(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】ベローズの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16J 3/04 20060101AFI20220524BHJP
C08J 7/00 20060101ALI20220524BHJP
F16D 3/84 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
F16J3/04 D
C08J7/00 305
C08J7/00 CFD
F16D3/84 W
(21)【出願番号】P 2020538549
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2018085423
(87)【国際公開番号】W WO2019137753
(87)【国際公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】102018100764.7
(32)【優先日】2018-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507334967
【氏名又は名称】ゲーカーエン ドライブライン インターナショナル ゲゼルシャフト ミト ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】GKN DRIVELINE INTERNATIONAL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】ストレゾウスキ,トルステン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェッテ,ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】レアー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ベンダー,ベルント
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-226616(JP,A)
【文献】特開2010-106077(JP,A)
【文献】特開2003-347106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 3/04
C08J 7/00
F16D 3/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質セグメントおよび軟質セグメントを有するコポリエステルの群から選択される少なくとも1つの熱可塑性エラストマーを含む混合物からベローズを製造するための方法であって、
前記少なくとも1つの熱可塑性エラストマーが、前記混合物の全体重量に対して
1.75%から
2.5%のトリアリルイソシアヌレートと第1工程で混合され、第2工程で前記ベローズが形成され、第3工程で前記ベローズが
190kGyから
260kGyの範囲の電離放射線に曝される方法。
【請求項2】
硬質セグメントおよび軟質セグメントを有するコポリエステルの群から選択される少なくとも1つの熱可塑性エラストマーを含む混合物からベローズを製造するための方法であって、
前記少なくとも1つの熱可塑性エラストマーが、前記混合物の全体重量に対して
1.85%から
4.5%のトリアリルイソシアヌレートと第1工程で混合され、第2工程で前記ベローズが形成され、第3工程で前記ベローズが
200kGyの電離放射線に曝される方法。
【請求項3】
硬質セグメントおよび軟質セグメントを有するコポリエステルの群から選択される少なくとも1つの熱可塑性エラストマーを含む混合物からベローズを製造するための方法であって、
前記少なくとも1つの熱可塑性エラストマーが、前記混合物の全体重量に対して
2.25%のトリアリルイソシアヌレートと第1工程で混合され、第2工程で前記ベローズが形成され、第3工程で前記ベローズが
220kGyから
280kGyの範囲の電離放射線に曝される方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの熱可塑性エラストマーの前記軟質セグメントは、2~8個の炭素原子を備えたユニットを含むことを特徴とする請求項1
から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記軟質セグメントは、2~8個の炭素原子を有するアルキレンオキシドの群から選択されるポリエーテルであることを特徴とする請求項1から
4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記硬質セグメントがポリブチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする、
請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第1工程において、正確に1つの熱可塑性エラストマーが使用されることを特徴とする、
請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第2工程における前記ベローズの形成は、圧力ブロワ射出成形法、押出法、射出成形法、トランスファー成形法、および/または押出成形法によって行われることを特徴とする、
請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記第2工程における前記ベローズの形成は、170℃~250℃の範囲の温度で行われることを特徴とする、
請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第3工程における曝露は、5MeV~15MeVの範囲のエネルギーを有する少なくとも1つのイオン化ビームで行われることを特徴とする、
請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第3工程における前記曝露は、20kGy~40kGyの範囲の放射線量で少なくとも1つの電離ビームを用いて漸増的に行われることを特徴とする、
請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項1から
11のいずれかに記載の方法に従って製造されたベローズ、特にアコーディオンベローズまたはアーチベローズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの熱可塑性エラストマーを含む混合物からベローズを製造する方法、およびこの方法により製造されたベローズに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなタイプのベローズ、特にアーチベローズとアコーディオンベローズは、機械部品の封止に使用される。これらのベローズは、特に自動車構造のジョイントの封止(シール)に使用される。一般的なタイプのベローズは、機械部品、たとえばスイベルジョイントの外側ジョイント部分に取り付けるための直径が大きい第1カラーと、別の機械部品、たとえばシャフトに取り付けるための直径がより小さい第2カラーとを備える。直径が大きい第1カラーと直径が小さい第2カラーとの間にはベローズ部分があり、これは、アーチベローズの場合は、ほぼ半トロイダル状であり、アコーデイオンベローズの場合は円錐状であり、いずれの場合もアコーディオン状のプリーツ領域を有するベローズ壁領域が配置される。しかしながら、プリーツ領域は、同じ直径のプリーツを有することもでき、したがって、少なくとも部分的により円筒形とすることができる。アーチベローズは、高速で高い屈曲角度と変位を可能にするジョイント構造で特に使用される。アコーディオンベローズは、特にユニバーサルジョイントに使用される。動作状態では、特に高速で大きな屈曲角度では、ベローズ内で熱が発生し、その結果、ベローズ材料の機械的強度が低下する。特に、ベローズの引張強度と回転特性は、高温になると低下する。特に、自動車構造のエレクトロモビリティにおける高度な継手構造の場合、高速化に関連する問題でもあるが、ベローズに課せられる要件がより増している。特に運転時間(ランタイム)が長く、回転速度が速いと、運転中のベローズの温度が大幅に上昇するため材料の損傷が発生します。
【0003】
WO98/38435A1は、アーチベローズの上記問題を解決するため、15%から85%の間の不可逆的に架橋された熱可塑性エラストマーから射出成形またはブロー成形プロセスで製造することを開示している。不可逆的な架橋は、化学的プロセスまたは熱的プロセスによって行われることもできるが、成形されたアーチベローズにβ線またはγ線を照射することによっても行うことが可能である。 WO98/38435A1に記載されている方法を用いれば、連続動作で最高100℃の温度に耐えることができ、120℃までのピーク温度で、アーチベローズの引張強度や伸び特性を損なうことなくアーチベローズを製造できる。しかしながら、より高速の電気モーターのための最新のジョイント構造の場合、上記公報で記載されている方法またはそれを用いて製造されたベローズは、十分な耐熱性を有していない。
【0004】
上記を解決する代替案として、熱可塑性エラストマー材料からベローズを製造する方法がDE112006003257B4に開示されている。前記材料からベローズが形成される前に不可逆的に少なくとも部分的に架橋され、前記不可逆的に架橋された前記成形のための出発材料と混合され、この混合物は、重量比で最大70重量%の前記不可逆的に架橋された材料を含む。ベローズの成形前の熱可塑性エラストマー材料の不可逆的な架橋は、この方法で処理された材料から製造されるアコーディオンベローズの特に大量生産において均一な特性の品質を保証する。WO98/38435A1にある、その後の架橋で生じる欠点は、これにより防止できる。架橋は、化学的および/または熱的におよび/または照射によって行われる。放射線は、少なくとも約0.5MeVである。しかし、DE 112006003257B4に開示された方法によっても、現代のジョイント構造の要件、特に高速回転で生じる高温に対処するベローズを製造することはできない。
【0005】
従来技術から知られている欠点が回避できる方法によりベローズを製造すること、特に、非常に高い動作温度に耐えることができるベローズを製造する方法を提供する必要がある。これに対し、本発明の目的は、少なくと1つの熱可塑性エラストマーを含む混合物からベローズを製造する方法を提供することであり、これにより、特に現代のジョイント構造で使用できるだけの高温に耐え、より長い耐用年数を有するベローズを製造することである。
【0006】
上記目的は、硬質セグメントおよび軟質セグメントを有するコポリエステルの群から選択される少なくとも1つの熱可塑性エラストマーを含む混合物からベローズを製造することにより達成される。すなわち、第1工程で少なくとも1つの熱可塑性エラストマーは、混合物の全体量に対し0.8重量%、好ましくは約1.2重%から約5重量%、より好ましくは約1.4重量%から約3.5重量%、より好ましくは約1.5重量%、さらにより好ましくは約1.85重量%、最大約2.7重量%のトリアリルイソシアヌレートと混合され、第2工程でベローズが製造され、第3工程で前記ベローズは、約140kGyから約350kGyの範囲の線量で、好ましくは約190kGyから約260kGyの範囲の線量、より好ましくは約150kGyから約250kGyの範囲の線量、より好ましくは約205kGyから約320kGyの範囲、さらにより好ましくは約220kGyから約280kGyの範囲、さらにより好ましくは約170kGyから約220kGyの範囲の線量で電離放射線に曝露される。このプロセスにおいては、電離放射線に曝された後、少なくとも1つの熱可塑性エラストマーで作られたベローズ材料は、同じ融点を有することから、エラストマーの特性を示すように実行される。本発明に係る方法の好ましい実施形態として、トリアリルイソシアヌレートは、混合物の全体量に対して、約1.85重量%~約2.6重量%の範囲の量、より好ましくは約2重量%~約2.5重量%の範囲の量で使用される。混合物の望ましい組成は、熱可塑性エラストマーおよびトリアリルイソシアヌレートを、混合物全体量に対して、上記で定義された様々な量、好ましくは約1.85重量%から約2.6重量%の範囲の量、より好ましくは約2重量%から約2.5重量%の範囲の量で構成される。ベローズを製造するために、化学的および/または熱的架橋試薬として作用するトリアリルイソシアヌレートを、特定の狭い範囲のパーセンテージで混合物全体に添加することにより、たとえば4800rpmの回転速度で7°の曲げ角及び140°Cの温度で100時間を超える運転時間、さらに6,000rpmの回転速度で3°の曲げ角、で500時間を超える運転時間を達成可能である。驚くべきことに、照射を伴えば、トリアリルイソシアヌレートを添加しないと達成できない150°Cの温度であっても、250kGyより高いエネルギー線量でも達成できる。特に、少なくとも1つの熱可塑性エラストマーにトリアリルイソシアヌレートを約1.75重量%?約2.5重量%の量で混合した場合、好ましくは約180kGyの範囲、より好ましくは約190kGyから約260kGy、さらにより好ましくは約190kGyから約220kGyの範囲、さらにより好ましくは約190kGyから約210kGyの範囲の放射線量で、トリアリルイソシアヌレートを2倍添加したものよりも高い運転時間を達成することができる。特に、少なくとも1つの熱可塑性エラストマーを含む混合物中のトリアリルイソシアヌレートを同量添加した場合の運転時間を比較すると、照射なし、もしくは140kGy未満の放射線量で照射され製造されたベローズよりも約30%から約400%、場合によっては最大で約800%の運転時間となる。電離放射線の線量の比較的狭い範囲と併せて添加されるトリアリルイソシアヌレート量の比較的狭い範囲で、140℃を超える温度でこのように有効な長い運転時間を達成できることは驚くべきことである。本発明による方法の好ましい実施形態では、ベローズは完全に電離放射線に曝される。本発明の別の実施形態では、ベローズのプリーツ領域のみが電離放射線に曝露され、プリーツ領域に隣接する2つのカラー領域は曝露されず、ベローズを固定する役割を果たす。
【0007】
本発明におけるベローズは、好ましくはアーチベローズおよびプリーツベローズである。その基本的な構造については、先行技術の説明と併せて既に説明した。本発明のアーチベローズは、特に好ましくは、大径の第1カラー領域とベローズ壁との間に配置されて半トロイダル形状で配置された外部補強リブを有する。これらは、アーチベローズの中心軸にほぼ垂直に配置され、好ましくは少なくとも8個、より好ましくは少なくとも12個、さらにより好ましくは少なくとも16個の補強リブを有する。大径の第1カラー領域および小径の第2カラー領域は、異なる設計がなされていてもよい。これにより、特に接続する機械部品の状態に適合させることができる。このように、第1および第2カラー領域は、機械部品が対向する各バインダシート領域に、環状溝の形態で少なくとも1つの円周方向の凹部を含む。これは、機械部品の外面上に対応する環状ビーズを収容する。特に、最初のより大きなカラー領域のバインダーシート領域は、機械部品の端縁の手前で終わることも、また、機械部品の端縁を超えて拡張することもできる。さらに別の好ましい実施形態では、外側補強リブの代替として、またはそれに加えるものとして、内部補強リブが配置されており、大径の第1カラー領域と半トロイダル領域との間の移行領域から開始して、少なくとも部分的に半トロイダルベローズ壁の内側に係合しており、これをアーチベローズのプリーツ領域として扱うことができる。内側または外側の補強リブを備えたアーチベローズは、例えば、国際公開第2009/155956A1号から既知であり、その開示は、内側および外側の補強リブの設計に関する本出願の主題でもある。さらに、バインダーの大径の第1カラー領域に割り当てられた第1のバインダーシート領域と、小径の第2カラー領域におけるバインダーの第2のバインダーシート領域は、バインダーが外れないように、周囲壁、耳状突起等の形態の境界を有することもできる。バインダーは、例えば、圧縮バンドなどの形態であってもよい。
【0008】
アーチベローズに関連して上記で説明したものと同様の方法で、アコーディオンベローズの第1の大きなカラー領域および第2の小さなカラー領域が形成される。アコーディオンベローズは、好ましくは、プリーツ領域の形態で、大径の第1カラー領域から小径の第2カラー領域へと円錐状に先細りとなるベローズ壁領域を有することが望ましい。また、等しい直径のカラー領域を有するアコーディオンベローズが存在していてもよく、その結果、ベローズ領域、すなわちプリーツ領域は、カラー間でテーパー状ではなく、基本的に円筒状である。本発明の意味におけるベローズ壁領域またはアコーディオンベローズのプリーツ領域は、種々のデザインを有することが可能である。特に、アコーディオンベローズ領域(蛇腹壁領域)は、少なくとも2つのプリーツ、好ましくは少なくとも4つのプリーツ、さらに好ましくは少なくとも6つ以上のプリーツを有し、それらの間に折りたたみ谷(トラフ)、あるいは折りたたみ先端(ピーク)がある。1つまたは複数のプリーツ、例えば3つまたは4つのプリーツが、それらの折り目先端(ピーク)で測定された同一の内径を有することができ、これにより円錐形のプリーツ領域が少なくとも部分的に実質的に円筒形になる。プリーツ領域のこのような円筒形部分は、好ましくは、小径の第2カラー領域に向かって配置されるか、またはそれに直接隣接するように配置される。また、溝の中に円周方向のリブがあり、プリーツ領域の円錐部とプリーツ領域の円筒部とを分離している場合もある。
【0009】
本発明において、アーチベローズまたはアコーディオンベローズをジョイントハウジング上に配置するように設計することができ、ジョイントハウジングはトリローブ外形も有することができることが特に好ましい。この場合、アーチベローズまたはアコーディオンベローズの第1カラー領域は、トリローブ形ジョイントハウジングの外側の輪郭に沿って、バインダーの半径円周方向のバインダーシート表面を提供するように設計することができる。あるいは、アーチベローズまたはアコーディオンベローズの第一カラー領域が円形断面を有するように、アダプタを使用することができる。本発明の意味におけるベローズは、ユニバーサルジョイントでの使用に特に適している。本発明に記載のアーチベローズは、この目的に特に高速の回転速度に達するジョイント、特にあまり大きく撓まないスイベルジョイントに適しており、それに使用することが望ましい。
【0010】
「約」または「実質的に」という用語が本発明において値、値の範囲、または値を参照する用語と併せて本発明において使用される場合、これらの用語が所定の文脈において当業者に典型的と考えられるものを意味するものと理解されたい。特に、所定の値、値の範囲、または値を参照する用語の偏差は、用語「約」または「実質的に」は、±10%、好ましくは±5%、より好ましくは±2%の偏差を含む。本発明の方法において使用することができる混合物およびその成分について、成分および定義を参照する量、例えば、物理化学的特性に関して種々の範囲が与えられる場合、種々の範囲の上限および下限は、それぞれの成分およびそれぞれの定義に関連して、互いに組み合わせることができる。本発明の意味における熱可塑性エラストマーは、硬質セグメントおよび軟質セグメントを有する熱可塑性コポリエステルであり、これは、熱可塑性ブロックコポリエステルとも称される。硬質セグメントおよび軟質セグメントは分子内ではっきりと分離されている。特定の温度では、これらの熱可塑性エラストマーは連続相と不連続相に分離され、不連続相のガラス転移温度Tg未満では架橋点として機能する。本発明の目的のために特に好ましいのは、約25ショアDと約75ショアDの間の範囲の硬度を有する熱可塑性ブロックコポリエステルである。さらに好ましいのは、平均分子量Mwが約80,000から約200,000の範囲、より好ましくは約100,000から約150,000の範囲である熱可塑性コポリエステルである。熱可塑性ブロックコポリエステルは、特に、本発明の特許出願時に有効であるバージョンのASTM D638による引張り力を、約10MPa~約50MPaの範囲、より好ましくは約15MPaから約40MPaの範囲で有することが好ましい。熱可塑性プラスチックは、ベローズ、特に自動車に必要なアコーディオンベローズまたはアーチベローズの処理において必要なエラストマー特性を示さず、それらの要件を満たさないので、混合物には含まれない。
【0011】
少なくとも1つの熱可塑性エラストマーの軟質セグメントは、特に、本発明に記載されるように、2~8個の炭素原子のユニット、好ましくは3から6個の炭素原子のユニット、特にこのタイプの繰り返しユニットを含むことが好ましい。少なくとも1つの熱可塑性エラストマーの軟質セグメントは、特に好ましくは、2から8個の炭素原子、好ましくは3から6個の炭素原子を有するアルキレンオキシドの群から選択されるポリエステルである。軟質セグメントは、特に好ましくはポリテトラヒドロフラン単位、好ましくは少なくとも1つのそのようなポリテトラヒドロフラン単位、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは少なくとも4つのそのような単位から形成される。また、2?8個の炭素原子を有するユニットは、より好ましくは軟質セグメント中のテレフタレートユニットに結合される。ポリテトラヒドロフランはまた、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、またはポリテトラメチレンオキシドとも称される。
【0012】
本発明では、少なくとも1つの熱可塑性エラストマーエーテルの硬質セグメントは、好ましくはポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレートを含む群から選択され、特に好ましくはポリブチレンテレフタレートである。本発明では、少なくとも1つの熱可塑性エラストマーは、非常に特に好ましくは、ポリブチレンテレフタレートからなる硬質セグメント、およびテレフタレートユニットを有するポリメチレンオキシドからなる軟質セグメントから形成され、軟質セグメントはポリテトラメチレングリコールエーテルテレフタレートとしても知られている。本発明の文脈において、ベローズが製造される混合物は、非常に特に好ましくは、正確に1つの熱可塑性エラストマー、非常に特に好ましくは、上述のものから構成される。
【0013】
ベローズを製造するための混合物は、少なくとも1つ、好ましくは正確に1つの熱可塑性エラストマー、特に好ましくは上述のようなものに加えて、その他の組成物、化学的および/または熱的架橋剤として作用するトリアリルイソシアヌレートを含むこともできる。これら添加物は、カーボンブラックを含む染料、特に温度感受性トリアリルイソシアヌレートのための安定剤、加工助剤、変性剤、酸化防止剤、および/または触媒を含む群から選択される。混合物は、特に好ましくは、少なくとも1つ、より好ましくは正確に1つの熱可塑性エラストマーであって、特に上述の熱可塑性エラストマーおよびトリアリルイソシアヌレートのみから構成される。多数の熱可塑性エラストマーの混合物は、これが不規則な材料特性を生じ得るか、または特に強度値(strength value)を低下させ得るので、好ましくは回避される。
【0014】
第1工程での混合物の製造は、例えばタンブラーを用いて行われる。少なくとも1つの熱可塑性エラストマーおよびトリアリルイソシアヌレートは、好ましくは、顆粒形態であり、タンブルミキサーなどの市販のミキサーで均質な混合物が形成されるまで、容易に混合できる。トリアリルイソシアヌレートは、好ましくは、配合工程中に混合物に添加され、すなわち、熱可塑性エラストマーは、最初にミキサーに入れられ、トリアリルイソシアヌレートおよび他の任意の添加剤、例えば、カーボンブラック、または安定剤、のように、後に少量を混合物に添加される。少なくともトリアリルイソシアヌレートおよび任意の添加剤を、熱可塑性エラストマーの硬質および軟質セグメントを形成する出発物質の重合中に添加することもでき、その結果、特定の状況下で後続の配合工程を省略できる。トリアリルイソシアヌレートおよび/または添加剤の一部のみを重合工程中に添加することもでき、トリアリルイソシアヌレートおよび/または添加剤の残りをその後の配合工程中に添加することもできる。好ましくは、トリアリルイソシアヌレートの少なくとも一部は、その重合中に、少なくとも1つ、好ましくは正確に1つの熱可塑性エラストマーに添加される。また、添加剤の全部、またはトリアリルイソシアヌレートの全部を重合工程中に添加し、添加剤の全部またはトリアリルイソシアヌレートの全部を配合工程中に添加することも可能である。ここで使用されている用語「添加剤」は、上記で特定された1つ以上の成分を含む。特に好ましくは、少なくとも1つの熱可塑性エラストマー、より好ましくは正確に1つの熱可塑性エラストマー、およびトリアリルイソシアヌレートからなる予備混合物を製造する。このような予備混合物は、予備混合物の全体量に対して約10重量%から約50重量%のトリアリルイソシアヌレート、および約50から約90重量%の少なくとも1つの熱可塑性エラストマー、好ましくは正確に1つの熱可塑性エラストマー、より正確には、上記のような熱可塑性ブロックコポリエステルを、予備混合物の全体量に対して同様の重量%で含む。予備混合物は、均質な混合物を得るために、例えばタンブラー中で製造することができ、この場合には、この混合物は、通常の室温である25℃よりも高い温度で行うこともでき、その後、少なくとも1つの熱可塑性エラストマーをこの予備混合物に添加して、全体の混合物を得る。特に好ましくは、予備混合物を製造するために使用される少なくとも1つの熱可塑性エラストマーおよび少なくとも1つの熱可塑性エラストマーは同一であり、好ましくは、正確に1つの熱可塑性エラストマー、より好ましくは正確に1つの熱可塑性ブロック-コポリエステルが使用され、これは予備混合物においておよびベローズを製造するための混合物の製造においても同様である。
【0015】
トリアリル-s-トリアジンt-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンとも呼ばれるトリアリルイソシアヌレートは、三官能性重合性モノマーであり、本発明の方法でベローズを製造するための混合物中の少なくとも1つの熱可塑性エラストマーの架橋成分として働く。トリアリルイソシアヌレートの様々な製造方法は、DE 10 2006 032 167 B4に記載されている。
【0016】
本発明による方法の第2工程におけるベローズの製造は、好ましくは、圧力ブロワ射出ブロア法、押出法、射出成形法、トランスファー成形法、および/または押出ブロア法を用いて行われる。射出成形法による製造が特に好ましく、製造されるベローズがアーチベエローズである場合に特に好ましい。第2工程におけるベローズの製造は、好ましくは約170℃から約250℃の範囲の温度で、より好ましくは約200℃から約250℃の範囲の温度で製造される。本発明によれば、好ましくは、射出成形工程においてベローズを製造するために一軸または二軸スクリュー押出機を使用する場合、押出機内の混合物の温度は、好ましくは、吐出バルブに向かって上昇し、吐出温度は、好ましくは、約230℃から約250℃の範囲である。アコーディオンベローズが本発明に係る方法を使用して製造される場合、アコーディオンベローズは、圧力ブロワー射出ブロー成形工程で製造されることが好ましく、混合物の処理温度は、アーチベローズを製造するための射出成形工程に関連して、上述したものに一致する。
【0017】
第3工程における曝露は、好ましくは、約5MeVから約15MeVの範囲、より好ましくは約6MeVから約12MeVの範囲のエネルギーを有する少なくとも1つの電離ビームで行われる。このようなエネルギー入力により、十分な架橋が比較的短時間で行われるので、本発明による方法を使用して、ベローズを工業規模で適切に製造することができる。
【0018】
特に好ましくは、第3工程での曝露は、約20kGyから約40kGyの放射線量の少なくとも1つの電離ビームで、さらに好ましくは約25kGyから約36kGyの範囲の放射線量で漸増的に行われる。曝露は、約140kGyから約350kGyの範囲、好ましくは約190kGyから約260kGyの範囲、より好ましくは約150kGyから約250kGyの範囲の放射線量まで、より好ましくは約205kGyから約320kGyの範囲、さらにより好ましくは約220kGyから約280kGyの範囲、および約160kGyから約220kGyの範囲の放射線量に達するまで行われる。そのような放射線量での照射により製造されたベローズは、例えば150°Cの高温で100時間以上の運転時間に達するため、最新のジョイント設計の要件を満たすことが可能となった。上記の総放射線量よりも少ない放射線量を使用した場合、通常、約150°Cの高温で100時間を超える運転時間が生じることはない。本発明の意味での放射線量への漸増的曝露は、これにより、既に製造されたベローズを可能な限り均一に架橋することができるという利点を有する。その結果、材料の相違にかかわらずこの方法で製造されたベローズは高い耐用年数、高い運転時間を有するすることができる。
【0019】
電子ビームは、好ましくは電離放射線として使用される。しかしながら、X線、γ線、α線または短波紫外線などの代替放射線源の使用も可能である。
【0020】
放射線量を増加させるための個々の工程の間に、約1秒から約60分の間又はそれ以上の休止が有効に存在する。例えば、2つ以上の電子ビームを使用する電子ビーム装置、特に、既に生成されたベローズにすべての側面から同時にまたは上方から異なる角度で電子ビームを照射する装置を使用することがさらに好ましい。そのようなデバイスは、例えば、4又は8以上の電子ビームを放射することができる。複数の電子ビームを使用する場合、上記の値は総線量のみならず、電子ビームを一緒に曝露する漸増的な手順に適用される。
【0021】
GPC測定に基づいて、本発明による方法の第3工程における少なくとも1つの電子ビームへの曝露は、少なくとも1つの熱可塑性エラストマーの架橋をもたらすことが見出された。エネルギー線量が高いほど、架橋は強く、すなわち、架橋の程度は高くなる。本発明による方法により製造されたベローズは、特に自動車の構造において、駆動軸に使用するのに十分な硬度を有し、本発明による第3工程により照射されていないベローズと比較して、使用される混合物の総量に対して約1.5重量%から約4重量%のトリアリルイソシアヌレート含有量を有する完成したアーチベローズに対して、DSC (示差走査熱量測定法)によって測定された融合エンタルピーが低減される。線量100kGyでは、2.25%トリアリルイソシアヌレートでは約20.4J/g、150kGyでは約17.8J/g、200kGyでは約17.4J/gである。溶融温度は、電子が照射されていないベローズと比較して比較的わずかしか低下しないので、本発明に従って製造されたベローズは、使用時の高温の要件を満たす。電子照射されたベローズは、電子が照射されていないベローズと同様の溶融範囲を有し、エラストマー特性を持つ。熱硬化性プラスチックへの転換は起こらない。この工程では、照射されたベローズがエラストマー特性を持ち続けるように実行される。ISO37:2011に従って決定された本発明に従って製造されたベローズの平均引張強度は、約37mPaから約40mPaの間の範囲である。
【0022】
混合物からベローズを製造するための本発明による方法の特に好ましい実施形態では、硬質セグメントおよび軟質セグメントを有するコポリエステルの群から選択される少なくとも1つ、好ましくは正確に1つの熱可塑性エラストマーが使用され、ここで軟質セグメントは好ましくはポリテトラヒドロフランユニット、好ましくは少なくとも1つのポリテトラヒドロフランユニット、好ましくは少なくとも2つ、好ましくは少なくとも4つのそのようなユニットから形成され、硬質セグメントは、ポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレートからなる群から選択され、少なくとも1つの熱可塑性エラストマーは、混合物の全体量に対して重量比で約1.85%から約2.6%の第1工程で混合され、第2工程では、ベローズが製造され、第3工程では、ベローズ全体は、約190kGyから約260kGyの範囲の線量範囲の電離ビームに曝される。280kGyに達し、そこでは電離放射線によって 漸増的に、好ましくは約20kGyから約40kGyの線量である。
【0023】
本発明はさらに、本発明の方法により製造されたベローズ、特にアコーディオンベローズまたはアーチベローズ、特に好ましくはアーチベローズに関する。アーチベローズは、好ましくは上記のように形成され、特に外側の補強リブを有する。本発明によるベローズは、上述の有利な特性を有し、約150℃の高温で100時間を超える運転時間に耐えることができ、したがって荷重をかけたときに、従来技術のアコーディオンベローズと比較して著しく改善された特性を示す。その理由は、異なるタイプの架橋に起因するものであり、これは、添加されたトリアリルイソシアヌレートを通る第2工程のベローズの形成中に生じ、第3工程の電離放射線、好ましくは電子ビームへの曝露を通して継続される。
【0024】
以下の実施例に基づき、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、異なる電子ビーム線量で使用されるトリアリルイソシアヌレートの量の関数としての運転時間の測定を示す。
【
図2】
図2は、異なる温度での照射線量の関数としての運転時間の測定を示している。
【0026】
まず、硬質セグメントとしてポリブチレンテレフタレートと軟質セグメントとしてポリテトラヒドロフランテレフタレートとの熱可塑性ブロック共重合体の混合物から、一端がジョイントハウジングに、他端がシャフトに取り付けるために、外側補強リブを有する典型的なアーチベローズが製造された。
【0027】
まず、予備混合物全体量の15重量%のトリアリルイソシアヌレートおよび85重量%の上記の熱可塑性ブロックコポリエステルから予備混合物を製造した。これから、トリアリルイソシアヌレート含有量が0%、1.5%、2.25%、3%、3.75%および4.5%の混合物を、各ケースにおいて、ベローズを製造するために使用される混合物の総量に関して製造し、アーチベローズを、例えばスクリュー押出機を使用するような射出成形プロセスにおいて製造した。スクリュー押出機のノズルでの吐出温度は約245℃だった。
【0028】
続いて、均一なエネルギー入力を確実にするために、アーチベローズの外面全体に上から8本の電子ビームを均等に向けた電子ビームデバイスで電子照射を行った。エネルギー入力10MeVで、約33kGyの放射線量で行われ、総放射線量が100kGy、150kGy、および200kGyに達するまで、実行されました。この方法で製造されたアーチベローズは、動作条件下で試験し、それらの運転時間を決定した。運転時間は、角度または屈曲7°、温度150°C、速度4,800rpmで決定された。本発明に従って製造されたベローズは、ユニバーサルジョイントに取り付けられ、グリースが充填された。グリース損失が発生した場合、または材料疲労の他の徴候、特にしわまたはひだの形成があると判定された場合は、試験を中止することとした。1,000rpmの速度での慣らしが約30分間にわたって行われ、その後、速度は直線的に4,800rpmに増加した。それぞれ特定の組成の2つのベローズを一度に試験した。
【0029】
図1から、最大150kGyの照射では、トリアリルイソシアヌレートの増加と同様に、放射線量の増加に関して比較的直線的で予期される挙動が観察された、100時間を超える運転時間には到達しなかった。
図1には明瞭化のためにグラフを示していないが、放射線量が0kGy、100kGy、および150kGyのグラフとは対照的に、200kGyの放射線量では、運転時間は、エネルギー線量150kGyの場合よりも1.5%のトリアリルイソシアヌレートの重量で最初は驚くほど低かった。比較的狭い範囲でランタイムの有意な増加が得られた。この範囲は約1.85から約2.7重量%のトリアリルイソシアヌレートを含む。この比較的狭い範囲では、エネルギー線量200kGyの場合よりもトリアリルイソシアヌレートの量が比較的少なく、トリアリルイソシアヌレートレベルが有意に高く、特に3重量%を超える場合に有効な高い運転時間が得られた。このように、試験は驚くべきことに、比較的高い電子ビーム線量を使用した場合、試験したアーチベローズの運転時間の有意な増加に関して、トリアリルイソシアヌレートが比較的低く狭い範囲で極めて有効であることを示した。
【0030】
別の実施例では、上記実施例と同じ手順を用い、重量比でわずか2.25%のトリアリルイソシアヌレートと上述した熱可塑性ポリマーの混合物を、トリアリルイソシアヌレートを含まない比較例と比較して試験した。上記の実施例とは異なり、3°の曲げ角度および6,000rpmの回転速度を使用した。運転時間は、上述のように、種々の温度および300kGyまでの放射線量で決定した。
図2は本件実施例の結果を示しています。特に、約220kGyから約280kGyの範囲では、130℃及び140℃で最大800時間近くの高いランタイムが得られたが、約250kGyから開始して150℃の高温の場合でも、トリアリルイソシアヌレートのないベースラインよりも改善された。
【0031】
本発明は、ベローズ及びベローズの製造方法に係るものであり、この方法によって、現代のジョイント構造の、特に自動車の電気的モビリゼイションに関して、120℃以上の高温下において安定性および十分に長い耐用年数を有する適切な特性を有するべローズが利用可能となる。