IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ティエスアイ インコーポレイテッドの特許一覧

特許7078701凝縮粒子カウンタにおける偽カウントの低減
<>
  • 特許-凝縮粒子カウンタにおける偽カウントの低減 図1
  • 特許-凝縮粒子カウンタにおける偽カウントの低減 図2
  • 特許-凝縮粒子カウンタにおける偽カウントの低減 図3A
  • 特許-凝縮粒子カウンタにおける偽カウントの低減 図3B
  • 特許-凝縮粒子カウンタにおける偽カウントの低減 図4
  • 特許-凝縮粒子カウンタにおける偽カウントの低減 図5A
  • 特許-凝縮粒子カウンタにおける偽カウントの低減 図5B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】凝縮粒子カウンタにおける偽カウントの低減
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/06 20060101AFI20220524BHJP
   G01N 15/14 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
G01N15/06 D
G01N15/14 J
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2020208043
(22)【出願日】2020-12-16
(62)【分割の表示】P 2019082680の分割
【原出願日】2017-03-31
(65)【公開番号】P2021043226
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】62/317,102
(32)【優先日】2016-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507387169
【氏名又は名称】ティエスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TSI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】レミアーズ、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ファーマー、ケネス
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特許第6522864(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0009748(US,A1)
【文献】特開2004-354370(JP,A)
【文献】特開2008-020456(JP,A)
【文献】特開2006-201075(JP,A)
【文献】特表2018-509637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝縮粒子カウンタにおいて粒子の偽カウントを判定するシステムであって、
試料フローポンプに連結されるように構成された少なくとも1つのエアロゾル試料入口と、
前記エアロゾル試料入口と前記試料フローポンプとに流体連通されるとともに、前記エアロゾル試料入口と前記試料フローポンプとの間に配置されるエアロゾル流路と、
それぞれが前記エアロゾル流路の少なくとも一部を形成する多孔媒体を備える少なくとも3つの芯体と、
少なくとも3つの光学粒子検出器であって、当該少なくとも3つの光学粒子検出器の1つが前記少なくとも3つの芯体の1つの出口に連結され、前記少なくとも3つの芯体の各々の出口におけるカウントを測定する、前記少なくとも3つの光学粒子検出器と、
を備え、本システムは、前記少なくとも3つの芯体の1つからのカウントを、前記少なくとも3つの芯体の残りの芯体のカウントと比較するように構成されるシステム。
【請求項2】
前記少なくとも3つの光学粒子検出器のそれぞれと接続され、前記少なくとも3つの芯体の1つからのカウントを前記少なくとも3つの芯体の残りの芯体のカウントと比較して前記少なくとも3つの芯体のうちの1つからのカウントが前記少なくとも3つの芯体の残りの一つひとつのカウントよりも統計的に大きいか否かを判定し、統計的に大きいカウントは、偽カウントとみなす処理装置をさらに備える請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも3つの芯体の1つのカウントについて当該カウントが統計的に大きい、という判定に基づき、前記処理装置が、粒子濃度の報告値を計算する際に、予め設定された量だけ偽カウントをさらに低減することをさらに備える請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
別のカウントよりも統計的に大きい1つのカウントは、予め設定された信頼区間についての二項確率論に基づく請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも3つの芯体のそれぞれの1つに各々が別々に結合された複数の処理装置をさらに備える請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記複数の処理装置のそれぞれは、前記少なくとも3つの芯体の各々の1つからのカウントが当該少なくとも3つの芯体の残りの一つひとつのカウントよりも統計的に大きいか否かを判定するために、前記少なくとも3つの芯体の各々の1つからのカウントを、当該少なくとも3つの芯体の残りの一つひとつのカウントと比較し、統計的に大きいカウントを偽カウントとみなすように構成される請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも3つの芯体のそれぞれは、前記凝縮粒子カウンタの最終使用者によって現場で交換可能である請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも3つの芯体のそれぞれには、銀が含浸される請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記少なくとも3つの芯体のそれぞれは、バイオ抑制手段で処理される請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記少なくとも3つの芯体を取り付けるための芯体スタンドを有する着脱可能な芯体カートリッジをさらに備え、前記芯体スタンドは、流入するエアロゾルストリームを前記少なくとも3つの芯体の数と等しい数の出口路に分割するように構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記着脱可能な芯体カートリッジは、ドレン槽を有する排水サイドカーと流体連通し、前記排水サイドカーは、気泡や水滴がエアロゾル流路内に流れることを低減または排除するために、前記少なくとも3つの芯体に供給される余剰な水を排出するように構成される請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも3つの芯体の数は、当該少なくとも3つの芯体のそれぞれの中おけるエアロゾルストリームの層流を維持するために十分に低いレイノルズ数を維持することに関連する諸要因に基づく請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
凝縮粒子カウンタにおいて粒子の偽カウントを判定するシステムであって、
多孔媒体からなり、少なくとも3つのエアロゾル流路が形成された少なくとも1つの芯体と、
複数の光学粒子検出器であって、該光学粒子検出器の1つは、少なくとも3つのエアロゾル流路の各々の一つひとつからカウントを測定するために、当該少なくとも3つのエアロゾル流路の1つの出口路のそれぞれと接続される前記光学粒子検出器と、
を備え
本システムは、前記少なくとも3つのエアロゾル流路の1つからのカウントを、前記少なくとも3つのエアロゾル流路の残りのエアロゾル流路のカウントと比較するように構成されるシステム。
【請求項14】
各光学粒子検出器と接続され、前記少なくとも3つのエアロゾル流路の1つからのカウントを前記少なくとも3つのエアロゾル流路の残りの一つひとつのカウントと比較して前記少なくとも3つのエアロゾル流路のうちの1つからのカウントが前記少なくとも3つのエアロゾル流路の残りの一つひとつのカウントよりも統計的に大きいか否かを判定し、統計的に大きいカウントは、偽カウントとみなす処理装置をさらに備える請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記少なくとも3つのエアロゾル流路の1つからのカウントについて当該カウントが統計的に大きい、という判定に基づき、前記処理装置が、粒子濃度の報告値を計算する際に、予め設定された量だけ偽カウントをさらに低減することをさらに備える請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
別のカウントよりも統計的に大きい1つからのカウントは、予め設定された信頼区間についての二項確率論に基づく請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つの芯体に供給される余剰な水を排出するように構成された排水サイドカーであって、ドレン槽を有する前記排水サイドカーと流体連通する前記少なくとも1つの芯体をさらに備える請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記水が前記排水サイドカー内にあるという判定に基づいて、前記少なくとも1つの芯体への給水が十分であるときに給水を停止する信号を提供するセンサをさらに備える、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記センサが、水センサ、温度センサ、および湿度センサを含むセンサ形式から選択される少なくとも一形式のセンサからなる、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記少なくとも3つのエアロゾル流路の各々の1つにそれぞれが別々に接続された複数の処理装置をさらに備える請求項13に記載のシステム。
【請求項21】
前記複数の処理装置のそれぞれは、前記少なくとも3つのエアロゾル流路の各々の1つからのカウントが当該少なくとも3つのエアロゾル流路の残りの一つひとつのカウントよりも統計的に大きいか否かを判定するために、前記少なくとも3つのエアロゾル流路の各々の1つからのカウントを、当該少なくとも3つのエアロゾル流路の残りの一つひとつのカウントと比較し、統計的に大きいカウントを偽カウントとみなすように構成される請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
凝縮粒子カウンタにおいて粒子の偽カウントを判定する方法であって、
共通のエアロゾル試料入口に結合される少なくとも3つのエアロゾル流路であって、前記凝縮粒子カウンタ内における前記少なくとも3つのエアロゾル流路のそれぞれの出口路に結合された別個の粒子検出器を用いてカウントを測定することと、
前記少なくとも3つのエアロゾル流路のいずれかからのカウントが、当該少なくとも3つのエアロゾル流路の残りの一つひとつのカウントのそれぞれのカウントよりも統計的に大きいか否かを判定することと、
統計的に大きいカウントを偽カウントとみなすことと、
粒子濃度の報告値を計算する際に予め設定された量だけ偽カウントを低減することと、
を備える方法。
【請求項23】
1つ以上の芯体内における少なくとも3つのエアロゾル流路において気泡や水滴が流れることを低減または排除するために、前記少なくとも3つのエアロゾル流路の少なくとも一部として機能する前記1つ以上の芯体に供給される余剰な水を排出することをさらに備える請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも3つのエアロゾル流路内に気泡や水滴が流れることを低減または排除するために、前記少なくとも3つのエアロゾル流路の少なくとも一部として機能する1つ以上の芯体に結合されたドレン排気口を通して一定量供給の空気を流すことさらに備える請求項22に記載の方法。
【請求項25】
対になる少なくとも3つのエアロゾル流路間のカウントを比較することと、
予め設定された時間間隔における前記少なくとも3つのエアロゾル流路のそれぞれからのカウントの総数に従って、比較から粒子カウントを順序づけることと、
をさらに備える請求項22に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも3つのエアロゾル流路の幾何的形状の違いに基づいて、前記少なくとも3つのエアロゾル流路のそれぞれについて測定されたカウントに比較要因を適用することをさらに備える請求項22に記載の方法。
【請求項27】
別個の粒子検出器間のカウント効率の違いを考慮に入れるために、別個の粒子検出器のそれぞれについて効率要因を適用することをさらに備える、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
凝縮粒子カウンタにおいて粒子の偽カウントを判定する方法であって、
前記凝縮粒子カウンタからの少なくとも3つの芯体からのカウントを前記少なくとも3つの芯体の残りの一つひとつのカウントと比較することと、
前記比較に基づいて、前記少なくとも3つの芯体のいずれかからのカウントが前記少なくとも3つの芯体の残りの一つひとつのカウントよりも統計的に大きいか否かを決定し、統計的に大きいカウントは偽カウントであると判定することと、
を備える方法。
【請求項29】
前記少なくとも3つの芯体の1つからのカウントについて当該カウントが統計的に大きい、という判定に基づき、粒子濃度の報告値を計算する際に、予め設定された量だけ偽カウントをさらに低減することをさらに備える請求項28に記載の方法。
【請求項30】
別のカウントよりも統計的に大きい1つからのカウントは、予め設定された信頼区間についての二項確率論に基づく請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝縮粒子カウンタにおける偽カウントの低減に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、凝縮粒子カウンタ(CPC:Condensation Particle Counter)は、伝統的には、高い偽カウント率を有し、特に光学粒子カウンタと比較した場合、顕著となる。光学粒子カウンタにおいて、偽カウントは、通常、光学的又は電気的ノイズによって生じるが、濾過又は除去可能な場合が多い。偽カウントは、実際の粒子のパルスとは異なって見えるパルスを生成する散乱特性を有するからである。しかしながら、あるCPCにおいて、粒子が該装置内で生成される場合には、CPCに対し内的に偽カウントが生じる。これらの粒子は、生成後に測定対象の粒子と同じように成長するため、偽カウント粒子が実際の粒子と同じように見えることから、真カウントと偽カウントとを区別することは、困難又は不可能である。したがって、CPCの内部の偽カウントの除去は、極めて困難な課題である。
【0003】
さらに、高率の偽カウントは、通常、水ベースCPCの場合に、他の種類の作業流体に基づくCPC(たとえば、イソプロパノール又はブタノールを用いるアルコールベースのCPC)と比較して起こりやすい。クリーンルーム用途で使用するための偽カウントが低率な高流量CPCを開発しようとする各種製造業者の試みは、これまで失敗に終わってきた。一部のアプローチは、当初は非常に優れた偽カウント率を達成したが、そのようなアプローチも、長期間にわたって低率の偽カウントを維持することはできなかった。
【0004】
CPCは、一般的にはより高濃度粒子を測定するために使用されてきたため、大部分の用途において、この高率の偽カウントは、問題とはならなかった。しかしながら、高率の偽カウントは、たとえば、クリーンルームや、電子品製造工程が行われる環境で見られるような低粒子濃度を測定する場合には、重大な問題である。高率の偽カウントは、通常、毎分2.83リットル(毎分0.1立法フィート)であるクリーンルームCPCの試料フロー量が増大したときはさらに深刻となる。
【0005】
しかしながら、試料体積流量が増大するにつれて、流路に排出される作業流体は、泡やその他の形態の小滴を生成しがちである。その後、小滴は、CPC内の光学粒子検出器によって検出される大粒子へと成長する。これらのカウントは、CPCに対し内的に発生するとともに、監視されている環境からの実際の粒子によって発生するものではないため、内的に発生したカウントは「粒子の偽カウント」と考えられ、粒子カウンタが清浄なHEPA濾過空気をサンプリングしているときでも発生する。
【0006】
CPCの性能は、規定の時間間隔内の偽カウントの数によって格付けされる。たとえば、半導体クリーンルームは、毎時間6未満の偽カウントを要求する。したがって、一般に、偽カウント数が少ないほど、装置は、優れている。
【発明の概要】
【0007】
開示の発明は、CPCでの粒子の偽カウントを低減又は除去する技術及び設計について記載している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】水ベース凝縮粒子カウンタ(CPC)を示す概略図。
図2】複数の流路(たとえば、並列成長管)を形成するために使用されて、本明細書に開示される一形式の粒子の偽カウント低減に係る実施形態を構成する複数の芯体を組み込んだ水ベースCPCを示す断面図。
図3A図2に示すように、複数の流路を有し、個々の流路の各々に連結される別体の粒子検出器も組み込んだ水ベースCPCの一部の実施形態を示す斜視図。
図3B】別体の光学粒子検出器の各々をより明確に示すために、特定のコンポーネントを除く、図3Aの水ベースCPCの検出器の一部分の実施形態を示す別の斜視図。
図4】n=1からn=100粒子が、同じ確率で辿り得る2つの所与の経路について、最大「x」個の粒子が所与の経路「X」を選択する累積確率を示すグラフ。
図5A】決定木ベースのアルゴリズムを用いてCPCにおける偽カウントを低減又は除去する方法を示す図。
図5B】決定木ベースのアルゴリズムを用いてCPCにおける偽カウントを低減又は除去する方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
現代の水ベース凝縮粒子カウンタ(CPC)で報告されるカウント率は、粒子の高率の偽カウントのため、クリーンルーム用途では、一般的には許容不能である。現行のクリーンルーム要件(たとえば、半導体業界では)は、毎時間6カウント未満の厳格な偽カウント率を規定している。本明細書に開示される各種実施形態は、水泡や空洞の水滴(たとえば、核生成点として機能する実際の粒子を含んでいない検出された「粒子」)といった様々な要因によって生じる偽カウントを低減又は除去するように特別に開発された技術及び設計を含む。通常、こうした粒子は、数個の粒子から数十、さらには数百もの粒子に至る数の粒子の激増を引き起こす「諸事象」において生成される。これらは短時間の事象であり(数秒で消失する)、粒子が生成されない長期間の事象とは分離されるが、同様の事象は、実世界でも発生し得る。しかしながら、これらの事象は、成長管内で発生するため、統計上、これらの諸事象は、所与の時間内に1つの成長管でのみ発生する。粒子の噴出が1つの成長管のみで発生する場合、この事象は、偽カウント事象によるものである。真の事象は、3つの成長管のすべてにおいて検出されることになる。
【0010】
一実施形態において、本明細書に開示されるクリーンルームCPCは、該装置の試料フロー量を増加させるため、相互に並列に配置される3つの成長管(「芯体」)を使用する。例示の一実施形態において、開示される発明は、3つの成長管のそれぞれの出口に個々別々の粒子検出器を追加しており、3つの個々の粒子検出器の各出口で測定される信号を比較して、検出されている事象が、監視されている環境からの実際の粒子から生じる真カウントであるか、偽カウントであるかを判定する。偽カウントは、1度に1つの成長管で発生する事象によって引き起こされるため、3つの粒子検出器のうちの1つでしか検出されない。より詳細に後述するように、実際の粒子は、3つの成長管のうちのいずれをも均等に通過する可能性が高いため、その結果として、統計上、3つの検出器すべてが粒子を感知しカウントすることになる。1つの検出器でしか発生しない事象は、偽カウントであるから除去することができ、CPCの偽カウント率を大幅に低減又は除去する。
【0011】
概して、凝縮粒子カウンタ(凝縮核カウンタとも呼ばれる)は、監視されている環境において、小さすぎるために、従来の検出技術(たとえば、光学粒子カウンタにおけるレーザ光線の光散乱)によって検出するのに十分な光を散乱させることができない粒子を検出する目的で使用される。小粒子は、粒子上に生成される凝縮によって、より大きなサイズの粒子に成長させられる。すなわち、各粒子は、作業流体の核生成点として機能する。該装置の作業流体によって生成される蒸気は、粒子上で凝縮して、粒子を大型化する。粒子上での作業流体の蒸気の凝縮により粒子を成長させた後、CPCは、個々の滴をレーザ光線の焦点(又は焦線)に通して、散乱放射形状の閃光を生成する、という点で光学粒子カウンタと同じように機能する。各閃光は、1粒子としてカウントされる。凝縮粒子カウンタの原理と計装の複雑さは、粒子上で蒸気を凝縮させる方法にある。粒子周囲の蒸気が特定度合の過飽和に達すると、蒸気は、粒子上で凝縮し始める。過飽和の規模が、CPCの検出可能な最小粒子サイズを決定する。一般的に、該装置の過飽和プロファイルは、厳密に制御される。
【0012】
凝縮成長を達成するのに使用可能な方法はいくつかあるが、最も広く使用される技術は、連続的な層流法である。連続の層流CPCは、他の種類のCPCよりも精密な温度制御を行い、乱(混合)流を使用する設備よりも粒子損失が少ない。層流CPCにおいて、試料は、蒸気で飽和されるコンディショナ領域を経由して連続的に抜き取られ、熱平衡に導かれる。次に、試料は、凝縮が発生する領域に引き込まれる。反対に、アルコールベース(たとえば、イソプロパノール又はブタノール)のCPCにおいて、コンディショナ領域は、温かな温度であり、凝縮領域(飽和器)は、比較的低温である。水が非常に高い蒸気拡散率を有するため、低温の凝縮領域を備えた層流水ベースCPCは、熱力学的に作用しない。層流水ベースCPCにおいて、コンディショナ領域は、低温であり、凝縮領域は、比較的高温である。
【0013】
水ベースCPCは、アルコールベースのCPCよりも明確に優れた利点をいくつか有する。水は無毒であり、環境に優しく、入手し易い。しかしながら、水はいくつかの欠点も有する。概して、液体純度は、水の場合、化学薬品供給会社から購入するアルコールの場合のようには厳密に管理されない。水中の不純物は、「芯体」(後述)に堆積して、最終的に芯体材料の効果を無にする場合がある。この不純物の作用に対処するため、蒸留水又は高純水が利用されることが多い。加えて、大抵の場合、芯体は、最終使用者によって現場で交換可能である。ごく低い粒子カウントが想定される環境(たとえば、半導体製造施設)において、最終使用者は、順相液体クロマトグラフィ(NPLC:Normal-Phase Liquid Chromatography)で使用されるように特別に調製され梱包された水を使用することができる。NPLC水は、低紫外線(UV)吸光度の超純水であり、たとえば0.2マイクロメートル(μm)フィルタを介して濾過され、溶剤洗浄した琥珀ガラスボトルに詰められ、窒素などの不活性雰囲気下で封止されることが多い。NPLC水を使用することにより、通常なら水中に存在し得る汚染物質(たとえば、イオン、粒子、又はバクテリア)による粒子の偽カウントを低減又は除去することを助けることができる。
【0014】
以下の詳細な説明において、偽粒子低減技術の一部を成し、例示のため特定の実施形態を示す添付図面を参照する。他の実施形態も利用することができ、たとえば、本開示の範囲を逸脱せずに様々な熱力学的、電気的、又は物理的変更を加えることができる。したがって、以下の詳細な説明は、限定ではなく例示の意味で解釈すべきである。
【0015】
次に図1を参照して、同図には、水ベース凝縮粒子カウンタ(CPC)100の概略が示されている。水ベースCPC100は、所与の環境(たとえば、半導体製造施設)内の粒子濃度レベルを監視するために使用される。水ベースCPCの動作を左右する熱力学的考慮事項は、当該技術において既知であるため、ここではそれほど詳細には説明しない。
【0016】
水ベースCPC100は、エアロゾル試料フロー103を、多孔媒体109を通して導く流路101を含むように図示されている。多孔媒体109は、芯体とも称され、1つ以上の各種親水性材料を備え得る。流路の少なくとも一部を囲む多孔媒体109は、試料入口151から光学粒子検出器115(より詳細に後述する)又はその近傍まで連続する材料を含み得る。もしくは、多孔媒体109は、エアロゾル試料フロー103(エアロゾル試料フロー103は、流路101内に示されている)の流路101に沿って異なる区間又は部分を備え得る。
【0017】
本実施形態において、多孔媒体109には、2つの水入口路113に沿って注水ボトル1から液体の水が供給される。水ベースCPC100の特定の設計に応じて、水入口路3の数は、単独の入口路まで減少させ得、あるいは、入口路の数は、増加させ得る。水ベースCPC100に設計される水入口路113の実際の数は、エアロゾルフロー量、システムの熱力学的要因、及び水ベースCPC100の他の考慮事項に基づき、当業者が決定し得る。第1の水入口路113(試料入口151に最も近い)は、水ベースCPC100の冷却されたコンディショナ部150の直前で多孔媒体109に水を供給する。第1の水入口路の下流の第2の水入口路113は、水ベースCPC100の加熱成長部170の直前に追加の水を供給する。図1に示すように、試料入口151からの小粒子は、粒子上の水蒸気の凝縮により、大きさの点で「成長」している。大粒子105は、小粒子と異なり、通常はより大きな散乱特性を有する。したがって、凝縮層を備えた大粒子105は、試料入口151に入る小粒子よりも容易に光学粒子検出器115によって検出される。
【0018】
たとえば、エアロゾルストリームを含む流路101内の大粒子105は、通常は固体レーザダイオードで構成される光源117によって出力される光線121の「焦点」を横切る。焦点は、光を(たとえば、光源117から出力される光線121の方向と流路101との両方に略直角である回析限界点又は回析限界線へ)集中させる光学素子119によって生成される。各大粒子105によって個別に生成される散乱放射線123は、光学センサ125によって感知される。大粒子105は、光学粒子検出器115の外へ続き、フィルタ129によって捕捉される、又は水分離器143へと続く。水分離器143は排水ポンプ145によって定期的に又は継続的に排水口147に排水する。
【0019】
流路101を通るエアロゾルフロー全体は、試料フローポンプ127によって維持される。図1に示す実施形態において、エアロゾルフロー量は、臨界オリフィス131によって維持される。他の実施形態において、標準的なオリフィス又はその他の種類の流制御機構を採用することができる。臨界オリフィスは、当該オリフィスによる十分な差圧が維持される限りにおいて、一定流量を維持可能であるため、ガス流サンプリング設備で使用されることが多い。試料フローポンプ127は、水ベースCPC100の内部のポンプであってもよいし、外部接続ポンプであってもよい。いくつかの実施形態において、水ベースCPC100は、施設内に設置される真空供給源(たとえば、半導体製造施設の真空供給源)に直接連結し得る。ポンプ排出物141は、監視されている環境の汚染レベルを上昇させないように大気への放出前に濾過される。
【0020】
試料フローポンプ127は、試料入口151から、移送流フィルタ135と、第2の臨界オリフィス137と、追加的な移送流バルブ139とを含む第2の気体流路を通るフローも提供し得る。第2の臨界オリフィス137による差圧が一定圧力を維持するのに十分でない場合、総ガス流量を低減するために追加的な移送流バルブ139を使用し得る。
【0021】
次に図2を参照して、同図には、水ベースCPCの断面が示されており、該水ベースCPCは、複数の流路(たとえば、並列成長管)を形成し、本明細書に開示される一形式の粒子の偽カウント低減に係る実施形態を構成するために使用される複数の芯体を組み込んでいる。水ベースCPC200は、基本的動作において、図1の水ベースCPC100と同様に機能する。加えて、水ベースCPC200は、最終使用者によって容易に取り外し可能に構成し得る着脱可能な芯体カートリッジ201を含むように図示されている。着脱可能な芯体カートリッジ201は、着脱可能な芯体カートリッジ201全体に固定される芯体スタンド203と、円錐部205とを含む。着脱可能な芯体カートリッジ201には、排水槽209を内部に形成した排水サイドカー207が隣接する。
【0022】
試料入口(図2には具体的に示さないが、図1の試料入口151と同様である)は、着脱可能な芯体カートリッジ201の下縁近傍に位置する。試料入口を通って到達するエアロゾルストリームに含まれる粒子は、1つ以上の芯体211を介して1つ以上の流路213を横切る。一例において、3つの芯体211が流路213を形成するのに使用される。しかしながら、芯体211の数は、1つ以上の流路213を通るエアロゾルストリームの層流を維持するために十分に低いレイノルズ数を維持することに関連する諸要因に応じて、製造業者が変更し得る。上記諸要因は、当業者にとって既知であり、流体の動的粘度及び運動粘度と同様に、エアロゾルストリーム内の流体の平均速度及び密度に基づいて、エアロゾルフローの慣性力と粘性力の比を判定すること、及び、芯体211の内断面に関連する特有の線寸法特性を決定することを含む。加えて(たとえば、「穿孔」すること、或いはその他の方法で、より多くの流路を形成又は開口することによって)、複数の流路を内部に形成した単体の芯体211も使用し得る。
【0023】
芯体スタンド203は、流入するエアロゾルストリームを分割し、芯体の数と等しい数の出口路を含む。図2に示す実施形態において、芯体スタンド203は、3つの出口路を有する。芯体スタンドは、芯体211が搭載される物理的機械的インタフェースも提供する。2つ以上の芯体211が使用される場合、フロー結合器215が粒子検出チャンバ219の直前で粒子を3つのエアロゾルストリームから単独のエアロゾルストリームに合流させる。粒子検出チャンバ219は、図1の光学粒子検出器115と同様したものであってよい。芯体及び芯体スタンドに関するさらなる詳細は、2016年2月23日に提出されたPCT出願US2016/019083号で参照することができる。
【0024】
1つ以上の冷却ファン223は、たとえば、水ベースCPC200内で生成される余剰な熱は、加熱素子及び熱電気素子の熱とともに、1つ以上の回路基板221によって低減又は除去される。
【0025】
図1の水ベースCPC100を参照して説明した基本的な熱力学的原理と同様に、図2の水ベースCPC200は、コンディショナ部220、イニシエータ部240、及びモデュレータ部260を有する。コンディショナ部220は、冷却されてエアロゾルストリーム内で粒子上に凝縮物を形成する工程を開始する。イニシエータ部240は、加熱されて凝縮物が個々の粒子上に形成される水ベースCPC200の一部分である。モデュレータ部260は、粒子検出チャンバ219に入る湿潤空気が低減又は除去されるように、イニシエータ部240に比較して十分に冷却されている。注水ボトル217は、浄水(たとえば、NPLC、他の超純水、又は蒸留水)用の容器を提供し、芯体2は、水和状態に保たれ、流路213内の水蒸気は、粒子上に凝縮する。しかしながら、余剰な量の水や、(たとえば、「噴射状に」供給されるときに)芯体211に非常に迅速に供給される水は、粒子を含まない水泡又は空洞の水滴の形成の原因になる可能性がある。こうした状況のいずれかは、粒子の偽カウントの増大を導くおそれがある。
【0026】
一実施形態において、注水ボトル217からの水は、重力送りによって芯体211に供給される。別の実施形態において、注水ボトル217からの水は、水ポンプ(図示せず)によって定期的に芯体211に供給される。別の実施形態において、注水ボトル217からの水は、注射器注入機構(具体的には図示されていないが、当業者によって理解される)によって、連続的又は定期的に芯体211に供給される。別の実施形態において、注水ボトルは、わずかに加圧されることにより、又は空気圧又は水圧ラムシステムで駆動されることにより、一種の注射器注入システムとして機能し得る。別の実施形態において、注水ボトル217からの水は、脈動ダンパ(たとえば、水の流量の急速な増大を低減又は除去するように設計された容器)によって、水ポンプ又はいずれかの種類の注射器注入システムから定期的に芯体211に供給される。水を(たとえば、注射器注入によって)連続的に、又は(たとえば、脈動ダンパ機構を利用して)定期的に供給することによって、短期間に芯体への余剰な水の供給が低減又は除去される。
【0027】
各種実施形態において、過酸化水素を注水ボトル217に添加して、バクテリアの成長を防止し得る。各種実施形態において、芯体への銀の含浸、又は、UV照射などのその他のバイオ抑制手段を、注水ボトル217への過酸化水素の添加と別体に又は組み合わせて採用し得る。エアロゾルストリーム内の粒子と同様、水中に形成されるバクテリアも流路213内の核生成点の基になり得る。その後、粒子検出チャンバ219を流れるバクテリア上の凝縮水は、粒子としてカウントされ得る。したがって、バクテリアもCPCの粒子の偽カウントを増加させる可能性がある。
【0028】
一般的に、選択される送水技術に関係なく、芯体211への送給ライン内の気泡を回避して、流路213内に形成される水泡を低減又は除去すべきである。また、送水路内の停滞空気も回避されるべきである。
【0029】
しかしながら、水がどのように芯体211に供給されるかに関係なく、余剰な水は、流路213を流れるエアロゾルストリーム内に泡や空洞の水滴を生成する前に排出されるべきである。排水サイドカー207は、排気口、水センサ口、及び排水口(図示しないが、当業者によって容易に理解される)を含み得る。排気口は、空気を引き込むことによって貯水槽からの水をより容易に排出させることができるものであり、たとえば、試料フローポンプ127(図1)、又は、水ベースCPC200の内側若しくは外側に搭載される別のポンプに、前記排気口は連結され得る。
【0030】
水が芯体211に供給されると、芯体211からの余剰な水は、貯水槽に排出される。芯体211への給水が十分になると、水センサは、給水を停止させる信号を送る。水センサは、電気導線によって回路基板221の1つに電気的に接続されて、水が排水サイドカー207に存在することを判定する。排水サイドカー207の排気口を通る一定気流は、貯水槽から排水サイドカー207へと水を引き込む。排水サイドカー207は、水センサを含み、該水センサは、予め設定されたレベルまで排水路が水で満たされた時点を判定し、該時点において、水は、別体のポンプによって抽出される。
【0031】
他の実施形態において、水センサは、水が排水サイドカー207に存在するときを判定し得る、温度感知素子(たとえば、熱電対又はサーミスタ)、又は、湿度感知素子を代替的に備え得る。水が検出された後、水は、たとえば、電磁式マイクロポンプにより、排水口を経由し、排水サイドカー207から外に汲み出される。特定の例示的実施形態において、マイクロポンプは毎分約50μリットルから約200μリットルの可変近似流量で水を汲み出すことができる。他の実施形態において、マイクロポンプは、毎分約150μリットルの略一定近似流量で水を汲みだすことができる。排水サイドカーに関するさらなる詳細は、2016年2月23日に提出されたPCT出願US2016/019083号を参照し得る。
【0032】
図3Aは、図2に示すように複数の流路(たとえば、並列成長管)を有し、別体の光学粒子検出器301A、301B、301Cを組み込んだ水ベースCPCの検出器部300の一実施形態を示す斜視図である。別体の光学粒子検出器301A、301B、301Cは、それぞれ、個々の流路213に接続される(図2を参照)。したがって、3つの別体の光学粒子検出器301A、301B、301Cを、エアロゾルストリームを単独の粒子検出チャンバ219まで導く直前に3つのエアロゾルストリームからの粒子を単独のエアロゾルストリームに結合する図2のフロー結合器215に代えて、利用し得る。
【0033】
光学粒子検出器301A、301B、301Cは、それぞれ、個別のエアロゾル排出路303A、303B、303Cと、個々の回路基板305A、305B、305Cを含むように図示されている。光学粒子検出器301A、301B、301Cのそれぞれの1つに接続される回路基板305A、305B、305Cの各々は、諸機能部品を含み得るものであり、該機能部品は、図4、5A、及び5Bを参照してより詳細に後述するように、各種統計パラメータを算出して粒子の偽カウントを低減又は除去するマイクロ処理装置と同様に、光源(たとえば、図1の光源117と同様又は同一の光源)を駆動するレーザドライバや、粒子検出器(たとえば、図1の光学センサ125と同様又は同一のセンサ)からの検出された粒子によって生じる信号を受け取る粒子検出回路など、といったものである。他の実施形態において、別体のマイクロ処理装置(図示せず)を回路基板305A、305B、305Cのそれぞれに電気的に接続して、他の制御機能に加えて各種統計パラメータを算出し得る。
【0034】
エアロゾルストリームがそれぞれの光学粒子検出器及び排出路を横切った後、エアロゾルストリーム内の粒子は、フィルタ129によって捕捉され、又は図1に示すように水分離器143へ流れる。
【0035】
図3Bは、図3Aの水ベースCPCの検出器部350の一実施形態を示す別の斜視図であり、別体の光学粒子検出器301A、301B、301Cをそれぞれより明確に示すように所定のコンポーネントを取り除いている。図3A及び図3Bは、それぞれ3つの粒子検出器を示しているが、当業者であれば、本明細書の開示を読んで理解し、4つ以上の(たとえば、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上)粒子検出器(芯体の数に対応する)、或いは、より少ない(たとえば、2つ)粒子検出器を利用して説明される誤粒子低減又は除去技術の恩恵を得ることができることを、認識するであろう。一般に、どの設計レイアウトでも、流路の幾何的形状の同等性に配慮すべきである。しかしながら、(たとえば、各種流路の内径又は面積比の相違に基づく)流路の幾何的形状の相違を測定又は推論によって考慮に入れ、図5A及び図5Bを参照して説明するような粒子カウント比較方法に組み込むこともできる。また、複数の粒子検出器の各々によるカウント効率の差も、検出される実際の粒子の数を判定する際に検討し考慮し得る(たとえば、所与の粒子サイズについて、3つの検出器すべてが100%の効率でない場合、真粒子カウント又は偽カウントを判定するときに補正要因を含め得る)。
【0036】
次に図4を参照して、グラフは、n=1からn=100の粒子が、同じ確率で辿り得る2つの所与の経路について、最大「x」の粒子が所与の経路「X」を選択する累積確率を示す。つまり、同じ確率で辿り得る2つの経路では、これらの統計は、二項確率に従う。
【0037】
この統計モデリングの結果、当業者は、統計値とともに芯体毎の粒子カウンタを用いることにより、個々の芯体内部で生じる偽カウントスパイクが、芯体外部で生じる真のカウント(たとえば、実際の粒子)から区別され得ることを認識する。芯体外部からの粒子の大きなスパイクが1つの芯体でしか検出されないことは(芯体が均等に機能すると仮定した場合)、起こりにくいため、偽カウントは、区別可能となる。
【0038】
たとえば、2つの芯体内の総粒子カウントが100の場合、第1の芯体に60粒子、第2の芯体に40粒子が存在する確率は、わずか約5%である。2つの芯体間で一方の芯体に70、他方の芯体に30と分割されるカウントは統計上、はるかに可能性が低い。つまり、図5A及び5Bを参照してより詳細に後述する二項統計は、予め設定された閾値数の粒子を超える特定の芯体のスパイクを偽カウントとして除外可能な信頼度を算出する機能を果たす。
【0039】
ある試験ケースでは、3芯体クリーンルーム型試作品CPCにおいて毎分約42カウントの高率の偽カウントが測定された。しかしながら、これらのカウントの多くは、1つ以上の芯体内又は1つ以上の個々の芯体路に沿って生じた気泡、又は、空洞の滴からのものであった。つまり、カウントの大半は、実際の粒子(たとえば、クリーンルーム内でサンプリングされたエアロゾルストリーム内で生じた粒子)に基づくものではなかった。本明細書に記載した(さらにより詳細に後述する)アルゴリズム及び技術を適用することによって、研究者らは、測定された、粒子の大きなスパイクにおいて、滴の付随による偽カウント率が約20倍低減されたことに着目した。本明細書に開示される技術とシステムの使用によって、(たとえば、本技術の適用後)毎分4.7カウントの「フィルタリングされた」カウント率が得られた。フィルタリングされたカウント率は、「現時点での」時間間隔(たとえば、予め設定されたサンプリング時間間隔)のデータのみしか必要としない。
【0040】
該技術の別の用途において、短期間の「ルックバック」成分は、閾値超のスパイクに続く閾値以下の偽カウントを考慮に入れることができる。ルックバック成分の使用により、毎分42カウントの生のカウント率と比較して、毎分2.6カウントのカウント率が得られた。
【0041】
次に図5A及び5Bを参照して、同図には、偽カウントを低減又は除去する決定木ベースのアルゴリズムを用いる方法の第1の部分500Aと方法の第2の部分500Bが示されている。概して、粒子カウントを調節するか否かに関する判定工程は、以下の3ステップで進行する。(1)3つの芯体A、B、及びCにおいて、所与の時間間隔の粒子カウントを、カウントAがBよりも大きく、カウントBがCよりも大きくなるように順序づける、(2)芯体対(すなわち、AとB、BとC、及びAとC)毎に、2つの芯体の各々の粒子総数をカウントし、上述の二項確率に基づき、所望の信頼レベル(たとえば、95%、99%、99.9%の信頼区間)に関して起こりそうにないと予測される閾値スパイクサイズを決定する、(3)決定木ベースのアルゴリズムを用いて、蓋然性の高い偽カウントを除去する。つまり、図5A及び図5Bに示す方法は、3つの芯体内における粒子カウントの推定差に基づくものであり、3つの芯体におけるカウントがすべて均等なケースでは使用されない。
【0042】
次に図5Aを参照して、方法の第1の部分500Aは、操作501において、芯体A及びB内において測定されるカウントを比較すること(上述したようにカウント別に順序づけられている)から開始される。操作503において、上述したように、芯体Aにおけるカウントが予め設定された閾値を超えるか否かが判定される。閾値を超えたという判定に基づき、操作505において、芯体B及びCにおけるカウントが比較される。操作507において、芯体Bにおけるカウントが予め設定された閾値を超えるか否かが判定される。
【0043】
閾値を超えたという判定に基づき、操作509において、アルゴリズムは、芯体A及び芯体Bがそれぞれ偽カウントを含むことを示す。したがって、操作511において、芯体A及びBのそれぞれのカウントが、芯体C内において測定されるカウントと等しくなるように設定される。
【0044】
しかしながら、操作507の判定に基づき、芯体B内におけるカウントが閾値を越えない場合、操作513において、アルゴリズムは、芯体Bではなく芯体Aのみが偽カウントを含むことを示す。したがって、操作515において、芯体Aからのカウントは、芯体BとCの合計を2で割った値(すなわち、芯体B及びCの平均カウント値)と略等しく又はちょうど等しくなるように設定される。
【0045】
再度、操作503に戻って参照して、芯体A内におけるカウントが閾値を越えないという判定に基づき、操作51において、芯体A及びC内において測定されたカウントが比較される。操作519Aで、方法の第1の部分500Aは図5Aから図5Bに続く。
【0046】
続きの方法の第2の部分500Bにおいて、操作519A(図5A)から図5Bの操作519Bに入ると、操作517(図5A)での芯体A及びC内において測定されたカウントとの比較に基づき、操作521において、芯体A内におけるカウントが予め設定された閾値を超えるか否かが判定される。
【0047】
芯体A内におけるカウントが閾値を越えたという判定に基づき、操作523において、芯体B及びC内におけるカウントが比較される。操作525において、芯体B内におけるカウントが予め設定された閾値を超えるか否かが判定される。
【0048】
閾値を越えたという判定に基づき、操作527において、アルゴリズムは、芯体A及び芯体Bがそれぞれ偽カウントを含むことを示す。したがって、操作529において、芯体A及びBのそれぞれのカウントが、芯体C内において測定されたカウントと等しくなるように設定される。
【0049】
しかしながら、操作525における判定に基づき、芯体B内におけるカウントが閾値を越えない場合、操作531において、アルゴリズムは、芯体Bではなく芯体Aのみが偽カウントを含むことを示す。したがって、操作533で、芯体Aからのカウントは、芯体BとCの合計を2で割った値(すなわち、芯体B及びCの平均カウント値)と略等しく又はちょうど等しくなるように設定される。
【0050】
再度、操作521に戻って参照して、芯体A内におけるカウントが閾値を越えないという判定に基づき、操作535におけるアルゴリズムは、方法の第2の部分500Bにおいてこの時点に達するには、芯体BとCを比較するために芯体B内におけるカウントが閾値を超えるはずがないことを示す。つまり、操作537に示すように、どの芯体にも偽カウントは存在せず、操作539に示すように、芯体A、B、又はCにおいて測定されたカウントに変更を加える必要はない。
【0051】
図5A及び図5Bの方法500A、500Bは、3つの芯体に関する決定木ベースのアルゴリズムを示す。しかしながら、本明細書に提示される開示を読んで理解した当業者であれば、より多い芯体(たとえば、4つ、5つ、6つ、又はそれ以上)又はより少ない芯体(すなわち、2つ)でもアルゴリズムを使用できることを認識するであろう。したがって、方法500Aと500Bは、3以外の数の芯体に合わせて容易に変更することができる。たとえば、当業者であれば、三項又はより高次の確率スキームを用いて、方法500A、500Bで使用される二項確率を変更することができる。
【0052】
上述の記載は、開示される発明を具体化する例示の実施例、素子、及び装置を含む。該記載において、説明の目的上、本発明の開示の各種実施形態を理解してもらうため、多数の具体的な細部について述べた。しかしながら、当業者にとっては、本発明の開示の各種実施形態がこれらの具体的な細部がなくても実施可能であることは自明であろう。さらに、公知の構造、材料、及び技術は、様々な例示の実施形態を不明瞭にしないように詳細に示していない。
【0053】
本明細書で使用されるとき、「又は」という文言は、包括的又は排他的に解釈することができる。また、後述の各種例示の実施形態は、空洞の水滴又は泡を実際の粒子としてカウントさせないことによって粒子の偽カウントを低減する具体的な方法に焦点を当てているが、他の実施形態は、電子フィルタリング技術を検討している。しかしながら、これらの技術のいずれも、粒子カウントを低減又は除去する単独の技術として適用しなくてもよい。本明細書で提供される開示を読んで理解した当業者であれば、上記技術及び実施例の様々な組み合わせはすべて、連続的に又は様々な組み合わせで適用することができると容易に理解するであろう。発明の前置きとして、数個の実施形態を以下の段落で簡単かつ概略的に述べた後、添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【0054】
各種実施形態は別々に説明したが、これらの別体の実施形態は、独立した技術又は設計とみなされることを意図していない。上述したように、様々な部分は相互に関連しており、個別に又は本明細書に記載される他の偽カウント粒子低減技術と組み合わせて使用することができる。
【0055】
さらに、上述の各種パラメータに関して特定の値、値範囲、及び技術を適用したが、これらの値及び技術は、本明細書に記載される設計及び技術の特定の特徴を理解するうえで当業者を助けるために提示されるにすぎない。提供される開示を読んで理解した当業者であれば、これらの値及び技術が単に例として提示されており、水ベースCPCにおいて偽カウントを減算するために採用できる上述の新規な設計から恩恵を受けつつ、他の多くの値、値範囲、及び技術も採用可能であることを認識するであろう。したがって、装置の様々な例示は、各種実施形態の構造及び設計を概括的に理解してもらうことを目的としており、本明細書に記載される構造、特徴、及び設計を利用する可能性のある装置のすべての構成要素及び特徴を網羅的に記載することを目的としていない。
【0056】
本明細書で提供される開示を読んで理解した当業者にとっては自明であるように、多数の変更及び変形を加えることができる。本明細書に列挙されるものに加えて、本開示の範囲に属する機能上等価の方法及び装置は、上述の説明から当業者にとって自明になるであろう。いくつかの実施形態の一部及び特徴は、他の実施形態の一部及び特徴に含める、又は置き換えることができる。上述の説明を読んで理解した当業者には、他の多数の実施形態も自明になるであろう。このような変形及び変更は、添付の請求項の範囲に属することを意図される。したがって、本開示は、上記請求項に権利が与えられる等価物の全範囲とともに、添付の請求項の文言によってのみ限定されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを目的としていない。
【0057】
本開示の要約は、読者が技術的開示の本質を迅速に認識できるように提供される。要約は、請求項を解釈又は限定するために使用するものではないという認識のもとに提出される。また、上述の詳細な説明において、開示を簡略化するために、各種特徴を単独の実施形態にまとめることができるように見えるかもしれない。本開示の方法は、請求項を限定するように解釈されるべきではない。よって、以下の請求項は詳細な説明に組み込まれ、各請求項はそれ自体別の実施形態を表す。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B