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特許7078910アリルメタアリルアミン系(共)重合体、その製造方法、及びその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】アリルメタアリルアミン系(共)重合体、その製造方法、及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C08F 26/04 20060101AFI20220525BHJP
   C08G 75/22 20060101ALI20220525BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20220525BHJP
   C09D 139/02 20060101ALI20220525BHJP
   D06M 15/267 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
C08F26/04
C08G75/22
C09D11/00
C09D139/02
D06M15/267
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019534463
(86)(22)【出願日】2018-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2018028195
(87)【国際公開番号】W WO2019026778
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2017151845
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 信幸
(72)【発明者】
【氏名】文屋 勝
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-002196(JP,A)
【文献】国際公開第2011/148862(WO,A1)
【文献】米国特許第03288770(US,A)
【文献】特公昭43-005891(JP,B1)
【文献】Reactive and Functional Polymers,2017年06月02日,Vol.117,pp.34-42
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 26/04
C08G 75/22
C09D 11/00
C09D 139/02
D06M 15/267
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(Ib)で表される構造の構成単位(II)を有するアリルメタアリルアミン系(共)重合体
【化2】

(但し、上記式(Ib)中、Rは、水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、nは1以上の整数である。)。
【請求項2】
重量平均分子量Mwが、1000~1000000である、請求項1に記載のアリルメタアリルアミン系(共)重合体。
【請求項3】
全構成単位中に占める、構成単位(II)に該当する構成単位の割合が、合計で5モル%以上である、請求項1又は2に記載の、アリルメタアリルアミン系(共)重合体。
【請求項4】
更に、二酸化硫黄から導かれる構成単位(III)を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の、アリルメタアリルアミン系(共)重合体。
【請求項5】
下記一般式(1)で表される構造のアリルメタアリルアミン系化合物(i)を含有する単量体原料を(共)重合する工程を有する、下記一般式(Ib)で表される構造の構成単位(II)を有するアリルメタアリルアミン系(共)重合体の製造方法
【化3】

(但し、上記式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、Xはカウンターイオンである。)
【化4】

(但し、上記式(Ib)中、Rは、水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、nは1以上の整数である。)。
【請求項6】
前記単量体原料に占めるアリルメタアリルアミン系化合物(i)の割合が、5モル%以上である、請求項5に記載の、アリルメタアリルアミン系(共)重合体の製造方法。
【請求項7】
前記アリルメタアリルアミン系化合物(i)を含有する単量体原料を重合する工程における重合度が、5~10000である、請求項5又は6に記載の、アリルメタアリルアミン系(共)重合体の製造方法。
【請求項8】
前記アリルメタアリルアミン系化合物(i)を含有する単量体原料を重合する工程における収率が、60%以上である、請求項5から7のいずれか一項に記載の、アリルメタアリルアミン系(共)重合体の製造方法。
【請求項9】
前記アリルメタアリルアミン系化合物(i)を含有する単量体原料を重合する工程で得られたアリルメタアリルアミン系(共)重合体をイオン交換樹脂で処理し、カウンターイオンを変更する工程、を更に有する、請求項5から8のいずれか一項に記載の、アリルメタアリルアミン系(共)重合体の製造方法。
【請求項10】
前記アリルメタアリルアミン系化合物(i)を含有する単量体原料を重合する工程で得られたアリルメタアリルアミン系(共)重合体から、化合物RX、化合物RX、又はXを除去する工程、を更に有する、請求項5から8のいずれか一項に記載の、アリルメタアリルアミン系(共)重合体の製造方法。
【請求項11】
請求項1から4のいずれか一項に記載のアリルメタアリルアミン系(共)重合体を含有する、めっき液、金属材料処理剤、塗料、インク定着剤、又は染色繊維処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリルメタアリルアミン系化合物から導かれる(共)重合体、その製造方法、及びその用途に関し、より具体的には、特定の構造を有するアリルメタアリルアミン系化合物を用いることで、高い重合性と高い全体の有機性とを両立することができる、アリルメタアリルアミン系(共)重合体及びその製造方法、並びにこれらの特性を生かした用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジアリルジアルキルアンモニウムクロライド、ジアリルアルキルアミン塩酸塩等のアルキル基を有するジアリルアミン系化合物(ジアリルアミン骨格を有する化合物)は、例えば二酸化イオウと比較的簡単に共重合することができ、その様な共重合体は、工業的に製造され、水溶性塗料や染色物の染色堅牢度向上剤のファインケミカル分野で使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この様なアルキル基を有するジアリルアミン系(共)重合体の性能を変化させる方法としては、アルキル基の鎖長を変化させる方法、第三成分を共重合させる方法、付加塩を変更する方法がある。
アルキル基の鎖長を変化させる方法は、主にポリマー全体の有機性を向上させることを目的として行われるが、鎖長を伸ばすと極端に重合性が悪化する一方で、大きな性能向上は見られない。これは、電気化学的に影響を与えるアンモニウム基の反応性を延長されたアルキル基が阻害してしまう事が原因と考えられる。
第三成分を共重合させる方法では、共重合性に優れるモノマーが少ない上に、例えば二酸化硫黄を共重合した場合にはスルホニル基の電子吸引性によって、合成した高分子量体の解重合が起こり易く、安定性が悪くなる場合がある。また、付加塩の選択肢は限られており、その変更のみによる性能の変化には、一定の限界があった。
【0004】
上述の、アルキル基の鎖長を変化させる方法に類似した方法であって、ポリマー全体の有機性を向上させる別法として、ジアリルアミン構造を構成するアリル基に代えて、より炭素数の多いメタアリル基等を使用することも試みられている。
例えば特許文献1では、ジメタアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化イオウの共重合体の合成が試みられた。しかし、例えば特許文献1の実施例18における収率が49%に留まっていることからも明らかなように、同物質は重合性が著しく悪く、実際の生産プロセスで求められるような高い収率で反応させることは困難であり、工業的合成は非現実的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭43-5891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景技術の限界に鑑み、本発明は、ジアリルアミン系(共)重合体において、その性能の変化、とりわけそのポリマー全体の有機性を制御することと、実際の生産プロセスで求められる高い収率での重合反応を実現することの両立を、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、単量体のジアリルアミン構造を構成するアリル基のうち一方のみをメタアリル基で置き換えること、すなわちアリル基一つとメタアリル基一つを持つ非対称アンモニウム塩を単量体として用いることにより、(共)重合体の性能変化、とりわけそのポリマー全体の有機性の制御と、高い収率での重合反応とを両立できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本願第1及び第2発明は、それぞれ下記[1]及び[2]に関する。
[1]
下記一般式(1)で表される構造のアリルメタアリルアミン系化合物(i)から導かれる構成単位(I)を有するアリルメタアリルアミン系(共)重合体
【化1】

(但し、上記式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、Xはカウンターイオンである。)。

[2]
下記一般式(Ib)で表される構造の構成単位(II)を有するアリルメタアリルアミン系(共)重合体
【化2】

(但し、上記式(Ib)中、Rは、水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、nは1以上の整数である。)。
【0008】
以下、[3]から[5]は、それぞれ本願第1及び第2発明の好ましい実施形態の一つである。
[3]
重量平均分子量Mwが、1000~1000000である、[1]又は[2]に記載のアリルメタアリルアミン系(共)重合体。
[4]
全構成単位中に占める、構成単位(I)及び/又は構成単位(II)に該当する構成単位の割合が、合計で5モル%以上である、[1]から[3]のいずれか一項に記載の、アリルメタアリルアミン系(共)重合体。
[5]
更に、二酸化硫黄から導かれる構成単位(III)を有する、[1]から[4]のいずれか一項に記載の、アリルメタアリルアミン系(共)重合体。
【0009】
また、本願第3発明は、下記[6]に関する。
[6]
下記一般式(1)で表される構造のアリルメタアリルアミン系化合物(i)を含有する単量体原料を(共)重合する工程を有する、アリルメタアリルアミン系(共)重合体の製造方法
【化3】

(但し、上記式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、Xはカウンターイオンである。)。
【0010】
以下[7]から[11]は、それぞれ本願第3発明の好ましい実施形態の一つであり、以下[12]は、本願第1及び第2発明の好ましい実施形態の一つである。
[7]
前記単量体原料に占めるアリルメタアリルアミン系化合物(i)の割合が、5モル%以上である、[6]に記載の、アリルメタアリルアミン系(共)重合体の製造方法。
[8]
前記アリルメタアリルアミン系化合物(i)を含有する単量体原料を重合する工程における重合度が、5~10000である、[6]又は[7]に記載の、アリルメタアリルアミン系(共)重合体の製造方法。
[9]
前記アリルメタアリルアミン系化合物(i)を含有する単量体原料を重合する工程における収率が、60%以上である、[6]から[8]のいずれか一項に記載の、アリルメタアリルアミン系(共)重合体の製造方法。
[10]
前記アリルメタアリルアミン系化合物(i)を含有する単量体原料を重合する工程で得られたアリルメタアリルアミン系(共)重合体をイオン交換樹脂で処理し、カウンターイオンを変更する工程、を更に有する、[6]から[9]のいずれか一項に記載の、アリルメタアリルアミン系(共)重合体の製造方法。
[11]
前記アリルメタアリルアミン系化合物(i)を含有する単量体原料を重合する工程で得られたアリルメタアリルアミン系(共)重合体から、化合物RX、化合物RX、又はXを除去する工程、を更に有する、[6]から[9]のいずれか一項に記載の、アリルメタアリルアミン系(共)重合体の製造方法。
[12]
[1]から[5]のいずれか一項に記載のアリルメタアリルアミン系(共)重合体を含有する、めっき液、金属材料処理剤、塗料、インク定着剤、又は染色繊維処理剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ジアリルアミン系(共)重合体において、その性能の変化、とりわけそのポリマー全体の有機性を制御することと、高い重合収率での重合反応とを、従来技術の限界を超えた高いレベルで両立することができる。例えば、実用上十分な高い重合収率での重合性を維持しながら、得られた(共)重合体のポリマー全体の有機性を向上することができるので、めっき液、金属材料処理剤、塗料、染色繊維処理剤等における添加剤等の、ポリマー全体の有機性が重要な用途において好適に使用することができるジアリルアミン系(共)重合体を、高い生産性及び重合収率で重合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例において得られた共重合体のGPCチャートである。
図2】本発明の一実施例において得られた共重合体の赤外分光スペクトル図である。
図3】本発明の一実施例において得られた共重合体のGPCチャートである。
図4】本発明の一実施例において得られた共重合体の赤外分光スペクトル図である。
図5】本発明の一実施例において得られた重合体のGPCチャートである。
図6】本発明の一実施例において得られた重合体の赤外分光スペクトル図である。
図7】本発明の一実施例において得られた共重合体のGPCチャートである。
図8】本発明の一実施例において得られた共重合体の赤外分光スペクトル図である。
図9】本発明の一実施例において得られた共重合体のGPCチャートである。
図10】本発明の一実施例において得られた共重合体のGPCチャートである。
図11】本発明の一実施例において得られた共重合体の赤外分光スペクトル図である。
図12】本発明の一実施例において得られた共重合体のGPCチャートである。
図13】本発明の一実施例において得られた共重合体の赤外分光スペクトル図である。
図14】本発明の一実施例において得られた共重合体のGPCチャートである。
図15】本発明の一実施例において得られた共重合体の赤外分光スペクトル図である。
図16】本発明の一実施例において得られた共重合体の赤外分光スペクトル図である。
図17】一比較例の結果物のGPCチャートである。
図18】一比較例において得られた共重合体のGPCチャートである。
図19】一比較例において得られた共重合体の赤外分光スペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
構成単位(I)
本願第1発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体は、下記一般式(1)で表される構造のアリルメタアリルアミン系化合物(i)から導かれる構成単位(I)を有する、アリルメタアリルアミン系(共)重合体である。
【化4】

(但し、上記式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、Xはカウンターイオンである。)。
【0014】
本願第1発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体における、「(共)重合体」とは、単独重合体であっても共重合体であってもよい旨を示すものであり、したがって本願第1発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体は、上記一般式(1)で表される構造のアリルメタアリルアミン系化合物(i)から導かれる構成単位(I)のみで構成されていてもよく、あるいは構成単位(I)に加えて、他の構造を有する構成単位、例えば二酸化硫黄から導かれる構成単位(III)を更に有していてもよい。
【0015】
(i)アリルメタアリルアミン系化合物
本願第1発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体の全部又は一部を構成する構成単位(I)は、下記一般式(1)で表される構造のアリルメタアリルアミン系化合物(i)から導かれる。
【化5】

上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素又は炭素数1から2のアルキル基である。炭素数1から2のアルキル基としては、メチル基、及びエチル基を例示することができる。
及びRがそれぞれ水素又は炭素数1から2のアルキル基という比較的小さな基であることによって、R及びRがアンモニウム基の電気化学的な反応性を阻害することが抑制され、本願第1発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体を、実用上十分な高い重合収率で重合することができる。
一方、ポリマー全体の有機性を向上する観点からは、R及びRは、上記本願第1発明の条件を満たしアンモニウム基の電気化学的な反応性を阻害されない限りにおいて、大きな基であることが好ましく、R及びRの両方が、メチル基またはエチル基であることが特に好ましい。
一方、カチオン化度の調整、二級アミンの求電子物質に対する反応性、高カチオン密度等の観点からは、R及びRの両方が水素であることが好ましい。

【0016】
上記一般式(1)中、Xはカウンターイオンである。Xは、アニオンであればよく、それ以外の制限は存在しないが、有機酸又は無機酸由来のアニオンであることが好ましい。例えば、Cl、Br、I等のハロゲンイオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、プロパンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン、メチルサルフェートイオン、エチルサルフェートイオン、プロピルサルフェートイオン等のアルキルサルフェートイオン、酢酸イオン、水酸化物イオン(OH)等を好ましく用いることができる。所望のカウンターイオンを有するアリルメタアリルアミン系化合物(i)を重合に供してもよいし、重合後に、カウンターイオンを変更する反応を行って、所望のカウンターイオンを導入してもよい。
【0017】
上記アリルメタアリルアミン系化合物(i)は、上記一般式(1)に示すように、窒素原子に結合した1のアリル基と、1のメタアリル基とを有する。1のアリル基と1のメタアリル基とを有することで、2のアリル基を有するジアリルアミン系化合物を用いる従来技術のジアリルアミン系(共)重合体と比較して、ポリマー全体の有機性を向上することができる。
一方で、1のアリル基と1のメタアリル基とを有することで、2のメタアリル基を有するジメタアリルアミン系化合物を用いる、他の従来技術のジアリルアミン系(共)重合体と比較して、実用上十分な高い重合収率で重合を行うことができる。
【0018】
構成単位(II)
本願第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体は、下記一般式(Ib)で表される構造の構成単位(II)を有するものである。
【化6】

(但し、上記式(Ib)中、Rは、水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、nは1以上の整数である。)。
本願第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体における、「(共)重合体」も、単独重合体であっても共重合体であってもよい旨を示すものであり、したがって本願第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体は、上記一般式(Ib)で表される構造の構成単位(II)のみで構成されていてもよく、あるいは構成単位(II)に加えて、他の構造を有する構成単位、例えば二酸化硫黄から導かれる構成単位(III)を更に有していてもよい。
【0019】
ポリマー全体の有機性を向上する観点からは、上記式(Ib)中のRは、上記の条件を満たしアミノ基の電気化学的な反応性を阻害されない限りにおいて、大きな基であることが好ましく、Rがメチル基またはエチル基であることが特に好ましい。
一方、カチオン化度の調整、二級アミンの求電子物質に対する反応性、高カチオン密度等の観点からは、Rが水素であることが好ましい。より具体的には、下記式(Ib’)で表される構造を有することが特に好ましい。
【化7】

(但し、上記式(Ib’)中、n’は1以上の整数である。)
【0020】
上記一般式(Ib)で表される構造の構成単位(II)は、本願第1発明中の構成単位(I)から化合物RX、又はRXを除去することで製造することが好ましい。しかし、本願第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体の製造方法はこれに限定されるものではなく、上記一般式(Ib)で表される構造の構成単位(II)を有する限りにおいて、当該アリルメタアリルアミン系(共)重合体は、本願第2発明の範囲内である。
【0021】
本願第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体は、上記一般式(Ib)で表される構造の構成単位(II)を有し、当該構成単位(II)は、主鎖に結合したメチル基を有することで、その様なメチル基を有さない従来技術のジアリルアミン系(共)重合体と比較して、ポリマー全体の有機性を向上することができる。
更に、本願第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体は、上記一般式(Ib)に示すように第二級又は第三級アミン基を有するので、本願第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体に種々の酸を加えることで、所望の付加塩を有するアリルメタアリルアミン系(共)重合体を、高い自由度で、比較的容易に合成することができる。
【0022】
その他の構成単位
本願第1及び第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体は、上記一般式(1)で表される構造のアリルメタアリルアミン系化合物(i)から導かれる構成単位(I)、及び/又は上記一般式(Ib)で表される構造の構成単位(II)に加えて、他の構造を有する構成単位を有していてもよい。
他の構造を有する構成単位には特に限定はなく、本願第1及び第2発明の目的及び所望の用途に反しない範囲で、上記アリルメタアリルアミン系化合物(i)と共重合可能な他の単量体を適宜使用して、他の構造を有する構成単位を導入することができる。適切な他の構造を有する構成単位を導入することで、本実施形態のアリルメタアリルアミン系共重合体の重合性を更に向上し、あるいは該共重合体の特性をある程度制御することができる。
上記アリルメタアリルアミン系化合物(i)と共重合可能な他の単量体の代表的なものの例として、二酸化硫黄、上記アリルメタアリルアミン系化合物(i)以外のジアリルアミン系化合物やその塩をはじめとするカチオン性単量体、ジカルボン酸、不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸やその塩をはじめとするアニオン性単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体等を例示することができるが、これらには限定されない。
【0023】
上記アリルメタアリルアミン系化合物(i)以外のジアリルアミン系化合物やその塩としては、ジアリルジメチルアンモニウム、ジアリルメチルエチルアンモニウム、ジアリルジエチルアンモニウム等の4級アンモニウム、ジアリルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリルエチルアミン、又はジアリルプロピルアミンのスルホン酸塩、又はアルキルサルフェート塩を例示することができる。また、ジアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェート、ジアリルジエチルアンモニウムメチルサルフェート、ジアリルジメチルアンモニウムエチルサルフェート、ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェート、ジアリルジエチルアンモニウムエチルサルフェート、ジアリルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリルエチルアミン、及びジアリルプロピルアミン等をも例示することができる。
【0024】
上記ジカルボン酸やその塩としては、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びメチレンマロン酸、並びにこれらのカルボキシル基中の水素の全部又は一部が、Na、K、NH、1/2Ca、1/2Mg、1/2Fe、1/3Al、及び1/3Feから選ばれる少なくとも1種で置換された化合物を例示することができる。上記不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸やその塩としては、(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アリルスルホン酸、並びにこれらのNa塩等の金属塩を例示することができる。
【0025】
本願第1及び第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体が、上記一般式(1)で表される構造のアリルメタアリルアミン系化合物(i)から導かれる構成単位(I)、及び/又は上記一般式(Ib)で表される構造の構成単位(II)、に加えて、他の構造を有する構成単位を有する実施形態における、構成単位(I)、及び/又は構成単位(II)の割合には特に制限はないが、本願第1及び第2発明の効果、特にポリマー全体の有機性の高さに由来する効果を一層顕著に実現する観点からは、構成単位(I)、及び/又は構成単位(II)に該当する構成単位の割合が合計で全構成単位の5モル%以上を占めることが好ましい。なお、当該割合の計算にあたっては、上記式(Ib)中nが1を超える場合には、構成単位(II)のモル数をn倍して計算する。
構成単位(I)、及び構成単位(II)が、本実施形態のアリルメタアリルアミン系(共)重合体の全構成単位に占める合計割合は、5モル%以上であることがより好ましく、10モル%以上であることが特に好ましい。
構成単位(I)、及び構成単位(II)が、本実施形態のアリルメタアリルアミン系(共)重合体の全構成単位に占める合計割合には特に上限は存在しないが、例えば90モル%以下であると、重合がより容易になるなどの点で好ましい。
【0026】
(III)二酸化硫黄から導かれる構成単位
構成単位(I)以外の構造を有する構成単位としては、二酸化硫黄から導かれる構成単位(III)が、特に好ましい。
二酸化硫黄は、上記一般式(1)で表される構造のアリルメタアリルアミン系化合物(i)と比較的共重合しやすいため、二酸化硫黄から導かれる構成単位(III)を導入することで、本実施形態のアリルメタアリルアミン系共重合体を比較的容易に、あるいは比較的狭い分子量分布で重合することができる。
本実施形態のアリルメタアリルアミン系(共)重合体中の、構成単位(III)は、下記構造式(2)で表される構造を有する二酸化硫黄から導かれる。
【化8】
【0027】
二酸化硫黄から導かれる構成単位(III)が、本実施形態のアリルメタアリルアミン系(共)重合体の全構成単位に占める割合は、10モル%以上であることが好ましい。特に、二酸化硫黄から導かれる構成単位(III)の割合が、40モル%以上であることによって、本実施形態のアリルメタアリルアミン系共重合体を比較的容易に、かつ比較的狭い分子量分布で重合することができる。
二酸化硫黄から導かれる構成単位(III)の割合は、10モル%以上であることがより好ましく、40モル%以上であることが特に好ましい。
二酸化硫黄から導かれる構成単位(III)の割合には特に上限はないが、本願第1及び第2発明の効果を実現するために構成単位(I)が存在する余地を確保する観点から、通常60モル%以下であり、好ましくは50モル%以下である。
【0028】
本実施形態における、アリルメタアリルアミン系化合物(i)から導かれる構成単位(I)、及び/又は上記一般式(Ib)で表される構造の構成単位(II)と、二酸化硫黄から導かれる構成単位(III)との割合には特に制限はなく、共重合可能な限りにおいて、任意の割合とすることができる。共重合体の高分子量化の観点からは、両構成単位の数は大きくは異ならないことが好ましく、例えばアリルメタアリルアミン系化合物(i)から導かれる構成単位(I)、及び/又は上記一般式(Ib)で表される構造の構成単位(II)の合計と、二酸化硫黄から導かれる構成単位(III)との比が、0.7:1から1.3:1であることが好ましい。当該比は、より好ましくは0.8:1から1.2:1であり、特に好ましくは、0.9:1から1.1:1である。
【0029】
本願第1及び第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体は、GPC測定により得られる重量平均分子量Mwが1000以上、又は重合度が5以上であることが好ましい。「又は」とあるのは、重量平均分子量、及び重合度の間には相互に密接な関連があるため、必ずしもこれらの物性の全てを評価する必要は無く、いずれか一つを評価すれば足る場合があるためである。
【0030】
本願第1及び第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体の重量平均分子量Mwには、特に制限はないが、高い収率で定量的な重合反応を行うことができる、という本願第1及び第2発明の効果を活用するため、重量平均分子量Mwが1000以上であることが好ましい。ポリマー全体の有機性を向上するための試みとして、ジアリルアミン系化合物におけるアルキル基の鎖長を延長し、あるいはジアリルアミン系化合物としてジメタアリルジメチルアンモニウムクロライドを使用した、従来技術のジアリルアミン系(共)重合体においては、重合性に劣ることから、1000以上の重量平均分子量Mwを得ることは困難であった。
本願第1及び第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体の重量平均分子量Mwは、1000~1000000であることがより好ましく、1000~500000であることが特に好ましく、1000~350000であることが更に好ましい。
本願第1及び第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体の重量平均分子量Mwは、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC法)により測定することができ、より具体的には、例えば本願実施例に記載の方法で測定することができる。
【0031】
本願第1及び第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体の重合度にも特に制限はないが、重量平均分子量Mwと同様に、高い収率で定量的な重合反応を行うことができる、という本願第1及び第2発明の効果を活用するため、重合度が5以上であることが好ましい。ポリマー全体の有機性を向上するための試みとして、ジアリルアミン系化合物におけるアルキル基の鎖長を延長し、あるいはジアリルアミン系化合物としてジメタアリルジメチルアンモニウムクロライドを使用した、従来技術のジアリルアミン系(共)重合体においては、重合性に劣ることから、5以上の重合度を得ることは困難であった。
本願第1及び第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体の重合度は、5~10000であることがより好ましく、5~7000であることが更に好ましく、5~5000であることが特に好ましい。
本願第1及び第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体の重合度は、上記GPC法で得られた重量平均分子量から、以下の計算式で求めることできる。
重合度=重量平均分子量/ユニット分子量
ここで、ユニット分子量(ユニットM)とは、高分子における繰り返し単位1単位当たりの分子量である。高分子が共重合体である場合、すなわち当該高分子が、異なる単量体から導かれる2種以上の構成単位を有する場合には、各構成単位の分子量と割合(総計で1となる)とを乗じてからこれらを積算した加重平均を、ユニット分子量とする。
重量平均分子量をこのユニット分子量で除することで、重合度(平均的な繰り返し単位の数)を得ることができる。
【0032】
本願第1及び第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体の製造方法には特に制限は無いが、以下に詳述する本願第3発明の製造方法によって製造することが好ましい。
【0033】
(アリルメタアリルアミン系(共)重合体の製造方法)
本願第3発明の製造方法は、下記一般式(1)で表される構造のアリルメタアリルアミン系化合物(i)を含有する単量体原料を重合する工程を有する、アリルメタアリルアミン系(共)重合体の製造方法である。
【化9】

(但し、上記式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、Xはカウンターイオンである。)。
本願第3発明によれば、本願第1及び第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体をはじめとする、ポリマー全体の有機性の高いアリルメタアリルアミン系(共)重合体を、高い重合収率で重合することができる。
【0034】
本願第3発明の製造方法における上記一般式(1)で表される構造のアリルメタアリルアミン系化合物(i)は、本願第1発明に関連して既に説明したものと同一である。
本願第3発明の製造方法において重合される単量体原料は、上記アリルメタアリルアミン系化合物(i)を含有するものである。したがって、当該単量体原料は、上記アリルメタアリルアミン系化合物(i)のみで構成されていてもよく、上記アリルメタアリルアミン系化合物(i)に加えて、共重合可能な他の単量体をも含有していてもよい。ここで、共重合可能な他の単量体は、本願第1及び第2発明に関連して、上記「その他の構成単位」において説明したものと同様である。
本願第3発明においても、共重合可能な他の単量体としては、二酸化硫黄を用いることが好ましい。
【0035】
単量体原料が、アリルメタアリルアミン系化合物(i)に加えて、共重合可能な他の単量体をも含有している場合、該単量体原料に占めるアリルメタアリルアミン系化合物(i)の割合は、5モル%以上であることが好ましく、10モル%以上であることがより好ましい。
単量体原料に占めるアリルメタアリルアミン系化合物(i)の割合は、10モル%以上であることで、アリルメタアリルアミン系化合物(i)から導かれる構成単位(I)の割合が10モル%以上である、好ましいアリルメタアリルアミン系(共)重合体を、一層効率的に製造することができる。
【0036】
本願第3発明においては、前記アリルメタアリルアミン系化合物(i)を含有する単量体原料を重合する工程における重合度が、5以上であることが好ましい。当該工程における重合度が5以上であることで、高い収率で定量的な重合反応を行うことができる、という本発明の効果を活用することができる。
上記工程における重合度は、5~10000であることがより好ましく、5~7000であることが更に好ましく、5~5000であることが特に好ましい。
【0037】
本願第3発明においては、前記アリルメタアリルアミン系化合物(i)を含有する単量体原料を重合する工程における収率が、60%以上であることが好ましい。当該工程における収率が60%以上であることで、本願第1及び第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体をはじめとする、ポリマー全体の有機性の高いアリルメタアリルアミン系(共)重合体を、一層効率よく製造することができる。
従来技術のジアリルアミン系(共)重合体においては、ポリマー全体の有機性の高いジアリルアミン系(共)重合体を、この様に高い収率で製造することは困難であった。
本願第3発明においては、前記アリルメタアリルアミン系化合物(i)を含有する単量体原料を重合する工程における収率が、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0038】
本願第3発明においては、前記アリルメタアリルアミン系化合物(i)を含有する単量体原料を重合する工程の諸条件、すなわち、溶媒、単量体濃度、温度、圧力、時間等は、従来のジアリルアミン系(共)重合体の製造に用いられていたものを適用することが可能であり、これらから適宜採用することができる。
【0039】
重合時の溶媒としては、水などの極性溶媒が好ましく用いられる。水以外の極性溶媒としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸などの無機酸またはその水溶液、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸などの有機酸またはその水溶液、アルコール類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、さらには塩化亜鉛、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどの無機塩の水溶液などが挙げられるが、これらには限定されない。
単量体の濃度は、単量体や溶媒、分散媒の種類によって異なるが、通常5~95質量%であり、10~70質量%が好ましい。
【0040】
本願第3発明の製造方法においては、重合開始剤を用いることが好ましい。好ましい重合開始剤の例としては、過硫酸アンモニウム、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン),2’-アゾビス(4-メトキシ-2、4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル) 、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピネート)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等を挙げることができる。
重合開始剤の使用量には特に制限はなく、反応速度、反応の安定性などの観点から適宜設定することができるが、単量体の総質量に対して0.1~30質量%使用することが好ましく、1~10質量%使用することが特に好ましい。
【0041】
重合温度は一般的には0~100℃、好ましくは5~80℃であり、重合時間は一般的には20~150時間、好ましくは30~100時間である。重合雰囲気は、大気中でも重合性に大きな問題を生じないが、窒素などの不活性ガスの雰囲気で行なうこともできる。
【0042】
上記アリルメタアリルアミン系化合物(i)を含有する単量体原料を(共)重合する工程の結果得られた(共)重合体に、必要に応じて分離、洗浄処理を行い、該(共)重合体をアリルメタアリルアミン系(共)重合体として回収する。該(共)重合体は、固形分として回収してもよく、溶液または分散液として回収してもよい。
【0043】
本願第1発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体、及び本願第3発明の方法により得られるアリルメタアリルアミン系(共)重合体のカウンターイオンを変更することで、目的に応じた所望の付加塩を製造してもよい。
本願第1発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体、及び本願第3発明の方法により得られるアリルメタアリルアミン系(共)重合体は、製造上の便宜から塩酸塩として得られることが多いが、例えばこのアリルメタアリルアミン系(共)重合体をイオン交換樹脂で処理することで、塩素イオンを水酸化物イオンで置換することができる。この置換後のアリルメタアリルアミン系(共)重合体に種々の酸を加える事で、所望の付加塩を有するアリルメタアリルアミン系(共)重合体を容易に合成する事ができる。この付加塩の変更を、本発明の効果であるポリマー全体の有機性の制御と組み合わせることで、従来技術の限界を超えて、広範な特性を有するアリルメタアリルアミン系(共)重合体を提供することができる。
【0044】
本願第3発明の製造方法においては、前記アリルメタアリルアミン系化合物(i)を含有する単量体原料を重合する工程で得られたアリルメタアリルアミン系(共)重合体から、化合物RX、化合物RX、又はXを除去する工程、を更に有することができる。
例えば、前記アリルメタアリルアミン系化合物(i)を含有する単量体原料を重合する工程で得られたアリルメタアリルアミン系(共)重合体が、下記一般式(Ia)に示す構造を有する場合、当該(共)重合体から、RX、又はRXを除去することで、下記一般式(Ib)に示す構造を有する、本願第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体を得ることができる。
【化10】

(上記式(Ia)中、R及びRは、それぞれ独立に水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、Xはカウンターイオンであり、mは1以上の整数である。)
【化11】

(但し、上記式(Ib)中、Rは、水素又は炭素数1から2のアルキル基であり、nは1以上の整数である。)。
当該工程を実施することで、本願第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体を効率よく製造することができる。こうして得られた、本願第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体は、上記一般式(Ib)に示すように第二級又は第三級アミン基を有するので、このアリルメタアリルアミン系(共)重合体に種々の酸を加えることで、所望の付加塩を有するアリルメタアリルアミン系(共)重合体を、高い自由度で、比較的容易に合成することができる。
アリルメタアリルアミン系(共)重合体からの化合物RX、化合物RX、又はXの除去は、当該技術分野において従来知られた方法で適宜実施することができるが、例えばXと塩を形成しうる金属等の水酸化物の水溶液と反応させた後に、形成された塩を水洗して除去する方法等を好ましく用いることができる。
【0045】
本願第1及び第2発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体、及び本願第3発明の方法により得られるアリルメタアリルアミン系(共)重合体は、ポリマー全体の有機性が高く、かつ十分な分子量を有する一方で、アンモニウム基の反応性が十分に維持されている。したがって、該アリルメタアリルアミン系(共)重合体は、有機物との親和性と、金属等の無機物との反応性とが高いレベルで両立しており、従来からジアリルアミン系の(共)重合体を使用していた各用途において一層好適に使用することが可能である。特に、金属イオンを有機物中に安定的に分散させる、金属表面に安定的に有機層を形成する等の機能が求められる、めっき液、金属材料処理剤、塗料、インク定着剤、又は染色繊維処理剤等への添加材として、特に好適に使用することができる。
【実施例
【0046】
以下、実施例を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、いかなる意味においても、これらの実施例により限定されるものではない。
【0047】
各実施例/比較例、で得られた共重合体の重量平均分子量および重合収率の測定方法は以下のとおりである。
(i)共重合体の重量平均分子量
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、日立L-6000型高速液体クロマトグラフを使用し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC法)によって測定した。
溶離液流路ポンプは日立L-6000、検出器はショーデックスRI-101示差屈折率検出器、カラムはショーデックスアサヒパックの水系ゲル濾過タイプのGS-220HQ(排除限界分子量3,000)とGS-620HQ(排除限界分子量200万)とを直列に接続したものを用いた。サンプルは溶離液で0.5g/100mlの濃度に調製し、20μlを用いた。溶離液には、0.4モル/リットルの塩化ナトリウム水溶液を使用した。カラム温度は30℃で、流速は1.0ml/分で実施した。標準物質として、分子量106、194、440、600、1470、4100、7100、10300、12600、23000などのポリエチレングリコールを用いて較正曲線を求め、その較正曲線を基に共重合体の重量平均分子量(Mw)を求めた。
(ii)共重合体の重合収率
GPC法により得られたピーク面積比により求めた。
【0048】
(実施例1)
(アリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライドの合成)
攪拌機、温度計、ガラス栓を備えた300mlの四つ口フラスコにジメチルアリルアミン1モルと希釈水102.06gを仕込み40℃に昇温した。メタアリルクロライド0.95モルを3.5時間かけて滴下した。滴下中は50℃~55℃に温度を維持した。滴下終了後60℃に昇温し一晩反応を継続した。25%の水酸化ナトリウム水溶液でpHを10.56に調整後、エバポレーターで未反応ジメチルアリルアミンを留去した。希釈水90gを加え274.16gの目的物を得た。リンタングステン酸法によるアンモニウム塩の定量では、濃度:62.84%、分子量:173.68(理論分子量:175.70)であった。電位差滴定では残存アミンは不検出であった。
【0049】
(アリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体の合成-1)
攪拌機、温度計、ガラス栓を備えた100mlの三つ口フラスコに、上記で合成したアリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライド0.12モルと希釈水6.71gを仕込み、30℃以下で二酸化イオウを0.12モル仕込んだ後、26℃で過硫酸アンモニウムをモノマー合計に対し0.2モル%添加し重合を開始した。25~30℃に維持しながら1時間毎に0.3、0.5、0.5モル%(計1.5モル%)の過硫酸アンモニウムを更に添加した。添加1時間後に60℃に昇温し、一晩反応を継続した。希釈水50gを加え重合を終了した。GPC収率:98.3%、Mw:3,780(Mw/Mn:1.39)であった。図1に、GPCチャートを示す。
固形分を測定し固形分量:30.09%の無色溶液を、93.8g得た(なお、その後に付加塩変更等を行う場合には、適宜濃度調整を行なった。)。イソプロピルアルコール再沈物の赤外分光スペクトルを、図2に示す。赤外分光スペクトル中に、スルホニル基由来の1,300、1,125cm-1付近の吸収が確認できた。
高い重合収率でアリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体が得られたことが、確認できた。
【0050】
(実施例2)
(アリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体の合成-2)
攪拌機、温度計、ガラス栓を備えた100mlの三つ口フラスコに、実施例1で合成したアリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライド0.12モルと希釈水3.02gと35%塩酸0.012モルを仕込み、30℃以下で二酸化イオウを0.12モル仕込んだ後、25℃で過硫酸アンモニウムをモノマー合計に対し0.2モル%添加し重合を開始した。25~30℃に維持しながら1時間毎に0.3、0.5、0.5モル%(計1.5モル%)の過硫酸アンモニウムを更に添加した。添加24時間後に60℃に昇温し、一晩反応を継続した。希釈水50gを加え重合を終了した。GPC収率:100%、Mw:14,113(Mw/Mn:1.43)であった。図3に、GPCチャートを示す。
固形分を測定し固形分量:31.76%の無色溶液を、92.6g得た。イソプロピルアルコール再沈物の赤外分光スペクトルを、図4に示す。赤外分光スペクトル中に、スルホニル基由来の1,300、1,125cm-1付近の吸収が確認できた。
高い重合収率でアリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体が得られたことが、確認できた。
【0051】
(実施例3)
(アリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体)
攪拌機、温度計、冷却管を備えた100mlの三つ口フラスコに、実施例1で合成したアリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライド0.3モルと希釈水3.97gを仕込んだ後、60℃に昇温した。内温55℃で重合開始剤V-50(和光純薬工業株式会社製、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)をモノマー合計に対し0.2モル%ずつ2回添加し、一晩重合を継続した。2日目は粘性が出た為、重合開始剤V-50を0.3モル%ずつ3回(累計1.3モル%)添加する際に希釈水を各1g加え懸濁状態で添加し更に一晩重合を継続した。その間重合温度は50~60℃に維持した。GPC収率:96.0%、Mw:31,244(Mw/Mn:2.49)であった。図5に、GPCチャートを示す。
固形分濃度を調整し固形分量:20.28%のほぼ無色の溶液を、265.15g得た。アセトン再沈物の赤外分光スペクトルを、図6に示す。
高い重合収率でアリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライドの重合体が得られたことが、確認できた。
【0052】
(実施例4)
(アリルメタアリルジエチルアンモニウムクロライドの合成)
攪拌機、温度計、ガラス栓を備えた300mlの四つ口フラスコに、ジエチルアリルアミン0.8モルと希釈水94.72gを仕込み、50℃に昇温した。メタアリルクロライド0.76モルを2時間かけて滴下した。滴下中は50℃~55℃に温度を維持した。滴下終了後60℃、70℃、85℃、90℃と段階的に昇温し、三日間反応を継続した。分液ロートで下層を分液し、25%NaOH水溶液でpH11に調整し、エバポレーターで未反応ジエチルアリルアミンを留去した。適宜希釈し析出したNaClをデカント及び、桐山ロート(7ミクロン)でろ別し、pH7.7の淡褐色溶液を、39.76g(歩留18.9%)得た。リンタングステン酸法によるアンモニウム塩の定量では、濃度:73.77%、分子量:202.57(理論分子量:203.75)であった。電位差滴定では残存アミンは不検出であった。
【0053】
(アリルメタアリルジエチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体の合成)
攪拌機、温度計、ガラス栓を備えた100mlの三つ口フラスコに、上記で合成したアリルメタアリルジエチルアンモニウムクロライド0.1モルと希釈水10.61gを仕込み、30℃以下で二酸化イオウを0.1モル仕込んだ後、21℃で過硫酸アンモニウムをモノマー合計に対し0.2モル%添加し重合を開始した。25~30℃に維持しながら1時間毎に0.3、0.5、0.5モル%(計1.5モル%)の過硫酸アンモニウムを更に添加した。添加1時間後に60℃に昇温し、一晩反応を継続した。希釈水50gを加えて重合を終了した。GPC収率:98.5%、Mw:3,033(Mw/Mn:1.42)であった。図7に、GPCチャートを示す。
固形分を測定し固形分量:29.28%の溶液を、91.3g得た。イソプロピルアルコール再沈物の赤外分光スペクトルを、図8に示す。赤外分光スペクトル中に、スルホニル基由来の1,300、1,125cm-1付近の吸収が確認できた。
高い重合収率でアリルメタアリルジエチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体が得られたことが、確認できた。
【0054】
(実施例5)
(アリルメタアリルジエチルアンモニウムクロライドとアクリルアミドの共重合体の合成)
ガラス栓を備えた20mlの試験管にアリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライド0.002モルと希釈水4.65gとアクリルアミド0.018molを仕込んだ。過硫酸アンモニウムをモノマーに対し1.0mol%添加した。添加直後に温浴で50℃に昇温し重合を開始した。重合はそのまま一晩継続した。重合終了後GPC測定を行い、GPC収率98.3%、MW334,871(Mw/Mn:14.45)であった。図9に、GPCチャートを示す。
高い重合収率で、高分子量のアリルメタアリルジエチルアンモニウムクロライドとアクリルアミドの共重合体が得られたことが、確認できた。
【0055】
(実施例6)
(アリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体の付加塩変更)
イオン交換樹脂(DIAION SA10AOH(三菱化学株式会社製))80mlをΦ20mm×300cmガラス製カラムに充填しイオン交換水で数回洗浄した。
実施例1で得られたアリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体サンプル(固形分:20.70%)40gを、加圧して上記カラムを通過させ、30分かけて処理(空間速度:1)し、処理済みサンプル37.61gを得た。AQFによる前処理を経たイオンクロマトグラフによる陰イオン分析ではClの濃度は261.44ppm(10倍希釈測定)であった。また、コロイド滴定によるアリルメタアリルジメチルアンモニウムイオンの濃度は10.14%であった。それらの濃度を基に、それぞれの分子量でmol換算し、次式によりOH置換率を求めたところ、OH置換率は、98.98%であった。

(式) OH置換率=((アリルメタアリルジメチルアンモニウムイオンの濃度:mol)-(Clの濃度:mol))/(アリルメタアリルジメチルアンモニウムイオンの濃度:mol)

大半のClが、OHで置換されたことが確認された。このポリマーに種々の酸を加えることで、付加塩の異なる重合体を容易に合成する事が出来る。
【0056】
(実施例7)
(アリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体の付加塩変更)
イオン交換樹脂(DIAION SA10AOH(三菱化学株式会社製))80mlをΦ20mm×300cmガラス製カラムに充填しイオン交換水で数回洗浄した。
実施例3で得られたアリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体サンプル(固形分:20.28%)40gを加圧して上記カラムを通過させ、30分かけて処理(空間速度:1)し、処理済みサンプル36.24gを得た。AQFによる前処理を経たイオンクロマトグラフによる陰イオン分析ではClの濃度は74.64ppm(10倍希釈測定)であった。また、コロイド滴定によるアリルメタリルジメチルアンモニウムイオンの濃度は12.56%であった。それらの濃度を基に、それぞれの分子量でmol換算し、実施例5と同じ式によりOH置換率を求めたところ、OH置換率は、99.76%であった。
大半のClが、OHで置換されたことが確認された。このポリマーに種々の酸を加えることで、付加塩の異なる重合体を容易に合成する事が出来る。
【0057】
(実施例8)
(アリルメタアリルアミンの合成)
撹拌機、温度計、ガラス栓を備えた1Lの三口フラスコにアリルアミンを8モル仕込み氷冷した。撹拌下に6.5℃でメタアリルクロライド4モルの滴下を開始した。内温5~15℃で約70分かけて滴下した。滴下終了後内温を2時間10℃に維持した。更に15℃に維持し一晩反応を継続した。2日目は不溶物が析出し不均一な状態であった。30℃に昇温し更に一晩反応を継続した。冷却し、内容物を2Lフラスコに移し換えた後、25%NaOHaqを4モル加え中和した。静置すると水層と油層(NaCl析出)に分離した。分液ロートを用いて上層の粗アリルメタアリルアミン407.73gを得た。
(アリルメタアリルアミンの蒸留精製)
粗アリルメタアリルアミン405.84gを仕込みウィットマー分留管(50cm)を用いて常圧蒸留を実施した。(冷却管は5℃に冷却。)オイルバスの温度を徐々に上げ、温度129~137℃の留分178.49gを採取した。ガスクロマトグラフィーによる純度は96.5%であった。同操作を再度実施し、温度129~131℃の留分152.12gを採取した。ガスクロマトグラフィーによる純度は99.69%であった。元素分析(<機種・測定条件>Perkin Elmer 2400II(CHN測定モード))の結果は、C(75.17%)、H(12.16%)、N(12.43%)であった。アリルメタアリルアミン(C713N)の理論値は、C(75.62%)、H(11.79%)、N(12.60%)なので、概ね目的どおりにアリルメタアリルアミンが得られたことが確認できた。
(アリルメタアリルアミン塩酸塩の合成)
攪拌機、温度計、ガラス栓を備えた300mlの三つ口フラスコに前記で合成したアリルメタアリルアミン1.2モルを仕込み、20℃以下の冷却下で35%塩酸1.2モルを滴下した。電位差滴定により、濃度68.44%、モル比1.009の目的物を255.00g得た。
(アリルメタアリルアミン塩酸塩と二酸化硫黄の共重合体の合成-1)
攪拌機、温度計、ガラス栓を備えた50mlの三つ口フラスコに前記アリルメタアリルアミン塩酸塩0.12モルと60%希釈水8.76gを仕込み、内温20℃以下で二酸化イオウを0.12モル仕込んだ後、15℃で過硫酸アンモニウムをモノマー合計に対し0.2モル%添加し重合を開始した。内温を25~30℃に維持しながら1時間毎に0.3、0.5モル%(計1.0モル%)の過硫酸アンモニウムを更に添加した。一晩経過後に過硫酸アンモニウム0.5モル%(計1.5モル%)添加し60℃に昇温し更に一晩反応を継続した。希釈水50gを加え重合を終了した。GPC収率:97.14%、Mw:5,301(Mw/Mn:1.83)であった。図10に、GPCチャートを示す。
濃度調整し固形分量:20.53%の無色溶液を、125.8g得た。イソプロピルアルコール再沈物の赤外分光スペクトルを、図11に示す。赤外分光スペクトル中に、スルホニル基由来の1,300、1,125cm-1付近の吸収が確認できた。
高い重合収率でアリルメタアリルアミン塩酸塩と二酸化硫黄の共重合体が得られたことが、確認できた。
【0058】
(実施例9)
(アリルメタアリルアミン塩酸塩と二酸化硫黄の共重合体の合成-2)
攪拌機、温度計、ガラス栓を備えた50mlの三つ口フラスコに、実施例8で合成したアリルメタアリルアミン塩酸塩0.12モルと50%希釈水15.98gと35%塩酸0.012モルを仕込み、内温20℃以下で二酸化イオウを0.12モル仕込んだ後、16℃で過硫酸アンモニウムをモノマー合計に対し0.05モル%添加し重合を開始した。内温を15~26℃に維持しながら0.05、0.05、0.05、0.1、0.2、0.3、0.3モル%(計1.1モル%)の過硫酸アンモニウムを更に添加した。60℃に昇温し、一晩反応を継続した。GPC収率:96.93%、Mw:6,930(Mw/Mn:1.83)であった。図12に、GPCチャートを示す。
濃度調整し固形分量:20.34%の無色溶液を、117.3g得た。イソプロピルアルコール再沈物の赤外分光スペクトルを、図13に示す。赤外分光スペクトル中に、スルホニル基由来の1,300、1,125cm-1付近の吸収が確認できた。
高い重合収率でアリルメタアリルアミン塩酸塩と二酸化硫黄の共重合体が得られたことが、確認できた。
【0059】
(実施例10)
(アリルメタアリルアミン塩酸塩重合体)
攪拌機、温度計、冷却管を備えた50mlの三つ口フラスコに、実施例8で合成したアリルメタアリルアミン塩酸塩0.2モルと60%希釈水6.07gを仕込んだ後、水浴温度60℃に昇温した。内温57℃で重合開始剤V-50(和光純薬工業株式会社製、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)をモノマー合計に対し0.2モル%ずつ2回と0.3モル%(計0.7モル%)添加し、一晩重合を継続した。2日目はV-50を0.3モル%ずつ3回(累計1.6モル%)添加した。3日目はV-50を0.4、0.5、0.5モル%(計3.0モル%)添加した。4日目はV-50を0.5、0.5モル%(計4.0モル%)添加した。5日目に更にV-50を0.5、0.5モル%(計5.0モル%)添加し反応を一晩継続した。その間重合温度は55~63℃に維持した。GPC収率:94.6%、Mw:20,099(Mw/Mn:6.27)であった。図14に、GPCチャートを示す。
希釈水20gを加え橙色溶液を、67.11g得た。イソプロピルアルコール再沈物の赤外分光スペクトルを、図15に示す。
高い重合収率でアリルメタアリルアミン塩酸塩の重合体が得られたことが、確認できた。
【0060】
(実施例11)
(アリルメタアリルアミン重合体)
実施例10で合成したアリルメタアリルアミン塩酸塩重合体0.025モルを200mlビーカーに採取して希釈水30gを加えた。続いて、25%NaOH水溶液を0.0276モル加え中和した。中和すると重合体は水と分離しゲル状に析出した。ゲル状物をスパチラで良く練りこみ副生した食塩を洗浄して取り除いた。水溶媒を除去した後、新たな希釈水150mlを加えて同様のゲル状物の洗浄操作を2回繰り返した。その後、水溶媒を除去し、イソプロピルアルコール60mlを加えてゲル状物を溶解した。溶液の固形分濃度4.15%、灰分濃度0%、AQFによる前処理を経たイオンクロマトグラフによる陰イオン分析によるClの濃度は73.69ppmであった。それらの濃度を基に、それぞれの分子量でmol換算し、次式によりアミン置換率を求めたところ、アミン置換率は、99.44%であった。

(式) アミン置換率=((アリルメタアリルアミンの濃度:mol)/(Clの濃度:mol))+(アリルメタアリルアミンの濃度:mol)
乾燥固形物の赤外分光スペクトルを、図16に示す。赤外分光スペクトルによると、2級アミン塩に由来する、2,800~2,000cm-1(N―H伸縮振動)の強い多数の吸収の減少と、1,600cm-1(NH2+ NH変角振動)の吸収が消滅した事が確認出来る。これらの事実によりアミンに置換された事が確認出来た。
このポリマーに種々の酸を加えることで、付加塩の異なる重合体を容易に合成することができる。
【0061】
(比較例1)
(ジメタアリルジメチルアンモニウムクロライドの合成)
攪拌機、温度計、冷却管を備えた500mlの四つ口フラスコにジメチルアミンを1.2モル仕込んだ。冷却しながらメタアリルクロライド2.28モルの滴下を開始した。1/4滴下したところで25%NaOH水溶液1.14モルの滴下を開始した。滴下温度は15~30℃程度で維持し、25%NaOH水溶液を1/2滴下した辺りで40℃に昇温して反応を促進した。25%NaOH水溶液滴下終了後(滴下時間1hr)に55、60、65℃に段階的に昇温し反応を一晩継続した。更に、内温70℃に調整し反応を継続した。二晩経過後に427.5gの懸濁溶液を得た。NaCl結晶をデカントし377.8gの溶液を得た。分液ロートで下層を採取し360.5gの溶液を得た。25%NaOHaqでpHを0.5から10.6に調整し372.8gの溶液得た。1Lナス型フラスコに移しエバポレーターで203.5gまで脱アミン精製し、NaClの析出を確認した。更に希釈水200gを加え再度脱アミン精製し201.9gの懸濁溶液を得た。希釈水50gを加え冷却し、電位差滴定により残存アミンが不検出で有る事を確認した。桐山ロート(ろ紙5B:4ミクロン)で析出したNaClを除きpH:7.5、灰分:1.55%の淡黄色クリアな溶液を、203.6g(歩留60%)得た。リンタングステン酸法によるアンモニウム塩の定量では、濃度:66.56%、分子量:187.34(理論分子量:189.73)であった。電位差滴定では残存アミンは不検出であった。
【0062】
(ジメタアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体)
20ml試験管に、上記で合成したジメタアリルジメチルアンモニウムクロライド0.0351モルと50%希釈水3.31gを仕込み50℃に昇温した。重合開始剤V-50(和光純薬工業株式会社製、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩)をモノマー合計に対し1.2モル%添加し一晩重合を継続した。GPC収率0%で全く重合していなかった。図17に、GPCチャートを示す。
今回の検討の範囲内では、ジメタアリルジメチルアンモニウムクロライドの単独重合体を得ることはできなかった。
【0063】
(比較例2)
(ジメタアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体の合成)
攪拌機、温度計、ガラス栓を備えた100mlの三つ口フラスコに、比較例1で合成したジメタアリルジメチルアンモニウムクロライド0.12モルと希釈水8.86gを仕込み30℃以下で二酸化イオウを0.12モル仕込んだ後、27℃で過硫酸アンモニウムをモノマー合計に対し0.2モル%添加し重合を開始した。25~30℃に維持しながら1時間毎に0.2、0.3、0.5、0.5モル%(計1.5モル%)の過硫酸アンモニウムを更に添加した。添加2時間後に40℃に昇温し、一晩反応を継続した。更に、過硫酸アンモニウムをモノマー合計に対し0.5、0.5、1.0、1.5モル%(計5.0モル%)添加し、浴温を60℃に昇温し重合を一晩継続した。GPC収率:60.4%、MW:747(Mw/Mn1.22)と低収率かつ低分子量であった。図18に、GPCチャートを示す。
イソプロピルアルコール再沈物の赤外分光スペクトルを図19に示す。赤外分光スペクトル中に、スルホニル基由来の1,300、1,125cm-1付近の吸収が確認できた。
ジメタアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体は合成できたものの、実施例におけるアリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライドと二酸化硫黄の共重合体等と比較して、分子量(重合度)は著しく低く、重合収率も実質的に低いものであり、重合は格段に困難であった。
【0064】
実施例1から5、8から10、及び比較例1から2の結果を、表1に示す。


【表1】



各実施例で用いたアリルメタアリルジメチルアンモニウムクロライド、アリルメタアリルジエチルアンモニウムクロライド、アリルメタアリルアミン塩酸塩等のアリルメタアリルアミン系単量体は、比較例で用いたジメタアリルジメチルアンモニウムクロライドと比較して、格段に高い収率及び分子量(重合度)で重合することが可能であった。すなわち、本発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体は、ポリマー全体の有機性の向上と、高い重合収率での重合とを、従来技術の限界を超えて両立するものであることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のアリルメタアリルアミン系(共)重合体は、実用上十分な高い重合収率での重合性を維持しながら、ポリマー全体の有機性などの、性能を制御、向上することができるので、めっき液、金属材料処理剤、塗料、インク定着剤、染色繊維処理剤等における添加剤等の、ポリマー全体の有機性が重要な用途をはじめとする、産業の各分野において、高い利用価値、高い利用可能性を有する。
図1
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