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特許7078730乾式変圧器のための温度測定のための装置、システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】乾式変圧器のための温度測定のための装置、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/024 20210101AFI20220524BHJP
   G01K 1/14 20210101ALI20220524BHJP
【FI】
G01K1/024
G01K1/14 L
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020539729
(86)(22)【出願日】2018-01-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 CN2018073447
(87)【国際公開番号】W WO2019140643
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン、イボ
(72)【発明者】
【氏名】メン,デルン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジエンション
(72)【発明者】
【氏名】リ,チュン
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-161550(JP,A)
【文献】特開2001-044052(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0054923(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0049880(US,A1)
【文献】特開2007-261664(JP,A)
【文献】特開2013-162009(JP,A)
【文献】特開2015-103627(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0092114(US,A1)
【文献】特開2013-004776(JP,A)
【文献】特開2012-243913(JP,A)
【文献】特開2016-191613(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106876114(CN,A)
【文献】中国実用新案第201837467(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
H01F 27/00-27/06
H01F 27/33-27/36
H01F 30/10-30/16
H01F 37/00
H01F 38/08-38/10
H01F 38/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定装置(210,410)であって、
乾式変圧器(100)の導体(240)の温度を測定するように構成される温度センサ(220,420)を含み、前記温度センサ(220,420)は、絶縁層(250)によって被覆された前記乾式変圧器(100)の前記導体(240)の巻線に当接して配置され、または、前記温度センサ(220,420)は、前記絶縁層(250)の内部の熱伝導層に接するように前記導体(240)の前記巻線に近接して配置され、前記絶縁層(250)は、前記導体(240)の前記巻線および前記温度センサ(220、420)を内部に配置したシースであり、
前記測定装置(210,410)はさらに、
前記測定装置(210,410)に電力供給するためにリーダ(610)からワイヤレス無線周波数エネルギーを受信して、測定された前記温度を前記リーダ(610)に送信するように構成されるパッシブワイヤレス通信モジュール(230,430)を含
前記温度センサ(420)は、前記パッシブワイヤレス通信モジュール(430)内においてパッケージングされ、前記温度センサ(420)の端子は、前記パッシブワイヤレス通信モジュール(430)の外部に露出しており、
前記絶縁層(250)は、前記導体(240)および前記パッシブワイヤレス通信モジュール(430)上に絶縁材料をラッピングすることによって形成される、測定装置(210,410)。
【請求項2】
前記絶縁層(250)は、前記導体(240)および前記温度センサ(220,420)上に、エポキシ樹脂から成る絶縁材料をラッピングすることによって形成され、
前記導体(240)は、前記乾式変圧器(100)の高電圧(HV)巻線(111,121,131)、前記乾式変圧器(100)の低電圧(LV)巻線、前記乾式変圧器(100)のコア(110,120,130)、および、前記乾式変圧器(100)のタップ端子(116,126,136)の部分である、請求項1に記載の測定装置(210,410)。
【請求項3】
前記パッシブワイヤレス通信モジュール(230)は、ワイヤ(225)を介して前記温度センサ(220)に接続されており、前記ワイヤ(225)の一端は前記絶縁層(250)から突出している、請求項2に記載の測定装置(210,410)。
【請求項4】
前記温度センサ(220,420)は、前記コア(110,120,130)の方向に沿って上部に位置する前記HV巻線(111,121,131)または前記LV巻線の表面上に配置される、請求項2に記載の測定装置(210,410)。
【請求項5】
前記パッシブワイヤレス通信モジュール(230)は、前記HV巻線(111,121,131)のドーム領域(112,122,132)上または内に配置され、前記ドーム領域(112,122,132)上におけるタップチェンジャ(115,125,135)またはワイヤ接続端子(113,114,123,124,133,134)の近傍に配置される、請求項3に記載の測定装置(210,410)。
【請求項6】
前記パッシブワイヤレス通信モジュール(230)は、前記ドーム領域(112,122,132)の絶縁層(260)によってカバーされるか、または、前記ドーム領域(112,122,132)の溝内に配置され、前記ワイヤ(225)の部分は、前記パッシブワイヤレス通信モジュール(230)と前記温度センサ(220)とを接続するために前記溝内に配置される、請求項5に記載の測定装置(210,410)。
【請求項7】
前記温度センサ(220,420)は、前記絶縁層(250)内の熱伝導層を介して前記導体(240)に接続される、請求項1に記載の測定装置(210,410)。
【請求項8】
記絶縁層(250)は、前記導体(240)および前記パッシブワイヤレス通信モジュール(430)上に、エポキシ樹脂から成る絶縁材料をラッピングすることによって形成される、請求項1に記載の測定装置(210,410)。
【請求項9】
前記測定装置(210,410)は、軟質材料から形成され、かつ、前記乾式変圧器(100)の曲面上に配置され、前記曲面の絶縁層によってカバーされる、請求項1に記載の測定装置(210,410)。
【請求項10】
前記パッシブワイヤレス通信モジュール(230,430)は、パッシブ無線周波数識別(RFID)タグまたは表面弾性波(SAW)タグを含む、請求項1に記載の測定装置(210,410)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の測定装置(210,410)と、
前記リーダ(610)と、
前記乾式変圧器(100)とを含む、システム(600)。
【請求項12】
前記リーダ(610)は、前記乾式変圧器(100)の低電圧(LV)コンパートメント内に配置される、請求項11に記載のシステム(600)。
【請求項13】
前記リーダ(600)は、1つ以上のアンテナ(620)を介して前記測定装置(210,410)に電力供給するよう、ワイヤレス無線周波数エネルギーを提供するように構成される、請求項11に記載のシステム(600)。
【請求項14】
測定された前記温度を前記パッシブワイヤレス通信モジュール(230,430)から受け取るように構成される1つ以上のアンテナ(620)をさらに含み、前記1つ以上のアンテナ(620)のうちの少なくとも1つのアンテナ(620)は、前記少なくとも1つのアンテナ(620)と前記パッシブワイヤレス通信モジュール(230,430)との間のワイヤレス通信を可能にするように前記乾式変圧器(100)の中央に配置される、請求項11に記載のシステム(600)。
【請求項15】
前記測定装置(210)とは異なる位置に配置される、請求項1~10のいずれか1項に記載のさらに別の測定装置(410)をさらに含む、請求項11に記載のシステム(600)。
【請求項16】
測定された前記温度が所定のしきい値を上回ることに応答して、前記乾式変圧器(100)の前記温度を低下させるよう、冷却デバイス(151,152,153)をオンにするように構成されるコントローラ(630)をさらに含む、請求項11に記載のシステム(600)。
【請求項17】
請求項1~10のいずれか1項に記載の測定装置(210,410)を使用して乾式変圧器(100)の温度を測定することを含む、乾式変圧器(100)の温度を測定する方法。
【請求項18】
測定装置を設置するための方法であって、
請求項1~10のいずれか1項に記載の測定装置(210,410)の前記温度センサ(220,420)を乾式変圧器(100)の導体(240)の表面に組み付けることと、
前記温度センサ(220,420)が取り外し不能となるように、前記導体(240)および前記温度センサ(220,420)上に絶縁材料をラッピングすることとを含む、方法。
【請求項19】
測定装置を取り外すための方法であって、
請求項1~7および10のいずれか1項に記載の測定装置(210)の前記パッシブワイヤレス通信モジュール(230)をドーム領域(112,122,132)の溝から取り外すことと、
前記ドーム領域(112,122,132)の前記溝内に新しいパッシブワイヤレス通信モジュールを組み付けることと、
前記新しいパッシブワイヤレス通信モジュールを、前記溝内に配置されるワイヤ(225)に接続することとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本明細書に開示される例示的な実施形態は、一般に温度測定に関し、より特定的には、乾式変圧器の温度を測定するための測定装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
変圧器は、2つ以上の回路間で電気エネルギーを電磁誘導により伝達する電気デバイスであり、一般にオイル式変圧器と乾式変圧器(ドライ変圧器とも称される)とに分類される。オイル式変圧器は絶縁材料として絶縁オイルを用い、乾式変圧器は変圧器コアおよびコイルが液体中に浸漬されていないものである。すなわち、乾式変圧器では、冷却媒体としてオイルの代わりに空気が用いられる。
【0003】
一般的に言えば、乾式変圧器は、オイル式変圧器より高い温度で動作するように設計され得る。乾式変圧器の動作中、乾式変圧器の温度は、たとえば180℃まで上昇する場合がある。したがって、安全性や電力品質を保証するためには、乾式変圧器の動作状態を監視する必要がある。
【0004】
従来、乾式変圧器の温度を測定するために有線の熱電対が使用されており、これは非常に不便である。さらに、従来の方法は、乾式変圧器の正確な温度を取得することができず、乾式変圧器の温度を測定することは非常にコストがかかる。したがって、乾式変圧器の温度を測定するための従来の方法は、不正確かつ非効率的である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
本明細書に開示される例示的な実施形態は、パッシブワイヤレス測定装置を使用して乾式変圧器の温度を測定するためのソリューションを提案する。
【0006】
第1の局面では、本明細書に開示される例示的な実施形態は、測定装置を提供する。測定装置は、乾式変圧器の温度を測定するように構成される温度センサを含み、温度センサは、乾式変圧器の導体上にまたは導体に近接して配置され、導体の絶縁層によってカバーされる。測定装置はさらに、測定された温度をリーダに送信するように構成されるパッシブワイヤレス通信モジュールを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、絶縁層は、導体および温度センサ上に、絶縁材料、好ましくはエポキシ樹脂をラッピングすることによって形成され、導体は、乾式変圧器の高電圧(HV)巻線、乾式変圧器の低電圧(LV)巻線、乾式変圧器のコア、および、乾式変圧器のタップ端子の1つである。
【0008】
いくつかの実施形態では、パッシブワイヤレス通信モジュールは、ワイヤを介して温度センサに接続されており、ワイヤの一端は絶縁層から突出している。
【0009】
いくつかの実施形態では、温度センサは、コアに沿ってHV巻線またはLV巻線の上部上に配置される。
【0010】
いくつかの実施形態では、パッシブワイヤレス通信モジュールは、HV巻線のドーム領域上または内に配置され、好ましくは、ドーム領域上におけるタップチェンジャまたはワイヤ接続端子の近傍に配置される。
【0011】
いくつかの実施形態では、パッシブワイヤレス通信モジュールは、ドーム領域の絶縁層によってカバーされるか、または、ドーム領域の溝内に配置され、ワイヤの部分は、パッシブワイヤレス通信モジュールと温度センサとを接続するために溝内に配置される。
【0012】
いくつかの実施形態では、温度センサは、絶縁層内の熱伝導層を介して導体に接続される。
【0013】
いくつかの実施形態では、温度センサは、パッシブワイヤレス通信モジュール内においてパッケージングされ、温度センサの端子は、パッシブワイヤレス通信モジュールの外部に露出している。さらに、絶縁層は、導体およびパッシブワイヤレス通信モジュール上に、絶縁材料、好ましくはエポキシ樹脂をラッピングすることによって形成される。
【0014】
いくつかの実施形態では、測定装置は、軟質材料から形成され、かつ、乾式変圧器の曲面上に配置され、好ましくは曲面の絶縁層によってカバーされる。
【0015】
いくつかの実施形態では、パッシブワイヤレス通信モジュールは、パッシブ無線周波数識別(RFID)タグまたは表面弾性波(SAW)タグを含む。
【0016】
第2の局面では、本明細書に開示される例示的な実施形態は、乾式変圧器の温度を測定するためのシステムを提供する。システムは、第1の局面の測定装置と、リーダと、乾式変圧器とを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、リーダは、乾式変圧器内に配置され、好ましくは乾式変圧器の低電圧(LV)コンパートメントに配置される。
【0018】
いくつかの実施形態では、リーダは、1つ以上のアンテナを介して測定装置に電力供給するよう、ワイヤレス無線周波数エネルギーを提供するように構成される。
【0019】
いくつかの実施形態では、システムは、測定された温度をパッシブワイヤレス通信モジュールから受け取るように構成される1つ以上のアンテナをさらに含み、1つ以上のアンテナのうちの少なくとも1つのアンテナは、少なくとも1つのアンテナとパッシブワイヤレス通信モジュールとの間のワイヤレス通信を可能にするように乾式変圧器の中央に配置される。
【0020】
いくつかの実施形態では、システムは、測定装置とは異なる位置に配置される、第1の局面のさらに別の測定装置をさらに含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、システムは、測定された温度が所定のしきい値を上回ることに応答して、乾式変圧器の温度を低下させるよう、冷却デバイスをオンにするように構成されるコントローラをさらに含む。
【0022】
第3の局面では、本明細書に開示される例示的な実施形態は、乾式変圧器の温度を測定するための第1の局面の測定装置の使用を提供する。
【0023】
第4の局面では、本明細書に開示される例示的な実施形態は、測定装置を設置するための方法を提供する。当該方法は、第1の局面の測定装置の温度センサを乾式変圧器の導体の表面に組み付けることと、温度センサが取り外し不能となるように導体および温度センサ上に絶縁材料をラッピングすることとを含む。
【0024】
第5の局面では、本明細書に開示される例示的な実施形態は、測定装置を取り外すための方法を提供する。当該方法は、第1の局面の測定装置のパッシブワイヤレス通信モジュールをドーム領域の溝から取り外すことを含む。当該方法はさらに、ドーム領域の溝内に新しいパッシブワイヤレス通信モジュールを組み付けることと、新しいパッシブワイヤレス通信モジュールを、溝内に配置されるワイヤに接続することとを含む。
【0025】
本開示の実施形態によれば、乾式変圧器の温度が正確に測定され得、これにより乾式変圧器の信頼性および安全性が向上される。したがって、乾式変圧器のための温度測定は、コスト効果があり効率的な態様で適切に機能し得る。
【0026】
添付の図面を参照して、以下の詳細な説明により、本明細書に開示される例示的な実施形態の上記および他の目的、特徴および利点が、より理解されるであろう。図面では、本明細書に開示されるいくつかの例示的な実施形態が、例において非限定的な態様で示される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】乾式変圧器の例の概略図を示す図である。
図2】乾式変圧器の温度を測定するために測定装置が使用される環境の概略図を示す図である。
図3】乾式変圧器の温度を測定するために測定装置が使用される別の環境の概略図を示す図である。
図4】乾式変圧器の温度を測定するために測定装置が使用されるさらに別の環境の概略図を示す図である。
図5】測定装置がマウントされた乾式変圧器の概略図を示す図である。
図6】乾式変圧器の温度を測定するためのシステムのブロック図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図面全体を通じて、同一または同様の参照符号は同一または同様の要素を指す。
詳細な説明
ここで、本明細書で説明される主題が、いくつかの例示的な実施形態を参照して論じられる。これらの実施形態は、当業者が本明細書に記載される主題をよりよく理解し、それにより実現することを可能にする目的のためにのみ論じられ、主題の範囲に対するいかなる限定も示唆するわけではない。
【0029】
「備える(comprise)」または「含む(include)」という用語およびその変形は、「含むがこれらに限定されない」ということを意味するオープンな用語として解釈されるべきである。「または」という用語は、文脈が明確に別の態様を示さなければ、「および/または」と解釈されるべきである。「に基づく」という用語は、「少なくとも部分的に基づく」と解釈されるべきである。「構成される」という用語は、ユーザまたは外部メカニズムによって誘発される動作により、機能、作用、動き、または状態が達成され得ることを意味する。「一実施形態」および「実施形態」という用語は、「少なくとも1つの実施形態」と解釈されるべきである。「別の実施形態」という用語は、「少なくとも1つの他の実施形態」と解釈されるべきである。
【0030】
別の態様で特定または限定されなければ、「マウントされる」、「接続される」、「支持される」および「結合される」という用語およびその変形は、広範に使用され、直接的および間接的なマウント、接続、支持、および結合を包含する。さらに、「接続される」および「結合される」は、物理的または機械的な接続または結合に限定されない。明示的および暗黙的な他の定義が以下に含まれてもよい。
【0031】
従来、乾式変圧器の温度を測定するために有線の熱電対が使用されており、測定プローブは一般に空気ダクト内に位置している。しかしながら、有線の測定装置は非常に不便であり、ライン配置が複雑になり、有線の測定装置に電力供給するためにバッテリがしばしば必要となる。さらに、従来の測定装置は、乾式変圧器の正確な温度および乾式変圧器のホットポット温度(hot pot temperature)を取得することができず、乾式変圧器の温度を測定することは一般にコストがかかる。したがって、乾式変圧器の温度を測定するための従来の方法は、不正確かつ非効率的である。
【0032】
一般に、本開示の実施形態によれば、乾式変圧器の温度を正確に測定し得る、乾式変圧器の温度を測定するための測定装置およびシステムが提供される。さらに、提案される測定装置は、パッシブおよびワイヤレスである。したがって、測定装置は乾式変圧器において柔軟に配置され得、乾式変圧器の信頼性および安全性も向上され得る。したがって、本開示の実施形態によれば、乾式変圧器のための温度測定は、コスト効果があり効率的な態様で実行され得る。本開示のいくつかの例示的な実施形態が、図1図6に関連して以下において説明される。
【0033】
図1は、乾式変圧器100の例の概略図を示す。図1に示されるように、乾式変圧器100は、キャビネットが取り外された状態の三相乾式変圧器であり、3つの導体グループを使用して三相交流を発生する。当該3つのグループの各々は、コアと、低電圧(LV: low voltage)巻線またはコイル(図示せず)と、高電圧(HV: high voltage)巻線またはコイルとを含む。たとえば、第1のグループはコア110およびHV巻線111を含み、第2のグループはコア120およびHV巻線121を含み、第3のグループはコア130およびHV巻線131を含む。
【0034】
一般に、乾式変圧器100は、冷却媒体としてオイルの代わりに空気を用いているため、乾式変圧器100の導体間の絶縁が必要であるので、各導体には絶縁層が設けられ得る。LV巻線およびHV巻線の場合、1つの巻線における変動する電流によって、変動する磁場が生成され、その結果、別の巻線において電圧が誘導される。したがって、巻線同士の間に金属接続がなくても、磁界を介して巻線同士の間で電力が伝達され得る。
【0035】
引き続き図1を参照して、乾式変圧器100は、上部クランプ140および下部クランプ150をさらに含む。上部クランプ140には、HV端子141、142および143といった複数のHV端子が配置されている。1つ以上の冷却デバイスが、乾式変圧器100を一緒にまたは別々に冷却するために、下部クランプ150の近傍に配置されている。冷却デバイスの例は、ファン151、152および153を含むがこれらに限定されない。
【0036】
乾式変圧器100は、図1に示されるもの以外の1つ以上のさらに別のコンポーネントを含み得ることが理解されるべきである。例示的な乾式変圧器100が図1に示されているが、本開示の保護範囲は、当該例示的な乾式変圧器100に限定されないことも理解されるべきである。さらに、三相乾式変圧器が例として示されているが、他相(単相など)の乾式変圧器も可能であり得る。
【0037】
図2は、乾式変圧器の温度を測定するために測定装置が使用される環境200の概略図を示す。図2に示されるように、導体240の温度を測定するために測定装置210が使用され、導体240は、図1を参照して、乾式変圧器100内の任意の導体であってもよい。乾式変圧器100内の任意の導体は、乾式変圧器100のHV巻線111,121,131、乾式変圧器100のLV巻線、コア110,120,130、タップ端子、HVアウトレット、および、LVアウトレットなどを含むがこれらに限定されない。
【0038】
図2に示されるように、測定装置210は、温度センサ220およびパッシブワイヤレス通信モジュール230を含む。温度センサ220は、温度センサ220が位置する乾式変圧器100の位置の温度を測定するように構成される。パッシブワイヤレス通信モジュール230は、測定された温度をリーダに送信するように構成される。本開示の実施形態によれば、測定装置210は如何なる電源回路も有しておらず、その代わりに、受け取ったワイヤレス無線周波数エネルギーを使用して自身に電力供給する。したがって、本明細書において説明される実施形態は、電力供給および通信メカニズムに関して従来のソリューションとは著しく異なる。
【0039】
いくつかの実施形態では、温度センサ220は、熱電対またはサーミスタであってよく、導体240の温度を直接的に取得するよう導体240上にまたは導体240に近接して配置される。温度センサ220が導体240に近接する実施形態では、温度センサ220と導体240との間に熱伝導層が配置されてもよい。これにより、導体240の正確な温度を取得するよう、温度センサ220と導体240とが良好に接続され得る。温度センサ220は、導体上に直接配置されているため、リアルタイムで温度上昇に応答し得、正確に温度を監視し得る。
【0040】
図2に示されるように、導体240は、絶縁のための絶縁層250を有しており、温度センサ220は、導体240の絶縁層250によってカバーされるように配置される。いくつかの実施形態において、絶縁層250は、導体240および温度センサ220上に絶縁材料をラッピングすることによって形成される。絶縁層250は、たとえば、導体240および温度センサ220上にエポキシ樹脂を設けることにより形成されてもよい。他の例として、絶縁層250は、導体240および温度センサ220上に絶縁テープを巻き付けることによって形成されてもよい。これにより、乾式変圧器100の製造中に温度センサ220が測定のために配置され得、これは乾式変圧器100の外観を変化させることがない。さらに、エポキシ樹脂は、高電圧絶縁体として使用可能なポリマー材料であり、体積抵抗率が高く、より軽く、絶縁強度が高く、機械的強度が良好であるため、絶縁層250として機能するために好適である。
【0041】
いくつかの実施形態では、温度センサ220は、ワイヤ225を介してパッシブワイヤレス通信モジュール230に接続されてもよい。ワイヤ225の一端は、図2に示されるように、絶縁層250から突出してもよい。これにより、パッシブワイヤレス通信モジュール230が耐熱性でない場合には、導体204上に直接配置されるとともに非常に高い温度を有し得る温度センサ220から分離されるように配置され得る。さらに、パッシブワイヤレス通信モジュール230は、動作中に破壊される可能性があるため、このようなモジュールを乾式変圧器100の外に配置することは、その修復に有益となる。パッシブワイヤレス通信モジュール230が耐熱性材料から形成される場合、温度センサ220から分離される必要はないことが理解されるべきである。パッシブワイヤレス通信モジュールおよび温度センサが一緒に配置される実施形態は、図4を参照して以下に説明される。
【0042】
パッシブワイヤレス通信モジュール230は、温度センサ220から取得される測定温度を、ワイヤレス通信によってリーダに送信し得る。さらに、パッシブワイヤレス通信モジュール230は、パッシブであるので、動作するために如何なるバッテリまたは電力線も必要としない。代わりに、パッシブワイヤレス通信モジュール230は、測定装置210に電力供給するためにリーダからワイヤレス無線周波数エネルギーを取得し得る。
【0043】
パッシブワイヤレス通信モジュール230は、ワイヤレス通信のためのアンテナを含む。いくつかの実施形態では、パッシブワイヤレス通信モジュール230は、パッシブ無線周波数識別(RFID: radio frequency identification)タグまたは表面弾性波(SAW: surface acoustic wave)タグを含み得る。RFIDは、対象に取り付けられたタグを自動的に識別し追跡するよう電磁場を使用し、パッシブワイヤレス通信モジュールとして機能するのに好適である。RFIDタグは、安全かつ柔軟であり、バッテリがなく交換もないためメンテナンスが不要であり、コスト効果が高いので有益である。さらに、RFIDタグはサイズが小さいので、乾式変圧器内の多くの異なる位置に測定装置が配置され得る。SAWは、(温度といった)物理的現象を感知するために表面弾性波の変調に依存する微小電気機械システム(MEMS: microelectromechanical system)の種類である。
【0044】
本開示の実施形態によれば、乾式変圧器の温度が正確に測定され得、これにより、乾式変圧器の信頼性および安全性が向上され得る。したがって、乾式変圧器のための温度測定は、コスト効果があり効率的な態様で適切に行われ得る。
【0045】
図3は、乾式変圧器の温度を測定するために測定装置が使用される別の環境300の概略図を示す。示されるように、パッシブワイヤレス通信モジュール230は、(HV巻線111といった)HV巻線のドーム領域112上またはドーム領域112内に配置され得る。本明細書において用いられるように、ドーム領域は、ワイヤ接続端子が突出するHV巻線の領域を表す。ドーム領域112は、導体240から遠いので、より低い温度を有し得る。これにより、パッシブワイヤレス通信モジュール230が焼損されることから保護される。
【0046】
随意であるが、いくつかの実施形態では、パッシブワイヤレス通信モジュール230は、パッシブワイヤレス通信モジュール230を保護するとともに乾式変圧器110に美的効果を提供するように、ドーム領域112の絶縁層260によってカバーされてもよい。代替的には、他の実施形態では、ドーム領域112には、ワイヤ225の一端が配置される溝が掘られ得、パッシブワイヤレス通信モジュール230は、ワイヤ225を介して温度センサ220を接続するための溝内に配置されてもよい。これによっても、パッシブワイヤレス通信モジュール230が保護され得、乾式変圧器110に美観効果が提供され得る。
【0047】
図4は、乾式変圧器の温度を測定するために測定装置が使用されるさらに別の環境400の概略図を示す。図4に示されるように、測定装置410は、乾式変圧器の温度を測定するように導体240上にまたは導体240に近接して配置される。温度センサ420は、パッシブワイヤレス通信モジュール430内においてパッケージングされ、より安定した硬質タグ測定装置410を形成する。
【0048】
たとえば、パッシブワイヤレス通信モジュール430は、SAWタグ(SAWはチップレスであり、高温に耐え得る)であるか、または、耐熱性である特定のタイプのRFIDタグであってもよい。SAWタグは周波数帯域によって識別されるため、測定システムにおけるRAWタグの最大数は12に制限される。SAWタグと比較して、測定システムにおけるRFIDタグの数には限定はない。温度を測定するために、温度センサ420の端子は、導体240に接触するようにパッシブワイヤレス通信モジュール430の外部に露出して配置されてもよい。さらに、ワイヤレス通信の品質を向上するために、パッシブワイヤレス通信モジュール430におけるアンテナは、外側に向けられるよう配置されてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、絶縁層250は、導体250およびパッシブワイヤレス通信モジュール430上に絶縁材料をラッピングすることによって形成され、絶縁材料は、エポキシ樹脂であってもよい。これにより、測定装置410のすべてのコンポーネントは、乾式変圧器の製造中に絶縁層内に設けられ得、これにより、測定装置が保護され得、乾式変圧器に美的効果が提供され得る。
【0050】
図5は、測定装置がマウントされた乾式変圧器100の概略図を示す。図5に示されるように、乾式変圧器100には複数(この場合では3つ)のドーム領域112,122,132が存在する。ドーム領域112は、ワイヤ接続端子113,114と、HVタップ端子116およびHV接続部117を含むタップチェンジャ115とを含み、ドーム領域122は、ワイヤ接続端子123,124と、HVタップ端子126およびHV接続部127を含むタップチェンジャ125とを含み、ドーム領域132は、ワイヤ接続端子133,134と、HVタップ端子136およびHV接続137を含むタップチェンジャ135とを含む。端子141、142、143、113、114、123、124、133および134は、図5に示されるように、HV接続バーを介して接続され得る。
【0051】
図5に示されるように、図2および図3を参照して記載した測定装置210と、図4を参照して記載した測定装置410とが、乾式変圧器100上にマウントされる。たとえば、測定装置210の温度センサ220はHV巻線111の絶縁層内に設けられ、測定装置210のパッシブワイヤレス通信モジュール230はドーム領域112に配置されてもよく、温度センサ220とパッシブワイヤレス通信モジュール230とは、ワイヤ225を介して接続される。
【0052】
温度が低いドーム領域112上またはドーム領域112内にパッシブワイヤレス通信モジュール230を配置することによって、図5に示される実施形態は、パッシブワイヤレス通信モジュール230が180℃といった高温に耐えられない(この場合、パッシブワイヤレス通信モジュール230はRFIDタグであり得る)場合に特に有益である。これにより、パッシブワイヤレス通信モジュール230が焼損されることから保護される。たとえば、温度センサ220における温度は180℃と同じぐらい高くてもよく、パッシブワイヤレス通信モジュール23における温度は120℃より低くてもよい。
【0053】
別の例では、測定装置410のパッシブワイヤレス通信モジュール430は、耐熱性である場合、HV巻線131に直接取り付けられ得、焼損されることはない。いくつかの実施形態では、いくつかの他の測定装置は、導体の表面に直接的に接着もしくは結合されてもよく、HV巻線もしくはLV巻線の円盤部同士の間に位置決めされてもよく、または、乾式変圧器100のねじもしくはバスバー上に位置決めされてもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、パッシブワイヤレス通信モジュール230は、ドーム領域112上においてタップチェンジャ115またはワイヤ接続端子113の近傍に配置され得る。これにより、絶縁リスクが低減され得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、乾式変圧器の上部は下部より高い温度を有するので、温度センサ220,420は、コア110,120,130に沿ってHV巻線111,121,131またはLV巻線の上部上に配置され得る。これにより、乾式変圧器100の高温が取得され、これにより、乾式変圧器の信頼性および安全性が確保され得る。いくつかの実施形態では、いくつかの温度センサがさらに、温度コンパッション(temperature compassion)のためにHV巻線またはLV巻線の下部に配置されてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、測定装置は、乾式変圧器100の曲面に好適な軟質タグ測定装置を形成するように軟質材料から形成されてもよい。この場合、測定装置は、曲面の絶縁層によりカバーされてもよい。軟質タグ測定装置は平面に配置されていてもよいことが理解されるべきである。
【0057】
図6は、乾式変圧器の温度を測定するためのシステム600のブロック図を示す。図6に示されるように、システム600は、リーダ610、アンテナ620、本開示の実施形態に従った測定装置210および410、ならびに、乾式変圧器100を含む。リーダ610は、測定装置210および410に電力供給するためにワイヤレス無線周波数エネルギーを提供するように構成されており、測定装置210および410は、乾式変圧器100の温度を取得するよう、受け取った無線周波数エネルギーを使用して動作する。アンテナ620は、RFケーブルまたは同軸ケーブルを介してリーダに接続され、測定された温度を測定装置210および410から受け取るように構成される。
【0058】
たとえば、リーダ610は、すべての測定装置210および410にエレクトロニックプロダクトコード(EPC: electronic product code)を問い合わせし得、測定装置210および410は、EPCをリーダ610に返し、動作を開始する。次に、リーダ610は、測定装置210および410からの温度の取得を開始し、各測定装置は、リアルタイムで当該温度をリーダ610に返す。
【0059】
いくつかの実施形態では、リーダ610は、乾式変圧器100内に配置され、たとえば、乾式変圧器のLVコンパートメントに配置され得る。いくつかの実施形態では、アンテナは、アンテナ620とパッシブワイヤレス通信モジュール230,430との間のワイヤレス通信を可能にするよう、乾式変圧器100の内壁上または中央に配置される。たとえば、ワイヤレス通信を中断させないように、アンテナ620とパッシブワイヤレス通信モジュール230,430との間に金属要素が存在しないことが保証される。
【0060】
いくつかの実施形態では、システム600は、コントローラ630を含み得、取得された温度をリーダがコントローラ630に送信する。たとえば、コントローラ630は、リーダ610の動作時間および動作状態を制御し得る。コントローラ630は、測定された温度が所定のしきい値を上回ることに応答して、乾式変圧器100の温度を低下するよう、冷却デバイス(たとえば、ファン151、152または153)をオンにするように構成される。たとえば、温度220によって感知される温度が高すぎる場合、コントローラ630はファン151をオンにし得る。いくつかの実施形態では、コントローラ630は、ローカルまたはクラウドにおけるコンピューティングデバイスであってもよい。
【0061】
図6には2つの測定装置が示されているが、システム600は、より少ないまたはより多い測定装置を含み得ることが理解されるべきである。さらに、測定装置の量が多い場合において通信品質を向上するために、乾式変圧器の異なる位置に配置される複数のアンテナがシステム600内に設けられてもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、本開示の測定装置は、乾式変圧器の温度を測定するために使用され得る。本開示の実施形態に従った測定装置は、乾式変圧器の温度をインテリジェントに監視するために使用され得、異なる位置における温度変化も迅速かつ正確に監視され得る。
【0063】
主題は、構造的特徴および/または方法的動作に特有の言語で記載されているが、添付の請求の範囲において定義される主題は、当該特定の特徴または動作に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。むしろ、上記の特定の特徴および動作は、請求の範囲を実現する例示的な形態として開示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6