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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】穿刺デバイスおよび医療デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20220524BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
A61B18/14
A61M25/00 630
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019504489
(86)(22)【出願日】2018-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2018007126
(87)【国際公開番号】W WO2018163899
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2017041543
(32)【優先日】2017-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(72)【発明者】
【氏名】大坪 靖一
【審査官】伊藤 孝佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-275765(JP,A)
【文献】特開2014-064623(JP,A)
【文献】特表2016-513520(JP,A)
【文献】特表2016-509945(JP,A)
【文献】特表2015-511855(JP,A)
【文献】特表2002-512534(JP,A)
【文献】特表2016-525914(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0144164(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
A61M 25/06
A61M 25/00
A61N 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の長尺体に挿入され、当該長尺体を通って生体内の生体組織を焼灼して孔を形成するための穿刺デバイスであって、
遠位側に位置して生体組織を焼灼して穿刺するための導電性を備える金属製の穿刺部と、
近位側に位置する長尺な近位シャフトと、
前記穿刺部と前記近位シャフトの間に位置し、曲げ剛性が前記穿刺部および前記近位シャフトの曲げ剛性よりも低い柔軟部と、を有し、
前記柔軟部は、導電性を備える支持部と、樹脂製であって絶縁性の柔軟支持部と、を有し、
前記近位シャフトは、導電性を備える金属製であり、前記近位シャフト、前記支持部および前記穿刺部が、電気的に接続され
前記支持部は、径方向へ貫通する隙間を有し、前記支持部の遠位側端部と前記支持部の近位側端部との間で導電性を備えるように配置され、
前記柔軟支持部は、前記支持部の隙間を補填するように当該隙間に入り込んで当該隙間を塞いでいる穿刺デバイス。
【請求項2】
前記近位シャフトは、近位側の中心軸に対して曲がるシャフト曲げ部を有する請求項1に記載の穿刺デバイス。
【請求項3】
前記柔軟部は、近位側の中心軸に対して曲がる柔軟曲げ部を有する請求項1または2に記載の穿刺デバイス。
【請求項4】
前記柔軟部は、中心軸を挟んで第1の側面と第2の側面を有し、前記柔軟部の前記第2の側面側は、前記第1の側面側よりも軸方向に沿って小さい力で収縮および拡張可能である請求項1~のいずれか1項に記載の穿刺デバイス。
【請求項5】
生体内の生体組織を焼灼して孔を形成するための医療デバイスであって、
前記生体組織を焼灼して穿刺するための穿刺デバイスと、
前記穿刺デバイスが挿入される管状のダイレータと、
前記ダイレータが挿入される管状の外シースと、を有し、
前記穿刺デバイスは、遠位側に位置して生体組織を穿刺するための導電性の金属製の穿刺部と、近位側に位置する長尺な近位シャフトと、前記穿刺部と前記近位シャフトの間に位置して、前記穿刺部および前記近位シャフトの曲げ剛性よりも低く、かつ前記外シースに前記ダイレータを挿入したシース組立体の曲げ剛性よりも低い柔軟部と、を有し、
前記柔軟部は、導電性を備える支持部と、樹脂製であって絶縁性の柔軟支持部と、を有し、
前記近位シャフトは、導電性を備える金属製であり、前記近位シャフト、前記支持部および前記穿刺部が、電気的に接続され
前記支持部は、径方向へ貫通する隙間を有し、前記支持部の遠位側端部と前記支持部の近位側端部との間で導電性を備えるように配置され、
前記柔軟支持部は、前記支持部の隙間を補填するように当該隙間に入り込んで当該隙間を塞いでいる医療デバイス。
【請求項6】
前記柔軟部の曲げ剛性は、前記ダイレータおよび前記外シースのすくなくとも一方の曲げ剛性よりも低い請求項に記載の医療デバイス。
【請求項7】
前記近位シャフトは、近位側の中心軸に対して曲がるシャフト曲げ部を有する請求項またはに記載の医療デバイス。
【請求項8】
前記柔軟部は、近位側の中心軸に対して曲がる柔軟曲げ部を有する請求項のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【請求項9】
前記ダイレータの遠位部および前記外シースの遠位部の少なくとも一方は、近位側の中心軸に対して曲がっており、前記穿刺部が前記ダイレータから遠位側へ突出した状態において、当該曲がった部位の内部に、前記柔軟部が位置可能である請求項のいずれか1項に記載の医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織を穿刺するための穿刺デバイスおよび医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓は、刺激伝導系と呼ばれる心筋組織に電流が流れることで、適切なタイミングで収縮および拡張を繰り返し、血液を循環させている。この刺激伝導系を流れる電気信号の発生や伝達が正常でなくなると、適切なタイミングで収縮および拡張ができなくなり、不整脈が生じる。
【0003】
不整脈の治療方法として、不整脈を引き起こす信号の伝導経路を、加熱または冷却によりアブレーションして遮断する方法が知られている。この治療方法を行うためのデバイスとして、経皮的に左心房まで挿入し、肺静脈口に位置する信号の伝導経路をアブレーション可能なデバイスが知られている。このようなアブレーションデバイスは、低侵襲で高い効果が得られるとして盛んに用いられている。
【0004】
左心房でアブレーションを行う際には、右心房から心房中隔の卵円窩という肉薄な隔壁に針を刺して、右心房から左心房へ通じる孔を開ける、心房中隔穿刺(Brockenbrough法)という手技が必要となる。この心房中隔穿刺を行うためのデバイスである経中隔穿刺針(Transseptal Needle)には、機械的穿刺針(Mechanical Needle)と高周波エネルギー穿刺針(Radio Frequency Needle)がある。
【0005】
心房中隔穿刺を行う前には、通常、卵円窩にダイレータの遠位部を当接し、ダイレータを押圧する。これにより、卵円窩が左心房側へ押し込まれて変形する。この後、ダイレータを貫通する穿刺針により卵円窩の穿刺を行い、穿刺した孔にダイレータを挿入する。
【0006】
例えば特許文献1には、機械的穿刺針をダイレータの内部に収容したデバイスが記載されている。このデバイスのダイレータから突出する穿刺針により卵円窩に孔を開け、開けた孔にダイレータを挿入することで、卵円窩の孔を広げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許公開第2002/0169377号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
穿刺針により卵円窩を穿刺する際に、穿刺針がダイレータの内部を移動すると、穿刺針の湾曲などの形状がダイレータに干渉する可能性がある。穿刺針の湾曲部の移動によりダイレータが湾曲すると、卵円窩に対してダイレータが接触している位置がずれ、穿刺する位置がずれてしまう可能性がある。また、穿刺針の湾曲部がダイレータ内を移動する際に、摺動抵抗が高いため、操作性が低い。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、生体内の生体組織を高い位置精度で穿刺でき、かつ操作性が向上する穿刺デバイスおよび医療デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明に係る穿刺デバイスは、管状の長尺体に挿入され、当該長尺体を通って生体内の生体組織を焼灼して孔を形成するための穿刺デバイスであって、遠位側に位置して生体組織を焼灼して穿刺するための導電性を備える金属製の穿刺部と、近位側に位置する長尺な近位シャフトと、前記穿刺部と前記近位シャフトの間に位置し、曲げ剛性が前記穿刺部および前記近位シャフトの曲げ剛性よりも低い柔軟部と、を有し、前記柔軟部は、導電性を備える支持部と、樹脂製であって絶縁性の柔軟支持部と、を有し、前記近位シャフトは、導電性を備える金属製であり、前記近位シャフト、前記支持部および前記穿刺部が、電気的に接続され、前記支持部は、径方向へ貫通する隙間を有し、前記支持部の遠位側端部と前記支持部の近位側端部との間で導電性を備えるように配置され、前記柔軟支持部は、前記支持部の隙間を補填するように当該隙間に入り込んで当該隙間を塞いでいる。
【0011】
上記目的を達成する本発明に係る医療デバイスは、生体内の生体組織を焼灼して孔を形成するための医療デバイスであって、前記生体組織を焼灼して穿刺するための穿刺デバイスと、前記穿刺デバイスが挿入される管状のダイレータと、前記ダイレータが挿入される管状の外シースと、を有し、前記穿刺デバイスは、遠位側に位置して生体組織を穿刺するための導電性の金属製の穿刺部と、近位側に位置する長尺な近位シャフトと、前記穿刺部と前記近位シャフトの間に位置して、前記穿刺部および前記近位シャフトの曲げ剛性よりも低く、かつ前記外シースに前記ダイレータを挿入したシース組立体の曲げ剛性よりも低い柔軟部と、を有し、前記柔軟部は、導電性を備える支持部と、樹脂製であって絶縁性の柔軟支持部と、を有し、前記近位シャフトは、導電性を備える金属製であり、前記近位シャフト、前記支持部および前記穿刺部が、電気的に接続され、前記支持部は、径方向へ貫通する隙間を有し、前記支持部の遠位側端部と前記支持部の近位側端部との間で導電性を備えるように配置され、前記柔軟支持部は、前記支持部の隙間を補填するように当該隙間に入り込んで当該隙間を塞いでいる。
【発明の効果】
【0013】
上記のように構成した穿刺デバイスおよび医療デバイスは、柔軟部が穿刺部および近位シャフトよりも柔軟であるため、長尺体に挿入しても、柔軟部が長尺体の形状に干渉し難い。このため、穿刺部を長尺体から遠位側へ突出させる際に、長尺体の形状が維持されて、高い位置精度で目的の位置を穿刺できる。また、柔軟部が長尺体の形状に干渉し難いため、穿刺デバイスを長尺体の内部で移動させる際の摺動抵抗が小さくなる。このため、穿刺デバイスの長尺体への挿入が容易となって操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る医療デバイスを示す平面図である。
図2】実施形態に係る医療デバイスを示す断面図である。
図3】実施形態に係る医療デバイスの各部位を組み合わせた状態を示す断面図である。
図4】心臓の内部を示す部分断面図である。
図5】医療デバイスにより穿刺を行う際の状態を示す断面図であり、(A)はガイドワイヤに沿ってシース組立体を右心房に挿入した状態、(B)はシース組立体を卵円窩に当接させた状態、(C)はシース組立体に穿刺デバイスを挿入した状態、(D)は穿刺部により卵円窩を穿刺した状態を示す。
図6】医療デバイスにより穿刺を行う際の状態を示す断面図であり、(A)は卵円窩の孔にシース組立体を挿入した状態、(B)はシース組立体から穿刺デバイスを引き抜いた状態、(C)は外シースにガイドワイヤおよびアブレーションカテーテルを挿入した状態を示す。
図7】医療デバイスの第1の変形例を示す平面図である。
図8】穿刺デバイスの第2の変形例を示す平面図である。
図9】穿刺デバイスの第3の変形例を示す透視図であり、(A)は柔軟部が直線状の状態、(B)は柔軟部が曲がった状態を示す。
図10】穿刺デバイスの第4の変形例を示す透視図であり、(A)は柔軟部が直線状の状態、(B)は柔軟部が曲がった状態を示す。
図11】穿刺デバイスの第5の変形例を示す透視図であり、(A)は柔軟部が直線状の状態、(B)は柔軟部が曲がった状態を示す。
図12】穿刺デバイスの第6の変形例を示す断面図であり、(A)は柔軟部を曲げる前の状態、(B)は柔軟部を曲げた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。本明細書では、デバイスの血管に挿入する側を「遠位側」、操作する手元側を「近位側」と称することとする。
【0016】
本発明の実施形態に係る医療デバイス1は、右心房から心房中隔の卵円窩Oに針を刺して、右心房Rから左心房L(図4を参照)へ通じる孔を形成するために用いられる。卵円窩Oに孔がある場合、経皮的に大静脈に挿入したアブレーションカテーテルを右心房Rへ導いた後、孔を介して左心房Lへ挿入し、肺静脈口の周囲をアブレーションすることができる。すなわち、医療デバイス1は、卵円窩にアブレーションカテーテルのアクセスルートを形成するためのデバイスである。
【0017】
医療デバイス1は、図1~3に示すように、穿刺を行う穿刺デバイス10と、穿刺デバイス10を収容するシース組立体20とを有している。穿刺デバイス10は、長尺な針部30と、把持して操作するための操作部60とを有している。シース組立体20は、穿刺デバイス10が挿入されるダイレータ40と、ダイレータ40が挿入される外シース50とを有している。
【0018】
針部30は、穿刺するための略直線状の管体である。針部30は、遠位側に位置する穿刺部31と、近位側に位置する近位シャフト33と、穿刺部31と近位シャフト33の間に位置する柔軟部32とを有している。近位シャフト33は、中空の管体である。近位シャフト33の近位部は、操作部60に固定されている。近位シャフト33の遠位部は、柔軟部32に固定されている。近位シャフト33は、導電性を備える金属からなる近位内層33Aと、近位内層33Aの外周面を覆う絶縁性の近位外層33Bを有している。近位内層33Aは、操作部60のコネクタ62と接続し、遠位側へ電流を伝えることができる。近位外層33Bは、近位内層33Aを絶縁する。なお、近位シャフト33は、2層構造でなくてもよい。近位シャフト33の内部に、導電性を備える導線を配置できれば、近位シャフト33は、導電性を備えなくてもよい。近位シャフト33の曲げ剛性は、シース組立体20の曲げ剛性よりも大きい。また、近位シャフト33の曲げ剛性は、ダイレータ40の曲げ剛性よりも大きく、かつ外シース50の曲げ剛性よりも大きい。
【0019】
穿刺部31は、遠位側端部が閉じられた中空の管体であり、遠位側端部に電極34を有する。電極34は、卵円窩Oに孔を開けるための高周波エネルギーを出力する。穿刺部31は、導電性を備える金属からなる遠位内層31Aと、遠位内層31Aの近位部の外周面を覆う絶縁性の遠位外層31Bを有する。遠位内層31Aの遠位外層31Bに覆われていない部位が、電極34である。電極34は、生体組織に接触して高周波エネルギーを出力し、生体組織を変質させることができる。電極34と対をなす対極板(図示せず)は、体表面に貼り付けられる。遠位外層31Bは、遠位内層31Aを絶縁する。穿刺部31は、外周面に開口する側孔35を有している。なお、穿刺部31は、2層構造でなくてもよい。穿刺部31は、全体を電極34とするのであれば、絶縁性の遠位外層31Bが設けられなくてもよい。また、穿刺部31の内部に、導電性を備える導線を配置できれば、穿刺部31の近位部は、導電性を備えなくてもよい。穿刺部31の外径は、近位シャフト33および柔軟部32の外径よりも小さい。穿刺部31の内径は、針部30および柔軟部32の内径と略一致する。なお、穿刺部31の内径は、針部30および柔軟部32の内径と異なってもよい。穿刺部31の曲げ剛性は、シース組立体20の曲げ剛性よりも大きい。また、穿刺部31の曲げ剛性は、ダイレータ40の曲げ剛性よりも大きく、かつ外シース50の曲げ剛性よりも大きい。
【0020】
柔軟部32は、近位シャフト33および穿刺部31の間に位置する管体である。柔軟部32の長さは、穿刺部31の長さよりも長く、かつ近位シャフト33の長さよりも長いことが好ましい。柔軟部32の曲げ剛性は、近位シャフト33および穿刺部31の曲げ剛性よりも低い。また、柔軟部32の曲げ剛性は、ダイレータ40および外シース50が組み合わされたシース組立体20の曲げ剛性よりも低い。特に、柔軟部32の曲げ剛性は、シース組立体20の柔軟部32を挿入可能な範囲の曲げ剛性よりも低い。
【0021】
さらに、柔軟部32の曲げ剛性は、ダイレータ40の曲げ剛性よりも低い。特に、柔軟部32の曲げ剛性は、ダイレータ40の柔軟部32を挿入可能な範囲の曲げ剛性よりも低い。
【0022】
さらに、柔軟部32の曲げ剛性は、外シース50の曲げ剛性よりも低い。特に、柔軟部32の曲げ剛性は、外シース50の柔軟部32を挿入可能な範囲の曲げ剛性よりも低い。
【0023】
柔軟部32は、柔軟で可撓性を備える絶縁性の柔軟支持部32Aと、柔軟支持部32Aに埋設される支持部32Bとを有している。支持部32Bは、導電性を備える複数の線材を交差させつつ編組して網状に形成されている。支持部32Bは、径方向へ貫通する複数の隙間を有し、この隙間に柔軟支持部32Aが入り込んでいる。支持部32Bが隙間を有することで、高い柔軟性が得られる。また、支持部32Bは、柔軟部32のキンクを抑制する。支持部32Bの遠位側端部は、遠位内層31Aに接続されている。支持部32Bの近位側端部は、近位内層33Aに接続されている。このため、導電性を備える支持部32Bは、近位内層33Aから供給される電流を、遠位内層31Aの電極34へ伝えることができる。柔軟支持部32Aは、支持部32Bを絶縁する。柔軟支持部32Aは、柔軟部32の柔軟性を維持しつつ、支持部32Bの隙間を塞いでいる。このため、柔軟支持部32Aは、針部30の内腔を液密に維持する。これにより、針部30の内腔を利用して、薬剤、造影剤、生理食塩水、血液等を送達可能である。柔軟支持部32Aは、1層で構成されてもよいが、支持部32Bを挟むように2層または2層以上で構成されてもよい。柔軟部32の外径は、近位シャフト33と略一致するが、異なってもよい。柔軟部32の内径は、近位シャフト33と略一致するが、異なってもよい。
【0024】
なお、穿刺部31は、高周波電流によるものでなくてもよく、例えば、電磁波、レーザ、冷却等のエネルギーを出力して生体組織を変性して孔を形成するものであってもよい。また、穿刺部31は、構造的に鋭利な機械的穿刺針であってもよい。また、針部は、中実であってもよい。
【0025】
近位内層33A、遠位内層31Aおよび支持部32Bの構成材料は、導電性を備えれば特に限定されないが、例えばステンレス、Au(金)、Pt(プラチナ)、タングステン、チタン等である。なお、近位内層33A、遠位内層31Aおよび支持部32Bは、導電性を備えなくてもよい。この場合、絶縁性の近位外層33Bおよび遠位外層31Bは、設けられなくてもよい。
【0026】
近位外層33Bおよび遠位外層31Bの構成材料は、絶縁性を備えれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。近位外層33Bおよび遠位外層31Bの構成材料は、特に、ダイレータ40の内周面と摺動しやすい低摩擦材料であることが好ましく、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)等のフッ素系ポリマーが好ましい。
【0027】
柔軟支持部32Aの構成材料は、柔軟で可撓性を有することが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。
【0028】
針部30の長さは、適宜設定されるが、例えば500~1100mmである。穿刺部31の長さは、適宜設定されるが、例えば5~30mm、より好ましくは5~25mm、さらに好ましくは10~20mmである。柔軟部32の長さは、適宜設定されるが、例えば20~90mm、より好ましくは30~80mm、さらに好ましくは40~70mmである。近位シャフト33の長さは、適宜設定されるが、例えば350~1800mm、より好ましくは380~1200mm、さらに好ましくは400~1000mmである。穿刺部31の外径は、適宜設定されるが、例えば0.5~1.0mmである。針部30の内径は、適宜設定されるが、例えば0.3~0.8mmである。
【0029】
操作部60は、把持して針部30を操作する部位である。操作部60は、針部30の近位部が固定されている。操作部60は、近位側開口部61と、コネクタ62とを備えている。近位側開口部61は、針部30の内腔と連通している。近位側開口部61は、シリンジ等を接続することで、針部30の内腔をプライミングしたり、針部30に造影剤や薬剤等を注入したりすることができる。また、近位側開口部61から生体内の血液を外部へ導いて、血圧を計測することもできる。血圧を計測することで、穿刺部31が目的の位置へ到達したことを正確に確認できる。コネクタ62は、電極34へ高周波電流を供給する外部電源装置に接続可能である。
【0030】
操作部60の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂の総称)等の硬質の樹脂、ステンレス等の金属などが好適に使用できる。
【0031】
ダイレータ40は、針部30により形成された卵円窩Oの孔を広げるために用いられる。ダイレータ40は、遠位側端部に、遠位側に向かってテーパ状に縮径するテーパ部42を有している。ダイレータ40の内腔は、テーパ部42の最も縮径した端部で開口している。テーパ部42の中心軸に対する傾斜角度α1は、適宜設定されるが、例えば1~20度、より好ましくは3~15度、さらに好ましくは4~10度である。ダイレータ40の近位部の外周面には、Yコネクタ等と連結可能な接続部41が設けられている。接続部41は、雄コネクタである。
【0032】
ダイレータ40は、遠位側に、内径の小さいダイレータ遠位部43と、近位側に、ダイレータ遠位部43よりも内径が大きいダイレータ近位部44を有している。ダイレータ遠位部43とダイレータ近位部44の間には、内径が遠位側に向かって縮径する内径縮径部45が設けられる。ダイレータ遠位部43の内周面は、針部30の穿刺部31の外周面と摺動可能に密接可能である。ダイレータ近位部44の内径は、針部30の外径よりも大きい。このため、ダイレータ近位部44に、針部30を容易に挿入することができる。ダイレータ遠位部43の内径は、穿刺部31の外径以上であり、かつ柔軟部32の外径よりも小さい。したがって、ダイレータ遠位部43は、穿刺部31を収容できるが、柔軟部32を収容できない。ダイレータ40に針部30を挿入すると、穿刺部31が、ダイレータ遠位部43を通過し、内径縮径部45に導かれて、ダイレータ遠位部43に入る。穿刺部31は、ダイレータ遠位部43の内周面と密接するため、ダイレータ40に対して正確に位置決めされる。針部30をダイレータ40にさらに押し込むと、電極34がダイレータ40から突出し、かつ、柔軟部32と穿刺部31の間の段差が、内径縮径部45に突き当たる。これにより、電極34がダイレータ40から突出し過ぎることを抑制でき、安全性が高い。なお、内径縮径部45に突き当たる段差は、柔軟部32と穿刺部31の間の段差でなくてもよい。内径縮径部45に突き当たる段差は、柔軟部32と近位シャフト33の間の段差や、他の部位に設けられる段差であってもよい。
【0033】
ダイレータ40は、自然状態において、遠位部に所定の角度で曲がったダイレータ曲げ部46を有する。ダイレータ40の近位部に対するダイレータ曲げ部46の角度β1は、特に限定されないが、例えば10~120度、より好ましくは20~100度、さらに好ましくは30~90度である。ダイレータ曲げ部46は、右心房Rに挿入した針部30の穿刺部31や、ダイレータ40のテーパ部42を、卵円窩Oへ向ける役割を果たす。ダイレータ曲げ部46の長さは、柔軟部32の長さと同程度であることが好ましい。
【0034】
ダイレータ40の長さは、適宜設定されるが、例えば400~1500mmである。ダイレータ40の外径は、適宜設定されるが、例えば2~6mmである。ダイレータ遠位部43の内径は、適宜設定されるが、例えば0.5~1.5mmである。ダイレータ近位部44の内径は、適宜設定されるが、例えば1.0~2.0mmである。ダイレータ遠位部43の長さは、適宜設定されるが、例えば1~15mm、より好ましくは2~12mm、さらに好ましくは3~10mmである。
【0035】
ダイレータ40の構成材料は、可撓性を有することが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミド、形状記憶合金、ステンレス、タンタル、チタン、プラチナ、金、タングステンなどの金属などが好適に使用できる。また、ダイレータ40は、X線造影性材料や超音波造影性材料を含んでもよい。
【0036】
外シース50は、アブレーションカテーテルのアクセスルートを提供する。外シース50は、シース本体51と、シース本体51の近位部に連結されるハブ54と、ハブ54に連通するシースポート部56と、ハブ54の内部の弁体55とを有している。
【0037】
シース本体51は、ダイレータ40を軸方向へ移動可能に収容する長尺な管体である。シース本体51は、ダイレータ40と円滑に摺動する内周面を有する。シース本体51は、自然状態において、遠位部に所定の角度で曲がったシース曲げ部52を有する。シース本体51の近位部に対するシース曲げ部52の角度β2は、特に限定されないが、例えば10~180度、より好ましくは30~150度、さらに好ましくは45~135度である。シース曲げ部52は、右心房Rに挿入した針部30の穿刺部31や、シース本体51の遠位部を、卵円窩へ向ける役割を果たす。シース曲げ部52の長さは、柔軟部32の長さと同程度であることが好ましい。
【0038】
シース本体51は、遠位側端部に、遠位側に向かってテーパ状に縮径するシーステーパ部53を有している。シース本体51の内腔は、シーステーパ部53の最も縮径した端部で開口している。シーステーパ部53の中心軸に対する傾斜角度α2は、適宜設定されるが、例えば1~15度、より好ましくは2~10度、さらに好ましくは3~7度である。外シース50にダイレータ40を挿入したシース組立体20において、シーステーパ部53は、ダイレータ40のテーパ部42の近位側に位置し、テーパ部42と連続するように位置することができる。シース本体51の内周面は、ダイレータ40の外周面が摺動可能に接するように、ダイレータ40の外周面との間にクリアランスを有することが好ましい。
【0039】
シース本体51は、その全長にわたってダイレータ40が貫通可能である。したがって、シース本体51の軸方向の長さは、ダイレータ40よりも短い。
【0040】
シース本体51の長さは、適宜設定されるが、例えば400~1000mmである。シース本体51の外径は、適宜設定されるが、例えば2.5~7.0mmである。シース本体51の内径は、適宜設定されるが、例えば2~6mmである。シース本体51の内周面とダイレータ40の外周面の間の半径でのクリアランスは、適宜設定されるが、例えば0.01~0.5mmである。
【0041】
シース本体51の構成材料は、可撓性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン・四フッ化エチレン共重合体)等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。また、シース本体51の構成材料は、X線造影性材料、超音波造影性材料、金属線材やコイルを含んでもよい。
【0042】
ハブ54は、シース本体51の近位部に設けられ、シース本体51の内腔と連通する。ハブ54には、ダイレータ40が貫通する。シースポート部56は、ハブ54に連結され、ハブ54の内腔を介してシース本体51の内腔と連通する。シースポート部56は、端部に三方活栓57を有している。三方活栓57にシリンジ等を接続することで、シース本体51の内腔をプライミングしたり、シース本体51に造影剤や薬剤等を注入したりすることができる。
【0043】
弁体55は、ハブ54およびシース本体51の内腔を封止するための部材である。弁体55は、柔軟に変形可能であり、ハブ54の内周面に配置される。弁体55は、ダイレータ40の外周面と摺動可能に接触する。また、弁体55は、ダイレータ40が挿入された状態で、弾性力によりダイレータ40を押圧し、ダイレータ40と外シース50を固定することができる。なお、弁体55で固定されても、ダイレータ40と外シース50を把持して力を作用させることで、軸方向へ相対的に移動させることは可能である。また、ダイレータ40をハブ54から引き抜くことで、弁体55のダイレータ40が挿入された孔部は閉じ、ハブ54の内腔を近位側から封止する。弁体55は、例えば円盤状の弾性体の中央に切れ目を入れた部材である。弾性体は、例えば天然ゴム、シリコーンゴム、各種エラストマー等である。弁体55は、ダイレータ40の抜き差しを許容しつつ、外シース50を介して血液が漏れることを抑制するとともに、体内へ空気が混入することを抑制する。
【0044】
ダイレータ40および外シース50を組み合わせた状態において、ダイレータ曲げ部46およびシース曲げ部52の位置、曲げ方向は、一致または略一致することが好ましい。これにより、穿刺部31を望ましい方向へ突出させることができる。
【0045】
次に、実施形態に係る医療デバイス1を用いて卵円窩Oに孔を開けて、アブレーションカテーテルのためのアクセスルートを設ける方法を説明する。
【0046】
始めに、大腿静脈に針を穿刺し、この針の中にショートガイドワイヤを挿入する。次に、針を抜去し、ショートガイドワイヤに沿って、カテーテルイントロデューサーを血管内に挿入する。次に、外シース50の内部にダイレータ40を挿入したシース組立体20を準備する。続いて、ショートガイドワイヤを抜去し、ガイドワイヤ70をカテーテルイントロデューサーに挿入する。次に、ガイドワイヤ70を血管に残したまま、カテーテルイントロデューサーを抜去し、ガイドワイヤ70の近位側端部を、ダイレータ40の遠位側端部から内部に挿入する。次に、シース組立体20を、カテーテルイントロデューサーに挿入し、血管内に挿入する。続いて、図5(A)に示すように、ガイドワイヤ70を先行させつつ、シース組立体20の遠位部を右心房Rまで徐々に押し進める。次に、シース組立体20を、ガイドワイヤ70に沿って右心房Rから上大静脈内へ、一旦挿入する。続いて、一旦ガイドワイヤ70の先端をシース組立体20の中に収納した後、シース組立体20を後退させて右心房R内へ引き込むと、図4図5(B)に示すように、シース組立体20の遠位側端部が、卵円窩Oに自然と当接するように導かれる。
【0047】
次に、図5(C)に示すように、ダイレータ40の近位側から、ダイレータ40の内腔に穿刺デバイス10を挿入する。穿刺デバイス10の穿刺部31は、ダイレータ近位部44、内径縮径部45を通って、ダイレータ遠位部43へ到達する。そして、穿刺デバイス10の最遠位部の電極34を、ダイレータ40の遠位側開口部から約5mm程度近位側の位置に配置する。すなわち、電極34は、ダイレータ40から突出する直前の位置に配置される。このとき、柔軟部32は、シース曲げ部52およびダイレータ曲げ部46の内部に位置している。針部30をダイレータ40に挿入する際に、針部30の柔軟部32は、曲げ剛性が低いため、ダイレータ40の形状に追従して容易に変形できる。このため、針部30をダイレータ40へ挿入する際の摺動抵抗が小さくなり、操作性が向上する。特に、針部30をダイレータ曲げ部46およびシース曲げ部52の内部に挿入する際に、柔軟部32が容易に曲がって摺動抵抗が小さくなり、操作性が向上する。また、柔軟部32が容易に曲がるため、ダイレータ40および外シース50の形状が柔軟部32から干渉を受け難い。このため、ダイレータ40および外シース50の位置の変化が小さく、望ましい位置を維持できる。なお、穿刺デバイス10をダイレータ40に挿入する際に、ダイレータ40を、外シース50から一旦引き抜いてもよい。この場合、引き抜いたダイレータ40の内腔に穿刺デバイス10を挿入し、穿刺デバイス10を収容したダイレータ40を、再び外シース50に挿入する。
【0048】
続いて、心腔内心エコーカテーテル(ICE:Intra cardiac echo catheter)により左心房Lおよび右心房R内を観察しつつ、ダイレータ40を遠位側へ押し込む。これにより、卵円窩Oは、ダイレータ40により左心房L側へ押されて突出した状態となる。このとき、外シース50およびダイレータ40の遠位部が曲がっているため、ダイレータ40の遠位側の端部を、卵円窩Oへ容易に向けることができる。なお、卵円窩Oを、左心房L側へ突出した状態としなくてもよい。
【0049】
次に、外部電源装置を操作して、電極34へ高周波電流を印可する。続いて、図5(D)に示すように、体外に位置する操作部60を押し込み、穿刺部31を遠位側へ移動させる。これにより、電極34がダイレータ40から遠位側へ突出する。電極34は、接触する生体組織を焼灼し、卵円窩Oに孔を形成する。針部30をダイレータ40にさらに押し込むと、柔軟部32と穿刺部31の間の段差が、内径縮径部45に突き当たる。これにより、電極34がダイレータ40から突出し過ぎることを抑制できる。したがって、目的外の部位の誤穿刺を抑制でき、安全性が高い。
【0050】
針部30の柔軟部32は、シース組立体20よりも曲げ剛性が低い。このため、電極34がダイレータ40から突出する際には、柔軟部32が、シース組立体20の形状に追従して容易に変形できる。すなわち、穿刺部31がダイレータ40から遠位側へ突出した状態において、ダイレータ曲げ部46およびシース曲げ部52の内部に、柔軟部32が位置可能である。このため、針部30がダイレータ曲げ部46およびシース曲げ部52の内部で移動する際に、柔軟部32が容易に曲がって摺動抵抗が小さくなり、操作性が向上する。また、柔軟部32が容易に曲がるため、シース組立体20の形状が柔軟部32から干渉を受け難い。特に、ダイレータ曲げ部46およびシース曲げ部52の曲がりの角度が変化し難い。このため、穿刺する際に、シース組立体20の位置の変化が小さい。したがって、テーパ部42が卵円窩Oに対して当接する位置が、穿刺する際にずれ難くなる。このため、電極34により正確な位置を穿刺できる。
【0051】
穿刺部31が卵円窩Oを貫通すると、卵円窩Oを左心房L側へ押圧していたダイレータ40の遠位側端部の一部が、卵円窩Oに開けられた孔に入り込む。なお、ダイレータ40の一部が、卵円窩Oの孔に入り込まなくてもよい。電極34が卵円窩Oを貫通すると、電極34に位置する側孔35を介して、近位側開口部61から血圧を計測することで、穿刺部31が左心房Lへ到達したことを正確に確認できる。また、針部30の側孔35から、左心房Lへ造影剤を放出して、穿刺部31が左心房Lへ到達したことを確認することもできる。
【0052】
次に、医療デバイス1を遠位側へ移動させる。これにより、図6(A)に示すように、ダイレータ40のテーパ部42および外シース50のシーステーパ部53が、卵円窩Oの孔を押し広げつつ卵円窩Oを通過し、左心房Lに到達する。このとき、テーパ部42およびシーステーパ部53が、遠位側へ縮径しているため、卵円窩Oの孔を滑らかに広げることができる。また、穿刺部31が、卵円窩Oを穿刺した突出状態で維持されているため、ダイレータ40および外シース50を、穿刺部31に沿って、卵円窩Oの孔に容易に押し込むことができる。また、穿刺部31により卵円窩Oを穿刺した際に、ダイレータ40のテーパ部42の一部が、卵円窩Oの孔に入り込んでいるため、ダイレータ40および外シース50を、卵円窩Oの孔に押し込むことが容易である。
【0053】
次に、図6(B)に示すように、ダイレータ40および外シース50を残して、穿刺デバイス10を、体外へ抜去する。ダイレータ40により広げられた卵円窩Oの孔は、外シース50により維持される。次に、ダイレータ40の内腔にガイドワイヤ70を挿入し、ガイドワイヤ70を先行させながら、肺動脈に挿入する。次に、外シース50からガイドワイヤ70およびダイレータ40を抜去すると、弁体55が閉じ、血液の漏えいや、血管内への空気等の混入を抑制できる。この後、図6(C)に示すように、外シース50の近位側から、弁体55を介してアブレーションカテーテル71を挿入する。これにより、卵円窩Oを貫通する外シース50を利用して、アブレーションカテーテル71を左心房Lへ挿入することができる。アブレーションカテーテル71により左心房Lにてアブレーションを行った後、アブレーションカテーテル71および外シース50を体外に抜去すると、卵円窩Oの孔が収縮する。これにより、手技が完了する。
【0054】
以上のように、本実施形態の穿刺デバイス10は、管状のシース組立体20(長尺体)に挿入され、シース組立体20を通って生体内の卵円窩O(生体組織)を焼灼して孔を形成するための穿刺デバイス10であって、遠位側に位置して卵円窩Oを穿刺するための導電性の金属製の穿刺部31と、近位側に位置する長尺な近位シャフト33と、穿刺部31と近位シャフト33の間に位置し、曲げ剛性が穿刺部31および近位シャフト33の曲げ剛性よりも低い柔軟部32と、を有する。なお、穿刺デバイス10が挿入される長尺体は、シース組立体20であっても、ダイレータ40であってもよい。
【0055】
上記のように構成した穿刺デバイス10は、柔軟部32が穿刺部31および近位シャフト33よりも柔軟であるため、シース組立体20に挿入しても、柔軟部32がシース組立体20の形状に干渉し難い。このため、穿刺部31をシース組立体20から遠位側へ突出させる際に、シース組立体20の形状が維持されて、高い位置精度で目的の位置を穿刺できる。また、柔軟部32がシース組立体20の形状に干渉し難いため、穿刺デバイス10をシース組立体20の内部で移動させる際の摺動抵抗が小さくなる。このため、穿刺デバイス10のシース組立体20への挿入が容易となって操作性が向上する。
【0056】
また、柔軟部32は、導電性を備える金属製の支持部32Bを有している。このため、柔軟部32は、高周波エネルギーを、導電性の支持部32を利用して穿刺部31へ供給できる。
【0057】
また、柔軟部32は、径方向へ貫通する隙間が設けられた導電性の金属製の支持部32Bを有している。このため、柔軟部32は、金属製の支持部32によってキンクの発生を抑制しつつ柔軟性を維持できる。
【0058】
また、近位シャフト33は、導電性を備える金属製であり、近位シャフト33、支持部32Bおよび穿刺部31が、電気的に接続されている。これにより、外部電源装置から供給される高周波エネルギーを、近位シャフト33および支持部32Bを介して穿刺部31へ伝えることができる。また、穿刺部31および近位シャフト33が金属製であるため、柔軟部32に対して曲げ剛性を高く設定することが容易である。
【0059】
また、柔軟部32は、支持部32Bの隙間を塞ぐ樹脂製の柔軟支持部32Aを有している。これにより、柔軟部32を柔軟に維持しつつ、柔軟部32の内腔を液密とすることができる。なお、柔軟支持部32Aは、設けられなくてもよい。
【0060】
また、本実施形態に係る医療デバイス1は、生体内の卵円窩O(生体組織)を焼灼して孔を形成するための医療デバイス1であって、卵円窩Oを焼灼して穿刺するための穿刺デバイス10と、穿刺デバイス10が挿入される管状のダイレータ40と、ダイレータ40が挿入される管状の外シース50と、を有し、穿刺デバイス10は、遠位側に位置して卵円窩Oを穿刺するための穿刺部31と、近位側に位置する長尺な近位シャフト33と、穿刺部31と近位シャフト33の間に位置して、穿刺部31および近位シャフト33の曲げ剛性よりも低く、かつ外シース50にダイレータ40を挿入したシース組立体20の曲げ剛性よりも低い柔軟部32と、を有する。
【0061】
上記のように構成した医療デバイス1は、柔軟部32が穿刺部31および近位シャフト33よりも柔軟であり、かつシース組立体20よりも柔軟であるため、シース組立体20に穿刺デバイス10を挿入しても、柔軟部32がシース組立体20の形状に干渉し難い。このため、穿刺部31をシース組立体20から遠位側へ突出させる際に、シース組立体20の形状が維持されて、高い位置精度で目的の位置を穿刺できる。また、柔軟部32がシース組立体20の形状に干渉し難いため、穿刺デバイス10をシース組立体20の内部で移動させる際の摺動抵抗が小さくなる。このため、穿刺デバイス10をシース組立体20へ挿入することが容易となって、操作性が向上する。
【0062】
また、柔軟部32の曲げ剛性は、ダイレータ40の曲げ剛性よりも低く、かつ外シース50の曲げ剛性よりも低い。このため、穿刺部31をダイレータ40または外シース50から遠位側へ突出させる際に、ダイレータ40または外シース50の形状が維持されて、高い位置精度で目的の位置を穿刺できる。また、ダイレータ40または外シース50に穿刺デバイス10を挿入しても、柔軟部32がダイレータ40または外シース50の形状に干渉し難い。このため、穿刺デバイス10をダイレータ40または外シース50へ挿入することが容易となって、操作性がさらに向上する。
【0063】
また、ダイレータ40および外シース50の遠位部の少なくとも一方は、中心軸に対して曲がっており、穿刺部31がダイレータ40から遠位側へ突出した状態において、当該曲がった部位(ダイレータ曲げ部46およびシース曲げ部52)の内部に、柔軟部32が位置可能である。これにより、ダイレータ曲げ部46およびシース曲げ部52によって、穿刺する目的の位置へ穿刺部31を向けることが容易となる。さらに、穿刺デバイス10が柔軟部32を有するため、穿刺部31をシース組立体20から遠位側へ突出させる際に、ダイレータ40および外シース50の曲がった形状を適切に維持できる。このため、ダイレータ曲げ部46およびシース曲げ部52によって穿刺部31を適切な方向へ向けつつ、高い位置精度で目的の位置を穿刺できる。
【0064】
また、本発明は、上述の医療デバイス1を使用して生体内で卵円窩O(生体組織)を焼灼して孔を形成するための処置方法(治療方法)をも含む。当該処置方法は、シース組立体20および穿刺デバイス10を生体内に挿入するステップと、柔軟部32をシース組立体20の内部で移動させて穿刺部31をシース組立体20から突出させて卵円窩Oを穿刺するステップと、を有する。
【0065】
上記のように構成した処置方法は、使用する穿刺デバイス10の柔軟部32の曲げ剛性が、穿刺部31および近位シャフト33の曲げ剛性よりも低く、かつシース組立体20の曲げ剛性よりも低いため、シース組立体20に穿刺デバイス10を挿入しても、柔軟部32がシース組立体20の形状に干渉し難い。このため、穿刺部31をシース組立体20から突出させる際に、シース組立体20の形状が維持されて、高い位置精度で目的の位置を穿刺できる。また、柔軟部32がシース組立体20の形状に干渉し難いため、穿刺デバイス10をシース組立体20の内部で移動させる際の摺動抵抗が小さくなる。このため、穿刺デバイス10をシース組立体20へ挿入することが容易となって、操作性が向上する。
【0066】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、上述した医療デバイスは、卵円窩以外の生体内の生体組織を穿刺するために用いられてもよい。
【0067】
また、図7に示す第1の変形例のように、穿刺デバイス80の近位シャフト81は、遠位部に、近位側の中心軸に対して曲がるシャフト曲げ部82を有してもよい。なお、前述の実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。近位シャフト81は、シース組立体90よりも曲げ剛性が高い。近位部に対するシャフト曲げ部82の角度β3は、特に限定されないが、例えば10~120度、より好ましくは20~100度、さらに好ましくは30~90度である。シャフト曲げ部82は、ダイレータ40へ挿入する前に、術者が変形させることが可能であってもよい。これにより、シャフト曲げ部82の角度βを望ましい角度に調節することが可能である。この場合、近位シャフト81の構成材料は、塑性変形が可能な材料を含むことが好ましい。また、近位側の中心軸に対する柔軟部32および穿刺部31の角度を、望ましい角度に調節可能であってもよい。近位シャフト81は、ダイレータ91および外シース92を組み合わせたシース組立体90よりも曲げ剛性が高い。ダイレータ91は、ダイレータ曲げ部を有さずに直線状である。なお、ダイレータは、ダイレータ曲げ部46(図1を参照)を有してもよい。外シース92は、シース曲げ部を有さずに直線状である。なお、外シースは、シース曲げ部52(図1を参照)を有してもよい。近位シャフト81が、シャフト曲げ部82を有することで、穿刺する目的の位置へ穿刺部31を向けることが容易となる。さらに、近位シャフト81にシャフト曲げ部82が存在しても、近位シャフト81の遠位側に柔軟部32が設けられている。このため、穿刺デバイス80をシース組立体90に挿入しても、シャフト曲げ部82のシース組立体90への干渉を低減させることができる。これにより、穿刺デバイス80とダイレータ91の摺動抵抗が低減し、操作性を向上できる。また、穿刺部31をシース組立体90から遠位側へ突出させる際に、シャフト曲げ部82によって穿刺部31を適切な方向へ向けつつ、高い位置精度で目的の位置を穿刺できる。また、シャフト曲げ部82は、シース組立体90よりも曲げ剛性が高い。このため、シース組立体90が曲がった部位を備えなくても、シース組立体90の形状に依存せずに、穿刺デバイス80の形状によって、穿刺する目的の位置へ穿刺部31を向けることができる。
【0068】
また、図8に示す第2の変形例のように、穿刺デバイス100の柔軟部101が、近位側の中心軸に対して曲がる柔軟曲げ部102を有してもよい。これにより、穿刺する目的の位置へ、穿刺部31を向けることがさらに容易となる。
【0069】
また、上述の実施形態における近位シャフト33は、1つの部材により独立して構成されているが、1つの部材の一部で構成されてもよい。近位シャフトが1つの部材の一部である場合、近位シャフトが設けられる部材は、柔軟部や穿刺部をも有する場合がある。すなわち、近位シャフトと柔軟部は、1つの部材により構成される場合がある。また、近位シャフト、柔軟部および穿刺部が、1つの部材により構成される場合がある。近位シャフトが1つの部材の一部である場合、その部材の柔軟部である部位の近位側に位置する部位が、近位シャフトである。
【0070】
図9(A)に示す第3の変形例のように、穿刺デバイス110の穿刺部112、柔軟部113および近位シャフト114が、導電性を備える1つの管状部材111により形成されてもよい。管状部材111の柔軟部113に対応する部位は、螺旋状のスリット115が形成されることで、穿刺部112および近位シャフト114よりも曲げ剛性が低い。スリット115は、管状部材111の内周面から外周面に貫通し、隙間(幅)を有している。スリット115は、レーザー加工等により容易に形成できる。近位シャフト114、柔軟部113および穿刺部112の近位部は、絶縁性の材料からなる被覆部116で覆われている。柔軟部113に位置する管状部材111が、隙間(スリット115)を有する支持部であり、柔軟部113に位置する被覆部116が、支持部の隙間を塞ぐ柔軟支持部である。管状部材111の構成材料は、前述の遠位内層31Aおよび近位内層33Aに適用可能な材料を適用できる。被覆部116の構成材料は、前述の遠位外層31Bおよび近位外層33Bに適用可能な材料を適用できる。穿刺デバイス110の柔軟部113が、穿刺部112および近位シャフト114よりも柔軟であるため、図9(B)に示すように、柔軟部113で曲がることが容易である。また、近位シャフト114、柔軟部113および穿刺部112が、導電性を備える1つの管状部材111で形成されるため、電流を確実に電極112Aへ伝えることができる。
【0071】
また、図10(A)に示す第4の変形例のように、穿刺デバイスの穿刺部122、柔軟部123および近位シャフト124が、導電性を備える1つの管状部材121と、管状部材121に嵌め込まれる柔軟支持部126により形成されてもよい。管状部材121の柔軟部123に対応する部位は、周方向の一部が、軸方向に沿って切り欠かれた切り欠き部125を有する。柔軟部123に位置する管状部材121が、隙間(切り欠き部125)を有する支持部であり、柔軟支持部126が、支持部の隙間を塞いでいる。切り欠き部125は、管状部材121の内周面から外周面に貫通している。切り欠き部125は、レーザー加工等により容易に形成できる。柔軟支持部126は、切り欠き部125を補填するように管状部材121に接合されている。柔軟支持部126は、管状部材121よりも柔軟な材料により構成される。近位シャフト124、柔軟部123および穿刺部122の近位部は、絶縁性の材料からなる被覆部127で覆われている。管状部材121の構成材料は、前述の遠位内層31Aおよび近位内層33Aに適用可能な材料を適用できる。柔軟支持部126と被覆部127の構成材料は、前述の遠位外層31Bおよび近位外層33Bに適用可能な材料を適用できる。柔軟部123は、中心軸を挟んで、第1の側面128と第2の側面129を有している。柔軟支持部126は、第2の側面129に配置されている。このため、柔軟部123の第2の側面129側は、第1の側面128側よりも軸方向に沿って小さい力で収縮および拡張可能である。これにより、図10(B)に示すように、柔軟部123の第2の側面129側が収縮することで、柔軟部123が容易に湾曲することができる。さらに、柔軟部123の第2の側面129側が拡張することで、柔軟部123が、湾曲した状態から直線に近い形状へ容易に戻ることができる。また、近位シャフト124、柔軟部123および穿刺部122が、導電性を備える1つの管状部材121で形成されるため、電流を確実に電極122Aへ伝えることができる。
【0072】
また、図11(A)に示す第5の変形例の穿刺デバイス130は、穿刺部132、柔軟部133および近位シャフト134を形成する導電性を備える1つの管状部材131を有している。管状部材131の柔軟部133に対応する部位は、周方向の一部が切り欠かれた複数の切り欠き部135が形成されている。複数の切り欠き部135は、軸方向に並んで配置されている。切り欠き部135は、管状部材131の内周面から外周面に貫通している。切り欠き部135は、レーザー加工等により容易に形成できる。柔軟部133は、複数の切り欠き部135が形成されることで、穿刺部132および近位シャフト134よりも曲げ剛性が低い。近位シャフト134、柔軟部133および穿刺部132の近位部は、絶縁性の材料からなる被覆部137で覆われている。柔軟部133に位置する管状部材131が、隙間(切り欠き部135)を有する支持部であり、柔軟部133に位置する被覆部137が、支持部の隙間を塞ぐ柔軟支持部である。管状部材131の構成材料は、前述の遠位内層31Aおよび近位内層33Aに適用可能な材料を適用できる。被覆部137の構成材料は、前述の遠位外層31Bおよび近位外層33Bに適用可能な材料を適用できる。柔軟部133は、中心軸を挟んで、第1の側面138と第2の側面139を有している。複数の切り欠き部135は、第2の側面139に配置されている。このため、柔軟部133の第2の側面139側は、第1の側面138側よりも軸方向に沿って小さい力で収縮および拡張可能である。これにより、図11(B)に示すように、柔軟部133の第2の側面139側が収縮することで、柔軟部133が容易に湾曲することができる。さらに、湾曲部の第2の側面139側が拡張することで、柔軟部133が湾曲した状態から直線に近い形状へ容易に戻ることができる。また、近位シャフト134、柔軟部133および穿刺部132が、導電性を備える1つの管状部材131で形成されるため、電流を確実に電極132Aへ伝えることができる。
【0073】
また、図12(A)に示す第5の変形例のように、穿刺デバイス140は、手元の操作で柔軟部32を曲げるための牽引ワイヤ141を備えてもよい。牽引ワイヤ141は、針部142の内腔に摺動可能に配置され、針部142に沿って延在する。牽引ワイヤ141の遠位側端部は、柔軟部32の遠位部の内周面に位置する固定部143に固定されている。なお、牽引ワイヤ141の遠位側端部は、柔軟部32よりも遠位側の穿刺部31に固定されてもよい。牽引ワイヤ141の近位側端部は、操作部144にスライド可能に設けられるスライド部145に固定されている。牽引ワイヤ141の近位部は、操作部144の内部に位置する針部142の側面に形成される開口部146から導出されている。開口部146から導入された牽引ワイヤ141は、シール部材147を通って、スライド部145に固定される。柔軟部32が直線状である際に、手元のスライド部145を近位側へ移動させると、牽引ワイヤ141が針部142の内部を近位側へ移動し、柔軟部32の固定部143が牽引される。これにより、柔軟部32の固定部143が設けられる側に収縮力が作用し、図12(B)に示すように、柔軟部32を曲げることができる。このため、手元操作によって、穿刺する目的の位置へ穿刺部31を向けることが容易となり、操作性が向上する。
【0074】
また、近位シャフトは、金属製でなくてもよい。例えば、近位シャフトは、樹脂製であってもよい。この場合、穿刺デバイスは、近位シャフトの内部や外部に、高周波エネルギーを伝えるための導線を有する。導線は、近位シャフト33および支持部32Bに接続される。これにより、外部電源装置から供給される高周波エネルギーを、近位シャフトを介さずに、導線から支持部32Bまたは穿刺部31へ伝えることができる。
【実施例
【0075】
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。実施例1および2、比較例1の穿刺デバイスを作製し、ダイレータに挿入した際の摺動抵抗を測定した。
<実施例1>
【0076】
外径0.7mm、内径0.6mm、長さ15mmのステンレス製のパイプに、厚さ0.05mmのPTFEを被覆して、穿刺部の遠位内層および遠位外層を形成した。次に、穿刺部の遠位部のPTFEを紙やすりで削り取り、はんだ付けを行った。さらに、はんだの形状を紙やすりで整え、電極とした。
【0077】
柔軟部は、内層を高密度ポリエチレン、外層をポリブチレンテレフタレートで形成した。内層と外層の間には、ステンレス製の線材を編組して支持部を形成した。支持部の遠位部は、穿刺部の遠位内層(ステンレス製のパイプ)と電気的に導通させた。また、支持部の近位部は、近位シャフトの近位内層(ステンレス製のパイプ)と電気的に導通させた。柔軟部の外径は1.05mm、内径は0.8mm、長さは50mmであった。
【0078】
外径1.2mm、内径0.85mm、長さ680mmのステンレス製のパイプに、厚さ0.05mmのPTFEを被覆して、近位シャフトの近位内層および近位外層を形成した。穿刺部、柔軟部および近位シャフトを接合し、近位シャフトに操作部を取り付けて実施例1の穿刺デバイスを作製した。なお、実施例1の穿刺デバイスの針部は、曲がっておらず、略直線形状であった。
<実施例2>
【0079】
実施例1と同様の構造を作成した後、近位シャフトの遠位部を約30度で曲げて、実施例2の穿刺デバイスを作製した。
<比較例1>
【0080】
比較例1の穿刺部は、実施例1の穿刺部と同様の構造とした。穿刺部の近位側に設けられるシャフトは、外径1.2mm、内径0.85mm、長さ710mmのステンレス製のパイプに、厚さ0.02mmのPTFEを被覆して形成した。穿刺部および近位シャフトを接合し、操作部を取り付けた。さらに、近位シャフトの遠位部を約45度で曲げ、比較例1の穿刺デバイスを作製した。
<摺動試験>
【0081】
外径2.7mm、遠位部の内径0.9mm、近位部の内径1.31mm、構成材料がポリプロピレンのダイレータを準備した。次に、ダイレータに実施例1および2、比較例1の穿刺デバイスを挿入した。そして、電極を、ダイレータから突出する直前(遠位側開口部から約5mm手前)で停止させた。この後、穿刺デバイスをダイレータに対して遠位側へ45mm移動させ、最大荷重(N)および力積(N・s)を計測した。結果を、表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
結果として、柔軟部を有する実施例1、2の最大荷重および力積が、比較例1の最大荷重および力積よりも低かった。したがって、柔軟部を有することで、穿刺デバイスのダイレータに対する摺動抵抗が低下することが確認された。
【0084】
また、近位シャフトが曲がっていない実施例1の最大荷重および力積が、近位シャフトが曲がった実施例2の最大荷重および力積よりも低かった。したがって、近位シャフトが曲がっていない方が、穿刺デバイスのダイレータに対する摺動抵抗が低下することが確認された。
【0085】
本出願は、2017年3月6日に出願された日本特許出願番号2017-041543号に基づいており、それらの開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。
【符号の説明】
【0086】
1 医療デバイス、
10、80、100、120、130、140 穿刺デバイス、
20、90 シース組立体、
30、142 針部、
31、112、122、132 穿刺部、
32、101、113、123、133 柔軟部、
32A、126 柔軟支持部、
32B 支持部、
33、114、124、134 近位シャフト、
34、112A、122A、132A 電極、
35 側孔、
40、91 ダイレータ、
46 ダイレータ曲げ部、
50、92 外シース、
52 シース曲げ部、
60 操作部、
102 柔軟曲げ部、
115 スリット(隙間)、
116、127、137 被覆部、
125、135 切り欠き部(隙間)、
128、138 第1の側面、
129、139 第2の側面、
141 牽引ワイヤ、
143 固定部、
O 卵円窩(生体組織)、
L 左心房、
R 右心房。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12