窓135を備える。2つ以上の窓を形成することができる。窓は、作業者が立体自由形状造形を監視することを可能にする。窓はまた、堆積室130内部に見られる設備を作業者が監視することを可能にする。1つ又は複数の窓135は、これらの窓135が設けられる室壁の任意の部分を形成することができる。例えば、窓135は、室壁全体を占有してもよい。代替的に、窓135は、室壁の約4分の3を占有してもよい。代替的に、窓135は、室壁の約半分を占有してもよい。代替的に、窓135は、室壁の約4分の1を占有してもよい。
【0098】
既に説明したように、窓などの視認ポータルは、任意の好適な透明材料で作製することができる。透明材料の例としては、ガラス、アクリル材料及び熱可塑性ポリマーが挙げられる。例示の実施形態において、視認ポータルは、ポリ(メチルメタクリレート)などのアクリル材料で作製することができる。代替的に、視認ポータルはガラスとすることができる。例示の実施形態において、視認ポータルは、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスで作製される。ガラスは、電磁放射線の選択された波長を反射できる1つ又は複数の透明金属酸化物層で被覆することができる。いくつかの実施形態において、ガラスは、赤外電磁放射線を反射することができる。いくつかの実施形態において、ガラスは、紫外電磁放射線を反射することができる。ガラスは単一層で存在することができ、又は複数のガラス層を使用することができる。いくつかの実施形態では、空間により分離された少なくとも2つのガラス層が存在する。2つのガラス層の間の空間には、不活性ガスを充填することができる。いくつかの実施形態では、2つのガラス層の間の空間にはアルゴンが充填される。この構成は、窓を透過する紫外放射線の最大約85%を遮断することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのガラス層が存在し、且つポリマーフィルムの中間層が2つのガラス層の間に存在し、合わせガラスを形成する。ポリマーフィルムは、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)などの、任意のポリマー材料を有することができる。合わせガラスは、窓を透過する紫外放射線のほぼ100%を遮断することができる。
【0099】
代替的に、視認ポータルは、熱可塑性ポリマーで作製することができる。例えば、視認ポータルは、ポリカーボネート、アクリル又はポリエチレンテレフタレートで作製されてもよい。熱可塑性材料は単層として存在することができ、又は任意選択的にアルゴンを充填できる、空間をシート間に含めるように2つ以上のシートを造形することができ、又は熱可塑性ポリマーの2つのシート間にポリマーフィルムの中間層を含めることによりプラスチック製の合わせ視認ポータルを準備することができる。1つの室の1つ又は複数の視認ポータルに使用される材料は、他の任意の室の1つ又は複数の視認ポータルに使用される材料と同じか又は異なる材料とすることができる。また、1つの室の異なる視認ポータルは、同じか又は異なる材料で作製することができる。
【0100】
また、堆積室130の視認ポータルは、必要に応じて1つ又は複数の視認画面を更に備え得る。例えば、プラズマ移行型アークが立体自由形状造形に使用される実施形態では、アークを肉眼で監視することが不可能であるか、又は困難である可能性がある。実際に、プロセスを肉眼で観察しようとする試みにより、アークにより放射される電磁放射線が原因で目への損傷が生じる場合がある。よって、適切なレベルの保護を与える遮光数を有するフィルタレンズなどの視認画面を1つ又は複数の窓135における所望の位置に設けることができる。例示の実施形態において、適切な遮光数を有するフィルタレンズが窓135全体にわたって設けられる。代替的な例において、適切な遮光数を有するフィルタレンズは、窓135における1つ又は複数の別々の位置にのみ所望通りに設けることができる。また、単一のフィルタレンズが窓135全体にわたって使用されるか、又は複数のフィルタレンズが異なる別々の位置に設けられるかにかかわらず、窓135の異なる位置に異なる遮光数を提供することができる。例示の実施形態において、遮光数は、5~15の間で異なるものとすることができる。例示の実施形態において、1つ又は複数の位置における遮光数は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15とすることができる。
【0101】
フィルタレンズは、任意の好適な材料を有することができる。材料の例としては、ガラス、アクリルポリマー及び熱可塑性ポリマーが挙げられる。例示の実施形態において、フィルタレンズは、ポリ(メチルメタクリレート)などのアクリル材料で作製することができる。代替的に、フィルタレンズはガラスとすることができる。例示の実施形態において、フィルタレンズは、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスで作製される。代替的な実施形態において、フィルタレンズは、ポリカーボネートで作製することができる。フィルタレンズは、1つ又は複数の窓135に直接貼り付けることができる。代替的に、フィルタレンズは、1つ又は複数の窓135を形成するために使用することができる。代替的な実施形態において、フィルタレンズは、1つ又は複数の窓135に組み込まれてもよい。例示の実施形態において、フィルタレンズは、自立型のものとし、且つ窓135の前面に位置決めすることができる。例示の実施形態において、フィルタレンズは、1つ又は複数の窓135に設けられない。
【0102】
既に述べたように、堆積室130もまた、他の室のいずれかのように、室130を監視するために1つ又は複数のカメラを備え得る。堆積室130内部の1つ又は複数のカメラはまた、造形プロセスを監視するために使用されてもよい。ビデオカメラで撮影された映像は録画することができる。また、映像をモニタにライブでストリーミングすることもできる。モニタは、室130の外部に位置することができる。モニタは、室130に近接して位置することができる。モニタは、室130から離れた位置に位置することができる。堆積室130はまた、既に述べたように室130の内部に光を提供するために1つ又は複数の照明器具を備え得る。
【0103】
堆積室130は、1つ又は複数の扉を含み得る。例示の実施形態において、堆積室130は、搬入/搬出室への少なくとも1つの扉を含み得る。図1に示す例示の実施形態において、堆積室130は、2つの搬入/搬出堆積室110及び120に接続される。図1に示すように、壁は、堆積室130と1つ又は複数の搬入/搬出室との間で共有することができる。図示の実施形態において、堆積室130は、扉112及び122を搬入/搬出室110及び120と共有することができる。扉112及び122については、搬入/搬出室110及び120と併せて上で既に説明した。代替的な実施形態において、堆積室と搬入/搬出室との間の通路は、2つ以上の扉を使用して密封することができる。例えば、2つの扉は、互いに向かい合わせで使用することができる。1つの扉又は複数の扉が使用されるかどうかにかかわらず、扉は、扉の材料及び任意選択の1つ又は複数の密封部材を含め、上で既に述べたのと同じ構造を有し、且つ上で既に述べたように動作するように設計することができる。搬入/搬出室及び堆積室の各々がそれ自体の扉を有する実施形態において、各扉は、個別に動作させることができる。搬入/搬出室の扉の動作は、搬入/搬出室の制御システムにより制御することができる。堆積室の扉の動作は、堆積室用の制御システムにより制御することができる。代替的に、各扉は、それ自体の制御システムを有し得る。更に代替的な実施形態において、制御システムは、両方の扉を動作させるために使用することができる。
【0104】
堆積室130と1つ又は複数の搬入/搬出室との間の上で説明したのと同様の扉配置を堆積室130とサービス室140との間にも設けることができる。サービス室140用の密封扉の代替的な実施形態について以下に説明する。
【0105】
図示しないが、堆積室130はまた、外部への扉を有し得る。そのような扉の構造及び要素は、1つ又は複数の密封部材の材料及び任意選択の使用を含め、本明細書で説明した他の扉の構造及び要素と同じものであり、且つ本明細書で説明した他の扉のように動作するように設計される。
【0106】
堆積室130へのアクセスを提供する扉又は開口部のいずれか1つ又は複数には、所与の扉がいつ開放又は閉鎖されたかを検出できる1つ又は複数のセンサを取り付けることができる。堆積機器150を制御する制御システムに1つ又は複数のセンサを接続することができる。例示の実施形態では、堆積室130にアクセスする扉のいずれか1つ又は複数が、閉鎖されるべきときに開放されているか又は密封されるべきときに適切に密封されていないことを、1つ又は複数のセンサのいずれか1つが検出した場合に、1つ又は複数のセンサは、室システム100の1つ又は複数の制御システムに信号を送信することによりこのことを伝えることができる。造形中であれば、1つ又は複数のセンサから信号を受信したことに応答して、1つ又は複数の制御システムは、進行中であれば造形プロセスを停止するために、又は造形プロセスが開始するのを防止するために、堆積機器150に信号を送信することができる。1つ又は複数のセンサはまた、サイレン、警告音声及び/又はビープ音などの可聴警報、閃光、1つ又は複数の室の内部の発光要素の点滅、1つ又は複数の制御システム上の画面警告などの可視警報、或いはこれらの組み合わせをトリガしてもよい。
【0107】
サービス室
室システム100は、任意選択的に、サービス室140を含み得る。サービス室140は、その名称が暗示するように、堆積室130にアクセスする必要なしに又は室130を外部雰囲気に曝露せずに堆積機器150の点検を実施するために使用することができる。所望の雰囲気を維持できることは、室130内部の所望の雰囲気が真空、不活性ガス、空気、又はその他であるかにかかわらず、経済的な利点及びより少ない休止時間をもたらすことができる。これは、堆積機器150の保守点検が必要になる度に堆積室130内の雰囲気を完全に置き換えるためのエネルギー、材料又は時間が不要であるからである。
【0108】
サービス室140は、任意の望ましい大きさとすることができる。例示の実施形態において、サービス室140は、堆積機器150を少なくとも収納するのに十分なほど大きい。例示の実施形態において、サービス室140は、堆積機器150の大きさよりも少なくとも約20%大きい。代替的に、サービス室140は、堆積機器150の大きさよりも少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、175%、200%、300%、400%、500%大きい。あまりにも大きなサイズのサービス室140は、サービス室140を排気してサービス室140に充填するのにコストのかかる多大なエネルギーを必要とする。サービス室140は、堆積室130を排気して再充填するためのコスト及び時間を費やす必要のないようにするために使用することができ、したがって、サービス室140の大きさは、堆積室130の大きさと比較してはるかに小さな大きさであるべきである。例示の実施形態において、室140の大きさは、依然として、堆積機器150の収納を可能にするとともに、サービス室140を開放する必要なしに少なくともある程度の保守を行うのに十分な余地を与える、できる限り小さな大きさである。
【0109】
サービス室140は、堆積室130と連通する任意の場所に位置することができる。例示の実施形態において、サービス室140は、堆積室130の1つの端壁の中央と位置合わせされるように位置する。例示の実施形態において、サービス室140は、堆積機器150へのワイヤ供給材と位置合わせされる。堆積機器150へのワイヤ供給材とサービス室140を位置合わせすることにより、ワイヤ供給材160を湾曲させずに、又はワイヤ供給材160の取り外しを必要とせずに、堆積機器150をサービス室140の内外に移動させることが可能である。このことは、ワイヤ供給材160に影響を及ぼさないし、堆積機器150に対する保守が行われる度にワイヤ供給材160を取り外して再設置する時間を無駄にもしないという利点を与える。
【0110】
例示の実施形態において、サービス室140は、サービス室140の先端部に位置する開口部142を横切る堆積室130からのワイヤ供給材160の通過を可能にする。開口部142には、外部の雰囲気ガスがサービス室140内に入るのを防止する手段を設けることができる。このような手段は、室システム100の動作条件に応じて設計することができる。堆積室130が真空下に維持される例示の実施形態において、手段は、真空状態を維持しながらワイヤ供給材160が通過することを可能にする1つ又は複数の密封ガスケット又は膜などの、密封手段を含むことができる。堆積室130を不活性ガス雰囲気中で動作させる例示の実施形態において、開口部142は、不活性ガス送風機を備えることができる。ガス送風機は、開口部142の外に不活性ガスを連続的に送風することができ、これにより、外部の雰囲気ガスの流入を防止するのに役立つ。送風機は任意の好適な送風機とすることができ、且つ送風される不活性ガスの量は、外部の雰囲気ガスの流入を防止するのに役立つことができる適切な範囲内の任意の量とすることができる。例示の実施形態において、送風機は、約10L/minの流量で送風することができる。代替的な実施形態において、送風機は、10L/minよりも高い流量、例えば11L/min、13L/min、15L/min、20L/minで送風することができる。例示の実施形態において、送風機は、任意のガスが室内に入るのを防止するために室の外部の圧力よりも高い圧力を生成する任意の流量で送風することができる。
【0111】
サービス室140はまた、堆積機器150の保守を実施するための適切な手段を備えることができる。例えば、図1に図示するように、サービス室140は、サービス室140を開放せずに作業者が堆積機器150で作業することを可能にする1組の手袋143を備えることができる。したがって、サービス室140をサービス室140と外部の周囲環境との大気連通に供することなく点検を提供することができる。1組の手袋143は、サービス室140の扉を開放せずに点検が行われることを可能にする。
【0112】
サービス室140はまた、1つ又は複数の窓146を備えることができる。窓146は、サービス室140を開放する必要なしに作業者が堆積機器150を視認することを可能にし得る。例えば、作業者は、手袋143を使用しながら堆積機器150を視認するために1つ又は複数の窓146を使用してもよい。
【0113】
サービス室140はまた、アクセスポータル147を備え得る。ポータルは、1つ又は複数の窓146に組み込まれてもよい。代替的に、ポータル147は、1つ又は複数の窓146とは別個に設けることができる。ポータル147は、堆積機器150の保守を行うために堆積機器150への直接アクセスを可能にするように設計することができる。例えば、ポータル147は、堆積機器150における部品を交換するために使用されてもよい。ポータル147は、堆積機器150の取り外し又は設置を可能にするように設計することができる。先に述べた扉と同じように、ポータル147は、揺動開放又はスライドするように設計することができる。ポータル147はまた、揺動開放する2つのパネルを備えることができる。ポータル147は、閉鎖されたときにガス不透過性密封を形成するように設計することができる。密封は、扉と共に使用される既に説明した1つ又は複数の密封部材を使用して達成することができる。また、閉鎖されたときにポータル147に圧力を加えて密封を高めるために、ヒンジ及び/又はばねなどの、1つ又は複数の圧力機構が使用されてもよい。圧力は、ポータル147が開放されるときに取り除くことができる。ポータル147はまた、ポータル147がいつ開放又は閉鎖されたかを検出できるセンサを含むことができる。堆積機器150を制御する制御システムにセンサを接続することができる。例示の実施形態では、ポータル147が造形中に開放されたことをポータル147のセンサが検出した場合に、制御システムは、造形プロセスを停止するために信号を送信することができる。
【0114】
堆積室130の内部に位置する一方で堆積機器150用に設けられた運動機器に関して既に説明したように、堆積機器150を軌道システムにより堆積室130からサービス室140に移送することができる。例示の実施形態では、軌道システムがサービス室140の天井に設けられる。代替的に、軌道は、サービス室140の室壁又は底部に設けることができる。室140の内部の軌道は、堆積室130内にある間に堆積機器150が接続される、堆積室130内に設けられた軌道の延長部とすることができる。代替的に、室140内の軌道は、堆積機器150がサービス室140内に入ったときに堆積機器150に係合できる別個の軌道とすることができる。堆積室130の内部又は外部に設けられたものと同じモータ、ギヤ、ホイール、プーリシステム、及びコンベアにより、サービス室140の内部の軌道上の堆積機器150を押すか又は引っ張ることができる。代替的に、モータ、ギヤ、ホイール、プーリシステム、及びコンベアは、堆積機器150に設けることができる。代替的に、モータ、ギヤ、ホイール、プーリシステム、及びコンベアは、サービス室140の内部又は外部に設けることができる。代替的に、モータ、ギヤ、ホイール、プーリシステム、及びコンベアのいくつかは、サービス室140の内部又は外部に設けることができ、またいくつかは堆積機器150に設けることができる。
【0115】
サービス室140は、開口部141を通じて堆積室130と連通することができる。開口部141は、好ましくは、少なくとも堆積機器150が通過することを可能にするような大きさとされるべきである。堆積室130と搬入/搬出室110及び120との間の既に説明した1つ又は複数の扉を使用して、堆積室130から開口部141を密封することができる。ここでは、同じ種類の扉構造、材料、設計、及び制御を使用することができる。代替的な実施形態では、開口部141に扉を配置する代わりに、任意選択の1つ又は複数の密封部材145を備えた扉144を、サービス装置140からの堆積機器150の先端部に取り付けることができる。そのような例示の実施形態において、図2に示すように、扉144は、堆積機器150がサービス室140に移送されたときに扉144及び任意選択の1つ又は複数の密封部材145が開口部141を密封するように配設されてもよい。したがって、開口部141は、堆積室150をサービス室140内に移送することにより扉144及び1つ又は複数の密封部材145により自動で密封される。図1及び図2の図示の実施形態の利点は、ワイヤ供給材160の湾曲を気にする必要なしに又はワイヤ供給材160を取り外す必要なしに開口部141を密封できることである。図1に図示するように、この配置はまた、堆積機器150が堆積室130の内部に位置する度にサービス室140が堆積室130と連通することをもたらす。
【0116】
他の室と同じように、サービス室140にも、サービス室140が真空下に、不活性ガス雰囲気若しくは他のガス雰囲気中に、又は空気中にあることを可能にするサービス室140自体の個別の換気システムを設けることができる。特に、使用される不活性ガスが、空気より重い、例えばアルゴン又はアルゴン-ヘリウム混合物である場合には、上で説明したのと同じ通気孔の配置を使用することができる。例示の実施形態では、より重いガス又はガス混合物を導入及び/又は排気するために使用される1つ又は複数の通気孔が、サービス室140の底部分に設けられ、その一方で、より軽いガス又はガス混合物、例えば空気を導入及び/又は排気するために使用される通気孔が、サービス室140の上部分に設けられる。
【0117】
また、サービス室140には、他の全ての室に関して説明したものと同様の、サービス室140自体の個別の温度及び圧力の監視及び制御装置を設けることができる。サービス室140の全ての扉、ポータル及び開口部はまた、扉又は開口部が密封されるべきときに適切に密封されていないかどうかを検出して、そのことを室システム100の1つ又は複数の制御システムに伝えるために、搬入/搬出室110及び120並びに堆積室130における扉及び開口部と同じように1つ又は複数のセンサを備えることができ、制御システムは、可視警報及び/又は可聴警報を作動させることができ、且つ立体自由形状造形を停止するか又は立体自由形状造形の開始を防止することができる。ガス送風機か又は外部の雰囲気ガスがサービス室140内に入るのを防止する他の手段が適切に機能していることを監視するために、開口部142に対して1つ又は複数のセンサを使用することができる。
【0118】
以下の例示の解説は、単に例示的な目的のために含まれており、本明細書で提供される実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。
【0119】
搬入/搬出室の使用
例示の実施形態において、堆積室130は、所望の雰囲気を設定することにより立体自由形状製造のために準備される。例えば、空気は、堆積室130から排気されて、アルゴン又はアルゴン-ヘリウム混合物などの不活性ガス又は不活性ガス混合物に置き換えられる。空気は、堆積室130の上部分における第1の組の1つ又は複数の通気孔に接続された真空ポンプを使用して堆積室130から排気される。真空ポンプの作動後に、堆積システム130の第1の組の通気孔に真空を接続する弁を動作させるために、制御システムを使用することができる。制御システムは、手動のもの、コンピュータ化されたもの、又はこれらの組み合わせであってもよい。第1の組の通気孔は、例えば天井に及び/又は室壁の上部分に位置することができる。真空を適用することにより、堆積室130の上部分に位置する第1の組の通気孔を通して堆積室130から空気が引き出される。堆積室130からの空気の排気と同時に、堆積室130の換気システムに真空を接続する弁を動作させる制御システムと同じか又は異なるものとすることができる、制御システムが、不活性ガス又は不活性ガス混合物を堆積室130内に導入するために使用される。この後者の制御システムはまた、手動のもの、コンピュータ化されたもの、又はこれら両方の組み合わせであってもよい。不活性ガス又は不活性ガス混合物は、堆積室130の底部分、すなわち床及び/又は室壁の底部分に位置する第2の組の1つ又は複数の通気孔を通して堆積室130内に導入される。不活性ガス又は不活性ガス混合物は、空気よりも重い少なくとも1つのガスを含む。このように、堆積室130の頂部から空気が排気されるときに、不活性ガス又は不活性ガス混合物が底部から導入される。不活性ガス又は不活性ガス混合物の供給は、第1の組の通気孔とは別個である堆積室130の第2の組の通気孔に接続された弁を開放することにより行うことができる。
【0120】
堆積室130内への不活性ガス又は不活性ガス混合物の供給及び空気の排気は、空気のデッドポケットの形成が最小限に抑えられるか又は排除されるように実施される。このプロセスは、酸素の存在が50ppm未満であることを堆積室130内に存在する酸素検出器が検出するまで十分な時間にわたって継続する。このプロセス中に、堆積室の圧力は、圧力計を使用して監視され、且つ大気圧よりも高い約3~約6ミリバールの範囲となるように調節される。
【0121】
上記プロセス中に、堆積室130は、1つ又は複数の扉により任意の搬入/搬出室及び外部雰囲気から封止される。
【0122】
保持基材は、作業者へのアクセスを提供する搬入/搬出室110の扉111を開放して、搬入/搬出室110の内部に位置するコンベア113の上に保持基材を位置決めすることにより、搬入/搬出室110に搬入される。保持基材が搬入/搬出室110に搬入された時点で、ガス不透過性密封を提供するために1つ又は複数のアクセス扉111を閉鎖することができる。次いで、搬入/搬出室の雰囲気が不活性ガス又は不活性ガス混合物のうちの一方に置き換えられる。プロセスは、堆積室130に関して説明したプロセスと同様である。真空ポンプが、室から空気を排気するために、搬入/搬出室の上部分における第1の組の1つ又は複数の通気孔に接続され、その一方で、空気よりも重い不活性ガス又はガス混合物が、搬入/搬出室の底部に位置する第2の組の1つ又は複数の通気孔から導入される。搬入/搬出室の雰囲気は、堆積室の雰囲気と実質的に同じ雰囲気にされ、搬入/搬出室の個別の酸素検出器及び圧力計を使用して状態が測定される。
【0123】
搬入/搬出室110の雰囲気が堆積室130の雰囲気と実質的に同じになった時点で、堆積室130から搬入/搬出室110を密封する1つ又は複数の扉112が開放される。次いで、搬入/搬出室110の内部のコンベア113は、保持基材を堆積室130の内部に位置するアクチュエータ131上に移送するように動作させ、且つ第1の保持基材を受け入れる準備の整った1つ又は複数の扉112に近接して位置決めされる。
【0124】
移送が達成された時点で、アクチュエータ131が立体自由形状造形のための開始位置に移動し、1つ又は複数の扉112が閉鎖される。次いで、立体自由形状造形プロセスが堆積室130の内部で開始する。造形中に、搬入/搬出室110の内部の不活性雰囲気が維持される。造形中に、堆積室130の過熱及び/又は堆積室130の内部に位置する設備の過熱を防止する目的で自由形状造形中に不活性ガス又はガス混合物を冷やすために、堆積室130の再循環システム200も作動させることができる。
【0125】
その間に、アクセス扉121を開放して第2の保持基材をコンベア123上に位置決めすることにより、第2の保持基材が搬入/搬出室120に搬入される。次いで、ガス不透過性密封を提供するためにアクセス扉121が閉鎖され、内部の雰囲気が、搬入/搬出室110に関して上で説明したように、不活性雰囲気に置き換えられる。
【0126】
第1の加工物を生産するために第1の保持基材を使用して立体自由形状造形が完了した時点で、製造プロセスが停止し、ここで第1の加工物を保持しているアクチュエータ131が、1つ又は複数の扉112に近接した位置に戻る。1つ又は複数の扉112が再び開放され、コンベア113がアクチュエータ131から第1の加工物を回収する。第1の加工物がコンベア113上に戻された後に、1つ又は複数の扉112が再び密閉される。
【0127】
第1の加工物が搬入/搬出室110に移送されて1つ又は複数の扉112が閉鎖された後に、アクチュエータ131を1つ又は複数の扉122に近接した位置に移動させる。次いで、1つ又は複数の扉122が開放し、コンベア123が第2の保持基材をアクチュエータ131上に移送する。移送が行われた時点で、1つ又は複数の扉122が密閉され、アクチュエータ131が立体自由形状造形のための開始位置に戻り、そして、立体自由形状造形が第2の保持基材上で開始する。この造形プロセス中に、搬入/搬出室120内の不活性雰囲気が維持される。
【0128】
そして、搬入/搬出室110の底部の1組の1つ又は複数の通気孔に真空を適用することにより、且つ搬入/搬出室110の上部の1組の1つ又は複数の通気孔を通して空気を導入することにより、搬入/搬出室110内の雰囲気が空気に置き換えられる。搬入/搬出室110内の雰囲気が大気圧の周囲空気に置き換えられた時点で、1つ又は複数の扉111が開放されて、第1の加工物が回収される。このように、第1の加工物を回収する作業者は、作業者に有害であり得る不活性ガス雰囲気又は不活性ガス混合物雰囲気に曝露されない。第1の加工物を搬出した後に、作業者は、第3の保持基材をコンベア113に搬入してもよい。次いで、1つ又は複数の扉111が閉鎖され、搬入/搬出室110の内部の雰囲気が、以前に行われたように不活性雰囲気に再び置き換えられる。
【0129】
立体自由形状造形が第2の保持基材上で完了して第2の加工物を形成した時点で、第2の加工物を保持するアクチュエータ131が、次に開放される、1つ又は複数の扉122に近接した位置に戻され、第1の加工物をコンベア113上に移送するために行われたのと同様の方式で、コンベア123が第2の加工物を回収し、第2の加工物を移送して搬入/搬出室120内に戻す。次いで、1つ又は複数の扉122が閉鎖され、扉112が第1の保持基材を受け入れたのと同じ方式で第3の保持基材を受け入れる準備の整った1つ又は複数の扉112に近接した位置に位置するように、アクチュエータ131を移動させる。
【0130】
その間に、搬入/搬出室120内の雰囲気が、搬入/搬出室110に対して行われたのと同様の方式で空気に置き換えられる。次いで、1つ又は複数の扉121を介して搬入/搬出室120にアクセスすることにより、第2の加工物が搬入/搬出室120から回収される。その後、第4の保持基材がコンベア123に搬入される。
【0131】
生産すべき多くの加工物に対して上記プロセスが繰り返される。上記のように、先に形成された加工物を素早く搬出する仕方も提供するがアクチュエータ131が新たな保持基材を受け取る準備が整うときまでに生産プロセスが既に行われているので、保持基材をアクチュエータ131上に移送するのに搬入/搬出室内の雰囲気が置き換えられるのを待つ時間を費やす必要がないことにより生産プロセスを迅速に行うことが可能である。
【0132】
上記プロセス中に、1つ又は複数のセンサは、立体自由形状造形中に堆積室へのアクセスを与える扉を監視するために使用することができる。扉が適切に閉じられて密封されていない場合又は扉が造形中に開放されている場合に、1つ又は複数のセンサが、そのことを反映する信号を、堆積機器を制御する制御システムに送信し、立体自由形状造形プロセスを開始することが防止されるか又は既に開始している場合には立体自由形状造形プロセスが停止される。そうすることで、立体自由形状造形では、意図されたもの以外の雰囲気に曝露されない。
【0133】
サービス室の使用
例示の実施形態において、室システム100は、堆積室130に接続されたサービス室140を含み得る。このことは、同じく堆積室130に接続された1つ又は複数の搬入/搬出室を有することにも関連し得る。1つ又は複数の搬入/搬出室の動作は、サービス室140も使用されるかどうかにかかわらず、第1の例で説明した通りである。
【0134】
実施形態において、堆積機器150は、サービス室140内に移動させることができる。1つ又は複数の密封部材145を備えた1つ又は複数の扉144は、堆積機器がサービス室140内に入るときに1つ又は複数の密封部材145を備えた1つ又は複数の扉144を開口部141に近づけるように、堆積機器150の一端部に設けることができる。この構成では、堆積機器150がサービス室140の完全に内側にあるときに、1つ又は複数の扉144及び1つ又は複数の密封部材145は、サービス室140と堆積室130との間にガス不透過性密封を作り出すために開口部141を閉鎖する。
【0135】
堆積機器150をサービス室140内に移動させた後に、堆積室130内の雰囲気は、例1で説明したのと同様の方式で所望通りに個別に修正されてもよい。堆積室130内の雰囲気が既に所望通りである場合には、堆積室130を単に維持することができる。
【0136】
サービス室140内の雰囲気もまた、堆積機器150が内部に配置され且つ開口部141が密封された時点で、所望であれば、個別に修正することができる。サービス室140内の雰囲気の置き換え又は調節は、堆積室及び/又は搬入/搬出室に関して上で説明したのと同様の方式で成し遂げることができる。換言すれば、通気孔は、サービス室140の上部分及び下部分に位置する。空気又は他の軽いガス雰囲気は、サービス室140の上部分における1つ又は複数の通気孔を使用して室140に導入されるか又は室140から排気されてもよい。同様に、重いガス雰囲気は、サービス室140の底部分における1つ又は複数の通気孔を使用して導入又は除去されてもよい。サービス室140が真空条件下で使用される場合には、全ての上部通気孔及び底部通気孔に真空を同時に適用することもできる。真空を同時に適用することは、他の任意の室にも等しく行うことができる。また、真空条件が望ましい場合には、雰囲気が排気されるかどうかにかかわらず、上部通気孔及び底部通気孔の任意のサブセット又は上部通気孔と底部通気孔との任意の組み合わせを使用することができる。このことは、堆積室130並びに搬入/搬出室110及び120を含む、本明細書で説明する他の室にも当てはまる。
【0137】
サービス室140に不活性雰囲気が既に充填された実施形態では、堆積機器150が室140内に移送された後も雰囲気を単に維持することが望ましい場合がある。堆積機器150が保守を必要とする場合に、作業者は、手袋143を使用してそのような保守を行ってもよい。作業者は、窓146を覗くことにより保守点検を行いながら堆積機器150を視認してもよい。
【0138】
必要な保守が手袋143を使用して容易に達成されない場合、又は保守を行うために手袋143を使用しないことを単に作業者が決定した場合に、ポータル147を介して堆積機器にアクセスすることができる。作業者を潜在的に有害なガスに曝露するのを回避するために、又は堆積機器150がサービス室140内に移送されたときにサービス室140が真空条件下にある場合に、サービス室140の内部の雰囲気は、ポータル147の開放前に大気圧の空気に置き換えることができる。
【0139】
保守が完了した時点で、ポータル147が閉鎖され(ポータル147が開放されていた場合)、サービス室140の雰囲気条件が、必要に応じて、堆積室130の雰囲気条件と同様になるように修正される。許容可能な雰囲気条件がサービス室140内で達成された時点で、堆積機器150が堆積室130に戻される。このように、堆積室130内の雰囲気は、開口部141を開封することの影響を実質的に受けない。
【0140】
堆積機器150がサービス室140の内外に移動するときに、ワイヤ供給材160は直線状のままである。堆積機器150が開口部141に向かって移動するときに、及び堆積機器150がサービス室140内に入るときに、ワイヤ供給材160の一部分は、開口部142を通ってサービス室140の外に出る。堆積機器150が堆積室130内に入って堆積室130内のより深部に移動するときに、ワイヤ供給材160は、開口部142を通ってサービス室140内に入る。追加のワイヤ供給材160はまた、ワイヤ供給材が立体自由形状造形に使用されるときに、立体自由形状造形中に開口部142を通ってサービス室140内に入る。
【0141】
例1で説明したように、サービス室140の任意のポータル又は他の扉若しくは開口部は、1つ又は複数のセンサにより監視することができる。開口部141及び開口部142は別として、ポータル147又は他の扉又はポータルが所望通りに密封されていないことを1つ又は複数のセンサが検出した場合、或いは1つ又は複数のセンサが開口部142からの外部雰囲気の流入を検知した場合に、立体自由形状造形の開始を防止するために、又は進行中の立体自由形状造形プロセスを停止するために、堆積室130内の堆積機器のための制御システムに信号を送信することができる。これにより、加工物を造形中に望ましくない雰囲気に曝露することが回避される。また、1つ又は複数のセンサが、サービス室140における漏洩、密封の欠如、又は開放を信号で知らせたときに、可聴警報、可視警報、又はこれらの組み合わせを作動させることができる。
【0142】
同様に、堆積機器150がサービス室140内にあるときに開口部141の密封を監視するために、1つ又は複数のセンサを使用することができる。サービス室140内の雰囲気の修正が堆積室130の雰囲気に影響を及ぼす可能性があることを作業者に警告するために、開口部141が適切に密封されていないことを1つ又は複数のセンサが検出した場合に、可聴警報、可視警報、又はこれらの組み合わせを作動させることができる。
【0143】
本発明の範囲から逸脱することなく、本発明に種々の修正及び変形を加えることができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、本発明の修正及び変形が添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にあるという条件でそれら修正及び変形を網羅することが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B