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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】ウェットワイパー
(51)【国際特許分類】
A01N 25/34 20060101AFI20220525BHJP
A01N 33/12 20060101ALI20220525BHJP
A01N 47/12 20060101ALI20220525BHJP
A01N 47/44 20060101ALI20220525BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20220525BHJP
A01N 61/00 20060101ALI20220525BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20220525BHJP
A47K 7/00 20060101ALI20220525BHJP
A61K 8/41 20060101ALN20220525BHJP
A61K 8/42 20060101ALN20220525BHJP
A61K 8/43 20060101ALN20220525BHJP
A61Q 19/10 20060101ALN20220525BHJP
【ＦＩ】
A01N25/34 B
A01N33/12 101
A01N47/12 Z
A01N47/44
A01N59/16 A
A01N61/00 D
A01P3/00
A47K7/00 D
A61K8/41
A61K8/42
A61K8/43
A61Q19/10
【請求項の数】
2
(21)【出願番号】P 2017089322
(22)【出願日】2017-04-28
(65)【公開番号】P2018188368
(43)【公開日】2018-11-29
【審査請求日】2020-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391029325
【氏名又は名称】明星産商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196645
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 陽子
(72)【発明者】
【氏名】前田 智恵子
(72)【発明者】
【氏名】林 伸匡
(72)【発明者】
【氏名】近藤 芳和
(72)【発明者】
【氏名】山口 友香
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐馬
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】特開２００８－１１９４３３（ＪＰ，Ａ）
【文献】特開２０１４－１１８３５２（ＪＰ，Ａ）
【文献】特開２０１３－１２９６１１（ＪＰ，Ａ）
【文献】国際公開第２０１５／１２２３６４（ＷＯ，Ａ１）
【文献】特開２０１０－１３２６１１（ＪＰ，Ａ）
【文献】特開２０１０－１３２６１２（ＪＰ，Ａ）
【文献】特開２００４－０９９６１１（ＪＰ，Ａ）
【文献】特表２０１７－５０２０７７（ＪＰ，Ａ）
【文献】特表２００７－５０５９８８（ＪＰ，Ａ）
(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)
Ａ０１Ｎ
Ａ６１Ｋ
Ａ６１Ｑ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布に薬液を含浸させたウェットワイパーであって、前記薬液が、0.001～0.05質量％の塩化ベンザルコニウム、0.001～0.02質量％のブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、及び0.01～0.1質量％のポリアミノプロピルビグアナイドを含み、
前記薬液中のエタノール濃度が、０．１０質量％未満であり、
前記薬液が0.1～1.0質量％のノニオン系界面活性剤を含み、界面活性剤として陰イオン界面活性剤を含有せず、
前記不織布１０質量部に対して、２６質量部以上３４質量部以下の前記薬液が含浸されている、ウェットワイパー。
【請求項2】
前記薬液が、さらに、安息香酸、安息香酸塩類、クロルクレゾール、クロロブタノール、サリチル酸、サリチル酸塩類、ソルヒビン酸、ソルヒビン酸塩類、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸塩類、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル、パラオキシ安息香酸エステル、パラオキシ安息香酸ナトリウム塩、フェノキシエタノール、フェノール、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、レゾルシン、安息香酸パントテニルエチルエーテル、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、オルトフェニルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン、クロルキシレノール、クロルヘキシジン、臭化アルキルイソキノリニウム、チモール、トリクロロカルバニリド、ハロカルバン、ヒノキチオール、ピリチオン亜鉛、及び銀イオン抗菌剤からなる群から選ばれる少なくとも１種の抗菌剤を含有する、請求項１に記載のウェットワイパー。【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エタノールを実質的に含有しないウェットワイパーに関する。
【背景技術】
【0002】
ウェットワイパーは、一般に、手指の汚れや雑菌の除去、各種器具の清掃に使用されるものであり、素手で扱うことが多い傾向にある。従来知られていたウェットワイパーとしては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、エタノール、プロピレングリコール等が配合された薬液を含浸させたウェットワイパーが知られている（例えば、特許文献１参照）。
【0003】
ここで、病院内での環境清拭、テーブル、寝台等の除菌目的で、エタノールを含有する薬液を含浸させたウェットワイパーが知られている。エタノールは、一般生菌（グラム陽性菌及びグラム陰性菌）、結核菌、真菌、ウィルス等に有効であって、人体に対する安全性が高い除菌剤として知られており、ウェットワイパーの薬液に含有させる除菌剤として、広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平０２－０６１０００号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エタノールには、血液等のタンパク質を含む汚れを凝固する作用があるため、エタノールを含有する薬液を含浸させたウェットワイパーでは、タンパク質を含む汚れをきれいに清拭し、除菌することは難しい。一方、エタノールを薬液に配合しない場合は、この薬液を含浸させたウェットワイパーの除菌性能が不十分になるという問題があった。したがって、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、エタノールの配合量を最小限に抑制した薬液を含浸させたウェットワイパーであって、優れた除菌性能を示すウェットワイパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、第４級アンモニウム塩類、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、及びポリアミノプロピルビグアナイドを含有し、実質的にエタノールを含まない水溶液を含浸させたウェットワイパーによれば、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0007】
（１）本発明の第１の態様は、不織布に薬液を含浸させたウェットワイパーであって、前記薬液が、0.001～0.05質量％の塩化ベンザルコニウム、0.001～0.02質量％のブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、及び0.01～0.1質量％のポリアミノプロピルビグアナイドを含み、前記薬液中のエタノール濃度が、０．１０質量％未満であり、前記薬液が0.1～1.0質量％のノニオン系界面活性剤を含み、界面活性剤として陰イオン界面活性剤を含有せず、前記不織布１０質量部に対して、２６質量部以上３４質量部以下の前記薬液が含浸されている、ウェットワイパーである。
【0008】
（削除）
【0009】
（削除）
【0010】
（削除）
【0011】
（２）本発明の第２の態様は、（１）に記載のウェットワイパーであって、前記薬液が、さらに、安息香酸、安息香酸塩類、クロルクレゾール、クロロブタノール、サリチル酸、サリチル酸塩類、ソルヒビン酸、ソルヒビン酸塩類、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸塩類、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル、パラオキシ安息香酸エステル、パラオキシ安息香酸ナトリウム塩、フェノキシエタノール、フェノール、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、レゾルシン、安息香酸パントテニルエチルエーテル、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、オルトフェニルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン、クロルキシレノール、クロルヘキシジン、臭化アルキルイソキノリニウム、チモール、トリクロロカルバニリド、ハロカルバン、ヒノキチオール、ピリチオン亜鉛、及び銀イオン抗菌剤からなる群から選ばれる少なくとも１種の抗菌剤を含有することを特徴とするものである。
【0012】
（削除）
【発明の効果】
【0013】
本発明のウェットワイパーは、薬液が、実質的にエタノールを含まない水溶液であるので、タンパク質を含む汚れをきれいに清拭することができる。また、本発明のウェットワイパーは、薬液が、第４級アンモニウム塩類、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、及びポリアミノプロピルビグアナイドを含有するので、エタノールを実質的に含有していなくても、十分な除菌性能を発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
【0015】
＜ウェットワイパー＞
本発明のウェットワイパーは、不織布に所定の薬液を含浸させたものである。
本発明のウェットワイパーは、不織布に所定の薬液を含浸させたものである。
【0016】
［不織布］
不織布としては、木材パルプ繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成繊維を、ケミカルボンド法、スパンレース法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、エアレイド法、湿式スパンレース法、メルトボンド法等の公知の加工法によって一体化したものを用いることができる。不織布に使用する各繊維の割合、不織布の一体化を行うための各加工法は、ウェットワイパーに要求される風合いや機械的強度に応じて適宜選択すればよい。
不織布としては、木材パルプ繊維、レーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成繊維を、ケミカルボンド法、スパンレース法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、エアレイド法、湿式スパンレース法、メルトボンド法等の公知の加工法によって一体化したものを用いることができる。不織布に使用する各繊維の割合、不織布の一体化を行うための各加工法は、ウェットワイパーに要求される風合いや機械的強度に応じて適宜選択すればよい。
【0017】
ウェットワイパーは、ロール体として提供することもできるが、ウェットワイパーのロール体を製造するにあたっては、上記の不織布に対し、その巻き取り方向と垂直に、一定間隔でミシン目を入れ、不織布をロール状に巻き取ることが好ましい。不織布のシートは、長さ方向に平行な折り線によって、２つ折り以上に折っても、折らなくてもよく、不織布シートの全幅は、９０ｍｍ以上４００ｍｍ以下であることが好ましく、長さ方向に平行な折り線によって折る場合の折り幅は、４５ｍｍ以上２００ｍｍ以下であることが好ましく、不織布の巻き取り長さは、８ｍ以上１００ｍ以下であることが好ましく、不織布の坪量は、２０ｇ／ｍ２以上５０ｇ／ｍ２以下であることが好ましい。不織布の巻き取り長さや折り幅を以上の範囲内のものとすることにより、ウェットワイパーが使い勝手のよいサイズを有するものとなる。また、坪量を以上の範囲内のものとすることにより、ウェットワイパーが適度な風合いと強度とを兼ね備えたものとなる。
【0018】
ウェットワイパーは、ハンディタイプのウェットティッシュに見られるような、枚葉体であってもよい。その場合、ウェットワイパー一枚当たりの寸法は、長さ方向の寸法が、１４０ｍｍ以上４００ｍｍ以下であることが好ましく、幅方向の寸法が１４０ｍｍ以上４００ｍｍ以下であることが好ましい。ウェットワイパーの枚葉体は、一枚一枚をポップアップ形式で取り出すことができることが好ましく、上下に積層されるウェットワイパーが、Ｚ字折りやＶ字折りされて、相互に掛け合わされていることが好ましい。
【0019】
［薬液］
ウェットワイパーを製造するにあたって、不織布に含浸させる薬液は、第４級アンモニウム塩類、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、及びポリアミノプロピルビグアナイドを少なくとも含有する水溶液である。この３種類の成分を含有させることにより、ウェットワイパーに含浸させる薬液である水溶液にエタノールが実質的に含まれていない場合においても、ウェットワイパーが除菌性能に優れたものとなる。
ウェットワイパーを製造するにあたって、不織布に含浸させる薬液は、第４級アンモニウム塩類、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、及びポリアミノプロピルビグアナイドを少なくとも含有する水溶液である。この３種類の成分を含有させることにより、ウェットワイパーに含浸させる薬液である水溶液にエタノールが実質的に含まれていない場合においても、ウェットワイパーが除菌性能に優れたものとなる。
【0020】
不織布には、不織布１０質量部あたり、２５質量部以上３５質量部以下の薬液を含浸させることが好ましく、２８質量部以上３２質量部以下の薬液を含浸させることがより好ましい。薬液の量を上記の範囲内のものとすることにより、手指や各種の機器の汚れを除去する際に、薬液が多くなりすぎて液残りすることがなく、かつ不織布に十分な殺菌・防腐効果を発揮させることができるとともに、少ない拭き取り回数で汚れや雑菌を十分に除去することができる。
【0021】
（第４級アンモニウム塩類）
本発明のウェットワイパーに含浸させる薬液に配合できる第４級アンモニウム塩類としては、一般的に、除菌性能を有する第４級アンモニウム塩類であれば、特に限定されるものではなく、塩化ベンゼトニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム等を挙げることができるが、本発明においては、第４級アンモニウム塩類として、塩化ベンザルコニウムを用いることが好ましい。この塩化ベンザルコニウムは、主に細菌類に対する殺菌剤としての効果を有する薬剤である。薬液における塩化ベンザルコニウムの含有量は、０．００１質量％以上０．０５質量％以下であることが好ましく、０．０１質量％以上０．０５質量％以下であることがより好ましい。塩化ベンザルコニウムの含有量を上記の範囲内のものとすることにより、製造コストを適切な範囲に抑えつつ、肌への刺激を抑え、べたつき感やぬめり感等の使用感触を起こすことなく、殺菌効果及び防カビ効果を良好に維持することができる。
本発明のウェットワイパーに含浸させる薬液に配合できる第４級アンモニウム塩類としては、一般的に、除菌性能を有する第４級アンモニウム塩類であれば、特に限定されるものではなく、塩化ベンゼトニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム等を挙げることができるが、本発明においては、第４級アンモニウム塩類として、塩化ベンザルコニウムを用いることが好ましい。この塩化ベンザルコニウムは、主に細菌類に対する殺菌剤としての効果を有する薬剤である。薬液における塩化ベンザルコニウムの含有量は、０．００１質量％以上０．０５質量％以下であることが好ましく、０．０１質量％以上０．０５質量％以下であることがより好ましい。塩化ベンザルコニウムの含有量を上記の範囲内のものとすることにより、製造コストを適切な範囲に抑えつつ、肌への刺激を抑え、べたつき感やぬめり感等の使用感触を起こすことなく、殺菌効果及び防カビ効果を良好に維持することができる。
【0022】
（ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル）
ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルは、主に真菌類に対する防腐剤としての効果を奏する薬剤である。薬液におけるブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルの含有量は、０．００１質量％以上０．０２質量％以下であることが好ましく、０．００５質量％以上０．０２質量％以下であることがより好ましい。ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルの含有量が上記の範囲内のものであることにより、製造コストを適切な範囲に抑えるとともに、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルに特有の臭気の発現も抑制し、かつ殺菌効果及び防カビ効果を良好に維持することができる。
ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルは、主に真菌類に対する防腐剤としての効果を奏する薬剤である。薬液におけるブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルの含有量は、０．００１質量％以上０．０２質量％以下であることが好ましく、０．００５質量％以上０．０２質量％以下であることがより好ましい。ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルの含有量が上記の範囲内のものであることにより、製造コストを適切な範囲に抑えるとともに、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルに特有の臭気の発現も抑制し、かつ殺菌効果及び防カビ効果を良好に維持することができる。
【0023】
（ポリアミノプロピルビグアナイド）
ポリアミノプロピルビグアナイドは、各種の細菌類に対する防腐剤としての効果を奏する薬剤である。薬液におけるポリアミノプロピルビグアナイドの含有量は、０．０１質量％以上０．１質量％以下であることが好ましく、０．０５質量％以上０．１質量％以下であることがより好ましい。ポリアミノプロピルビグアナイドの含有量が上記の範囲内のものであることにより、製造コストを適切な範囲に抑えるとともに、殺菌効果を良好に維持することができる。
ポリアミノプロピルビグアナイドは、各種の細菌類に対する防腐剤としての効果を奏する薬剤である。薬液におけるポリアミノプロピルビグアナイドの含有量は、０．０１質量％以上０．１質量％以下であることが好ましく、０．０５質量％以上０．１質量％以下であることがより好ましい。ポリアミノプロピルビグアナイドの含有量が上記の範囲内のものであることにより、製造コストを適切な範囲に抑えるとともに、殺菌効果を良好に維持することができる。
【0024】
（エタノール）
本発明のウェットワイパーに含浸させる薬液は、エタノールを実質的に含んでいない水溶液であり、薬液中のエタノール濃度が０．１０質量％未満であることが好ましく、５００ｐｐｍ未満であることがより好ましく、さらに好ましくは０％であることである。ウェットワイパーに含浸させる薬液が、実質的にエタノールを含有していないことにより、薬液中のエタノールがタンパク質汚れを凝固させるおそれがないので、血液等のタンパク質汚れを好適に清拭することができる。
本発明のウェットワイパーに含浸させる薬液は、エタノールを実質的に含んでいない水溶液であり、薬液中のエタノール濃度が０．１０質量％未満であることが好ましく、５００ｐｐｍ未満であることがより好ましく、さらに好ましくは０％であることである。ウェットワイパーに含浸させる薬液が、実質的にエタノールを含有していないことにより、薬液中のエタノールがタンパク質汚れを凝固させるおそれがないので、血液等のタンパク質汚れを好適に清拭することができる。
【0025】
（ノニオン系界面活性剤）
本発明のウェットワイパーに含浸させる薬液は、更にノニオン系界面活性剤を含有していることが好ましい。ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンジ脂肪酸エステル、ソルビタントリ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等を挙げることができる。これらのノニオン系界面活性剤は、単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。本発明のウェットワイパーに含浸させる薬液は、これらのノニオン系界面活性剤の中でも、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、及びグリセリン脂肪酸エステルを含有していることが好ましい。
本発明のウェットワイパーに含浸させる薬液は、更にノニオン系界面活性剤を含有していることが好ましい。ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタンジ脂肪酸エステル、ソルビタントリ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等を挙げることができる。これらのノニオン系界面活性剤は、単独で用いてもよく、２種以上を併用してもよい。本発明のウェットワイパーに含浸させる薬液は、これらのノニオン系界面活性剤の中でも、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、及びグリセリン脂肪酸エステルを含有していることが好ましい。
【0026】
本発明のウェットワイパーに含浸させる薬液がノニオン系界面活性剤を含有することにより、清拭時に泡立ちにくく、ウェットワイパーの使用感を損なわない一方で、一般的な油脂汚れが拭き取りやすくなる。薬液中のノニオン系界面活性剤の含有量は、０．１質量％以上１．０質量％以下であることが好ましく、０．２質量％以上０．８質量％以下であることがより好ましい。
【0027】
（陰イオン系界面活性剤）
なお、本発明のウェットワイパーに含浸させる薬液に陰イオン界面活性剤を添加した場合、拭き取り時に泡が発生しやすく、使用感が低下するため、薬液が陰イオン界面活性剤を含有しないことが好ましい。
なお、本発明のウェットワイパーに含浸させる薬液に陰イオン界面活性剤を添加した場合、拭き取り時に泡が発生しやすく、使用感が低下するため、薬液が陰イオン界面活性剤を含有しないことが好ましい。
【0028】
（他の抗菌剤）
本発明のウェットワイパーに含浸させる薬液は、以上に説明した各成分の他にも、各種の抗菌剤を含有することが好ましい。追加の抗菌剤を薬液に含有させることにより、ウェットワイパーの長期保存安定性が向上することとなる。そのような抗菌剤としては、特に限定されるものではないが、安息香酸、安息香酸塩類、クロルクレゾール、クロロブタノール、サリチル酸、サリチル酸塩類、ソルヒビン酸、ソルヒビン酸塩類、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸塩類、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル、パラオキシ安息香酸エステル、パラオキシ安息香酸ナトリウム塩、フェノキシエタノール、フェノール、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、レゾルシン、安息香酸パントテニルエチルエーテル、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、オルトフェニルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン、クロルキシレノール、クロルヘキシジン、臭化アルキルイソキノリニウム、チモール、トリクロロカルバニリド、ハロカルバン、ヒノキチオール、ピリチオン亜鉛、及び銀イオン抗菌剤からなる群から選ばれる少なくとも１種の抗菌剤を挙げることができる。これらの中でも、特に、銀イオン抗菌剤、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸塩類、及びソルヒビン酸塩類を使用することが好ましい。
本発明のウェットワイパーに含浸させる薬液は、以上に説明した各成分の他にも、各種の抗菌剤を含有することが好ましい。追加の抗菌剤を薬液に含有させることにより、ウェットワイパーの長期保存安定性が向上することとなる。そのような抗菌剤としては、特に限定されるものではないが、安息香酸、安息香酸塩類、クロルクレゾール、クロロブタノール、サリチル酸、サリチル酸塩類、ソルヒビン酸、ソルヒビン酸塩類、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸塩類、トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル、パラオキシ安息香酸エステル、パラオキシ安息香酸ナトリウム塩、フェノキシエタノール、フェノール、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、レゾルシン、安息香酸パントテニルエチルエーテル、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、オルトフェニルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン、クロルキシレノール、クロルヘキシジン、臭化アルキルイソキノリニウム、チモール、トリクロロカルバニリド、ハロカルバン、ヒノキチオール、ピリチオン亜鉛、及び銀イオン抗菌剤からなる群から選ばれる少なくとも１種の抗菌剤を挙げることができる。これらの中でも、特に、銀イオン抗菌剤、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸塩類、及びソルヒビン酸塩類を使用することが好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0030】
＜実施例１から５、比較例１から７＞
表１に示す処方に従って、水１００質量部に対して、塩化ベンザルコニウムを０．０５質量部、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルを０．０２質量部、ポリアミノプロピルビグアナイドを０．１質量部、ノニオン系界面活性剤を０．５質量部、陰イオン界面活性剤を０．５質量部、銀イオン抗菌剤として水溶性銀化合物を０．０２質量部、エタノール８０質量部を適宜添加した。得られた薬液を、表１に示す含浸率で不織布に含浸させ、油汚れの落ちやすさ、タンパク質汚れの落ちやすさ、真菌類への効果、グラム陰性菌への効果、ウィルスへの効果、泡立ちしやすさ、拭き取りしやすさ、液残りについて、以下に示す基準に従って評価を行った。
表１に示す処方に従って、水１００質量部に対して、塩化ベンザルコニウムを０．０５質量部、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルを０．０２質量部、ポリアミノプロピルビグアナイドを０．１質量部、ノニオン系界面活性剤を０．５質量部、陰イオン界面活性剤を０．５質量部、銀イオン抗菌剤として水溶性銀化合物を０．０２質量部、エタノール８０質量部を適宜添加した。得られた薬液を、表１に示す含浸率で不織布に含浸させ、油汚れの落ちやすさ、タンパク質汚れの落ちやすさ、真菌類への効果、グラム陰性菌への効果、ウィルスへの効果、泡立ちしやすさ、拭き取りしやすさ、液残りについて、以下に示す基準に従って評価を行った。
【0031】
【表1】
【0032】
（油汚れの落ちやすさ）
ステンレス板にヒマシ油３００μＬを滴下して、直径３０ｍｍの円形に塗り広げ、模擬油汚れとした。底面６０ｍｍ×６０ｍｍのメラミンスポンジにラップを巻き、その外層にウェットワイパーを１重に巻いた状態で、おもりを用いて２０．８ｇｆ／ｃｍ２の荷重を加え、一回拭き取った。拭き取り後の油汚れを以下の基準で評価した。
〇：汚れ落ちがよい
△：汚れ落ちがやや悪い
×：汚れ落ちが悪い
ステンレス板にヒマシ油３００μＬを滴下して、直径３０ｍｍの円形に塗り広げ、模擬油汚れとした。底面６０ｍｍ×６０ｍｍのメラミンスポンジにラップを巻き、その外層にウェットワイパーを１重に巻いた状態で、おもりを用いて２０．８ｇｆ／ｃｍ２の荷重を加え、一回拭き取った。拭き取り後の油汚れを以下の基準で評価した。
〇：汚れ落ちがよい
△：汚れ落ちがやや悪い
×：汚れ落ちが悪い
【0033】
（タンパク質汚れの落ちやすさ）
ステンレス板に馬血３００μＬを滴下して、直径３０ｍｍの円形に塗り広げ、５０℃で５分間乾燥させた後、ステンレス板を十分放熱させ、模擬タンパク質汚れとした。底面６０ｍｍ×６０ｍｍのメラミンスポンジにラップを巻き、その外層にウェットワイパーを１重に巻いた状態で、おもりを用いて２０．８ｇｆ／ｃｍ２の荷重を加え、一方向に拭き取った。拭き取りについては、不織布の布目方向による差異をなくすため、１回拭き取るごとに９０°ずつ回転させながら行った。
〇：拭き取り回数１０回以下
△：拭き取り回数１０回から２０回
×：拭き取り回数２０回以上
ステンレス板に馬血３００μＬを滴下して、直径３０ｍｍの円形に塗り広げ、５０℃で５分間乾燥させた後、ステンレス板を十分放熱させ、模擬タンパク質汚れとした。底面６０ｍｍ×６０ｍｍのメラミンスポンジにラップを巻き、その外層にウェットワイパーを１重に巻いた状態で、おもりを用いて２０．８ｇｆ／ｃｍ２の荷重を加え、一方向に拭き取った。拭き取りについては、不織布の布目方向による差異をなくすため、１回拭き取るごとに９０°ずつ回転させながら行った。
〇：拭き取り回数１０回以下
△：拭き取り回数１０回から２０回
×：拭き取り回数２０回以上
【0034】
（真菌類への効果）
試験菌のクロコウジカビＡｓｐｅｒｇｉｌｌｕｓ ｎｉｇｅｒをポテトデキストロース寒天培地で培養した後、精製水に浮遊させて菌数が所定の数になるように調整し、試験菌液とした。ウェットワイパーを絞って絞り液を調整し、その液１０ｍＬに所定の菌体を試験菌液として０．１ｍＬ接種し、室温にて３０秒後から１０分後までの所定時間作用させた後の生菌数を、ＳＣＤＬＰ寒天培地で希釈平板培養法（２５℃、５日間）を用いて測定した。
試験菌のクロコウジカビＡｓｐｅｒｇｉｌｌｕｓ ｎｉｇｅｒをポテトデキストロース寒天培地で培養した後、精製水に浮遊させて菌数が所定の数になるように調整し、試験菌液とした。ウェットワイパーを絞って絞り液を調整し、その液１０ｍＬに所定の菌体を試験菌液として０．１ｍＬ接種し、室温にて３０秒後から１０分後までの所定時間作用させた後の生菌数を、ＳＣＤＬＰ寒天培地で希釈平板培養法（２５℃、５日間）を用いて測定した。
【0035】
（グラム陽性菌およびグラム陰性菌への効果）
試験菌の大腸菌及び緑膿菌を、それぞれ普通寒天培地で培養した後、滅菌生理食塩水に懸濁し菌数が約１０８個／ｍＬになるように調整し、試験菌液とする。ウェットワイパーを絞って絞り液を調整し、その液１９．８ｍＬに大腸菌の菌体を試験菌液として０．２ｍＬ摂取し、２５℃にて３０秒後から１０分後までの所定時間作用させた後、そのうち１ｇをＬＰ希釈液９ｍＬで希釈した。これを段階希釈しＳＣＤＬＰ寒天培地にて混釈平板培養法（３０℃、３日間）を用いて生菌数を測定した。
試験菌の大腸菌及び緑膿菌を、それぞれ普通寒天培地で培養した後、滅菌生理食塩水に懸濁し菌数が約１０８個／ｍＬになるように調整し、試験菌液とする。ウェットワイパーを絞って絞り液を調整し、その液１９．８ｍＬに大腸菌の菌体を試験菌液として０．２ｍＬ摂取し、２５℃にて３０秒後から１０分後までの所定時間作用させた後、そのうち１ｇをＬＰ希釈液９ｍＬで希釈した。これを段階希釈しＳＣＤＬＰ寒天培地にて混釈平板培養法（３０℃、３日間）を用いて生菌数を測定した。
【0036】
（ウィルスへの効果の有無）
ネコカリシウィルス（Ｆ－９）及びＡ型インフルエンザウィルス（Ｈ１Ｎ１）の試験ウィルス懸濁液を調整した。試験サンプル１０ｍＬに試験ウィルス懸濁液０．１ｍＬを加え、２５℃で５分間放置した。放置後の混合液０．５ｍＬを不活性化剤（ＳＸＤＬＰ培地）４．５ｍＬに加え、混合した。プラーク測定法にてウィルス感染価を測定し、感染価減少率９９％以上のときを〇、感染価減少率５０％以上９９％未満のときを△、感染価減少率５０％未満のときを×とした。
ネコカリシウィルス（Ｆ－９）及びＡ型インフルエンザウィルス（Ｈ１Ｎ１）の試験ウィルス懸濁液を調整した。試験サンプル１０ｍＬに試験ウィルス懸濁液０．１ｍＬを加え、２５℃で５分間放置した。放置後の混合液０．５ｍＬを不活性化剤（ＳＸＤＬＰ培地）４．５ｍＬに加え、混合した。プラーク測定法にてウィルス感染価を測定し、感染価減少率９９％以上のときを〇、感染価減少率５０％以上９９％未満のときを△、感染価減少率５０％未満のときを×とした。
【0037】
（泡立ちしやすさ）
看護業務従事者３０名のパネラーに対して、泡立ちのしやすさについて官能評価を実施した。この評価では、目視による観察の結果、泡立ちがない、やや多い、多いの、いずれかの評価を選択する官能試験を行った。泡立ちがないの評価が２４人から３０人のときを〇、泡立ちがないの評価が１６人から２３人のときを△、泡立ちがないの評価が０人から１５人のときを×とした。
看護業務従事者３０名のパネラーに対して、泡立ちのしやすさについて官能評価を実施した。この評価では、目視による観察の結果、泡立ちがない、やや多い、多いの、いずれかの評価を選択する官能試験を行った。泡立ちがないの評価が２４人から３０人のときを〇、泡立ちがないの評価が１６人から２３人のときを△、泡立ちがないの評価が０人から１５人のときを×とした。
【0038】
（拭き取りしやすさ）
看護業務従事者３０名のパネラーに対して、拭き取りしやすさについて官能評価を実施した。この評価では、拭き取りしやすい、やや拭き取りにくい、拭き取りにくいの、いずれかの評価を選択する官能試験を行った。拭き取りしやすいの評価が２４人から３０人のときを〇、拭き取りしやすいの評価が１６人から２３人のときを△、拭き取りしやすいの評価が０人から１５人のときを×とした。
看護業務従事者３０名のパネラーに対して、拭き取りしやすさについて官能評価を実施した。この評価では、拭き取りしやすい、やや拭き取りにくい、拭き取りにくいの、いずれかの評価を選択する官能試験を行った。拭き取りしやすいの評価が２４人から３０人のときを〇、拭き取りしやすいの評価が１６人から２３人のときを△、拭き取りしやすいの評価が０人から１５人のときを×とした。
【0039】
（液残り）
看護業務従事者３０名のパネラーに対して、液残りついて官能評価を実施した。この評価では、液残りが無い又は少ない、液残りがやや多い、液残りが多いの、いずれかの評価を選択する官能試験を行った。液残りが無い又は少ないの評価が２４人から３０人のときを〇、液残りが無い又は少ないの評価が１６人から２３人のときを△、液残りが無い又は少ないの評価が０人から１５人のときを×とした。
看護業務従事者３０名のパネラーに対して、液残りついて官能評価を実施した。この評価では、液残りが無い又は少ない、液残りがやや多い、液残りが多いの、いずれかの評価を選択する官能試験を行った。液残りが無い又は少ないの評価が２４人から３０人のときを〇、液残りが無い又は少ないの評価が１６人から２３人のときを△、液残りが無い又は少ないの評価が０人から１５人のときを×とした。
【0040】
＜評価結果＞
実施例及び比較例から明らかなように、エタノールを実質的に含有せず、第４級アンモニウム塩類、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、ポリアミノプロピルビグアナイドを含有する薬液を含浸させた実施例のウェットワイパーは、タンパク質汚れを効果的に除去することができるとともに、十分な抗菌性能を示すものとなった。
実施例及び比較例から明らかなように、エタノールを実質的に含有せず、第４級アンモニウム塩類、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、ポリアミノプロピルビグアナイドを含有する薬液を含浸させた実施例のウェットワイパーは、タンパク質汚れを効果的に除去することができるとともに、十分な抗菌性能を示すものとなった。