IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カルビスタ・ファーマシューティカルズ・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-血漿カリクレイン阻害剤を含む剤形 図1a
  • 特許-血漿カリクレイン阻害剤を含む剤形 図1b
  • 特許-血漿カリクレイン阻害剤を含む剤形 図1c
  • 特許-血漿カリクレイン阻害剤を含む剤形 図2
  • 特許-血漿カリクレイン阻害剤を含む剤形 図3
  • 特許-血漿カリクレイン阻害剤を含む剤形 図4
  • 特許-血漿カリクレイン阻害剤を含む剤形 図5
  • 特許-血漿カリクレイン阻害剤を含む剤形 図6a
  • 特許-血漿カリクレイン阻害剤を含む剤形 図6b
  • 特許-血漿カリクレイン阻害剤を含む剤形 図6c
  • 特許-血漿カリクレイン阻害剤を含む剤形 図6d
  • 特許-血漿カリクレイン阻害剤を含む剤形 図6e
  • 特許-血漿カリクレイン阻害剤を含む剤形 図7
  • 特許-血漿カリクレイン阻害剤を含む剤形 図8
  • 特許-血漿カリクレイン阻害剤を含む剤形 図9
  • 特許-血漿カリクレイン阻害剤を含む剤形 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】血漿カリクレイン阻害剤を含む剤形
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/444 20060101AFI20220524BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220524BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 27/10 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 7/10 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 11/16 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20220524BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
A61K31/444
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/42
A61K47/36
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/12
A61K47/20
A61K47/24
A61K47/18
A61K9/48
A61K9/20
A61K9/28
A61K45/00
A61P27/10
A61P27/02
A61P9/10
A61P3/10
A61P7/10
A61P1/18
A61P9/00
A61P13/12
A61P25/00
A61P1/04
A61P19/02
A61P29/00
A61P31/04
A61P35/00
A61P11/16
A61P7/02
A61P7/04
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020526986
(86)(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 GB2018053443
(87)【国際公開番号】W WO2019106361
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-11-16
(31)【優先権主張番号】62/592,242
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】1721515.3
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515004935
【氏名又は名称】カルビスタ・ファーマシューティカルズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コレット,ジョン・ハーマン
(72)【発明者】
【氏名】クック,ゲイリー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ファーラー,ジェイミー・ジョーセフ
(72)【発明者】
【氏名】フロッドシャム,マイケル・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ロー,マイケル・ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】トッド,リチャード・サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ワード,ロバート・ニール
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特許第6653702(JP,B2)
【文献】特許第6995101(JP,B2)
【文献】特表2013-532713(JP,A)
【文献】特表2009-545611(JP,A)
【文献】国際公開第2013/111108(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/108679(WO,A1)
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2008年,Vol.18, No.14,pp.3865-3869
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式A:
【化1】
の化合物の固体形態を含む経口固体剤形であって、前記式Aの化合物の固体形態は、少なくとも以下の約11.2、12.5、13.2、14.5、及び16.3における特性X線粉末回折ピーク(CuKα線、°2θで表される)を示し、前記「約」という用語が、°2θの測定値に、±0.3(°2θにおいて表された)の不確実性が存在することを意味する、経口固体剤形。
【請求項2】
前記剤形中の前記式Aの化合物の固体形態の量が、0.1mg~1,000mgであり、及び/又は
前記式Aの化合物の固体形態が、前記経口固体剤形の総重量に対して1wt%~70wt%の量で存在する、請求項1に記載の経口固体剤形。
【請求項3】
以下をさらに含む、請求項1又は2に記載の経口固体剤形:
(i)結合剤、及び/又は
(ii)希釈剤、及び/又は
(iii)崩壊剤、及び/又は
(iv)滑沢剤及び/又は流動促進剤、及び/又は
(v)酸、及び/又は
(vi)界面活性剤、及び/又は
(vii)コーティング、及び/又は
(viii)1つ以上のさらなる有効成分。
【請求項4】
(i)前記結合剤が、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、コポビドン、ゼラチン、アラビアゴム、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、デンプン、アルファ化デンプン、寒天、トラガント及びアルギン酸ナトリウムのうちの1以上を含み、及び/又は
前記結合剤が、前記経口固体剤形の総重量に対して、0.1wt%~30wt%の量で存在し、及び/又は
前記式Aの化合物と前記結合剤との重量比が、1:0.01~1:1であり、及び/又は
(ii)前記希釈剤が、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム二塩基性、リン酸カルシウム三塩基性、硫酸カルシウム、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストレート、デキストリン、デキストロース賦形剤、フルクトース、カオリン、ラクチトール、ラクトース、ラクトース一水和物、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、デンプン、アルファ化デンプン及びスクロースのうちの1つ以上を含み、及び/又は
前記希釈剤が、前記経口固体剤形の総重量に対して1wt%~99wt%の量で存在し、及び/又は
前記式Aの化合物と前記希釈剤との重量比が、1:0.1~1:500であり、及び/又は
(v)前記酸が、マレイン酸、酒石酸、コハク酸及びクエン酸のうちの1つ以上を含み、及び/又は
前記酸が、経口固体剤形の総重量に対して1wt%~40wt%の量で存在し、及び/又は
前記式Aの化合物と前記酸との重量比が、1:0.1~1:2であり、及び/又は
(vi)前記界面活性剤が、ラウリル硫酸ナトリウム及び/又はTween80を含み、及び/又は
前記界面活性剤が、前記経口固体剤形の総重量に対して1wt%~20wt%の量で存在し、及び/又は
前記式Aの化合物と前記界面活性剤との重量比が、1:0.01~1:1であり、及び/又は
(vii)前記コーティングが、腸溶性コーティングである、
請求項3に記載の経口固体剤形。
【請求項5】
以下をさらに含む、請求項1又は2に記載の経口固体剤形:
脂質賦形剤、及び/又は
コーティング、及び/又は
1つ以上のさらなる有効成分。
【請求項6】
前記脂質賦形剤が、スクロース脂肪酸エステル、リン脂質誘導体、ホスファチジル誘導体、グリコシルセラミド誘導体、脂肪酸誘導体、非イオン性界面活性剤、ビタミンEコフェリルスクシネートポリエチレングリコール(TPGS)誘導体、モノオレイン酸グリセリル、グリセリド誘導体及びこれらの混合物のうちの1つ以上を含み、及び/又は
前記脂質賦形剤が、前記経口固体剤形の総重量に対して10wt%~99wt%の量で存在し、及び/又は
前記式Aの化合物と前記脂質賦形剤との重量比が、1:0.1~1:100であり、及び/又は
前記コーティングが、腸溶性コーティングである、
請求項5に記載の経口固体剤形。
【請求項7】
前記スクロース脂肪酸エステルが、ステアリン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、ラウリン酸スクロース、ベヘン酸スクロース、オレイン酸スクロース、エルカ酸スクロース及びこれらの混合物のうちの1つ以上を含む、請求項6に記載の経口固体剤形。
【請求項8】
(i)前記経口固体剤形が、カプセルの形態であり、又は
(ii)前記経口固体剤形が、錠剤の形態である、請求項1~7のいずれか一項に記載の経口固体剤形。
【請求項9】
(i)前記カプセルの外殻が、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はデンプンから作られている、請求項8に記載の経口固体剤形。
【請求項10】
式A:
【化2】
の化合物を含む経口固体剤形を調製する方法であって、
(a)少なくとも以下の約11.2、12.5、13.2、14.5、及び16.3における特性X線粉末回折ピーク(CuKα線、°2θで表される)を示す前記式Aの化合物の固体形態を、結合剤を含む顆粒化液と混合するステップ;
(b)ステップ(a)の分散液を顆粒化させて、顆粒を形成するステップ;
(c)前記顆粒を乾燥させるステップ;
;及び
(e)前記顆粒を、固体経口剤形に圧縮又は充填するステップ
を含み、前記「約」という用語が、°2θの測定値に、±0.3(°2θにおいて表された)の不確実性が存在することを意味する、方法。
【請求項11】
(a)少なくとも以下の約11.2、12.5、13.2、14.5、及び16.3における特性X線粉末回折ピーク(CuKα線、°2θで表される)を示す前記式Aの化合物の固体形態を、結合剤と、希釈剤、崩壊剤及び/又は界面活性剤とを含む顆粒化液と混合するステップ;及び/又は
(d)ステップ(b)又は(c)の前記顆粒を、希釈剤、酸、界面活性剤及び/又は潤滑剤とブレンドして、ブレンドされた顆粒を形成するステップ;及び/又は
(e)前記顆粒又は前記ブレンドされた顆粒を、固体経口剤形に圧縮又は充填するステップ
を含み、前記「約」という用語が、°2θの測定値に、±0.3(°2θにおいて表された)の不確実性が存在することを意味する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記顆粒化液が、水をさらに含み、及び/又は
ステップ(c)における乾燥させることが、45℃を超える温度において実施され、及び/又は
ステップ(e)において、前記顆粒又はブレンドされた顆粒が、錠剤の形態の固体経口剤形に圧縮される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(c)における乾燥させることが、55℃を超える温度において実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
式A:
【化3】
の化合物を含む経口固体剤形を調製する方法であって、
(a)少なくとも以下の約11.2、12.5、13.2、14.5、及び16.3における特性X線粉末回折ピーク(CuKα線、°2θで表される)を示す前記式Aの化合物の固体形態を、融解した脂質賦形剤中に分散させるステップ;
(b)前記融解した分散液をカプセルに充填するステップ
を含み、前記「約」という用語が、°2θの測定値に、±0.3(°2θにおいて表された)の不確実性が存在することを意味する、方法。
【請求項15】
前記脂質賦形剤が、TPGS又はGelucire(商標登録) 44/14であり、及び/又は
前記カプセルの外殻が、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はデンプンから作られている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記脂質賦形剤が、TPGSである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
式A:
【化4】
の化合物を含む経口固体剤形を調製する方法であって、少なくとも以下の約11.2、12.5、13.2、14.5、及び16.3における特性X線粉末回折ピーク(CuKα線、°2θで表される)を示す前記式Aの化合物の固体形態をカプセルに充填するステップを含み、前記「約」という用語が、°2θの測定値に、±0.3(°2θにおいて表された)の不確実性が存在することを意味する、方法。
【請求項18】
(i)前記式Aの化合物の固体形態が、以下に示されたX線粉末回折パターンと同じX線粉末回折パターンを有し、
【表1】
及び/又は
(ii)前記式Aの化合物の固体形態が、そのDSCサーモグラムにおいて151±3℃の吸熱ピークを示し、及び/又は
前記式Aの化合物の固体形態が、以下に示されたDSCサーモグラムと同じDSCサーモグラムを有する、
【表2】
請求項1~9のいずれか一項に記載の経口固体剤形。
【請求項19】
(i)前記式Aの化合物の固体形態が、以下に示されたX線粉末回折パターンと同じX線粉末回折パターンを有し、
【表3】
及び/又は
(ii)前記式Aの化合物の固体形態が、そのDSCサーモグラムにおいて151±3℃の吸熱ピークを示し、及び/又は
前記式Aの化合物の固体形態が、以下に示されたDSCサーモグラムと同じDSCサーモグラムを有する、
【表4】
請求項10~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
治療における使用のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の経口固体剤形。
【請求項21】
血漿カリクレインにより媒介される疾患又は状態の処置における使用のための、請求項1~9のいずれか一項に記載の経口固体剤形であって、
(i)前記血漿カリクレインにより媒介される疾患又は状態が、視力障害、糖尿病網膜症、糖尿病網膜症に伴う網膜血管透過性、糖尿病性黄斑浮腫、遺伝性血管性浮腫、網膜静脈閉塞症、糖尿病、膵炎、脳出血、腎症、心筋症、神経障害、炎症性腸疾患、関節炎、炎症、敗血症性ショック、低血圧症、がん、成人呼吸促迫症候群、播種性血管内凝固、心血管バイパス手術中の血液凝固及び外科術後の出血から選択され、又は
(ii)前記血漿カリクレインにより媒介される疾患又は状態が、糖尿病網膜症に伴う網膜血管透過性、糖尿病性黄斑浮腫及び遺伝性血管性浮腫から選択され、又は
(iii)前記血漿カリクレインにより媒介される疾患又は状態が、糖尿病網膜症に伴う網膜血管透過性及び糖尿病性黄斑浮腫から選択され、又は
(iv)前記血漿カリクレインにより媒介される疾患又は状態が、糖尿病性黄斑浮腫である、
経口固体剤形。
【請求項22】
前記血漿カリクレインにより媒介される疾患又は状態が、遺伝性血管性浮腫である、請求項21に記載の使用のための経口固体剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血漿カリクレイン阻害剤、特に式Aの化合物の固体形態(形態1)を含む経口固体剤形に関する。また、式Aの化合物の形態1を使用して、式Aの化合物を含む経口固体剤形を調製する方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
血漿カリクレインの阻害剤は、特に、糖尿病網膜症に伴う網膜血管透過性、糖尿病性黄斑浮腫及び遺伝性血管性浮腫の処置において、多数の治療的適用を有する。
【0003】
血漿カリクレインとは、キニンを、キニノーゲンから遊離させうる、トリプシン様セリンプロテアーゼである(K.D.Bhoolaら、「Kallikrein-Kinin Cascade」、「Encyclopedia of Respiratory Medicine」、483~493頁;J.W.Bryantら、「Human plasma kallikrein-kinin system:physiological and biochemical parameters」、Cardiovascular and haematological agents in medicinal chemistry、7、234~250頁、2009;K.D.Bhoolaら、Pharmacological Rev.、1992、44、1;及びD.J.Campbell、「Towards understanding the kallikrein-kinin system:insights from the measurement of kinin peptides」、Brazilian Journal of Medical and Biological Research 2000、33、665~677を参照されたい。)。血漿カリクレインは、内因性の血液凝固カスケードの不可欠のメンバーであるが、このカスケードにおけるその役割は、ブラジキニンの放出又は酵素による切断を伴わない。血漿プレカリクレインは、単一の遺伝子によりコードされ、肝臓内において合成される。血漿カリクレインは、高分子量キニノーゲンに結合したヘテロ二量体複合体として血漿中を循環する、不活性の血漿プレカリクレインとして、肝細胞により分泌されるが、これが活性化されて、活性の血漿カリクレインがもたらされる。キニンは、Gタンパク質共役受容体を介して作用する、炎症の強力なメディエーターであり、キニンアンタゴニスト(ブラジキニンアンタゴニストなど)は、多数の障害の処置のための潜在的な治療剤として、既に研究されている(F.Marceau及びD.Regoli、Nature Rev.、Drug Discovery、2004、3、845~852)。
【0004】
血漿カリクレインは、多数の炎症性障害において、役割を果たすと考えられる。主要な血漿カリクレインの阻害剤は、C1エステラーゼ阻害剤であるセルピンである。C1エステラーゼ阻害剤の遺伝性欠損を提示する患者は、顔面、手掌、咽頭、消化管及び生殖器の間欠的な腫脹を結果としてもたらす遺伝性血管性浮腫(HAE)に罹患する。急性エピソード中に形成される水疱は、高分子量のキニノーゲンを切断し、ブラジキニンを遊離させて血管透過性の増大をもたらす、高レベルの血漿カリクレインを含有する。大型のタンパク質である、血漿カリクレイン阻害剤による処置は、血管透過性の増大を引き起こすブラジキニンの放出を阻止することにより、HAEを、効果的に処置することが示されている(A.Lehmann、「Ecallantide(DX-88),a plasma kallikrein inhibitor for the treatment of hereditary angioedema and the prevention of blood loss in on-pump cardiothoracic surgery」、Expert Opin.Biol.Ther.、8、1187~99頁)。
【0005】
血漿カリクレイン-キニン系は、進行型糖尿病性黄斑浮腫を伴う患者において、異常に夥多である。近年、血漿カリクレインが、糖尿病性ラットにおいて、網膜血管機能不全に寄与することが公表されている(A.Clermontら、「Plasma kallikrein mediates retinal vascular dysfunction and induces retinal thickening in diabetic rats」、Diabetes、2011、60、1590~98頁)。さらに、血漿カリクレイン阻害剤であるASP-440の投与は、糖尿病性ラットにおける、網膜血管透過性の異常及び網膜血流の異常の両方を改善した。したがって、血漿カリクレイン阻害剤は、糖尿病網膜症に伴う網膜血管透過性及び糖尿病性黄斑浮腫を軽減する処置としての有用性を有するはずである。
【0006】
血漿カリクレインはまた、血液凝固においても役割を果たす。内因性の凝固カスケードは、第XII因子(FXII)により活性化されうる。FXIIが活性化される(FXIIaに)と、FXIIaは、第XI因子(FXI)の活性化を介して、フィブリンの形成を誘発し、この結果として、血液の凝固をもたらす。血漿カリクレインは、FXIIを、FXIIaに活性化させ、この結果として、内因性凝固経路の活性化をもたらすため、内因性の凝固カスケードにおいて、主要な構成要素である。さらに、FXIIaはまた、さらなる血漿プレカリクレインも活性化させる結果として、血漿カリクレインをもたらす。これは、正のフィードバックによる、血漿カリクレイン系及び内因性凝固経路の増幅を結果としてもたらす(Tanakaら(Thrombosis Research、2004、113、333~339);Birdら(Thrombosis and Haemostasis、2012、107、1141~50)。
【0007】
血液中のFXIIの、負に帯電した表面(心血管バイパス手術中に、血液が流過する人工肺の外部配管又は膜の表面など)との接触は、チモーゲンである、FXIIのコンフォメーション変化を誘導する結果として、少量の活性FXII(FXIIa)をもたらす。FXIIaの形成は、上記において記載された通り、血漿カリクレインの形成を誘発する結果として、血液の凝固をもたらす。FXIIの、FXIIaへの活性化はまた、多様な供給源の、負に帯電した表面(例えば、敗血症中の細菌、分解する細胞に由来するRNA)との接触により、体内においても生じ、この結果として、播種性血管内凝固をもたらす(Tanakaら(Thrombosis Research、2004、113、333~339))。
【0008】
したがって、血漿カリクレインの阻害は、上記において記載された血液凝固カスケードを阻害するので、播種性血管内凝固及び血液の凝固が所望されない心血管バイパス術時の血液凝固の処置において有用である。例えば、Katsuuraら(Thrombosis Research、1996、82、361~368)は、LPS誘導性の播種性血管内凝固のための、血漿カリクレイン阻害剤であるPKSI-527の投与が、血小板カウントの減少及びフィブリノーゲンレベルの低下のほか、播種性血管内凝固において生じることが通例である、FDPレベルの上昇も、著明に抑制することを示した。Birdら(Thrombosis and Haemostasis、2012、107、1141~50)は、血漿カリクレイン欠損マウスにおいて、凝固時間が延長され、血栓が著明に軽減されることを示した。Revenkoら(Blood、2011、118、5302~5311)は、マウスにおいて、アンチセンスオリゴヌクレオチド処置を使用する、血漿プレカリクレインレベルの低減が、抗血栓効果を結果としてもたらすことを示した。Tanakaら(Thrombosis Research 2004、113、333~339)は、血液を、DX-88(血漿カリクレイン阻害剤)と接触させることが、活性化凝固時間(ACT)の延長を結果としてもたらすことを示した。Lehmannら(Expert Opin.Biol.Ther.、2008、1187~99)は、エカランチド(血漿カリクレイン阻害剤)が、接触により活性化される誘導性凝固を遅延させることが見出されることを示した。Lehmannらは、エカランチドが、「血漿カリクレインを阻害することにより、凝固の内因性経路を阻害したため、インビトロ抗凝固剤効果を有した」と結論づける。
【0009】
血漿カリクレインはまた、血小板活性化の阻害においても役割を果たすので、出血の阻止においても役割を果たす。血小板の活性化は、血管への損傷後における、血小板プラグの形成及び迅速な出血の阻止をもたらす、止血における最早期のステップのうちの1つである。血管損傷部位において、露出したコラーゲンと、血小板との相互作用は、血小板の保持及び活性化並びに後続する出血の阻止に極めて重要である。
【0010】
活性化されると、血漿カリクレインは、コラーゲンに結合し、これにより、GPVI受容体により媒介される、コラーゲン媒介性の血小板の活性化に干渉する(Liuら(Nat Med.、2011、17、206~210))。上記において論じられた通り、血漿カリクレイン阻害剤は、血漿カリクレイン媒介性の因子XIIの活性化を阻害し、これにより、接触活性化系を介して、正のフィードバックによるカリクレイン系の増幅を低減することにより、血漿プレカリクレインの活性化を低減する。
【0011】
したがって、血漿カリクレインの阻害は、血漿カリクレインの、コラーゲンへの結合を低減し、これにより、出血の阻止における、血漿カリクレインの干渉を低減する。したがって、血漿カリクレイン阻害剤は、脳出血及び外科術後の出血を処置する処置において有用である。例えば、Liuら(Nat Med.、2011、17、206~210)は、低分子PK阻害剤であるASP-440の全身投与が、ラットにおける血腫の拡大を低減することを裏付けた。脳血腫は、脳内出血後に生じる可能性があり、血管損傷の結果としての、血管から周囲の脳組織への出血により引き起こされる。Liuらにより報告された、脳出血モデルにおける出血は、血管を損傷させる、脳実質における切開を伴う、手術介入により誘導された。これらのデータは、血漿カリクレインの阻害が、外科術後の出血及び血腫の量を低減することを裏付ける。Bjoerkqvistら(Thrombosis and Haemostasis、2013、110、399~ 407)は、アプロチニン(血漿カリクレインを含む、セリンプロテアーゼを阻害するタンパク質)を使用して、術後出血を減少させうることを裏付けた。
【0012】
それらの全てが血漿カリクレインと関連する脳出血、腎症、心筋症及び神経障害など、糖尿病の他の合併症もまた、血漿カリクレイン阻害剤の標的として検討されうる。
【0013】
合成血漿カリクレイン阻害剤及び低分子血漿カリクレイン阻害剤は、例えば、Garrettら(「Peptide aldehyde・・・」、J.Peptide Res.52、62~71頁(1998))、T.Griesbacherら(「Involvement of tissue kallikrein but not plasma kallikrein in the development of symptoms mediated by endogenous kinins in acute pancreatitis in rats」、British Journal of Pharmacology、137、692~700頁(2002))、Evans(「Selective dipeptide inhibitors of kallikrein」、国際公開第WO03/076458号)、Szelkeら(「Kininogenase inhibitors」、国際公開第WO92/04371号)、D.M.Evansら(Immunolpharmacology、32、115~116頁(1996))、Szelkeら(「Kininogen inhibitors」、国際公開第WO95/07921号)、Antonssonら(「New peptides derivatives」、国際公開第WO94/29335号)、J.Corteら(「Six membered heterocycles useful as serine protease inhibitors」、国際公開第WO2005/123680号)、J.Stuerzbecherら(Brazilian J.Med.Biol.Res、27、1929~34頁(1994))、Kettnerら(米国特許第5,187,157号)、N.Tenoら(Chem.Pharm.Bull.、41、1079~1090頁(1993))、W.B.Youngら(「Small molecule inhibitors of plasma kallikrein」、Bioorg.Med.Chem.Letts.、16、2034~2036頁(2006))、Okadaら(「Development of potent and selective plasmin and plasma kallikrein inhibitors and studies on the structure-activity relationship」、Chem.Pharm.Bull.、48、1964~72頁(2000))、Steinmetzerら(「Trypsin-like serine protease inhibitors and their preparation and use」、国際公開第WO08/049595号)、Zhangら(「Discovery of highly potent small molecule kallikrein inhibitors」、Medicinal Chemistry 2、545~553頁(2006))、Sinhaら(「Inhibitors of plasma kallikrein」、国際公開第WO08/016883号)、Shigenagaら(「Plasma Kallikrein Inhibitors」、国際公開第WO2011/118672号)、及びKolteら(「Biochemical characterization of a novel high-affinity and specific kallikrein inhibitor」、British Journal of Pharmacology(2011)、162(7)、1639~1649)により、既に記載されている。Steinmetzerら(「Serine protease inhibitors」、国際公開第WO2012/004678号)はまた、ヒトプラスミン及び血漿カリクレインの阻害剤である環化ペプチド類似体についても記載している。
【0014】
現在のところ、医学的使用のために承認された、唯一の選択的血漿カリクレイン阻害剤は、エカランチドである。エカランチドは、注射用溶液として製剤化されている。エカランチドは、アナフィラキシー反応の危険性をもたらす、大型のタンパク質による血漿カリクレイン阻害剤である。当技術分野において公知の、他の血漿カリクレイン阻害剤は、一般に、それらの一部が、グアニジン又はアミジンなど、極性が大きく、イオン化可能な官能基を含む低分子である。近年、グアニジン官能基又はアミジン官能基を特色としない血漿カリクレイン阻害剤が報告されている。例えば、Brandlら(「N-((6-amino-pyridin-3-yl)methyl)-heteroaryl-carboxamides as inhibitors of plasma kallikrein」、国際公開第WO2012/017020号)、Evansら(「Benzylamine derivatives as inhibitors of plasma kallikrein」、国際公開第WO2013/005045号)、Allanら(「Benzylamine derivatives」、国際公開第WO2014/108679号)、Davieら(「Heterocyclic derivates」、国際公開第WO2014/188211号)、及びDavieら(「N-((het)arylmethyl)-heteroaryl-carboxamides compounds as plasma kallikrein inhibitors」、国際公開第WO2016/083820号)である。
【0015】
商業的に実現可能な製造工程を得るために、医薬製剤の製造において、活性化合物は、簡便に操作及び加工されうる形態にあることが重要である。したがって、活性化合物の化学的安定性及び物理的安定性は、重要な因子である。活性化合物及びこれを含有する製剤は、活性化合物の物理化学的特徴(例えば、化学組成、密度、吸湿性及び可溶性)の著明な変化を示さずに、相当の期間にわたり、有効な保管が可能でなければならない。
【0016】
医薬成分の特定の固体形態を製造することは、その固体特性の多くの側面に影響を及ぼし、可溶性、溶出速度、化学的安定性、物理的特性、技術的実現可能性、加工可能性、薬物動態及びバイオアベイラビリティーの側面において、利点をもたらすことが公知である。これらの一部は、「Handbook of Pharmaceutical Salts;Properties,Selection and Use」、P.Heinrich Stahl、Camille G.Wermuth(編)(Verlag Helvetica Chimica Acta、Zurich)において記載されている。固体形態を製造する方法は、「Practical Process Research and Development」、Neal G.Anderson(Academic Press、San Diego)及び「Polymorphism:In the Pharmaceutical Industry」、Rolf Hilfiker(編)(Wiley VCH)においてもまた記載されている。医薬結晶における多形は、Byrn(Byrn,S.R.、Pfeiffer,R.R.、Stowell,J.G.、「Solid-State Chemistry of Drugs」、SSCI Inc.、West Lafayette、Indiana、1999)、Brittain,H.G.、「Polymorphism in Pharmaceutical Solids」、Marcel Dekker,Inc.、New York、Basel、1999)又はBernstein(Bernstein,J.、「Polymorphism in Molecular Crystals」、Oxford University Press、2002)において記載されている。
【0017】
本出願者は、国際公開第WO2016/083820号(英国特許第PCT/GB2015/053615号明細書)において開示された、血漿カリクレインの阻害剤である、新規の化合物シリーズを開発した。これらの化合物は、血漿カリクレインに対する、良好な選択性を裏付け、糖尿病網膜症、黄斑浮腫及び遺伝性血管性浮腫の処置において、潜在的に有用である。1つのこのような化合物は、N-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミドである。N-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミドという名称は、式A
【0018】
【化1】
に描示された構造を表す。
【0019】
式Aの化合物を調製しようとする初期の試みは、クロマトグラフィー中に使用された、1%のアンモニアメタノール/ジクロロメタン溶媒の蒸発により実施されて、主に、アモルファスの内容物を示す、X線粉末回折データを伴うフォームをもたらした。本出願者は、それを、開発に適した有利な物理化学的特性を有する、この化合物の新規の固体形態(本明細書において、「形態1」と称される)を開発した。形態1は、英国特許第PCT/GB2017/051579号明細書において、形態1として開示されている。本出願者はまた、それを、開発に適した有利な物理化学的特性を有する、この化合物の新規の固体形態(本明細書において、「形態3」と称される)も開発した。形態3は、英国特許第PCT/GB2017/051579号明細書において、形態3として開示されている。
【0020】
現在、式Aの化合物の4つの固体形態が単離されて、特徴付けられており、これらは、英国特許第PCT/GB2017/051579号明細書において開示されている。英国特許第PCT/GB2017/051579号明細書において、これらの固体形態は、「形態1」、「形態2」、「形態3」及び「形態4」と称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】国際公開第2003/076458号
【文献】国際公開第92/04371号
【文献】国際公開第95/07921号
【文献】国際公開第94/29335号
【文献】国際公開第2005/123680号
【文献】国際公開第2008/049595号
【文献】米国特許第5187157号明細書
【文献】国際公開第2008/016883号
【文献】国際公開第2011/118672号
【文献】国際公開第2012/004678号
【文献】国際公開第2012/017020号
【文献】国際公開第2013/005045号
【文献】国際公開第2014/108679号
【文献】国際公開第2014/188211号
【文献】国際公開第2016/083820号
【非特許文献】
【0022】
【文献】K.D.Bhoolaら、「Kallikrein-Kinin Cascade」、「Encyclopedia of Respiratory Medicine」、483~493
【文献】J.W.Bryantら、「Human plasma kallikrein-kinin system:physiological and biochemical parameters」、Cardiovascular and haematological agents in medicinal chemistry、7、234~250、2009
【文献】K.D.Bhoolaら、Pharmacological Rev.、1992、44、1
【文献】D.J.Campbell、「Towards understanding the kallikrein-kinin system:insights from the measurement of kinin peptides」、Brazilian Journal of Medical and Biological Research 2000、33、665~677
【文献】F.Marceau及びD.Regoli、Nature Rev.、Drug Discovery、2004、3、845~852
【文献】A.Lehmann、「Ecallantide(DX-88),a plasma kallikrein inhibitor for the treatment of hereditary angioedema and the prevention of blood loss in on-pump cardiothoracic surgery」、Expert Opin.Biol.Ther.、8、1187~99頁
【文献】A.Clermontら、「Plasma kallikrein mediates retinal vascular dysfunction and induces retinal thickening in diabetic rats」、Diabetes、2011、60、1590~98頁
【文献】Tanakaら(Thrombosis Research、2004、113、333~339)
【文献】Birdら(Thrombosis and Haemostasis、2012、107、1141~50
【文献】Katsuuraら(Thrombosis Research、1996、82、361~368)
【文献】Revenkoら(Blood、2011、118、5302~5311)
【文献】Lehmannら(Expert Opin.Biol.Ther.、2008、1187~99)
【文献】Liuら(Nat Med.、2011、17、206~210)
【文献】Bjoerkqvistら(Thrombosis and Haemostasis、2013、110、399~ 407)
【文献】Garrettら(「Peptide aldehyde・・・」、J.Peptide Res.52、62~71頁(1998))
【文献】T.Griesbacherら(「Involvement of tissue kallikrein but not plasma kallikrein in the development of symptoms mediated by endogenous kinins in acute pancreatitis in rats」、British Journal of Pharmacology、137、692~700頁(2002))
【文献】D.M.Evansら(Immunolpharmacology、32、115~116頁(1996))
【文献】J.Stuerzbecherら(Brazilian J.Med.Biol.Res、27、1929~34頁(1994))
【文献】N.Tenoら(Chem.Pharm.Bull.、41、1079~1090頁(1993))
【文献】W.B.Youngら(「Small molecule inhibitors of plasma kallikrein」、Bioorg.Med.Chem.Letts.、16、2034~2036頁(2006))
【文献】Okadaら(「Development of potent and selective plasmin and plasma kallikrein inhibitors and studies on the structure-activity relationship」、Chem.Pharm.Bull.、48、1964~72頁(2000))
【文献】Zhangら(「Discovery of highly potent small molecule kallikrein inhibitors」、Medicinal Chemistry 2、545~553頁(2006))
【文献】Kolteら(「Biochemical characterization of a novel high-affinity and specific kallikrein inhibitor」、British Journal of Pharmacology(2011)、162(7)、1639~1649))
【文献】「Handbook of Pharmaceutical Salts;Properties,Selection and Use」、P.Heinrich Stahl、Camille G.Wermuth(編)(Verlag Helvetica Chimica Acta、Zurich)
【文献】「Practical Process Research and Development」、Neal G.Anderson(Academic Press、San Diego)
【文献】「Polymorphism:In the Pharmaceutical Industry」、Rolf Hilfiker(編)(Wiley VCH)
【文献】Byrn,S.R.、Pfeiffer,R.R.、Stowell,J.G.、「Solid-State Chemistry of Drugs」、SSCI Inc.、West Lafayette、Indiana、1999
【文献】Brittain,H.G.、「Polymorphism in Pharmaceutical Solids」、Marcel Dekker,Inc.、New York、Basel、1999
【文献】Bernstein,J.、「Polymorphism in Molecular Crystals」、Oxford University Press、2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の目的は、式Aの化合物の形態1を含む経口固体剤形を提供することである。本発明はまた、式Aの化合物の形態1を使用して、式Aの化合物を含む経口固体剤形を調製する方法を提供することにも関する。
【0024】
本発明のさらなる目的は、式Aの化合物の形態3を含む経口固体剤形を提供することである。本発明はまた、式Aの化合物の形態3を使用して、式Aの化合物を含む経口固体剤形を調製する方法を提供することにも関する。
【課題を解決するための手段】
【0025】
したがって、本発明の態様に従い、少なくとも以下:約11.2、12.5、13.2、14.5、及び16.3における特性X線粉末回折ピーク(CuKα線、°2θで表される)を示す、式Aの化合物の固体形態を含む、経口固体剤形が提供される。本出願において、この固体形態は、「形態1」と称されうる。
【0026】
式Aの化合物の形態1は、開発に適した有利な物理化学的特性を有する。例えば、図4における、式Aの化合物の形態1についての重量測定蒸気吸脱着(GVS)データは、通常の条件(例えば、70%以下の相対湿度)下において、水分含量の増大が、比較的漸進的であるに過ぎないことを示す。これは、著明な吸湿性が存在しないことと符合する。これに対し、アモルファス材料は、典型的に、吸湿性が著明であり、又は潮解性でさえあり、材料を加工不能なガムにすることが多い。さらに、形態1の試料の融解の前における、重量減少の非存在(図2のSTAデータを参照されたい。)は、形態1が、水和又は溶媒和されていないことを指し示す。安定的な水和物は、薬物がヒト体内の水性環境に遭遇すると、投与された薬物の無水形態の所望されない変質を誘導しうるために、医薬開発に不適切でありうる。式Aの化合物の形態1の、別の利点は、容易に加工可能であることである。すなわち、結晶化によるその調製(実施例を参照されたい。)は、所望されない不純物を除去するのに、一般的かつ容易に拡大可能な手順である。
【0027】
本明細書において開示された安定性データにより、式Aの化合物の形態1の、医薬開発に対する適性のさらなる証拠が提示される。式Aの化合物の形態1の2つの試料を、二重のポリエチレンバッグ内に詰め、高密度ポリエチレンボトル内に封入して、25℃/60%RH及び40℃/75%RHにおいて保管した。初期時点において、X線粉末回折は、試料が結晶であり、形態1と符合することを示した。25℃/60%RH及び40℃/75%RHの保管条件下において、X線粉末回折は、1カ月後及び3カ月後において、変化を示さなかった(図7及び8)。
【0028】
本明細書において、X線粉末回折ピーク(°2θにおいて表された)は、CuKα放射線を使用して測定される。
【0029】
本発明は、少なくとも以下:約
(1)11.2、12.5、13.2、14.5及び16.3;又は
(2)11.2、12.5、13.2、14.5、16.3、17.4及び17.9;又は
(3)11.2、12.5、13.2、14.5、16.3、17.4、17.9、21.2及び22.0
度における特性X線粉末回折ピーク(CuKα線、°2θで表される)を示す、式Aの化合物の固体形態(形態1)を含む経口固体剤形を提供する。
【0030】
この文脈における「約」という用語は、°2θの測定値に、±0.3(°2θにおいて表された)、好ましくは、±0.2(°2θにおいて表された)の不確実性が存在することを意味する。
【0031】
本発明はまた、約4.4、11.2、12.5、13.2、14.5、16.3、17.4、17.9、21.2、22.0及び22.6度における、特徴的なピーク(°2θで表された)を含む、X線粉末回折パターンを有する、式Aの化合物の固体形態を含む経口固体剤形も提供する。
【0032】
本発明はまた、図1aに示されたパターンと実質的に同じX線粉末回折パターンを有する、式Aの化合物の固体形態を含む経口固体剤形も提供する。
【0033】
本明細書において、固体形態のX線粉末回折パターンは、図において描示されたX線粉末回折パターンと、「実質的に」同じ形において記載されうる。X線粉末回折パターンのピークは、当業者に公知の多様な因子のために、それらの位置及び相対強度が、わずかにシフトしうることが認められる。例えば、パターンのピーク位置又はピークの相対強度のシフトは、使用された装置、試料調製の方法、好ましい充填及び配向性、放射線源並びにデータ収集の方法及びデータ収集期間の長さのために生じうる。しかし、当業者は、本明細書の図に示されたX線粉末回折パターンを、未知の固体形態のX線粉末回折パターンと比較して、固体形態の識別を確認することが可能である。
【0034】
当業者は、X線粉末回折パターンを測定するための技法に精通している。特に、化合物の試料についてのX線粉末回折パターンは、Philips X-Pert MPD回折計を、以下の実験条件:
陽極管:Cu;
発電機の電圧:40kV;
陽極管の電流:40mA;
波長アルファ1:1.5406Å;
波長アルファ2:1.5444Å;
試料:解析下にある2mgの試料を、X線粉末回折バックグラウンドをゼロとする、単一の斜めに切断されたシリカ製の試料ホルダー上において、静かに圧縮した
と共に使用して記録されうる。
【0035】
本発明は、そのDSCサーモグラムにおいて151±3℃、好ましくは、151±2℃、より好ましくは、151±1℃の吸熱ピークを示す、式Aの化合物の固体形態を含む経口固体剤形を提供する。
【0036】
本発明は、図3に示されたDSCサーモグラムと実質的に同じDSCサーモグラムを有する、式Aの化合物の固体形態を含む経口固体剤形を提供する。
【0037】
当業者は、DSCサーモグラムを測定するための技法に精通している。特に、化合物の試料のDSCサーモグラムは、
(a)5mgの試料を、アルミニウム製のDSCパンに秤量し、アルミニウム製の蓋により、非密閉的に封入すること;
(b)試料を、とPerkin-Elmer Jade DSCにロードし、安定的な熱流応答が得られるまで、20cm/分のヘリウムパージを使用しながら、試料を、30℃に保持すること;
(c)試料を、10℃/分の走査速度において、200~300℃の間の温度に加熱し、20cm/分のヘリウムパージを使用しながら、結果として得られる熱流応答をモニタリングすること
により記録されうる。
【0038】
本発明は、上記において記載されたX線粉末回折パターン及び上記において記載されたDSCサーモグラムを有する、式Aの化合物の固体形態を含む経口固体剤形を提供する。
【0039】
本発明はまた、図6aに示されたパターンと実質的に同じX線粉末回折パターンを有する、式Aの化合物の固体形態を含む経口固体剤形も提供する。
【0040】
特定の化合物に対する言及はまた、全ての同位体バリアントも含む。
【0041】
本明細書において記載された「固体形態」という用語は、結晶形態を含む。任意選択的に、本発明の固体形態は結晶形態である。
【0042】
ある実施形態において、固体経口剤形中での式Aの化合物の固体形態の量は、約0.1mg~約1,000mg、任意選択的に、約1mg~約1,000mg、約5mg~約500mg、約8mg~約200mg又は約10mg~約100mgである。
【0043】
式Aの化合物の固体形態は、経口固体剤形の総重量に対して約1wt%~約70wt%、任意選択的に、約5wt%~約60wt%又は約5wt%~約50wt%の量において存在しうる。
【0044】
経口固体剤形は、結合剤を含みうる。存在する場合、結合剤は、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、コポビドン、ゼラチン、アラビアゴム、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、デンプン、アルファ化デンプン、寒天、トラガント及びアルギン酸ナトリウムのうちの1つ以上を含みうる。好ましくは、結合剤は、ポビドンである。任意選択的に、結合剤は、Kollidon K25(BASF Corporationから入手可能なポビドン製剤)である。
【0045】
式Aの化合物と結合剤との重量比は、約1:0.01~約1:1、任意選択的に、約1:0.03~約1:0.5の間又は約1:0.05~約1:0.3の間でありうる。
【0046】
結合剤は、経口固体剤形の総重量に対して約0.1wt%~約30wt%、任意選択的に、約0.5wt%~約10wt%又は約1wt%~約5wt%の量において存在しうる。
【0047】
代替的に、又は加えて、経口固体剤形は、希釈剤を含みうる。希釈剤は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム二塩基性、リン酸カルシウム三塩基性、硫酸カルシウム、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストレート、デキストリン、デキストロース賦形剤、フルクトース、カオリン、ラクチトール、ラクトース、ラクトース一水和物、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、デンプン、アルファ化デンプン及びスクロースのうちの1つ以上を含みうる。好ましくは、希釈剤は、微結晶セルロースである。任意選択的に、希釈剤は、Avicel PH 101及び/又はAvicel PH 102(いずれも、FMC Corporationから入手可能な、微結晶セルロース賦形剤である)である。
【0048】
式Aの化合物の固体形態の、希釈剤に対する重量比は、約1:0.1~約1:500、任意選択的に、約1:0.2~約1:100、約1:0.5~約1:50、約1:0.75~約1:20又は約1:1~約1:5の間でありうる。
【0049】
希釈剤は、経口固体剤形の総重量に対して約1wt%~約99wt%、任意選択的に、約10wt%~約70wt%又は約20wt%~約60wt%又は約40wt%~約60wt%の量において存在しうる。
【0050】
代替的に、又は加えて、経口固体剤形は、崩壊剤を含みうる。崩壊剤は、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、架橋型ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、粉末セルロース、微結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ポラクリリンカリウム、デンプン、アルファ化デンプン、アルギン酸及びアルギン酸ナトリウムのうちの1つ以上を含みうる。好ましくは、崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウムである。任意選択的に、崩壊剤は、AcDiSol(FMC Corporationから入手可能な、クロスカルメロースナトリウム製剤)である。
【0051】
式Aの化合物の固体形態の、崩壊剤に対する重量比は、約1:0.01~約1:1、任意選択的に、約1:0.03~約1:0.5の間、約1:0.05~約1:0.3の間又は約1:0.08~約1:0.16の間でありうる。
【0052】
崩壊剤は、経口固体剤形の総重量に対して約0.1wt%~約50wt%、任意選択的に、約0.5wt%~約30wt%又は約1wt%~約20wt%又は約1wt%~約10wt%の量において存在しうる。
【0053】
代替的に、又は加えて、経口固体剤形は、滑沢剤を含みうる。滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリル、水素化ヒマシ油、水素化植物油、鉱物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、滑石及びステアリン酸亜鉛のうちの1つ以上を含みうる。好ましくは、滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムである。
【0054】
式Aの化合物の固体形態の、滑沢剤に対する重量比は、約1:0.001~約1:1、任意選択的に、約1:0.005~約1:0.5の間、約1:0.0075~約1:0.2の間又は約1:0.01~約1:0.1でありうる。
【0055】
滑沢剤は、経口固体剤形の総重量に対して約0.1wt%~約10wt%、任意選択的に、約0.2wt%~約5wt%又は約0.5wt%~約2wt%の量において存在しうる。
【0056】
代替的に、又は加えて、経口固体剤形は、流動促進剤を含みうる。流動促進剤は、滑石、コロイド状二酸化ケイ素、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、デンプン及び三塩基性リン酸カルシウムのうちの1つ以上を含みうる。
【0057】
式Aの化合物の固体形態の、流動促進剤に対する重量比は、約1:0.01~約1:1でありうる。
【0058】
流動促進剤は、経口固体剤形の総重量に対して約0.1wt%~約10wt%、任意選択的に、約0.2wt%~約5wt%又は約0.5wt%~約2wt%の量において存在しうる。
【0059】
代替的に、又は加えて、経口固体剤形は、酸を含みうる。酸は、酒石酸、マレイン酸、コハク酸及びクエン酸のうちの1つ以上を含みうる。好ましくは、酸は、酒石酸である。代替的に、酸は、マレイン酸でありうる。
【0060】
式Aの化合物の固体形態の、酸に対する重量比は、約1:0.1~約1:2の間、任意選択的に、約1:0.2~約1:1でありうる。
【0061】
酸は、経口固体剤形の総重量に対して約1wt%~約40wt%、任意選択的に、約2wt%~約30wt%又は約5wt%~約20wt%の量において存在しうる。
【0062】
代替的に、又は加えて、経口固体剤形は、界面活性剤を含みうる。界面活性剤は、イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤でありうる。界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート20、ポリソルベート40及びポリソルベート80のうちの1つ以上を含みうる。任意選択的に、界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム及びポリソルベート80から選択される。任意選択的に、界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウムである。代替的に、界面活性剤は、ポリソルベート80でありうる。
【0063】
式Aの化合物の固体形態の、界面活性剤に対する重量比は、約1:0.01~約1:1、任意選択的に、約1:0.03~約1:0.5の間又は約1:0.05~約1:0.3の間でありうる。
【0064】
界面活性剤は、経口固体剤形の総重量に対して約1wt%~約20wt%、任意選択的に、約0.5wt%~約10wt%又は約1wt%~約5wt%の量において存在しうる。
【0065】
経口固体剤形は、脂質賦形剤を含みうる。脂質賦形剤は、ステアリン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、ラウリン酸スクロース、ベヘン酸スクロース、オレイン酸スクロース、エルカ酸スクロースなどのスクロース脂肪酸エステル、及びこれらの混合物;リン脂質誘導体、ホスファチジル誘導体、グリコシルセラミド誘導体、脂肪酸誘導体、非イオン性界面活性剤、ビタミンEトコフェリルスクシネートポリエチレングリコール誘導体(D-α-トコフェロールポリエチレングリコールスクシネート(TPGS)を含む)、モノオレイン酸グリセリル、Gelucire(商標登録)シリーズの界面活性剤(例えば、Gelucire 44/14、Gelucire 33/01及びGelucire 50/13を含む)及びグリセリド誘導体のうちの1つ以上を含みうる。任意選択的に、脂質賦形剤は、Gelucire 44/14及び/又はD-α-トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸エステル(TPGS)である。好ましくは、脂質賦形剤は、D-α-トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸エステル(TPGS)である。代替的に、脂質賦形剤は、Gelucire 44/14である。
【0066】
脂質賦形剤の融点は、約25℃を超える、約30℃を超える、約35℃を超える、又は約40℃を超えうる。任意選択的に、脂質賦形剤の融点は、約35℃を超えうる。
【0067】
脂質賦形剤の融点は、約100℃未満、約70℃未満、約60℃未満又は約50℃未満でありうる。任意選択的に、脂質賦形剤の融点は、約50℃未満でありうる。
【0068】
式Aの化合物の固体形態の、脂質賦形剤に対する重量比は、約1:0.1~約1:100、任意選択的に、約1:0.5~約1:50、約1:1~約1:50又は約1:1~約1:20でありうる。
【0069】
脂質賦形剤は、経口固体剤形の総重量に対して約10wt%~約99wt%、任意選択的に、約50wt%~約95wt%又は約60wt%~約90wt%の量において存在しうる。
【0070】
本発明の経口固体剤形は、カプセルの形態にありうる。カプセルの外殻は、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はデンプンから作られうる。任意選択的に、カプセルの外殻は、ゼラチンから作られている。任意選択的に、カプセルの外殻は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから作られている。
【0071】
代替的に、本発明の経口固体剤形は、錠剤の形態にありうる。
【0072】
本発明の経口固体剤形は、薄膜の形態にありうるコーティングを含みうる。コーティングは、腸溶性コーティングでありうる。腸溶性コーティングは、胃の強酸pHにおいて不溶性であるが、小腸内の弱酸性状態において可溶性である。コーティングは、約1mg/cm~約10mg/cmの間、任意選択的に、約2mg/cm~約8mg/cmの間又は約3mg/cm~約7mg/cmの間の、単位面積当たりの質量を有しうる。
【0073】
コーティングは、約10mg~約100mg、任意選択的に、約20mg~約80mg又は約30mg~約70mgの質量を有しうる。
【0074】
任意選択的に、カプセルの形態の、サイズ0の剤形の表面積当たりのコーティングの質量は、約10mg~約100mg、任意選択的に、約20mg~約80mg又は約30mg~約70mgでありうる。
【0075】
腸溶性コーティングは、シェラック、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、トリメリテート、ポリビニルアセテートフタレート又はEudragit L、Eudragit L100、Eudragit S、Eudragit S100、Eudragit L30D及びEudragit L30-D55など、メタクリレートベースのポリマーのうちの1つ以上を含みうる腸溶性ポリマーを含みうる。好ましくは、腸溶性コーティングは、Eudragit L30-D55である。
【0076】
腸溶性コーティングはまた、可塑剤も含みうる。可塑剤は、クエン酸トリエチル、フタル酸ジブチル、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、フタル酸ジエチル、クエン酸アセチルトリエチルのうちの1つ以上を含みうる。好ましくは、可塑剤は、クエン酸トリエチルである。
【0077】
本発明の経口固体剤形は、剤形のコアの周囲を包む薄膜を含みうる。適切な薄膜材料の例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン及びEudragitポリマーを含む。好ましくは、薄膜材料は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0078】
本発明の経口固体剤形は、1つ以上のさらなる活性成分を含みうる。
【0079】
本発明はまた、式Aの化合物を含む経口固体剤形を調製する方法であって、
(a)少なくとも以下:約11.2、12.5、13.2、14.5、及び16.3における特性X線粉末回折ピーク(CuKα線、°2θで表される)を示す、式Aの化合物の固体形態を、結合剤と、任意選択的に、希釈剤、崩壊剤及び/又は界面活性剤とを含む顆粒化液と混合するステップ;
(b)ステップ(a)の分散液を顆粒化させて、顆粒を形成するステップ;
(c)顆粒を乾燥させるステップ;
(d)任意選択的に、ステップ(b)又は(c)の顆粒を、希釈剤、酸、界面活性剤及び/又は滑沢剤とブレンドして、ブレンドされた顆粒を形成するステップ;並びに
(e)顆粒又はブレンドされた顆粒を、固体経口剤形に圧縮又は充填するステップ
を含む方法も提供する。
【0080】
顆粒化液は、水をさらに含みうる。
【0081】
ステップ(c)における乾燥させることは、約45℃を超える温度、好ましくは、約55℃を超える温度において実施されうる。ステップ(c)における乾燥させることは、約45℃~約90℃の間の温度、好ましくは、約50℃~約80℃の間の温度において実施されうる。
【0082】
ステップ(e)において、顆粒又はブレンドされた顆粒は、錠剤の形態の固体経口剤形に圧縮されうる。
【0083】
本発明はまた、式Aの化合物を含む経口固体剤形を調製する方法であって、
(a)少なくとも以下:約11.2、12.5、13.2、14.5、及び16.3における特性X線粉末回折ピーク(CuKα線、°2θで表される)を示す、式Aの化合物の結晶形態を、融解した脂質賦形剤中に分散させるステップ;並びに
(b)融解した分散液をカプセルに充填するステップ
を含む方法も提供する。
【0084】
本発明はまた、式Aの化合物を含む経口固体剤形を調製する方法であって、カプセルに、少なくとも以下:約11.2、12.5、13.2、14.5、及び16.3における特性X線粉末回折ピーク(CuKα線、°2θで表される)を示す、式Aの化合物の結晶形態を充填するステップを含む方法も提供する。
【0085】
本発明の方法において使用された成分(例えば、結合剤、希釈剤、崩壊剤、界面活性剤、酸及び脂質賦形剤)は、本発明の経口固体剤形について記載された同じ成分であり、これらの成分について記載された、任意の定義及び/又は限定は、本発明の方法において使用された成分へも、同様に適用されうることを理解されたい。
【0086】
本発明はまた、本発明の方法のうちのいずれか1つにより得られる経口固体剤形も提供する。
【0087】
本発明の経口固体剤形は、特に、血漿カリクレインにより媒介される疾患又は状態の処置において、多数の治療的適用を有する。
【0088】
したがって、本発明は、治療における使用のための、式Aの化合物の形態1を含む経口固体剤形を提供する。
【0089】
本発明はまた、血漿カリクレインにより媒介される疾患又は状態を処置する方法における使用のための、本明細書において記載された経口固体剤形も提供する。
【0090】
本発明はまた、血漿カリクレインにより媒介される疾患又は状態を処置する方法であって、このような処置を必要とする哺乳動物に、本明細書において記載された経口固体剤形を投与するステップを含む方法も提供する。
【0091】
本発明はまた、血漿カリクレインにより媒介される疾患又は状態の処置のための医薬の製造における、本明細書において記載された経口固体剤形の使用も提供する。
【0092】
ある態様において、血漿カリクレインにより媒介される疾患又は状態は、視力障害、糖尿病網膜症、糖尿病網膜症に伴う網膜血管透過性、糖尿病性黄斑浮腫、遺伝性血管性浮腫、網膜静脈閉塞症、糖尿病、膵炎、脳出血、腎症、心筋症、神経障害、炎症性腸疾患、関節炎、炎症、敗血症性ショック、低血圧症、がん、成人呼吸促迫症候群、播種性血管内凝固、心血管バイパス手術中の血液凝固、及び外科術後の出血から選択される。好ましい実施形態において、血漿カリクレインにより媒介される疾患又は状態は、糖尿病性黄斑浮腫である。別の好ましい実施形態において、血漿カリクレインにより媒介される疾患又は状態は、遺伝性血管性浮腫である。
【0093】
代替的に、血漿カリクレインにより媒介される疾患又は状態は、糖尿病網膜症に伴う網膜血管透過性、糖尿病性黄斑浮腫及び遺伝性血管性浮腫から選択されうる。代替的に、血漿カリクレインにより媒介される疾患又は状態は、糖尿病網膜症に伴う網膜血管透過性又は糖尿病性黄斑浮腫でありうる。
【0094】
本発明の文脈において、本明細書における「処置」への言及は、特に逆の指示がない限り、治癒的処置、緩和的処置及び予防的処置への言及を含む。「治療」、「治療的」及び「治療的に」という用語は、同様に理解されるものとする。
【0095】
本発明の経口固体剤形は、単独において投与される場合もあり、1つ以上の他の薬学的活性物質と組み合わせられて投与される場合もある。この点で、経口固体剤形は、別の薬学的活性成分をさらに含みうる。代替的に、本発明の経口剤形は、他の薬学的活性物質(複数可)を組み込む、1つ以上のさらに個別の剤形と共に共投与(同時に、連続的に、又は逐次的に)されうる。
【0096】
別の態様では、本発明の経口固体剤形は、網膜のレーザー処置と組み合わせて投与されうる。
【0097】
ヒト患者への投与のために、式Aの化合物の毎日の総用量は、当然ながら、投与方式に応じて、典型的に、約0.1mg~約10,000mg又は約1mg~約5000mg又は約10mg~約1000mgの範囲である。
【0098】
毎日の総用量は、単回投与により投与される場合もあり、分割投与により投与される場合もあり、医師の熟慮により、本明細書において示された、典型的な範囲から外れる場合もある。これらの投与量は、約60kg~70kgの体重を有する、平均的なヒト対象に基づく。医師は、乳児及び老齢者など、その体重がこの範囲から外れる対象のための用量をたやすく決定する。
【0099】
本発明の経口固体剤形は、経口投与されることが意図される。経口投与は、化合物が、消化管に入るように、嚥下を伴う場合もあり、かつ/又は化合物が、口腔から、直接血流に入る、口腔内投与、舌上投与、又は舌下投与を伴う場合もある。
【0100】
ここで、本発明は、以下の非限定的な実施例により例示される。実施例において、以下の図が提示される。
【図面の簡単な説明】
【0101】
図1a】式Aの化合物の形態1のX線粉末回折パターン(実施例1)を示す図である。
図1b】式Aの化合物の形態1のX線粉末回折パターン(実施例2)を示す図である。
図1c】式Aの化合物の形態1のX線粉末回折パターン(実施例3)を示す図である。
図2】式Aの化合物の形態1のSTA(実施例1)を示す図である。
図3】式Aの化合物の形態1のDSCサーモグラム(実施例1)を示す図である。
図4】式Aの化合物の形態1の、重量測定蒸気吸脱着等温線(吸着及び脱着)(実施例1)を示す図である。
図5】イソプロパノール:水を90:10とする、形態1のスラリーに従う、式Aの化合物のX線粉末回折パターン(上)を示す図である。下のX線粉末回折パターンは、基準としての、形態1のX線粉末回折パターン(実施例1)である。
図6a】式Aの化合物の形態3のX線粉末回折パターン(実施例4a)を示す図である。
図6b】式Aの化合物の形態5のX線粉末回折パターン(実施例4c)を示す図である。
図6c】式Aの化合物の形態5のDSCサーモグラム(実施例4c)を示す図である。
図6d】式Aの化合物の形態5の粒度分布を示す図である。
図6e】式Aの化合物の形態5の重量測定蒸気吸脱着等温線(吸着及び脱着)(実施例4c)を示す図である。
図7】25℃/60%RH安定性試験時の、0日後(上)、1カ月後(中)及び3カ月後(下)における、式Aの化合物の形態1のX線粉末回折パターンを示す図である。
図8】40℃/75%RH安定性試験時の、0日後(上)、1カ月後(中)及び3カ月後(下)における、式Aの化合物の形態1のX線粉末回折パターンを示す図である。
図9】初期並びに25℃及び40℃における保管の後の、TPGSを充填されたカプセルについての0.1MのHCl及びpH3の緩衝液中の溶出曲線を示す図である。
図10】初期並びに25℃及び40℃における保管の後の、Gelucire 44/14を充填されたカプセルについての0.1MのHCl及びpH3の緩衝液中の溶出曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0102】
一般的な実験の詳細
以下の例において、以下の略号及び定義が使用される:
【0103】
【表1】
【0104】
全ての反応は、そうでないことが指定されない限り、窒素雰囲気下において実行した。
【0105】
HNMRスペクトルは、重水素溶媒を基準として、室温において、Bruker(400MHz)分光計上又はJEOL(400MHz)分光計上において記録した。
【0106】
分子イオンは、Chromolith Speedrod RP-18eカラム、50×4.6mmを、0.1%HCOH/アセトニトリルから、0.1%HCOH/HOへの、10%~90%の直線勾配と共に、流量1.5mL/分において、13分間にわたり使用して、又はAgilent、X-Select、acidic、5~95%のアセトニトリル/水を、4分間にわたり使用して実行されたLCMSを使用して得た。データは、Thermofinnigan Surveyor LC systemと共に、エレクトロスプレーイオン化を伴う、Thermofinnigan Surveyor MSQ質量分析計を使用して収集した。
【0107】
代替的に、分子イオンは、Agilent Poroshell 120 EC-C18(2.7μm、3.0×50mm)カラムを、水[溶離液A]中;アセトニトリル[溶離液B]中に0.1%v/vのギ酸;0.8mL/分の流量及び試料間の1.5分間の平衡時間、下記に示された勾配と共に使用して実行された、LCMSを使用して得た。質量の検出は、API 2000質量分析計(エレクトロスプレー)によりなされた。
勾配:
【0108】
【表2】
【0109】
生成物を、フラッシュクロマトグラフィーにより精製した場合の「シリカ」とは、0.035~0.070mm(メッシュ220~440)のクロマトグラフィー用のシリカゲル(例えば、Merck silica gel 60)を指し、適用された10p.s.i以下の窒素圧が、カラムによる溶離を加速させた。逆相調製用HPLCによる精製は、Waters 2525 binary gradient pumping systemを、典型的に、20mL/分の流量において使用し、Waters 2996 photodiode array detectorを使用して実行した。
【0110】
全ての溶媒及び市販の試薬は、入手した時の状態のものを使用した。
【0111】
化学名は、MDL Information Systems製のISIS Drawパッケージの一部として提供されるAutonomソフトウェア又はMarvinSketchの構成要素として、若しくはIDBS E-WorkBookの構成要素として提供されるChemaxonソフトウェアなどの自動式ソフトウェアを使用して生成した。
【0112】
X線粉末回折パターンは、Philips X-Pert MPD回折計上において収集し、そうでないことが指定されない限り、以下の実験条件(方法A)を使用して解析した。
陽極管:Cu
発電機の電圧:40kV
陽極管の電流:40mA
波長アルファ1:1.5406Å
波長アルファ2:1.5444Å
開始角度[2θ]:4
終了角度[2θ]:40
連続走査
解析下にある約2mgの試料を、X線粉末回折バックグラウンドをゼロとする、単一の、斜めに切断された、シリカ製の試料ホルダー上において、静かに圧縮した。次いで、試料を、解析のために、回折計にロードした。
【0113】
指定された場合、以下の方法(方法B)を使用して、X線粉末回折パターンを収集した:
X線粉末回折試験は、Bruker AXS D2 PHASER(D2-205355)を、Bragg-Brentano configuration、装置#2353において使用して実施した。30kV、10mAにおけるCu陽極、ビームストップ及び単色化Kβフィルター(0.59%のNi)を伴う、標準回転(5回/分)型の試料ステージを使用する。使用したスリットは、1.0mmの固定分岐スリット(=0.61°)、軸方向2.5°の一次ソーラースリット及び軸方向2.5°の二次ソーラースリットである。受光スリット5°検出器開口を伴う線形検出器である、LYNXEYE検出器である。標準試料ホルダー((510)型シリコンウェハーにおける、0.1mmの空洞)は、バックグラウンドシグナルに対して、最小の寄与を有する。測定条件:走査範囲を5~45°2θとし、試料回転速度を5rpmとし、ステップ1つ当たり0.5秒間、ステップ1つ当たり0.010°とし、検出器スリットを3.0mmとし;全ての測定条件は、測定器制御ファイル内に記録する。データの収集のために使用したソフトウェアは、Diffrac.Commander v4.0である。データ解析は、Diffrac.Eva V4.1評価ソフトウェアを使用して実施する。パターンに、バックグラウンド補正又は平滑化を適用しない。
【0114】
DSCデータは、以下の方法を使用して収集した:約5mgの各試料を、アルミニウム製のDSCパンに秤量し、アルミニウム製の蓋により、非密閉的に封入する。次いで、試料を、とPerkin-Elmer Jade DSCにロードし、30℃に保持する。安定的な熱流応答が得られたら、試料を、10℃/分の走査速度において、200~300℃の間の温度に加熱し、結果として得られる熱流応答をモニタリングした。20cm/分のヘリウムパージを使用した。解析の前に、インジウム標準を使用して、測定器を、温度及び熱流動について検証した。
【0115】
重量測定蒸気吸脱着(GVS)データは、以下の方法を使用して収集した:約10mgの試料を、ワイヤーメッシュ製の蒸気吸脱着用天秤皿に入れ、「IgaSorp」蒸気吸脱着用天秤(Hiden Analytical Instruments)にロードした。次いで、0%の環境湿度を維持することにより、さらなる重量変化が記録されなくなるまで、試料を乾燥させた。次いで、その後、平衡(ステップの99%の完了)に到達するまで、試料を、各ステップに維持しながら、試料を、RHの増分を10%とする、0~90%RHの傾斜プロファイルにかけた。平衡に達したら、装置内の%RHを、次のステップに傾斜させ、平衡手順を繰り返した。吸脱着サイクルが完了した後、次いで、同じ手順を使用して、試料を乾燥させた。次いで、吸着/脱着サイクルにおける重量の変化をモニタリングし、試料の吸湿性を決定した。
【0116】
同時熱分析(STA)データは、以下の方法を使用して収集した:約5mgの試料を、セラミック製のるつぼに正確に秤量し、周囲温度において、Perkin-Elmer STA 600 TGA/DTA analyzerのチャンバーに入れた。次いで、試料を、10℃/分の速度において、典型的に、25℃~300℃に加熱し、この間における、重量の経時変化並びにDTA信号をモニタリングした。使用したパージガスは、流量20cm/分の窒素であった。
【0117】
I.式Aの化合物の形態1の調製
A.1-(4-ヒドロキシメチル-ベンジル)-1H-ピリジン-2-オン
4-(クロロメチル)ベンジルアルコール(5.0g、31.93ミリモル)を、アセトン(150mL)中に溶出させた。2-ヒドロキシピリジン(3.64g、38.3ミリモル)及び炭酸カリウム(13.24g、95.78ミリモル)を添加し、反応混合物を、50℃において、3時間にわたり攪拌し、この時間の後、溶媒を真空中において除去し、残留物をクロロホルム(100mL)中に溶解させた。この溶液を水(30mL)、塩水(30mL)で洗浄し、脱水し(NaSO)、真空中において蒸発させた。溶離液を3%メタノール/97%CHClとする、フラッシュクロマトグラフィー(シリカ)により残留物を精製して、1-(4-ヒドロキシメチル-ベンジル)-1H-ピリジン-2-オンとして同定される白色固体を得た(5.30g、24.62ミリモル、収率77%)。
[M+Na]=238
B.1-(4-クロロメチル-ベンジル)-1H-ピリジン-2-オン
1-(4-ヒドロキシメチル-ベンジル)-1H-ピリジン-2-オン(8.45g、39.3ミリモル)、乾燥ジクロロメタン(80mL)及びトリエチルアミン(7.66ml、55.0ミリモル)を氷冷浴中において冷却した。メタンスルホニルクロリド(3.95ml、51.0ミリモル)を添加し、氷冷浴中において、15分間にわたり攪拌した。氷冷浴を除去し、攪拌を、室温において、一晩にわたり継続した。反応混合物を、ジクロロメタン(100mL)と、飽和NHCl水溶液(100mL)との間において分割した。さらなるジクロロメタン(2×50mL)により水性層を抽出し、合わせた有機物を塩水(50mL)で洗浄し、NaSO上において脱水し、濾過及び濃縮して、淡黄色固体としての1-(4-クロロメチル-ベンジル)-1H-ピリジン-2-オン(8.65g、36.6ミリモル、収率93%)を得た。
[MH]=234.1
C.メチル3-(メトキシメチル)-1-(4-((2-オキソピリジン-1(2H)-イル)メチル)ベンジル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート
炭酸カリウム(519mg、3.76ミリモル)を、メチル3-(メトキシメチル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート(320mg、1.88ミリモル;CAS番号:318496-66-1(WO2012/009009において記載された方法に従い合成された))及び1-(4-(クロロメチル)ベンジル)ピリジン-2(1H)-オン(527mg、2.26ミリモル)の、N,N-ジメチルホルムアミド(5mL)中溶液に添加し、60℃において、一晩にわたり加熱した。反応混合物を、酢酸エチル(50mL)により希釈し、塩水(2×100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上において脱水し、真空中において濾過及び還元した。粗生成物を、フラッシュクロマトグラフィー(40gのカラム、イソヘキサン中に0~100%の酢酸エチル)により精製して、2つの位置異性体をもたらした。カラムから、第2の異性体を回収して、メチル3-(メトキシメチル)-1-(4-((2-オキソピリジン-1(2H)-イル)メチル)ベンジル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート(378mg、1.01ミリモル、収率53.7%)を、無色ガムとして得た。
[MH]=368.2
D.3-(メトキシメチル)-1-(4-((2-オキソピリジン-1(2H)-イル)メチル)ベンジル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸
テトラヒドロフラン(5mL)及びメタノール(5mL)中のメチル3-(メトキシメチル)-1-(4-((2-オキソピリジン-1(2H)-イル)メチル)ベンジル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート(3.77g、10.26ミリモル)に、2MのNaOH溶液(15.39ml、30.8ミリモル)を添加し、室温において、一晩にわたり攪拌した。1MのHCl(50mL)を添加し、酢酸エチル(50mL)により抽出した。有機層を塩水(50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上において脱水し、真空中において濾過及び還元して、3-(メトキシメチル)-1-(4-((2-オキソピリジン-1(2H)-イル)メチル)ベンジル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(1.22g、3.45ミリモル、収率33.6%)を、白色粉末として得た。
[MH]=354.2
E.3-フルオロ-4-メトキシ-ピリジン-2-カルボニトリル
シアン化銅(I)(1.304g、14.56ミリモル)を、大型のマイクロウェーブバイアルの、N,N-ジメチルホルムアミド(5mL)中の2-ブロモ-3-フルオロ-4-メトキシピリジン(1g、4.85ミリモル)の溶液に添加した。反応バイアルを封入し、16時間にわたり、100℃に加熱した。反応混合物を、水(20mL)及び酢酸エチル(20mL)により希釈した。濃厚な懸濁液を超音波処理し、また沈殿させた固体を粉砕するには、さらなる水(40mL)及び酢酸エチル(2×50mL)が、超音波処理と共に必要であった。合わせた層をセライトプラグを通して濾過し、有機層を単離し、塩水(50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウム上において脱水し、濾過し、減圧下において溶媒を除去し、所望の化合物である、3-フルオロ-4-メトキシ-ピリジン-2-カルボニトリル(100mg、0.578ミリモル、収率12%)として同定される淡緑色固体を得た。
F.(3-フルオロ-4-メトキシ-ピリジン-2-イルメチル)-カルバミン酸tert-ブチルエステル
3-フルオロ-4-メトキシ-ピリジン-2-カルボニトリル(100mg、0.578ミリモル)を、無水メタノール(10mL、247ミリモル)中に溶出させ、塩化ニッケル六水和物(14mg、0.058ミリモル)に続き、二炭酸ジ-tert-ブチル(255mg、1.157ミリモル)を添加した。結果として得られる淡緑色溶液を氷冷塩浴中において、-5℃に冷却し、次いで、約0℃の反応温度を維持しながら、ホウ化水素ナトリウム(153mg、4.05ミリモル)を、少しずつ添加した。濃褐色の溶液を0℃における攪拌に委ね、室温までゆっくりと温め、次いで、室温において、3時間にわたり攪拌した。反応混合物を40℃で蒸発乾燥させて、黒色の残留物を得たら、これを、ジクロロメタン(10mL)により希釈し、炭酸水素ナトリウム(10mL)で洗浄した。エマルジョンが形成されたので、有機物を、相分離カートリッジを介して分離し、濃縮した。粗液体を、酢酸エチル/イソヘキサンにより溶離させるクロマトグラフィーを介して精製して、標題化合物である、(3-フルオロ-4-メトキシ-ピリジン-2-イルメチル)-カルバミン酸tert-ブチルエステルを、透明の黄色油(108mg、収率62%)として得た。
[MH]=257
G.C-(3-フルオロ-4-メトキシ-ピリジン-2-イル)-メチルアミン塩酸塩
(3-フルオロ-4-メトキシ-ピリジン-2-イルメチル)-カルバミン酸tert-ブチルエステル(108mg、0.358ミリモル)を、イソプロピルアルコール(1mL)中に溶解させ、次いで、HCl(イソプロピルアルコール中に6N)(1mL、0.578ミリモル)を室温において添加し、40℃において、2時間にわたり攪拌した。反応混合物を、減圧下において濃縮し、次いで、エーテルにより練和し、超音波処理し、次いで、デカントして、C-(3-フルオロ-4-メトキシ-ピリジン-2-イル)-メチルアミン塩酸塩として同定される、クリーム状の有色固体(75mg、収率55%)を得た。
[MH]=157
【0118】
実施例1
N-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミド(形態1)
3-(メトキシメチル)-1-(4-((2-オキソピリジン-1(2H)-イル)メチル)ベンジル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(825mg、2.34ミリモル)及びC-(3-フルオロ-4-メトキシ-ピリジン-2-イル)-メチルアミン塩酸塩(450mg、2.34ミリモル)を、0℃に冷却しながら、ジクロロメタン中に溶出させた。1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(627.0mg、3.27ミリモル)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(378.8mg、2.80ミリモル)及びトリエチルアミン(1.63mL、1182ミリモル)を、攪拌しながら添加し、混合物を室温に温め、攪拌を20時間にわたり継続した。クロロホルム(50mL)を添加し、混合物を、飽和NaHCO(水溶液)で洗浄し、真空中において還元した。粗材料を、メタノール/ジクロロメタンにより溶離させながら、クロマトグラフィーにより精製した。溶媒を、真空中において除去し、結果として得られる固体を、ジエチルエーテルにより練和した。結果として得られる固体を、濾過により回収して、標題化合物を得た。
[MH]=492.0
NMR (CDOD) δ: 3.41 (3H, s), 4.03 (3H, s), 4.65 (2H, s), 4.72 (2H, d, J=2.3Hz), 5.24 (2H, s), 5.37 (2H, s), 6.44 (1H, td, J = 1.4, 6.8Hz), 6.62 (1H, d, J = 9.0Hz), 7.18-7.22 (1H, m), 7.31-7.38 (4H, m), 7.56-7.60 (1H, m), 7.75 (1H, dd, J = 1.9, 7.1Hz), 8.18 (1H, s), 8.27 (1H, d, J = 5.6Hz) ppm.
【0119】
式Aの化合物(形態1)のX線粉末回折ディフラクトグラムを、図1aに示す。
ピーク位置の表:
【0120】
【表3】
【0121】
同時熱分析(STA)
形態1についてのSTAデータを、図2に示す。
示差走査熱量測定(DSC)
形態1についてのDSCデータを、図3に示す。
重量測定蒸気吸脱着(GVS)
形態1についてのGVSデータ下記の表に列挙し、図4に示す。
【0122】
【表4】
【0123】
スラリー試験
形態1(20mg)を、90/10のイソプロパノール/水(200μL又は300μL)中に懸濁させ、周囲温度において、72時間にわたり振とうした。上清は、少量のために、濾過せずに蒸発させ、結果として得られる固体を、X線粉末回折により検討した(図5)。結果として得られるX線粉末回折(図5)は、遊離塩基が、おそらく、水和物を形成する傾向を有することを指し示す、図1aのX線粉末回折と異なった。
【0124】
目視による水溶性
形態1(10mg)をガラス製バイアルに秤量し、水を3mLまで、100μLずつ添加し、次いで、その後、1mLずつ添加した。短い平衡時間の後、目視により、可溶性を評価した。
【0125】
形態1は、20mLの水中において、溶解の徴候を全く示さなかった(<<0.5mg/mL)。
【0126】
実施例2
N-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミド(形態1)
3-(メトキシメチル)-1-(4-((2-オキソピリジン-1(2H)-イル)メチル)ベンジル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(825mg、2.34ミリモル)及びC-(3-フルオロ-4-メトキシ-ピリジン-2-イル)-メチルアミン塩酸塩(450mg、2.34ミリモル)を、0℃に冷却しながら、ジクロロメタン中に溶出させた。1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(627.0mg、3.27ミリモル)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(378.8mg、2.80ミリモル)及びトリエチルアミン(1.63mL、1182ミリモル)を、攪拌しながら添加し、混合物を室温に温め、攪拌を20時間にわたり継続した。クロロホルム(50mL)を添加し、混合物を、飽和NaHCO(水溶液)で洗浄し、真空中において還元した。粗材料を、メタノール/ジクロロメタンにより溶離させながら、クロマトグラフィーにより精製した。結果として得られる固体を、高温アセトニトリル中に溶出させ、冷却し、沈殿させ、結果として得られる固体を、濾過により回収して、標題化合物を、白色固体として得た(130mg、収率11%)。
【0127】
式Aの化合物(形態1)のX線粉末回折ディフラクトグラム(方法Bを使用して記録した)を、図1bに示す。単離固体のX線粉末回折ディフラクトグラム(図1b)は、それらが、形態1(実施例1)(図1a)と同じ固体形態であることを確認した。
【0128】
ピーク位置の表:
【0129】
【表5】
【0130】
実施例3
N-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミド(形態1)
3-(メトキシメチル)-1-(4-((2-オキソピリジン-1(2H)-イル)メチル)ベンジル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(61g、0.173モル)を、N,N-ジメチルホルムアミド(400mL)中に溶出させ、1,1’-カルボニルジイミダゾール(27.99g、0.173モル)を、少しずつ添加した。添加が完了したら、反応物を、2時間にわたり、50℃に加熱した。C-(3-フルオロ-4-メトキシ-ピリジン-2-イル)-メチルアミン(26.95g、0.173モル)を、反応混合物に、少しずつ添加した。反応物を、一晩にわたり、50℃に加熱した。反応物を、室温に冷却し、水と飽和NaHCO(水溶液)(4000mL)との3:1混合物に、滴下により添加した。結果として得られる懸濁液を、30分間にわたり攪拌してから、固体を、濾過により単離した。固体を水(2×500mL)で洗浄してから、真空オーブン内において乾燥させて、119gの粗生成物を得た。粗生成物を、他の2つの個別のバッチ(それぞれ、0.173モル及び0.0874モルの酸出発材料から出発する。)と合わせ、イソプロパノール(1400mL)中において、併せてスラリー化させ、還流させるように加熱する。還流時に、全ての材料が溶出するまで、追加分のイソプロパノールを添加した(合計2000mLのイソプロパノールを添加した。)。溶液を30分間にわたり、還流に保持してから、室温に冷却した。混合物を氷冷浴/水浴により30分間にわたり、さらに冷却してから、生成物を濾過により回収した。固体をイソプロパノールにより洗浄し、乾燥させて、167.2gの標題生成物(収率78.5%)を得た。
[MH]=491.9
NMR(CDOD)スペクトルは、形態AのNMRスペクトルと符合した。
【0131】
単離固体のX線粉末回折ディフラクトグラム(方法Bを使用して記録した)(図1c)は、それらが形態1(実施例1及び実施例2)(図1a及び1b)と同じ固体形態であることを確認した。
【0132】
ピーク位置の表:
【0133】
【表6】
【0134】
安定性データ
形態1の試料を二重のポリエチレンバッグ内に詰め、高密度ポリエチレンボトル内に封入し、25℃/60%RHの条件において保管した。試料は、1カ月後及び3カ月後において、X線粉末回折(方法Bを使用する。)により再度解析した。データを、図7に示す。試料を、25℃/60%RHの条件において保管したところ、1カ月後又は3カ月後において、X線粉末回折ディフラクトグラムの変化は観察されなかった。
【0135】
25℃/60%RHにおいて保管された形態1の試料についてのさらなる試験は、表1において記載される通りに実行した。
【0136】
【表7】
【0137】
形態1の第2の試料を二重のポリエチレンバッグ内に詰め、高密度ポリエチレンボトル内に封入し、40℃/75%RHの、加速化安定性条件下において保管した。試料は、1カ月後及び3カ月後において、X線粉末回折(方法Bを使用する。)により、再度解析した。データを図8に示す。試料を40℃/75%RHにおいて保管したところ、1カ月後又は3カ月後において、X線粉末回折ディフラクトグラムの変化は観察されなかった。
【0138】
40℃/75%RHにおいて保管された形態1の試料についてのさらなる試験は、表2において記載される通りに実行した。
【0139】
【表8】
【0140】
実施例4A
N-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミド(形態3)
N-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミド(30mg)の50/50のメタノール/水(100μL)中懸濁液を温度サイクリングにより2日間にわたり成熟させた。結果として得られる固体を単離して、N-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミド(形態3)を得た。
【0141】
N-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミド(形態3)のX線粉末回折ディフラクトグラムを、図6aに示す。
【0142】
ピーク位置の表:
【0143】
【表9】
【0144】
実施例4B
N-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミド(形態5)
N-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミド(500mg)の50/50のメタノール/水(2.5mL)中懸濁液を20℃~50℃の温度サイクリングにより、24時間にわたり成熟させた。結果として得られる固体を単離して、N-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミド(形態5)を得た。
【0145】
実施例4C
N-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミド(形態5)
N-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミド(500mg)の50/50のメタノール/水(20mL)中溶液を調製した。溶液を真空下において乾燥するように蒸発させて、N-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミド(形態5)を得た。
【0146】
実施例4Cから得られた、N-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミド(形態5)のX線粉末回折ディフラクトグラムを、図6bに示す。このX線粉末回折ディフラクトグラムは、上記の方法Bを使用して得た。
【0147】
最も顕著なピークについてのピーク位置の表:
【0148】
【表10】
【0149】
形態5は、形態1、2又は3より不安定であり、時間経過にわたり、多形体である形態3に転換される。形態5に対する、X線粉末回折測定の実施は、形態3を結果として得た。
【0150】
示差走査熱量測定(DSC)
熱重量分析/示差走査熱量測定試験は、40μlのピンホール付きAl製るつぼを使用する、オートサンプラー装備型Mettler Toledo TGA/DSC1 Stare System、装置#1547を使用して実施した。測定条件:30.0℃において5分間にわたり、10℃/分により30.0~350.0℃とし、N2流を40ml/分とする。測定器制御及びデータ解析のために使用されたソフトウェアは、STARe v12.10である。形態5についての熱重量分析/示差走査熱量測定データを、図6cに示す。
【0151】
粒度分布
粒度分布試験は、Malvern Instruments Mastersizer、装置#1712を使用して実施した。Mastersizerは、レンズ範囲を0.05μm~900mmとする300RFを使用した。多分散系を、解析モデルとして使用した。バックグラウンドの測定は、各試料測定の前に実施し、バックグラウンドの走査時間は、12秒間(スナップ撮影12000回)であった。各試料を、屈折率を1.42として、Multipar G内において分散させた。試料分散液に対する掩蔽範囲は、10%~30%であった。各試料は、t=0及びt=30分後において、6回ずつ測定し、測定走査時間は、10秒間(スナップ撮影10000回)であった。試料分散ユニットの目標攪拌速度は、2000±10rpmであった。データの収集及び評価は、Mastersizer S Version 2.19ソフトウェアを使用して実施した。結果として得られる多形体である形態5についての粒度分布分析を、図6dに示す。
【0152】
重量測定蒸気吸脱着
形態5は、重量測定蒸気吸脱着(GVS)試験により決定された通り、23%の質量取込みを伴う吸湿性である。GVS試験は、Surface Measurement Systems Ltd. DVS-1 No Video、装置#2126を使用して実施した。典型的に、20~30mgの試料を、天秤皿にロードし、0%のRHにおいて平衡させた。材料を乾燥させた後、ステップ1つ当たり10%ずつ、増分1つ当たり1時間にわたり、RHを増大させ、95%のRHにおいて停止させた。吸脱着サイクルが完了した後、同じ方法を使用して試料を乾燥させた。データを収集するために使用されたソフトウェアは、DVSWin v3.01 No Videoであった。データ解析は、DVS Standard Analysis Suite v6.3.0(Standard)を使用して実施した。結果として得られるGVSを、図6eに示す。
【0153】
形態5についてのデータを、以下の表にまとめる。
【0154】
【表11】
【0155】
II.式Aの化合物の形態1からの経口固体剤形の調製
【0156】
実施例5A
(カプセル内の式Aの化合物の形態1)
実施例3において調製したN-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミドの形態1を、1.0mmのふるいに通した。次いで、結果として得られる100mgの粉末を、サイズ0のゼラチンカプセルに秤量し、カプセルを閉止した。
【0157】
実施例3において調製したN-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミドの形態1を、1.0mmのふるいに通すことにより調製された粉末の流動特性及び密度特性並びに粒度分布は、以下の通りに決定した。特徴付け時の湿度範囲は、42~65%であった。
形態1の粉末についての流動及び密度の特徴付け
APIの密度(タップ密度及びバルク密度)は、タップ密度装置を使用して、USP[616]2012に従い、二連において決定した。カー指数及びハウスナー比の値は、USP[1174]2010に従い記録された、タップ密度及びバルク密度の数量から計算した。
【0158】
二連測定並びにバルク密度、タップ密度、カー指数及びハウスナー比の計算から得られた平均値結果を表3にまとめる。
【0159】
【表12】
【0160】
1.25未満のハウスナー比及び5~15%のカー指数値は、良好な/優れた流動特性を指し示す(M.E.Aulton、「Aulton’s pharmaceutics the design and manufacture of medicines」、3版、Churchill Livingstone Elsevier、Hungary、2007、356頁)。形態1についての表3における結果は、カー指数及びハウスナー比に基づく流動特性の不良を指し示す。
【0161】
実施例3において調製したN-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミドの形態1を、1.0mmのふるいに通すことにより調製された粉末の粉体流の決定(グラム/秒)は、「オリフィス装置を通る流動」を使用して、二連(25mm及び10mmの二連)において実施した。測定は、流量計を振とうさせずに実施した。流動が生じなかった場合、鋼製スパチュラにより(各回、一定の強度を使用して)、流量計を、静かに、繰り返しタッピングして、試験を繰り返した。25mm及び10mmのオリフィスを通る粉体流について得られた結果を表4に示す。
【0162】
【表13】
【0163】
式Aの化合物の形態1の粉末は、25mm又は10mmのオリフィス内を、タッピングせずには流動せず、前者の場合に限り、タッピングにより流動したことから、カー指数及びハウスナー比について得られた結果が確認される(表3)。湿度は比較的高かったが、式Aの化合物の形態1の粉末は、スパチュラ及びふるいに付着した。この挙動は、湿度条件により影響されうる。
【0164】
式Aの化合物の形態1について測定されたバルク密度値は、低値であったが、これは、十分な流動(適切な用量サイズの容器内の)を確保するのに必要とされる賦形剤のために利用可能な容量が限定されるため、単純な粉末ブレンド(直接カプセル化された、又は錠剤に圧縮された)を使用して、高用量を達成することが困難であることを意味する。
【0165】
粒度分布(PSD)
実施例3において調製したN-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミドの形態1を、1.0mmのふるいに通すことにより調製された粉末の粒度分布は、1mmの振幅に設定したふるい振とう機を5分間にわたり使用するふるい分け分析により、二連において決定した。使用したふるいサイズは、1mm、710μm、500μm、355μm、250μm、125μm、63μm及びパンであった。
【0166】
粒度の決定について得られた結果を表5に示す。
【0167】
【表14】
【0168】
大アパーチャーメッシュ内に保持された材料は、軟質の凝集物であると考えられた。式Aの化合物の形態1の粉末を1.0mmのメッシュを通して既にスクリーニングされていた後で、材料が1.0mmのメッシュ内に保持されたという事実は、この観察を裏付け、式Aの化合物の形態1の粉末が自発的に凝集することを含意する。形態1の大部分は、125及び250μmのふるい上に保持される。
【0169】
実施例5B
(カプセル内の式Aの化合物の形態1)
実施例3において調製したN-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミドの形態1を、1.0mmのふるいに通した。次いで、結果として得られる10mgの粉末を、サイズ0のゼラチンカプセルに秤量し、カプセルを閉止した。
【0170】
実施例6
式Aの化合物の形態1のTPGS製剤
実施例3において調製したN-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミドの形態1を、1.0mmのふるいに通した。
【0171】
水浴を使用して、トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸エステル(TPGS)(172g)を、65℃に加熱し、次いで、式Aの化合物の形態1(28g)を、融解したTPGSに添加し、Silversonミキサーを使用して、混合した(形態1を、26分間にわたり添加し、Silversonミキサーを、5400RPMに設定して、4分間にわたり、さらに混合した。)。カプセル化のために、混合物の温度を、55℃に調整した。Gilsonピペット(710μLに設定した)を使用して、混合物のアリコートを吸い上げ、サイズ0のゼラチンカプセルに分注し、室温に冷却した。
【0172】
式Aの化合物の形態1のTPGS中の薬物ロードは、14.0%(w/w)であり、混合物のカプセル内充填量は、719.0mgであった。式Aの化合物の形態1のカプセル内用量は、100.7mgであった。
【0173】
初期並びに25℃及び40℃の保管の後における、結果として得られるカプセルについての0.1MのHCl及びpH3緩衝液中の溶出試験の結果を図9に示す。
【0174】
溶出試験は、0.1MのHCl又はpH3のクエン酸-リン酸緩衝液による溶出媒体を使用する、Distek溶出装置を使用して、欧州薬局方2.9.3に従い実施した。溶出は、パドル速度を50rpmとして37℃において行う。試料(2mL)は、4μmのカニューレフィルターを介して回収し、オフライン解析のために、0.2μmのポリフッ化ビニリデン製シリンジフィルターを介して、UPLCバイアルに加工した。UPLC解析は、2.5分間にわたる、UV検出及びアセトニトリル:水勾配を伴う、試料の、Waters CSH C18、2.1×75mm、1.7μmカラムへの、1.5μLの注入を使用して実施する。
【0175】
実施例7
式Aの化合物の形態1のGelucire 44/14製剤
実施例3において調製したN-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミドの形態1を、1.0mmのふるいに通した。
【0176】
水浴を使用して、Gelucire 44/14(172g)を、65℃に加熱し、次いで、式Aの化合物の形態1(28g)を、融解したGelucire 44/14に添加し、Silversonミキサーを使用して、混合した(形態1を、17分間にわたり添加し、Silversonミキサーを、5400RPMに設定して、5分間にわたり、さらに混合した。)。カプセル化のために、混合物の温度を、55℃に調整した。Gilsonピペット(710μLに設定した)を使用して、混合物のアリコートを吸い上げ、サイズ0のゼラチンカプセルに分注し、室温に冷却した。
【0177】
式Aの化合物の形態1の、Gelucire 44/14中の薬物ロードは、14.0%(w/w)であり、混合物の、カプセル内充填量は、713.0mgであった。式Aの化合物の形態1の、カプセル内用量は、99.8mgであった。
【0178】
初期並びに25℃及び40℃の保管の後における、結果として得られるカプセルについての0.1MのHCl及びpH3緩衝液中の溶出試験の結果を図10に示す。
【0179】
溶出試験は、0.1MのHCl又はpH3のクエン酸-リン酸緩衝液による溶出媒体を使用する、Distek溶出装置を使用して、欧州薬局方2.9.3に従い実施した。溶出は、パドル速度を50rpmとして、37℃において行う。試料(2mL)は、4μmのカニューレフィルターを介して回収し、オフライン解析のために、0.2μmのポリフッ化ビニリデン製シリンジフィルターを介して、UPLCバイアルに加工した。UPLC解析は、2.5分間にわたる、UV検出及びアセトニトリル:水勾配を伴う、試料の、Waters CSH C18、2.1×75mm、1.7μmカラムへの、1.5μLの注入を使用して実施する。
【0180】
実施例8
式Aの化合物の形態1のTPGS製剤(ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセル)
実施例3において調製したN-[(3-フルオロ-4-メトキシピリジン-2-イル)メチル]-3-(メトキシメチル)-1-({4-[(2-オキソピリジン-1-イル)メチル]フェニル}メチル)ピラゾール-4-カルボキサミドの形態1を、1.0mmのふるいに通した。
【0181】
水浴を使用して、トコフェロールポリエチレングリコールコハク酸エステル(TPGS)(172g)を、78.4℃に加熱し、次いで、式Aの化合物の形態1(28g)を、融解したTPGSに添加した(形態1を、26分間にわたり添加し、Silversonミキサーを、5400RPMに設定して、4分間にわたり、さらに混合した。)。混合物の温度を、55℃に調整し、次いで、高せん断ホモジネーションにかけた(1200RPMにおいて、174分間、次いで、2600RPMにおいて、230分間にわたり)。Gilsonピペット(710μLに設定した)を使用して、混合物のアリコートを吸い上げ、サイズ0のヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルに分注し、室温に冷却した。
【0182】
式Aの化合物の形態1の、TPGS中の薬物ロードは、14.0%(w/w)であり、混合物の、カプセル内充填量は、717.8mgであった。式Aの化合物の形態1の、カプセル内用量は、100.5mgであった。
【0183】
実施例9
式Aの化合物の錠剤製剤
4つの顆粒製剤(WG、WG、WG及びWGと称する。)を、以下の方法に従い、表6及び表7に記載された量を使用して調製した:
一次顆粒化液は、表6に従う成分を、混合容器(WGについては、250gであり、WG、WG及びWGについては、200gである)に添加することにより調製した。一次顆粒化液を、磁気フレアスターラー又はオーバーヘッドスターラーを使用して、均一となるまで攪拌した。
【0184】
各サブロットについて、式Aの化合物の形態1、Avicel PH101及びAcDiSolを、Multipro高せん断ブレンダーに添加し、高速において、5分間にわたりブレンドした。高速においてブレンドし続けながら、さらに5分間にわたり、一次顆粒化液を混合物に注いだ。材料がMultipro高せん断ブレンダーの側壁に付着したら、工程を中断し、材料を容器からこすり落としてから、混合及び流体の添加を再開した。
【0185】
一次顆粒化液の添加の終了時において、湿潤顆粒をさらに1分間にわたり混合した。次いで、さらに5分間にわたり混合しながら、二次顆粒化液をゆっくりと添加した。
【0186】
結果として得られる湿潤顆粒を、4.0mmのメッシュに通した。次いで、湿潤顆粒をステンレス鋼製トレーに並べ、オーブン内で指定の温度において、一晩にわたり乾燥させた。次いで、乾燥させた顆粒を、1mmのメッシュに通し、周囲条件下において、2時間にわたり静置して、平衡させた。顆粒製剤であるWG、WG、WG及びWGを単離した。
【0187】
【表15】
【0188】
【表16】
【0189】
結果として得られるWG顆粒、WG顆粒、WG顆粒及びWG顆粒を特徴付け、結果を表8に示す。パラメータの各々を測定するのに使用された方法を、下記に記載する。
【0190】
顆粒の乾燥減量は、5gの顆粒試料を使用し、Sartorius Moisture Balanceを、105℃において使用して決定した。
【0191】
顆粒の密度(タップ密度及びバルク密度)は、タップ密度装置を使用して、USP[616]2012に従い、二連において決定した。カー指数及びハウスナー比の値は、USP[1174]2010に従い記録された、タップ密度及びバルク密度の数量から計算した。
【0192】
顆粒の粉体流の決定(グラム/秒)は、「オリフィス装置を通る流動」を使用して、二連(25mm及び10mmの二連)において実施した。測定は、まず流量計を振とうさせずに実施した。流動が生じなかった場合、鋼製スパチュラにより(各回、一定の強度を使用して)、流量計を、静かに、繰り返しタッピングして、試験を繰り返した。
【0193】
顆粒の粒度分布は、1mmの振幅に設定したふるい振とう機を、5分間にわたり使用するふるい分け分析により、二連において決定した。使用したふるいサイズは、1mm、710μm、500μm、355μm、250μm、125μm、63μm及びパンであった。
【0194】
【表17】
【0195】
物理的特徴付けデータは、全てのバッチの顆粒は、良好な流動特性(カー指数及びハウスナー比の値は、いずれも低値であり、オリフィスを通る質量流は、10mmの場合であってもなお、著明であった。)を伴い、乾燥していた(すなわち、<3.5%w/w)ことを示す。顆粒を、60℃の温度において乾燥させることは、顆粒の水分含量を、40℃において乾燥させた顆粒と比較して低減した。顆粒は、稠密(バルク密度>0.4g/mL)かつ顆粒状(材料の大部分は、ふるい分け分析時の250及び355μmのメッシュ上において保持された)であったので、錠剤化に適した。
【0196】
8つの錠剤化製剤(T1~T5、T1A、T2A及びT5Aと称し、95gずつとする。)を、以下の方法に従い、表9に記載された量を使用して調製した:
必要とされる量の顆粒及び顆粒外賦形剤(ステアリン酸マグネシウムを除く)の各々を、Erweka AR401ブレンダーのブレンド容器に分注した。混合物は、15RPMにおいて、15分間にわたりブレンドした。ステアリン酸マグネシウムを、ブレンド容器に添加し、混合物を、15RPMにおいて、5分間にわたり、さらにブレンドした。
【0197】
【表18】
【0198】
次いで、結果として得られる混合物を、以下の方法に従い、錠剤にプレス加工する:
Manesty F3プレスを使用して、錠剤をプレス加工した。工具を用いずに、プレスを60TPMに設定し、次いで、直径を8.3mmとし、11kNの過負荷設定とする、丸形の通常用凹面工具を用いてセットアップした。過負荷スプリングに対する目標重量を300mgとして、錠剤を作製するように、プレスをセットアップした。カムの設定は、表10に示された設定に照らして調整した。
【0199】
各錠剤製剤について、250錠ずつを調製した。錠剤化工程の開始時、途中及び終了時において、5つのユニットの厚さ、重量及び硬度を測定した。
【0200】
錠剤製剤T1~T5、T1A、T2A及びT5Aについての物理的特徴付けデータを、表10に示す。
【0201】
表10におけるデータは、以下の標準的手順を使用して生成した:
硬度:欧州薬局方2.9.8
摩損度:欧州薬局方2.9.7
崩壊:欧州薬局方2.9.1
【0202】
【表19】
【0203】
25℃及び40℃において、4週間にわたる保管の後の、錠剤製剤の物理的安定性を、表11において、初期データ(表10)と比較する。製剤T1、T4及びT5は、初期から、ほとんど変化がない、又は変化がない。
【0204】
【表20】
【0205】
剤形の内容物の均一性は、以下の標準的手順:欧州薬局方2.9.40(「投与量単位の均一性」)を使用して決定した。結果を表12に示す。
【0206】
【表21】
【0207】
実施例10
錠剤製剤であるT1A、T2A及びT5Aを、腸溶性コーティングのために選択した。
【0208】
Aeromatic Strea-1 fluid bed dryerを、制御された温度範囲及び1分間当たり1.2グラムの平均噴霧速度において使用して、T1A錠、T2A錠及びT5A錠のコーティング及び物理的試験を実施して、適切に、コーティング50mgの最終重量増加を達成した。
【0209】
コーティング材料は、Plasacryl HTP20(33%において、可塑剤としてのクエン酸トリエチル(TEC)と、粘着防止剤としてのモノステアリン酸グリセロールとを含有する乾燥ポリマー物質を有する。)により可塑化された、Eudragit L30-D55の水性懸濁液である。成分は、Evonik製である。
【0210】
コーティング製剤は、表13に記載した量を使用して調製した。Eudragit L30-D55を、オーバーヘッドスターラーにより攪拌しながら、脱イオン水に添加した。液体を曝気しないように、注意深く攪拌しながら、Plasacryl HTP20をゆっくりと添加した。混合物が均一となるまで、混合物を少なくともさらに10分間にわたり攪拌した。懸濁液を500μmのメッシュに通した。
【0211】
表14に記載したパラメータを使用する、Aeromatic Strea-1 fluid bed dryerを使用して、T1A錠、T2A錠及びT5A錠に、コーティング製剤を噴霧して、コーティング錠である、CT1A、CT2A及びCT5Aを作製した。
【0212】
【表22】
【0213】
【表23】
【0214】
腸溶性コーティングは、崩壊/溶出試験の2つの段階において、以下の基準(欧州薬局方2.9.1に基づく)を満たさなければならなかった:
1.pH3のクエン酸緩衝液:(a)2時間以内の剤形の崩壊及び(b)溶出試験時に、APIのうちの<10%が、2時間以内に放出されること
2.pH6のリン酸緩衝液:剤形が、1時間以内に崩壊すべきこと
【0215】
溶出試験は、pH3のクエン酸-リン酸緩衝液による溶出媒体を使用する、Distek溶出装置を使用して、欧州薬局方2.9.3に従い実施した。溶出は、パドル速度を50rpmとして、37℃において行う。試料(2mL)は、4μmのカニューレフィルターを介して回収し、オフライン解析のために、0.2μmのポリフッ化ビニリデン製シリンジフィルターを介して、UPLCバイアルに加工した。UPLC解析は、2.5分間にわたり、UV検出及びアセトニトリル:水勾配を伴う、試料の、Waters CSH C18、2.1×75mm、1.7μmカラムへの、1.5μLの注入を使用して実施する。
【0216】
【表24】
【0217】
CT1A
適用されたコーティング量(48.6mg)は、目標(49.5mg)に近く、コーティングの欠損は見られなかった。これらの錠剤は、pH3試験に合格し(2時間以内に、破断が見られなかった。)、崩壊が、19分間以内に完了したpH6試験にも合格した。6つの錠剤を、pH3における溶出について調べたが、APIの溶出は、6時間以内に検出されなかった。よって、これらの錠剤は、2時間以内の溶出が、<10%であるという規格に合格した。
【0218】
CT2A
適用されたコーティング量(47.1mg)は、目標(49.5mg)に近く、コーティングの欠損は見られなかった。これらの錠剤は、pH3試験に合格した(2時間以内に、破断が見られなかった。)。しかし、6つの錠剤のうちの3つはpH6試験に不合格であり(すなわち、崩壊時間>1時間)、残りの3つの錠剤は、崩壊がCT1Aより著明に緩徐であった。pH6において、見かけ上、機能的コーティングは、23~24分間後において完全に崩壊したが、コアの大きな断片が試験の1時間後に残存した。あらかじめコーティングされたコアの崩壊は、全ての崩壊媒体中において極めて迅速であるので、pH6において、コーティングがコアの崩壊を緩徐化していることに留意されたい。
【0219】
錠剤コアの過度に緩徐な崩壊に対する最も蓋然性の高い説明は、腸溶性ポリマーがコーティング時又は崩壊試験時にコアに浸透し、酒石酸の存在下において中和されたという説明である。その中性形態においてポリマーは不溶性であり、コアの崩壊を妨げる結合剤として作用しうる。
【0220】
CT5A
適用されたコーティング量(49.0mg)は目標(49.5mg)に近く、コーティングの欠損は見られなかった。これらの錠剤はpH3試験に合格し(2時間以内に、破断が見られなかった。)、崩壊が31~40分間以内に完了したpH6試験にも合格した。6つの錠剤のpH3における溶出について調べたが、APIの溶出は、6時間以内に検出されなかった。よって、これらの錠剤は、2時間以内の溶出が、<10%APIであるという規格に合格した。
【0221】
実施例11
TPGSカプセルのコーティング
HPMC 606のエタノール/水溶液を使用して、実施例6のカプセルを保護し、その後、Caleva miniコーティング装置内において、Eudragit L30-55の水性分散液によりコーティングして、5.5mg/cmのポリマー重量増加を達成した。カプセルを、各々がカプセル14個ずつの2つのバッチとしてコーティングした。コーティング溶液の組成を、表16に提示する。
【0222】
まず、クエン酸トリエチルを水と高せん断速度において10分間にわたり、あらかじめ混合し、次いで、Eudragit懸濁液を溶液に添加し、Heidolphミキサーを使用して、静かに混合した。使用の前に、混合物を、0.5mmのふるいに通し、コーティング時に、連続的に攪拌した。コーティングパラメータを、表17に提示する。
【0223】
【表25】
【0224】
【表26】
【0225】
実施例12
顆粒製剤であるWGA’及びWGA’’を以下の方法に従い、表18及び表19に記載された量を使用して調製した:
一次顆粒化液は、表18に従う成分を、混合容器(600g)に添加することにより調製した。一次顆粒化液を磁気フレアスターラー又はオーバーヘッドスターラーを使用して、均一となるまで攪拌した。
【0226】
各サブロットについて、式Aの化合物の形態1、Avicel PH101及びAcDiSolを、Multipro高せん断ブレンダーに添加し、高速において、5分間にわたりブレンドした。高速においてブレンドし続けながら、さらに5分間にわたり、一次顆粒化液を混合物に注いだ。材料がMultipro高せん断ブレンダーの側壁に付着したら、工程を中断し、材料を容器からこすり落としてから、混合及び流体の添加を再開した。
【0227】
一次顆粒化液の添加の終了時において、湿潤顆粒を、さらに1分間にわたり混合した。次いで、さらに5分間にわたり混合しながら、二次顆粒化液をゆっくりと添加した。
【0228】
結果として得られる湿潤顆粒を4.0mmのメッシュに通した。次いで、湿潤顆粒をステンレス鋼製トレーに並べ、オーブン内で60℃において一晩にわたり乾燥させた。次いで、乾燥させた顆粒を1mmのメッシュに通し、周囲条件下において一晩にわたり静置して平衡させた。顆粒製剤であるWGA’及びWGA’’を単離した。
【0229】
【表27】
【0230】
【表28】
【0231】
WGA’顆粒及びWGA’’顆粒を特徴付け、結果を表20に示す。各パラメータの測定に使用された方法を下記に記載する。
【0232】
顆粒の乾燥減量は、5gの顆粒試料を使用し、Sartorius Moisture Balanceを、105℃において使用して決定した。
【0233】
顆粒の密度(タップ密度及びバルク密度)は、タップ密度装置を使用して、USP[616]2012に従い、二連において決定した。カー指数及びハウスナー比の値は、USP[1174]2010に従い記録されたタップ密度及びバルク密度の数量から計算した。
【0234】
顆粒の粉体流の決定(グラム/秒)は、「オリフィス装置を通る流動」を使用して、二連(25mm及び10mmの二連)において実施した。測定は流量計を振とうさせずに実施した。流動が生じなかった場合、鋼製スパチュラにより(各回、一定の強度を使用して)、流量計を静かに繰り返しタッピングして試験を繰り返した。
【0235】
顆粒の粒度分布は、1mmの振幅に設定したふるい振とう機を5分間にわたり使用するふるい分け分析により、二連において決定した。使用したふるいサイズは、1mm、710μm、500μm、355μm、250μm、125μm、63μm及びパンであった。
【0236】
【表29】
【0237】
2つの錠剤化製剤(T1A’及びT1A’’と称し、150gずつとする。)を以下の方法に従い、表21に記載された量を使用して調製した:
必要とされる量の顆粒及び顆粒外賦形剤(ステアリン酸マグネシウムを除く)の各々を、Erweka AR401ブレンダーのブレンド容器に分注した。混合物は、15RPMにおいて、15分間にわたりブレンドした。ステアリン酸マグネシウムをブレンド容器に添加し、混合物を15RPMにおいて5分間にわたり、さらにブレンドした。
【0238】
【表30】
【0239】
次いで、結果として得られる混合物を以下の方法に従い、錠剤にプレス加工する:
Manesty F3プレスを使用して錠剤をプレス加工した。プレスを、工具を用いずに40TPMに設定し、次いで、直径を8.3mmとし、表22に示された過負荷設定とする、丸形の通常用凹面工具を用いてセットアップした。過負荷スプリングに対する目標重量を300mgとして、錠剤を作製するようにプレスをセットアップした。カムの設定は、表22に示された設定に照らして調整した。
【0240】
各錠剤製剤について、100錠ずつを調製した。錠剤化工程の開始時、途中及び終了時において、5つのユニットの厚さ、重量及び硬度を測定した。
【0241】
表22におけるデータは、以下の標準的手順を使用して生成した:
硬度:欧州薬局方2.9.8
摩損度:欧州薬局方2.9.7
崩壊:欧州薬局方2.9.1
錠剤の乾燥減量は、5gの試料を使用し、Sartorius Moisture Balanceを、105℃において使用して決定した。
【0242】
【表31】
【0243】
T1A’錠剤は、77±15N(低硬度)~162±20N(高硬度)の間において作製した。全ての錠剤セットは目標重量に近く、良好な相対標準偏差、許容可能な摩損度(<0.5%)及び良好な水中崩壊時間(<15分間)を伴っていた。
【0244】
T1A’’バッチの錠剤化時に、硬度目標の下限を満たす錠剤を達成することは可能でなく、作製された錠剤は、40kNより硬くなかった。錠剤は軟らかい見かけであった。T1A’(高レベルの細粒を有する顆粒により、圧縮に成功した)と、T1A’’(低レベルの細粒を伴う顆粒により、圧縮されなかった)とは、AcDiSolを添加する時点に関してだけ異なった。
【0245】
III.生物学的方法
式Aの化合物が血漿カリクレインを阻害する能力は、以下の生物学的アッセイを使用して決定することができる:
【0246】
血漿カリクレインについてのIC50の決定
インビトロにおける血漿カリクレインの阻害活性は、公表されている標準法(例えば、Johansenら、Int.J.Tiss.Reac.、1986、8、185;Shoriら、Biochem.Pharmacol.、1992、43、1209;Stuerzebecherら、Biol.Chem.Hoppe-Seyler、1992、373、1025を参照されたい。)を使用して決定した。ヒト血漿カリクレイン(Protogen)を、蛍光発光基質であるH-DPro-Phe-Arg-AFC及び多様な濃度の被験化合物と共に、25℃においてインキュベートした。残留酵素活性(初期反応速度)は、410nmにおける吸光度の変化を測定することにより決定し、被験化合物についてのIC50値を決定した。
【0247】
このアッセイにおいて調べたところ、式Aの化合物は、3.3nMのIC50(ヒトPKal)を示した。
【0248】
式Aの化合物はまた、類縁の酵素KLK1に対する阻害活性についても、以下の生物学的アッセイを使用してスクリーニングした:
【0249】
KLK1についてのIC50の決定
インビトロにおける、KLK1の阻害活性は、公表されている標準法(例えば、Johansenら、Int.J.Tiss.Reac.、1986、8、185;Shoriら、Biochem.Pharmacol.、1992、43、1209;Stuerzebecherら、Biol.Chem.Hoppe-Seyler、1992、373、1025を参照されたい。)を使用して決定した。ヒトKLK1(Callbiochem)を、蛍光発光基質であるH-DVal-Leu-Arg-AFC及び多様な濃度の被験化合物と共に、25℃においてインキュベートした。残留酵素活性(初期反応速度)は、410nmにおける吸光度の変化を測定することにより決定し、被験化合物についてのIC50値を決定した。
【0250】
このアッセイにおいて調べたところ、式Aの化合物は、>40000nMのIC50(ヒトKLK1)を示した。
【0251】
式Aの化合物はまた、類縁の酵素FXIaに対する阻害活性についても、以下の生物学的アッセイを使用してスクリーニングした:
FXIaについての阻害%の決定
インビトロにおけるFXIaの阻害活性は、公表されている標準法(例えば、Johansenら、Int.J.Tiss.Reac.、1986、8、185;Shoriら、Biochem.Pharmacol.、1992、43、1209;Stuerzebecherら、Biol.Chem.Hoppe-Seyler、1992、373、1025を参照されたい。)を使用して決定した。ヒトFXIa(Enzyme Research Laboratories)を、蛍光発光基質であるZ-Gly-Pro-Arg-AFC及び40μMの被験化合物と共に、25℃においてインキュベートした。残留酵素活性(初期反応速度)は、410nmにおける吸光度の変化を測定することにより決定した。
【0252】
このアッセイにおいて調べたところ、式Aの化合物は、40μMにおいて、0%の阻害%(ヒトFXIa)を示した。
【0253】
IV.薬物動態
式Aの化合物についての薬物動態試験を実施して、雄のSprague-Dawleyラットにおける単回経口投与後の薬物動態を評価した。2匹のラットに名目量2mg/mLの被験化合物の媒体中組成物5mL/kg(10mg/kg)の単回経口投与を施した。投与後、血液試料を24時間にわたり回収した。サンプリング時間は、5、15及び30分後、次いで、1、2、4、6、8及び12時間後であった。回収後、血液試料を遠心分離し、LCMSにより血漿画分を被験化合物の濃度について解析した。
【0254】
式Aの化合物について、この試験から得られた経口曝露データを、表23に示す。
【0255】
【表32】
【0256】
表24:本発明の経口固体剤形についてのインビボにおける薬物動態データ
生体内試験
被験種は、カニクイザルであった。経口固体剤形は、強制経口投与管及び排気を使用する、動物の胃への直接的留置により投与した。名目量1mLの採血物は抗凝固剤として3.2%クエン酸三ナトリウムを含有する採血管に回収した。血液試料は遠心分離により処理し、血漿試料を調製した。血漿試料は、解析の前に、-50℃未満において保管した。
【0257】
血漿の解析は、以下の方法により実施した:
クエン酸により防腐処理された血漿からの式Aの化合物の定量は、アセトニトリル中に4%の酢酸を使用するタンパク質沈殿により実施した。Biotage ISOLUTE(商標登録)PPT+タンパク質沈殿プレートを使用して、沈殿したタンパク質を濾過した。LC-MSによる式Aの化合物の定量は、較正範囲を1~3,160ng/mLとするWaters Quattro Micro API測定器上において実施した。血漿濃度のデータ解析は、WinNonlinにおいて、ノンコンパートメントモデルを使用して実施した。
【0258】
【表33】
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図7
図8
図9
図10