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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】気相エピタキシー法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20220524BHJP
   C23C 16/30 20060101ALI20220524BHJP
   C30B 29/42 20060101ALI20220524BHJP
   C30B 25/02 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/30
C30B29/42
C30B25/02
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020209395
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2021100116
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】10 2019 008 927.8
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504324855
【氏名又は名称】アズール スペース ソーラー パワー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】AZUR SPACE Solar Power GmbH
【住所又は居所原語表記】Theresienstrasse 2, D-74072 Heilbronn, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クレメンス ヴェヒター
(72)【発明者】
【氏名】グレゴア ケラー
(72)【発明者】
【氏名】トルステン ヴィーツコフスキー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル フーアマン
【審査官】田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-133320(JP,A)
【文献】特開平08-264456(JP,A)
【文献】特開平11-163399(JP,A)
【文献】特開2000-340505(JP,A)
【文献】特開2004-055579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/30
C30B 29/42
C30B 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程段階:
- 担体ガスと、第III主族からの第1の元素用の少なくとも1つの第1の前駆体と、第V主族からの第1の元素用の少なくとも1つの第2の前駆体とを含むエピタキシーガス流(F)からの気相による、反応チャンバ(K)内の基板(S)表面上または先行する層上での、n型ドーピングからp型ドーピングへと変化するドーピング推移を有する第III-V族層の成長
を有する気相エピタキシー法であって、
- 第1の成長高さ(x)の達成時に、前記エピタキシーガス流(F)における、前記第1の前駆体の第1の質量流量と前記第2の前駆体の第2の質量流量との、p型ドーピングをもたらす比を利用して、かつn型ドーパント用の第3の前駆体の第3の質量流量(MDot)を前記エピタキシーガス流(F)に添加しながら、n型ドーピング初期値(DA1)を調整し、
- 続いて、前記第3の質量流量(MDot)および/または前記第1の質量流量と前記第2の質量流量との前記比を、少なくとも10μmの成長高さ(x)を有する遷移領域層(UEB)にわたって、p型ドーピング目標値(D)の達成まで段階的または連続的に変化させる、気相エピタキシー法。
【請求項2】
前記n型ドーピング初期値(DA1)が、最高で1×1016cm-3または最高で1×1015cm-3または最高で5×1014cm-3であることを特徴とする、請求項1記載の気相エピタキシー法。
【請求項3】
前記p型ドーピング目標値(D)が、最高で5×1015cm-3または最高で1×1015cm-3であることを特徴とする、請求項1または2記載の気相エピタキシー法。
【請求項4】
少なくとも10μmの成長高さ(x)による前記p型ドーピング目標値(D)の前記達成後、前記p型ドーピング目標値(D)用の設定を用いてさらに成長させることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の気相エピタキシー法。
【請求項5】
前記p型ドーピング目標値(D)の前記達成後、前記第3の質量流量(MDot)の変化により、および/または前記第1の質量流量と前記第2の質量流量との前記比の変化により、第2のp型ドーピング目標値(Dz2)を調整し、ただし、前記第2のp型ドーピング目標値(Dz2)は、前記p型ドーピング目標値(D)よりも大きいことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の気相エピタキシー法。
【請求項6】
前記遷移領域層(UEB)の前記成長高さ(x)が、少なくとも30μmまたは少なくとも60μmであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の気相エピタキシー法。
【請求項7】
前記遷移領域層(UEB)を横切る前記ドーピング(D)を、5μmにわたり最高で1×1013cm-3のステップで変化させることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の気相エピタキシー法。
【請求項8】
前記遷移領域層(UEB)を横切る前記ドーピング(D)を、少なくとも4ステップで変化させることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の気相エピタキシー法。
【請求項9】
前記n型ドーピング初期値(DA1)の前記達成後でかつ前記遷移領域層(UEB)の前記成長前に、前記n型ドーピング初期値(DA1)を、前記エピタキシーガス流(F)中の前記第3の質量流量(MDot)の低下により、第2のn型ドーピング初期値(DA2)へと急激に下げるか、または最高で1×1015cm-3もしくは最高で5×1014cm-3のp型ドーピング初期値(DA2*)へと急激に調整することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の気相エピタキシー法。
【請求項10】
前記第3の前駆体がモノシランであることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の気相エピタキシー法。
【請求項11】
前記第III主族の元素がガリウムであり、前記第V主族の元素がヒ素であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の気相エピタキシー法。
【請求項12】
成長高さによる前記ドーピング目標値(DZ)の前記達成後、前記第3の質量流量の急激な変化により、および/または前記第1の質量流量と前記第2の質量流量との前記比の急激な変化により、第2のp型ドーピング目標値(DZ2)を調整し、ただし、前記第2のp型ドーピング目標値(DZ2)が前記型ドーピング目標値(DZ)よりも大きいことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の気相エピタキシー法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相エピタキシー法に関する。
【0002】
半導体層をエピタキシャル形成させるための非常に様々な気相エピタキシー装置が知られており、例えばAixtron社の装置が知られている。
【0003】
それらの装置に共通するのは、反応チャンバ内に導入した基板上に、気相からのエピタキシャル層を蒸着ないしは成長させることである。そのためには、反応チャンバを加熱してエピタキシーガス流を反応チャンバ内に導入する。
【0004】
ガス流の組成は、成長させるべき層の種類に従うが、典型的には、例えばアルシンおよび/またはTMGaのような、成長させるべき半導体層用の元素を供給する前駆体が添加され、かつ層をドーピングするためには、適宜、ドーパント用前駆体も添加される。前駆体は、担体ガスを利用して反応チャンバ内に案内される。ガス流の組成を制御するために、典型的にはマスフローコントローラを使用する。
【0005】
ただし、リアクタ履歴(Reaktorhistorie)に起因し、反応チャンバ内には事前のプロセスに由来する望ましくない別の元素もなおかつ存在し得ることも顧慮する必要がある。このことは、ドープ量の少ない層を形成させる際にまさに問題になりかねない。
【0006】
この背景をもとに、本発明の課題は、従来技術を発展させる方法を提示することにある。
【0007】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法によって解決される。本発明の有利な形態が、従属請求項の主題である。
【0008】
本発明の主題によると、工程段階:少なくとも1つの担体ガスを含むエピタキシーガス流からの気相による、反応チャンバ内の基板表面上または先行する層上での、n型ドーピングからp型ドーピングへと変化するドーピング推移(Dotierungsverlauf)を有する第III-V族層の成長を有する気相エピタキシー法が提供される。
【0009】
工程段階:成長では、担体ガスを用いて、第III主族からの第1の元素用の第1の前駆体および第V主族からの第1の元素用の少なくとも1つの第2の前駆体を、エピタキシー装置、好ましくはMOCVD装置の反応チャンバ内に案内する。
【0010】
第1の成長高さ(Aufwachshoehe)の達成時に、エピタキシーガス流における、第1の前駆体の第1の質量流量と第2の前駆体の第2の質量流量との、p型ドーピングをもたらす比を利用して、かつn型ドーパント用の第3の前駆体の第3の質量流量を添加しながら、n型ドーピング初期値を調整する。
【0011】
続いて、第3の質量流量および/または第1の質量流量と第2の質量流量との比を、少なくとも10μmの成長高さを有する遷移領域層(Uebergangsbereichsschicht)において、p型ドーピング目標値の達成まで段階的または連続的に変化させる。
【0012】
第III-V族層は、第III主族の少なくとも1つの成分さらには複数の成分、例えばアルミニウムまたはガリウム、および第V主族の少なくとも1つの成分または複数の成分、例えばインジウムまたはヒ素またはリンを有することが自明である。
【0013】
前駆体と呼ばれるのは、エピタキシャル成長の出発生成物(Ausgangsprodukt)として利用される分子である。それに応じて、層の成長に適切な前駆体は、成長させるべき元素、例えば、第III主族もしくは第V主族の元素、またはドーパント、および少なくとも1つのさらなる元素からなる分子である。
【0014】
特に、有機金属前駆体、例えばTMGaの場合、少なくとももう1つの元素は、成長中に放出されてドーパントとして作用する炭素である。
【0015】
ドーパント用前駆体を添加する場合、本明細書ではこれは直接ドーピングと呼ばれ、層成長を担う有機金属前駆体の炭素を利用したドーピングはオートドーピングと呼ばれる。
【0016】
第III-V族層のドーピングの程度および種類は、反応チャンバ内における第III主族の元素と第V主族の元素との量比にも依存する。
【0017】
使用する気相装置の種類およびサイズに応じて、量比は反応チャンバ内で変動し、つまり、異なる場所では、流入するガス流が、異なるV/III量比を有する。そのような変動は、個々の基板の範囲内で、および/または複数の基板を越えて起こり得る。
【0018】
本発明によると、第III主族の元素と第V主族の元素との量比を、つまりエピタキシーガス流における第1の前駆体の第1の質量流量と第2の前駆体の第2の質量流量との比を、n型ドーパント用の第3の前駆体の不在下では第1の有機金属前駆体の炭素に基づくだけで第III-V族層のp型ドーピングがもたらされるように調整する。
【0019】
次いで、n型ドーピング初期値を、第3のn型ドーピング用前駆体、例えばシランの十分な質量流量の添加によって調整する。
【0020】
質量流量の変化または2つの異なる質量流量の比の変化は、該当する分圧ないしは分圧比の変化と同等であること、ないしは基本的に量制御/量変化と同等であることは自明である。
【0021】
前述のドーピング値の調整は、成長中に行われること、ないしは連続的に成長させ、成長中ないしは蒸着中に質量流量を変化させることも自明である。
【0022】
続いて、スロープまたはステップにより、つまり成長する層におけるn型ドーピングの連続的または段階的な低下によりp型ドーピング目標値を達成する。
【0023】
成長させるべき層のドーピングの変化は、第3の前駆体、例えばシランの質量流量の低下のみによって生じる。言い換えると、第3の前駆体を利用したn型ドーパントの供給をゼロまで低下させる。それにより、V/III比によるオートドーピングが、成長させるべき層のp型ドーピングをもたらす。
【0024】
この形態の利点は、第V族用の第2の前駆体のわずかな流量を利用しながら気相エピタキシー法を行えることにある。特に、第2の前駆体用にアルシンまたはTGMaを使用する場合、第2の前駆体のわずかな流量を利用して、製造費を明らかに下げることができ、かつ製造プロセスの環境への配慮を著しく高めることができる。
【0025】
例えば、n型ドーピング初期値を起点に、p型ドーピング目標値に相当する、第III主族の元素と第V主族の元素との量比を選択して維持するか、または選択して維持されてある場合、続いて、遷移領域層の成長につれて、第3の前駆体の質量流量を段階的または連続的にゼロまで低下させる。それにより、p型ドーピングの程度を、V/III比に起因するオートドーピングによって決定することができる。
【0026】
一変形形態では、第3の前駆体を中断させた後、p型ドーピング目標値を達成するために、さらに第III主族の元素と第V主族の元素との量比を変化させる。
【0027】
さらなる一別法によると、遷移領域層にわたるドーピングの変化を、第III主族の元素と第V主族の元素との量比の変化のみによって引き起こす。その際、前もって第3の前駆体の質量流量をすでに、つまりV/III比の変化前に、ゼロに低下させてある。
【0028】
エピタキシーガス流用の担体ガスとしては、例えば、HまたはNが適切である。
【0029】
遷移領域層の成長中に第3の前駆体の質量流量を段階的または連続的に変化させることにより、pn接合の領域で再現可能な推移を達成できる。半導体ディスク上で、望ましくない、複数の直列pn接合の形成を、ドーパント推移における局所差の形成と同様に確実に抑制することができる。もう1つの利点は、例えば、先行するエピタキシー相に由来するリアクタチャンバの占有によるクロスコンタミネーションを確実かつ効果的に補整でき、5×1015cm-3未満のドープ量の少ない層、および特に、n型ドーピングを起点としたpn接合を確実に製造できることである。
【0030】
少なくとも10μmの遷移領域層の成長中の一定のV/III比を起点に、20V超または100V超の差異を伴う、従来の、半導体ディスク上で著しく変動する逆電圧を低下させることができる。
【0031】
特に、半導体ディスクを横切るV/III比の変動は、異なる局所ドーピングに帰着し、少ないドーピング量の場合まさに、特に著しく影響を及ぼす。言い換えると、V/III比の変動に起因する、および/またはエピタキシー装置内での異なるバックグラウンドドーピングに起因する半導体ディスク上での局所ドーピング差が低下する。
【0032】
急激なpn接合、つまりnからpへの、中間ステップを伴わず、かつ非常にわずかな成長高さ、例えば最高で数ナノメートルによるドーピングの変化は、V/III比の局所差ゆえ、および/またはバックグラウンドドーピングゆえ、少ないドーピング量においてまさに、個々の半導体ディスクおよび/または複数の半導体ディスクを越えて、非常に異なる逆電圧をもたらしかねない。
【0033】
本方法の利点は、第V族用の第2の前駆体のわずかな流量を利用しながら気相エピタキシー法を行えることにある。特に、第2の前駆体用にアルシンまたはTGMaを使用する場合、第2の前駆体のわずかな流量を利用して、製造費を明らかに下げることができ、かつ製造プロセスの環境への配慮を著しく高めることができる。
【0034】
それに対して、質量流量のV/III比が一定またはほぼ一定である場合の、遷移領域層の厚さにわたるドーピングの段階的または連続的な変化により、反応チャンバ全体にわたって再現可能な、半導体ディスク上でのpn接合の推移が達成される。
【0035】
流入するガス流中での差異は、単に、接合の絶対的な成長深さ(Wachstumstiefe)にしか影響を及ぼさず、ただし、絶対的な成長深さの点での差異は、達成される逆電圧に対して、pn接合の再現不可能なドーピング推移よりもわずかな影響を及ぼす。
【0036】
本発明のもう1つの利点は、容易かつ再現可能に、使用する気相エピタキシー装置の特別な追加洗浄ステップを伴わずに、200V超の高い絶縁耐力を確実に達成できることである。
【0037】
一実施形態では、n型ドーピング初期値は、最高で1×1016cm-3または最高で1×1015cm-3または最高で5×1014cm-3である。
【0038】
さらなる一実施形態では、p型ドーピング目標値は、最高で5×1015cm-3または最高で1×1015cm-3または最高で7×1014cm-3である。
【0039】
別の一実施形態によると、少なくとも10μmの成長高さによりp型ドーピング目標値に達した後、p型ドーピング目標値用の設定を用いてさらに成長させる。
【0040】
別法としての一実施形態では、p型ドーピング目標値の達成後、第3の質量流量の変化により、および/または第1の質量流量と第2の質量流量との比の変化により、第2のp型ドーピング目標値を調整し、ただし、第2のp型ドーピング目標値は、p型ドーピング目標値よりも大きい。
【0041】
一変形形態によると、遷移領域層の成長高さは、少なくとも30μmまたは少なくとも60μmである。
【0042】
別の一変形形態では、遷移領域層を横切るドーピングを、5μmにわたり最高で1×1013cm-3のステップで変化させる。
【0043】
さらなる一実施形態によると、遷移領域層を横切るドーピングを、少なくとも4ステップで変化させる。
【0044】
別の一実施形態では、n型ドーピング初期値の達成後でかつ遷移領域層の成長前に、n型ドーピング初期値を、エピタキシーガス流中の第3の質量流量の低下により、第2のn型ドーピング初期値へと急激に下げるか、または最高で1×1015cm-3もしくは最高で5×1014cm-3のp型ドーピング初期値へと急激に調整する。
【0045】
さらなる一変形形態によると、第3の前駆体は、モノシランである。
【0046】
さらなる一実施形態では、第III主族の元素はガリウムであり、第V主族の元素はヒ素である。
【0047】
一変形形態では、成長高さによりドーピング目標値に達した後、第3の質量流量の急激な変化により、および/または第1の質量流量と第2の質量流量との比の急激な変化により、第2のp型ドーピング目標値を調整し、ただし、第2のp型ドーピング目標値はn型ドーピング目標値よりも大きい。
【0048】
以下に、図面に関連付けて本発明をより詳細に説明する。その際、同種の要素には同一の符号を付す。説明する実施形態は、著しく図式化されている、つまり間隔ならびに横方向および垂直方向の長さは一定率でなく、異なる指定がない限り、互いに導出可能な幾何学的関係も有しない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】反応チャンバ内に配置された基板の横断面図である。
図2】エピタキシャル成長中の、ドーピングと、第III主族の元素と第V主族の元素との比との関係を示す図である。
図3】気相エピタキシー法の本発明の第1の実施形態による、成長させた第III-V族層を横切るドーパント濃度推移を示す図である。
図4】気相エピタキシー法の本発明の第2の実施形態による、成長させた第III-V族層を横切るドーパント濃度推移を示す図である。
図5】成長高さにわたる、第3の前駆体の質量流量の推移を示す図である。
図6】気相エピタキシー法の本発明の第3の実施形態による、成長させた第III-V族層を横切るドーパント濃度推移を示す図である。
【0050】
図1の図解は、気相エピタキシー装置のリアクタチャンバKの横断面図を概略的に示す。リアクタチャンバKの床には、基板Sが配置されている。さらに、リアクタチャンバKは、リアクタチャンバK内にエピタキシーガス流Fを導入するガス入口要素Oを有する。
【0051】
エピタキシーガス流Fは、担体ガスと、第III主族の元素用の少なくとも1つの第1の有機金属前駆体、例えばTMGaと、第V主族の元素用の第2の前駆体、例えばアルシンと、n型ドーパント用の第3の前駆体、例えばシランとを有する。
【0052】
ガス入口要素Oは、リアクタチャンバK内で終了する複数の導管を有し、それらの導管により、エピタキシーガス流Fのそれぞれ1つの成分または複数の成分をリアクタチャンバKへと案内する。
【0053】
図2の図解では、第V主族の元素と第III主族の元素との量比に対するドーピングの依存性をグラフで示す。特に、ドーピングの程度のみならず、ドーピングの種類、つまりnまたはpも、V/III比によって調整できることが明らかになる。
【0054】
他方、半導体ディスクないしは基板を横切るV/III比の変動が、異なるドーピングをもたらすこと、およびそのような変動が、ドーピング量が少ない場合はまさに、ドーピングが不都合にpとnとの間で変化するというように、特に著しく影響を及ぼすことが明らかになる。
【0055】
この形態の利点は、好ましくは、第V族用の第2の前駆体のわずかな流量を利用しながら気相エピタキシー法を行えることにある。特に、第2の前駆体用にアルシンまたはTGMaを使用する場合、第2の前駆体のわずかな流量を利用して、製造費を明らかに下げることができ、かつ製造プロセスの環境への配慮を著しく高めることができる。
【0056】
図3の図解では、本発明による気相エピタキシー法の第1の実施形態を、nからゼロを超えてpに向かう、成長高さxにわたるドーピングDの推移をもとに具体的に示す。
【0057】
まず、ないしは第1の成長高さxにおいて、エピタキシーガス流Fにおける、第1の前駆体、例えばTMGaの第1の質量流量と、第2の前駆体、例えばアルシンの第2の質量流量との、p型ドーピングをもたらす比(図2の曲線のうちの左側部)を利用して、かつn型ドーパント用の第3の前駆体、例えばシランの第3の質量流量をエピタキシーガス流Fに添加しながら、n型ドーピング初期値DA1を調整する。
【0058】
続いて、第3の前駆体の第3の質量流量を、遷移領域層UEBが成長する間、層厚xにおいてp型ドーピング目標値Dの達成まで連続的に低下させる。遷移領域層UEBが、値xから値xまで延在することは自明である。
【0059】
続いて、エピタキシーガス流を、成長高さxの引き続く領域にわたってさらには変化させないため、続く第III-V族層のドーピングは一定のままになる。
【0060】
別法として、かつ図3において破線で示すように、第3の質量流量を、n型ドーピング初期値DA1を起点に、最高で1×1015cm-3または最高で5×1014cm-3のp型ドーピング初期値DA2*まで急激に低下させてから、ドーピングをスロープの形でp型ドーピング目標値Dまで変化させる。
【0061】
p型ドーピング目標値Dの達成後、第3の質量流量MDotの変化および/または第1の質量流量と第2の質量流量との比の変化により、ドーピングを再び、第2のp型ドーピング目標値Dz2へと急激に高め、続いてエピタキシーガス流をさらに変化させることなく一定のp型ドーピングで層を成長させる。
【0062】
図4の図解では、ドーピング推移Dをもとに、本発明による気相エピタキシー法のさらなる一実施形態を具体的に示し、ただし、以下では、図3の図解との相違点のみを説明する。
【0063】
n型ドーピング初期値DA1を起点に、エピタキシーガス流F中の第3の質量流量を低下させることで、ドーピングを第2のn型ドーピング初期値DA2へと急激に下げてから、遷移領域層UEBにわたって、ドーピングを、p型ドーピング目標値Dの達成まで連続的または段階的に変化させる。
【0064】
図5の図解では、n型ドーパント用の第3の前駆体の第3の質量流量MDotの推移をもとに、本発明による気相エピタキシー法のさらなる一実施形態を具体的に示す。
【0065】
n型ドーピング初期値DA1を達成するための質量流量初期値MA1を起点に、第3の質量流量MDotを急激に低下させると、その結果、第2の質量流量初期値MA2、およびそれにより急激に低下したドーピングも生じることになる。
【0066】
続いて、第3の質量流量MDotを、連続的にゼロまで低下させると、p型ドーピング目標値Dまでの、ドーピングのスロープ状の変化が得られる。
【0067】
図6の図解では、ドーピング推移Dをもとに、本発明による気相エピタキシー法のさらなる一実施形態を具体的に示し、ただし、以下では、図3および4の図解との相違点のみを説明する。
【0068】
n型ドーピング初期値DA1からp型ドーピング目標値Dへのドーピングの変化は、複数ステップで行われると、その結果、遷移領域層UEBにわたりドーピングのステップ状推移が生じることになる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6