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特許7078760薄膜電池のための多層パッケージング構造、およびこのような構造を製造するための方法
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  • 特許-薄膜電池のための多層パッケージング構造、およびこのような構造を製造するための方法 図1
  • 特許-薄膜電池のための多層パッケージング構造、およびこのような構造を製造するための方法 図2a
  • 特許-薄膜電池のための多層パッケージング構造、およびこのような構造を製造するための方法 図2b
  • 特許-薄膜電池のための多層パッケージング構造、およびこのような構造を製造するための方法 図3
  • 特許-薄膜電池のための多層パッケージング構造、およびこのような構造を製造するための方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】薄膜電池のための多層パッケージング構造、およびこのような構造を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/555 20210101AFI20220524BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20220524BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20220524BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20220524BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20220524BHJP
   H01M 50/545 20210101ALI20220524BHJP
   H01M 50/548 20210101ALI20220524BHJP
   H01M 50/557 20210101ALI20220524BHJP
   H01M 50/564 20210101ALI20220524BHJP
【FI】
H01M50/555
H01M50/105
H01M50/119
H01M50/121
H01M50/129
H01M50/545
H01M50/548 301
H01M50/557
H01M50/564
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020569774
(86)(22)【出願日】2019-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2019065475
(87)【国際公開番号】W WO2020007584
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2020-12-15
(31)【優先権主張番号】18181337.9
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510017505
【氏名又は名称】レナタ・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】エル バラダイ,ウサマ
(72)【発明者】
【氏名】へーリング,パスカル
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-021976(JP,A)
【文献】特開2017-069163(JP,A)
【文献】特開2013-243062(JP,A)
【文献】特開2005-276486(JP,A)
【文献】特表2015-520490(JP,A)
【文献】特開2003-123832(JP,A)
【文献】特開2002-279969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/543 - 567
H01M 50/105
H01M 50/116 - 129
H01M 50/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜電池(5)のための多層パッケージング構造(10)であって、少なくとも
- 第1の層(11)と、
- 第2の層(12)と、
- 前記第1の層(11)と前記第2の層(12)の間にはさまれた金属層(14)と、
- 前記第1の層(11)と前記金属層(14)の間に挟まれた、酸改質ポリプロピレン層からなる第3の層(13)と
を備え、
- 前記第1の層(11)の中に配置された第1の開口(21)であって、前記金属層(14)のうちの、前記配置された第1の開口(21)と結合した第1の部分(24)が露出されるように配置され、前記金属層(14)の前記第1の部分(24)は、前記薄膜電池(5)の集電体と電気接触することができるように構成される、第1の開口(21)と、
- 前記第2の層(12)の中に配置された第2の開口(22)であって、前記金属層(14)のうちの、前記配置された第2の開口(22)と結合した第2の部分(25)が露出されるように配置され、前記金属層(14)の前記第2の部分(25)は、外部回路に電気接続することができるように構成される、第2の開口(22)と、
- 前記第3の層(13)の中に配置された第3の開口(23)であって、前記第3の開口(23)の中心は前記第1の層(11)に配置された第1の開口(21)の中心と整列されており、前記第1の開口(21)と前記第3の開口(23)と結合した金属層(14)の部分(31)が露出されるとともに薄膜電池(5)の集電体と電気接触することができるように構成される、第3の開口(23)と
をさらに備える多層パッケージング構造(10)。
【請求項2】
前記第2の開口(22)は前記第1の開口(21)に対して、前記金属層(14)を挟んだ反対側に配置される、請求項1に記載の多層パッケージング構造(10)。
【請求項3】
- 前記第2の層(12)と前記金属層(14)の間にはさまれた少なくとも1つの追加層(16、17、18)と、
- 個々の前記追加層(16、17、18)の中に配置された追加開口(26、27、28)であって、前記追加開口(26、27、28)の中心は、前記金属層(14)のうちの、前記配置された第2の開口(22)および追加開口(26、27、28)と結合した部分(32)が露出され、外部回路に電気接続することができるように構成されるよう、前記第2の層(12)の中に配置された前記第2の開口(22)の中心と整列される、追加開口(26、27、28)と
をさらに備える、請求項1~2のいずれか一項に記載の多層パッケージング構造(10)。
【請求項4】
薄膜電池(5)のための多層パッケージング構造(10)を製造するための方法(30)であって、
- 第1の層(11)を提供するステップ(40)と、
- 前記第1の層(11)の頂部に金属層(14)を提供するステップ(50)と、
- 第2の層(12)を提供するステップ(60)であって、前記第1の層(11)と前記第2の層(12)の間に前記金属層(14)がはさまれるよう、前記金属層(14)の頂部に前記第2の層(12)を提供するステップ(60)と、
- 前記第1の層(11)の中に第1の開口(21)を配置するステップ(70)であって、前記金属層(14)のうちの、前記配置された第1の開口(21)と結合した第1の部分(24)が露出されるように前記第1の層(11)の中に前記第1の開口(21)を配置するステップ(70)と、
- 前記薄膜電池(5)の集電体と電気接触することができるように、前記金属層(14)のうちの、前記配置された第1の開口(21)と結合した前記第1の部分(24)を構成するステップ(80)と、
- 前記第2の層(12)の中に第2の開口(22)を配置するステップ(90)であって、前記金属層(14)のうちの、前記配置された第2の開口(22)と結合した第2の部分(25)が露出されるように前記第2の層(12)の中に前記第2の開口(22)が配置され、前記金属層(14)の前記第2の部分(25)は、外部回路に電気接続することができるように構成される、ステップ(90)と
を含み、さらに、
前記第1の層(11)と前記金属層(14)との間に、酸改質ポリプロピレン層からなる第3の層(13)を提供する、ステップと、
前記第3の層(13)の中に第3の開口(23)を配置するステップであって、前記第3の開口(23)の中心は前記第1の層(11)に配置された第1の開口(21)の中心に整列され、前記第1の開口(21)と前記第3の開口(23)が結合した金属層(14)の部分(31)が露出されるとともに薄膜電池(5)の集電体に電気接触することができるように構成される、ステップと
を含む方法(30)。
【請求項5】
- 前記第2の層(12)と前記金属層(14)の間にはさまれた少なくとも1つの追加層(16、17、18)を提供するステップと、
- 個々の前記追加層(16、17、18)の中に追加開口(26、27、28)を配置するステップであって、前記追加開口(26、27、28)の中心は、前記金属層(14)のうちの、前記配置された第2の開口(22)および追加開口(26、27、28)と結合した部分(32)が露出され、外部回路に電気接続することができるように構成されるよう、前記第2の層(12)の中に配置された前記第2の開口(22)の中心と整列される、ステップと
をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記開口のうちの少なくとも1つは、切断または押抜きによって達成される、請求項4~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記開口のうちの少なくとも1つは、融解した成分を前記金属層(14)の上に選択的に堆積させることによって達成される、請求項4~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記開口のうちの少なくとも1つは、層材料の適切な部分を選択的に除去することによって達成される、請求項4~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記層材料の前記適切な部分の前記選択的な除去は、レーザ・アブレーションを使用して達成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか一項に記載の多層パッケージング構造(10)を備える薄膜電池(5)。
【請求項11】
電池セルは嚢タイプの電池セルである、請求項10に記載の薄膜電池(5)。
【請求項12】
前記電池(5)の一方の側の前記パッケージング構造(10)の中に配置された第1の端子(3a)、および前記電池(5)の反対側の前記パッケージング構造(10)の中に配置された第2の端子(3b)を備える、請求項10または11に記載の薄膜電池(5)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜電池のための多層パッケージング構造、およびこのような構造を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池設計の技術分野では、電池セルの構成要素、例えば陽極、陰極および電解質を密閉要素によって密閉することはよく知られている。この技術分野では、この保護外部要素は、しばしばパッケージングと呼ばれている。この文脈においては、複数の薄い材料層を積み重ねることによって実現されるパッケージングは、市場で真価が認められている、軽量で、かつ、柔軟な薄膜電池を得るためにしばしば使用されている。
【0003】
米国特許出願公開第2015/0017518号は、このような多層パッケージング構造およびそれに関連する電池を開示している。複数の薄い機能層に加えて、電池は、パッケージングが電池セルを覆うと、すなわち電池が実質的に組み立てられると、電池の周囲を越えて展開する集電体タブを有している。これらの集電体タブの目的は、電池セルから外部負荷に電気エネルギーを引き渡すことである。
【0004】
容易に推論されるように、米国特許出願公開第2015/0017518号の中で考察されているタブは、密閉電池パッケージングに穴を穿っている。これに関連して、集電体タブが電池セルを密閉しているパッケージング構造を突き通っているポイントで水蒸気が電池セルの内部に侵入するのを防止するために、電池密閉フェーズの間、とりわけ注意を払う必要がある。
【0005】
関連する文脈においては、様々な設計および製造考察のため、組み立てられた電池の集電体タブは、通常、こわれやすい。したがってそれらは破壊しやすく、また、製造および/または組み立て中に容易に損傷する。
【0006】
米国特許出願公開第2012/0208071号は、薄膜電池のための製造方法を開示しており、パッケージングの中に端子孔が押し抜かれている。これに関連して、米国特許出願公開第2012/0208071号は、集電体タブは省略することができることを教示しているが、開示されているプロセスは、水蒸気感応材料に基づく電池化学のためには適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記背景に鑑みて、本発明の当面の目的の1つは、上で識別した欠点および現在の技術に関連する他の欠点を少なくとも軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上で言及した目的は、独立請求項に記載されている、また、従属請求項に記載されている実施形態による、薄膜電池のための多層パッケージング構造、およびこのような構造を製造するための方法によって達成される。
【0009】
より特定的には、本発明の第1の態様は、薄膜電池のための多層パッケージング構造を対象としており、前記構造は少なくとも第1の層と、第2の層と、第1の層と第2の層の間にはさまれた金属層とを備え、第1の層の中に第1の開口が配置され、第1の開口は、金属層のうちの、配置された第1の開口と結合した第1の部分が露出されるように配置され、金属層の前記第1の部分は、薄膜電池の集電体と電気接触することができるように構成され、また、第2の層の中に第2の開口が配置され、第2の開口は、金属層のうちの、配置された第2の開口と結合した第2の部分が露出されるように配置され、金属層の前記第2の部分は、外部回路に電気接続することができるように構成される。
【0010】
さらに、本発明の第2の態様は、薄膜電池のための多層パッケージング構造を製造するための方法であって、
- 第1の層を提供するステップと、
- 第1の層の頂部に金属層を提供するステップと、
- 第2の層を提供するステップであって、第1の層と第2の層の間に金属層がはさまれるよう、金属層の頂部に第2の層を提供するステップと、
- 第1の層の中に第1の開口を配置するステップであって、金属層のうちの、配置された第1の開口と結合した第1の部分が露出されるように第1の層の中に第1の開口を配置するステップと、
- 薄膜電池の集電体と電気接触することができるように、金属層のうちの、配置された第1の開口と結合した第1の部分を構成するステップと、
- 第2の層の中に第2の開口を配置するステップであって、金属層のうちの、配置された第2の開口と結合した第2の部分が露出されるように第2の層の中に第2の開口が配置され、金属層の前記第2の部分は、外部回路に電気接続することができるように構成される、ステップと
を含む方法を対象としている。
【0011】
方法ステップは、方法を適切に実行するために上記の順序で実施する必要はないことに留意されたい。詳細には、第1の開口/第2の開口を第1の層/第2の層の中に配置するステップは、金属層をはさむステップの前に実施してもよい。
【0012】
以下では、本発明の上で識別した主な態様の明確な効果および利点が示される。
【0013】
一般的な水準では、多層パッケージング構造の金属層の一部を露出させることができる開口、すなわち他の構成要素、例えば集電体/外部デバイスの外部回路によるアクセスが可能な開口を作り出すことにより、金属層の露出部分は、事実上、集電体タブとして機能する。
【0014】
より特定的には、パッケージング構造の金属層は本質的に導電性であるため、金属層のうちの電池セルに面する部分を露出させ、かつ、金属層の前記部分を薄膜電池の集電体と電気接触させることにより、必然的に、セルの中で生成され、かつ、集電体によって集められた電流を電池から流し出すことができる。より詳細には、外部環境に対向させる、すなわち電池セルとは反対側に対向させることによって金属層のうちの別の露出部分を外部回路に電気接続することができるため、集められた電流を金属層を介して伝達し、それを外部デバイスの適切に適合された外部回路に引き渡すことも可能である。
【0015】
したがって電池、とりわけ薄膜電池を設計する場合、従来の突出集電体タブは不必要になり、また、省略することができる。したがってこれらのタブに関連する多くの欠点を除去することができる。
【0016】
上記背景に鑑みて、提案される解決法は、水蒸気に敏感な材料を含む電池の設計および製造に適している。したがって突出したコネクタがないため、外部汚染物質、例えば水蒸気分子に対する電池の内部の完全な密閉が可能である。
【0017】
さらに、開示されている解決法により、電池のための多目的パッケージング構造が得られる。したがって構造は、パッケージング、水蒸気障壁およびタブとして同時に作用する。
【0018】
上で考察した、パッケージング構造および/または電池の製造中または組み立て中におけるタブの破損または亀裂の実質的な危険が同じく除去される。
【0019】
最後に、本発明によれば、一様なプロファイル、すなわち膨張可能な密閉層によって変更されないプロファイルを有する電池の製造が可能である。
【0020】
実施形態の他の利点および特徴は、図面に関連して以下の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。
【0021】
本発明についての以下の詳細な説明を考察すれば、本発明がより良好に理解され、また、上で説明した目的以外の目的が明らかになるであろう。この説明には、添付の図面が参照されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態による薄膜電池のための多層パッケージング構造の横断面図である。
図2a-2b】図1に関連して説明した本発明の実施形態による、組み立てられた薄膜電池の略斜視図である。
図3】本発明の別の実施形態による薄膜電池のための多層パッケージング構造の横断面図である。
図4】本発明の一実施形態による薄膜電池のための多層パッケージング構造を製造するための方法のフロー・チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図を参照して様々な実施形態について説明する。同様の構造または機能の要素は、図全体を通して同様の参照番号によって表されていることに留意されたい。また、図に意図されていることは、単に実施形態の説明を容易にすることにすぎないことにも留意されたい。それらには、特許請求される発明についての余すところのない説明であること、あるいは特許請求される発明の範囲を限定することは意図されていない。さらに、例証されている実施形態は、示されているすべての態様または利点を有している必要はない。特定の実施形態に関連して説明されている態様または利点は、必ずしもその実施形態に限定されず、たとえそのように例証されていない場合であっても、あるいはそのように明確に説明されていない場合であっても、任意の他の実施形態の中で実践することができる。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態による薄膜電池のための多層パッケージング構造10の横断面図である。構造10は、基板層(図示せず)の表面に連続的に積層された少なくとも第1の層11、第2の層12、および第1の層11と第2の層12の間にはさまれた金属層14を備えている。
【0025】
組み立てられた電池の電池セルに面する第1の層11は熱融着可能層である。この層はポリプロピレンでできていることが好ましい。使用されるポリプロピレン材料は、プロピレン、ホモプロピレン、ブロック・プロピレンならびに他のタイプのプロピレンであってもよい。低結晶性エチレン-ブテン・コポリマー、低結晶性プロピレン-ブテン・コポリマー、エチレン、ブテンおよびプロピレンの3成分コポリマーから構成されるターポリマー、シリカ、ゼオライト、アクリル樹脂ビーズおよび他のアンチブロッキング剤、脂肪酸アミド-タイプ・スリップ剤等を上で言及したタイプのポリプロピレンのうちの任意のポリプロピレンに加えることができる。また、第1の層11は、線形低密度ポリエチレンまたは中間密度ポリエチレン、あるいは線形低密度ポリエチレンと中間密度ポリエチレンの配合樹脂から構成することも可能である。
【0026】
金属層14は、電池の内側の乾いた大気を保証するために高い蒸気障壁特性を有している。適切な材料は、アルミニウム、ニッケルおよびステンレス鋼を含むグループから選択される。別法としては、無機化合物、例えば酸化ケイ素、アルミナ等が金属箔層の上に蒸着される。金属箔層の一部である金属箔は、20ミクロンと100ミクロンの間の範囲の厚さを有するアルミニウム箔であることが好ましい。蒸着の厚さは、典型的には少なくとも15ミクロンである。それによりピンホールの発生が防止され、また、嚢形成および冷間プレス成形性などのプロセス特性が改善される。
【0027】
組み立てられた電池の電池セルとは反対側に面する第2の層12は、典型的にはワニスを含んでいる。ワニス層は、適切な量のシリカ系艶消し剤、カオリン系艶消し剤または別の無機材料系艶消し剤をアルキル系合成樹脂またはセルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニル・アセテート系樹脂、改質ポリオレフィン系樹脂、ゴム系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂または他のオレフィン系樹脂に加えることによって得られる。別法としては、ワニス層は、適切な量の蝋およびシリカ系艶消し剤、カオリン系艶消し剤または他の無機材料系艶消し剤をアルキド系合成樹脂または上記オレフィン系樹脂に加えることによって得ることも可能である。艶消しワニス層を達成するための方法は、何らかの特定の方法に限定されない。したがって異なる印刷技法、例えばオフセット、グラビア、フレキソプリントまたはシルクスクリーンを使用することができる。さらに、回転塗布、反転塗布または類似のプロセスを使用することも可能である。
【0028】
第1の層11の中に第1の開口21が配置され、第1の開口21は、金属層14のうちの、配置された第1の開口21と結合した第1の部分24が露出されるように配置される。ここでは、金属層14のうちの、配置された第1の開口21と結合した第1の部分24は、薄膜電池(図1には示されていない)の集電体と電気接触することができるように構成される。第2の層12の中に第2の開口22が配置され、第2の開口22は、金属層14のうちの、配置された第2の開口22と結合した第2の部分25が露出されるように配置される。したがって金属層14のうちの、配置された第2の開口22と結合した第2の部分25は、外部回路に電気接続することができるように構成されており、また、有利には、電池が組み立てられると外部環境と対向する。図1の実施形態から容易に分かるように、第2の開口22は第1の開口21に対して反対側に配置されている。開口21、22が互いに反対側であるこの配置は好ましいが、当然、それには限定されない。開口21および22は、互いにオフセットした関係にあってもよい。
【0029】
上で考察したように、金属層14の部分24を露出させ、かつ、前記部分24を薄膜電池の集電体と電気接触させることにより、必然的に、集電体によって電池セルから集められた電流を金属層14を介して、より正確には金属層の他の露出部分25、すなわち外部環境と対向する、外部デバイスの外部回路に電気接続することができるように構成される部分25を介して、電池から流し出すことができる。集められた電流は、次に、適切に適合された外部デバイスに引き渡すことができる。したがって金属層14の露出部分24、25は、事実上、集電体タブとして機能する。その結果、電池、とりわけ薄膜電池を設計する場合、従来の突出集電体タブは不必要になり、また、省略することができる。したがってこれらのタブに関連する多くの欠点を除去することができる。パッケージング構造および/または電池の製造中または組み立て中におけるタブの破損または亀裂の危険が同じく除去される。
【0030】
関連する文脈においては、突出したコネクタがないため、水蒸気分子に対する電池の内部の完全な密閉が可能である。
【0031】
疑う余地なく、電池のための多目的パッケージング構造10が得られ、この構造は、パッケージング、水蒸気障壁およびタブとして同時に作用する。
【0032】
ここで開示されている本発明によるパッケージング構造10は、パッケージング中に金属層が存在していることが要求される一次電池および二次電池、典型的にはリチウム-イオン電池を製造する場合に使用することができる。多くの異なる化学システム、例えばLiMnO(0<x<2、0<y<2およびx-y=3)、LiCoO、LiMPO(M=Fe、Mn、Co、Ni)、LiAlCo、NiO(0<x<1、0<y<1、0<z<1およびx+y+z=1)、LiNiloCo、O(0<y<1)、LixVyOzなどの陰極に基づくシステムを使用することができる。
【0033】
図2aおよび図2bは、図1に関連して説明した本発明の実施形態による、組み立てられた薄膜電池5の略斜視図を示す。
【0034】
図2aおよび図2bには、組み立てられた薄膜電池5の前面および背面がそれぞれ示されている。非限定的な一実施形態では、パッケージング構造によって密閉された電池セルは、嚢タイプの電池セルであってもよい。組み立てられた電池は、本発明の多層パッケージング構造を備えている。図2aおよび図2bから分かるように、電池5は、電池5の一方の側のパッケージング構造10の中に配置された第1の(正の)端子3a、および電池5の反対側のパッケージング構造10の中に配置された第2の(負の)端子3bを備えている。電池5の縁4は気密封止され、また、端子3a、3bはパッケージング構造中に埋め込まれている。ここでは、電池端子3a、3bは、外部回路(図示せず)を電池5に接続するために使用される電気接触点である。本出願の目的のために、「電池端子」という用語は、金属層のうちの外部環境と対向する部分を含む。溶接プロセス、ボンディング・プロセスまたは印刷プロセスによって、ワイヤまたはプレーンなどの外部要素(図示せず)を金属層の頂部で電池に追加することができる。電池5およびその端子3a、3bの大きさ、形状および位置は、電力が供給される製品の要求事項に応じて修正することができる。
【0035】
図3は、本発明の別の実施形態による薄膜電池5のための多層パッケージング構造10の横断面図である。図3を参照して、簡潔にするために図1に関連して十分に説明した層については、それ以上は考察されない。図1に示されているパッケージング構造10の層と同様、図3のパッケージング構造のすべての層は、基板層(図示せず)の一方の表面に連続的に積層されている。
【0036】
したがって第1の層11と金属層14の間にはさまれた少なくとも第3の層13が示されており、第3の層13の中に第3の開口23が配置されており、前記第3の開口23の中心は、金属層14のうちの、配置された第1の開口21および第3の開口23と結合した部分31が露出され、薄膜電池5の集電体と電気接触することができるように構成されるよう、第1の層11の中に配置された第1の開口21の中心と整列されている。一例として、第3の層13は酸改質ポリプロピレン層であり、電解質が金属層14の中に侵入するのを防止している。第3の層13は、高度な接着を保証する接着剤によって金属層14に結合されている。
【0037】
第2の層12と金属層14の間にはさまれた複数の追加層16、17、18がさらに示されている。個々の追加層16、17、18の中に追加開口26、27、28が配置されており、前記追加開口26、27、28の中心は、金属層14のうちの、配置された第2の開口22および追加開口26、27、28と結合した部分32が露出されるよう、第2の層12の中に配置された第2の開口22の中心と整列されている。示されている多層構造10の追加層18は、金属層を引っ掻きおよび摩耗から保護する役割を果すポリエステル樹脂層を備えている。使用可能なポリエステル樹脂には、例えばポリエチレン・テレフタレート、ポリブチレン・テレフタレート、ポリエチレン・ナフタレート、ポリブチレン・ナフタレート、共ポリエステル、ポリカーボネート等がある。接着剤またはポリオレフィン樹脂は、結合された層として使用することができる。接着剤の特定の例には、ポリビニル・アセテート系接着剤、エチルおよびブチル・アクリレート、2-エチルヘキシル・エステルならびに他のホモポリマー、またはメチル・メタクリレート、アクリロニトリル、スチレン等との上記化合物のコポリマー等から構成されるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンおよびビニル・アセテート、エチル・アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸ならびに他のモノマーから構成されるエチレン・コポリマー系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂、メラミン樹脂等から構成されるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応性(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレン・ゴム、ニトリル・ゴム、スチレン-ブタジエン・ゴム等から構成されるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属ケイ酸塩、低融点ガラス等から構成される無機系接着剤ならびに他の接着剤を含むことができる。次の追加層17は、配向ナイロン膜、例えばポリアミド樹脂、とりわけナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6のコポリマー、ナイロン6,10、ポリ・メタ-キシリレン・アジパミド(MXD6)等であってもよい。この層は、接着剤層16によって金属層に結合されている。結合は、乾燥積層技法を使用することによって達成することができる。
【0038】
図3から分かるように、すべての開口は同じ半径を有しているが、他の代替も考えられる。さらに、金属層14の一方の面の整列した開口は、金属層14の他の面の整列した開口に対して反対側に配置されていることが好ましい。しかしながら金属層14の個々の面の整列した開口は、互いにオフセットした関係にあってもよい。
【0039】
一般的な水準では、パッケージング構造は、層が多いほどその性能がより良好になる。したがってより多くの層を使用することにより、成形性、電解質に対する抵抗および熱放射などの特性を著しく改善することができる。
【0040】
図4は、本発明の一実施形態による薄膜電池のための多層パッケージング構造を製造するための方法30のフロー・チャートを示す。
【0041】
最初に、第1の層11が提供される40。次に、第1の層11の頂部に金属層14が提供される50。引き続いて、第1の層11と第2の層12の間に金属層14がはさまれるよう、金属層14の頂部に第2の層12が提供される60。次のステップで第1の層11の中に第1の開口21が配置され70、第1の開口21は、金属層14のうちの、配置された第1の開口21と結合した第1の部分24が露出されるように配置される。次に、薄膜電池5の集電体と電気接触することができるように、金属層14のうちの、配置された第1の開口21と結合した第1の部分24が構成される80。引き続いて第2の層12の中に第2の開口22が配置され90、第2の開口22は、金属層14のうちの、配置された第2の開口22と結合した第2の部分25が露出されるように配置され、金属層14の前記第2の部分25は、外部回路に電気接続することができるように構成される。有利には、金属層14のうちの、配置された第2の開口22と結合した第2の部分25は外部環境と対向する。
【0042】
図1に関連する説明の適切な節を参照して、この方法に帰し得る効果、利点および利益を詳細に考察する。
【0043】
別の実施形態では、第1の層11と金属層14の間にはさまれた少なくとも第3の層13が提供され、また、第3の層13の中に第3の開口23が配置されており、前記第3の開口23の中心は、金属層14のうちの、配置された第1の開口21および第3の開口23と結合した部分31が露出され、薄膜電池5の集電体と電気接触することができるように構成されるよう、第1の層11の中に配置された第1の開口21の中心と整列されている。さらに別の実施形態では、第2の層12と金属層14の間にはさまれた少なくとも1つの追加層16、17、18が提供され、また、個々の追加層16、17、18の中に追加開口26、27、28が配置されており、前記追加開口26、27、28の中心は、金属層14のうちの、配置された第2の開口22および追加開口26、27、28と結合した部分32が露出され、外部回路に電気接続することができるように構成されるよう、第2の層12の中に配置された第2の開口22の中心と整列されている。金属層14の個々の面にいくつかの整列した開口を有するこれらの2つの実施形態による層構成は、金属層14へのアクセスを維持している。金属層14の一方の面の整列した開口は、金属層14の他の面の整列した開口に対して反対側に配置されていることが好ましい。しかしながら金属層14の個々の面の整列した開口は、互いにオフセットした関係にあってもよい。
【0044】
関連する実施形態では、開口のうちの少なくとも1つは、層の材料を切断するか、または押し抜くかのいずれかによって達成され、あるいは融解した成分を金属層14の上に選択的に堆積させることによって達成される。
【0045】
別法としては、開口のうちの少なくとも1つは、層材料の適切な部分を選択的に除去することによって達成され、層材料の適切な部分の選択的な除去は、レーザ・アブレーションを使用して達成される。
【0046】
図面および説明において、本発明の典型的な好ましい実施形態が開示され、特定の専門用語が使用されているが、それらは包括的および記述的な意味で単に使用されており、限定を目的としたものではなく、本発明の範囲は、以下の特許請求に示されている。
【符号の説明】
【0047】
3a 第1の(正の)端子、端子、電池端子
3b 第2の(負の)端子、端子、電池端子
4 縁
5 薄膜電池、電池
10 多層パッケージング構造、構造、多目的パッケージング構造、多層構造
11 第1の層
12 第2の層
13 第3の層
14 金属層
16 追加層、接着剤層
17 追加層
18 追加層
21 第1の開口、開口
22 第2の開口、開口
23 第3の開口、開口
24 第1の部分、部分
25 第2の部分、部分
26 追加開口
27 追加開口
28 追加開口
30 多層パッケージング構造を製造するための方法
31 部分
32 部分
図1
図2a
図2b
図3
図4