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特許70789282次元格子パターンを用いる面外変位計測方法およびその装置
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  • 特許-2次元格子パターンを用いる面外変位計測方法およびその装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】2次元格子パターンを用いる面外変位計測方法およびその装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/16 20060101AFI20220525BHJP
【FI】
G01B11/16 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018036914
(22)【出願日】2018-03-01
(65)【公開番号】P2019152498
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-02-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO),インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト,H26-30,「インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロジェクト/イメージング技術を用いたインフラ状態モニタリングシステム開発/位相解析手法を用いたインフラ構造物用画像計測システムの研究開発」
(73)【特許権者】
【識別番号】000142067
【氏名又は名称】株式会社共和電業
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591038299
【氏名又は名称】株式会社ヒカリ
(73)【特許権者】
【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】前田 芳巳
(72)【発明者】
【氏名】津田 仁
(72)【発明者】
【氏名】谷 卓也
(72)【発明者】
【氏名】浅井 大介
(72)【発明者】
【氏名】藤垣 元治
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-264852(JP,A)
【文献】国際公開第2016/163355(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/142951(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物体に取り付けられた2次元格子パターンを撮影した画像を用いて前記計測対象物体の表面の面外方向の変位を計測する計測方法であって、
前記計測対象物体に取り付けられた2次元格子パターンを撮像手段で2次元画像として撮影するステップと、
撮影した前記2次元画像から前記2次元格子パターンが写っている領域を取得し解析領域とするステップと、
前記解析領域から複数のサブ領域を抽出するステップと、
前記複数のサブ領域における面内方向の変位量を求めるステップと、
前記複数のサブ領域において求めた変位量を元に、前記計測対象物体の面外方向の変位量を求めるステップと、
を含むことを特徴とする計測方法。
【請求項2】
前記複数のサブ領域は、上下左右に4つの同じサイズの領域として抽出する請求項1に記載の計測方法。
【請求項3】
前記複数のサブ領域において求めた変位量を元に、前記計測対象物体の面外方向の変位量を求めるステップは、
上側の左右のサブ領域同士の左右方向の変位差と、下側のサブ領域の左右方向の変位差と、左側の上下のサブ領域同士の上下方向の変位差と、右側の上下のサブ領域同士の上下方向の変位差を求め、前記計測対象物体の面外方向の変位量を求めるステップである、請求項2に記載の計測方法。
【請求項4】
前記解析領域は、正方形である、請求項1~3の何れか一つに記載の計測方法。
【請求項5】
計測対象物体に取り付けられた2次元格子パターンを撮影した画像を用いて前記計測対象物体の表面の面外方向の変位を計測する計測装置であって、
前記計測対象物体に取り付けられた2次元格子パターンを2次元画像として撮影する撮像手段と、
撮影した前記2次元画像から前記2次元格子パターンが写っている領域を取得し解析領域とする解析領域取得手段と、
前記解析領域から複数のサブ領域を抽出するサブ領域抽出手段と、
前記複数のサブ領域における面内方向の変位量を求める面内方向変位量算出手段と、
前記複数のサブ領域において求めた変位量を元に、前記計測対象物体の面外方向の変位量を求める面外方向変位量算出手段と、
を備えた特徴とする前記計測装置。
【請求項6】
前記複数のサブ領域は、上下左右に4つの同じサイズの領域として抽出する請求項5に記載の計測装置。
【請求項7】
前記面方向変位量算出手段は、
上側の左右のサブ領域同士の左右方向の変位差と、下側のサブ領域の左右方向の変位差と、左側の上下のサブ領域同士の上下方向の変位差と、右側の上下のサブ領域同士の上下方向の変位差を求め、前記計測対象物体の面外方向の変位量を求める手段である、請求項6に記載の計測装置。
【請求項8】
前記解析領域は、正方形である、請求項5~7の何れか一つに記載の計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元パターンを用いる面外変位計測方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高度経済成長期に建設された橋梁や鉄塔等のインフラ構造物の点検作業を短時間で効率よく行う方法が必要とされている。その一つの方法として、インフラ構造物から離れた遠隔地点から、インフラ構造物をカメラで撮影することで、インフラ構造物の変位を測定できるサンプリングモアレ法が開発されている。
【0003】
サンプリングモアレ法は、インフラ構造物などの計測対象物体に固定された2次元格子パターンの位相を解析することで、計測対象物体の微小な変位を容易に精度よく計測可能な方法である。
【0004】
すなわち、計測対象物体の表面に2次元格子パターンを描く、あるいは、貼付けることで、その計測対象物体の表面の2次元変位を簡単に計測することが可能となる。この計測方法を、計測対象物体が回転したときの回転角度の計測や、ひずみの計測にも適用できる。また、計測対象物体の表面の面外方向(表面の法線方向)の変位計測にも適用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4831703号
【文献】特許第5466325号
【非特許文献】
【0006】
【文献】彌園仁志,李志遠,津田浩,笠井尚哉 単一カメラと規則性模様を用いた光学的面外変位分布計測法の開発,実験力学,Vol.15,No.4,309-314,(2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
計測対象物体に貼付けられた2次元格子パターンを撮影することで、面内における変位やひずみを計測する方法が考案されている。面内における変位については、特許文献1に示す方法で実現できる。また、面内におけるひずみについても、2次元格子パターン面にカメラの光軸を直交させることができる場合には、特許文献1に記載されている計算方法により算出可能であるが、一般的にはそのように配置することは困難である。そのような場合は、特許文献2に示される方法によってひずみ分布を求めることができる。
【0008】
さらに、z方向(計測対象物体面の法線方向)の変位の算出方法は、非特許文献1に開示された方法によって実現可能である。計測対象物体の表面に貼付された2次元格子パターンについて、面内のひずみが実際には発生しないような場合、もしくは発生するひずみが十分に小さい場合、z方向に移動すると、図1に示すように、カメラ1に近づくことで、2次元格子パターン2の格子のピッチが大きめに撮影されることになる。画像上では縦方向と横方向の両方に大きく撮影されることになるため、これが見た目のひずみとして検出されることになる。
【0009】
2次元格子パターン2からカメラ1までの距離をL、2次元格子パターン2の幅をSx、z方向への変位量をdzとすると、2次元格子パターン2がz方向に移動することによって、画像内では横幅が、SxからΔSxだけ伸びてSx’になったように撮影される。ここから、数1式に示すように、見た目のひずみとしてεxが得られる。
【0010】
【数1】
【0011】
さらに、変形前の2次元格子パターン2からカメラ1までの距離Lを用いると、数2式に示す幾何学的な関係が得られる。
【0012】
【数2】
【0013】
数2式を変形すると、数3式が得られる。
【0014】
【数3】
【0015】
数1式と数3式により、数4式が得られる。
【0016】
【数4】
【0017】
さらに、Lに比べてdzが十分小さい場合は、数4式は近似的に数5式として表すことができる。
【0018】
【数5】
【0019】
このようにすることで、面外(面の法線方向)の変位量dzを2次元格子パターンの見た目のひずみεxから求めることができる。なお、この算出方法は、数式の表現の方法は異なるが、非特許文献1に記載の方法と本質的には同一である。また、ここでは、x方向の見かけのひずみを使って説明しているが、y方向の見かけのひずみを用いてもよい。
【0020】
上述の方法では、2次元格子パターン2が面内の回転軸(z軸に垂直な軸)で回転した場合に、問題が生じる。例えば、図1の場合、x軸を回転軸として2次元格子パターン2が回転する場合を考えると、回転軸を中心線として紙面の上側と下側では見かけのひずみの量が異なることになる。また、x方向の見かけのひずみとy方向のみかけのひずみの量が異なることにもなり、2次元格子パターンの面外方向の変位量を精度よく求めることが困難である。
【0021】
そこで本発明の目的は、計測対象物体に取り付けられた2次元格子パターンを有するターゲットパネルの面外方向の変位量を求める際に、面内方向(x,y方向)の変位や微小な回転の影響を受けない、2次元格子パターンを用いる面外変位計測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明による計測方法の実施形態は、計測対象物体に取り付けられた2次元格子パターンを撮影した画像を用いて前記計測対象物体の表面の面外方向の変位を計測する計測方法であって、
前記計測対象物体に取り付けられた2次元格子パターンを撮像手段で2次元画像として撮影するステップと、
撮影した前記2次元画像から前記2次元格子パターンが写っている領域を取得し解析領域とするステップと、
前記解析領域から複数のサブ領域を抽出するステップと、
前記複数のサブ領域における面内方向の変位量を求めるステップと、
前記計測方法において、前記複数のサブ領域において求めた変位量を元に、前記計測対象物体の面外方向の変位量を求めるステップと、
を含むことを特徴とする。
前記計測方法において、前記複数のサブ領域は、上下左右に4つの同じサイズの領域として抽出することを特徴とする。
前記複数のサブ領域において求めた変位量を元に、前記計測対象物体の面外方向の変位量を求めるステップは、
上側の左右のサブ領域同士の左右方向の変位差と、下側のサブ領域の左右方向の変位差と、左側の上下のサブ領域同士の上下方向の変位差と、右側の上下のサブ領域同士の上下方向の変位差を求め、前記計測対象物体の面外方向の変位量を求めることを特徴とする。
前記解析領域は、正方形であることを特徴とする。
【0023】
本発明による計測装置の実施形態は、計測対象物体に取り付けられた2次元格子パターンを撮影した画像を用いて前記計測対象物体の表面の面外方向の変位を計測する計測装置であって、
前記計測対象物体に取り付けられた2次元格子パターンを2次元画像として撮影する撮像手段と、
撮影した前記2次元画像から前記2次元格子パターンが写っている領域を取得し解析領域とする解析領域取得手段と、
前記解析領域から複数のサブ領域を抽出するサブ領域抽出手段と、
前記複数のサブ領域における面内方向の変位量を求める面内方向変位量算出手段と、
前記複数のサブ領域において求めた変位量を元に、前記計測対象物体の面外方向の変位量を求める面外方向変位量算出手段と、
を備えたことを特徴とする。
前記計測装置において、前記複数のサブ領域は、上下左右に4つの同じサイズの領域として抽出することを特徴とする。
前記計測装置において、前記面方向変位量算出手段は、
上側の左右のサブ領域同士の左右方向の変位差と、下側のサブ領域の左右方向の変位差と、左側の上下のサブ領域同士の上下方向の変位差と、右側の上下のサブ領域同士の上下方向の変位差を求め、前記計測対象物体の面外方向の変位量を求めることを特徴とする。
前記計測装置において、前記解析領域は、正方形であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、計測対象物体に取り付けられた2次元格子パターンを有するターゲットパネルの面外方向の変位量を求める際に、面内方向(x,y方向)の変位や微小な回転の影響を受けない、2次元格子パターンを用いる面外変位計測方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】面外変位が発生した時の見かけのひずみを表す図である。
図2】z方向の変位量の解析手順を示す図である。
図3】z方向の変位量の解析手順を示す図である(分割する領域が部分的な場合)。
図4】x方向,y方向,z方向の変位をそれぞれ独立に計測が可能なことを説明する図である。
図5】実橋梁(道路橋梁)のたわみを計測する試験の様子を示す図である。
図6】撮影画像例(側面に設置したカメラで側面方向から撮影した画像)である。
図7】撮影画像例(下側に設置したカメラで上向きに撮影した画像)である。
図8】計測実験例(側面に設置したカメラで横向きに撮影して得られた結果と下側に設置したカメラで上向きに撮影して得られた結果の比較)である。
図9】本発明の実施形態に係る計測装置を説明する図である。
図10】本発明の実施形態に係る計測方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
1. 面外変位(z方向)を求める方法
以下のアルゴリズムにより対象物体表面の面外変位(表面の法線方向の変位)を求めることができる。図2にz方向の変位量の解析手順を示す。次の、(1)~(4)に示す手順により、z方向の変位量dzを求めることができる。
【0027】
(1) ターゲットを撮影した画像から正方形の解析領域を取得する。図2の左図に示される領域が正方形の解析領域である。なお、正方形の解析領域には限定されない。ひし形、長方形、あるいは円形の解析領域でもよい。
(2) 解析領域を4分割してサブ解析領域を設定する。
サブ解析領域を図2に示すように、A,B,C,Dとする。ここで、サブ領域Aを上側左のサブ領域、サブ領域Bを上側右のサブ領域、サブ領域Cを上側左のサブ領域、サブ領域Dを下側右のサブ領域と、この明細書では称する。
(3) サブ領域ごとにx方向とy方向の変位量を解析する。サブ領域ごとのx方向とy方向の変位量は、従来技術で説明した公知の方法を用いることができる。
・サブ領域A,サブ領域B,サブ領域C,サブ領域Dごとに求めたx方向の変位量をそれぞれdAx,dBx,dCx,dDxとする。
・サブ領域A,サブ領域B,サブ領域C,サブ領域Dごとに求めたy方向の変位量をそれぞれdAy,dBy,dCy,dDyとする。
(4) z方向の変位量dzを数6式により算出する。
【0028】
【数6】
【0029】
ここで、係数K,Ts,Lはそれぞれ、
K=0.5
Ts:正方形の解析領域の一辺の長さ
L:ターゲット距離(カメラからターゲットまでの距離)
【0030】
なお、図2において、取得された正方形の解析領域の解析領域の一辺の長さはx方向,y方向ともTsである。そして解析領域サイズは、画像内の画素数ではなく、ターゲット上の実サイズである。また、係数Kは、解析領域サイズに対するサブ領域AとBの重心間の距離(サブ解析領域CとD,AとC,BとDも同一)の比率である。解析領域を図2のように4分割する場合は、サブ領域AとBの重心間の距離は解析領域の一辺の長さの1/2となるため、K=0.5となる。
【0031】
次に、図3に示すように上記(1)で抽出される解析領域が正方形ではなく長方形の場合で、さらに、4カ所のサブ領域についても隣り合っていない領域を選択する場合についても同様に、z方向の変位量dzを算出することができる。
【0032】
【数7】
【0033】
ここで、ΔGxとΔGyは、図3に示すように、x方向とy方向のサブ領域間の間隔をそれぞれ表している。
また、ΔG=ΔGx=ΔGyとして、ΔG=Ts/2とすると、数7式は数8式のように書き表すことができる。これは、上記の数5式で示した見た目のひずみから近似的に面外の変位を求める式を用いて面外の変位を算出することに相当する。
【0034】
【数8】
【0035】
したがって、数6式の代わりに数7式や数8式を用いて面外の変位を算出することもできる。
なお、格子が斜交するような位置にカメラを設置した場合も上述の方法を適用できる。
【0036】
2.本発明の方法による効果
本発明による効果を説明する。
(1) 一つの領域設定により、その領域面のx,y,zの3方向それぞれの変位計算ができる。
(2) 測定点のxy方向の変位があっても、z方向演算時はキャンセルされる。カメラぶれもキャンセルされる。
(3) ターゲットの多少の回転による影響もキャンセルされる。
【0037】
3. 計測実験
図4は、x方向,y方向,z方向の変位をそれぞれ独立に計測が可能なことを説明する図である。まず、平面板に変位を与えていない状態で撮影を開始し、Z方向に約9mmの変位を徐々に与えた。10秒間ほど静止し、また徐々にZ方向に元の位置に戻していった。次に、X方向に約-9mmの変位を徐々に与えた。その後、Y方向にも約-9mmの変位を徐々に与えた。さらにZ方向に約9mmの変位を徐々に与え、その後、Z方向,X方向,Y方向の順に元の位置に戻した。
【0038】
このときに、撮影された時系列の画像から、本手法によって計測された変位の変化を図4に示す。Z方向に与えた変位が計測できていることがここから読み取ることができる。また、X方向とY方向の変位もそれぞれ計測できていることがわかる。120秒から170秒付近の2回目のZ方向への移動においても、Z変位がほぼ正しく計測できていることと、Z方向の変位中にX変位とY変位の変化がほとんどないことから、X方向,Y方向,Z方向の変位がそれぞれ独立に計測できているということが確認できる。
【0039】
実験梁(道路橋5)のたわみ計測試験による比較実験を行った。図5に示すように、橋梁の同一部位に、側面方向を向けた2次元格子パネル3(2次元格子パターンが取り付けられたパネル)と下向きに設置した2次元格子パネル4を取り付けた。
側面方向(斜め下方向)から撮影するカメラ1aは、視程距離約15mの位置に設置し、フレームレート100fpsで撮影した。2次元格子パネル3からなるターゲットには、20mmピッチの2次元格子を用い、撮影した画像から約160mm×160mmの領域を128×128ピクセルの画像サイズで抽出した。
【0040】
下方向(垂直方向)から撮影するカメラ1bは、視程距離約6.2mの位置に設置し、フレームレート100fpsで撮影した。2次元格子パネル4からなるターゲットには、20mmピッチの2次元格子を用い、撮影した画像から約260mm×260mmの領域を256×256ピクセルの画像サイズで抽出した。
【0041】
それぞれのカメラ1a,1bは同期させて画像を撮影した。図6に撮影画像例(側面に設置したカメラで横向きに撮影)を示す。図7に、撮影画像例(下側に設置したカメラで上向き撮影)を示す。
【0042】
図8に計測実験例(側面に設置したカメラ1aで横向きに撮影して得られた結果と下側に設置したカメラ1bで上向きに撮影して得られた結果の比較)を示す。これは、z変位をそれぞれのカメラで得られた画像から求めた結果である。これより、橋梁の風によるふらつきがあるが、フィルタ処理、移動平均を行なえば、ほぼ同じ波形結果となることを確認できた。
【0043】
4.本発明の実施形態に係る計測装置
図9は本発明の実施形態に係る計測装置20を説明する図である。計測装置20はカメラ1とコンピュータ6を備えている。コンピュータ6は、信号の入出力用のI/O7、CPU8、メモリ9、表示器10、入力装置を備えている。カメラ1は測定対象物体に取り付けられた2次元格子パネル(図示しない)の2次元格子の模様を撮影する手段である。カメラ1で撮影された、2次元画像データはコンピュータ6に送られる。
【0044】
コンピュータ6のメモリ9には、本発明に係る変位量を求めるための計測プログラムが格納されている。コンピュータ6のCPU(プロセッサ)8は、メモリ9に格納された計測プログラムに従って、撮影した前記2次元画像から前記2次元格子パターンが写っている領域を取得し解析領域とし、前記解析領域から複数のサブ領域を抽出し、前記複数のサブ領域における面内方向の変位量を求め、前記複数のサブ領域において求めた変位量を元に、前記計測対象物体の面外方向の変位量を求める処理を行なう。求められたz方向の変位量は表示器10に表示することができる。ここで、前記複数のサブ領域は、上下左右に4つの同じサイズの領域として抽出する。つまり、コンピュータ6は、計測プログラムに基づいて、解析領域取得手段、サブ領域抽出手段、面内方向変位量算出手段、および面外変位量算出手段と、を備えている。
【0045】
コンピュータ6は、上側の左右のサブ領域同士の左右方向の変位差と、下側のサブ領域の左右方向の変位差と、左側の上下のサブ領域同士の上下方向の変位差と、右側の上下のサブ領域同士の上下方向の変位差を求め、前記計測対象物体の面外方向の変位量を求めることができる。
【0046】
図10は本発明の実施形態に係る計測方法を説明するスローチャートである。この計測方法は、図9に示す計測装置20により実行される。図10に示す処理を実行する計測プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記録することができる。
【0047】
以下、各ステップに従って、説明する。
●[ST01]計測対象物体に取り付けられた2次元格子パターンを撮像手段で2次元画像として撮影する。
●[ST02]撮影した2次元画像から前記2次元格子パターンが写っている領域を抽出し解析領域Sとする。(解析領域抽出手段)
●[ST03]解析領域Sから複数のサブ領域Sa・・Snを抽出する。(サブ領域抽出手段)
●[ST04]複数のサブ領域Sa・・Snにおいて求めた変位量を元に、前記計測対象物体の面外方向の変位量を求める。(面内方向変位量算出手段)
●[ST05]複数のサブ領域Sa・・Snにおいて求めた変位量を元に、前記計測対象物体の面外方向の変位量を求める。(面外方向変位量算出手段)
【符号の説明】
【0048】
1,1a,1b カメラ
2 2次元格子パターン
3 2次元格子パネル
4 2次元格子パネル
5 道路橋
6 コンピュータ
7 I/O
8 CPU
9 メモリ
10 表示器

20 計測装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10