(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】スライドレールのロック装置
(51)【国際特許分類】
A47B 88/49 20170101AFI20220525BHJP
【FI】
A47B88/49
(21)【出願番号】P 2017189119
(22)【出願日】2017-09-28
【審査請求日】2020-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390002255
【氏名又は名称】日本アキュライド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福谷 剛
【審査官】中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】西独国特許出願公開第02540581(DE,A1)
【文献】特開2015-229035(JP,A)
【文献】特開2004-008308(JP,A)
【文献】特開2007-330686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/00-88/994
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラック等の本体に固定される固定側レールと、固定側レールに対し摺動自在に配設された中間レールと、中間レールに対し摺動自在に配設された移動側レールと、移動側レールの前端部の上下折曲縁間の基板に固定された係止部材と、係止部材に対応して、固定側レールの前端部の上下折曲縁間に固定されたロック部材よりなるスライドレールのロック装置であって、ロック装置は、係止部材に設けられる係止突起と、ロック部材に設けられる係合部が係合することによりロック状態が維持されるもので、ロック装置のロック状態を解除する操作部を、固定側レールの前端より前方に突出するように固定側レール側に設けるとともに、操作部を含むロック部材を、
移動側レールの上下折曲縁間の基板の上下方向の
中心部であってスライドレールの伸長方向に伸びる水平線上に、ロック部材の上下方向の
中心部であって伸長方向に伸びる水平線が略重なるように配置し、かつ、操作部の非操作時に中間レールの摺動軌跡上に干渉しない大きさで形成し、係止突起を
、スライドレールが伸長した状態の操作部の非操作時に、ロック部材の該水平線のスライドレールの伸長方向の延長線上に配置することを特徴とするスライドレールのロック装置。
【請求項2】
スライドレールのロック状態において、移動側レールを伸長方向に移動させる付勢手段を設け、該付勢手段の付勢力により、該係止突起と係合部の係合によるロック状態において、常に係止突起を係合部に押圧させることを特徴とする請求項1に記載のスライドレールのロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陳列棚等の棚板類が本体内に収納された状態を維持するスライドレールのロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スライドレールのロック装置として数々のものが提供されている。
その代表的なものとして先行技術文献1(特許文献1)に示すように、ラック等の本体に固定される固定側レールと、固定側レールに対し摺動自在に配設された移動側レールと、移動側レールの前端部内面に設けられたロック片と、固定側レールの基板前端部に係止突起が形成される係止部材よりなるスライドレールにおいて、前記ロック片は、移動側レールの前方に突出する操作部材と、係止突起側に突出し前端が係止突起に係止する位置で、後端が係止突起から外れるように傾斜する係止突片と、係止突片の係止状態を維持する弾性部材を有し、移動側レールと平行に回動自在で、弾性部材によって常に係止突片が係止突起に係止する方向に維持されているものである。
【0003】
すなわち、ロック装置は、ロック解除の操作部が移動側レールの前端より突出して設けられており、移動側レールの摺動に合わせて移動するため、スライドレールの引き出された状態においても、操作部が移動側レールの前端より突出した状態となっていた。そのため、突出している部分に人や物が接触して、ロック装置の外れや、破損につながることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、スライドレールが引き出された状態で、ロック解除の操作部が移動側レールの前端より突出せず、かつ簡単な構造でコンパクトに構成でき、部品点数も少なく安価に製作でき、作業性、メンテナンス性にも優れるスライドレールのロック装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、上記課題を解決する為、本発明が第1の手段として構成したところは、ラック等の本体に固定される固定側レールと、固定側レールに対し摺動自在に配設された中間レールと、中間レールに対し摺動自在に配設された移動側レールと、移動側レールの前端部の上下折曲縁間の基板に固定された係止部材と、係止部材に対応して、固定側レールの前端部の上下折曲縁間に固定されたロック部材よりなるスライドレールのロック装置であって、ロック装置は、係止部材に設けられる係止突起と、ロック部材に設けられる係合部が係合することによりロック状態が維持されるもので、ロック装置のロック状態を解除する操作部を、固定側レールの前端より前方に突出するように固定側レール側に設けるとともに、操作部を含むロック部材を、移動側レールの上下折曲縁間の基板の上下方向の中心部であってスライドレールの伸長方向に伸びる水平線上に、ロック部材の上下方向の中心部であって伸長方向に伸びる水平線が略重なるように配置し、かつ、操作部の非操作時に中間レールの摺動軌跡上に干渉しない大きさで形成し、係止突起を、スライドレールが伸長した状態の操作部の非操作時に、ロック部材の該水平線のスライドレールの伸長方向の延長線上に配置するものである。
【0007】
上記課題を解決する為、本発明が第2の手段として構成したところは、前記第1の手段に加え、スライドレールのロック状態において、移動側レールを伸長方向に移動させる付勢手段を設け、該付勢手段の付勢力により、該係止突起と係合部の係合によるロック状態において、常に係止突起を係合部に押圧させるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の手段として構成したところによると、操作部を含むロック部材が、中間レールの摺動軌跡上に干渉しない大きさで形成されているので、操作部を固定レール側に設けることができる。そのため、スライドレールを伸長させた状態で、操作部が移動側レールの前端より前に突出することがない。したがって、ロック装置の外れや、破損につながることを防止できる。
【0009】
本発明の第2の手段として構成したところによると、中間レールあるいは移動レール、すなわち、摺動する側のレールを伸長方向に付勢しているので、操作部を操作してロックを解除すると、付勢力によって摺動する側のレールが伸長し、ロック解除状態が維持される。そのため、一旦ロック解除すれば、操作部を操作せずとも移動側レールを引き出すことができるので、スライドレールの操作性が良い。
また、ロック状態においても、摺動する側のレールを伸長方向に付勢しているので、係止部材の係止突起とロック部材の係止部の係合によるロック状態において、常に係止突起を係止部に押圧させることができるため、ロック状態を確実に維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のスライドレールの伸長途中状態の固定側からの斜視図。
【
図2】本発明のスライドレールの伸長途中状態の移動側からの斜視図。
【
図4】固定側レールとロック部材の要部分解斜視図。
【
図7】係止突起の案内傾斜部と操作部の案内部が接触し始める状態を示す説明図。
【
図8】係止突起の案内傾斜部の上面と操作部の案内部の下面が接触している状態を示す説明図。
【
図9】係止突起に操作部の下面に接触しながら、移動側レールが摺動している状態を示す説明図。
【
図10】係止突起が、係合部に移動した状態を示す説明図。
【
図12】操作部を操作し、ロック状態を解除する状態を示す説明図。
【
図13】スライドレールのロック解除された状態の説明図。
【
図14】スライドレールの他の実施例を示すスライドレールの基本断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、ラック等の本体に固定される固定側レールと、固定側レールに対し摺動自在に配設された中間レールと、中間レールに対し摺動自在に配設された移動側レールと、移動側レールの前端部の上下折曲縁間の基板に固定された係止部材と、係止部材に対応して、固定側レールの前端部の上下折曲縁間に固定されたロック部材よりなるスライドレールのロック装置であって、ロック装置を、係止部材に設けられる係止突起と、ロック部材に設けられる係合部が係合することによりロック状態が維持するものとし、スライドレールのロック状態において、中間レールを伸長方向に付勢する付勢手段を設け、ロック装置のロック状態を解除する操作部を、固定側レールの前端より前方に突出するように固定側レール側に設けるとともに、ロック装置のロック状態を解除する操作部を、固定側レールの前端より前方に突出するように固定側レール側に設けるとともに、操作部を含むロック部材を、移動側レールの上下折曲縁間の基板の上下方向の中心部であってスライドレールの伸長方向に伸びる水平線上に、ロック部材の上下方向の中心部であって伸長方向に伸びる水平線が略重なるように配置し、かつ、操作部の非操作時に中間レールの摺動軌跡上に干渉しない大きさで形成し、係止突起を、スライドレールが伸長した状態の操作部の非操作時に、ロック部材の該水平線のスライドレールの伸長方向の延長線上に配置したものである。
【実施例】
【0012】
スライドレールの基本的構成を
図1、
図2、
図3に基づいて説明する。
尚、実施例の説明において、便宜的に、スライドレールの伸長方向を前、スライドレールの収縮方向を後とする。したがって、スライドレールの摺動方向は前後方向と云う。そして前後方向を水平なX方向とした場合の、X方向に対して、垂直方向のY方向を上下方向と云う。
スライドレール100は、陳列棚等の本体の内面に連結ネジ等で連結される固定側レール1と、固定側レール1に対し、固定側ボール保持板3に回転自在に保持された複数個のボール30・・・を介して摺動自在に設けられた中間レール4と、中間レール4に対し、移動側ボール保持板5に回転自在に保持された複数個のボール50・・・を介して摺動自在に設けられた移動側レール2より構成され、移動側レール2が固定側レール1に収納された状態を保持するロック部材6が、固定側レール1の前端部内面に設けられ、ロック部材6に係脱自在の係止部材7が移動側レール2の前端部内面に設けられている。(
図1参照)
【0013】
固定側レール1は、金属製の細長条板の短手両端部を内向き円弧状に折り曲げて形成された内面長手方向(摺動方向)にボール案内溝を有する上下折曲縁11、11と、基板12より断面略C字形を成し、摺動方向前部に、固定側ボール保持板3、中間レール4、移動側ボール保持板5等を介して、移動側レール2を最大引き出した状態で停止させ、スライドレール100を最大伸長となすレール伸長時ストッパー13が、基板12の一部を移動側レール2方向に折り曲げて突出させて形成されており、基板12の後端部は移動側レール2方向に折り曲げられて後端折り曲げ縁14が形成されている。
そして、摺動方向後端部に、中間レール4を伸長側に付勢する付勢装置10が取り付けられている。
【0014】
中間レール4は、前記固定側レール1側に挿入されるインナー中間レール4aと移動側レール2が挿入可能なアウター中間レール4bで形成されている。
インナー中間レール4aは、固定側レール1より短長な金属製の細長条板の短手両端部を、外向き円弧状に折り曲げて、外面長手方向(摺動方向)にボール案内溝を有する上下折曲縁42a、42aと、基板41aからなり、移動側レール2と同形状な断面略コ字形に形成されている。
アウター中間レール4bは、移動側レール2より短長な金属製の細長条板の短手両端部を内向き円弧状に折り曲げて、内面長手方向(摺動方向)にボール案内溝を有する上下折曲縁42b、42bと、基板41bからなり、固定側レール1と同形状な断面略C字形に形成されている。
そして、インナー中間レール4aとアウター中間レール4bは、コ字状断面の開口側とC字形断面の開口側が互いに外向きとなるように基板41a、40bが背中合わせに固着され、断面略I字形となるように中間レール4が構成されている。
【0015】
また、インナー中間レール4aの基板41aの後端部に固定側レール1側に突出し、移動側レール2の引き出し時、固定側ボール保持板3の後端部に当接すると共に、移動側レール2の収納時、固定側レール1の付勢装置10に当接するインナー中間レール後端ストッパー44aが形成される。
そして、アウター中間レール4bの基板41bの後端部に移動側レール2側に突出し、移動側レール2の収納時、移動側レール2の後端部が当接するアウター中間レール後端ストッパー44bが形成され、基板41bの前端部付近に、移動側ボール保持板5の前端が当接するアウター中間レール前端ストッパー45bが形成されている。
【0016】
移動側レール2は、固定側レール1に対して付勢装置10相当分短い長さで、金属製の細長条板の短手両端部を外向き円弧状に折り曲げて形成された外面長手方向(摺動方向)にボール案内溝を有する上下折曲縁21、21と、基板22より固定側レール1に対向する断面略コ字形に形成されている。
そして、基板22の後端部には、スライドレール100の最大伸長状態で移動側ボール保持板5の後端に当接し、移動側レール2の収納時、前記アウター中間レール後端ストッパー44bの内面に当接する移動側レール後端ストッパー220が形成されている。
【0017】
固定側ボール保持板3は帯条金属板にてインナー中間レール4aより所定寸法短くした、固定側レール1とインナー中間レール4a間に挿入可能な大きさの基板31と、固定側レール1とインナー中間レール4aの各上下折曲縁11、11、42a、42a間に位置する上下突出縁32、32より断面略コ字形に形成され、上下突出縁32、32の長手方向(摺動方向)数個所でボール30・・・を回転自在に保持している。
【0018】
移動側ボール保持板5は帯条金属板にてアウター中間レール4bより所定寸法短くした、移動側レール2とアウター中間レール4b間に挿入可能な大きさの基板51と、移動側レール2と中間レール4の各上下折曲縁21、21、42b、42b間に位置する上下突出縁52、52より断面略コ字形に形成され、突出縁52、52の長手方向(摺動方向)数個所でボール50・・・を回転自在に保持している。
【0019】
スライドレール100は上記の如く構成され、移動側レール2が固定側レール1に最も収納された状態(最短縮小状態)では、インナー中間レール後端ストッパー44aが、固定側レール1の付勢装置10の前面に当接し、移動側レール2の移動側レール後端ストッパー220がアウター中間レール後端ストッパー44bの前面に当接し、移動側レール21の係止部材7が固定側レール1のロック部材6に係止している。
【0020】
この状態から、ロック部材6の係止部材7に対する係止状態を解除して、移動側レール2を前方に引き出していくと、移動側レール2の移動距離の2分の1の距離だけ移動側ボール保持板5は移動し、中間レール4の移動距離の2分の1の距離だけ固定側ボール保持板3は移動するので、移動側レール後端ストッパー220の前面が移動側ボール保持板5の後端に当接し、移動側ボール保持板5の前端がアウター中間レール前端ストッパー45bの後面に当接し、インナー中間レール後端ストッパー44aの前面が固定側ボール保持板3の後端に当接し、固定側ボール保持板3の前端が、固定側レール1のレール伸長時ストッパー13の後面に当接して、移動側レール2、中間レール4は停止し、スライドレール100は最大伸長状態となる。
【0021】
次に、第1実施例のロック装置を
図4、
図5、
図6に基づいて説明する。
第1実施例のロック部材6は、固定側レール1の基板12に固定される取付基部61と、取付基部61より後方に突出形成されレール伸長時ストッパー13に係合する回転止め部62と、取付基部61より前方に突出形成される形成する弾性誘導部63と、弾性誘導部63から前方に突出形成する操作部64と、操作部64の前後方向中間部に凹状に形成された係合部65が合成樹脂材で一体に成型されたものである。
【0022】
取付基部61には、表面側から裏面側(移動側レール2の基板22側の面)にかけて貫通する固定孔612が形成され、固定側レール1の基板12にも固定孔612に対応して貫通孔が設けられている。該貫通孔と固定孔612を利用して合成樹脂製のリベット613によってロック部材6が固定側レール1に取り付けられる。
尚、リベット止めに限らず、取付基部61の移動側レール2の基板22側にピン状の突起体を一体的に設けて、固定側レール1の基板12の貫通孔に差込み固定する方法でもよい。
そして、回転止め部62は、固定側レール1の基板12に、上下方向に間隔を空けて設けられた上下一対の突出片で形成されるレール伸長時ストッパー13の該間隔部にはめ込まれるものであって、固定側レール1に取り付けられたロック部材6が上下方向に回動することを防止している。回転止め部62によって、前記の取付基部61の固定をリベット613のように一点止めとすることができるので組み立てが容易である。
【0023】
弾性誘導部63は、取付基部61、操作部64より上下方向に幅狭く形成されており、操作部64は、角棒状に前方に突出したもので、先端部の上下面にそれぞれ傾斜面を有し先端が尖った状態の案内部64aが形成されている。
そして、操作部64の弾性誘導部63寄りに設けられた係合部65は、インナー中間レール4aの基板41b側から固定側レール1の基板12に向かって凹状に形成されており、凹状部を形成する前側の垂直面が後述する係止部材7と係合する係合面65aとされる。
該凹状に形成される係合部65は、後述する係止部材7の係止突起75が上下方向に自由に行き来できる大きさに設定されている。
【0024】
このように形成されているロック部材6は、操作部64が、固定側レール1の前端より前方に突出した状態で固定側レール1に取り付けられる。
また、ロック部材6は、インナー中間レール4aの上下折曲縁42a、42a間に納まる高さに設定されるとともに、固定側レール1の基板12とインナー中間レール4aの基板41b間に納まる厚さに形成されているので、インナー中間レール4aの摺動時にインナー中間レール4aに接触することがなく、インナー中間レール4aの摺動に支障がでない。
したがって、操作部64の非操作時には、ロック部材6は、中間レール4のインナー中間レール4aの摺動軌跡上に干渉しない。
【0025】
係止部材7は、移動側レール2の基板22と、上下折曲縁21、21の内面に形成される膨出凸部2a、2aとの間で形成される空間23に嵌入される固定基部72と、固定基部72の後方に突出する固定部73と、固定基部72の前面に形成されるフランジ部74と、固定基部72の表面より固定側レール1側に突出する係止突起75が合成樹脂材にて一体に形成されている。
【0026】
固定基部72は、前記空間23に嵌入される嵌入部分と、該嵌入部分から固定側レール1方向に固定側レール1に設けられている操作部64の移動側レール2側面近傍までの部分が一体的とされる方形に形成され、嵌入部分の上下面には移動側レール2の上下折曲縁21、21の内面の膨出凸部2a、2aに沿う形状とされる上下勘合溝721、721が形成されている。
【0027】
固定部73は、前記空間23に納まる大きさで表面側から裏面側(移動側レール2の基板22側の面)にかけて貫通する固定孔731が形成されている。
【0028】
フランジ部74は、移動側レール2の前端面部を塞ぐように板状に形成され、移動側レール2の上下高さと略同じ高さに設定されている。従って、フランジ部74は、固定基部72に対して、移動側レール2の上下折曲縁21、21の板厚分を付加した高さとなる。
【0029】
係止突起75は、前後方向に細長な突起であって、固定基部72の固定側レール1側の表面より、前述の操作部64に設けられた係合部65の凹状部の底面に近傍する程度の突起高さに設定されている。そして、係止突起75の後端側の上面と下面に、前記操作部64に形成された案内部64aに対応して、前方に向かって上面は上方に下面は下方にそれぞれ傾斜する案内傾斜部75a、75aと、操作部64に形成された係合部65の係合面65aに対応して前端部に形成された当接係止部752が形成されている。
【0030】
このように構成された係止部材7は、移動側レール2に取り付けられるが、その取り付け方法について説明する。
【0031】
移動側レール2の前端面側から、空間23に係止部材7の固定部73側を差し込むように入れ、固定基部72の上下勘合溝721、721が移動側レール2の膨出凸部2a、2aに沿うように押し込みながら、フランジ部74の後面が、移動側レール2の前端面に当接するまで差し込む。
そして、固定孔731を利用して移動側レール2の基板22に合成樹脂製リベット732によって移動側レール2に取り付けられる。
尚、リベット止めに限らず、固定部73の移動側レール2の基板22側にピン状の突起体を一体的に設けて、移動側レール2の前端面側から係止部材7を差し込む際、合成樹脂材で形成される係止部材7の弾性力を利用し、該突起体が弾性変形しながら基板22上を移動し、所定の位置で、弾性変形後の復元力で該突起体を基板22の固定孔と勘合させて、移動側レール2に対して、係止部材7を固定させる方法でもよい。
あるいは、基板22に固定部73側へ突起する突起部を設け、該突起部に対応して固定部73に凹部を設け、移動側レール2の前端面側から係止部材7を差し込む際、合成樹脂材で形成される係止部材7の弾性力を利用し、該突起部を乗り越えながら差し込み、弾性変形後の復元力で突起部と凹部を勘合させて、移動側レール2に対して、係止部材7を固定させる方法でもよい。
【0032】
付勢装置10は、ケース体101と、ケース体101の内部に収容される付勢バネ102と、ケース体101内部を前後方向に摺動する摺動体103で構成されるものである。
【0033】
ケース体101は、固定側レール1の上下折曲縁11、11間に納まる高さの箱体で前面側が開放されており内部空間101aが開放前面から露呈し、内部空間101aを摺動体103が前後方向に移動できるよう施され、ケース体101の後部側に、基板12側から移動側レール2の方向に向かって縦細長状の固定貫通孔101bが設けられており、上下面にはそれぞれ、固定側レール1の上下折曲縁11、11内面に沿う形状とされる帯状膨出部101c、101cが形成され、これらが一体に合成樹脂製で成型されている。
【0034】
付勢バネ102は圧縮コイルばねで、ケース体101の内部空間101aに付勢力方向が前方向になるように水平に配設されている。
摺動体103は、合成樹脂製でケース体101の内部空間101aに納まる形態の立法体を成している。また摺動体103の後面から前面側に向かって付勢バネ102の前側の一部が収容されるキリ孔103aが設けられ、付勢バネ102が内部空間101a内で無用に動かないように施されている。
【0035】
そして、付勢装置10は、次のように、固定側レール1に組み付けられる。
まず、摺動体103のキリ孔103aに付勢バネ102の前部を挿入し、付勢バネ102が装着された摺動体103をケース体101の内部空間101aにケース体101の前面から挿入する。この状態で、摺動体103の後部側約三分の一は、内部空間101aに入っており、この時、付勢バネ103は完全に伸びた状態となるように付勢バネ103の長さ設定されている。したがって、摺動体103は、後部側三分の一が内部空間101aに入った状態からでは付勢バネ103の付勢力は働かず、摺動体103は前方には飛び出さない。このようにして付勢装置10は組み立てられる。
また、この状態から摺動体103の前面を後方に向かって押すと、付勢バネ103を圧縮しながら、摺動体103はケース体101の内部空間101a内を後方に摺動し、そして、付勢バネ103が完全に圧縮した状態の位置で移動が停止する。この状態で摺動体103の約五分の四が内部空間101aに入っており、摺動体103の後方への押圧を止めると、付勢バネ103の付勢力により、摺動体103は前方に移動し、摺動体103の後部側約三分の一が内部空間101aに入った元の状態にもどる。
【0036】
組み立てられた付勢装置10を、固定側レール1の断面略C字形を成した開口側から、ケース体101の固定貫通孔101bに、固定側レール1の後端折り曲げ縁14が差し込まれるように、押圧しながら装着する。この時、ケース体101の帯状膨出部101c、101cは、弾性変形しながら固定側レール1の上下折曲縁11、11内面に挿入され、挿入後に帯状膨出部101c、101cは、弾性により元の形状に戻り固定側レール1の上下折曲縁11、11内面に沿う状態となる。
したがって、付勢装置10は、固定貫通孔101bに後端折り曲げ縁14が差し込まれているため、前後方向に不動で、帯状膨出部101c、101cが上下折曲縁11、11内面に沿っているため、固定側レール1から簡単に外れることがない。このようにして付勢装置10は、固定側レール1に組み付けられる。
【0037】
第1実施例のロック部材6と係止部材7は上記の如く形成され、移動側レール2が最大伸長状態(引出し、棚板等が最も引き出された状態)から移動側レール2を収納していくと、固定側レール1に対して中間レール4が先に収納されたり、或いは、中間レール4に対し移動側レール2が先に収納されたり、さらには、移動側レール2の中間レール4に対する収納と、固定側レール1に対する中間レール4の収納が同時に行われたりする。
【0038】
しかしながら、ロック部材6が、固定側レール1の前方に設けられ、係止部材7が移動側レール2の前方に設けられているので、移動側レール2と中間レール4の固定側レール1に対する収納順位にかかわらず、最終的には、係止部材7の係止突起75に形成された案内傾斜部75aの収納方向先端側の上面と、操作部64に形成された案内部64aが接触する(
図7に示す状態。)。
【0039】
さらに、移動側レール2を収納させると、案内傾斜部75aの上面と案内部64aの下面が接触し、案内傾斜部75aの上面と案内部64aの下面の傾斜によって、操作部64は、上方に押し上げられる(
図8に示す状態。)。
この時、ロック部材6の弾性誘導部63が取付基部61、操作部64より上下方向に幅狭く形成されているから、取付基部61、操作部64より剛性が低いので、操作部64は、上方に押し上げられることにより弾性誘導部63が弾性変形し始める。
そして、弾性誘導部63の弾性変形の復元力により、移動側レール2を収納移動に合わせて、係止突起75の上面に操作部64の下面が押し付けられながら移動していく(
図9に示す状態。)。
【0040】
該ロック部材6と係止部材7の動きの過程と前後して、移動側レール2の移動側レール後端ストッパー220が、アウター中間レール後端ストッパー44bに当接して、中間レール4は、移動側レール2に押されるように移動側レール2と合わせて収納されていく。
そして、中間レール4が、移動側レール2と合わせて収納されていくと、インナー中間レール後端ストッパー44a後面が、付勢装置10の摺動体103の前面に当接する。
【0041】
さらに、移動側レール2を収納させると、摺動体103は、中間レール4に押圧されながら、付勢バネ102の付勢力に抗して後側に摺動する。そして、係止突起75が、係止部材7の係合部65を収納側に通過した(
図10に示す状態。)ところで、弾性誘導部63の弾性変形の復元力により、操作部64は元の状態に復元し、スライドレール100は、最短縮小状態となる(
図11に示す状態。)。
【0042】
このように、インナー中間レール後端ストッパー44aの後端が、摺動体103の前面に当接し、移動側レール後端ストッパー220の後端がアウター中間レール後端ストッパー44bの前面に当接し、係止部材7の係止突起75の前面が、ロック部材6の係合面65aに当接し、収納係止状態、すなわちロック状態となる。
このロック状態において、中間レール4は付勢装置10により前方に移動するように付勢されているため、該付勢力によって、係止部材7の係止突起75の前面の当接係止部752を、ロック部材6の係合面65aに確実に当接させることができる。
そのため、前述の係止突起75が、係止部材7の係合部65に対して収納側に通過した状態時より、付勢力により移動側レールは若干前方に移動して、
図11に示す係止突起75の前面が係合面65aに当接した状態となる。
【0043】
前述のとおり、ロック部材6の案内部64aと係止部材7の係止突起75は上下対称に形成されているため、移動側レール2の収納時に、案内部64aの下面と係止突起75の上面が接触する場合の他、案内部64aの上面と係止突起75の下面が接触する場合がある。これらは、案内部64aと係止突起75が接触する瞬間の位置関係によって決まるものであるが、いずれの場合においても収納係止状態とすることが可能なように上下対称形状としている。案内部64aの上面と係止突起75の下面が接触する場合、上記説明の操作部64の移動方向は、上記説明の上側に対して下側となる。
このように、本件実施例のロック装置は、上下対称形に形成されているため、スライドレール100を左右兼用で使用することが可能となる。左右兼用であるため、メンテナンス用の部品の管理も左右で分ける必要がなく部品管理効率がよくなる利点もある。
【0044】
次に、ロック状態から、例えば棚板と連結された移動側レール2を引き出すときは、棚板の上面と操作部64の下面を指先で摘むようにして、操作部64を上方に移動させると、ロック部材6の弾性誘導部63が弾性変形しながら、係合部65が係止部材7の係止突起75の上方に位置する(
図12に示す状態。)。尚、前述のとおり、係止部材7とロック部材6は上下方向対称に形成されているので、対向するスライドレール100、100に兼用して使用された状態であっても、左右いずれの操作部64を同じ動作の上方に移動させることができる。
【0045】
そして、係合部65が係止部材7の係止突起75の上方に位置すると、すなわち、係合部65と係止突起75の係合状態が解除された状態で、付勢装置10の付勢力によって、中間レール4が前方に押し出される。中間レール4が前方に押し出されると、移動側レール後端ストッパー220の後端がアウター中間レール後端ストッパー44bの前面に当接しているから、移動側レール2も前方に移動し、係止突起75の上面に操作部64の下面が押し付けられた状態で停止し、この状態でロック解除されたこととなる(
図13に示す状態。)。
したがって、付勢装置10を有している場合は、ロック状態から、左右の操作部64のみを上方あるいは下方に移動するだけで、ロック解除される。
【0046】
本ロック装置は、付勢装置10が無くともロック状態とすることが可能であるが、この場合は、ロック解除させる際、左右の操作部64を操作した状態を維持し係合部65と係止突起75の係合状態が解除された状態のまま棚板等の移動部材を引き出すこととなるので、付勢装置10を備えたほうが使い勝手がよい。
【0047】
ロック解除後、そのまま、棚板を引き出すと、係止突起75が操作部64から離れ、弾性誘導部63の弾性変形の復元力により、操作部64は元の状態に復元する。この状態では、中間レール4のインナー中間レール4aは、ロック部材6の弾性誘導部63まで引き出されていないので、スライドレールの引き出す過程において、ロック部材6がインナー中間レール4aに干渉することがない。
そして、さらに棚板を引き出すと、ロック部材6が、インナー中間レール4aの基板41b、上下折曲縁42b、42bで形成される空間内に位置した状態のまま、移動側レール2は最大伸長まで引き出され停止する。
【0048】
スライドレール100は、最短縮小状態において、ロック部材6の操作部64は、係合部65の前方で係止部材7の固定基部72、フランジ部74と前後方向で部分的に重なり合っている。
このように設定することで、最短縮小状態で操作部64を移動側レール2方向に曲げようとしても、該操作部64が係止部材7の部分的に重なり合った箇所に当接し、操作部64が必要以上に曲がらない。そのため、ロック部材6の破損を防ぐことができる。
尚、操作部64の固定側レール1の方向に対する曲がりは、通常固定側レール1は、側板などに固定されるため、操作部64が固定側レール1の方向に曲がると側板などに当たり大きく変形することが少ない。
したがって、係止部材7は、ロック部材6の左右方向の振れ止めの役割も有していることとなる。
【0049】
本スライドレールのロック装置は、本実施例のスライドレール形態だけでなく、
図14に示すアウター中間レールをインナー中間レールと同断面形状とし、移動側レールを固定側レールと同断面形状に形成したスライドレールであってもよい。
また、本スライドレールのロック装置は、本実施例のように、スライドレール(固定側レール)の基板12が垂直となる縦使いだけではなく、スライドレール基板12が水平となる横使いのスライドレールでも使用可能である。
【符号の説明】
【0050】
100 スライドレール
1 固定側レール
10 付勢装置
2 移動側レール
4 中間レール
4a インナー中間レール
4b アウター中間レール
6 ロック部材
63 弾性誘導部
64 操作部
64a 案内部
65 係合部
65a 係合面
7 係止部材
75a 案内傾斜部
75 係止突起