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特許7078796非界面活性剤型オイル‐水分散組成物、非界面活性剤型水‐オイル分散組成物及びこれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】非界面活性剤型オイル‐水分散組成物、非界面活性剤型水‐オイル分散組成物及びこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/00 20060101AFI20220524BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 31/375 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 31/4406 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 31/4188 20060101ALI20220524BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
B01J13/00 A
A61K8/04
A61K45/00
A61K8/92
A61K8/34
A61K8/67
A61K8/60
A61K8/64
A61K31/375
A61K31/4406
A61K31/197
A61K31/4188
A61K9/10
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021505172
(86)(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 KR2019004593
(87)【国際公開番号】W WO2019203546
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-10-14
(31)【優先権主張番号】10-2018-0044547
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520400117
【氏名又は名称】チョル・ファン・キム
(73)【特許権者】
【識別番号】520400128
【氏名又は名称】アスティン・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チョル・ファン・キム
【審査官】山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-510256(JP,A)
【文献】特開2000-095635(JP,A)
【文献】特開2015-124168(JP,A)
【文献】特表2009-525342(JP,A)
【文献】特開2006-281038(JP,A)
【文献】特表2018-501242(JP,A)
【文献】特表2017-509589(JP,A)
【文献】特開2000-319643(JP,A)
【文献】特表2006-528222(JP,A)
【文献】特開2017-81896(JP,A)
【文献】Susanne Sihler et al.,Highly Transparent w/o Pickering Emulsions without Adjusting the Refractive Index of Stabilizing Particles,Langmuir,2017年,Volume 33, Issue 39,p.10302-10310
【文献】Koji Nakabayashi et al.,Highly clear and transparent nanoemulsion preparation under surfactant-free conditions using tandem acoustic emulsification,Chem. Commun,2011年,Volume 47, Issue 20,p.5765-5767
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J
A61K
A61Q
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性溶媒内に非極性溶媒液滴を含む分散組成物であって、
前記分散組成物の透過度(transparency)が90ないし100%であり、
前記非極性溶媒液滴の平均粒径が20nm以下であり、
前記非極性溶媒の液滴は、組成物の総重量に対して0.01重量%(W/W)ないし30.0重量%(W/W)で含まれる、非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物。
【請求項2】
前記非極性溶媒の液滴は活性成分をさらに含む、請求項1に記載の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物。
【請求項3】
前記活性成分は、シクロスポリンA、パクリタキセル、ドセタキセル、デクルシン、メロキシカム、イトラコナゾール、セレコキシブ、カペシタビン、トラボ、フロスト、イソフラボン、ジクロフェナクナトリウム、ジンセノサイド Rg1、タクロリムス、アレンドロネート、ラタノプロスト、ビマトプロスト、アトルバスタチンカルシウム、ロスバスタチンカルシウム、エンテカビル、アムホテリシンB、オメガ3、ウルソデオキシコール酸、ユーカリ油、ラベンダー油、レモン油、ビャクダン油、ローズマリー油、カモミール油、シナモン油、オレンジ油、アルファ・ビサボロール、ビタミンA(レチノール)、ビタミンE、トコフェリル酢酸、ビタミンD、ビタミンF及びこれらの誘導体からなる群から選択されるいずれか一つ以上である、請求項に記載の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物を含む化粧料組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物を含む医薬用組成物。
【請求項6】
a)シリカに非極性溶媒を含浸させる段階;
b)前記a)段階で製造された非極性溶媒が含浸されたシリカを極性溶媒と混合する段階;及び
c)前記b)段階で製造された非極性溶媒が含浸されたシリカに衝撃を与えて非極性溶媒液滴を生成することによって、極性溶媒内に非極性溶媒液滴を含ませる段階;を含む、
請求項1の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物の製造方法。
【請求項7】
前記シリカの気孔サイズが粒径を基準にして5ないし40nmである、請求項に記載の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物の製造方法。
【請求項8】
前記a)段階で非極性溶媒に活性成分をさらに添加する、請求項に記載の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物の製造方法。
【請求項9】
前記c)段階で非極性溶媒が含浸されたシリカに衝撃を与える方法は、超音波を印加したり、またはせん断応力(shear stress force)を印加することである、請求項に記載の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物の製造方法。
【請求項10】
非極性溶媒内に極性溶媒液滴を含む分散組成物であって、
前記分散組成物の透過度(transparency)が90ないし100%であり、
前記極性溶媒液滴の平均粒径が20nm以下であり、
前記極性溶媒の液滴は、組成物の総重量に対して0.01重量%(W/W)ないし30.0重量%(W/W)で含まれる、非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物。
【請求項11】
前記極性溶媒の液滴は活性成分をさらに含む、請求項10に記載の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物。
【請求項12】
前記活性成分は、アデノシン、アルブチン、ビタミンC、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンH、アセチルグルコサミン、ペプチド及びこれらの誘導体;からなる群から選択されるいずれか一つ以上である、請求項11に記載の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物。
【請求項13】
請求項10に記載の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物を含む化粧料組成物。
【請求項14】
請求項10に記載の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物を含む医薬用組成物。
【請求項15】
a)シリカに極性溶媒を含浸させる段階;
b)前記a)段階で製造された極性溶媒が含浸されたシリカを非極性溶媒と混合する段階;及び
c)前記b)段階で製造された極性溶媒が含浸されたシリカに衝撃を与えて極性溶媒液滴を生成することによって、非極性溶媒内に極性溶媒液滴を含ませる段階;を含む、
請求項10の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物の製造方法。
【請求項16】
前記シリカの気孔サイズが粒径を基準にして5ないし40nmである、請求項15に記載の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物の製造方法。
【請求項17】
前記a)段階で、極性溶媒に活性成分をさらに添加する、請求項15に記載の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物の製造方法。
【請求項18】
前記c)段階で、極性溶媒が含浸されたシリカに衝撃を与える方法は、超音波を印加したり、またはせん断応力(shear stress force)を印加することである、請求項15に記載の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物、非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物及びこれらの製造方法に係り、より詳しくは、界面活性剤を含まずとも分散安定性に優れる非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物、非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の液滴はファンデルワールス(van der Waals)力と表面張力のような物理的、化学的引力によって互いにくっ付くようになる。溶液の中に存在する液滴の粉砕と分散のためには前述した引力以上の力がなければならないし、ボールミル(ballmill)法のような既存の分散方式は分散過程で不純物が含まれる問題点があった。よって、このように液滴の間で集まる現象を防ぐために多様な方法が試みられている。
【0003】
その一つの方法が界面活性剤の使用である。特に、水にオイルを分散させた水中油(O/W)分散液、またはオイルに水を分散させた油中水(W/O)分散液の場合、分散液の分散状態を安定化させるために、乳化に必要な追加界面活性剤を利用して十分な安定性は維持することができる。
【0004】
しかし、界面活性剤を使うようになれば、均一な分散を通じて安定化させることができる長所があるが、界面活性剤の使用によって広がり性が悪く使用感が不快なべたつきや油気が多量残留するなど、使用性の側面で深刻な短所があるうえ、界面活性剤の使用によって使用者が発疹を起こす問題があった。
【0005】
それだけでなく、従来の分散液の場合、超音波を加えたり、高温または低温で長期間使用することによって、分散度合いが低下し、水とオイル間の相分離現象が発生する問題点があった。
【0006】
よって、界面活性剤を使わずに水とオイルを安定的に分散させることができ、環境の変化に応じて相分離現象が発生しない分散液に対する研究の必要性が要求されている状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国公開特許第10‐2011‐0053775号(2011年05月24日)、集束超音波を利用したナノ粉末分散装置及びこれを利用した分散方法
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、本発明者らは、とても小さいサイズの液滴を製造すれば、界面活性剤を使わずとも優れる分散性を確保できることを見出して本発明を完成した。
【0009】
よって、本発明の目的は、界面活性剤を使わなくて広がる性質や塗られる性質など、使用性がよくて使用環境が変化しても相分離現象が発生せず、経皮伝達効果に優れる非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物または非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、前記組成物を含む化粧料組成物または医薬用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は極性溶媒内に非極性溶媒の液滴を含む分散組成物であって、前記分散組成物の透過度(transparency)が90ないし100%である、非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、a)シリカに非極性溶媒を含浸させる段階;b)前記a)段階で製造された非極性溶媒が含浸されたシリカを極性溶媒と混合する段階;及びc)前記b)段階で製造された非極性溶媒が含浸されたシリカに衝撃を与えて非極性溶媒液滴を生成することによって極性溶媒内に非極性溶媒液滴を含ませる段階;を含む、非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物の製造方法を提供する。
【0012】
本発明は、非極性溶媒内に極性溶媒液滴を含む分散組成物であって、前記分散組成物の透過度(transparency)が90ないし100%である、非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、a)シリカに極性溶媒を含浸させる段階;b)前記a)段階で製造された極性溶媒が含浸されたシリカを非極性溶媒と混合する段階;及びc)前記b)段階で製造された極性溶媒が含浸されたシリカと非極性溶媒の混合物にエネルギーを加えて極性溶媒液滴を生成することによって、非極性溶媒内に極性溶媒液滴を含ませる段階;を含む、第1項の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の分散組成物は、使用環境が変化しても相分離現象が発生しない長所があり、界面活性剤を使わないため、肌に使った時に広がる性質や塗られる性質などの使用性が良いという長所がある。
【0015】
また、難溶性物質や難分散性物質を容易に含ませることができるという長所がある。
また、とても小さいサイズの液滴内に多様な活性成分を添加することができるため、薬理効果がある成分を添加する場合、肌などを通じる経皮伝達機能が向上されて吸収率に優れるので、様々な医薬用製品にも使用することができる。
【0016】
また、経口投与、静脈注射を通じて薬理効果がある成分を伝達することができ、このような医薬用製品にも使用することができる。
【0017】
このような長所によって、多様な化粧用組成物及び医薬用組成物に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例によるオイル‐水(O/W)分散組成物内の液滴をCryoTEM(JEOL社JEM‐3011HR、FEI社Tecnai G2 spirit TWIN)装置を使用して撮影した写真である。
図2】本発明の実施例によるオイル‐水(O/W)分散組成物内の液滴を撮影した別の写真である。
図3】本発明の実施例によるオイル‐水(O/W)分散組成物の相分離特性を示す写真である。
図4】本発明の実施例によるオイル‐水(O/W)分散組成物の相分離特性を示す写真である。
図5】本発明の実施例によるオイル‐水(O/W)分散組成物の温度安定性特性を示す写真である。
図6】本発明の実施例によるオイル‐水(O/W)分散組成物の温度安定性特性を示す写真である。
図7】本発明の実施例によるオイル‐水(O/W)分散組成物の温度安定性特性を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明では、極性溶媒と非極性溶媒を含む分散組成物であって、界面活性剤を含まず、肌に使用した時の広がる性質や塗られる性質などの使用性が良いだけでなく、使用環境の変化にも相分離現象が発生することなく、薬理効果がある成分を添加する場合、とても小さいサイズの液滴内に多様な活性成分を添加することで肌などを通じる経皮伝達機能は勿論、静脈注射や経口投薬の性能が向上され、吸収率に優れる分散組成物を提示する。
以下、より詳しく説明する。
【0020】
非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物
本明細書で言及する非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物は、極性溶媒内に非極性溶媒液滴を含む分散組成物であって、前記分散組成物の透過度(transparency)が90ないし100%であることを特徴とする。一般的なオイル‐水分散組成物の場合、相分離現象を防止し、分散がよく起きるようにするために界面活性剤を含んでいる。しかし、界面活性剤を使うようになれば、均一な分散を通じて安定化させられる長所があるが、界面活性剤の使用によって、広がり性が悪くて使用感が不快なべたつきや、油気が多量残留するようになるなど、使用性側面において深刻な短所があった。
【0021】
ここで、本発明者らは、とても小さいサイズの非極性溶媒液滴を製造するようになれば、界面活性剤を使わずとも優れる分散性が確保され、よって分散組成物の透過度が向上されるということを確認して本発明を完成した。
【0022】
本発明において透過度(transparency)とは、ある物質の透明な度合いを示すことであって、媒質を透過した光の量を入射光の量に除して示す。したがって、透明な物質であるほど100%に近い値を示し、不透明な物質であるほど0%に近い値を示す。本発明では、UV650nmでの透過度を測定して示す。
【0023】
本発明の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物は極性溶媒を含む。
本発明で使う極性溶媒は、通常の意味で水と混合可能な溶媒であれば特に制限せずに使用することができ、具体的に、水、炭素数1ないし10のアルコール、アセトンなどを使用することができる。
【0024】
本発明の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物は非極性溶媒を含む。
本発明で使用する非極性溶媒の液滴とは、非極性溶媒が極性溶媒の中に球形または非球形の形態で分散されている状態のことを言う。本発明で使用する非極性溶媒の種類は、オイルと混合可能な物質であれば特に制限されず、好ましくはオイル、ヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、エチルアセテートなどからなる群から選択された1種以上を使用することができ、好ましくはオイルを使用することができる。
【0025】
本発明で使用する非極性溶媒の液滴は、球形または非球形の形態を有する。本発明における球形とは、表面が平滑な完全な球だけでなく、完全な球に近い多面体を含む概念であって、実質的に完璧な球形の液滴は存在しないという仮定で非球形の形態を有すると仮定する。
【0026】
したがって、本発明で使用する非極性溶媒の液滴は、球形度0.7ないし1の液滴を含む。ここで「球形度」というのは、R:液滴の投影面積と同一な円の直径、r:液滴の投影像に外接する最小円の直径とすると、r/Rで定義される。球形度の値が1に近いほど完全な球状を表し、0に近いほど球状から脱する。本発明で使用される液滴は球形度0.7ないし1であることが好ましく、これは楕円体または一部突出された部分を有する多面体形状を有する液滴を含むことができ、その他の液滴の形態もこれに制限されず、できる限りの全ての形態を含むことができる。
【0027】
本発明で使用する非極性溶媒の液滴の中で非球形の液滴は、楕円形で表されてもよい。よって、本発明で使用する非極性溶媒の液滴は、長径/短径の割合の平均が1ないし1000の楕円形液滴を含むことができ、5ないし100の範囲にあることがより好ましい。
【0028】
本発明において、前記非極性溶媒の液滴の球形度及び長径/短径の割合は、非極性溶媒の液滴を含む非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物を電子顕微鏡(例えば、TEM)を使用して測定可能な倍率(10,000ないし50,000倍)で撮影した写真を使用して測定した値であり、長径は液滴の外郭に接するように、またその面積が最も小くなるように描いた長方形の長辺の長さ、短径はその長方形の短い辺の長さである。また、長径及び短径の平均は、SEM写真上で測定可能な液滴を無作為で選択した液滴50個以上の平均である。SEM写真上で測定可能な液滴とは、例えば倍率10,000倍のSEM写真の場合は、短径で0.01μm以上の液滴である。
【0029】
本発明の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物に含まれる非極性溶媒液滴は、平均粒径が20nm以下のものを使用することができ、好ましくは15nm以下のものを使用することができ、最も好ましくは10nm以下のものを使用することができる。前記平均粒径は回折実験を通じて測定することができ、好ましくはSmall Angle Neutron Scattering(SANS)を使用して測定することができる。前記非極性溶媒の液滴平均粒径が20nmを超過すると分散性が低下し、相分離現象が発生する問題がある。また、前記非極性溶媒の液滴平均粒径の下限値は特に制限しないが、約1nm以上のものを使用することができる。
【0030】
本発明の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物に含まれる非極性溶媒液滴は、液滴の長径の粒径が0.2ないし3範囲のスパン△Dを有し、前記スパン△Dは下記数式1にしたがって計算されるものであってもよい。
[式1]
△D=(D90‐D10)/D50
前記スパン△Dが0.2より小くなると、このような液滴を製造しがたい問題があり、3より大きくなると分散性が低下し、相分離現象が発生する問題がある。
【0031】
本発明の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物の製造方法によると、組成物に含まれる非極性溶媒液滴の中で長径の粒径が20nm以下のものの割合が50%以上である。前記非極性溶媒液滴の長径の粒径が20nm以下のものの割合が50%より低ければ分散性が低下し、相分離現象が発生する問題がある。
【0032】
分散された液滴の間にはファンデルワールス(van der Waals)力と表面張力のような物理的、化学的引力に作用して互いに集まる現象が発生する。このような現象を制御するためには、液滴の間に作用するギブスエネルギーの△Hを調節しなければならない。
【0033】
しかし、本発明の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物に含まれる非極性溶媒液滴のようなナノサイズの液滴は、熱力学的に最も低いエネルギー状態である場合、外部のエネルギーまたは力の入力がない以上、自己組み立て(self‐assemble)られない("The role of interparticle and external forces in nanoparticle assembly"、Nature Materials 7、527‐538(2008)参照)。
【0034】
この点に着目して、本発明の発明者は、分散された液滴の大きさをナノスケールに減らすことで、ギブスエネルギーの△Hを調節できるという事実を利用して液滴どうしが集まることなくよく分散され、超音波のような外部のエネルギーや極低温、極高温上でも相分離されないように分散力を強化させた。
【0035】
また、本発明の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物に含まれる非極性溶媒液滴は、組成物の総重量に対して0.01重量%(W/W)ないし30重量%(W/W)で含まれてもよく、好ましくは0.1重量%(W/W)ないし15重量%(W/W)で含まれてもよい。
【0036】
前記非極性溶媒液滴の重量が0.01重量%(W/Wより少なく含まれると有効成分の含量がとても少なくなる問題があり、30.0重量%(W/Wより多く含まれると体積上相転移(phase inversion)が発生する問題がある。
【0037】
また、本発明の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物には添加剤をさらに含むことができる。
【0038】
前記添加剤は、水相の溶液に一般的に含まれるものであれば特に制限されずに使われてもよく、好ましくはpH調節剤、等張液、浸透圧安定剤、賦形剤またはこれらの混合物などを使用することができる。
【0039】
また、本発明の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物に含まれる非極性溶媒液滴は活性成分をさらに含むことができる。前記活性成分では、薬学的に有用な物質や医学的効果を有する物質であれば特に制限されずに使われてもよく、一例として、シクロスポリンA、パクリタキセル、ドセタキセル、デクルシン、メロキシカム、イトラコナゾール、セレコキシブ、カペシタビン、トラボ、フロスト、イソフラボン、ジクロフェナクナトリウム、ジンセノサイド Rg1、タクロリムス、アレンドロネート、ラタノプロスト、ビマトプロスト、アトルバスタチンカルシウム、ロスバスタチンカルシウム、エンテカビル、アムホテリシンB、オメガ3、ウルソデオキシコール酸や;ユーカリ油、ラベンダー油、レモン油、ビャクダン油、ローズマリー油、カモミール油、シナモン油、オレンジ油などの香オイル;アルファ・ビサボロール、ビタミンA(レチノール)、ビタミンE、トコフェリル酢酸、ビタミンD、ビタミンFまたはこれらの誘導体;などを使用したり、これらの組み合わせを使用することができる。
【0040】
また、前記活性成分は非極性溶媒液滴に対して0.001重量%(W/W)ないし20重量%(W/W)で含まれてもよい。
【0041】
本発明の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物は、前記のように活性成分を含むので、化粧料組成物または医薬用組成物で使用することができる。
【0042】
本発明の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物は、前述したように界面活性剤を含まないので、肌上に存在する陰イオンとイオン結合をしないうえ、非極性溶媒液滴のサイズが20nm以下で肌外部の穴(200nm以上)より著しく小さいサイズを持つので、肌内部への浸透が容易なためである。
【0043】
よって、前記化粧料組成物や医薬用組成物で使う時、従来の組成物に比べて著しく速くて、多くの活性成分を伝達することができる。
【0044】
非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物の製造方法
また、本発明は、a)シリカに非極性溶媒を含浸させる段階;b)前記a)段階で製造された非極性溶媒が含浸されたシリカを極性溶媒と混合する段階;及びc)前記b)段階で製造された非極性溶媒が含浸されたシリカに衝撃を与え、非極性溶媒液滴を生成することによって、極性溶媒内に非極性溶媒液滴を含ませる段階;を含む、非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物の製造方法を提供する。
【0045】
前記本発明による非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物の製造方法を各段階別に見ると次のとおりである。
【0046】
本発明のa)段階は、シリカに非極性溶媒を含浸させる段階である。
前記a)段階で使う非極性溶媒としては、オイルと混合可能な溶媒であれば特に制限されず、好ましくはオイル、ヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、エチルアセテートなどからなる群から選択された1種以上を使用することができ、好ましくはオイルを使用することができる。
【0047】
また、a)段階では、前記非極性溶媒に活性成分をさらに添加することができる。前記活性成分では薬学的に有用な物質や医学的効果を有する物質であれば特に制限せずに使われることができ、一例として、シクロスポリンA、パクリタキセル、ドセタキセル、デクルシン、メロキシカム、イトラコナゾール、セレコキシブ、カペシタビン、トラボ、フロスト、イソフラボン、ジクロフェナクナトリウム、ジンセノサイド Rg1、タクロリムス、アレンドロネート、ラタノプロスト、ビマトプロスト、アトルバスタチンカルシウム、ロスバスタチンカルシウム、エンテカビル、アムホテリシンB、オメガ3、ウルソデオキシコール酸や;ユーカリ油、ラベンダー油、レモン油、ビャクダン油、ローズマリー油、カモミール油、シナモン油、オレンジ油などの香オイル;アルファ・ビサボロール、ビタミンA(レチノール)、ビタミンE、トコフェリル酢酸、ビタミンD、ビタミンFまたはこれらの誘導体;などを使用したり、これらの組み合わせを使用することができる。
【0048】
前記シリカでは、ナノスケールの気孔サイズを宇薄ルものとして、非極性溶媒を含浸させることができるものであれば特に制限されずに使用することができるが、好ましくは、シリカ内の気孔サイズが粒径を基準にして5ないし40nmのものを使用することができる。この場合、後述する非極性溶媒液滴のサイズを調節し易い長所がある。
【0049】
本発明のb)段階は、前記a)段階で製造された非極性溶媒が含浸されたシリカを極性溶媒と混合する段階である。
前記b)段階では、前記a)段階で製造された非極性溶媒が含浸されたシリカを取り除いた後、これを極性溶媒に混合する。
本発明で使用する極性溶媒は、通常の意味で水と混合可能な溶媒であれば特に制限されずに使用することができ、具体的に、水、炭素数1ないし10のアルコール、アセトンなどを使用することができる。
【0050】
この時、含まれる極性溶媒の量は、前記シリカ内に含浸された非極性溶媒液滴と極性溶媒を合算した組成物の総重量と対比する時、非極性溶媒液滴の含量が0.01重量%(W/W)ないし30重量%(W/W)で含まれるように添加することができ、好ましくは非極性溶媒液滴の含量が0.1重量%(W/W)ないし15重量%(W/W)で含まれるように含むことができる。
【0051】
前記非極性溶媒液滴の重量が0.01重量%(W/Wより少なく含まれれば有効成分の含量がとても少なくなる問題があり、30.0重量%(W/Wより多く含まれれば体積上相転移(phase inversion)が発生する問題がある。
【0052】
本発明のc)段階は、前記b)段階で製造された非極性溶媒が含浸されたシリカに衝撃を与え、非極性溶媒液滴を生成することにより、極性溶媒内に非極性溶媒液滴を含ませる段階である。
【0053】
本発明の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物の製造方法によると、シリカの気孔内部にオイルを含浸させた後、シリカに超音波やせん断応力(shear stress force)などを印加してシリカの気孔内に含浸されていた非極性溶媒を取り除いて液滴形態で作ることにより、シリカの気孔サイズより小さいサイズの非極性溶媒液滴を得ることができる。本発明は前記のような方法で非極性溶媒液滴のサイズをナノスケール水準で調節することができる。
【0054】
本発明の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物の製造方法において、シリカに超音波を印加させる方法は、シリカに含浸された非極性溶媒を取り除くことができれば特に限定されないが、好ましくは韓国登録特許10‐1157144の分散装置を使用することができる。
【0055】
また、非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物の製造方法において、シリカにせん断応力(shear stress force)を印加する方法も当業界で利用する方法であれば特に限定されずに利用することができる。
【0056】
このような本発明の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物の製造方法によると、非極性溶媒液滴の長径の粒径が0.2ないし3範囲のスパン△Dを有し、前記スパン△Dは下記数式1によって計算されるものである。
[式1]
△D=(D90‐D10)/D50
前記スパン△Dが0.2より小さければ、このような液滴を製造しにくい問題があり、3より大きければ分散性が落ちて相分離現象が発生する問題がある。
【0057】
また、本発明の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物の製造方法によると、組成物に含まれる非極性溶媒液滴の中で長径の粒径が20nm以下のものの割合が50%以上である。前記非極性溶媒液滴の長径の粒径が20nm以下のものの割合が50%より低ければ分散性が落ち、相分離現象が発生する問題がある。
【0058】
非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物
本明細書で言及する非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物は、非極性溶媒内に極性溶媒液滴を含む分散組成物であって、前記分散組成物の透過度(transparency)が90ないし100%であることを特徴とする。一般的な水‐オイル分散組成物の場合、相分離現象を防止し、よく分散させるために界面活性剤を含んでいる。しかし、界面活性剤を使用すれば、均一な分散を通じて安定化することができる長所があるが、界面活性剤の使用によって広がり性が悪く、使用感が不快なべたつきや油気が多量残留するなど、使用性側面において深刻な短所があった。
【0059】
ここで、本発明者らは、とても小さいサイズの極性溶媒液滴を製造するようになれば、界面活性剤を使わなくても優れる分散性が確保可能であり、よって分散組成物の透過度(transparency)が向上されることを確認して本発明を完成した。
【0060】
本発明の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物は非極性溶媒を含む。
本発明で使用する非極性溶媒の種類は、オイルと混合可能な物質であれば特に制限されず、好ましくは、オイル、ヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、エチルアセテートなどからなる群から選択された1種以上を使用することができ、好ましくはオイルを使用することができる。
【0061】
本発明の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物は非極性溶媒を含む。
本発明で使う極性溶媒の液滴とは、極性溶媒が非極性溶媒中に球形または非球形の形態で分散されている状態を言う。
【0062】
本発明で使用する極性溶媒は、通常の意味で水と混合可能な溶媒であれば特に制限されずに使用することができ、具体的に、水、炭素数1ないし10のアルコール、アセトンなどを使用することができる。
【0063】
本発明で使用する極性溶媒の液滴は、球形または非球形の形態を有する。本発明における球形とは、表面が平滑な完全な球のみならず、完全な球に近い多面体を含む概念であって、実質的に完璧な球形の液滴は存在しないという仮定で、非球形の形態を有するものと仮定する。
【0064】
よって、本発明で使用する極性溶媒の液滴は、球形度0.7ないし1の液滴を含む。ここで「球形度」とは、R:液滴の投影面積と同一な円の直径、r:液滴の投影像に外接する最小円の直径とすると、r/Rで定義される。球形度の値が1に近いほど完全な句の形状を示し、0に近いほど球状から脱する。本発明で使われる液滴は、球形度0.7ないし1であることが好ましく、これは楕円体または一部突出された部分を有する多面体形状を有する液滴を含むことができ、その他の液滴の形態もこれに制限されず、可能な全ての形態を含むことができる。
【0065】
本発明で使用する極性溶媒の液滴の中で非球形の液滴は、楕円形に示されてもよい。よって、本発明で使用する極性溶媒の液滴は、長径/短径の割合の平均が1ないし1000の楕円形液滴を含むことができ、5ないし100の範囲にあることがより好ましい。
【0066】
本発明において、前記極性溶媒の液滴の球形度及び長径/短径の割合は、極性溶媒の液滴を含む非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物を電子顕微鏡(例えば、TEM)を利用して測定可能な倍率(10,000ないし50,000倍)で撮影した写真を使用して測定した値であり、長径は液滴の外郭に接するように、またその面積が最も小くなるように描いた長方形の長辺の長さ、短径はその長方形の短い辺の長さである。また、長径及び短径の平均は、SEM写真上で測定可能な液滴を無作為に選択した液滴50個以上の平均である。SEM写真上で測定可能な液滴とは、例えば倍率10,000倍のSEM写真の場合、短径で0.01μm以上の液滴である。
【0067】
本発明の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物に含まれる極性溶媒液滴は、平均粒径が20nm以下のものを使用することができ、好ましくは15nm以下のものを使用することができ、最も好ましくは10nm以下のものを使用することができる。前記平均粒径は回折実験を通じて測定することができ、好ましくは Small Angle Neutron Scattering(SANS)を利用して測定することができる。前記極性溶媒の液滴平均粒径が20nmを超過すれば分散性が落ちて相分離現象が発生する問題がある。また、前記極性溶媒の液滴平均粒径の下限値は特に制限しないが、約1nm以上のものを使用することができる。
【0068】
本発明の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物に含まれる極性溶媒液滴は、液滴の長径の粒径が0.2ないし3範囲のスパン△Dを有し、前記スパン△Dは下記数式1によって計算される。
[式1]
△D=(D90‐D10)/D50
前記スパン△Dが0.2より小さければこのような液滴を製造しにくい問題があり、3より大きければ分散性が落ちて相分離現象が発生する問題がある。
【0069】
また、本発明の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物に含まれる極性溶媒液滴の中で、長径の平均粒径が20nm以下のものの割合が50%以上である。前記極性溶媒液滴の長径の粒径が20nm以下のものの割合が50%より低ければ分散性が落ちて相分離現象が発生する問題がある
【0070】
分散された液滴の間にはファンデルワールス(van der Waals)力と表面張力のような物理的、化学的引力に作用して互いに集まる現象が発生する。このような現象を制御するためには、液滴の間に作用するギブスエネルギーの△Hを調節しなければならない。
【0071】
しかし、本発明の非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物に含まれる非極性溶媒液滴のようなナノサイズの液滴は、熱力学的に最も低いエネルギー状態である場合、外部のエネルギーまたは力の入力がない以上、自己組み立て(self‐assemble)されない("The role of interparticle and external forces in nanoparticle assembly"、Nature Materials 7、527‐538(2008)参照)。
【0072】
このような点に着目して、本発明の発明者は分散された液滴の大きさをナノスケールに減らすことで、ギブスエネルギーの△Hを調節できるという事実を利用して、液滴どうしが集まることなく、よく分散できるし、超音波のような外部のエネルギーや極低温、極高温上でも相分離されないように分散力を強化させた。
【0073】
また、本発明の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物に含まれる極性溶媒液滴は、組成物の総重量に対して0.01重量%(W/W)ないし30重量%(W/W)で含まれることができ、好ましくは0.1重量%(W/W)ないし15重量%(W/W)で含まれることができる。
【0074】
前記極性溶媒液滴の重量が0.01重量%(W/Wより少なく含まれれば有効成分の含量が少なすぎる問題があり、30.0重量%(W/Wより多く含まれれば体積上相転移(phase inversion)が発生する問題がある。
【0075】
また、本発明の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物には添加剤をさらに含むことができる。
【0076】
前記添加剤は水相溶液に一般に含まれるものであれば特に制限されずに使われることができ、好ましくはpH調節剤、等張液、浸透圧安定剤、賦形剤またはこれらの混合物などを使用することができる。
【0077】
また、本発明の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物に含まれる極性溶媒液滴は、活性成分をさらに含むことができる。前記活性成分では、薬学的に有用な物質や医学的効果を有する物質であれば特に制限されずに使われることができ、一例として、アデノシン、アルブチン、ビタミンC、及びその親水性誘導体;ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンH及びその誘導体;アセチルグルコサミン;及びペプチド;などを使用したり、これらの組み合わせを使用することができる。
【0078】
また、前記活性成分は、極性溶媒液滴に対して0.001重量%(W/W)ないし20重量%(W/W)で含まれてもよい。
【0079】
本発明の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物は、前記のように活性成分を含むので、化粧料組成物または医薬用組成物で使用することができる。
【0080】
本発明の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物は、前述したように界面活性剤を含まないので、肌上に存在する陰イオンとイオン結合をしないうえ、極性溶媒液滴のサイズが20nm以下で、肌外部の穴(200nm以上)より著しく小さいサイズを有するので、肌内部への浸透が容易である。
【0081】
よって、前記化粧料組成物や医薬用組成物で使用する時、従来の組成物に比べて著しく速くて、多くの活性成分を伝達することができる。
【0082】
非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物の製造方法
また、本発明は、a)シリカに極性溶媒を含浸させる段階;b)前記a)段階で製造された極性溶媒が含浸されたシリカを非極性溶媒と混合する段階;及びc)前記b)段階で製造された極性溶媒が含浸されたシリカに衝撃を与えて極性溶媒液滴を生成することで、非極性溶媒内に極性溶媒液滴を含ませる段階;を含む、非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物の製造方法を提供する。
【0083】
前記本発明による非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物の製造方法を各段階別によく見ると次のとおりである。
【0084】
本発明のa)段階は、シリカに極性溶媒を含浸させる段階である。
前記a)段階で使用する極性溶媒では、オイルと混合可能な溶媒であれば特に制限されず、好ましくは、オイル、ヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、エチルアセテートなどからなる群から選択された1種以上を使用することができ、好ましくはオイルを使用することができる。
【0085】
また、a)段階では、前記極性溶媒に活性成分をさらに添加することができる。前記活性成分は薬学的に有用な物質や医学的効果を有する物質であれば特に制限されずに使われることができ、一例として、アデノシン、アルブチン、ビタミンC、及びその親水性誘導体;ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンH及びその誘導体;アセチルグルコサミン;及びペプチド;などを使用したり、これらの組み合わせを使用することができる。
【0086】
前記シリカは、ナノスケールの気孔サイズを有するものであって、極性溶媒を含浸させることができるものであれば特に制限されずに使用することができるが、好ましくは、シリカ内の気孔サイズが粒径を基準にして5ないし40nmのものを使用することができる。この場合、後述する極性溶媒液滴のサイズを調節し易い長所がある。
【0087】
本発明のb)段階は、前記a)段階で製造された極性溶媒が含浸されたシリカを非極性溶媒と混合する段階である。
【0088】
前記b)段階では、前記a)段階で製造された極性溶媒が含浸されたシリカを取り除いた後、これを非極性溶媒に混合する。
【0089】
本発明で使用する非極性溶媒は、通常の意味で水と混合可能な溶媒であれば特に制限されずに使用することができ、具体的に、水、炭素数1ないし10のアルコール、アセトンなどを使用することができる。
【0090】
この時、含まれる非極性溶媒の量は、前記シリカ内に含浸された極性溶媒の液滴と非極性溶媒を合算した組成物の総重量と対比した時、極性溶媒液滴の含量が0.01重量%(W/W)ないし30重量%(W/W)で含まれるように添加することができ、好ましくは、極性溶媒液滴の含量が0.1重量%(W/W)ないし15重量%(W/W)で含まれるように含むことができる。
【0091】
前記極性溶媒液滴の重量が0.01重量%(W/Wより少なく含まれれば有効成分の含量が少なすぎる問題があり、30.0重量%(W/Wより多く含まれれば体積上相転移(phase inversion)が発生する問題がある。
【0092】
本発明のc)段階は、前記b)段階で製造された極性溶媒が含浸されたシリカに衝撃を与えて極性溶媒液滴を生成することで、非極性溶媒内に極性溶媒液滴を含ませる段階である。
【0093】
本発明の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物の製造方法によると、シリカの気孔内部にオイルを含浸させた後、シリカに超音波やせん断応力(shear stress force)などを印加してシリカの気孔内に含浸されていた極性溶媒を取り除いて、液滴形態で作ることでシリカの気孔サイズより小さいサイズの極性溶媒液滴を得ることができる。本発明は、前記のような方法によって、極性溶媒液滴のサイズをナノスケール水準で調節することができる。
【0094】
本発明の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物の製造方法において、シリカに超音波を印加させる方法は、シリカに含浸された極性溶媒を取り除くことができるものであれば特に限定されないが、好ましくは、韓国登録特許10‐1157144の分散装置を利用することができる。
【0095】
また、非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物の製造方法において、シリカにせん断応力(shear stress force)を印加する方法も当該業界で利用する方法であれば特に限定されずに利用することができる。
【0096】
本発明の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物の製造方法によると、本発明の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物に含まれる極性溶媒液滴は、液滴の長径の粒径が0.2ないし3範囲のスパン△Dを有し、前記スパン△Dは下記数式1によって計算される。
[式1]
△D=(D90‐D10)/D50
前記スパン△Dが0.2より小さければこのような液滴を製造しにくい問題があり、3より大きければ分散性が落ちて相分離現象が発生する問題がある。
【0097】
また、本発明の非界面活性剤型水‐オイル(W/O)分散組成物の製造方法によると、組成物に含まれる極性溶媒液滴の中で長径の粒径が20nm以下のものの割合が50%以上である。前記極性溶媒液滴の長径の粒径が20nm以下のものの割合が50%より低ければ分散性が落ちて相分離現象が発生する問題がある。
【実施例
【0098】
以下、本発明の実施例を通じて本発明の製造方法をより詳しく説明する。本発明は、これらの実施例に限定されないことは当然といえる。
【0099】
実施例
非界面活性剤型オイル‐水(O/W)分散組成物の製造
[実施例1]
気孔の粒径サイズが20nm以下のエアロゲル(JIOS社、製品名AeroVa)20gをファーネス(Furnace、JSR社、JSMF‐45T)を使用して450℃で2時間熱処理する。熱処理したエアロゲル4gに香オイル8gを添加した後、オーバーヘッド撹拌機(M TOPS社、BL620D)を使用して香オイルをエアロゲルの気孔に含浸させる。この後、香オイルが吸着されたエアロゲル10gを水100gに添加した後、オーバーヘッド撹拌機を使用して前記エアロゲル内の気孔内に含まれたオイル液滴を溶媒内に分離した後、残ったエアロゲルを0.45μmフィルターでこしてオイル‐水分散組成物を製造した。前記オイル液滴と水の重量の割合(W/W)が0.5:99.5になるように水を希釈した後、CryoTEM(JEOL社 JEM‐3011HR、FEI社 Tecnai G2spirit TWIN)装置を使用して撮影した写真を図1に示す。図1の右側の写真のようにスケールした結果、いずれも10nm近くのナノスケールのオイル液滴が分散されていることが分かった。
【0100】
[実施例2]
エアロゲル(JIOS社、製品名AeroVa)の代わりに気孔の粒径サイズが30nm以下のアエロジル(Evonik社、製品名R812S)を除いては、実施例1と同様の方法でオイル‐水分散組成物を製造した。前記オイル液滴と水の体積の割合(V/V)で0.5:99.5であり、撮影したTEM写真を図2に示す。図2のようにナノスケールのオイル液滴が分散されていることが分かった。
【0101】
[比較例1]
気孔の粒径サイズが45nm以上の多孔性シリカ(ABC NANOTECH社、製品名Silnos 190)を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法でオイル‐水分散組成物を製造した。
【0102】
[比較例2]
香オイルと水を0.5:99.5の体積比で混合した後、これに界面活性剤(TCI社、Tween 60製品)5%を添加してオイル‐水分散組成物を製造した。
【0103】
非界面活性剤型水‐オイル(W /O)分散組成物の製造
[実施例3]
気孔の粒径サイズが20nm以下のエアロゲル(JIOS社、製品名AeroVa)20gをファーネス(Furnace、JSR社、JSMF‐45T)を使用して450℃で2時間熱処理する。熱処理したエアロゲル4gに水8gを添加した後、オーバーヘッド撹拌機(M TOPSR社、BL620D)を使用して水をエアロゲルの気孔に含浸させる。この後、水が吸着されたエアロゲル10gをMCT(medium chain triglycerides)Oil 100gに添加した後、オーバーヘッド撹拌機を使用して前記エアロゲル内の気孔内に含まれた水の液滴を溶媒内に分離した後、残ったエアロゲルを0.45μmフィルターでこして水‐オイル分散組成物を製造した。前記水液滴とオイルの重量の割合(W/W)が2.5:97.5になるようにオイルを希釈してナノスケールの水液滴が分散されている水‐オイル分散組成物を製造した。
【0104】
[実施例4]
エアロゲル(JIOS社、製品名AeroVa)の代わりに気孔の粒径サイズが30nm以下のアエロジル(Evonik社、製品名R812S)を除いては、実施例1と同様の方法でナノスケールの水液滴が分散されている水‐オイル分散組成物を製造した。前記水液滴とオイルの体積の割合(V/V)で0.5:99.5であった。
【0105】
[比較例3]
気孔の粒径サイズが45nm以上の多孔性シリカ(ABC NANOTECH社、製品名Silnos 190)を使用したことを除いては、実施例3と同様の方法で水‐オイル分散組成物を製造した。
【0106】
[比較例4]
水とオイルを0.5:99.5の体積比で混合した後、これに界面活性剤(TCI社、Span 60製品)5%を添加して水‐オイル分散組成物を製造した。
【0107】
実験例1:オイル液滴の大きさの特性
実施例1ないし2及び比較例1ないし2で製造されたオイル‐水分散組成物、及び実施例3ないし4及び比較例3ないし4で製造された水‐オイル分散組成物内のオイル液滴または水の粒径をCryoTEM(JEOL社JEM‐3011HR、FEI社Tecnai G2 spirit TWIN)装置を使用して撮影した後、液滴平均粒径を測定して表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
実験例2:透過度特性
UV‐Vis Spectrometer(Thermo Scientific社Evolution 60S)を使用し、実施例1ないし2及び比較例1ないし2で製造されたオイル‐水分散組成物、及び実施例3ないし4及び比較例3ないし4で製造された水‐オイル分散組成物に対して、それぞれの分散組成物を希釈せずに3mLを機器内に注入した後、UV700~200nmでスキャニング(scanning)してUV650nmでの透過度を測定した。その結果は下記表2に示す。
【0110】
【表2】
【0111】
前記表2のように、実施例1ないし4は優れる透過率を示し、気孔の粒径サイズが40nm以上の多孔性シリカを使用した比較例1と比較例3は顕著に低い透過率を示すことが分かった。
【0112】
実験例3:相分離特性
実施例1ないし2及び比較例1ないし2で製造されたオイル‐水分散組成物、及び実施例3ないし4及び比較例3ないし4で製造された水‐オイル分散組成物に対し、遠心分離機(WiseTis社CF‐10Set)を使用して13500rpmで5分間遠心分離して相分離特性を比べてみた。
その結果、遠心分離直後には遠心分離前(図3)と大して差はないし、図4のように5日経過した後、比較例1及び比較例3、比較例4の場合不透明であるか層分離が発生し、実施例1ないし4は相が安定していることを確認した。
【0113】
実験例4:温度安定性特性
実施例1ないし2及び比較例1ないし2で製造されたオイル‐水分散組成物及び実施例3ないし4及び比較例3ないし4で製造された水‐オイル分散組成物に対して、4℃、30℃、45℃の条件で4週保管した後、製造されたオイル‐水分散組成物の見かけ変化を観察し、下記表3及び図5(4℃で4週保管)、図6(30℃で4週保管)及び図7(45℃で4週保管)に示す。
【0114】
【表3】
【0115】
その結果、表3のように、実施例1ないし4は4℃、30℃、45℃の条件でいずれも外観上透明で安定度が良好で表れ、比較例1、2、4は4℃、30℃、45℃の条件でいずれも外観上不透明で、比較例3の場合層分離されなくて安定度が維持されなかったことが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7