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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】検知器
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/15 20060101AFI20220525BHJP
   G01N 21/47 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
G01N21/15
G01N21/47 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017202577
(22)【出願日】2017-10-19
(65)【公開番号】P2019074491
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000219451
【氏名又は名称】東亜ディーケーケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107216
【弁理士】
【氏名又は名称】伊與田 幸穂
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(72)【発明者】
【氏名】奥村 剛人
(72)【発明者】
【氏名】石飛 毅
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-082652(JP,U)
【文献】特開平07-145958(JP,A)
【文献】特開昭63-163118(JP,A)
【文献】特開2009-250767(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0118366(US,A1)
【文献】特開平07-190443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/61
G01N 21/84 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知光を出力する出力手段と、
前記出力手段の前記検知光が被検知面で反射した反射光を受光する受光手段と、
前記受光手段により受光された前記反射光の情報を基に前記被検知面に関する情報を取得する取得手段と、
前記反射光の光路方向に延び、当該反射光の光路を囲む囲み部材と、
前記囲み部材の内側にエアを供給する供給手段であって、当該囲み部材の内側においてエアを前記被検知面の方向に向かうように供給すると共に、エアの供給に伴う圧力作用により当該囲み部材の外側の空気をエアと共に当該囲み部材の内側に供給する供給手段と、
を備え
前記囲み部材の内部空間に位置する内筒部と当該囲み部材とを前記被検知面側で互いに接続する接続部を備えることで、前記供給手段により当該囲み部材の内側に供給されるエア及び空気が当該被検知面とは反対の方向に向かった後に当該被検知面の方向に向かうことを特徴とする検知器。
【請求項2】
検知光を出力する出力手段と、
前記出力手段の前記検知光が被検知面で反射した反射光を受光する受光手段と、
前記受光手段により受光された前記反射光の情報を基に前記被検知面に関する情報を取得する取得手段と、
前記反射光の光路方向に延び、当該反射光の光路を囲む囲み部材と、
前記囲み部材の内側にエアを供給する供給手段であって、当該囲み部材の内側においてエアを前記被検知面の方向に向かうように供給すると共に、エアの供給に伴う圧力作用により当該囲み部材の外側の空気をエアと共に当該囲み部材の内側に供給する供給手段と、
を備え、
前記囲み部材には、前記供給手段によりエアが供給される位置よりも前記被検知面から遠い位置に、周方向に沿って間隔を開けて複数の通気口が形成されていることを特徴とする検知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば浄水場や河川、湖沼の水面に検知光を反射させることで油膜を検知する油膜検知器等の検知に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油膜による光の反射率が水面による光の反射率よりも高いことに着目し、水面に光を照射してその反射光の強度を測定することで反射率を求め、これによって水面の状況を検知する検知方法がある。
【0003】
水面に照射した光の反射光の強度を測定することで反射率を求め、これによって水面での油膜の有無を検知する場合、装置に結露が生じて油膜検知の精度が低下するという事態に対応する種々の構成が従来から提案されている。
例えば、特許文献1には、加熱雰囲気中の被測定対象からの放射エネルギーを受光する検出部と、測定雰囲気中のエアを浄化する浄化手段と、検出部の被測定対象方向に設けられ浄化手段よりの熱風エアを噴出するエアパージ管とを備えた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平3-37135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、検知器と被検知面との間の光が通る空間に光に影響を与える障害物質が漂っている場合に所定圧のエアで空間内の障害物質を減少させて障害物質に起因する影響を抑制する場合、多くのエア供給量が必要になると、コストがかかってしまうことが想定される。
【0006】
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、光に影響を与える障害物質が存在する環境下でコストを低減しつつ障害物質に起因する検知結果の影響を抑制可能な検知を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、本発明が適用される検知器は、検知光を出力する出力手段と、前記出力手段の前記検知光が被検知面で反射した反射光を受光する受光手段と、前記受光手段により受光された前記反射光の情報を基に前記被検知面に関する情報を取得する取得手段と、前記反射光の光路方向に延び、当該反射光の光路を囲む囲み部材と、前記囲み部材の内側にエアを供給する供給手段であって、当該囲み部材の内側においてエアを前記被検知面の方向に向かうように供給すると共に、エアの供給に伴う圧力作用により当該囲み部材の外側の空気をエアと共に当該囲み部材の内側に供給する供給手段と、を備え、前記囲み部材の内部空間に位置する内筒部と当該囲み部材とを前記被検知面側で互いに接続する接続部を備えることで、前記供給手段により当該囲み部材の内側に供給されるエア及び空気が当該被検知面とは反対の方向に向かった後に当該被検知面の方向に向かうことを特徴とするものである
また、本発明が適用される検知器は、検知光を出力する出力手段と、前記出力手段の前記検知光が被検知面で反射した反射光を受光する受光手段と、前記受光手段により受光された前記反射光の情報を基に前記被検知面に関する情報を取得する取得手段と、前記反射光の光路方向に延び、当該反射光の光路を囲む囲み部材と、前記囲み部材の内側にエアを供給する供給手段であって、当該囲み部材の内側においてエアを前記被検知面の方向に向かうように供給すると共に、エアの供給に伴う圧力作用により当該囲み部材の外側の空気をエアと共に当該囲み部材の内側に供給する供給手段と、を備え、前記囲み部材には、前記供給手段によりエアが供給される位置よりも前記被検知面から遠い位置に、周方向に沿って間隔を開けて複数の通気口が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光に影響を与える障害物質が存在する環境下でコストを低減しつつ障害物質に起因する検知結果の影響を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】油膜検知器の油膜検知器本体の構成例を示すブロック図である。
図2】油膜検知器の別の油膜検知器本体の構成例を示すブロック図である。
図3】第1の実施の形態に係る油膜検知器を説明する概略図である。
図4】第2の実施の形態に係る油膜検知器を説明する概略図である。
図5】本実施の形態による効果を確認する実験を説明する図であり、(a)は実験装置を説明する図であり、(b)は実験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本実施の形態では、被検知面(検知対象面)に検知光を反射させて油膜を検知する機能を持つ油膜検知器1について説明する。かかる機能は、被検知面としての液面に油膜が存在するときの光の反射率と存在しないときの光の反射率とが違うという性質を利用するものである。液面としては、例えば浄水場や河川、湖沼等の液面を指すものであり、液面の位置が高くなったり低くなったり、また、液面が波立ったりするものである。
油膜検知器1には、油膜の有無を検知する被検知面の近くの構造物に据え置いて用いる固定式と、被検知面に対して移動する移動式と、がある。
【0011】
〔油膜検知器1の油膜検知器本体2A,2B〕
本実施の形態に係る油膜検知器1の構成について説明する。まず、油膜検知器1の本体として、油膜検知器本体2Aと油膜検知器本体2Bを説明する。油膜検知器本体2Aを図1で説明し、油膜検知器本体2Bを図2で説明する。なお、油膜検知器本体2Aと油膜検知器本体2Bは、レーザ走査式を採用し、液面の高さ変化の影響を低減させている。
図1は、油膜検知器1の油膜検知器本体2Aの構成例を示すブロック図である。
油膜検知器1の油膜検知器本体2Aは、検知光としてのレーザ光L1を発光する出力手段の一例としてのレーザ光源100と、レーザ光源100により発光されたレーザ光L1を、照射範囲を有する平行光として出力する照射部200と、を備えている。更に説明すると、照射部200は、レーザ光L1を走査することにより照射範囲を照射するレーザ光L2を出力する。レーザ光L2は、レーザ光L2の光路上流側での照射範囲(ビーム群の横断面積)と光路下流側での照射範囲(ビーム群の横断面積)との大きさの差が無い乃至ほとんど無いいわゆる平行光である。
なお、本書で平行光というときには、1本のレーザ光を走査することによりビーム群に構成された光の照射範囲(横断面積)が光路上の位置によって実質的に変わりがないレーザ光を言うものとする。
【0012】
また、油膜検知器本体2Aは、被検知面の一例としての液面Wに照射するレーザ光L3の光軸と液面Wで反射したレーザ光L4の光軸とが同軸となるようにレーザ光L3,L4を導く同軸落射部300と、同軸落射部300からのレーザ光L5を受光する受光手段の一例としての受光部400と、を備えている。この同軸落射部300は、入射した光の一部を反射して残りを透過させるハーフミラー310を有する。このハーフミラー310は、反射光と透過光の強さがほぼ等しくなるように形成されている板状部材である。
更に説明すると、同軸落射部300は、照射部200からのレーザ光L2をハーフミラー310に反射させ、その反射光であるレーザ光L3を液面Wに全反射するように導き、かつ、液面Wで全反射したレーザ光L4をハーフミラー310に透過させ、その透過光であるレーザ光L5を受光部400に受光されるように導く。レーザ光L4は、レーザ光L3の入射角に等しい角度で液面Wから反射していく。すなわち、レーザ光L3の入射角とレーザ光L4の反射角とは互いに等しい。
なお、レーザ光L3の出射およびレーザ光L4の入射は、透明部材である窓部800を介して行われる。窓部800は、例えばガラスで構成される。
【0013】
このように、照射部200は、液面Wの油膜検知に用いる検知光を、所定の範囲を照射する平行光として出力するように構成されている。そして、同軸落射部300は、検知光をハーフミラー310により液面Wに全反射させ、その全反射した反射光(検知光)をハーフミラー310により受光部400に向かわせるように構成されている。
このため、検知光を広い範囲に照射することが可能であり、液面Wの高さが変動して油膜検知器本体2Aに対する距離が変わっても、受光部400による油膜検知に必要な検知光の受光に影響を受けず、また、液面Wが波立ったりしても、同様に、油膜検知に必要な検知光の受光に影響を受けない。
【0014】
また、油膜検知器本体2Aは、受光部400が受光したレーザ光L5を所定の信号に変換することでレーザ光L5の強度情報を得て液面Wの反射率を演算する演算部500と、演算部500による演算結果ないしレーザ光L5の強度情報を基に、液面Wに油膜が存在することを取得する取得手段の一例としての判断部600と、判断部600により液面Wに油膜が存在するとの判断がされるとユーザに通知する通知部700と、を備えている。
【0015】
ここで、レーザ光源100としては、図示しないレーザダイオードと、レーザダイオードに所定の電圧が印加されるように制御する図示しない駆動回路と、で構成する例が考えられる。
照射部200および同軸落射部300の構成については上述したとおりである。
受光部400としては、レーザ光L5を集光するための図示しない集光レンズと、集光した光の強度に応じた電気信号に変換する図示しないフォトダイオードと、で構成する例が考えられる。
【0016】
また、演算部500及び判断部600としては、予め定められた動作制御プログラム(ファームウェア)に従ってデジタル演算処理を実行する図示しないCPU(Central Processing Unit)と、CPUの作業用メモリ等として用いられる図示しないRAM(Random Access Memory)と、CPUにより実行される処理プログラムや処理プログラムにて用いられる各種のデータが格納される図示しないROM(Read Only Memory)と、で構成する例が考えられる。
また、通知部700としては、ユーザに対して視覚的に通知する図示しない表示画面で構成する例が考えられ、また、汎用の通信手段にて遠隔のユーザに通知するための通信インターフェースで構成する例が考えられる。
【0017】
図2は、油膜検知器1の別の油膜検知器本体2Bの構成例を示すブロック図である。なお、油膜検知器本体2Bの基本的な構成は、上述した油膜検知器本体2A(図1参照)と共通するため、同じ構成には同じ符号を用い、また、その説明を省略することがある。
図2に示す油膜検知器1の油膜検知器本体2Bは、レーザ光源100、照射部200、同軸落射部300、受光部400、演算部500、判断部600及び通知部700を備えている。同軸落射部300は、ハーフミラー310を有する。このような油膜検知器本体2Bの構成は、油膜検知器本体2Aと共通する。
【0018】
ここで、油膜検知器本体2Bが油膜検知器本体2Aと相違する構成について具体的に説明する。油膜検知器本体2Bが備える同軸落射部300は、ハーフミラー310を透過して液面Wに検知光を照射すると共にハーフミラー310で反射して受光部400に検知光を入射する点で、ハーフミラー310で反射して液面Wに検知光を照射すると共にハーフミラー310を透過して受光部400に検知光を入射する油膜検知器本体2Aが備える同軸落射部300と異なる。
【0019】
すなわち、油膜検知器本体2Bが備える同軸落射部300では、液面Wを照射するレーザ光L3はハーフミラー310を透過したものであり、受光部400に受光されるレーザ光L5はハーフミラー310で反射したものである。言い換えると、油膜検知器本体2Bが備える同軸落射部300では、照射部200からのレーザ光L2をハーフミラー310に透過させ、その透過光であるレーザ光L3を液面Wに全反射するように導き、かつ、液面Wで全反射したレーザ光L4をハーフミラー310に反射させ、その反射光であるレーザ光L5を受光部400に受光されるように導く。
【0020】
〔本実施の形態の意義〕
ここで、例えば復水ピットが70度や80度(摂氏)程度の比較的高い温度であると、液面Wから湯気が立ちのぼり、復水ピットが半密閉であるときには、ピット内が湯気で充満する場合がある。かかる場合、油膜検知器1からのレーザ光が液面Wとの間を往復する際に湯気と乱反射してレーザ光が減衰することで、油膜検知器1による検知結果が安定しなくなり、好ましくない。検知結果に悪影響を及ぼす湯気等の障害物質が存在する環境下でも検知結果を安定させるため、障害物質の除去にエア(圧縮空気)を用いることが考えられる。すなわち、油膜検知器1と液面Wとの間の空間に漂う障害物質を所定圧のエアで減少させ、障害物質に起因する悪影響を抑制する方法である。
しかしながら、レーザ光の光路を含む空間にある障害物質を除去するためのエア供給量が必要になり、油膜検知器1を設置する場所にそのようなエア供給装置が備わっていなければ、検知結果を安定化させることが困難になる。また、油膜検知器1にエア供給装置を追加する構成も考えられるが、エア供給装置が大型化し、広い設置スペースが必要になり、さらには、装置一体化によるユニットの大型化や高額化(高イニシャルコスト)になることが想定される。また、エアの消費量が多くなることから、エア供給装置を動かすために多くのランニングコストがかかってしまうことも想定される。
そこで、本実施の形態では、油膜検知器1と液面Wとの間の障害物質を減らし検知結果に与える影響を軽減するのに必要なエアの量を抑制可能な構成を備える。
以下、本実施の形態における具体的な構成として、第1の実施の形態および第2の実施の形態を説明する。
【0021】
〔第1の実施の形態〕
図3は、第1の実施の形態に係る油膜検知器1を説明する概略図であり、一部を破断して示す。なお、本実施の形態に係る油膜検知器1は、上述の油膜検知器本体2A,2Bのいずれかを備える。
同図に示すように、油膜検知器1は、油膜検知器本体2A,2Bの下側に設けられる囲み部材の一例としてのフード3を備える。かかるフード3は、油膜検知器本体2A,2Bと液面Wとの間を進むレーザ光L3,L4(図1または図2参照)の光路を囲んでいる。
なお、油膜検知器1のフード3を油膜検知器本体2A,2Bに取り付ける場合と、別部材にフード3を取り付けることで油膜検知器本体2A,2Bに対する位置が定まる場合と、がある。また、取外しできるようにフード3を被取付け側に取り付けられる構成を採用し、状況に応じて使用者が後付けないし切り離しできるようにしてもいい。すなわち、油膜検知器1は、フード3を備える構成の場合と、フード3を備えない構成の場合と、がある。
【0022】
フード3は、筒形状のフード本体31を含み、フード本体31の一端31aおよび他端31bが開口している。フード本体31の筒形状により、フード本体31の内周面側に内部空間Aが形成される。
フード3は、取付け状態では上下方向に延びる。そして、フード本体31の一端31aは、油膜検知器本体2A,2B側に位置し、油膜検知器本体2A,2Bにおいてレーザ光L3の出射およびレーザ光L4の入射が行われる窓部800(図1または図2参照)に対峙する。フード3の取付け状態では、開口する一端31aが油膜検知器本体2A,2Bにより塞がれるようになる。また、フード本体31の他端31bは、液面W側に位置する。以下、一端31aを上端31aということがあり、他端31bを下端31bということがある。
【0023】
さらに説明すると、フード3は、フード本体31の内部空間Aに位置する間仕切り部32を備えている。この間仕切り部32は、フード本体31よりも小形の筒形状で両端が開口する内筒部32aと、内筒部32aとフード本体31の内周面とを互いに接続する接続部32bと、を有する(二重筒構造)。
接続部32bは、内筒部32aとフード本体31との間に位置し内筒部32aの下端に接続するものであり、筒形状の全周にわたって形成されている。このため、フード本体31の内部空間Aにおいて、間仕切り部32の上側空間と下側空間とが内筒部32aの開口によってつながっている。間仕切り部32は、仕切り部材の一例である。
なお、本実施の形態では、フード本体31および内筒部32aは共に、横断面円形状の円筒形状であるが、これに限られず、横断面が円形状以外の形状である筒形状の例も考えられる。
【0024】
フード3は、フード本体31の内部空間Aに、コンプレッサ等により圧縮されたエア(圧縮空気)を供給するためのアスピレータ(吸気具)33を備えている。このアスピレータ33は、コンプレッサ等からのエア供給管(不図示)が接続される供給口33aと、外気(大気、空気)を取り込む取込み口33bと、内部空間A内に位置する導入口33cと、を有する。そして、アスピレータ33は、供給口33aから供給されるエアを利用して減圧状態を形成することで取込み口33bから外気を取り込み、外気をエアと共に導入口33cから内部空間Aに導くものである。すなわち、エアと外気とが混ざり合った混合気が導入口33cから内部空間Aに導かれる。
このようなアスピレータ33を使うことで、供給口33aから供給されるエアが少量であっても、内部空間Aに対し大きな風量を導くことができ、エア消費量の削減を実現することが可能である。アスピレータ33は、供給手段の一例である。
【0025】
なお、内部空間Aに導かれる混合気(エアおよび外気)には、大気中の様々な微粒子を除去することや配管内のサビ等が混入していないこと等が求められ、供給する混合気の高い清浄度が必要となる場合がある。したがって、そのような場合には、例えばアスピレータ33の取込み口33bにエアフィルタを設けることが考えられる。
【0026】
アスピレータ33の導入口33cは、フード3の上端31a寄りに位置し、また、下端31bは開口していることから、アスピレータ33により内部空間Aに導かれた混合気は、フード3の下端31bから排気される。すなわち、フード3の内部空間A内において、上から下に向かう混合気の流れが形成される。このため、液面Wからの湯気がフード3の内部空間Aに進入することが抑制される。
また、エアと外気による混合気は、フード3の下端31bから比較的勢いよく下方に吹き出されるので、液面Wにまで達することで、フード3の下端31bと液面Wとの間の湯気をほかに追いやる。このため、従来よりも少ないエア量で油膜検知器本体2A,2Bと液面Wとの間にある湯気を減らすことができ、湯気が検知結果に与える悪影響を軽減することが可能になる。
【0027】
ここで、アスピレータ33の導入口33cから導かれるエア等は、間仕切り部32の内筒部32aに向かう。内筒部32aの下端には接続部32bがあるので、エア等は下方に行くことができず、例えば内筒部32aの周方向に移動しつつ上方に向かうという流れが形成される。すなわち、アスピレータ33の導入口33cからのエア等は、内部空間A内を上昇し、油膜検知器本体2A,2Bの窓部800の曇りを軽減することが可能である。
【0028】
より詳細に説明すると、湯気が出ている液面Wの上方に位置する油膜検知器本体2A,2Bの窓部800は結露し易く、結露することで検知結果に悪影響を及ぼしてしまうことから、例えば窓部800をヒータで加熱することで結露の防止を図っている。しかしながら、ヒータ加熱の場合には電気の消費量が多くなってしまい、好ましくない。そこで、本実施の形態では、エアと外気との混合気を、フード3の下端31bから排出する前に、上昇させて窓部800に向かわせ、これにより窓部800の結露をなくし、ヒータ加熱なしでも結露による検知結果の悪影響を防止している。
なお、当然ながら、混合気による結露防止と共にヒータ加熱を併用することも考えられ、その場合には、ヒータ加熱が少なくて済み、消費電力を抑制することが可能になる。
付言すると、本実施の形態では、フード3の上端31aが開口する構成を採用するが、上端31aにガラス等の透明部材を設けることで、2枚ガラスによる結露抑制を図ることが考えられる。
【0029】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態に係る油膜検知器1について説明する。なお、第2の実施の形態に係る油膜検知器1は、上述の第1の実施の形態と共通する構成を備えることから、同じ構成には同じ符号を用いることがあり、また、その説明を省略することがある。
図4は、第2の実施の形態に係る油膜検知器1を説明する概略図であり、図3の場合と同じく、一部を破断して示す。
図4に示すように、第2の実施の形態に係る油膜検知器1は、第1の実施の形態の場合と同じく、油膜検知器本体2A,2Bのいずれかを備えるほか、フード3を備える。
このフード3は、上述した筒形状のフード本体31を含み、内周面側に内部空間Aが形成されている。
なお、フード3は、第1の実施の形態の場合と異なり、間仕切り部32およびアスピレータ33を備えていない。
【0030】
さらに説明すると、フード3は、コンプレッサ等により圧縮されたエアを供給するエア供給管(不図示)が接続されるL字状の接続具34を備えている。この接続具34は、エア供給管が接続される供給口34aと、内部空間A内に位置する導入口34bと、を有する。導入口34bは、フード本体31の下端31b側に向く下向きである。このため、供給口34aのエアは、導入口34bから下向きに排出される。内部空間Aにおいて、エアによる下方に流れる風が形成され、これにより、内部空間Aおよびフード3の下端31bと液面Wとの間にある湯気が押しやられ、湯気による悪影響を軽減可能になる。
【0031】
より詳細には、フード3は、フード本体31において接続具34よりも上端31a寄りの位置に形成された通気口35を備えている。かかる通気口35は、フード本体31の周方向に沿って間隔を開けて複数が形成されている。内部空間Aでエアが下向きに流れることで、エジェクタ効果が作用し、通気口35から外気が引き込まれる。例えば、エアを1とした場合、外気が6程度になり、フード本体31の下端31bから排出される風量が多くなり、第1の実施の形態でのアスピレータ33を用いることなく、効率的に湯気を排除できる。接続具34およびフード本体31の通気口35は、供給手段の一例である。
【0032】
また、フード3の通気口35は、油膜検知器本体2A,2Bの窓部800に近い位置であることから、通気口35からの外気は、窓部800の結露を抑制するように作用する。このため、第2の実施の形態の場合でも、窓部800が結露することに伴う悪影響を防止することができる。
【0033】
なお、上述したように、本実施の形態として油膜検知器1を説明したが、これに限られず、他の検知器例えば、液面Wの高さを検知する水位計にも適用することができる。また、油膜検知器1以外の光学式分析装置にも適用することができる。
また、フード3にエアを供給するコンプレッサ等を常時作動させる場合のほか、検知器を常時作動させておく必要がない場合には、コンプレッサの作動を検知器の作動時期に合わせて制御する場合も考えられる。すなわち、測定前にコンプレッサ等の作動が開始し、測定後にはコンプレッサ等の作動を停止する変形例である。
【0034】
〔確認実験〕
図5は、本実施の形態による効果を確認する実験を説明する図であり、(a)は実験装置を説明する図であり、(b)は実験結果を示す表である。
図5(a)に示すように、ホットプレート42の上側に油膜検知器本体2Aないし油膜検知器本体2Bを配置した。ホットプレート42で水が約100度まで加熱され、ホットプレート42から湯気が立ち上る。
油膜検知器本体2A,2Bの窓部800(図3または図4参照)の下に筒形状のフード41を配置した。また、油膜検知器本体2A,2Bとフード41との間から、下向きのエア供給(パージ)を行った。かかるパージによる下向きのエア流で、ホットプレート42の湯気は、フード3の内部空間Aおよびフード3とホットプレート42との間の空間から取り除かれた。
なお、この実験装置では、フード3の直径が125mmであり、フード3とホットプレート42の液面までの距離Lは、500mm~1100mmの範囲で実験を行った。
【0035】
図5(b)に示すように、距離Lが500mmにおける検知レベル(DETECT LEVEL)と距離Lが110mmにおける検知レベル(DETECT LEVEL)を、通常時反射強度である常温水の場合、パージなし/結露なしの場合(測定開始直後)、パージなし/結露ありの場合、およびパージあり/結露なしの場合に分けて測定した。
常温水であれば、距離Lが500mmの場合と距離Lが1100mmの場合とで差がほとんどない。そして、測定開始直後のパージなし/結露なしのとき、常温水のときよりも検知レベルが低下したものの、距離Lが500mmの場合と距離Lが1100mmの場合との差がわずかにある程度である。パージなし/結露ありのときには、検知レベルが大幅に低下した。そして、パージあり/結露なしの場合のときは、ほぼ測定開始直後の検知レベルまで回復した。
このように、パージがないと窓部800(図3または図4参照)に結露が生じ、検知レベルが低下する一方で、パージがあると、その結露がなくなり、検知レベルが戻った。エア供給により、検知レベルの低下が抑制されることが実験で明らかになった。
【0036】
そして、本実施の形態では、上述したように、アスピレータ33による減圧作用(第1の実施の形態)ないしエアおよび通気口35によるエジェクタ効果(第2の実施の形態)を利用することで、フード3内の内部空間Aに外気を取り込んでいる。これにより、少ないエア供給量で、内部空間Aにおけるより多くの流量を確保することができ、エア消費量を抑制しつつ、油膜検知器本体2A,2Bの検知結果に湯気が及ぼす悪影響を抑制することが可能になる。
【符号の説明】
【0037】
1…油膜検知器、3…フード、32…間仕切り部、33…アスピレータ、34…接続具、35…通気口、100…レーザ光源、400…受光部、600…判断部、W…液面
図1
図2
図3
図4
図5