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特許7078709自動車用の蓄電池充電装置、自動車側蓄電池充電装置を動作させるための方法、高電圧搭載電源網および蓄電池充電装置の使用
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  • 特許-自動車用の蓄電池充電装置、自動車側蓄電池充電装置を動作させるための方法、高電圧搭載電源網および蓄電池充電装置の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】自動車用の蓄電池充電装置、自動車側蓄電池充電装置を動作させるための方法、高電圧搭載電源網および蓄電池充電装置の使用
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20220524BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20220524BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20220524BHJP
   H01M 10/46 20060101ALI20220524BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20220524BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20220524BHJP
   B60L 53/22 20190101ALI20220524BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J7/02 C
H01M10/44 P
H01M10/46
B60L50/60
B60L53/14
B60L53/22
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020506797
(86)(22)【出願日】2018-08-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2018071075
(87)【国際公開番号】W WO2019030125
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2020-02-28
(31)【優先権主張番号】102017213682.0
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519031896
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Siemensstrasse 12,93055 Regensburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フランツ プファイルシフター
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ゲツェンベアガー
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/081103(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/030941(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/046315(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/022478(WO,A1)
【文献】特開平09-009417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)側に蓄電池充電装置(3)を備える、自動車(1)用の高電圧搭載電源網(2)であって、
力率補正フィルタ(14)を有する第1の段(11)と、
インバーター(15)を有する第2の段(12)と、
を備え、
前記第1の段(11)は、中間点(20)を介して前記第2の段(12)に電気的に接続され、
前記中間点(20)が、直流電圧(23)用の給電端子(21)に直接電気的に接続され、前記給電端子(21)は、前記自動車(1)の高電圧搭載電源網(2)に直接電気的に結合するように構成され、
前記高電圧搭載電源網(2)は、前記高電圧搭載電源網(2)の高電圧蓄電池(6)と、前記高電圧蓄電池(6)を充電するための直流電圧源(8)との間の直接接続を中断するように構成されているスイッチ(29)を備え、
前記高電圧蓄電池(6)は、前記スイッチ(29)を介さずに、前記第2の段(12)に電気的に接続されている、
高電圧搭載電源網(2)。
【請求項2】
前記蓄電池充電装置(3)の給電端子(21)は、前記高電圧搭載電源網の直流電圧用に構成された給電スイッチ(22)に直接電気的に接続されている、請求項1記載の高電圧搭載電源網(2)。
【請求項3】
前記給電スイッチ(22)は、前記高電圧搭載電源網(2)の高電圧蓄電池(6)に直接電気的に接続されている、請求項2記載の高電圧搭載電源網(2)。
【請求項4】
前記給電スイッチ(22)は、前記高電圧搭載電源網(2)の少なくとも1つの高電圧負荷(9,10,34,35)を有する高電圧搭載電源網分岐(32)に直接電気的に接続されている、請求項2記載の高電圧搭載電源網(2)。
【請求項5】
前記中間点(20)は、前記第2の段(12)の前記インバーター(15)に直接電気的に接続されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の高電圧搭載電源網(2)。
【請求項6】
前記第2の段(12)は、前記中間点(20)とは反対側の当該第2の段(12)側において出力端子(19)に電気的に接続され、前記第2の段(12)は、前記中間点(20)と第1の電気的な直流電圧(23)との結合中に、当該第1の電気的な直流電圧(23)とは異なる第2の電気的な直流電圧(24)を提供するように構成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の高電圧搭載電源網(2)。
【請求項7】
前記第1の段(11)は、前記中間点(20)に関して前記力率補正フィルタ(14)の手前に配置された整流器(13)を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の高電圧搭載電源網(2)。
【請求項8】
前記第2の段(12)は、前記中間点(20)に関して前記インバーター(15)の後方に配置されたトランス(16)を有し、かつ/または前記第2の段(12)は、前記中間点(20)に関して前記インバーター(15)の後方に配置された整流器(17)を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の高電圧搭載電源網(2)。
【請求項9】
前記中間点(20)とは反対側の前記第1の段(11)側は、交流電圧用の充電端子(4)に電気的に接続されおり、前記交流電圧用の充電端子(4)は、自動車外部の交流電圧源(5)に直接電気的に接続されるように構成されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の高電圧搭載電源網(2)。
【請求項10】
前記第1の段(11)および前記第2の段(12)は、コンデンサ(18)によって電気的に接続されており、前記中間点(20)は、前記コンデンサ(18)と前記第2の段(12)との間に配置されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の高電圧搭載電源網(2)。
【請求項11】
前記第2の段(12)は、3つの相を有しており、前記中間点(20)は、前記3つの相のうちの1つにのみ電気的に接続されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の高電圧搭載電源網(2)。
【請求項12】
前記第2の段(12)は、3つの相を有しており、前記中間点(20)は、前記3つの相のうちの少なくとも2つに電気的に接続されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の高電圧搭載電源網(2)。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の高電圧搭載電源網(2)の前記自動車側蓄電池充電装置(3)を動作させるための方法であって、
前記自動車(1)の前記高電圧搭載電源網(2)からの第1の電気的な直流電圧(23)が、前記蓄電池充電装置(3)の前記給電端子(21)において当該蓄電池充電装置(3)に結合され、前記中間点(20)を介して前記蓄電池充電装置(3)の前記第2の段(12)に転送され、
前記第1の電気的な直流電圧(23)は、前記第2の段(12)において、当該第1の電気的な直流電圧(23)とは異なる第2の電気的な直流電圧(24)に適合化される、方法。
【請求項14】
前記蓄電池充電装置(3)の前記中間点に直接接続された前記蓄電池充電装置(3)の給電端子(21)を介して前記蓄電池充電装置(3)に給電される直流電圧(23)を変換するための直流電圧変換器としての、請求項1から12までのいずれか1項記載の高電圧搭載電源網(2)の自動車側蓄電池充電装置(3)の前記第2の段(12)の使用であって、
前記中間点(20)は、前記蓄電池充電装置(3)の前記第2の段(12)と前記第1の段(11)との間に配置されている、
自動車側蓄電池充電装置(3)の第2の段(12)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の蓄電池充電装置に関する。この蓄電池充電装置は、自動車内での配置用に構成されている。さらに、蓄電池充電装置は、力率補正フィルタを有する第1の段を備え、また当該蓄電池充電装置は、インバーターを有する第2の段を備えている。第1の段は、中間点を介して第2の段と電気的に接続されている。本発明は、自動車用の対応する自動車側蓄電池充電装置を動作させるための方法にも関する。さらに、本発明は、自動車側蓄電池充電装置を備えた自動車用の高電圧搭載電源網にも関する。さらに、本発明は、蓄電池充電装置の使用に関する。
【0002】
蓄電池充電装置は公知である。本発明は、自動車内に組み込まれた交流電圧用の蓄電池充電装置に関する。この蓄電池充電装置には、通常、自動車の高電圧蓄電池を充電するために自動車外部の交流電圧源が接続される。この高電圧蓄電池は、例えば、自動車のトラクションユニットのエネルギー供給のために用いられる。自動車内に組み込まれた蓄電池充電装置は、OBC(On-Board Charger)とも称される。
【0003】
本発明の課題は、蓄電池充電装置のより豊富な機能的使用を可能にする、蓄電池充電装置、方法、高電圧搭載電源網、ならびに蓄電池充電装置の使用を達成することである。
【0004】
この課題は、独立請求項による蓄電池充電装置、方法、高電圧搭載電源網、および使用により解決される。
【0005】
本発明による自動車用の蓄電池充電装置は、自動車内での配置用に構成されている。この蓄電池充電装置は、力率補正フィルタを有する第1の段を備え、さらに蓄電池充電装置は、インバーターを有する第2の段を備える。第1の段は、第2の段に、特に中間点を介してのみ電気的に接続されている。重要な考察として、中間点が、蓄電池充電装置の給電端子に直接電気的に接続されていることが想定されている。この給電端子は、自動車の高電圧搭載電源網に直接電気的に結合するように構成されている。
【0006】
本発明は、蓄電池充電装置が、整流器としての自身の機能の他に、直流電圧変換器としても使用することができるという認識に基づいている。特に、蓄電池充電装置の第2の段は、直流電圧変換器として使用することができる。
【0007】
直流電圧変換器としての蓄電池充電装置の使用は、自動車の高電圧搭載電源網において別個の直流電圧変換器を省くことができるため、ここでは有利である。つまり、蓄電池充電装置は、給電端子によって、直流電圧変換器の機能を引き継ぐように構成されている。
【0008】
直流電圧変換器としての第2の段の使用は、特に有利である。なぜなら、この第2の段が、特に当該第2の段に配置された変圧器もしくはトランスによって、当該第2の段の給電端子と出力端子との間の電気的絶縁を提供するからである。この電気的絶縁により、例えば400V側を800V側に安全に接続することができるようになる。そのため、例えば給電端子には、400Vの電圧を印加することができ、それに対して出力端子には、800Vの電圧を印加することができる。例えば半導体スイッチの不所望な連続スイッチオンにつながるブレークダウンなどの特定の障害のケースでは、それにより、高電圧搭載電源網にとっての結果は、蓄電池充電装置の第1の段を直流電圧変換のために使用した場合ほど深刻ではない。
【0009】
給電端子は、特に電気的な直流電圧の給電専用に構成されている。この給電端子は、例えばプラグインコネクタとして構成されてよい。
【0010】
好適には、中間点は、第2の段のインバーターに直接電気的に接続されていることが想定されている。このインバーターは、特に、第2の電気的な段の第1のインバーターとして構成されており、これにより、該インバーターは、第2の段内で給電端子に関して第2の段のさらなるインバーターの手前および/または第2の段の変圧器の手前に配置されている。中間点は、例えば、第1の段と第2の段との間の接続線路上に配置されてもよいが、第2の段のインバーターに直接配置されてもよい。中間点をインバーターに直接配置することにより、蓄電池充電装置は、より効果的に動作する。なぜなら、より短い線路が給電端子用に必要になり、したがって干渉インダクタンスはより小さくなるからである。
【0011】
さらに、好適には、第2の段は、中間点とは反対側の第2の段側において出力端子に、特に直接電気的に接続されており、ここで、該第2の段は、中間点と第1の電気的な直流電圧との結合中に、当該第1の電気的な直流電圧とは異なる第2の電気的な電圧を提供するように構成されていることが想定されている。好適には、第2の電気的な段は、変圧器を介して相互に電気的に接続されたインバーターおよび整流器を有する。これらの2つの電力変換器により、第2の段は、第1の電気的な直流電圧の入力のもとで、第2の電気的な直流電圧を出力または提供することが可能である。好適には、蓄電池充電装置は、直流電圧の昇圧のために使用される。それに応じて、第2の電気的な直流電圧は、好適には、第1の電気的な直流電圧よりも高く、特に2倍高い。第1の電気的な直流電圧は、例えば400Vであり得る。それに対して、第2の電気的な直流電圧は、例えば800Vであり得る。
【0012】
さらに好適には、第1の段は、中間点に関して力率補正フィルタの手前に配置された整流器を有することが想定されている。特に、蓄電池充電装置は、交流電圧蓄電池充電装置として構成されている。つまり、特に、自動車外部の交流電圧源が蓄電池充電装置に接続される。自動車外部の交流電圧源からのこの交流電圧は、最初に第1の段の整流器に供給され、次いで、力率補正フィルタに直接供給される。蓄電池充電装置の第1の段は、直流電圧変換のためには使用しないのが好ましい。なぜなら、第1の段は、変圧器を提供できず、したがって電気的絶縁を提供できないからである。
【0013】
さらに、好適には、第2の段は、中間点に関してインバーターの後方に配置されたトランスもしくは変圧器を有し、かつ/または第2の段は、中間点に関してインバーターの後方に配置された整流器を有することが想定されている。このトランスにより、中間点と出力端子との間の電気的絶縁が提供される。つまり、蓄電池充電装置は、より安全に動作する。第2の段の整流器により、トランスに作用する交流電圧は、再び直流電圧に変換される。
【0014】
さらに、好適には、中間点とは反対側の第1の段側は、交流電圧用の充電端子に電気的に接続されており、該交流電圧用の充電端子は、自動車外部の交流電圧源に直接電気的に接続されるように構成されていることが想定されている。充電端子も特に、交流電圧、とりわけ三相交流電圧の多相接続用に、もしくは三相交流端子として構成されている。充電端子は、例えばプラグイン接続部として構成されてよい。自動車外部の交流電圧源は、例えば公共の充電スタンドとして構成されてよい。
【0015】
さらに、好適には、第1の段および第2の段は、コンデンサによって電気的に接続されており、中間点は、コンデンサと第2の段との間に配置されていることが想定されている。つまり、中間点をコンデンサと第2の段との間に配置することにより、第1の直流電圧は、中間点を第1の段とコンデンサとの間に配置した場合よりも、第2の段のインバーター近傍で給電されるようになる。コンデンサは、特に並列接続されたコンデンサとして、もしくは平滑コンデンサとして構成されている。コンデンサは、アースに導くローパスを形成する。
【0016】
コンデンサにより、交流電圧成分をアースに導くことができる。
【0017】
ただし、中間点が第1の段とコンデンサとの間に配置されていることもあり得る。
【0018】
さらに、好適には、第2の段は3つの相を有し、中間点、ならびに特に出力端子は、3つの相のうちの1つにのみ電気的に接続されていることが想定されている。これにより、第2の段の3つの相のうちの1つだけが直流電圧変換もしくは直流電圧適合化のために使用される。このことは有利である。なぜなら、第2の段の2つもしくは3つの相が直流電圧の適合化のために使用される場合よりも、所要の電気的な接続が少なくなるからである。
【0019】
しかしながら代替的に、好適には、第2の段が、3つの相を有し、中間点、ならびに特に出力端子は、3つの相のうちの少なくとも2つに電気的に接続されていることが想定されてもよい。中間点を3つの相のうちの少なくとも2つに接続することにより、第2の段の複数の相を電圧適合化または直流電圧適合化のために使用することができるようになる。少なくとも2つの相を使用する利点は、より大きな電力の直流電圧を適合化できることにある。例えば、蓄電池充電装置の第2の段は、中間点が複数の相のうちの1つにのみ電気的に接続されている場合、実質的に3.6kWの直流電力用にだけ設計されている。それに対して、中間点が3つのすべての相に接続される場合の第2の段は、11kWまでの直流電流用に設計され得る。
【0020】
本発明による方法では、自動車用の自動車側蓄電池充電装置を動作させる。自動車の高電圧搭載電源網からの第1の電気的な直流電圧が、蓄電池充電装置の給電端子において当該蓄電池充電装置に結合され、特に、中間点を介して蓄電池充電装置の第2の段に直接転送される。第1の電気的な直流電圧は、第2の段において、当該第1の電気的な直流電圧とは異なる第2の電気的な直流電圧に適合化され、特に第2の電気的な直流電圧は、適合化の後、蓄電池充電装置の出力端子に提供される。
【0021】
好適には、蓄電池充電装置を、自動車の高電圧蓄電池用の交流電圧充電装置としての自身の本来の機能の他に、直流電圧の昇圧のために動作させる。つまり、第1の電気的な直流電圧は、第2の段において第2の電気的な直流電圧まで昇圧される。好適には、第1の電気的な直流電圧は、2倍まで昇圧され、したがって、第2の電気的な直流電圧は、それによって第1の電気的な直流電圧の2倍までの大きさとなる。
【0022】
さらに好適には、第2の段は、蓄電池充電装置の目標出力電圧に関しても制御可能である。そのため、例えば目標出力電圧を、第2の直流電圧として調整もしくは予め設定することが可能である。この目的のために、第2の段、特に第2の段の整流器を、制御信号に基づいて、目標出力電圧が出力端子から提供されるように制御することができる。
【0023】
本発明は、自動車用の高電圧搭載電源網にも関する。この高電圧搭載電源網は、本発明による自動車側蓄電池充電装置を備えている。自動車は、好適には乗用車として構成されている。自動車は、例えば純粋な電気自動車として構成されてもよいが、ハイブリッド車両として構成されてもよい。
【0024】
好適には、蓄電池充電装置の給電端子は、高電圧搭載電源網の給電スイッチに直接電気的に接続されていることが想定されている。したがって、この給電スイッチを介すことにより、蓄電池充電装置の第2の段を、電気的な直流電圧の適合化のために使用すべきかどうかを制御することができる。この給電スイッチが閉じられると、好適には、第1の電気的な直流電圧が第2の段に供給され、次いで、特に第2の段の出力端子から第2の電気的な直流電圧が提供される。給電スイッチは、好適には保護器として構成されている。
【0025】
さらに、給電スイッチは、好適には、プラスおよびマイナススイッチとして構成されており、そのため、プラスおよびマイナスを同時に遮断することができる。つまり、給電スイッチは、特に全極中断もしくは遮断を可能にする。
【0026】
さらに、好適には、給電スイッチは、蓄電池充電装置とは反対側の給電スイッチ側で、特に、自動車外部の直流電圧源に直接電気的に結合可能である直流充電線路に直接電気的に接続されていることが想定されている。給電スイッチを直流充電線路に結合することにより、例えば、直流電圧源からの直流電流を多大な労力なしで直接給電端子に導くことができる。このことは、直流電圧源が例えば400Vしか提供しないが、高電圧搭載電源網では例えば高電圧負荷用に800Vが必要である場合に有利である。
【0027】
さらに、好適には、給電スイッチは、蓄電池充電装置とは反対側の給電スイッチ側で、高電圧搭載電源網の高電圧蓄電池に特に直接および/または特にスイッチなしで電気的に接続されていることが想定されている。
【0028】
さらに、好適には、給電スイッチは、蓄電池充電装置とは反対側の給電スイッチ側で、高電圧搭載電源網の少なくとも1つの高電圧負荷を有する高電圧搭載電源網分岐に特に直接および/または特にスイッチなしで電気的に接続されていることが想定されている。高電圧負荷は、例えば加熱ユニットまたは空調コンプレッサとして構成されてよい。特に、高電圧搭載電源網分岐は、安定化されていない搭載電源網分岐として構成されている。
【0029】
さらに、本発明は、蓄電池充電装置の中間点に直接接続された蓄電池充電装置の給電端子を介して蓄電池充電装置に給電される直流電圧を変換するための直流電圧変換器としての自動車側蓄電池充電装置の第2の段の使用にも関しており、ここで、中間点は、蓄電池充電装置の第2の段と第1の段との間に配置されている。
【0030】
交流電圧充電装置として構成された自動車の蓄電池充電装置を、直流電圧適合化もしくは直流電圧変換のために使用する場合、自動車の高電圧搭載電源網からの第1の電気的な直流電圧は、特に、蓄電池充電装置の第2の段に給電されるだけであり、第2の電気的な直流電圧は、蓄電池充電装置から、特に第2の段から出力される。
【0031】
蓄電池充電装置の好適な実施形態は、方法および高電圧搭載電源網の好適な実施形態と見なすべきである。蓄電池充電装置および高電圧搭載電源網の具体的なコンポーネントは、各方法ステップを実施するように構成されている。
【0032】
直接電気的に接続されているとは、本明細書では、特に電圧レベルの変化なしで、または電流タイプの変更なしで接続されていることを意味する。さらに、直接電気的に接続されているとは、特にこの接続が、スイッチなし、変換器なしで、インバーターなしで存在することを意味する。
【0033】
本発明のさらなる特徴は、特許請求の範囲、図面、および図面の説明から明らかとなる。上記の説明で言及した特徴および特徴の組み合わせ、ならびに以下の図面の説明で言及する、かつ/または図面に単独で示す特徴および特徴の組み合わせは、本発明の権利範囲から逸脱することなく、それぞれの与えられた組み合わせにおいてだけでなく、その他の組み合わせにおいても、あるいは単独でも使用可能である。
【0034】
以下では本発明の実施例を、概略図に基づきより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】蓄電池充電装置を備えた本発明による高電圧搭載電源網の一実施例を伴う自動車の概略的平面図
図2】蓄電池充電装置を備えた高電圧搭載電源網のさらなる実施例の概略図
図3】蓄電池充電装置の給電スイッチが高電圧搭載電源網の高電圧蓄電池に直接電気的に接続されている蓄電池充電装置を備えた高電圧搭載電源網のさらなる実施例の概略図
図4】給電スイッチが高電圧搭載電源網の高電圧搭載電源網分岐に直接電気的に接続されている、蓄電池充電装置を備えた高電圧搭載電源網のさらなる実施例の概略図
図5】蓄電池充電装置が第3の段において直流電圧変換器を有している、蓄電池充電装置を備えた高電圧搭載電源網の概略図
【0036】
図面中、同一または機能的に同一の要素には、同一の参照符号が付される。
【0037】
図1は、高電圧搭載電源網2を備えた自動車1の概略的平面図を示す。高電圧搭載電源網2は、蓄電池充電装置3を有する。この蓄電池充電装置3は、自動車内部の交流電圧蓄電池充電装置として構成されている。この目的のために、蓄電池充電装置3は、充電端子4を有する。この充電端子4は、それに対して、整流器なしで交流電圧源5に直接電気的に接続されるように構成されている。交流電圧源5は、自動車外部に配置され、例えば公共の充電スタンドとして構成されてもよいが、個人的な家屋用端子として構成されてもよい。
【0038】
さらに、高電圧搭載電源網2は、高電圧蓄電池6を有する。この高電圧蓄電池6は、例えば、リチウムイオン蓄電池として構成されてよい。好適には、高電圧蓄電池6は、400Vまたは800Vの公称電圧で動作することができる切り替え可能な蓄電池として構成されている。そのため、高電圧蓄電池6は、例えば、並列または直列に接続することができる2つの蓄電池ユニットを有することができる。したがって、蓄電池ユニットの並列接続により、高電圧蓄電池6は、例えば400Vで動作する。代替的に、高電圧蓄電池6を、蓄電池ユニットの直列接続により800Vで動作させることができる。
【0039】
この実施例によれば、高電圧搭載電源網2は、直流電圧充電端子7も有する。この直流電圧充電端子7は、自動車外部の直流電圧源8に直接電気的に接続させるように構成されている。直流電圧充電端子7は、特に電圧適合化なしで直流電圧源8に接続される。直流電圧源8は、例えば公共の直流電圧充電スタンドとして構成されてよい。
【0040】
さらに、この実施例による高電圧搭載電源網2は、トラクションインバーター9およびトラクションユニット10も有する。トラクションユニット10は、特に自動車1の主駆動ユニットとして構成されている。
【0041】
図2は、蓄電池充電装置3の一実施例を高電圧搭載電源網2の一実施例と伴に示す。
【0042】
蓄電池充電装置3は、第1の段11および第2の段12を有する。第1の段11は、この実施例によれば、整流器13および力率補正フィルタ14を含む。この整流器13は、蓄電池充電装置3の充電端子4に関して力率補正フィルタ14の手前に配置されている。
【0043】
蓄電池充電装置3の第2の段12は、インバーター15、トランス16、および整流器17を有する。
【0044】
第1の段11と第2の段12との間には、コンデンサ18が配置されている。このコンデンサ18を介して、第1の段11と第2の段12とが相互に電気的に接続されている。コンデンサ18は、並列接続されたコンデンサもしくは平滑コンデンサとして構成されており、本明細書では箱として象徴的に示されている。
【0045】
充電端子4とは反対側の蓄電池充電装置3側により、蓄電池充電装置3は、出力端子19を有する。この出力端子19は、第2の段12の整流器17に直接電気的に接続されている。
【0046】
さらに、第1の段11は、中間点20を介して第2の段12に電気的に接続されている。この中間点20は、この実施例によれば、コンデンサ18と第2の段12との間に配置されている。したがって、特にコンデンサ18、インバーター15、および給電端子21が、中間点20に直接接続されている。給電端子21は、例えばプラグイン接続部として構成されてよく、この給電端子21は、高電圧搭載電源網2から電気的な直流電圧が供給されるように、もしくは高電圧搭載電源網2に直接、電圧適合化なしで当該高電圧搭載電源網2に電気的に結合されるように構成されている。中間点20から見て、給電端子の後方には給電スイッチ22が続いている。この給電スイッチ22は、給電端子21を介した直流電流の給電を中断させるかまたは可能にもしくは解除させるように構成されている。
【0047】
給電スイッチ22が閉じている場合、給電端子21を介して第1の電気的な直流電圧23が蓄電池充電装置3に給電される。次いで、第1の電気的な直流電圧23は、第2の段12によって適合化され、特に昇圧され、最終的に出力端子19から第2の電気的な直流電圧24として提供される。つまり、これにより、第2の段12は、高電圧搭載電源網2からの直流電圧の適合化のために使用される。この直流電圧の適合化は、例えば直流電圧源8が、例えばトラクションインバーター9、トラクションユニット10、または高電圧蓄電池6にとって適さない電圧しか提供しない場合に必要となり得る。しかしながら、高電圧蓄電池6が、トラクションインバーター9またはトラクションユニット10の定格電圧設計に対応する直流電圧を提供できないこともあり得る。そのため、高電圧蓄電池6は、例えば直列または並列に接続されている、例えば2つの蓄電池ユニットによって構成されてよい。例えば、2つの蓄電池ユニットのうちの1つが故障した場合、高電圧蓄電池6は、それにもかかわらず、もう1つの蓄電池ユニットによってまだ動作することができるが、その後は、例えば800Vの代わりに400Vしか提供できなくなる。
【0048】
高電圧搭載電源網2は、この実施例によれば、低電圧直流電圧変換器25も有する。この低電圧直流電圧変換器25は、高電圧搭載電源網2の直流電圧の降圧を実施し、そのため、低電圧負荷26に低電圧27を供給することができる。この低電圧27は、特に12Vである。
【0049】
さらに、この実施例による高電圧搭載電源網2は、第1のスイッチ28および第2のスイッチ29を有する。第1のスイッチ28は、出力端子19と高電圧蓄電池6との間に配置されている。それに対して、第2のスイッチ29は、給電スイッチ22と高電圧蓄電池6との間に配置されている。第1のスイッチ28により、トラクションインバーター9と高電圧蓄電池6との間の直接接続を中断することができる。次いで、この高電圧蓄電池6からトラクションインバーター9への接続は、例えば、閉じた第2のスイッチ29、閉じた給電スイッチ22、および第2の段12を介して形成することができる。
【0050】
第2のスイッチ29を介して、直流電圧源8と高電圧蓄電池6との間の直接接続を中断することができる。ここにおいてこの接続は、代替的に例えば、閉じた給電スイッチ22、第2の段12、および閉じた第1のスイッチ28を介して形成することができる。このことは、例えば、高電圧蓄電池6が800Vで動作されるのに対して、直流電圧源8は400Vしか提供できない場合を想定している。
【0051】
蓄電池充電装置3の第1の段11および第2の段12は、例えば、共通の1つのハウジング内に配置されてもよいが、それぞれ別個にあるいは異なるサブハウジング内に配置されてもよい。充電端子4も、例えば、蓄電池充電装置3のハウジング内に配置されてもよいが、当該ハウジング外に配置されてもよく、したがって、電力線により第1の段11に電気的に接続されてもよい。給電端子21または出力端子19も、例えば、蓄電池充電装置3のハウジング外またはハウジング内に配置されてもよい。給電スイッチ22も、例えば、蓄電池充電装置3のハウジング外またはハウジング内に配置されてもよい。蓄電池充電装置3は、例えば、ハウジングなしで構成されてもよいし、あるいは各個別部品毎に別個のハウジングを有してもよい。ただし、好適には、蓄電池充電装置3は、コンパクトに構成されており、そのため、蓄電池充電装置3の構成部品は、相互に可及的に近傍にかつ省スペース的に配置されている。
【0052】
この実施例によれば、交流電圧源5は、交流電圧スイッチ30を介して高電圧搭載電源網2に接続可能である。直流電圧源8も、この実施例によれば、直流電圧スイッチ31を介して高電圧搭載電源網2に電気的に接続可能である。
【0053】
つまり、図2によれば、参照符号3の付されたボックスは、蓄電池充電装置3の仕切りまたは特にハウジングとして見ることができ、それに対して、残りの実線は、電気的な線路として見ることができる。これらの電気的な線路は、特に多相に構成されている。
【0054】
図3は、第1の搭載電源網分岐32および第2の搭載電源網分岐33を有する高電圧搭載電源網2のさらなる実施例を示す。第1の搭載電源網分岐32は、この実施例によれば、加熱ユニット34および空調コンプレッサ35を含む。第1の搭載電源網分岐32は、さらなる高電圧負荷を有し得る。第2の搭載電源網分岐33は、低電圧直流電圧変換器25と低電圧負荷26とを含む。この第2の搭載電源網分岐33も、さらに低電圧負荷を有し得る。
【0055】
この実施例によれば、第1の搭載電源網分岐32は、安定化されていない搭載電源網分岐として構成され、第2の搭載電源網分岐33は安定化された搭載電源網分岐として構成されている。1つの搭載電源網は、当該搭載電源網にとって、接続された直流電圧変換器を用いて、高電圧蓄電池6の公称電圧から外れた電圧を可変に設定できる場合には安定化されている。
【0056】
この実施例によれば、第2の搭載電源網分岐33、すなわち安定化された搭載電源網分岐は、充電端子4に電気的に接続されていないことが想定されている。特に、中間点20は、第2の搭載電源網分岐33に直接電気的に接続されていないことが想定されている。この目的のために、第2の搭載電源網分岐33は、第3のスイッチ36を介して第1の搭載電源網分岐32から分離可能である。つまり、第2の搭載電源網分岐33は、第3のスイッチ36によって高電圧搭載電源網2から分離することができる。このことは、給電スイッチ22と第1のスイッチ28とが閉じられている場合に特に有利である。したがって、第3のスイッチ36が開かれることにより、中間点20と第2の搭載電源網分岐33との間の直接の電気的な接続が中断される。
【0057】
つまり、この実施例によれば、給電スイッチ22は、高電圧蓄電池6に直接およびスイッチなしで電気的に接続されている。
【0058】
図4は、高電圧搭載電源網2のさらなる実施例を示す。この実施例によれば、第2の段12は、3つの相を有しており、中間点20および好適には出力側19も、第2の段12の3つの相のうちの1つの相にのみ電気的に接続されている。
【0059】
第2の段12では、当該第2の段12のインバーター15、トランス16、および整流器17は、この実施例によれば3つの相のうちのそれぞれ1つに対して存在している。
【0060】
さらに、この実施例によれば、低電圧直流電圧変換器25には、低電圧蓄電池37が接続されている。この低電圧蓄電池37は、好適には12V蓄電池として構成されている。
【0061】
この実施例による高電圧搭載電源網2は、第4のスイッチ38と第5のスイッチ39とを有する。第4のスイッチ38は、低電圧直流電圧変換器25と高電圧蓄電池6との間の直接の電気的な接続を中断することができるように高電圧搭載電源網2に配置されている。それに対して、第5のスイッチ39は、出力端子19と低電圧直流電圧変換器25との間の直接の電気的な接続を中断することができるように、高電圧搭載電源網2に配置されている。
【0062】
図5は、高電圧搭載電源網2のさらなる実施例を示す。蓄電池充電装置3は、好適度の比較的低い実施形態によれば、第3の段41を有する。この第3の段41は、第2の段12と出力端子19との間に配置されている。蓄電池充電装置3の第3の段41は、この実施例によれば、直流電圧変換器40を有する。この直流電圧変換器40は、この実施例によれば、第2の段12の整流器17と出力端子19との間に配置されている。この実施例によれば、第2の段12と第3の段41との間に接続点42が配置されている。したがって、第2の段12および第3の段41は、この接続点42を介してのみ電気的に接続されている。第1の電気的な直流電圧23から第2の電気的な直流電圧24への電圧適合化は、この実施例によれば、第3の段41の直流電圧変換器40によってのみ実施される。
【符号の説明】
【0063】
1 自動車
2 高電圧搭載電源網
3 蓄電池充電装置
4 充電端子
5 交流電圧源
6 高電圧蓄電池
7 直流電圧充電端子
8 直流電圧源
9 トラクションインバーター
10 トラクションユニット
11 第1の段
12 第2の段
13 第1の段の整流器
14 力率補正フィルタ
15 インバーター
16 トランス
17 第2の段の整流器
18 コンデンサ
19 出力端子
20 中間点
21 給電端子
22 給電スイッチ
23 第1の電気的な直流電圧
24 第2の電気的な直流電圧
25 低電圧直流電圧変換器
26 低電圧負荷
27 低電圧
28 第1のスイッチ
29 第2のスイッチ
30 交流電圧スイッチ
31 直流電圧スイッチ
32 第1の搭載電源網分岐
33 第2の搭載電源網分岐
34 加熱ユニット
35 空調コンプレッサ
36 第3のスイッチ
37 低電圧蓄電池
38 第4のスイッチ
39 第5のスイッチ
40 直流電圧変換器
41 第3の段
42 接続点
図1
図2
図3
図4
図5