IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アーファオエル・リスト・ゲーエムベーハーの特許一覧

特許7078715レーダ信号を変換するための装置および方法とテストスタンド
<>
  • 特許-レーダ信号を変換するための装置および方法とテストスタンド 図1
  • 特許-レーダ信号を変換するための装置および方法とテストスタンド 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】レーダ信号を変換するための装置および方法とテストスタンド
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
G01S7/40 182
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020519273
(86)(22)【出願日】2018-10-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 AT2018060236
(87)【国際公開番号】W WO2019068125
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】A50857/2017
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】513131176
【氏名又は名称】アーファオエル・リスト・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・エルンスト・ガートリンガー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・フォルダーダーフラー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・グルーバー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート・シュライバー
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0012517(US,A1)
【文献】特開平07-311257(JP,A)
【文献】特開平10-282219(JP,A)
【文献】特開2012-198070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダターゲットエミュレータ(20)を備えるテストスタンド(10)において、さらなる信号処理を行うためにレーダ信号(S)を変換するための装置(1)であって、
前記レーダ信号(S)の周波数および帯域幅をさらなる信号処理のために第一の係数で減少させるために構成されているディバイダ装置(4)を備えるディバイダ構成体(2)と、
前記レーダ信号(S)の周波数および帯域幅を、前記さらなる信号処理の後に、前記第一の係数で増大させるために構成されているマルチプライヤ装置(4‘)を備えるマルチプライヤ構成体(3)と、を有する装置。
【請求項2】
前記ディバイダ装置(4)は、少なくとも一つの特に再生式の周波数ディバイダを有する、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記ディバイダ構成体(2)はさらに、前記レーダ信号(S)の周波数を、さらなる信号処理のために第二の係数で減少させるために構成されているディバイダモジュール(5)を有し、
前記マルチプライヤ構成体(3)はさらに、前記レーダ信号(S)の周波数を、前記さらなる信号処理の後に前記第二の係数で増大させるために構成されているマルチプライヤモジュール(5‘)を有する、請求項1または2に記載の装置(1)。
【請求項4】
ディバイダモジュール(5)および/またはマルチプライヤモジュール(5‘)は、変換周波数を備える変換信号(K)を生じさせるためのオシレータ構成要素(5b)と、前記変換信号(K)を前記ディバイダモジュール(5)もしくはマルチプライヤモジュール(5‘)に供給された前記レーダ信号(S)と混合するためのミキサー構成要素(5a)とを有する請求項1から3のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記第一の係数は、1から10の範囲内にあり、好ましくは1.5から6の範囲内にあり、特に2から4の範囲内にある請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
レーダ信号(S)を処理するために構成されているテストスタンド(10)であって、
請求項1から5のいずれか一項に記載の前記レーダ信号(S)を変換するための装置(1)と、
レーダターゲットエミュレータ(20)であって、前記ディバイダ構成体(2)および前記マルチプライヤ構成体(3)と接続されており、前記ディバイダ構成体(2)により供給される前記レーダ信号(S)であって、当該レーダ信号の周波数および帯域幅が前記ディバイダ構成体(2)を用いて少なくとも前記第一の係数で減少させられているレーダ信号を処理するため、特にドップラーシフトを供給するため、時間的に遅延させるため、および/または変調させるために構成されており、それにより相応に処理された前記レーダ信号(S)は少なくとも一つのエミュレートされた対象物を特徴づける、レーダターゲットエミュレータと、を有するテストスタンド。
【請求項7】
前記レーダターゲットエミュレータ(20)は、前記ディバイダ構成体(2)により供給される前記レーダ信号(S)であって、当該レーダ信号の周波数が10GHzより小さく、好ましくは5GHzより小さく、特に2.5GHzより小さく、当該レーダ信号の帯域幅が4GHzより小さく、好ましくは2GHzより小さく、特に1GHzより小さいレーダ信号を処理するために構成されている、請求項6に記載のテストスタンド(10)。
【請求項8】
レーダターゲットエミュレータ(20)を備えるテストスタンド(10)において、さらなる処理を行うためにレーダ信号(S)を変換するための方法であって、
前記レーダ信号(S)の周波数および帯域幅はさらなる信号処理のために第一の係数で減少させられ、
前記レーダ信号(S)の周波数および帯域幅は、前記さらなる信号処理の後に、前記第一の係数で増大させられる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダターゲットエミュレータを備えるテストスタンドにおいて、さらなる信号処理を行うためにレーダ信号を変換するための装置および方法と、そのような装置を備えるテストスタンドとに関する。
【背景技術】
【0002】
特に地上に配備される車両、例えば乗用車、トラック、またはオートバイなどのモバイルシステムの複雑性は、近年増大し続けている。排気および/または燃料消費を低減すること、あるいは運転の快適さを増大させることと並んで、モバイルシステムの複雑化はまた、とりわけ、まさに大都市圏において常に増大する交通量を処理するために生じている。これを担うのは通常、運転者支援システムもしくは支援システムであり、当該支援システムは車両内センサを介して、および/または他の車両および/または定置箇所もしくは施設との通信を介して、車両環境に関する情報、特に予測されるルートの情報を、標準的運転状況および/または極端な状況において、指示の型式で運転者を支援するため、および/または車両挙動にアクティブに介入するために用いる。
【0003】
多くの場合、少なくとも上記のセンサシステムの構成要素として、レーダセンサが用いられ、当該レーダセンサは障害物および/または先行車両などに関して車両の直接的な周囲を監視する。このような支援システムを評価するために、当該支援システムに対して、一つの特に仮想的なテストシナリオに関する情報を供給し、当該支援システムの反応を分析することが知られている。
【0004】
高周波であるかもしれないレーダセンサのレーダ信号をテストシナリオに関して処理できるためには通常、より低い周波数領域への信号の周波数変換(ダウンコンバージョン)が必要であり、これは例えば局部発振器を用いて一つのミキサー段において信号を混合することにより実現される。
【0005】
特許文献1は、レーダ環境シミュレータのレーダ送信器と、レーダターゲットディスプレイに結合されたレーダ受信器との間に配置するためのシステムに関する。当該システムは入力レーダ信号を分配するための電力分配器と、局部発振器と、二つのミキサーとを有し、当該ミキサーはそれぞれ、電力分配器の信号成分のパス内に設けられている。
【0006】
特許文献2は、テスト信号を発生させるための装置に関し、二つの入力信号が受信され、レーダシステムに対して同期させられる。加速式のこぎり波発生器内で、典型的な8280サイクル毎秒を備える信号を処理する際、当該サイクルは加速式のこぎり波発生器の周波数ディバイダにより、係数2で割られる。当該信号はさらなる処理の際に制限され、周波数コンバータであって、信号の周波数を、典型的なレーダシステムの受信点における周波数領域に相当する周波数領域に置き換えることを課題とする周波数コンバータに供給される。
【0007】
特許文献3は、レーダエコーシミュレータに関し、当該レーダエコーシミュレータは、車両内に備えられた衝突予防レーダのレーダ信号に対して、いわゆる「ダウンコンバージョンモジュール」を用いて、ミリメータ波からセンチメータ波への二段式の周波数変換を実施し、それによりレーダ信号は信号処理装置により分析され、その際パラメータ入力に応じて、アナログ式エコー信号を生じさせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第8248297号明細書
【文献】米国特許第3903521号明細書
【文献】中国特許出願公開第105510980号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、レーダターゲットエミュレータを改善すること、特に広帯域のレーダ信号を実質的に品質損失がないか、あるいは少なくとも低減された状態で、レーダターゲットエミュレータ内で処理するために圧縮することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は本発明により、独立請求項に記載の装置および方法と、このような装置を備えるテストスタンドとによって解決される。
【0011】
本発明の一つの態様は、特にレーダターゲットエミュレータを備えるテストスタンドにおいて、さらなる信号処理を行うためにレーダ信号を変換するための装置に関し、当該装置はディバイダ構成体とマルチプライヤ構成体とを有する。ディバイダ構成体は好ましくはディバイダ装置を有し、当該ディバイダ装置は、レーダ信号の周波数および帯域幅をさらなる信号処理のために第一の係数で減少させるために構成されている。マルチプライヤ構成体は好ましくはマルチプライヤ装置を有し、当該マルチプライヤ装置は、前記レーダ信号の周波数および帯域幅を、特にレーダターゲットエミュレータによる前記さらなる信号処理の後に、前記第一の係数で増大させるために構成されている。
【0012】
これは特に有利であるが、それはディバイダ装置がレーダ信号を、位相ノイズによってレーダ信号の信号品質を劣化させるおそれがある局部発振器の信号成分との混合を行うことなく、さらなる信号処理のために、特にレーダターゲットエミュレータ内で処理するために、変換することができるからである。同様にこれは特に有利であるが、それはマルチプライヤ装置がレーダ信号を、前記さらなる信号処理の後に、特にレーダターゲットエミュレータ内での処理の後に、局部発振器の信号成分との混合を行うことなく、特にレーダセンサに伝送するために変換することができるからである。
【0013】
このときディバイダ構成体内部もしくはマルチプライヤ構成体内部で、好ましくは周波数も帯域幅も実質的に同時に、すなわちレーダ信号において実施される単独の信号処理の過程で、第一の係数で減少もしくは増大させられる。このときディバイダ構成体内でディバイダ装置により、レーダ信号の帯域幅を減少させることは、レーダ信号もしくは当該レーダ信号の信号スペクトルの圧縮を行わせ、当該圧縮によりレーダ信号は、情報を失うことなく圧縮され得る。その結果、例えば4GHzの大きな帯域幅を備えるレーダ信号は、比較的小さな帯域幅を備えるレーダターゲットエミュレータによっても、特にデジタル式に処理されるように、圧縮することができる。
【0014】
ディバイダ装置を用いて周波数と、特に帯域幅とを減少させること、および同様にマルチプライヤ装置を用いて周波数と、特に帯域幅とを増大させることは、本発明によれば好ましくは実質的にアナログ式に、あるいは少なくとも部分的にアナログ式に実施される。ディバイダ装置および/またはマルチプライヤ装置はこの目的のために有利には、それぞれアナログ回路を有するか、あるいはアナログ回路によって形成される。これにより信号はデジタル処理により、例えば離散サンプリングにより生じさせられるアーチファクト、あるいは少なくとも情報損失が生じることなく、圧縮もしくは解凍することができる。
【0015】
本発明は全体として、レーダターゲットエミュレーションを改善させ、特に広帯域のレーダ信号を実質的に品質損失なしに、あるいは少なくとも品質損失が低減された状態で、レーダターゲットエミュレータ内で処理するために圧縮させる。
【0016】
従来技術から知られている装置で、レーダ信号の周波数および帯域幅を、特にさらなる信号処理のために同じように、第一の係数で減少させるためのディバイダ装置を備えるディバイダ構成体を開示するものはない。さらにまた、従来技術から知られている装置で、マルチプライヤ構成体内にマルチプライヤ装置を備え、当該マルチプライヤ装置は、特にレーダターゲットエミュレータ内でさらなる処理がなされたレーダ信号であって、当該レーダ信号の周波数および帯域幅が以前に第一の係数で減少させられているレーダ信号を、特に同じように再び第一の係数で増大させることを開示するものはない。
【0017】
本発明による「テストスタンド」とは特に一つの構成体であって、当該構成体により、レーダセンサから送信されたレーダ信号が受信可能であるとともに修正可能であり、それにより修正されたレーダ信号はテストシナリオに関する情報、すなわち特にエミュレートされた対象物の位置および距離に関する情報を得、場合によりこのように修正された状態で再びレーダセンサに供給することができる構成体である。テストシナリオに関する情報は例えば、修正されたレーダ信号の振幅および/または位相に含まれている。したがってテストスタンドは例えば、車両の運転者支援システムをテストするために用いることができ、運転者支援システムに接続されている車両のレーダセンサによりレーダ信号がテストスタンドに供給され、修正され、修正されたレーダ信号として、レーダセンサに戻される。
【0018】
本発明による「ディバイダ構成体」とは特に、少なくとも一つのアナログ式および/またはデジタル式に実施された信号処理構成要素、特にディバイダ装置の構成体である。当該少なくとも一つの信号処理構成要素を用いて、特にレーダセンサの動作周波数領域内の入力周波数と、入力帯域幅とを備えてディバイダ構成体に供給される入力信号は、動作周波数と動作帯域幅とを備える動作信号に変換することができ、特にレーダターゲットエミュレータに出力することができる。このとき動作周波数は入力周波数に対して一つの係数で減少させられており、動作帯域幅は入力帯域幅に対して、同一または一つの他の係数で減少させられている。
【0019】
本発明による「マルチプライヤ構成体」は特に、少なくとも一つのアナログ式および/またはデジタル式に実施された信号処理構成要素、特にマルチプライヤ装置の構成体である。当該少なくとも一つの信号処理構成要素を用いて、マルチプライヤ構成体に供給される動作信号であって、特にレーダターゲットエミュレータにより修正され、場合により修正された動作周波数と、場合により修正された動作帯域幅とを備える動作信号は、出力周波数と出力帯域幅とを備える出力信号に変換することができ、特にレーダセンサに伝送することができる。このとき出力周波数は、場合により修正された動作周波数に対して一つの係数で増大させられており、出力帯域幅は、場合により修正された動作帯域幅に対して、同一または一つの他の係数で増大させられている。
【0020】
本発明による「ディバイダ装置」とは特に、当該ディバイダ装置に供給されるレーダ信号において、周波数空間内で、特に逆たたみ込みされた二つの同一のレーダ信号への逆たたみ込み(デコンボルーション)を実施するために構成されている。これは数学的には、時間領域内でレーダ信号の根を求めること、特に二乗根を求めることに相当する。このとき好ましくは、レーダ信号の周波数はより小さな周波数へと移行し、レーダ信号の帯域幅は減少する。
【0021】
本発明による「マルチプライヤ装置」とは特に、当該マルチプライヤ装置に供給されるレーダ信号において、周波数空間内で、特に自身とのたたみ込みを実施するために構成されている。これは数学的には、時間領域内でレーダ信号を乗算すること、特にレーダ信号を二乗することに相当する。したがってマルチプライヤ装置は「乗算器」とも称される。このとき好ましくは、レーダ信号の周波数はより高い周波数へと移行し、レーダ信号の帯域幅は増大する。
【0022】
一つの好適な実施の形態においてディバイダ装置は、少なくとも一つの特に再生式の周波数ディバイダを有し、当該周波数ディバイダは好ましくは電子的な、少なくとも部分的にアナログ式の回路として実施され、さらに好ましくは当該周波数ディバイダに供給されているレーダ信号の周波数を、特に第一の係数に相当する所定の、好ましくは整数の、または有理数の分割比率で分割するために構成されている。特に再生式の周波数ディバイダは場合により、ミラー周波数ディバイダとも称され、好適なやり方で、周波数ディバイダに供給されている入力信号を、ミキサー構成要素を用いて、場合により増幅されたミキサー構成要素のフィードバック信号と混合するために構成されている。
【0023】
このとき周波数ディバイダによって分割されたレーダ信号の帯域幅は、周波数と同様に好ましくは所定の、好ましくは整数の、または有理数の分割比率で分割され、当該分割比率は特に、第一の係数に相当する。
【0024】
このとき周波数ディバイダに供給されているレーダ信号の周波数と帯域幅の分割は、好ましくは周波数空間内で実施され、それは時間もしくは信号空間内で根数を求めることに相当する。
【0025】
一つのさらなる好適な実施の形態においてディバイダ構成体はさらに、ディバイダモジュールを有し、当該ディバイダモジュールはレーダ信号、特にディバイダ構成体に供給されている入力信号、または少なくとも一つのディバイダ装置により出力されるレーダ信号の周波数を、さらなる信号処理のために、特に少なくとも一つのディバイダ装置に、もしくはレーダターゲットエミュレータに供給するために、第二の係数で減少させるために構成されている。このときマルチプライヤ構成体は好ましくは、マルチプライヤモジュールを有し、当該マルチプライヤモジュールはレーダ信号の周波数を、特にレーダターゲットエミュレータにより出力され、場合により修正された動作信号のさらなる信号処理の後に、特に少なくとも一つのマルチプライヤ装置に供給するために、あるいはレーダセンサに伝送するために、第二の係数で増大させるために構成されている。
【0026】
これによりレーダ信号、特にディバイダ構成体に供給されている入力信号の周波数は、一つの領域内に、特に一つの所定の周波数限界値の下まで移動させることができ、当該領域内で少なくとも一つのディバイダ装置はレーダ信号を処理すること、特に当該レーダ信号の周波数および帯域幅を分割することができる。このときレーダ信号の周波数は好ましくは、25GHzより小さく、好適に15GHzより小さく、特に10GHzより小さく低減される。
【0027】
これによりさらに、レーダ信号、好ましくは少なくとも一つのマルチプライヤ装置により処理され、場合により修正された動作信号の周波数は、元々ディバイダ構成体に供給された入力信号の周波数に適合させることができ、それによりレーダセンサに対して、マルチプライヤ構成体の出力信号は実質的にレーダセンサの動作周波数領域内で伝送することができる。
【0028】
本発明による信号処理構成要素、例えばレーダセンサ、ターゲットエミュレータ、ディバイダ装置および/またはマルチプライヤ装置の「動作周波数領域」とは特に、周波数領域であって、当該周波数領域内で信号処理構成要素が、当該信号処理構成要素に供給されている信号もしくは当該信号処理構成要素により受信される信号を確実かつ正確に、特にエラーおよび/またはアーチファクトなしに処理できる周波数領域である。言い換えれば信号処理構成要素の動作周波数領域は周波数領域であって、当該周波数領域内で信号処理構成要素が動作するために設けられている周波数領域である。
【0029】
本発明による信号処理構成要素、例えばレーダセンサ、レーダターゲットエミュレータ、ディバイダ装置および/またはマルチプライヤ装置の「帯域幅動作領域」とは特に、帯域幅領域であって、当該帯域幅領域内で信号処理構成要素が、当該信号処理構成要素に供給されている信号もしくは当該信号処理構成要素により受信される信号を確実かつ正確に、特にエラーおよび/またはアーチファクトなしに処理できる帯域幅領域である。言い換えれば信号処理構成要素の帯域幅動作領域は帯域幅領域であって、当該帯域幅領域内で信号処理構成要素が動作するために設けられている帯域幅領域である。
【0030】
一つのさらなる好適な実施の形態においてディバイダモジュールおよび/またはマルチプライヤモジュールは、変換周波数を備える変換信号を生じさせるためのオシレータ構成要素と、変換信号をディバイダモジュールもしくはマルチプライヤモジュールに供給されたレーダ信号と混合するためのミキサー構成要素とを有する。変換信号をレーダ信号と混合することにより、レーダ信号、特にディバイダ構成体に供給される入力信号および/または少なくとも一つのマルチプライヤ装置により処理され、場合により修正された動作信号の周波数を、確実かつ正確に、特にディバイダ装置もしくはレーダセンサの動作周波数領域に適合可能に、第二の係数で減少もしくは増大させることが可能となる。
【0031】
一つのさらなる好適な実施の形態において第一の係数は、1から10の範囲内にあり、好ましくは1.5から6の範囲内にあり、特に2から4の範囲内にある。これにより、60GHzを上回る動作周波数領域と、10MHzと20GHzの間、好ましくは100MHzと10GHzの間、特に250MHzと5GHzの間にある帯域幅動作領域とを有するレーダセンサにより送信されたレーダ信号であって、好ましくは入力信号として相応の周波数および帯域幅でディバイダ構成体に供給されるレーダ信号は、確実に当該レーダ信号に対して低減された周波数もしくは帯域幅を備える動作信号としてレーダターゲットエミュレータによって処理することができ、もしくは続いてレーダセンサに対して、当該レーダセンサの動作周波数領域内の周波数で、かつ当該レーダセンサの帯域幅動作領域内の帯域幅で伝送することができる。
【0032】
本発明の第二の態様は、レーダ信号を処理するためのテストスタンドに関し、当該テストスタンドは、本発明の第一の態様によるレーダ信号を変換するための装置と、レーダターゲットエミュレータとを有し、当該レーダターゲットエミュレータは、ディバイダ構成体およびマルチプライヤ構成体と接続されており、すなわち信号伝送式に結合されており、ディバイダ構成体により供給されるレーダ信号であって、当該レーダ信号の周波数および帯域幅がディバイダ構成体を用いて少なくとも第一の係数で減少させられているレーダ信号を処理するため、特にドップラーシフトを供給するため、時間的に遅延させるため、および/または変調させるために構成されており、それにより相応に処理されたレーダ信号は少なくとも一つのエミュレートされた対象物を特徴づける。
【0033】
これは特に有利であるが、それは本発明に係るレーダ信号を変換するための装置と、下流に接続されたレーダターゲットエミュレータとからなる組み合わせにより、レーダ信号がレーダターゲットエミュレータにより正確かつ確実に処理されるからであり、当該レーダ信号は空間的および時間的に高解像度を有するレーダセンサにより、例えば60GHzを上回る高い周波数で、かつ例えば250MHzを上回る大きな帯域幅で送信されるものであり、しかもこのように高い周波数およびこのように大きな帯域幅は従来のレーダターゲットエミュレータによっては処理できないか、あるいは不十分にしか処理できない。したがって上記の組み合わせからなるテストスタンドは、従来のレーダターゲットエミュレータであって、技術的に単純に設計され、好適な電子構成要素が取り付けられているレーダターゲットエミュレータを、特殊および/または特に高性能な、特に通常でない周波数および/または帯域幅領域内で動作するレーダセンサと組み合わせて用いることを可能にする。言い換えれば本発明に係るテストスタンドは、ディバイダ構成体およびマルチプライヤ構成体、もしくはそれらに含まれる信号処理構成要素、特にディバイダ装置およびマルチプライヤ装置、および/またはディバイダモジュールおよびマルチプライヤモジュールをわずかに適合させればすでに、異なる動作周波数領域および/または帯域幅動作領域を備え、異なる車両内で用いられる異なるレーダシステムに適合させることができる。
【0034】
一つのさらなる好適な実施の形態においてレーダターゲットエミュレータは、ディバイダ構成体により供給されるレーダ信号であって、当該レーダ信号の周波数が10GHzより小さく、好ましくは5GHzより小さく、特に2.5GHzより小さく、当該レーダ信号の帯域幅が4GHzより小さく、好ましくは2GHzより小さく、特に1GHzより小さいレーダ信号を処理するために構成されている。言い換えればレーダターゲットエミュレータは好ましくは、10GHzより小さい動作周波数領域と、2GHzより小さい動作帯域幅領域とを有する。これによりレーダ信号、特に動作信号の処理を確実に実施することができる。
【0035】
本発明の第三の態様は、レーダターゲットエミュレータを備えるテストスタンドにおいて、さらなる処理を行うためにレーダ信号を変換するための方法に関し、レーダ信号の周波数および帯域幅はさらなる信号処理のために第一の係数で減少させられ、レーダ信号の周波数および帯域幅は、前記さらなる信号処理の後に、前記第一の係数で増大させられる。
【0036】
本発明の第一の態様と、当該第一の態様の有利な構成に関して説明された特徴および有利点は、本発明の第二の態様および第三の態様と、それらの有利な構成にも当てはまり、その逆も成り立つ。
【0037】
図に表示されている限定的でない実施の形態に基づき、以下において本発明をより詳しく説明する。図において少なくとも部分的に概略的に示すのは以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一つの好適な実施の形態によるレーダ信号を変換するための装置の回路図を示す。
図2】本発明の一つの好適な実施の形態によるテストスタンドの回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1には、本発明の一つの好適な実施の形態において、特にレーダターゲットエミュレータを備えるテストスタンドにおいて、さらなる信号処理を行うためにレーダ信号を変換するための装置1の回路図が表示されている。装置1はディバイダ構成体2とマルチプライヤ構成体3とを有し、当該ディバイダ構成体およびマルチプライヤ構成体において好ましくはそれぞれ、複数の信号処理構成要素4,4‘,5,5‘が信号の流れ方向において前後に設けられるとともに互いに接続され、すなわち信号伝送式に互いに結合されている。このときディバイダ構成体2は好適なやり方で、ディバイダ構成体2に供給され、したがって入力信号Eとも称されるレーダ信号を受信し、入力信号Eの周波数および帯域幅に対して低減された周波数もしくは帯域幅を備えるレーダ信号、特に動作信号Wとして再び出力するために構成されている。このように出力された動作信号Wはその後、点線により暗示されているさらなる信号処理の後に、処理された、もしくは修正された動作信号W‘としてマルチプライヤ構成体3により受信され、修正された動作信号W‘の周波数および帯域幅に対して増大させられた周波数および帯域幅を備えるレーダ信号、特に出力信号Aとして再び出力することができる。
【0040】
このとき好ましくはディバイダ装置4がディバイダ構成体2内部に設けられており、当該ディバイダ装置は、ディバイダ装置4に供給されているレーダ信号、特に中間信号Zを動作信号Wに変換し、それにより動作信号Wの周波数および帯域幅は、ディバイダ装置4に供給されている中間信号Zの周波数もしくは帯域幅に対してそれぞれ、第一の係数で減少させられている。言い換えればディバイダ装置4は好適なやり方で、ディバイダ装置4に中間信号Zとして供給されているレーダ信号の帯域幅を圧縮するために構成されており、それによりディバイダ装置4により動作信号Wとして出力されるレーダ信号は、入力信号Eの帯域幅に対して第一の係数で減少させられた帯域幅を有する。
【0041】
このときディバイダ装置4は、再生式の周波数ディバイダとして形成されていてよく、当該周波数ディバイダは、周波数ディバイダに供給されている中間信号Zをフィードバック信号Rと混合するためのミキサー構成要素4aと、ミキサー構成要素4aにより出力される混合された信号から一つまたは複数の周波数領域をフィルタ処理するためのフィルタ構成要素4b、特にローパスフィルタと、フィルタ構成要素4bにより出力されるフィルタ処理された信号を増幅するための増幅構成要素4cとを有する。周波数ディバイダの動作中、ミキサー構成要素4aにより出力される信号の一部は、特にフィルタ構成要素4bおよび増幅構成要素4cを通過した後、再びフィードバック信号Rとしてミキサー構成要素4aに供給される。これにより周波数成分、特に整数の周波数フラクションに目標を定めて分離し、増幅することができ、それにより周波数ディバイダの動作中に周波数ディバイダにより出力される動作信号Wは、周波数ディバイダに供給されている中間信号Zに対して、第一の係数で減少させられた周波数と、第一の係数で減少させられた帯域幅とを有する。
【0042】
ディバイダ装置4が上記の好適なやり方でアナログ回路として実施されている場合、中間信号Zの帯域幅を圧縮する際、情報損失は生じない。
【0043】
ディバイダ装置4のフィルタ構成要素4bは通常、選択された周波数領域内でのみ確実に動作し、例えば当該フィルタ構成要素に供給される信号の、所定の周波数閾値を上回る、例えば10GHzを上回る全ての周波数成分をフィルタ処理するので、入力信号Eの周波数を、フィルタ構成要素4bの選択された周波数領域内にある周波数に変換することが必要になり得る。言い換えれば入力信号Eは場合により、ディバイダ装置4内で処理するために準備しなければならず、特に周波数が低減された中間信号Zに変換しなければならない。
【0044】
この目的のために図に示す例では、ディバイダモジュール5がディバイダ構成体2内部に設けられており、当該ディバイダモジュールは入力信号Eの周波数を第二の係数で減少させるために構成されており、それにより結果として生じるディバイダモジュール5により出力されるレーダ信号であって、中間信号Zとも称されるレーダ信号の周波数はディバイダ装置4の動作周波数領域内にあり、すなわち中間信号Zはディバイダ装置4により、確実かつ正確に処理することができる。
【0045】
ディバイダモジュール5は好ましくは、ディバイダモジュール5に供給されている入力信号Eを変換信号Kと混合するためのミキサー構成要素5aと、変換信号Kを生じさせるためのオシレータ構成要素5bとを有する。ディバイダモジュール5は場合により、フィルタ構成要素および増幅構成要素(図示せず)を有してもよく、当該フィルタ構成要素および増幅構成要素を介して、ミキサー構成要素5aにより出力される混合された信号を後処理することができ、それにより特に、中間信号Zの周波数は入力信号Eの周波数に対して第二の係数で減少させられている。入力信号Eを変換信号Kと混合する際、入力信号Eの周波数のみが影響を受け、入力信号の帯域幅は影響を受けない。
【0046】
したがって全体としてディバイダ構成体2内部で、入力信号Eとして供給されるレーダ信号の周波数は、第一の係数と第二の係数との乗算から生じる一つの係数で減少させることができる。このように実施される周波数変化は、「周波数変換」と称することもできる。
【0047】
このときディバイダ構成体2内部で実施される帯域幅変化であって、レーダ信号の帯域幅が第二の係数で減少させられる帯域幅変化は、「帯域幅圧縮」と称することもできる。
【0048】
マルチプライヤ構成体3は構成においてディバイダ構成体2に似ている。特にマルチプライヤ構成体3は、それぞれがディバイダ構成体2の信号処理構成要素4,5に対応するが反対の動作を行う信号処理構成要素4‘,5‘を有してよい。ディバイダ装置4の代わりにマルチプライヤ構成体3は例えばマルチプライヤ装置4‘を有してよく、当該マルチプライヤ装置は好ましくは、当該マルチプライヤ装置4‘に供給されている修正された動作信号W‘をさらなる中間信号Z‘に変換するために構成されており、当該さらなる中間信号の周波数および帯域幅は、修正された動作信号W‘の周波数および帯域幅に対して第一の係数で増大されている。加えてマルチプライヤ構成体3はディバイダ構成要素5の代わりに、好ましくはマルチプライヤ構成要素5‘を有し、当該マルチプライヤ構成要素は好適なやり方で、当該マルチプライヤ構成要素5‘に供給されているさらなる中間信号Z‘を出力信号Aに変換するために構成されており、当該出力信号の周波数は、さらなる中間信号Z‘の周波数に対して第二の係数で増大されている。
【0049】
マルチプライヤ装置4‘はこのために好ましくは、乗算器、特にアナログ式乗算器として形成されている。
【0050】
ディバイダ構成要素5に対応してマルチプライヤ構成要素5‘は好適なやり方で、さらなる中間信号Z‘を変換信号Kと混合するためのミキサー構成要素5aを有し、当該変換信号はディバイダ構成要素5のオシレータ構成要素5bにより生じさせられる。しかしながらさらなる中間信号Z‘を変換信号Kと混合する際、さらなる中間信号Z‘の周波数は、第二の係数で増大されて出力信号Aの周波数になる。
【0051】
ディバイダ構成体2およびマルチプライヤ構成体3内の信号処理構成要素4,4‘,5,5‘は好ましくは、出力信号Aの周波数および帯域幅が、実質的に入力信号Eの周波数および帯域幅と一致するように互いに調整されている。特にマルチプライヤ構成体3、特にマルチプライヤ装置4‘およびマルチプライヤモジュール5‘は、ディバイダ構成体2内部で入力信号Eとして供給されるレーダ信号において実施される周波数変化と、供給されるレーダ信号において実施される帯域幅変化とを、例えばレーダターゲットエミュレータにおけるさらなる信号処理の後に、特に動作信号W‘として供給される、処理もしくは修正されたレーダ信号において実質的に再び元に戻す、もしくは補償するために構成されていてよい。
【0052】
図に示す例では、それぞれ一つのディバイダ装置4、一つのマルチプライヤ装置4‘、一つのディバイダモジュール5、および一つのマルチプライヤモジュール5‘が示されるとともに説明されているが、複数のこれらの信号処理構成要素4,4‘,5,5‘をディバイダ構成体2もしくはマルチプライヤ構成体3内に設けることは基本的に可能である。これは例えば、個々のディバイダモジュール5が、入力信号Eの周波数をディバイダ装置4によって処理するための中間信号Zの周波数に減少させるために十分でない場合、および/または個々のディバイダ装置4が入力信号Eの帯域幅を、例えばレーダターゲットエミュレータによるさらなる信号処理を行うための動作信号Wの帯域幅に減少させるために十分でない場合は、特に有利である。複数の信号処理構成要素4,4‘,5,5‘を組み合わせることにより、装置1の機能性は、レーダターゲットエミュレータもしくは個々の信号処理構成要素4,4‘,5,5‘の要求に適合させることができる。
【0053】
このときレーダ信号がどのような順序で信号処理構成要素4,4‘,5,5‘によって処理されるかは、信号処理構成要素4,4‘,5,5‘に供給されている信号の周波数および/または帯域幅が、対応する構成要素の周波数もしくは帯域幅動作領域内にある限りは、問題にならない。
【0054】
特に有利には、一つまたは複数のディバイダモジュール5と、一つまたは複数のマルチプライヤモジュール5の形成を、それぞれのミキサー構成要素5aが、当該ミキサー構成要素に供給されているレーダ信号を、一つまたは複数の共通のオシレータ構成要素5bの変換信号Kと混合するように行うことも可能である。これにより特に、それぞれのディバイダモジュール5であって、当該ディバイダモジュール内で、供給されているレーダ信号の周波数が、オシレータ構成要素5bにより供給される変換信号Kに基づいて、一つの特に第二の係数で減少させられているそれぞれのディバイダモジュールに対して、マルチプライヤモジュール5が設けられていてよく、当該マルチプライヤモジュール内で、供給されているレーダ信号の周波数は、同一のオシレータ構成要素5bにより供給される同一の変換信号Kに基づいて、同一の、特に第二の係数で増大させられる。言い換えれば少なくとも一つのディバイダモジュール5と、少なくとも一つのマルチプライヤモジュール5‘とは、オシレータ構成要素5bを共有するために構成されていてよい。これによりマルチプライヤ構成体3内で処理されたレーダ信号の周波数は確実に、当該周波数が以前にディバイダ構成体2内で処理されたレーダ信号において低減されたのと同じ程度で増大させることができる。
【0055】
図2は本発明の一つの好適な実施の形態による、レーダターゲットエミュレータ20内でさらなる信号処理を行うためにレーダ信号Sを変換するための装置1を備えるテストスタンド10の回路図を示す。テストスタンド10は、例えば車両内に取り付けられたレーダセンサRSから送信されるレーダ信号Sを受信するための受信装置RXと、処理されたレーダ信号S‘をレーダセンサRSに戻すように送信するための送信装置TXとを有する。このときレーダセンサRSは動作周波数領域と、帯域幅動作領域とを有し、レーダセンサはこれらの領域内でレーダ信号S,S‘を送信もしくは受信することができる。
【0056】
レーダターゲットエミュレータ20は好ましくは、テストシナリオをエミュレートする、すなわち一つまたは複数のレーダターゲット、特に交通状況をエミュレートするために構成されており、レーダターゲットエミュレータに供給されている動作信号Wを処理し、特にドップラーシフトを供給し、時間的に遅延させ、および/または変調させ、それにより処理されてレーダターゲットエミュレータ20により出力される動作信号W‘であって、修正された動作信号と称されることもある動作信号は、エミュレートされたテストシナリオに関する情報を含む。このときレーダターゲットエミュレータ20は、レーダセンサRSの動作周波数領域および帯域幅動作領域と異なる動作周波数領域内もしくは帯域幅動作領域内で動作し、それにより受信装置RXにより受信されるレーダ信号Sを動作信号Wに変換することが必要である。
【0057】
この目的のために、受信装置RXとレーダターゲットエミュレータ20に対して装置1が介装されており、ディバイダ構成体2を有し、当該ディバイダ構成体を用いて、入力信号Eとしてディバイダ構成体2に供給されたレーダ信号Sを、動作信号Wに変換することができる。図1との関連で説明されたように、このとき周波数変換と帯域幅圧縮が実施され、当該周波数変換と帯域幅圧縮において入力信号Eの周波数は、第一の係数と第二の係数との乗算から生じる一つの係数で減少させられ、もしくは入力信号Eの帯域幅は第一の係数で減少させられる。
【0058】
レーダターゲットエミュレータ20により処理され、出力される動作信号W‘を再びレーダセンサRSに伝送できるためにはこれに応じて、処理され、出力された動作信号W‘を出力信号Aへと逆変換することが必要である。レーダターゲットエミュレータ20と送信装置TXに対して介装されている装置1のマルチプライヤ構成体3を用いて、処理され、出力された動作信号W‘の、周波数変換と帯域幅圧縮の過程において低減された周波数および帯域幅は、再び増大させることができ、それにより動作信号W‘の周波数および帯域幅は実質的に、元々レーダセンサRSから送信されたレーダ信号Sの周波数もしくは帯域幅に相当する。その後、出力信号Aは送信装置TXにより、処理されたレーダ信号S‘としてレーダセンサRSに戻すように送信することができ、当該レーダ信号に含まれるエミュレートされたテストシナリオに関する情報は、例えば運転者支援システムもしくはレーダセンサRSを有する車両の車両機能により、当該運転者支援システムもしくは車両機能をテストするために用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 レーダ信号を変換するための装置
2 ディバイダ構成体
3 マルチプライヤ構成体
4 ディバイダ装置
4a ミキサー構成要素
4b フィルタ構成要素
4c 増幅構成要素
4‘ マルチプライヤ装置
5 ディバイダモジュール
5a ミキサー構成要素
5b オシレータ構成要素
5‘ マルチプライヤモジュール
10 テストスタンド
20 レーダターゲットエミュレータ
E 入力信号
A 出力信号
Z 中間信号
Z‘ さらなる中間信号
W 動作信号
W‘ 処理された動作信号
S レーダ信号
S‘ 処理されたレーダ信号
K 変換信号
RS レーダセンサ
RX 受信ユニット
TX 送信ユニット
図1
図2