IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アリックス リミテッド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】天然防腐剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/3472 20060101AFI20220524BHJP
   A23B 7/153 20060101ALI20220524BHJP
   A23L 2/44 20060101ALI20220524BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20220524BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
A23L3/3472
A23B7/153
A23L2/00 P
A23L2/02 E
A23L2/02 A
A23L2/52 101
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020516784
(86)(22)【出願日】2018-05-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 US2018035168
(87)【国際公開番号】W WO2018222739
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-03-30
(31)【優先権主張番号】62/513,840
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519429901
【氏名又は名称】アリックス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディアナ ラトソン
(72)【発明者】
【氏名】トム ジャクソン
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-503911(JP,A)
【文献】Waste and Biomass Valorization,2014年,5(1),57-63
【文献】中谷 延二,II.香辛料 A.香辛料の科学,調味料・香辛料の事典 ,第1版,朝倉 邦造 株式会社朝倉書店,1991年07月15日,p.418-422
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23
A01N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/CABA/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品に添加するための天然防腐剤組成物であって、
発酵亜麻仁、又は発酵亜麻仁と発酵オレガノのブレンドとして形成された第1の構成要素と、
マルトデキストリン及び/又は発酵デキストロースのブレンドとして形成された第2の構成要素と、
料理用ハーブのエッセンシャルオイルのブレンドとして形成された第3の構成要素と
を含む天然防腐剤組成物。
【請求項2】
前記第1の構成要素は、食品及び防腐剤組成物の総重量の約1.0から4.0%、又は食品及び防腐剤組成物の総重量の約1.5から3.0%、又は食品及び防腐剤組成物の総重量の約2.0から2.5%を構成するような量で含まれ、「約」によって修飾される値は、10%未満まで変動する値を意味する、請求項1に記載の防腐剤組成物。
【請求項3】
前記第2の構成要素は、食品及び防腐剤組成物の総重量の約1.0から2.0%、又は食品及び防腐剤組成物の総重量の約0.2から1.5%、又は食品及び防腐剤組成物の総重量の約0.5から0.7%を構成するような量で含まれ、「約」によって修飾される値は、10%未満まで変動する値を意味する、請求項1又は2に記載の防腐剤組成物。
【請求項4】
前記第3の構成要素は、食品及び防腐剤組成物の総重量の約0.02から0.5%、又は食品及び防腐剤組成物の総重量の約0.03から0.25%、又は食品及び防腐剤組成物の総重量の約0.05から0.1%を構成するような量で含まれ、「約」によって修飾される値は、10%未満まで変動する値を意味する、請求項1~3のいずれか1項に記載の防腐剤組成物。
【請求項5】
前記第1の構成要素は、亜麻仁、又は亜麻仁とオレガノの発酵から生じる発酵上清である、請求項1~4のいずれか1項に記載の防腐剤組成物。
【請求項6】
前記第1の構成要素は、発酵亜麻仁及び発酵オレガノの両方である、請求項1~5のいずれか1項に記載の防腐剤組成物。
【請求項7】
前記発酵上清は、亜麻仁及びオレガノの両方の組み合わせを発酵させて生じる、請求項5に記載の防腐剤組成物。
【請求項8】
前記第2の構成要素は、マルトデキストリン及び発酵デキストロースの両方を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の防腐剤組成物。
【請求項9】
マルトデキストリン対発酵デキストロースの比は、約8:1、4:1、2:1、1:1、0.5:1、0.25:1、又は0.125:1であり、「約」によって修飾される値は、10%未満まで変動する値を意味する、請求項8に記載の防腐剤組成物。
【請求項10】
前記第3の構成要素は、アニス及び/又はウイキョウのエッセンシャルオイルを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の防腐剤組成物。
【請求項11】
前記防腐組成物は、細菌、酵母、及びカビからの腐敗を防止するための広いスペクトルの抗菌効果を提供する、請求項1~10のいずれか1項に記載の防腐剤組成物。
【請求項12】
有効な防腐特性を有するフルーツ及び/又は野菜ベースの製品であって、前記製品が、
1以上のフルーツ及び/又は野菜ベースの成分と、
請求項1~11のいずれか1項に記載されている天然防腐剤組成物と
を含む、フルーツ及び/又は野菜ベースの製品。
【請求項13】
前記フルーツ及び/又は野菜ベースの製品がジュース製品である、請求項12に記載のフルーツ及び/又は野菜ベースの製品。
【請求項14】
前記天然防腐剤組成物を含む前記フルーツ及び/又は野菜ベースのジュース製品は、約2.6から4.5、又は約2.8から4.0、又は約3.0から3.5のpHを有し、「約」によって修飾される値は、10%未満まで変動する値を意味する、請求項13に記載のフルーツ及び/又は野菜ベースのジュース製品。
【請求項15】
天然防腐剤組成物を使用して食品を防腐する方法であって、前記方法が、
食品を提供する工程と、
前記食品に、請求項1~11のいずれか1項に記載されている天然防腐剤組成物を添加する工程と、
前記天然防腐剤組成物が前記食品を防腐する工程と、
を含む天然防腐剤組成物を使用して食品を防腐する方法。
【請求項16】
前記食品がフルーツ及び/又は野菜ベースのジュース製品であり、天然防腐剤組成物が少なくとも28日間微生物の成長を防止する、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年6月1日に提出された米国仮出願第62/513,840の利益と優先権を主張し、その全体は参照により本出願に取り込まれる。
【背景技術】
【0002】
ジュース及び他の飲料などの食品には、腐敗を防止するために添加剤がしばしば配合される。典型的には、安息香酸ナトリウム若しくは安息香酸カリウム、及び/又はソルビン酸ナトリウム若しくはソルビン酸カリウムなどの成分(ingredients)が使用される。これらの防腐剤は、特にジュースに広く認められている。このような防腐剤は、典型的には、食品の日持ちを延ばす目的に対して有効性を示しているが、これらの非天然防腐剤に関連した健康上の影響につての懸念が増加している。このような健康に関連した理由に加えて、そのような非天然成分を制限した又は排除した食品を購入及び消費することを(例えば、ライフスタイル又は他の個人的理由で)優先する多くの人々が存在する。
【0003】
これらの伝統的な防腐剤に代わって、多くの製品には、製品の腐敗を低減し、日持ちを延ばすために、より自然であると考えられる成分が用いられる。例えば、高濃度の塩、砂糖、又は酢酸(例えば酢)及びクエン酸のような有機酸が、ある程度の食品の保蔵を提供することが長い間知られている。しかし、これらの成分は、特に有効な防腐効果を提供するのに必要な濃度では、全てのタイプの食品について適切ではない。加えて、これらのタイプの成分が含まれる場合であっても、(細菌、酵母、及び/又はカビ由来の)微生物の成長が、依然として、日持ちの低下をもたらし、及び/又は食品の安全性/汚染の懸念を生じさせうる。
【0004】
ジュース製品には、天然防腐剤の有効性についてある課題がある。高レベルの塩及び砂糖は、典型的には望ましくなく、ジュース製品には適さない。また、幾つかのジュース製品が、天然に、有機酸を含む場合、及び/又はそのような酸が添加された場合、防腐効果は、しばしば、十分に安全であり、且つ十分な日持ちを有する製品を提供するのに十分大きくはない。更に、防腐剤(preservation challenges)は、多くの天然成分の複雑なブレンドを含有するジュース製品と化合される。様々な天然成分が、高濃度の栄養素及びジュース消費者に対する健康利益を提供するが、それに応じて、この成分は、細菌、酵母、及びカビの成長及び広がりにとって肥沃な土壌を提供する。
【0005】
本明細書で請求する主題は、どんな不利益をも解決する実施形態、又は上述したもののような環境でのみ操作する実施形態に制限されない。むしろ、この背景技術は、本明細書に記載された幾つかの実施形態が実施されうる1つの具体例を例示するために、単に提供されるだけである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】the United States Pharmacopeia chapter <51> Preservative Challenge Test
【発明の概要】
【0007】
(簡単な概要)
本開示は、1以上の食品に添加され、食品に有益な防腐効果を提供しうる天然防腐剤組成物を記載する。ある実施形態では、天然防腐剤組成物は、発酵亜麻仁及び/又は発酵オレガノのブレンドとして形成された第1の構成要素(component)、マルトデキストリン及び/又は発酵デキストロースのブレンドとして形成された第2の構成要素、及び、料理用ハーブのエッセンシャルオイルのブレンドとして形成された第3の構成要素を含む。
【0008】
好ましい実施形態では、第1の構成要素は亜麻仁とオレガノの両方を組み合わせて発酵させて生じる発酵上清であり、第2の構成要素はマルトデキストリン及び培養/発酵デキストロースの両方を含む。ある実施形態では、第3の構成要素はアニス及び/又はウイキョウのエッセンシャルオイルを含む。
【0009】
ある実施形態では、第1の構成要素は、食品及び防腐剤組成物の総重量の約1.0から4.0%、又は食品及び防腐剤組成物の総重量の約1.5から3.0%、又はより好ましくは食品及び防腐剤組成物の総重量の約2.0から2.5%を構成するような量で添加される。ある実施形態では、第2の構成要素は、食品及び防腐剤組成物の総重量の約1.0から2.0%、又は食品及び防腐剤組成物の総重量の約0.2から1.5%、又はより好ましくは食品及び防腐剤組成物の総重量の約0.5から0.7%を構成するような量で添加される。ある実施形態では、第3の構成要素は、食品及び防腐剤組成物の総重量の約0.02から0.5%、又は食品及び防腐剤組成物の総重量の約0.03から0.25%、又はより好ましくは食品及び防腐剤組成物の総重量の約0.05から0.1%を構成するような量で添加される。
【0010】
本明細書に記載された少なくとも幾つかの実施形態は、防腐剤組成物が添加された食品中の細菌、酵母及びカビの成長及び広がりを防止するための広いスペクトルの防腐活性を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(詳細な説明)
本明細書に記載されたある実施形態は、食品防腐剤としての使用、特にジュース製品用の天然防腐剤としての使用に適した組成物を指向する。本明細書に記載された実施形態は、ジュースブレンドに添加されたときに、長期間にわたって細菌、酵母、及びカビの成長を制限し、これによって、効果的に、当該ジュースブレンドの日持ちを延ばし、これを人の消費に対してより安全にすることにより、有益な防腐効果を提供することが示されている。
【0012】
本記載の全体にわたって、具体的な実施形態は、ジュースブレンド及び他のジュース製品に対する防腐剤の文脈で記載される。このような実施形態は現時点で好ましいが、当業者は、本明細書に記載された防腐剤組成物が代替の食品(例えば、フルーツ又は野菜ピューレ、濃縮物、スプレッド)内に添加され及び/又は混合され、同様の有益な防腐効果を提供しうることを理解するであろう。本明細書に記載された防腐剤組成物の実施形態は、天然成分に基づく食品、及び/又は、安息香酸塩、ソルビン酸塩又は他の非天然防腐剤のような伝統的な非天然の塩防腐剤を排除した食品を保蔵するのに特に有用でありうる。
【0013】
本明細書で使用するとき、用語「天然(自然)」、「天然(自然)起源(naturally sourced)」などは、人工の成分を含まない構成要素(components)/成分(ingredients)、及び未加工の食品中に典型的に大量に見出されない成分を含まない構成要素/成分を記載するのに使用される。例えば、天然防腐剤組成物を処方するのに使用される好ましい「天然」成分は、植物源由来であり、ほとんど追加の加工がされていないか又は全く追加の加工がされていないものである。「天然」成分の範囲内に依然として残りつつ、利用することができる適切な加工ステップには、発酵プロセス、蒸留プロセス(例えば、植物材料からエッセンシャルオイルを抽出すること)、物理的加工(例えば、ろ過、ふるい、切り刻み、乾燥)などが含まれる。好ましい実施形態では、天然防腐剤組成物は、安息香酸塩、ソルビン酸塩、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、硝酸塩若しくは亜硝酸塩、二酸化硫黄、亜硫酸塩、又は未加工の食品に大量には一般に見出されない他のそのような化合物などの合成により誘導された防腐剤を、例え幾つかの食品に、天然に微量に見られる(例えば、安息香酸はクランベリー及び幾つかの他の植物食品に見出される)としても、特に排除する。
【0014】
特に断らない限り、種々の構成要素の濃度及び量は、組成物の総重量に対する重量基準当たりで与えられる。
【0015】
幾つかの実施形態では、天然防腐剤組成物は、(1)発酵亜麻仁及び/又は発酵オレガノのブレンドとして形成された第1の構成要素であって、食品と防腐剤組成物を合わせた総重量の約1.0から4.0%を構成するような量で含まれるもの、及び(2)マルトデキストリン及び/又は発酵デキストロースのブレンドとして形成された第2の構成要素であって、食品と防腐剤組成物を合わせた総重量の約0.1から2.0%を構成するような量で含まれるもの、及び、任意選択的に(3)料理用ハーブのエッセンシャルオイルのブレンドとして形成された第3の構成要素であって、食品と防腐剤組成物を合わせた総重量の約0.02から0.5%を構成するような量で含まれるもの、を含む。
【0016】
幾つかの実施形態では、第1の構成要素は、亜麻仁及び/又はオレガノの発酵から生じる発酵上清である。現在好ましい実施形態では、第1の構成要素は、亜麻仁及びオレガノを組み合わせて(即ち、同じタンクで)発酵させて生じる発酵上清である。発酵は、好ましくは、7日間を越えて、又は14日間を越えて、例えば約20から40日間又は約30日間行われる。第1の構成要素は、食品及び防腐剤組成物を組み合わせた総重量の約1.0から4.0%、又は食品及び防腐剤組成物を組み合わせた総重量の約1.5から3.0%、又はより好ましくは食品及び防腐剤組成物を組み合わせた総重量の約2.0から2.5%を構成するような量で添加される。
【0017】
幾つかの実施形態では、第2の構成要素は、マルトデキストリン及び発酵デキストロースの両方を含むブレンドである。マルトデキストリン対発酵デキストロースの比は変化しうる。例えば、マルトデキストリン対発酵デキストロースの比は、約8:1、4:1、2:1、1:1、0.5:1、0.25:1、又は0.125:1でありうる。第2の構成要素は、食品及び防腐剤組成物を組み合わせた総重量の約1.0から2.0%、又は食品及び防腐剤組成物を組み合わせた総重量の約0.2から1.5%、又はより好ましくは食品及び防腐剤組成物を組み合わせた総重量の約0.5から0.7%を構成するような量で添加される。
【0018】
幾つかの実施形態では、第3の構成要素は、食品及び防腐剤組成物を組み合わせた総重量の約0.02から0.5%、又は食品及び防腐剤組成物を組み合わせた総重量の約0.03から0.25%、又はより好ましくは食品及び防腐剤組成物を組み合わせた総重量の約0.05から0.1%を構成するような量で添加される。料理用ハーブのエッセンシャルオイルのブレンドには、好ましくは、アニス及び/又はウイキョウのエッセンシャルオイルが含まれる。1以上の料理用ハーブのエッセンシャルオイル、例えば、バジル、ローズマリー、オレガノ、タイム、コリアンダー、パセリ、ディル、ミントなどのエッセンシャルオイルが追加的に又は代替して含まれていてもよい。
【0019】
上記の範囲内の量及び比率の構成要素を有する防腐剤組成物を提供することは、有効な日持ち及び微生物の汚染への耐性を食品(例えば、天然のジュースブレンド)にもたらすことが見いだされている。例えば、本明細書に記載された防腐剤組成物は、約7日以上、約14日以上、約28日以上、又は更に長い期間でさえも微生物の成長(細菌、酵母、及びカビの成長を含む)を防止することができる。幾つかの実施形態では、防腐剤組成物は、食品が腐敗することなく、及び/又は微生物の導入を有意に増加することなく、典型的な消費者の貯蔵時間(例えば、使用者の冷蔵庫内に在る時間)を含む、消費者への輸送及び流通を可能にするのに十分な期間、食品内への微生物の導入を許容可能な食品グレードのレベルに低減又は除去する。
【0020】
幾つかの実施形態では、防腐剤組成物は、細菌、酵母、及びカビからの腐敗を防止するための広いスペクトルの抗微生物効果を提供する。本明細書に記載された、防腐剤組成物の個別の成分は、有益には、互いに組み合わされた場合に、相乗作用的な抗菌活性を示し、広いスペクトルの抗菌活性を可能にし、個々の構成要素(component)/成分(ingredient)が互いに独立して使用された場合には示されない防腐効果を伴う。例えば、個別の成分が独立して使用される場合、生じる防腐効果は有効性が低く、幾つかの例では、標準化された防腐試験(即ち、米国薬局方第51章 防腐剤チャレンジテスト(the United States Pharmacopeia chapter <51> Preservative Challenge Test(非特許文献1))(2017年、6月の時点で標準化された試験を使用する)に合格することができない。対照的に、個別に記載した成分の組み合わせを含む本明細書に記載された防腐剤組成物は、当該組成物がかかる標準化された防腐剤試験に合格できる広いスペクトルの防腐効果を示す。
【0021】
少なくとも幾つかの実施では、本明細書に記載された防腐剤組成物は、有害な程度まで食品のpHを変化することなく食品に添加することができる。例えば、食品が酸性のベースラインのpHを有する場合(これは、多くのジュース又は他のフルーツ及び/又は野菜ベースの製品の場合である。)、従来技術の幾つかの防腐剤配合剤は、中性のpHにより近接したレベルまで食品のpHを増加させうる。このpHの増加は、微生物の成長を制御する能力を低下しうる。特に、カビの成長は、このpHが中性のレベルに近づくようになるので、制御することが非常に困難になる。従って、このような防腐剤は、例えこれらが一般の微生物の汚染物のサブセット(細菌及び/又はカビ以外の酵母など)に対して効果的でありうるとしても、微生物の汚染の全ての形態から食品を保護するという最終的な目的には不利に作用する。対照的に、本明細書に記載された防腐剤組成物は、1以上の微生物の形態、例えばカビの成長を、悪影響になるように促進することなく広いスペクトルの防腐効果を提供することができる。
【0022】
幾つかの実施形態では、pHの増加が天然防腐剤組成物の添加で起こる場合であっても、防腐剤組成物の成分を組み合わせた相乗作用効果が機能し、防腐剤が利かなくなる有害な結果をもたらすpHの増加を防止する。例えば、pHのレベルがある程度まで増加した場合であっても、防腐剤組成物の広いスペクトルの能力は、カビの成長(これは、しばしば、pHの上昇が起こったときの最初の原因である)の防止を含めた微生物の成長を効果的に阻害することとして示される。従って、他の防腐剤配合剤が、化合された食品のpHを増加させた結果として有効でない場合、本明細書に記載された天然防腐剤組成物は、pHの上昇に伴う有害な効果を低減し、又は排除するように機能しうる。
【0023】
天然防腐剤組成物を使用して食品を防腐するための方法は、(1)食品を提供する工程、(2)該食品に天然防腐剤組成物を添加する工程、及び(3)該天然防腐剤組成物が該食品を防腐する工程を含む。食品の防腐は、天然防腐剤組成物を含まない同様の食品と比較して、食品の日持ちを延ばすことが示される。加えて、又は、代替として、防腐効果は、他の全ての点では同様の条件下で提供されているが、天然防腐剤組成物を除外した同様の食品の性能に比べて、1以上の標準化された防腐剤チャレンジテストにおいて、食品及び天然防腐剤組成物の性能の改善として示される。
【0024】
現在の好ましい実施形態では、食品は、ジュース、ピューレ、濃縮物などのようなフルーツ及び/又は野菜をベースとする製品である。先に説明したように、天然防腐剤組成物は、組み合わされたときに相乗作用的に働き、長期間(例えば、少なくとも28日間)細菌、酵母、及びカビの成長及び広がりを制限する広いスペクトル活性を与える個別の成分の組み合わせを含む。少なくとも幾つかの実施では、天然防腐剤組成物の防腐効果は、天然防腐剤組成物の個別の成分間の相乗作用的関係によって増強される。
【0025】
幾つかの実施形態では、フルーツ及び/又は野菜製品は、約2.6から4.5、又は約2.8から4.0、又は約3.0から3.5の初期pHレベルで提供される。少なくとも幾つかの実施では、本明細書に記載された天然防腐剤組成物は、初期pHを有意に変化させたり、又はこれに有意に影響を与えることなく、フルーツ及び/又は野菜製品に添加される。例えば、天然防腐剤組成物を添加した後、pHは、約6.0未満、又は約5.5未満、又は約5.0未満、又は約4.5未満、又は約4.0未満に維持されうる。
【0026】
本明細書で使用されるとき、用語「ほぼ(approximately)」、「約」、及び「実質的に」は、なお、所望の機能を発揮し、所望の結果を実現する、記載された量又は条件に近接する量又は条件を表す。例えば、用語「ほぼ」、「約」、及び「実質的に」は、記載された量又は条件から10%未満、又は5%未満、又は1%未満、又は0.1%未満、又は0.01%未満まで変動する量又は条件をいう。
【実施例
【0027】
(実施例1)
3種の個別の防腐処理剤を、20を超える異なる植物成分を含むジュースブレンドに加えた。各処理剤の成分(総ジュースブレンドの重量百分率)を表1に示した。「エッセンシャルオイルブレンド」は、アニス及びウイキョウのエッセンシャルオイルを含む料理用ハーブのエッセンシャルオイルのブレンドであった。処理剤1は陽性対照(安息香酸カリウム及びソルビン酸カリウムを添加したもの)であった。
【0028】
【表1】
【0029】
ジュースブレンドを、抗菌防腐剤有効性試験(United States Pharmacopeia chapter 39, <51>(非特許文献1))(2017)にかけた。処理剤2及び3は、過剰な微生物の成長を示し、7日の時間点で試験に不合格となった。
【0030】
(実施例2)
4種の追加の防腐処理剤(処理剤4から7)を、実施例1で使用したものと同様のジュースブレンドに加えた。各処理剤の成分を表2に示した。「培養デキストロースブレンド」は、マルトデキストリン及び発酵デキストロースのブレンドであった。「培養デキストロースブレンド+」は、マルトデキストリン、発酵デキストロース、マスタードエッセンシャルオイル、緑茶抽出物、及びα-シクロデキストリンのブレンドであった。
【0031】
【表2】
【0032】
ジュースブレンドを、実施例1と同様の抗菌防腐剤有効性試験にかけた。全ての処理剤が、7日の時間点で試験に不合格となった。処理剤4から6はまた、pHのレベルの増加を示し、処理剤4から6に含まれる「培養デキストロースブレンド+の成分」が、pHの変動の原因であったことを示唆した。
【0033】
(実施例3)
5種の追加の防腐処理剤(処理剤8から12)を、実施例1及び2で使用したものと同様のジュースブレンドに加えた。各処理剤の成分を表3に示した。「エッセンシャルオイル」、「培養デキストロースブレンド」及び「培養デキストロースブレンド+」の成分は、先の実施例と同じブレンドであった。「発酵亜麻/オレガノ」成分は、亜麻仁とオレガノを組み合わせた塊体の発酵により生じる発酵上清であった。処理剤9は、陰性対照(防腐剤の添加なし)であった。処理剤10は、陽性対照(ソルビン酸カリウムを添加)であった。
【0034】
【表3】
【0035】
ジュースブレンドを、先の実施例と同様の抗菌防腐剤有効性試験にかけた。処理剤8から12の各々の結果を、それぞれ、表4から8に示した。以下の表に列挙した値は、グラム当たりのコロニー形成単位を表す。
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
【0039】
【表7】
【0040】
【表8】
【0041】
カテゴリー3の製品(制酸剤以外の経口製品)がUPS<51>有効性試験(非特許文献1)に合格するためには、細菌が14日で初期カウントから90.0%以上低減され、14から28日の時点で細菌が増加せず、且つ、初期カウントから酵母又はカビの増加がないことが必要である。処理剤8、10及び12はこれらの要求を満たした。処理剤10は陽性対照であった。処理剤8は特に効果的(陽性対照と同等)であり、酵母及びカビのレベルの低減において処理剤12よりも迅速に働いた。
【0042】
(実施例4)
処理剤8を再度、先の実施例と同様の抗菌防腐剤有効性試験にかけた。試験の結果を表9に示す。サンプルは、14日と28日の時間点で採取したのみである。以前と同様、処理剤8は、カテゴリー3製品に対する有効性試験に合格した。
【0043】
【表9】