(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】1D超音波変換器ユニット
(51)【国際特許分類】
G01N 29/24 20060101AFI20220524BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
G01N29/24
H04R17/00 332A
(21)【出願番号】P 2021500929
(86)(22)【出願日】2019-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2019000162
(87)【国際公開番号】W WO2020011387
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-02-02
(31)【優先権主張番号】102018005540.0
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513003622
【氏名又は名称】ペッパール プルス フクス エス・エー
【氏名又は名称原語表記】Pepperl + Fuchs SE
【住所又は居所原語表記】Lilienthalstrasse 200, 68307 Mannheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス カインドル
(72)【発明者】
【氏名】レギーネ アウゲンシュタイン
(72)【発明者】
【氏名】マリオ クプニク
(72)【発明者】
【氏名】アクセル イェーガー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ルッチュ
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-075286(JP,A)
【文献】特開2002-186617(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0132827(US,A1)
【文献】特開昭52-153472(JP,A)
【文献】実開平04-102007(JP,U)
【文献】Konetzke et al.,Phased array transducer for emitting 40-kHz air coupled ultrasound without gratin globes,2015 IEEE INTERNAIONAL ULTRASONIC SYMOISIUM,IEEE,2015年10月21日,< DOI:10.1109/ULTSYM.2015.0019 >
【文献】Takahashi et al.,Ultrasonic phased array sensor for an electric travel aids for visually impaired people,PROCEEDING OF THE SPIE-THE INTERNATIONAL SOCIETY FOR OPTICAL ENGINEERING,2007年,<https://doi.org/10.1117/12.783988>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
H04R 17/00-17/10
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体、輪郭又は間隔を検出するための少なくとも3つの超音波変換器(12)と制御ユニットとを含む1D超音波変換器ユニット(10)であって、
・前記制御ユニット(14)は、各超音波変換器(12)を個別に駆動制御するように設計されており、
・各超音波変換器(12)はそれぞれ、ハウジング(22)と、前記ハウジング(22)内に配置されている圧電体(18)と、音波を気体状の媒質へ分離するための前記ハウジング(22)の開放端部に配置されている音響分離層(26)とを有しており、
・各超音波変換器(12)は、同一の周波数を放射し及び/又は受け取るように設計されており、
・前記超音波変換器(12)の前記周波数は、20kHz~400kHzの範囲にあり、
・互いに直接的に隣接する2つの超音波変換器(12)はそれぞれ、最大10cm又は最大5cm又は最大2cmの、前記音響分離層(26)の中心から前記音響分離層(26)の中心までの間隔(A1)を有しており、
・前記1D超音波変換器ユニット(10)は、超音波変換器(12)毎に1つの音響チャネル(36)を有しており、
・各音響チャネル(36)は、第1の断面を有する入口開口部(38)と第2の断面を有する出口開口部(40)とを有しており、
・各音響分離層(26)には、厳密に前記複数の入口開口部(38)のうちの1つが割り当てられており、
・前記出口開口部は、線に沿って配置されており、
・前記複数の出口開口部(40)のうちの1つの出口開口部の中心から、直接的に隣接する出口開口部(40)の中心までの間隔(A2)は、最大で、気体状の媒質における波長に相当し、又は、最大で、気体状の媒質における波長の半分に相当し、
・直接的に隣接する2つの出口開口部(40)間の前記間隔(A2)はそれぞれ、対応する前記入口開口部(38)同士の前記間隔(A1)よりも短く、
・前記入口開口部(38)の面積に対する前記出口開口部(40)の面積の比は、0.30~1.2の間の値を有しており、
・各音響チャネル(36)は、少なくとも、前記入口開口部(38)の直径の長さを有している、
1D超音波変換器ユニット(10)において、
・前記超音波変換器(12)は、共通の担体構造(16)内に入れられており、かつ、すべての音響チャネル(36)の前記出口開口部(40)は、湾曲した面(F1)にあ
り、又は、すべての音響チャネル(36)の前記出口開口部(40)は、共通の平坦な面(E1)にあり、
各超音波変換器(12)の前記ハウジング(22)は、円筒形の金属カップ(24)を含み、
各超音波変換器(12)の前記ハウジング(22)は、前記分離層(26)と前記金属カップ(24)との間に音響減結合層(28)を有している、
ことを特徴とする1D超音波変換器ユニット(10)。
【請求項2】
前記入口開口部(38)の面積に対する前記出口開口部(40)の面積の比は、0.35~1.0の間又は0.4~0.8の間の値を有している、
請求項1に記載の1D超音波変換器ユニット(10)。
【請求項3】
各超音波変換器(12)の前記音響分離層(26)から、割り当てられている前記音響チャネル(36)の前記出口開口部(40)までの長さ(L1)は、気体状の媒質における波長の8分の1の整数倍又は気体状の媒質における半波長の整数倍である、
請求項1又は2に記載の1D超音波変換器ユニット(10)。
【請求項4】
各音響チャネル(36)は、金属若しくはプラスチックから成る、又は、金属若しくはプラスチックを含む、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の1D超音波変換器ユニット(10)。
【請求項5】
各超音波変換器(12)は、はじめは、前記音響分離層(26)と共に、割り当てられている前記入口開口部(38)内に突出する、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の1D超音波変換器ユニット(10)。
【請求項6】
各音響チャネル(36)は、割り当てられている前記超音波変換器(12)の少なくとも一部を正確に適合して収容する、
請求項5に記載の1D超音波変換器ユニット(10)。
【請求項7】
各超音波変換器(12)の前記ハウジング(22)は、少なくとも5mmの直径(D7)を有している、
請求項1から6までのいずれか1項に記載の1D超音波変換器ユニット(10)。
【請求項8】
要素の数が増加し、4個又は5個又は6個又は8個又は16個の超音波変換器が線上に位置する、
請求項1から7までのいずれか1項に記載の1D超音波変換器ユニット(10)。
【請求項9】
前記各音響チャネル(36)は、同一の前記長さ(L1)を有している、
請求項1から8までのいずれか1項に記載の1D超音波変換器ユニット(10)。
【請求項10】
前記超音波変換器(12)は1つの共通の平坦な面に位置し、これによって、前記各音響チャネル(36)は、異なる長さ(L1)を有する、
請求項1から9までのいずれか1項に記載の1D超音波変換器ユニット(10)。
【請求項11】
前記音響分離層(26)の表面、前記金属カップ(24)の縁部及びそれらの間に配置されている、個々の各超音波変換器(12)の前記音響減結合層(28)は、それぞれ平坦な面に展開する、
請求項
1に記載の1D超音波変換器ユニット(10)。
【請求項12】
各超音波変換器(12)は、基準電位にある電磁シールド(20)を有している、
請求項1から
11までのいずれか1項に記載の1D超音波変換器ユニット(10)。
【請求項13】
各超音波変換器(12)の前記ハウジング(22)は、少なくともIP40保護等級に従って形成されている、
請求項1から
12までのいずれか1項に記載の1D超音波変換器ユニット(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体、輪郭又は間隔を検出するための少なくとも3つの、離散した、個別に駆動制御可能な超音波変換器を備える、1D超音波変換器ユニットに関する。
【0002】
超音波又は超音波変換器は、極めて種々の測定装置において使用される。用途に応じて、超音波は液体状の媒質又は気体状の媒質へ分離される。
【0003】
気体状の媒質における用途のための超音波変換器アレイは、国際公開第2008/135004号から知られている。このアレイは、2つの電極構造間のエレクトレットの層から成る層構造を有しており、ここで、1つの電極構造は、独立してアドレッシング可能な複数の電極要素を含み、これによって、エレクトレット層の局所的な、厚さ振動が生じる。
【0004】
近接場分解能が改善された超音波変換器の1.5Dアレイは、米国特許出願公開第2013/0283918号明細書から知られている。米国特許出願公開第2014/0283611号明細書及び米国特許第6310831号明細書には、位相制御された超音波変換器アレイ及び適応型の制御方法又は補償を行う制御方法が記載されている。
さらなる超音波変換器が、欧州特許出願公開第0940801号明細書、並びに、Eric Konetzke等著「Phased array transducer for emitting 40 kHz air-coupled ultrasound without grating lobes」(IEEE International Ultrasonic Symposium, 2015年, 1~4頁)、及び、Jaeger等著「Air-coupled 40-kHz ultrasonic 2D-phased array based on a 3D-printed waveguide structure」(IEEE International Ultrasonic Symposium, 2017年, 1~4頁)、及び、Takahashi等著「Ultrasonic phased array sensor for electrical travel aids for visually impaired people」(Proceedings of the spie -The international society for optical engineering spie - vertical-cavity surface-emitting lasers XIII,第6794巻,2007年12月3日 67943V頁, ISSN: 0277-786X)、及び、Manufactoring Murata「Ultrasonic Sensor Application Manual」(Cat. No. S15E-5,2009年1月1日, URL;https://cdn-reichelt.de/documents/datenblatt/8400/ultraschall%20sensor.pdf, 3頁)から知られている。
【0005】
産業環境で使用するために、使用される超音波変換器は、-40℃から、時には+100℃を超える、測定の温度安定性と、他の技術的な機器との電磁適合性とを保証できなければならない。さらに、超音波変換器は、粉塵、湿気、攻撃的な化学物質等の厳しい環境影響に対して、及び、機械的な衝撃に対して、又は、機械的な引っかき傷に対して堅牢でなければならない。
【0006】
大きい検出範囲を得るために、石英、エレクトレット又はPVFD等の他の圧電材料と比較して高い結合係数を有する、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックが使用される。結合係数はここで、機械的に蓄積されたエネルギーと電気的に蓄積されたエネルギーとの間の変換効率の尺度を表す。PZTの場合、励起の方向に応じて、これらはたとえば、0.3~約0.75の範囲にある。
【0007】
圧電材料の分極方向に応じて、交流電圧を使用して、幾何学的な伝播に応じて平面振動(Planarschwingung)、厚さ振動(Dickenschwingung)又はせん断振動(Scheerschwingung)と称される共振機械振動を圧電体において生成することができる。これらの種々の振動形態の場合、所定の周波数での共振振動に必要な圧電体の典型的な寸法を、材料固有の周波数定数から推定することができる。
【0008】
PZTの場合には、これらの周波数定数は、振動のタイプに応じて、典型的に、1300kHz*mm~2600kHz*mmである。
【0009】
したがって、センサ技術に適したPZTから成る薄いディスクは、平面モードにおいて、20kHz~500kHzの励起周波数の場合に、約4mm~100mmの直径を有する。このような薄いディスクの容量特性に基づき、相応する分極において、低い励起電圧が良好に実装される。
【0010】
圧電ディスクを厚くすることは望ましくない。圧電材料の厚さが増すにつれて、一方では、同一の周波数範囲の場合に、より高い電圧を、端的にkV範囲においても、印加する必要がある。これは、安全に関するコストがより高くなることを意味する。他方では、圧電体の厚さが増すにつれて、その剛性も変化し、これは音波の受け取りの場合に直接的に影響を及ぼしてしまう。
【0011】
位相制御された少なくとも1次元のアレイ(フェイズドアレイ(phased array))において複数の超音波変換器を使用する場合にはさらに、隣接する超音波変換器間の間隔が、超音波の波長より大きくてはならない、又は、有利には半波長より大きくてはならない、ということに注意する必要がある。
【0012】
この間隔条件によって、個々の変換器の構造サイズ又は超音波変換器の特定の構造形態/サイズによって可能な周波数範囲が制限される。
【0013】
20kHz~500kHzの間の周波数範囲及び空気への分離の場合、たとえば、隣接する変換器間の最大の間隔は、約8.5mm~約0.3mmのオーダーにある。
【0014】
しかし、センサ技術に適したPZTから成る薄いディスクを備える上述の変換器は、すでに圧電ディスクの直径に基づいて、平均で10倍以上の直径を有している。
【0015】
これを背景に、本発明の課題は、従来技術を発展させる装置を提供することである。
【0016】
上述の課題は、請求項1の特徴部分の構成を備える、1D超音波変換器ユニットによって解決される。本発明の有利な構成は、従属請求項の構成要件である。
【0017】
本発明の構成要件によれば、1D超音波変換器ユニットが提供される。
【0018】
この1D超音波変換器ユニットは、たとえば0.5m以上の間隔にある、物体、輪郭又は間隔を検出するための少なくとも3つの超音波変換器と、制御ユニットとを含む。
【0019】
この制御ユニットは各超音波変換器を個別に駆動制御するように設計されている。
【0020】
超音波変換器は、共通の担体構造内に入れられており、ここで、各超音波変換器はそれぞれ、ハウジングと、ハウジング内に配置されている圧電体と、気体状の媒質への超音波の分離のために、ハウジングの開放端部に配置されている音響分離層(Schallauskoppelschicht)、たとえば相応に配置されている、圧電体の表面とを有している。
【0021】
各超音波変換器は、同一の周波数を放射し及び/又は受け取るように設計されており、ここで、周波数は20kHz~400kHzの範囲にある。
【0022】
互いに直接的に隣接する2つの超音波変換器はそれぞれ、最大10cm又は最大5cm又は最大2cmの、音響分離層の中心から音響分離層の中心までの間隔を有している。
【0023】
1D超音波変換器ユニットは、さらに、超音波変換器毎に1つの音響チャネルを有しており、各音響チャネルは第1の横断面を有する入口開口部と第2の横断面を有する出口開口部とを有しており、各音響分離層には厳密に1つの入口開口部が割り当てられている。
【0024】
すべての音響チャネルの出口開口部は線に沿って配置されており、複数の出口開口部のうちの1つの出口開口部の中心から、直接的に隣接する出口開口部の中心までの間隔は、最大で、音響周波数の波長である、又は、最大で、音響周波数の波長の半分である。ここで、直接的に隣接する出口開口部間の間隔は、対応する入口開口部同士の間隔よりも短い。
【0025】
入口開口部の面積に対する出口開口部の断面の面積の比は0.30~1.2の間又は0.35~1.0の間又は0.4~0.8の間の値を有している。
【0026】
1D超音波変換器ユニットの超音波変換器が個別の離散した構成部分であり、ここで、各超音波変換器が、担体構造、たとえばハウジング内へ入れられることによって、固定の位置、ひいてはすべての他の超音波変換器に対する固定の間隔も有することが明らかである。
【0027】
ここで、互いに並んで配置され、その間に他の超音波変換器が配置されていない2つの超音波変換器は、互いに直接的に隣接している。
【0028】
個々の音響チャネルが管状又は棒状に形成されており、ここで、たとえば、管の直径が減少する、及び/又は、断面の形状が変化する、及び/又は、チャネルの経路が弧状に又はs字状に形成されていることも明らかである。
【0029】
有利には音響チャネルは、音響分離層と出口開口部との間で、滑らかな内壁、特にエッジを有していない。
【0030】
個別に駆動制御可能な複数の超音波変換器を用いて、時間的にシフトされた駆動制御又は位相シフトされた駆動制御によって、調整可能な主要伝播方向を有する波面が生成される。
【0031】
個々の超音波変換器の前に音響チャネルを配置することによって、重畳の際に、又は、共通の波面のための重畳に対して、個々の音響源が音響チャネルの各端部若しくは出口開口部に移される。
【0032】
これによって、個々の音響源間の間隔を個々の変換器間の間隔と比較して短くすることができ、特に個々の音響源間の間隔を個々の超音波変換器のサイズ、たとえば直径とは無関係に、又は、個々の超音波変換器間の間隔とは無関係に、調整することができる。
【0033】
したがって、本発明の利点は、圧電変換器の放射開口、たとえば圧電体によって設定された直径を有する円形の開口が、それらが少なくとも1つの次元において、所望のアレイ配置の条件を満たし、この形成によってフェイズドアレイ装置が形成されるように音響チャネルによって変えられるということである。
【0034】
特に、各音響チャネルの大きい出口面によって、すなわち、0.3よりも大きい比によって、装置の音圧、ひいては検出範囲が、個々の超音波変換器の検出範囲と比較して、ほぼ得られる。比較的小さい比又は両方の次元における面の低減の場合には、装置の検出範囲は、個々の超音波変換器の検出範囲と比べて低減する。
【0035】
特に、MEMSベースの超音波変換器とは異なり、各段に大きい出力が得られ、これによって、特に、0.5mを上回って離れた物体又は構造も確実に検出される。
【0036】
音響チャネルの経路及び出口開口部の寸法は、さらに、1つの次元における波面を誘導し、他の、これに対して直交する次元における波面の延伸を空間的に集束させることを可能にする。
【0037】
驚くべきことに、直交する次元におけるこの集束が、1次元の超音波変換器とこれに属する音響チャネルとのみによって実現されることが明らかになった。
【0038】
ここで、多次元のアレイ配置による解決アプローチは、顕著に多くの超音波変換器及び制御ユニットでの付加的な複雑性を必要とする。多次元超音波変換器での確実性は格段に低い。
【0039】
同様のことが、逆に、上述したアレイセンサシステムの受信感度にも当てはまる。超音波変換器入口面の少なくとも0.3倍の受信面を得ることによって受信感度が維持される。
【0040】
本発明の解決方法の利点は、上述したセンサシステムがアレイ条件下でのこのような周波数範囲において、気体状の媒質において、送信も受信も行うことができるということである。
【0041】
特に、現在のMEMS構造は、気体状の媒質との関連においては、マイクロフォンとしてのみ使用可能である。
【0042】
しかし、個々の超音波変換器のハウジング直径がたとえば7mmである場合、2つの変換器の間隔は少なくとも14mmになる。
【0043】
したがって音響チャネルがない場合には、最大22kHz(λ≧14mm)又は最大11kHz(λ/2≧14mm)の周波数を有する波面しか実現可能ではない。
【0044】
重畳の際の個々の「音響源」の間隔は、変換器ハウジングのサイズではなく、音響チャネル出口開口部のサイズ及び間隔によってしか特定されないので、より高い周波数、すなわちより短い波長を有する波面の生成は、同等の超音波変換器を用いる場合には、本発明の音響チャネルによってはじめて可能になる。
【0045】
音響チャネルによってさらに、正確な、配向された検出が保証される。
【0046】
さらなる利点は、ある程度のサイズを有する、特に確実な、ハウジングされた、離散した超音波変換器が、位相制御されたアレイにおいて、センサに対して間隔の空いた物体を気体状の媒質、たとえば空気において検出するために使用される、ということである。
【0047】
発展形態では、第2の断面の面積と第1の断面の面積との間の比は0.35~1.0の間又は0.40~0.8の間の値を有している。
【0048】
音響チャネルの入口面の面積は、出口面の面積と比べて、拡大され、又は、低減され、又は、維持される。ここで、すべての実施形態において、少なくとも、入口開口部の幅と比較した出口開口部の幅の低減が行われる。
【0049】
さらなる実施形態では、各超音波変換器の音響分離層から、割り当てられている音響チャネルの出口開口部までの長さは、音響周波数の波長の8分の1の整数倍又は音響周波数の半波長の整数倍である。
【0050】
他の実施形態では、すべての音響チャネルの出口開口部は、共通の平坦な面又は湾曲した面にある。湾曲した面、たとえば凹面に配置することによって、たとえば集束された波面が生成される。
【0051】
他の実施形態では、各音響チャネルは、金属又はプラスチックから成る。選択的に、各音響チャネルは、金属又はプラスチックを含む。
【0052】
さらなる実施形態では、各超音波変換器は、はじめは、音響分離層と共に、割り当てられている入口開口部内に突出し、発展形態において、各音響チャネルは、割り当てられている超音波変換器の少なくとも一部を正確に適合して収容する。
【0053】
言い換えれば、入口開口部の領域における音響チャネルの内側形状は、各超音波変換器の外側形状に可能な限り正確に相当する。
【0054】
さらなる実施形態では、各超音波変換器のハウジングは、少なくとも7mmの直径を有している。
【0055】
有利には各超音波変換器のハウジングは、円筒形の金属カップを含み、さらなる発展形態では、分離層と金属カップとの間に音響減結合層(Schallentkopplungsschicht)を有している。
【0056】
このような実施形態の発展形態では、音響分離層の表面、金属カップの縁部及びそれらの間に配置されている、個々の各超音波変換器の音響減結合層はそれぞれ平坦な面に展開する。
【0057】
他の実施形態では、各超音波変換器は、基準電位にある電磁シールドを有している。電磁シールドが、ハウジング、特にハウジングとして用いられる金属カップによって完全に又は少なくとも部分的に形成されていてもよいことが明らかである。
【0058】
選択的に、1D超音波変換器ユニットは、すべての超音波変換器に対して共通のシールド、たとえば共通のハウジングを有していてもよい。
【0059】
さらなる実施形態では、各超音波変換器のハウジングは、少なくともIP40保護等級に従って形成されている。
【0060】
さらなる実施形態では、各音響チャネルは、少なくとも0.5mm又は少なくとも1mmの壁の厚さを有している。
【0061】
他の発展形態では、それぞれ2つの音響チャネルは互いに、2つの音響チャネルの全長にわたって、少なくとも0.5mm又は少なくとも1mmの間隔を有している。
【0062】
他の実施形態では、担体構造は、担体構造の第1の端面での第1の平坦な面と、担体構造の第2の端面での第2の平坦な面とを有しており、ここで、この第1の端面は、第2の端面に対して平行に形成されている。
【0063】
このために、超音波センサは、入口開口部に、第1の直線に沿って配置されており、音響チャネルの出口開口部は、第2の直線に沿って配置されている。有利には、これら2つの直線は互いに平行に形成されている。第2の直線の長さが、第1の直線の長さよりも格段に短いことが明らかである。利点は、収容装置における、平行する2つの端面を有する担体構造の取り付けが格段に容易になるということである。
【0064】
本発明を、図面を参照して以降においてより詳細に説明する。ここでは、同様の部分に同一の参照記号が付けられている。図示の実施形態は、非常に概略的である。すなわち、間隔、横方向の延在及び縦方向の延在は縮尺通りではなく、特に、そうでないことが明記されていない限り、導出可能な相互の幾何学的な関係も有していない。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】1D超音波変換器ユニットの第1の本発明による実施形態の図である。
【
図2】
図2A及び
図2Bは、個々の超音波変換器の第1の本発明による実施形態の図である。
【
図3】音響チャネルの第2の本発明による実施形態の図である。
【
図4】音響チャネルの第3の本発明による実施形態の図である。
【
図5】個々の音響チャネルのさらなる実施形態の図である。
【
図6】音響チャネルの出口面の種々の実施形態の図である。
【0066】
図1は、本発明に係る1D超音波変換器ユニット10の第1の実施形態の図を示している。これは、物体、輪郭又は間隔を検出する、直線に沿って配置されている5つの超音波変換器と、制御ユニット14とを有している。ここで、この制御ユニット14は、各超音波変換器12を個別に駆動制御するように設計されている。
【0067】
図示の実施例では、超音波変換器12は、同一の間隔A1で、共通の担体構造16内に入れられている。ここで、各超音波変換器は圧電体18、圧電体18を包囲しているハウジング22を有している。各超音波変換器12は、同一の周波数を放射するように及び/又は受け取るように設計されており、ここで、この周波数は、20kHz~100kHzの範囲にある。
【0068】
図2Aには、複数の超音波変換器12のうちの1つの超音波変換器の第1の本発明による実施形態の平面図が示されている。各超音波変換器12のハウジング22は、少なくとも7mmの外径D1を備える円筒形の金属カップ24を有している。ハウジング22は、圧電体18用の、基準電位にあるシールド20を形成する。
【0069】
金属カップ24の開放端部には、音波を気体状の媒質へ分離するための音響分離層26が配置されている。分離層26と金属カップ24との間には音響減結合層28が配置されている。
【0070】
音響分離層26の表面、金属カップ24の縁部及びその間に配置されている、各超音波変換器12の音響減結合層28はそれぞれ、共通の平坦な面にある。
【0071】
1D超音波変換器ユニット10の隣接する2つの超音波変換器12の間の間隔A1はそれぞれ、ある超音波変換器12の音響分離層26の中心から、他の超音波変換器12の音響分離層26の中心までの間隔を示す。間隔A1は、最大で10cm又は最大で5cm又は最大で2cmである。
【0072】
図2Bには、複数の超音波変換器12のうちの1つの超音波変換器のハウジング22の背面図が示されている。金属カップ24の底部は2つの貫通孔30を有しており、これらを通してそれぞれ電気的な接続コンタクト32がハウジング内部から外へ導出される。電気的な接続コンタクト32は、注入コンパウンド34によって、金属カップ24に対して電気的に絶縁されている。
【0073】
1D超音波変換器ユニット10は超音波変換器毎に1つの音響チャネル36を有しており、各音響チャネルは、入口開口部38及び出口開口部40及び最短で3cmかつ最長で20cmの長さL1を有している。入口開口部はそれぞれ、各超音波変換器12がチャネル36内へ放射するように、1つの超音波変換器12の前又は周囲に配置されている。
【0074】
図示の実施例ではこのために、それぞれ、超音波変換器12が少なくとも部分的に、割り当てられている各音響チャネル36内へ達しており、これによって音響分離層26は完全に、各音響チャネル36内に位置する。同様に、図示されていない実施形態では、入口開口部を、僅かな間隔で、音響分離層26の前に、又は、たとえば金属カップの縁部に接して位置付けることが可能である。
【0075】
隣接する2つの出口開口部はそれぞれ、出口開口部の中心から出口開口部の中心までの、最大で5cm又は最大で2cm又は最大で0.5cmの間隔A2を有している。本発明では、出口開口部40同士の間隔A2はそれぞれ、入口開口部38同士の間隔A1以下である。
【0076】
各音響分離層26から、属する音響チャネル36の出口開口部40までの長さL1は、音響周波数の波長の8分の1の整数倍である。
【0077】
図3及び
図4には、音響チャネルのさらなる本発明による実施形態が概略的に示されている。以降においては、それぞれ、
図1又は
図3の実施形態に対する違いを説明する。
【0078】
図3に示された実施例では、音響チャネル36は、すべての音響チャネル36の出口開口部40が共通の平坦な面E1にあるように延在している。
【0079】
各音響チャネル36の入口開口部38に続いている、各音響チャネル36の領域は、割り当てられている各超音波変換器12が音響チャネル36内に正確に適合するように形成されている。この目的のために、各音響チャネル36は、この領域において、外径D1に相応する内径と、ストッパとして用いられるエッジ42とを有している。
【0080】
入口開口部38は超音波変換器12と共にそれぞれ、出口開口部40が面E1内に位置し、各音響分離層26から、割り当てられている出口開口部までの長さL1が、音響周波数の波長の8分の1の倍数であるように、担体構造16内に配置されている。
【0081】
図4に示された実施例では、すべての音響チャネル36の出口開口部40は、凹状に湾曲した面F1にある。
【0082】
図5では、個々の音響チャネル36が概略的に示されており、以降においては、
図1~
図4との違いを説明する。
【0083】
入口開口部38は幅x1及び高さy1の断面を有しており、出口開口部40は幅x2及び高さy2の断面を有している。
【0084】
入口開口部は円形に形成されている。すなわち、断面の幅x1と高さy1とは、同一の値を有している。これとは異なり、出口開口部は楕円形であり、断面の幅x2は幅y2よりも小さい。
【0085】
有利には、出口開口部40の幅x2は、入口開口部38の幅x1よりも小さい。これとは異なり、出口開口部40の高さy2は、有利には、入口開口部38の高さy1よりも大きい。
【0086】
特に有利には、入口開口部38の断面の面積が、出口開口部40の断面の面積に相当するように、音響チャネル36の高さの増加は、音響チャネル36の幅の減少を補償する。
【0087】
最大で音響周波数の波長である、出口開口部40の中心から、直接的に隣接する出口開口部40の中心までの間隔を実現できるようにするために、各出口開口部40の幅x2が音響周波数の波長よりも小さくなければならないということが明らかである。
【0088】
図6には、出口開口部40の断面の、本発明によるいくつかの実施例が概略的に示されている。出口開口部40の断面の面積が、入口開口部38の断面の面積に相当するためには、特に、高さy2に対する幅x2の比率が約1.5である形状が適している。