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特許7078648選択的運動学的ロックを備える車両のショックアブソーバアセンブリ、車両懸架装置群および関連車両
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  • 特許-選択的運動学的ロックを備える車両のショックアブソーバアセンブリ、車両懸架装置群および関連車両 図1
  • 特許-選択的運動学的ロックを備える車両のショックアブソーバアセンブリ、車両懸架装置群および関連車両 図2
  • 特許-選択的運動学的ロックを備える車両のショックアブソーバアセンブリ、車両懸架装置群および関連車両 図3
  • 特許-選択的運動学的ロックを備える車両のショックアブソーバアセンブリ、車両懸架装置群および関連車両 図4
  • 特許-選択的運動学的ロックを備える車両のショックアブソーバアセンブリ、車両懸架装置群および関連車両 図5
  • 特許-選択的運動学的ロックを備える車両のショックアブソーバアセンブリ、車両懸架装置群および関連車両 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】選択的運動学的ロックを備える車両のショックアブソーバアセンブリ、車両懸架装置群および関連車両
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/56 20060101AFI20220524BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20220524BHJP
   B62K 25/04 20060101ALI20220524BHJP
   B62K 5/08 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
F16F9/56 A
F16F9/32 J
B62K25/04
B62K5/08
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019565295
(86)(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 IB2018053750
(87)【国際公開番号】W WO2018215990
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】10217000057500
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512185877
【氏名又は名称】ピアッジオ・エ・チ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】PIAGGIO & C. S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Viale Rinaldo Piaggio, 25, I-56025 Pontedera, PI,Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・ラッファエッリ
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】実公昭60-033041(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/56
F16F 9/32
B62K 25/04
B62K 5/08
B60G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の摺動方向(X’-X’)に沿って第1のピストン(52)を内側に摺動自在に収容する第1のシース(48)であって、前記第1のシース(48)は油圧流体で満たされ、前記第1のピストン(52)は、前記第1のシース(48)から延びている第1のステム(56)、および前記第1のシース(48)内に含まれている第1のヘッド(60)を備え、前記第1のステム(56)と前記第1のシース(48)は、それぞれ車輪(20、20’、20”)とフレーム(12)に、またはそれぞれフレーム(12)と車輪(20、20’、20”)に、機械的に結合されるのに適している、第1のシース(48)と、
第2の摺動方向(X”-X”)に沿って第2のピストン(68)を内側に摺動自在に収容する第2のシース(64)であって、前記第2のシース(64)は油圧流体で満たされ、前記第2のピストン(68)は、前記第2のシース(64)から延びている第2のステム(72)、および前記第2のシース(64)内に含まれている第2のヘッド(76)を備え、前記第2のステム(72)と前記第2のシース(64)は、それぞれ車輪(20、20’、20”)とフレーム(12)に、またはそれぞれフレーム(12)と車輪(20、20’、20”)に、機械的に結合されるのに適している、第2のシース(64)と、を備え、
前記第1のシース(48)と前記第2のシース(64)は、制御本体(88)を通る少なくとも一つの上側ダクト(80)および第1の相互接続ダクト(84)によって、互いに流体的に接続されており、
前記第1のピストン(52)と前記第2のピストン(68)は、それぞれ前記第1のヘッド(60)と前記第2のヘッド(76)の圧縮または並列の動作によって前記上側ダクト(80)へと移動し、それぞれ前記第1のヘッド(60)と前記第2のヘッド(76)の伸張または遠くへの動作によって前記上側ダクト(80)から移動し、
前記制御本体(88)は、単一の減衰バルブ(92)を収容し、前記減衰バルブ(92)は、前記制御本体(88)に向かって前記第1のシース(48)と前記第2のシース(64)によって通される前記油圧流体の調整移動をさせるのに適した孔(96)を有する減衰板(94)を備え、
前記制御本体(88)は、前記上側ダクト(80)に干渉しないアンロック位置と前記上側ダクト(80)が塞がれているロック位置から調整ストロークを移動できるようにアクチュエータ手段に結合された制御バルブ(100)を収容している、
ショックアブソーバアセンブリ(8)。
【請求項2】
前記減衰バルブ(92)と前記制御バルブ(100)は、互いに機械的に結合されている、請求項1に記載のショックアブソーバアセンブリ(8)。
【請求項3】
前記第1の相互接続ダクト(84)は、前記ピストン(52、68)の前記ヘッド(60、76)に対して前記上側ダクト(80)の反対側にある、前記第1のシース(48)と前記第2のシース(64)の下側端(102)に配置されており、それぞれの前記ピストン(52、68)の伸張動作中に前記第1のシース(48)と前記第2のシース(64)の間で油圧流体の移動ができる、請求項1または請求項2に記載のショックアブソーバアセンブリ(8)。
【請求項4】
前記制御バルブ(100)は、前記ロック位置では、前記上側ダクト(80)と前記第1の相互接続ダクト(84)の両方を塞ぎ、前記ロック位置で、前記第1のピストン(52)と前記第2のピストン(68)の圧縮および伸張動作を同時に拘束するように構成されている、請求項3に記載のショックアブソーバアセンブリ(8)。
【請求項5】
前記制御バルブ(100)は、それぞれ前記上側ダクト(80)と前記第1の相互接続ダクト(84)を選択的に塞ぐような、一対の閉塞物(104、106)を備える、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のショックアブソーバアセンブリ(8)。
【請求項6】
前記閉塞物(104、106)は、円板であり、前記上側ダクト(80)および前記第1の相互接続ダクト(84)に対応するように配置されたときに前記上側ダクト(80)および前記第1の相互接続ダクト(84)を塞ぐのに適した側部エッジ(107)を設けられ、前記制御本体(88)内での流体の移動用の通過開口(108)を設けられている、請求項5に記載のショックアブソーバアセンブリ(8)。
【請求項7】
前記第1の相互接続ダクト(84)は、前記第1のピストン(52)の前記第1のヘッド(60)の上の前記第1のシース(48)の上側部分と、前記第2のピストン(68)の前記第2のヘッド(76)の下の前記第2のシース(64)の下側部分とを流体的に接続しており、前記ショックアブソーバアセンブリはさらに、第2の相互接続ダクト(112)を備え、前記第2の相互接続ダクト(112)は、前記第1のピストン(52)の前記第1のヘッド(60)の下の前記第1のシース(48)の下側部分と、前記第2のピストン(68)の前記第2のヘッド(76)の上の前記第2のシース(64)の上側部分とを流体的に接続している、請求項1に記載のショックアブソーバアセンブリ(8)。
【請求項8】
前記制御バルブ(100)は、前記アンロック位置では、前記第1の相互接続ダクト(84)および前記第2の相互接続ダクト(112)を塞ぎ、前記上側ダクト(80)を通ることができるように構成されている、請求項7に記載のショックアブソーバアセンブリ(8)。
【請求項9】
前記制御バルブ(100)は、前記ロック位置では、前記上側ダクト(80)を塞ぎ、前記第1の相互接続ダクト(84)および前記第2の相互接続ダクト(112)を通ることができるように構成されている、請求項7または請求項8に記載のショックアブソーバアセンブリ(8)。
【請求項10】
前記制御バルブ(100)は、前記調整ストロークによって摺動するアキシャル弁であり、前記油圧流体の前記移動のために少なくとも部分的に孔が開いた減衰板(94)を設けられた前記減衰バルブ(92)と一体である、請求項7から請求項9のいずれか一項に記載のショックアブソーバアセンブリ(8)。
【請求項11】
前記制御バルブ(100)は、前記調整ストロークに沿って駆動するための前記アクチュエータ手段に動作可能に接続された制御アペンディックス(101)を設けられている、請求項10に記載のショックアブソーバアセンブリ(8)。
【請求項12】
第3の相互接続ダクトを備え、前記第3の相互接続ダクトは、前記第1のピストン(52)の前記第1のヘッド(60)の下の前記第1のシース(48)の下側部分と、前記第2のピストン(68)の前記第2のヘッド(76)の下の前記第2のシース(64)の下側部分とを流体的に接続し、前記制御本体(88)を通過して、前記下側部分と前記減衰バルブ(92)との間に流体接続を設けている、請求項7から請求項11のいずれか一項に記載のショックアブソーバアセンブリ(8)。
【請求項13】
前記減衰バルブは、カップ部を備え、前記カップ部は、前記アンロック位置では、前記第3の相互接続ダクトを通じて前記第1のシース(48)と前記第2のシース(64)との間で流体接続をさせ、前記ロック位置では、前記制御本体(88)で前記第3の相互接続ダクトを塞ぐ、請求項12に記載のショックアブソーバアセンブリ(8)。
【請求項14】
前記制御本体(88)は、少なくとも一つの補償容量(97)を設けられ、前記補償容量(97)は、前記第1のシース(48)および前記第2のシース(64)の前記油圧流体から流体的に分割され、前記第1のシース(48)および前記第2のシース(64)の圧力を受ける可動隔壁(98)で区切られている、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のショックアブソーバアセンブリ(8)。
【請求項15】
前記補償容量(97)は、圧縮可能な流体で満たされている、請求項14に記載のショックアブソーバアセンブリ(8)。
【請求項16】
前記可動隔壁(98)は、前記補償容量(97)内に含まれた弾性手段に結合されている、請求項14または請求項15に記載のショックアブソーバアセンブリ(8)。
【請求項17】
前記第1のステム(56)および前記第2のステム(72)は、同一車両車輪(20)と機械的に結合され、それぞれの前記第1のシース(48)と前記第2のシース(64)は、車両フレーム(12)と機械的に結合されている、または前記第1のステム(56)および前記第2のステム(72)は、車両フレーム(12)と機械的に結合され、それぞれの前記第1のシース(48)と前記第2のシース(64)は、同一車両車輪(20)と機械的に結合されている、請求項1から請求項16のいずれか一項に記載のショックアブソーバアセンブリ(8)を備える車輪アセンブリ(40)。
【請求項18】
前記第1のステム(56)と前記第2のステム(72)は、対となりかつ互いと相互接続された二つの異なる車両車輪(20’、20”)に機械的に結合されている、請求項1から請求項16のいずれか一項に記載のショックアブソーバアセンブリ(8)を備える車輪アセンブリ(40)。
【請求項19】
請求項17に記載の車輪アセンブリ(40)を備える車両(4)。
【請求項20】
前記異なる車輪(20’、20”)は、傾斜原動機付き車両となるように関節接合された四角形構造(116)によって相互接続されている、請求項18に記載の車輪アセンブリ(40)を備える車両(4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的運動学的ロックを備える車両のショックアブソーバアセンブリ、車両懸架装置群、および関連車両に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、懸架装置は、車両のフレームを車輪に結合する部材である。当該結合部材は、少なくとも一つの弾性部材、典型的にはばね、を備え、当該弾性部材は、懸架されていない部分(車輪アセンブリ)に対して懸架された部分(フレーム)を振動させる。また、当該結合部材は、少なくとも一つのショックアブソーバ、すなわち懸架された部分の振動のダンパを備える。
【0003】
車両の走行状態によりショックアブソーバ(緩衝装置)の減衰レベルを調整することを含む、様々な解決策が当技術分野で知られている。これらの解決策は、使用者の要求に応じて快適性や性能を向上させるために、懸架装置のダイナミクスを変更することを目的としている。ほとんどの場合、当該調整は自動ではなく、手動で行われ、特別なレジスタ(典型的にはねじレジスタ)に作用する。
【0004】
また、使用者の要求、例えば、ダッシュボードまたはハンドルバーのボタン、所定の調整装置、および適切なアクチュエータを介したシステムを用いてレジスタの調整を自動的に行う、自動的な解決策が知られている。
【0005】
また、磁性流体の使用を含む、いくつかの改良された解決策がある。磁性流体は、磁場および/または電磁場を受けた場合、磁性流体のレオロジ(流動学的)特性を、したがってそれらを含んでいるショックアブソーバの挙動を改善する。
【0006】
これらの解決策は、ショックアブソーバの応答を大幅に変更でき、ほとんど完全なロックまで、単一方向への減衰を増加させることができる。
【発明の概要】
【0007】
しかし、そのような従来の解決策は、複数の欠点を有する。
【0008】
事実、一方では、非常に複雑であり製造するのが高価である。
【0009】
他方、従来技術の解決策は、減衰をロック、したがって懸架装置を単一方向(典型的には圧縮方向)でのみロックできるが、双方向の選択的ロックは実現できない。
【0010】
そのような選択的ロックは、例えば、ロールおよび/またはピッチに関して、所定の定められた状態で自動二輪車をロックするために、停止または極めて低速度で前進する車両、典型的には自動二輪車、の状態に有益であり得る。
【0011】
ロールのロックは、少なくとも三輪(三輪の二つが前輪部または後車軸で対となっている)を備えられた弱マルチトラック車両での、または四輪車両での用途で実行されてもよいことは明らかである。
【0012】
したがって、従来技術に関して言及された欠点および制限を解決する必要性が感じられる。
【0013】
そのような目的は、請求項1に記載のショックアブソーバアセンブリによって実現される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下で与えられている好ましい、非限定的な実施形態の記載から、本発明のさらなる特徴および利点が明確に理解できる。
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態による、アンロック状態でのショックアブソーバアセンブリの断面の概略図を示す。
図2図2は、図1のショックアブソーバアセンブリの、ロック状態での、断面の概略図を示す。
図3図3は、本発明のさらなる実施形態による、アンロック状態でのショックアブソーバアセンブリの概略的な断面図を示す。
図4図4は、図3のショックアブソーバアセンブリの、ロック状態での、断面の概略図を示す。
図5図5は、本発明によるショックアブソーバアセンブリを備える原動機付き車両の後方斜視図を示す。
図6図6は、本発明によるショックアブソーバアセンブリを備える原動機付き車両の前方斜視図を示す。
【0016】
以下で説明されている実施形態で共通する部材または部材の一部は、同じ符号を用いて示されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記図に関して、符号4は、本発明による少なくとも一つのショックアブソーバアセンブリ8を包含する車両の全体的概略図を全体的に示している。
【0018】
本発明に関して、車両という用語は、自転車などの手動けん引車両と自動二輪車の両方を意味する、最も広い意味で考えなければならないことが明確にされている。また、自動二輪車という用語は、最も広い意味で考えるべきであり、排他的ではないが好ましくは、二輪または三輪を有する自動二輪車(バイク)、さらに電動四輪バイクまたはそれに類するものを示す。
【0019】
車両は概して、フレーム12を備え、フレーム12は、少なくとも一つの前方操舵輪20を支持する前輪部16、および少なくとも一つの後輪28を支持する後車軸24を備える。
【0020】
また、したがって当該定義は、例えば前輪部16に対となった2つの操舵前輪20’、20”、および後車軸24に後方駆動輪28の三輪を有する傾斜自動二輪車だけでなく、前輪部16に単一の操舵前輪20、および後車軸24に2つの後方駆動輪28を備える自動二輪車も包含する。最後に、当該定義は、前輪部16に2つの車輪20’、20”、および後車軸24に2つの後輪28を有する、いわゆる四輪バイクをも包含する。
【0021】
フレーム12、前輪部16および後車軸24は、任意の形状または寸法であってもよく、例えばトレリス(格子)タイプ、ボックス(箱)タイプ、ダイキャストなどであってもよい。
【0022】
フレーム12は、一部品構成または複数の部品であってもよい。
【0023】
後車軸24は典型的には、運転手および/または同乗者のサドルを支持するフォーク32を備える。フォーク32は、例えば、ヒンジピン36によってフレーム12にヒンジ結合されている。フォーク32とフレーム12との結合は、直接のヒンジ結合によって、直接されていてもよく、レバー機構および/または中間フレームの介在を含んでいてもよいことは明らかである。
【0024】
車輪は、前輪であろうと後輪であろうと、前輪部と後車軸にそれぞれの車輪アセンブリ40によって機械的に結合される。
【0025】
車輪アセンブリ40は、前輪20または後輪28、車輪20、28を偏位させるのに適した弾性部材(典型的にはばねであるが、示されていない)、および車輪20、28の振動/偏位を減衰させるのに適したショックアブソーバ44を備える。
【0026】
ショックアブソーバアセンブリ8は、第1の摺動方向X’-X’に沿って第1のピストン52を、内側に摺動自在に収容する第1のシース48を備える。
【0027】
第1のシース48は、既知の方法で、油圧流体で満たされている。
【0028】
第1のピストン52は、第1のシース48から延びている第1のステム56、および第1のシース48内に含まれている第1のヘッド60を備える。
【0029】
第1のヘッド60は、移動した場合、収容されている油圧流体を加圧するように、第1のシース48内を調整された方法で摺動する。
【0030】
特に、第1のステム56と第1のシース48は、それぞれ車輪20、20’、20”とフレーム12に、または逆の部品に、機械的に結合されるのに適している。
【0031】
ショックアブソーバアセンブリ8は、第2の摺動方向X”-X”に沿って第2のピストン68を、内側に摺動自在に収容する第2のシース64をさらに備える。
【0032】
好ましくは、第1および第2の摺動方向は、互いに平行である。
【0033】
第2のシース64は、既知の方法で、非圧縮性の油圧流体で満たされており、当該油圧流体は、第1のシース48内で循環するものと同じである。
【0034】
第2のピストン68は、第2のシース64から延びている第2のステム72、および第2のシース64内に含まれている第2のヘッド76を備える。
【0035】
第2のヘッド76は、移動した場合、収容されている油圧流体を加圧するように、第2のシース64内を調整された方法で摺動する。
【0036】
第2のステム72と第2のシース64は、それぞれ車輪20、20’、20”とフレーム12に、または逆の部品に、機械的に結合されるのに適している。
【0037】
第1のシース48と第2のシース64は、実質的に中空であり油圧流体によって横断される、制御本体88を通る少なくとも一つの上側ダクト80および第1の相互接続ダクト84によって、互いに流体的に接続されている。
【0038】
第1のピストン52と第2のピストン68は、それぞれヘッド60、76の圧縮または並列の動作によって上側ダクト80へと移動し、当該ヘッド60、76の伸張または遠くへの動作によって上側ダクト80から移動する。
【0039】
制御本体88は、少なくとも一つの減衰バルブ92を収容している。減衰バルブ92は、制御本体88に向かってシース48、64によって通される油圧流体の調整移動をさせるのに適した孔96を有する減衰板94を備える。油圧流体の当該調整移動は、既知の方法で減衰作用を行う。
【0040】
加えて、制御本体88は、上側ダクト80に干渉しないアンロック位置(図1、3)と上側ダクト80が塞がれるロック位置(図2、4)から標準的なストロークを移動できるように、例えば制御本体88から延びているアペンディックス101で、アクチュエータ手段(図示されていない)に接続された制御バルブ100を収容している。
【0041】
すなわち、アンロック状態で、上側ダクトを通ることができ、したがって、シース48、64から制御本体88へ、およびその逆方向へ、油圧流体の移動ができる。それに対して、ロック状態では当該流体移動は、妨げられる。
【0042】
想定される実施形態によると、減衰バルブ92と制御バルブ100は、互いに機械的に結合されている。
【0043】
制御本体88は、少なくとも一つの補償容量97を設けられ、当該補償容量97は、第1および第2のシース48、64の油圧流体から分割され、シース48、64からもたらされる流体の圧力を受ける可動隔壁98で区切られている。
【0044】
補償容量97は、気体などの圧縮可能な流体で満たされている。
【0045】
想定される実施形態によると、可動隔壁98は、補償容量97内に含まれている弾性手段に接続されている。
【0046】
想定される実施形態によると(図1~2)、第1の相互接続ダクト84は、第1および第2のピストン52、68のヘッド60、76に対して上側ダクト80の反対側にある、第1および第2のシース48、64の下側端102に配置され、各ピストン52、68の伸縮動作中に第1のシース48と第2のシース64との間で油圧流体の移動ができる。
【0047】
一実施形態によると、制御バルブ100は、ロック位置(図2)で、上側ダクト80と第1の相互接続ダクト84の両方を塞ぎ、このロック状態で、第1および第2のピストン52、68の圧縮および伸張動作を同時に拘束するように構成されている。
【0048】
例えば、制御バルブは、一対の閉塞物104、106を備え、それぞれが上側ダクト80と第1の相互接続ダクト84それぞれを選択的に塞ぐ。
【0049】
例えば、閉塞物104、106は、円板であり、上側ダクト80と第1の相互接続ダクト84に対応するように配置されたときにそれらを塞ぐのに適切な側部エッジ107を設けられ、制御本体88内での流体の移動用の通過開口108を設けられている。
【0050】
さらなる実施形態によると(図3~4)、第1の相互接続ダクト84は、第1のピストン52の第1のヘッド60の上の第1のシース部48と、第2のピストン68の第2のヘッド76の下の第2のシース部64とを流体的に接続している。
【0051】
さらに、ショックアブソーバアセンブリ8は、第2の相互接続ダクト112を備える。第2の相互接続ダクト112は、第1のピストン52の第1のヘッド60の下の第1のシース部48と、第2のピストン68の第2のヘッド76の上の第2のシース部64とを流体的に接続している。
【0052】
制御バルブ100は、アンロック状態(図3)で、第1および第2の相互接続ダクト84、112を塞ぎ、上側ダクト80を通ることができるように構成されている。
【0053】
すなわち、アンロック状態(図3)では、第1および第2のシース48、64は、上側ダクト80のみによって互いに流体的に接続されているが、制御バルブ100は、第1および第2の相互接続ダクト84、112を介して得られる当該シース48、64間の油圧接続を塞いでいる。
【0054】
同様に、制御バルブ100は、ロック状態(図4)で、上側ダクト80を塞ぎ、第1および第2の相互接続ダクト84、112を通ることができるように構成されている。
【0055】
例えば、制御バルブ100は、調整ストロークによって摺動するアキシャル弁であり、油圧流体の調整移動のための通過開口108のおかげで、少なくとも部分的に孔が開いた減衰板94を設けられた減衰バルブ92と一体である。
【0056】
制御バルブ100は、示されているように、調整ストロークに沿って駆動するための作動手段(示されていない)に動作可能に接続された制御アペンディックス101を備えてもよい。
【0057】
一実施形態によると、ショックアブソーバアセンブリ8は、第3の相互接続ダクト113を備える。第3の相互接続ダクト113は、第1のピストン52の第1のヘッド60の下の第1のシース部48と、第2のピストン68の第2のヘッド76の下の第2のシース部64とを流体的に接続し、制御本体88を通過して、当該下側部分と減衰バルブ92との間に流体接続を設けている。そのような流体接続は、アンロック状態で、減衰バルブ92を通じて油圧流体を循環させる。
【0058】
一実施形態によると、減衰バルブ92は、カップ部114を備える。カップ部114は、アンロック状態では、第3の供給ダクト113を通じて第1のシース48と第2のシース64との間で流体接続をさせ、ロック状態では、制御本体88で第3の供給ダクト113を塞ぐ。
【0059】
例えば、カップ部114は、ロック状態(図4)で第3の相互接続ダクト113の通過ルーメン(管)を塞ぐマントル(覆い)を備える。そのようなカップ部114は、減衰板94と一部品構成であってもよい。
【0060】
上記したように、本発明は、一般的に車両に適用する。
【0061】
例えば、第1および第2のステム56、72は、同じ車両車輪に機械的に接続され得、各シース48、64は、車両フレームに機械的に接続され得る。または、第1および第2のステム56、72は、車両フレームに機械的に接続され得、各シース48、64は、同じ車両車輪に機械的に接続され得る。
【0062】
これは、例えば、フォークによって支持されている車輪の場合であり、そのステムは、第1および第2のステム56、72と一致する。
【0063】
さらに、本発明は、第1および第2のステム56、72が、対となりかつ互いと相互接続された二つの異なる車両車輪20’、20”に機械的に接続されている、車両、好ましくは原動機付き車両に適用されてもよい。例えば、当該異なる車輪は、傾斜原動機付き車両となるように、関節接合された四角形構造116によって相互接続されている。関節接合された四角形構造は、前輪部16上に(この場合、車輪20’、20”はまた、操舵する)、および/または後車軸24上に設けられてもよい。
【0064】
本発明による自動二輪車用の懸架装置群の機能が記載されている。
【0065】
特に、アンロック状態(図1)では、上側ダクト80および第1の相互接続ダクト84は、制御バルブ100の閉塞物104、106が上側ダクト80および第1の相互接続ダクト84を塞がないため、自由または通過できる。
【0066】
このように、油圧流体は、第1のシース48と第2のシース64との間を制御本体88に向かって自由に通過し、圧縮動作と伸張動作の両方で各第1および第2のピストン52、68によって送られる。
【0067】
事実、圧縮動作において流体は、上側ダクト80を通過し、伸張動作において流体は、第1の相互接続ダクト84へと押される。
【0068】
補償容量97は、既知の方法における第1および第2のシース48、64内の対応する第1および第2のステム56、72の侵入の程度に応じて縮小または拡大される。
【0069】
減衰バルブ60を通過する油圧流体は、対応する孔62を通る調整移動によって減衰バルブで減衰される。
【0070】
ロック状態(図2)において、閉塞物104、106は、上側ダクト80および第1の相互接続ダクト84を塞ぐ。このようにして、非圧縮性の流体は、第1および第2のシース48、64内でロックされ、これによりシース内の対応する第1および第2のピストン52、68がロックされる。
【0071】
結果として、ショックアブソーバアセンブリおよび関連する車輪20は、自由に振動できず、特に車輪は、上側ダクト80および第1の相互接続ダクト84の閉塞の時点での、その位置で拘束される。
【0072】
ロック状態は、例えばアペンディックス101に作用する、アクチュエータ手段を使用して、関連する調整ストロークの制御バルブ100を移動することで得られる。
【0073】
明らかに、その後のショックアブソーバアセンブリ8のアンロックは、上側ダクト80および第1の相互接続ダクト84を通過状態へ復帰するように、制御バルブ100を単純に移動することで発生する。
【0074】
図3~4の実施形態において、アンロック状態は、上述したものと実質的に同等である。
【0075】
事実、アンロック状態(図3)において、制御バルブ100は、第1および第2の相互接続ダクト84、112を塞ぎ、流体が通過できないようにし、その代わりに、制御本体88へ油圧流体の移動をさせる上側ダクト80は通過できる状態にある。制御本体内で、流体は、減衰バルブ92を通じて及び補償容量97によって減衰される。
【0076】
さらに、第3の相互接続ダクト113は、第1のピストン52の第1のヘッド60の下の第1のシース部48と、第2のピストン68の第2のヘッド76の下の第2のシース部64とを、制御本体88を通過して流体的に接続しており、当該下側部分と減衰バルブ92との間に流体接続を設けている。当該流体接続は、アンロック状態で、示されているように、減衰バルブ92を通過する油圧流体が循環できるようにする。
【0077】
ロック状態(図4)で、制御バルブ100は、上側ダクト80を塞ぐ。しかし、これに代わって接続された第1および第2の相互接続ダクト84、112によって第1および第2のシース48、64が接続される。
【0078】
同時に、減衰バルブ92のカップ部114は、第3の供給ダクト113を制御本体88で塞ぐ。それによって、第3の供給ダクト113は、ロック状態(図4)では、油圧流体を循環させない。
【0079】
特に、示されているように、第1の相互接続ダクト84は、第1のピストン52の第1のヘッド60の上の第1のシース部48と、第2のヘッド68の下の第2のシース部64とを流体的に接続している。
【0080】
さらに、第2の相互接続ダクト112は、第1のピストン52の第1のヘッド60の下の第1のシース部48と、第2のピストン68の第2のヘッド76の上の第2のシース部64とを流体的に接続している。
【0081】
このようにして、ロック状態では、第1および第2のステム56、72のストロークは、絶対的な意味ではロックされず、相対的な意味でのみロックされる。すなわち、二つのステム56、72は、同一のストローク、したがって、ショックアブソーバアセンブリ8に対する同一の軸方向位置、を有するように拘束されている。
【0082】
事実、ロックされているとき、油圧流体は、第1のシース48と第2のシース64の間を減衰せずに流れることができる。減衰バルブ92は、迂回されているため、ステム56、72の同時移動が可能となり、これは、例えば、前輪部16で二つの対となった車輪20’20”を備える傾斜車両で、自由なピッチ移動に変換される。その代わりにロール移動は、二つのステム56、72のストローク/シフト間の差を生じさせるため、抑制される。
【0083】
明らかに、これは、第1および第2の相互接続ダクト84、112が同一容量の油圧流体を含む範囲、すなわち、当該ダクトの長さおよび内径が等しい範囲で有効である。
【0084】
本発明によるショックアブソーバアセンブリ8をロックする用途は多様である。
【0085】
例えば、ショックアブソーバアセンブリ8は、関連する車輪のストロークの制御/ロック機能を実行してもよい。さらに、上述されたような、想定される実施形態により、車輪20’、20”のストロークをロックすることで、原動機付き車両のピッチおよび/またはロール移動のロック機能を実行することができる。
【0086】
当然、ロールのロックは、本発明のおかげで、少なくとも三輪(三輪の前輪部または後車軸で二つの対となった車輪)を有する車両と四輪を備える車両で実現できる。
【0087】
さらに、車輪のストロークのそのようなロックは、車両盗難防止機能としても使用できる。
【0088】
記載から理解され得るように、本発明は、従来技術の言及されている欠点を克服することを可能にする。
【0089】
特に、選択的なロックを備えるショックアブソーバアセンブリおよび懸架装置によれば、従来の解決策と異なり、圧縮と伸張の両方向において懸架装置の完全なロックが可能となり、または、三輪傾斜車両若しくは四輪車両に適用する場合、ロール移動をロックし、ピッチ移動のみが可能となる。
【0090】
そのような選択的運動学的ロックは、単純で、信頼性があり、かつ経済的な方法で行われる。
【0091】
したがって、発明は、特定の閾値以下の、動かないまたは制限された速度の状態で、ロールおよび/またはピッチに関して、特定の自動二輪車のセットアップを定めることができるようにする。
【0092】
解決策は、単純かつ経済的であり、また、付加または改造のように既存の懸架装置解決策に適用することも可能である。
【0093】
当業者は、以下の特許請求の範囲によって定められる発明の保護の範囲内にありながら、偶発的かつ特定の要件を満足するために、上記されたショックアブソーバアセンブリに多くの改良および変更をすることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6