(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】スライドレールのロック装置
(51)【国際特許分類】
A47B 88/49 20170101AFI20220525BHJP
【FI】
A47B88/49
(21)【出願番号】P 2017189120
(22)【出願日】2017-09-28
【審査請求日】2020-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390002255
【氏名又は名称】日本アキュライド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福谷 剛
【審査官】中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3174027(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0078235(US,A1)
【文献】特開2007-330686(JP,A)
【文献】特開2018-175843(JP,A)
【文献】特開2003-310369(JP,A)
【文献】特開2012-239738(JP,A)
【文献】特開2010-220901(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0203873(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/00-88/994
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラック等の本体に固定される固定側レールと、固定側レールに対し摺動自在に配設された中間レールと、中間レールに対し摺動自在に配設された移動側レールと、移動側レールの前端部に設けられたロック解除機構を備えたロック部材と、ロック部材に対応して、固定側レールの前端部に設けられた係合部よりなるスライドレールのロック装置であって、ロック装置は、ロック部材に配設される係止片と、前記係合部が係合することによりロック状態が維持されるもので、ロック装置のロック状態を解除するロック解除機構は、移動側レールの前方部より後方に向かって押圧させる操作部と、押圧させた操作部を復元させる付勢手段を備え
、固定側レールの係合部は、固定側レールの少なくとも上下いずれかの折曲縁に設けられる係合孔で形成されることを特徴とするスライドレールのロック装置。
【請求項2】
スライドレールのロック状態において、移動側レールを伸長方向に移動させる付勢手段を設けたことを特徴とする
請求項1に記載のスライドレールのロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陳列棚等の棚板類が本体内に収納された状態を維持するスライドレールのロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スライドレールのロック装置として数々のものが提供されている。
その代表的なものとして先行技術文献1(特許文献1)に示すように、ラック等の本体に固定される固定側レールと、固定側レールに対し摺動自在に配設された移動側レールと、移動側レールの前端部内面に設けられたロック片と、固定側レールの基板前端部に係止突起が形成される係止部材よりなるスライドレールにおいて、前記ロック片は、移動側レールの前方に突出する操作部材と、係止突起側に突出し前端が係止突起に係止する位置で、後端が係止突起から外れるように傾斜する係止突片と、係止突片の係止状態を維持する弾性部材を有し、移動側レールと平行に回動自在で、弾性部材によって常に係止突片が係止突起に係止する方向に維持されているものである。
【0003】
すなわち、ロック装置は、ロック解除の棒状の操作部が移動側レールの前端より突出して設けられており、移動側レールの摺動に合わせて移動するため、スライドレールの引き出された状態においても、棒状に形成されたレバー状操作部が移動側レールの前端より突出した状態となっていた。そのため、棒状に突出している部分に人や物が接触して、ロック装置の外れや、破損につながることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、スライドレールが引き出された状態で、ロック装置の外れや、破損が起きにくく、かつ簡単な構造でコンパクトに構成でき、部品点数も少なく安価に製作でき、作業性、メンテナンス性にも優れるスライドレールのロック装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、上記課題を解決する為、本発明が第1の手段として構成したところは、ラック等の本体に固定される固定側レールと、固定側レールに対し摺動自在に配設された中間レールと、中間レールに対し摺動自在に配設された移動側レールと、移動側レールの前端部に設けられたロック解除機構を備えたロック部材と、ロック部材に対応して、固定側レールの前端部に設けられた係合部よりなるスライドレールのロック装置であって、ロック装置は、ロック部材に配設される係止片と、前記係合部が係合することによりロック状態が維持されるもので、ロック装置のロック状態を解除するロック解除機構は、移動側レールの前方部より後方に向かって押圧させる操作部と、押圧させた操作部を復元させる付勢手段を備え、固定側レールの係合部は、固定側レールの少なくとも上下いずれかの折曲縁に設けられる係合孔で形成されるものである。
【0008】
上記課題を解決する為、本発明が第2の手段として構成したところは、前記第1の手段に加え、スライドレールのロック状態において、移動側レールを伸長方向に移動させる付勢手段を設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の手段として構成したところによると、ロック解除機構は、操作部が押圧操作式であるから、操作部が移動側レールの前端より前への突出量が、操作部が移動側レールの前方部より後方に向かって摺動する程度のみで済むので、操作部の突出量が少なくロック装置の外れや、破損につながることを防止できる。
また、係合部が係合孔であるから、固定側レールの折曲縁に孔を開けるだけで良く、固定側レールには、スライドレールをロック状態とするための部材を別部材として取り付ける必要がなく、移動側レールのみに部材の取り付けが集中できるので、組み立て効率がよい。
【0011】
本発明の第2の手段として構成したところによると、中間レールあるいは移動レール、すなわち、摺動する側のレールを伸長方向に付勢しているので、操作部を操作してロックを解除すると、付勢力によって摺動する側のレールが伸長し、ロック解除状態が維持される。そのため、一旦ロック解除すれば、操作部を操作せずとも移動側レールを引き出すことができるので、スライドレールの操作性が良い。
また、ロック状態においても、摺動する側のレールを伸長方向に付勢しているので、係止体の係止片と固定側レールの係合部の係合によるロック状態において、常に係止片を係合部に押圧させることができるため、ロック状態を確実に維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のスライドレールの伸長途中状態の固定側からの斜視図。
【
図2】本発明のスライドレールの伸長途中状態の移動側からの斜視図。
【
図4】移動側レールとロック部材の要部分解斜視図。
【
図8】係止体の下側の係止片と固定側レールの下側折曲縁が接触した状態を示す説明図。
【
図9】係止体の下側の係止片の下面が固定側レールの下側折曲縁の上面に載置している状態を示す説明図。
【
図11】スライドレールのロック状態が解除された時の説明図。
【
図12】スライドレールの他の実施例を示すスライドレールの基本断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、ラック等の本体に固定される固定側レールと、固定側レールに対し摺動自在に配設された中間レールと、中間レールに対し摺動自在に配設された移動側レールと、移動側レールの前端部に設けられたロック解除機構を備えたロック部材と、ロック部材に対応して、固定側レールの前端部の上下折曲縁に孔状に設けられた係合部よりなるスライドレールのロック装置であって、ロック装置を、ロック部材に設けられる係止片と、前記係合部が係合することによりロック状態を維持するものとし、スライドレールのロック状態において、中間レールを伸長方向に付勢する付勢手段を設け、ロック装置のロック状態を解除するロック解除機構に、移動側レールの前方部より後方に向かって押圧させる操作部と、押圧させた操作部を復元させる付勢手段を備えるとともに、前記係止片をロック部材の係止体に設け、該係止体を、上下方向に回動自在とし、前記のとおり操作部を押圧すると、操作部に備えられた案内部により、該係止体が上下方向に回動されロック状態が解除されるものである。
【実施例】
【0014】
スライドレールの基本的構成を
図1、
図2、
図3に基づいて説明する。
尚、実施例の説明において、便宜的に、スライドレールの伸長方向を前、スライドレールの収縮方向を後とする。したがって、スライドレールの摺動方向は前後方向と云う。そして前後方向を水平なX方向とした場合の、X方向に対して、垂直方向のY方向を上下方向と云う。
スライドレール100は、陳列棚等の本体の内面に連結ネジ等で連結される固定側レール1と、固定側レール1に対し、固定側ボール保持板3に回転自在に保持された複数個のボール30・・・を介して摺動自在に設けられた中間レール4と、中間レール4に対し、移動側ボール保持板5に回転自在に保持された複数個のボール50・・・を介して摺動自在に設けられた移動側レール2より構成され、移動側レール2が固定側レール1に収納された状態を保持するロック部材6が、移動側レール2の前端部内面に設けられ、ロック部材6に係脱自在の係合部7が固定側レール1の前端部上下面に設けられている。(
図1参照)
【0015】
固定側レール1は、金属製の細長条板の短手両端部を内向き円弧状に折り曲げて形成された内面長手方向(摺動方向)にボール案内溝を有する上下折曲縁11、11と、基板12より断面略C字形を成し、摺動方向前部に、固定側ボール保持板3、中間レール4、移動側ボール保持板5等を介して、移動側レール2を最大引き出した状態で停止させ、スライドレール100を最大伸長となすレール伸長時ストッパー13が、基板12の一部を移動側レール2方向に折り曲げて突出させて形成されており、基板12の後端部は移動側レール2方向に折り曲げられて後端折り曲げ縁14が形成されている。
そして、摺動方向後端部に、中間レール4を伸長側に付勢する付勢装置10が取り付けられている。
【0016】
中間レール4は、前記固定側レール1側に挿入されるインナー中間レール4aと移動側レール2が挿入可能なアウター中間レール4bで形成されている。
インナー中間レール4aは、固定側レール1より短長な金属製の細長条板の短手両端部を、外向き円弧状に折り曲げて、外面長手方向(摺動方向)にボール案内溝を有する上下折曲縁42a、42aと、基板41aからなり、移動側レール2と同形状な断面略コ字形に形成されている。
アウター中間レール4bは、移動側レール2より短長な金属製の細長条板の短手両端部を内向き円弧状に折り曲げて、内面長手方向(摺動方向)にボール案内溝を有する上下折曲縁42b、42bと、基板41bからなり、固定側レール1と同形状な断面略C字形に形成されている。
そして、インナー中間レール4aとアウター中間レール4bは、コ字状断面の開口側とC字形断面の開口側が互いに外向きとなるように基板41a、40bが背中合わせに固着され、断面略I字形となるように中間レール4が構成されている。
【0017】
また、インナー中間レール4aの基板41aの後端部に固定側レール1側に突出し、移動側レール2の引き出し時、固定側ボール保持板3の後端部に当接すると共に、移動側レール2の収納時、固定側レール1の付勢装置10に当接するインナー中間レール後端ストッパー44aが形成される。
そして、アウター中間レール4bの基板41bの後端部に移動側レール2側に突出し、移動側レール2の収納時、移動側レール2の後端部が当接するアウター中間レール後端ストッパー44bが形成され、基板41bの前端部付近に、移動側ボール保持板5の前端が当接するアウター中間レール前端ストッパー45bが形成されている。
【0018】
移動側レール2は、固定側レール1に対して付勢装置10相当分短い長さで、金属製の細長条板の短手両端部を外向き円弧状に折り曲げて形成された外面長手方向(摺動方向)にボール案内溝を有する上下折曲縁21、21と、基板22より固定側レール1に対向する断面略コ字形に形成されている。
そして、基板22の後端部には、スライドレール100の最大伸長状態で移動側ボール保持板5の後端に当接し、移動側レール2の収納時、前記アウター中間レール後端ストッパー44bの内面に当接する移動側レール後端ストッパー220が形成されている。
【0019】
固定側ボール保持板3は帯条金属板にてインナー中間レール4aより所定寸法短くした、固定側レール1とインナー中間レール4a間に挿入可能な大きさの基板31と、固定側レール1とインナー中間レール4aの各上下折曲縁11、11、42a、42a間に位置する上下突出縁32、32より断面略コ字形に形成され、上下突出縁32、32の長手方向(摺動方向)数個所でボール30・・・を回転自在に保持している。
【0020】
移動側ボール保持板5は帯条金属板にてアウター中間レール4bより所定寸法短くした、移動側レール2とアウター中間レール4b間に挿入可能な大きさの基板51と、移動側レール2と中間レール4の各上下折曲縁21、21、42b、42b間に位置する上下突出縁52、52より断面略コ字形に形成され、突出縁52、52の長手方向(摺動方向)数個所でボール50・・・を回転自在に保持している。
【0021】
スライドレール100は上記の如く構成され、移動側レール2が固定側レール1に最も収納された状態(最短縮小状態)では、インナー中間レール後端ストッパー44aが、固定側レール1の付勢装置10の前面に当接し、移動側レール2の移動側レール後端ストッパー220がアウター中間レール後端ストッパー44bの前面に当接し、移動側レール21のロック部材6が固定側レール1の係合部7に係合している。
【0022】
この状態から、ロック部材6の係合部7に対する係合状態を解除して、移動側レール2を前方に引き出していくと、移動側レール2の移動距離の2分の1の距離だけ移動側ボール保持板5は移動し、中間レール4の移動距離の2分の1の距離だけ固定側ボール保持板3は移動するので、移動側レール後端ストッパー220の前面が移動側ボール保持板5の後端に当接し、移動側ボール保持板5の前端がアウター中間レール前端ストッパー45bの後面に当接し、インナー中間レール後端ストッパー44aの前面が固定側ボール保持板3の後端に当接し、固定側ボール保持板3の前端が、固定側レール1のレール伸長時ストッパー13の後面に当接して、移動側レール2、中間レール4は停止し、スライドレール100は最大伸長状態となる。
【0023】
次に、第1実施例のロック装置を
図4、
図5に基づいて説明する。
第1実施例のロック部材6は、移動側レール2の基板22に固定される取付基体61と、取付基体61に回動軸62aを介して上下方向に回動可能に取り付けられる係止片624を備えた係止体62と、移動側レール2の上下折曲縁21、21と基板22で形成される空間23に抜け止めピン63aを介して前後方向に摺動可能に取り付けられる操作部63と、取付基体61と操作部63間に設けられ前方向に付勢力を発する付勢部材64で構成されている。
【0024】
取付基体61は、合成樹脂製で一体に成型され、移動側レール2の上下折曲縁21、21間に収まる上下高さで、基板22から固定側レール1方向に向かって、上下折曲縁21、21より飛び出した厚みを有し、固定側レール1側から移動側レール2の基板22に向かって貫通孔611が設けられ、前面側から後面側に向かって、付勢部材64の一部が挿入される挿入孔612が設けられている。
【0025】
そして、取付基体61は、貫通孔611と移動側レール2の基板22に設けられた取付孔22aを利用して、回動軸62aによって取付基体61が移動側レール2に取り付けられる。尚、回動軸62aは、合成樹脂製のリベットであるが、該リベット止めに限らず、取付基体61の移動側レール2の基板22側にピン状の突起体を一体的に設けて、移動側レール2の基板22の貫通孔22aに差込み固定する方法でもよい。
【0026】
付勢部材64は、圧縮コイルばねで、前後方向に水平になるように、後部側が取付基体61の挿入孔612に挿入され、付勢力方向が前方向になるように配設される。
【0027】
操作部63は、移動側レール2の基板22と、上下折曲縁21、21の内面に形成される膨出凸部2a、2aとの間で形成される空間23に挿入される基部631と、基部631の前面に形成されるプッシュ部632を有し、これらが合成樹脂材にて一体に形成されている。
【0028】
基部631には、前記空間23に挿入される部分の上下面に移動側レール2の上下折曲縁21、21の内面の膨出凸部2a、2aに沿う形状とされ前後方向に長い上下摺動溝633、633が形成されている。
また、基部631の固定側レール1側の表面より移動側レール2の基板22側に貫通する前後方向に長い小判型を成す長孔636が設けられている。
そして、基部631の後端部より後方に向かって上下面それぞれに、後方に向かって基部631の上下幅より狭くなるように、上面は下方に、下面は上方に傾斜がついた案内傾斜部634a、634aを有する案内部634が形成され、案内部634の後面側には、前記付勢部材64の一部が挿入される挿入凹部635が形成されている。
【0029】
プッシュ部632は、移動側レール2の前端面部を塞ぐように板状に形成され、移動側レール2の上下高さと略同じ高さに設定されている。従って、プッシュ部632は、固定基部72に対して、移動側レール2の上下折曲縁21、21の板厚分を付加した高さとなる。
【0030】
このように構成された操作部63は、次のように移動側レール2に取り付けられる。
まず、移動側レール2の前端面側から、空間23に操作部63の案内傾斜部634側を差し込むように入れ、基部631の上下摺動溝633、633が移動側レール2の膨出凸部2a、2aに沿うように、挿入凹部635に、前述の通り水平に取り付けられた付勢部材64の前部が挿入されるまで操作部63を移動側レール2の空間23に挿入する。
そして、抜け止めピン63aを固定側レール1側から、長孔636に挿入し、移動側レール2の基板22の前端部付近に設けられた固定孔22bを利用して固定する。
実施例における抜け止めピン63aは、合成樹脂製リベットであるが、金属製のリベットやネジ止め等に適宜変更してもよい。
【0031】
この状態で、プッシュ部632は、移動側レール2の前方に位置し、前述のとおり移動側レール2に取り付けられた取付基体61の前面と、基部631の後面間、移動側レール2の前端と、プッシュ部632の後面の間には、操作部63が後方に摺動可能なように間隔が空くように設定されている。また、抜け止めピン63aは、操作部63の長孔636に挿入されているため、操作部63は長孔636の分だけ前後に移動可能である。
そして、基部631の上下摺動溝633、633が移動側レール2の膨出凸部2a、2aに沿うように移動側レール2の空間23に操作部63が挿入されているため、上下摺動溝633、633と膨出凸部2a、2aがガイドレールのとなり、操作部63は前後にスムーズに摺動可能であるばかりか、操作部63が空間23の固定側レール1側の開口から脱落することを防止可能である。
【0032】
他方、取付基体61の前面と案内部634の後面間には、前述のとおり付勢部材64が取り付けられていることから、付勢部材64の付勢力により、操作部63が常に前方に押し出される。そして、抜け止めピン63aが操作部63の長孔636に挿入されているため、移動側レール2の前端から操作部63が脱落することはない。
【0033】
係止体62は、平板金属板を曲げ加工して作成されるものであって、
図4に示すように、前後に方向に長く上下方向に幅狭い細長な基材部621の後部側に固定側レール1側から移動側レール2側に向けて貫通する回動軸孔625が設けられ、基材部621の前後中間部の上下が、移動レール2側に折り曲げられ被案内片622、622とされ、基材部621の前部の上下が、移動レール2側に折り曲げられ係止腕部623、623とされ、係止腕部623の折曲げ端からそれぞれ上方と下方に折り曲げられ、係止片624、624が形成され、係止体62は上下方向の中心で上下対称形に形成されている。
【0034】
被案内片622、622は、前方から後方に向かって上下の被案内片622、622が近づくように上面は下方に、下面は上方に傾斜をつけて形成されている。そして、上下の被案内片622、622の前部の上下間隔は、操作部63の基部631が挿通できる程度の高さに設定されている。また、固定側レール1、移動側レール2間に納まる寸法で形成されている。
【0035】
係止片624は、上部側の係止腕部623の固定側レール1端から上方に曲げて形成された上部側の係止片624と、上部側の係止片624と上下対称に形成された下部側の係止片624を有するが、上下それぞれの係止片624、624の先端間の距離は、固定側レール1の上下折曲縁11、11間に内包可能な距離に設定されている。
また、上部側の係止片624の上端面の後部は、R状面とされ、下部側の係止片624も同様に下端面の後部がR状面とされる。
【0036】
このように形成された係止体62は、次のように移動側レール2に取り付けられる。
係止体62の回動軸孔625側が後部、係止片624側が前部となるように、合成樹脂製のリベットである回動軸62aを回動軸孔625挿入し、回動軸62a端から取付基体61の貫通孔611に挿入し、回動軸62aの先端を、移動側レール2の取付孔22aに嵌合させることによって取り付けられる。
実施例における回動軸62aは、合成樹脂製リベットであるが、金属製のリベットやネジ止め等に適宜変更してもよい。
以上のように、移動側レール2の各部材が取り付けられてロック部材6は組み立てられる。
【0037】
次に組み立てられたロック部材6の基本動作について詳述する。
図6に示すように、上下方向に回動自在に取り付けられた係止体62は、基材部621、被案内片622、622が、平面視において、固定側レール1、移動側レール2間に納まるように取付基体61に取り付けられる。
このように、取付基体61は、付勢部材64の支持に加え、係止体62の移動側レール2と固定側レール1間における位置を決めるスペーサーの役割を有している。
そして、係止片624が固定側レール1の上下折曲縁11、11と重なるように位置する。
【0038】
次に、ロック部材6は、ロック状態、あるいは、ロック解除しスライドレール100を引き出した状態で、
図7に示すように、係止体62が回動軸62aを中心軸として自重で下方に回動し、上側の被案内片622の前端部が、操作部63の上側の案内部634aの後部に当接した状態となる。
この時、係止体62の下側の係止片624の下端が、固定側レール1の下側の折曲縁11の下面より若干下方に位置している。
【0039】
この状態から、操作部62のプッシュ部を後側に押すと、操作部62は、付勢部材64の付勢力に抗しながら、移動側レール2に対して後方に移動する。
操作部62が後方に移動すると、操作部63の上側の案内部634aの傾斜面に沿って、係止体62の上側の被案内片622の前端部が上方に持ち上げられ、操作部63を完全に押し込んだ位置で、操作部62の基部631が、係止体62の上下被案内片622、622の前端部間に挿通し係止体62は、上下対称の略水平状態となる。
以上が、ロック部材6の基本動作である。
【0040】
係合部7は、固定側レール1の前端部近傍に設けられるもので、固定側レール1上下折曲縁11、11それぞれに設けられ、折曲縁11を上下方向に貫通する貫通孔で、平面視において前後方向に細長い長方形に形成されている。係合部7の大きさは、前記係止片624が挿通可能な大きさとされる。
貫通孔の係合部7の前側端部、すなわち、折曲縁11の端面が当接係止部71として設定される。
【0041】
付勢装置10は、ケース体101と、ケース体101の内部に収容される付勢バネ102と、ケース体101内部を前後方向に摺動する摺動体103で構成されるものである。
【0042】
ケース体101は、固定側レール1の上下折曲縁11、11間に納まる高さの箱体で前面側が開放されており内部空間101aが開放前面から露呈し、内部空間101aを摺動体103が前後方向に移動できるよう施され、ケース体101の後部側に、基板12側から移動側レール2の方向に向かって縦細長状の固定貫通孔101bが設けられており、上下面にはそれぞれ、固定側レール1の上下折曲縁11、11内面に沿う形状とされる帯状膨出部101c、101cが形成され、これらが一体に合成樹脂製で成型されている。
【0043】
付勢バネ102は圧縮コイルばねで、ケース体101の内部空間101aに付勢力方向が前方向になるように水平に配設されている。
摺動体103は、合成樹脂製でケース体101の内部空間101aに納まる形態の立法体を成している。また摺動体103の後面から前面側に向かって付勢バネ102の前側の一部が収容されるキリ孔103aが設けられ、付勢バネ102が内部空間101a内で無用に動かないように施されている。
【0044】
そして、付勢装置10は、次のように、固定側レール1に組み付けられる。
まず、摺動体103のキリ孔103aに付勢バネ102の前部を挿入し、付勢バネ102が装着された摺動体103をケース体101の内部空間101aにケース体101の前面から挿入する。この状態で、摺動体103の後部側約三分の一は、内部空間101aに入っており、この時、付勢バネ103は完全に伸びた状態となるように付勢バネ103の長さ設定されている。したがって、摺動体103は、後部側三分の一が内部空間101aに入った状態からでは付勢バネ103の付勢力は働かず、摺動体103は前方には飛び出さない。このようにして付勢装置10は組み立てられる。
また、この状態から摺動体103の前面を後方に向かって押すと、付勢バネ103を圧縮しながら、摺動体103はケース体101の内部空間101a内を後方に摺動し、そして、付勢バネ103が完全に圧縮した状態の位置で移動が停止する。この状態で摺動体103の約五分の四が内部空間101aに入っており、摺動体103の後方への押圧を止めると、付勢バネ103の付勢力により、摺動体103は前方に移動し、摺動体103の後部側約三分の一が内部空間101aに入った元の状態にもどる。
【0045】
組み立てられた付勢装置10を、固定側レール1の断面略C字形を成した開口側から、ケース体101の固定貫通孔101bに、固定側レール1の後端折り曲げ縁14が差し込まれるように、押圧しながら装着する。この時、ケース体101の帯状膨出部101c、101cは、弾性変形しながら固定側レール1の上下折曲縁11、11内面に挿入され、挿入後に帯状膨出部101c、101cは、弾性により元の形状に戻り固定側レール1の上下折曲縁11、11内面に沿う状態となる。
したがって、付勢装置10は、固定貫通孔101bに後端折り曲げ縁14が差し込まれているため、前後方向に不動で、帯状膨出部101c、101cが上下折曲縁11、11内面に沿っているため、固定側レール1から簡単に外れることがない。このようにして付勢装置10は、固定側レール1に組み付けられる。
【0046】
第1実施例のロック部材6と係止部7は上記の如く形成され、移動側レール2が最大伸長状態(引出し、棚板等が最も引き出された状態)から移動側レール2を収納していくと、固定側レール1に対して中間レール4が先に収納されたり、或いは、中間レール4に対し移動側レール2が先に収納されたり、さらには、移動側レール2の中間レール4に対する収納と、固定側レール1に対する中間レール4の収納が同時に行われたりする。
【0047】
しかしながら、ロック部材6が、移動側レール2の前方に設けられ、係止部材7が固定側レール1の前方に設けられているので、移動側レール2と中間レール4の固定側レール1に対する収納順位にかかわらず、最終的には、ロック部材6の係止体62の下側の係止片624のR状に形成された後端面と固定側レール1の下側の折曲縁11の前端面が接触する(
図8に示す状態。)。
【0048】
さらに、移動側レール2を収納させると、係止片624のR状部の前記折曲縁11の前端面と接触しているので、係止片624のR状部に沿って、係止体62が上方に押し上げられ回動していく。そして、下側の係止片624下端が、下側の折曲縁11の内面(上面)に載った状態で、移動側レール2が収納側に移動していく(
図9に示す状態。)。
【0049】
該ロック部材6の係止体62の動きの過程と前後して、移動側レール2の移動側レール後端ストッパー220が、アウター中間レール後端ストッパー44bに当接して、中間レール4は、移動側レール2に押されるように移動側レール2と合わせて収納されていく。
そして、中間レール4が、移動側レール2と合わせて収納されていくと、インナー中間レール後端ストッパー44a後面が、付勢装置10の摺動体103の前面に当接する。
【0050】
さらに、移動側レール2を収納させると、摺動体103は、中間レール4に押圧されながら、付勢バネ102の付勢力に抗して後側に摺動する。
最終的に移動側レール2が移動しスライドレール100が最収納状態となり、この時に、前記下側の係止片624が、固定側レール1の係合部7と重なり、係合部7は貫通孔であるから、係止体62の自重で係止体62が下側の回動し、下側の係止片624が係合部7に入り、係止片624と係合部7が係合する(
図10に示す状態。)。
尚、この状態で、係止体62の上側の被案内片622の前端部が、操作部63の上側の案内部634aの後部に当接した姿勢となる。
【0051】
このように、インナー中間レール後端ストッパー44aの後端が、摺動体103の前面に当接し、移動側レール後端ストッパー220の後端がアウター中間レール後端ストッパー44bの前面に当接し、係止体62の係止片624の前面が、固定側レール1の係合部7の前端に当接し、収納係止状態、すなわちロック状態となる。
このロック状態において、中間レール4は付勢装置10により前方に移動するように付勢されているため、該付勢力は中間レール4を介して移動側レールにも働くため、付勢力によって、係止体62の係止片624の前面を、固定側レール1の係合部7の前端の当接係止部71に確実に当接させることができる。
そのため、前述の係止片624が、係止部7に対して収納側に通過した状態時より、付勢力により移動側レールは若干前方に移動して、
図10に示す係止片624と係合部7の係合状態となる。
【0052】
前述のとおり、本件実施例のロック装置は、上下対称形に形成されているため、スライドレール100を対向配置となる左右で兼用して使用することが可能となる。左右兼用であるため、メンテナンス用の部品の管理も左右で分ける必要がなく部品管理効率がよくなる利点もある。
当然ながら、ロック装置を上下対称形に形成せずに右用、左用の両方を用意することもできる。この場合、係止片624や係合部7は下側のみでよい。
【0053】
次に、ロック状態から、例えば棚板と連結された移動側レール2を引き出すときは、ロック部材6の操作部63のプッシュ部632を前方から後方に向かって押す。
ロック状態では、前述のとおり、係止体62の上側の被案内片622の前端部が、操作部63の上側の案内部634aの後部に当接した姿勢となっているから、プッシュ部632が押されると、操作部63が付勢バネ102の付勢力に抗して後側に摺動し、該摺動のより案内部634aに当接している係止体62の上側の被案内片622の前端部が、案内部634aの傾斜面に沿って上方に押し上げられ、係止体62は上方に回動する。
そして、操作部63をもっとも押し込んだ状態で、係止体62は略水平状態となり、係止片624が係合部7から外れる。(
図11に示す状態。)
この時、前述のとおり、中間レール4は付勢装置10により前方に移動するように付勢されているため、プッシュ部632の押す力により、中間レール4も付勢装置10の付勢力に抗して若干後方に摺動する。
【0054】
係止片624が係合部7から外れると、すなわち、係止片624と係合部7の係合状態が解除された状態でプッシュ部632の押圧をやめると、付勢装置10の付勢力によって、下側の係止片624が再度係合部7に入り込むより早く中間レール4が前方に押し出される。中間レール4が前方に押し出されると、移動側レール後端ストッパー220の後端がアウター中間レール後端ストッパー44bの前面に当接しているから、移動側レール2も前方に移動し、係止体62の下側の係止片624下端が、固定側レール1の下側の折曲縁11の内面(上面)に載った状態で停止し、この状態でロック解除されたこととなる(
図9に示す状態と同じ。)。この時、操作部63は、付勢部材64の付勢力によって前方に移動し元の状態となっている。
したがって、付勢装置10を有している場合は、ロック状態から、左右のプッシュ部632押すだけで、ロック解除される。ロック解除後、そのまま、棚板を引き出すと、移動側レール2は最大伸長まで引き出され停止する。
【0055】
このように、ロック解除操作は、操作部63押すだけでよく、操作部63を押す量も、係止片624が係合部7から外れるだけ係止体62を上方に上げるだけでよいので、大きな量が必要なく、操作部63の移動側レール2の前端からの飛び出しを小さくすることが可能である。
【0056】
本ロック装置は、付勢装置10が無くともロック状態とすることが可能であるが、この場合は、ロック解除させる際、左右の操作部63を押した状態を維持したまま棚板等の移動部材を引き出すこととなるので、付勢装置10を備えたほうが使い勝手がよい。
【0057】
本スライドレールのロック装置は、本実施例のスライドレール形態だけでなく、
図12に示すアウター中間レールをインナー中間レールと同断面形状とし、移動側レールを固定側レールと同断面形状に形成したスライドレールであってもよい。
【0058】
本スライドレールのロック装置は、本実施例のように、係止片624の下向きの回動を自重によって行う方法だけでなく、トーションばね等を使って、通常はロック状態の位置になるように係止片624の角度を保つ方法でもよい。
この場合、ロック状態への移行時の、係止片624のR状部が折曲縁11の前端面と接触した状態から、係止片624のR状部に沿って、係止体62が上方に押し上げられ回動していく時、トーションばねの付勢力に抗しながら係止体62が上方に押し上げられ回動する。また、ロック解除時は、操作部63のプッシュ操作によりトーションばねの付勢力に抗しながら係止体62が上方に押し上げられ回動する。
このようにすると、スライドレール(固定側レール)の基板12が垂直となる縦使いだけではなく、スライドレール基板12が水平となる横使いのスライドレールでも使用可能である。
【符号の説明】
【0059】
100 スライドレール
1 固定側レール
10 付勢装置
2 移動側レール
4 中間レール
4a インナー中間レール
4b アウター中間レール
6 ロック部材
62 係止体
622 被案内片
624 係止片
63 操作部
632 プッシュ部
633 上下摺動溝
634a 案内傾斜部
64 付勢部材
7 係止部