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特許7078960置換二環式ピリミジン系化合物および組成物ならびにその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】置換二環式ピリミジン系化合物および組成物ならびにその使用
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6561 20060101AFI20220525BHJP
   A61K 31/663 20060101ALI20220525BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20220525BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20220525BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220525BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220525BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
C07F9/6561 Z CSP
A61K31/663
A61P19/08
A61P19/10
A61P25/28
A61P35/00
A61P43/00 111
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019540325
(86)(22)【出願日】2018-01-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 CA2018050091
(87)【国際公開番号】W WO2018137036
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】62/450,736
(32)【優先日】2017-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/528,601
(32)【優先日】2017-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519265918
【氏名又は名称】トサントリゾス,ヨウラ エス.
(73)【特許権者】
【識別番号】519265929
【氏名又は名称】シーバック,マイケル
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】トサントリゾス,ヨウラ エス.
(72)【発明者】
【氏名】シーバック,マイケル
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/078957(WO,A1)
【文献】特表2018-518518(JP,A)
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry,2013年,Vol.21,pp.2229-2240
【文献】Journal of Chemical Information and Modeling,2013年,Vol.53,pp.2299-2311
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】
(式中、RはH、C1~2アルキルおよびC1~2フルオロアルキルから選択され、
(CR 5’ )PO(OR (式中、R はPO(OR 6’ 、CO 6’ 、C(O)NHR 、SO およびSO NHR から選択され;R5’はH、OHおよびハロから選択され;R およびR 6’ は独立してHおよびC 1~6 アルキルから選択され;R はH、OHおよびC 1~6 アルキルから選択される)であり、
XはO、CH、NHおよびN(C1~4アルキル)から選択され、
ZおよびYは独立してS、O、NRおよびCR3’から選択され、
CyはC6~10アリール、C5~10ヘテロアリール、C3~10シクロアルキルおよびC3~10ヘテロシクロアルキルから選択され、これらは各々非置換であるか、または独立してハロ、シアノ、ヒドロキシル、NH、NHC1~6アルキル、NHC3~6シクロアルキル、N(C1~6アルキル)(C1~6アルキル)、C1~6フルオロアルキル、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~6フルオロアルコキシ、C3~6シクロアルコキシおよびC1~6アルコキシから選択される1または2個の置換基で置換されており、
CyはC3~10シクロアルキル、C3~10ヘテロシクロアルキル、C6~10アリールおよびC5~10ヘテロアリールから選択され、これらは各々非置換であるか、または独立してハロ、シアノ、ヒドロキシル、NH、NHC1~6アルキル、NHC3~6シクロアルキル、N(C1~6アルキル)(C1~6アルキル)、C1~6フルオロアルキル、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~6フルオロアルコキシ、C3~6シクロアルコキシ、フェニル、C3~6ヘテロシクロアルキル、C5~6ヘテロアリールおよびC1~6アルコキシから選択される1~3個の置換基で置換されており、
Lは、直接結合、C(O)、O、AC(O)(CR4’(A’)、ASO(CR4’(A’)、C(O)A(CR4’(A’)およびSOA(CR4’(A’)から選択され、
およびR3’は独立してH、C3~6シクロアルキルおよびC1~4アルキルから選択されるか、またはRが結合する原子がsp混成している場合、Rは存在せず、
およびR4’は独立してH、ハロ、C1~4フルオロアルキル、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~4フルオロアルコキシ、C3~6シクロアルコキシおよびC1~4アルコキシから選択され、
mは0、1および2から選択され、
pは0および1から選択され、
AはNHおよびN(C1~4アルキル)から選択され、
mが1または2であるとき、A’はO、NHおよびN(C1~4アルキル)から選択され、mが0であるとき、A’はNHおよびN(C1~4アルキル)から選択され、
【化2】
は、単または二重結合を表すが、但し2つの二重結合が互いに隣接しないことを条件とする)
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、および溶媒和物。
【請求項2】
RがH、CHまたはCFある、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が(CR5’)PO(OR(式中、RはPO(OR6’、CO6’、C(O)NHR、SO、SONHRから選択され;R5’はHであり;RおよびR6’は独立してHおよびCHから選択され;RはH、OHおよびCHから選択される)である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
XがO、CH、NHおよびNCHから選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
以下の構造式:
【化3】
を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
以下の構造式:
【化4】
を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
Cyがフェニル、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、イソキザゾリル、1,2,3-トリアゾリル、テトラゾリル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-トリアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、トリアジニル、ピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、モルホニリルおよびピリダジニルから選択され、これらは各々非置換であるか、または1もしくは2個の置換基で置換されている、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
Lが直接結合、C(O)、O、AC(O)(CR4’(A’)、ASO(CR4’(A’)、C(O)A(CR4’(A’)およびSOA(CR4’)m(A’)から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Cyがフェニル、ナフチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、5員ヘテロアリール、6員ヘテロアリール、10員ヘテロアリール、5員ヘテロシクロアルキおよび6員ヘテロシクロアルキルから選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
Cyが非置換であるか、または独立してCl、F、フェニル、シアノ、ヒドロキシル、NH、NHCH、N(CH、C1~4フルオロアルキル、C1~4アルキル、C1~4フルオロアルコキシおよびC1~4アルコキシから選択される1~3個の置換基で置換されている、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
以下:
【表1】

、ならびにその薬学的に許容される塩、および溶媒和物から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の1つ以上の化合物および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項13】
薬剤としての使用のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の1つ以上の化合物。
【請求項14】
癌を治療する方法において使用するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の1つ以上の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、新規な二環式複素環化合物、これらの調製方法、これらを含む組成物、および例えば、治療でのこれらの使用に関する。より特に、本出願は、高レベルのイソプレノイド代謝産物、特に、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPPS)代謝産物により媒介される、疾患、障害または状態の治療で有用な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ファルネシルピロリン酸(FPP;C15イソプレノイド)またはゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP;C20イソプレノイド)での低分子量GTPアーゼの翻訳後修飾は、一般にタンパク質プレニル化として公知である。プレニル化は、高濃度のシグナル伝達生体分子を有する細胞膜と特異的に結合し、したがって細胞のシグナル伝達、増殖およびシナプス可塑性を含む、あまりに多くの細胞機能に関与する能力を有するGTPアーゼをもたらす(図1a、b)。最近の検討については、Wang,M.;Casey,P.J.Nature Rev./Mol.Cell Biol.2016、17、110-122参照。
【0003】
これまで、タンパク質プレニル化の阻害は、K-Ras、H-RasおよびN-Rasタンパク質を含む、FPPのGTPアーゼへの結合を触媒するトランスフェラーゼ酵素FTアーゼを阻害することにより、RAS活性化、とりわけ、癌遺伝子の共通のドライバーであるK-RASの突然変異を抑制することに主に重点が置かれていた。しかし、生化学的に冗長な機構は、トランスフェラーゼ酵素GGTPアーゼIにより触媒されるGGPPプレニル化によりK-Rasを活性化させる;したがって、FTアーゼが阻害された場合、GGTPアーゼIが、Rasプレニル化の課題を引き継ぐ(図1;Rowinsky,E.K.J.Clin.Oncol.2006、24、2981-2984)。さらに、(GGTPアーゼIによる別のプレニル化に加えて)FTアーゼの阻害の回避につながるいくつかの機構が存在することが推測され、したがって、GGTアーゼIを標的化することに注意が向け直された。例えば、遺伝学研究では、骨髄および肺細胞におけるGGTアーゼIのβサブユニットをコードする遺伝子の条件付き欠失により、K-Ras発現の誘導を伴う増殖および腫瘍形成がほぼ完全に排除され、マウスの生存が著しく改善することが示された(Sjogren,A.-K.M.ら、J.Clin.Invest.2007、117、1294-1304)。この研究は、GGPPプレニル化の阻害が、RhoA、RhoB、RhoC、Rac1、cdc-42、R-RasおよびRap1Aなどの低分子量GTP結合タンパク質(一般にGTPアーゼと称される)のGGPPプレニル化により誘導される他のヒト疾患に加えて、K-Ras誘導悪性腫瘍を治療するのに有用な戦略であり得ることを示唆した(Kho,Y.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA2004、101、12479-12484)。
【0004】
出願人独自の研究(Pelleieux,S.ら、Isoprenoids and tau pathology in sporadic Alzheimer’s disease.Neurobiology of Aging 2018、in press)および他の研究者グループ[例としては、(a)Eckert,G.P.ら、Neurobiol.Disease 2009、35、252;(b)Hooff,G.P.ら、Biochim.Biophys.Acta2010、1801、896が挙げられる]からの既存の生化学的証拠はまた、アルツハイマー患者の脳において高い細胞内レベルのイソプレノイドは、リン酸化タウ(P-タウ)タンパク質の蓄積および神経細胞損傷に潜在的に関与する(図1b)ことを示唆している。P-タウは、脳における神経原線維変化形成の特徴であり、アルツハイマー病の進行に強く関与している(He,Z.ら、Nature Medicine 2018、24、29-38)。
【0005】
FPP→GGPP→RhoA-cdc42→GSK3-β→ホスホ-タウのプレニル化のカスケード(図1b)は、アルツハイマー関連タウリン酸化および神経細胞の変化形成を主に担うとして提案された。したがって、hGGPPS阻害剤は、アルツハイマー病の進行を抑えるか、または発症前対象におけるその発症を遅延させる重要な治療薬であり得る。
【0006】
ヒト酵素ファルネシルピロリン酸シンターゼ(hFPPS)およびヒトゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼ(hGGPPS)は、メバロン酸経路(図1aおよび1b)における戦略的なステップを制御し、触媒サイクル中、これらはいずれもピロリン酸系基質(DMAPP、GPPまたはFPP)を結合し、IPP単位の付加を介してその炭化水素側鎖を延長する(図1a)という点において、これらは機能的に非常に類似している。したがって、ピロリン酸模倣体(例えば、生物学的等価体)である化合物による両方の酵素の非選択的阻害が観察された。これまで、創薬努力は、hFPPSの阻害は、hGGPPSの必要とされる基質の細胞内での欠失を必然的にもたらし、したがってGGPP代謝産物の細胞内レベルが間接的に低下するため(図1)、hFPPSに勝るhGGPPSの阻害における選択性は、治療上ほとんど価値がないという推定に基づくものであった。
【0007】
骨粗鬆症および癌による溶骨性疾患など、骨疾患の治療に臨床的に有用な薬物である、ゾレドロン酸(ZOL)を含む、hFPPSを選択的に阻害する多数の窒素含有ビスホスホネート(N-BP)化合物が、文献(Melton,L.J.、3rdら、J Bone Miner Res 2005、20、487-493)に報告されている。興味深いことに、ZOLなどのhFPPSを選択的に阻害するN-BP薬が真正な抗癌剤であるか(否か)について科学医学コミュニティにおいて議論が続いている。標準的な化学療法とZOLとで治療した乳癌患者(Coleman,R.E.ら、New Engl.J.Med.365、1396-1405)および多発性骨髄腫(MM)患者[(a)Morgan,G.J.ら、Lancet 376、1989-1999;(b)Morgan,G.J.ら、Blood 119、5374-5383]の臨床試験からは、無病生存率の改善が示されたが、効果は限定的であった。さらに、初期のHMG-CoAレベルでメバロン酸経路を抑制するスタチン(図1b)により、MM患者の死亡率が低下することが報告された[(a)Mullen,P.J.ら、Nature Rev/Cancer 2016、16、716-731。(b)Clendening,J.W.ら、Proc Natl Acad Sci USA 2010、107、15051-15056]。ZOLは、FPPの細胞内レベルの枯渇を介して(図1a)ゲラニルゲラニル化を間接的にダウンレギュレートすることに加えて、ファルネシル化を直接ダウンレギュレートし、抗腫瘍効果を担う作用機構の一つになり得ることが予想される。
【化1】
【0008】
ゲラニルゲラニル化GTPアーゼタンパク質(例えば、RaplA、Rho Ram、RacおよびCdc42)は、細胞増殖、分化および生存のシグナル変換カスケードにおいて不可欠な役割を果たす。hGGPPSの阻害は、多面的な生化学的結果につながる。例えば、(スタチン治療の結果としての)Rhoキナーゼ応答の低下は、内皮由来酸化窒素(NO)の産生の増加に関与している(Rikitake and Liao Circ Res 2005、97、1232-1235)。内皮機能不全は、内皮由来NOの合成、放出および/または活性の低下として特徴付けられ、心血管疾患の強力な予測因子であると考えられる。したがって、RhoによるNOの調節は、スタチンの心血管保護作用の元になる重要な機構であり得る。ゲラニルゲラニル化GTPアーゼも、癌遺伝子に関与する(Sorrentinoら、Nature Cell Biol.2014、16、357-366)。hGGPPSの阻害は、高度に侵襲性の乳癌細胞の移動/転移を低減し(Dudakovicら、Invest New Drugs 2011、29、912-920)、前立腺癌においてオートファジーを誘導し(Waskoら、J Pharamacol Exp Ther 2011、337、540-546)、グリオーマ細胞の生存に関与する(Yuら、BMC Cancer 2014、14:248;doi:10.1186/1471-2407-14-248)。
【0009】
hGGPPSのかなり強力な阻害剤であるごくわずかな試験的化合物が文献に報告されている。しかし、これらの化合物の報告された生物活性および化学構造に基づき、臨床的に有用な治療剤に必要とされる生物薬剤学的性質を示すことが予想されるものはない。類似体Aなどの長い側鎖を有するビスホスホネートは、hGGPPSを阻害することが示された[(a)Zhang,Y.ら、J.Am.Chem.Soc.2009、131、5153-5162。(b)Zhang,Y.ら、Angew.Chem.Int.編、2010、49、1136-1138]。化合物Bなどの置換ビフェニルビスホスホネートも、選択的hGGPPS阻害剤として示されたが、この化合物はあまり強力でない(Guo,R.T.ら、Proc Natl Acad Sci USA 2007、104、10022-10027)。分岐ジゲラニルビスホスホネート類似体CおよびトリアゾールFPP模倣体Dなどのイソプレノイドの構造的模倣体は、これまでに報告された中でも最も強力なhGGPPS阻害剤である[(a)Shull,L.W.ら、Bioorg Med Chem 2006、14、4130-4136。(b)Barney,R.J.ら、Bioorg Med Chem 2010、18、7212-7220。(c)Wills,V.S.ら、ACS Med.Chem.Lett.2015、6、1195-1198]。しかし、複数の非芳香二重結合(例えば、化合物CおよびD)に加えて、長い炭化水素鎖(例えば、化合物A、CおよびD)により特徴付けられる化合物は、シトクロムP450の代謝的酸化を非常に受けやすく(すなわち、代謝的安定性が低い)、また化学的安定性が低いという欠点があり得る。
【化2】
【0010】
PCT特許出願国際公開第2016/081281号は、FPPSおよび/またはGGPPSを阻害することが報告されている親油性ビスホスホネート化合物について開示している。米国特許出願第2015/0322099A1号およびPCT特許出願国際公開第2014/008407号は、エーテル結合を介して結合した1つの芳香族鎖および1つの脂肪族イソプレノイド鎖を有するビスホスホネート化合物からなるGGPPS選択的阻害剤について開示している。PCT特許出願国際公開第2014/176546号は、GGPPS阻害剤が、肺線維症などの線維症を治療するのに有用であり得ることを教示している。
【0011】
hFPPSの新規なC-6置換チエノピリミジン系ビスホスホネート(ThP-BP)阻害剤の設計および合成が最近報告された[(a)Leung,C.Y.ら、J.Med.Chem.2013、56、7939-7950。(b)De Schutter、J.W.ら、J.Med.Chem 2014、57、5764-5776]。
【発明の概要】
【0012】
新規なクラスの式Iの二環式複素環化合物が調製され、これは、例えば、hFPPSに対しても適度に選択的である、hGGPPSの強力な阻害剤としてその活性を介して、GGPPの生合成およびGTPアーゼのゲラニルゲラニル化を阻害するのに有用であることが判明した。
【0013】
hGGPPSの強力な阻害剤は、特に、多発性骨髄腫(MM)、慢性骨髄性白血病細胞および他のタイプの癌細胞株の増殖を抑制し、そのアポトーシスをもたらすことにより癌細胞の増殖を抑制する顕著な効果をもたらす。これらの阻害剤は、市販のゾレドロン酸(ZOL)薬およびC-6置換チエノピリミジン系ビスホスホネートを含むhFPPSの強力な阻害剤よりもさらに良好に機能する。後者は、hGGPPSではなく、hFPPSの強力な阻害剤であるが、本明細書に開示されるhGGPPS阻害剤と非常によく似た物理化学的特性を有する。
【0014】
hGGPPS阻害剤はまた、hFPPS阻害剤よりもヒト神経細胞においてリン酸化タウタンパク質(P-タウ)レベルをダウンレギュレートするより顕著な効果を有し得る。したがって、hGGPPS阻害剤はまた、神経変性を引き起こす可能性があり、アルツハイマー病の現在公知の特徴の一つである、神経原線維変化のP-タウ依存的形成の開始または進行を停止させる重要な治療剤であり得る。
【0015】
したがって、本出願の一態様は、式I
【化3】
(式中、RはH、C1~2アルキルおよびC1~2フルオロアルキルから選択され、
はピロリン酸生物学的等価体であり、
XはO、CH、NHおよびN(C1~4アルキル)から選択され、
ZおよびYは独立してS、O、NRおよびCR3’から選択され、
CyはC6~10アリール、C5~10ヘテロアリール、C3~10シクロアルキルおよびC3~10ヘテロシクロアルキルから選択され、これらは各々非置換であるか、または独立してハロ、シアノ、ヒドロキシル、NH、NHC1~6アルキル、NHC3~6シクロアルキル、N(C1~6アルキル)(C1~6アルキル)、C1~6フルオロアルキル、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~6フルオロアルコキシ、C1~6アルコキシおよびC3~6シクロアルコキシから選択される1または2個の置換基で置換されており、
CyはC3~10シクロアルキル、C3~10ヘテロシクロアルキル、C6~10アリールおよびC5~10ヘテロアリールから選択され、これらは各々非置換であるか、または独立してハロ、シアノ、ヒドロキシル、NH、NHC1~6アルキル、N(C1~6アルキル)(C1~6アルキル)、NHC3~6シクロアルキル、C1~6フルオロアルキル、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~6フルオロアルコキシ、C3~6シクロアルコキシ、フェニル、C3~6ヘテロシクロアルキル、C5~6ヘテロアリールおよびC1~6アルコキシから選択される1~3個の置換基で置換されており、
Lは、直接結合、C(O)、O、AC(O)(CR4’(A’)、ASO(CR4’(A’)、C(O)A(CR4’(A’)およびSOA(CR4’(A’)から選択され、
およびR3’は独立してH、C3~6シクロアルキルおよびC1~4アルキルから選択されるか、またはRが結合する原子がsp混成している場合、Rは存在せず、
およびR4’は独立してH、ハロ、C1~4フルオロアルキル、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~4フルオロアルコキシ、C3~6シクロアルコキシおよびC1~4アルコキシから選択され、
mは0、1および2から選択され、
pは0および1から選択され、
AはNHおよびN(C1~4アルキル)から選択され、
mが1または2であるとき、A’はO、NHおよびN(C1~4アルキル)から選択され、mが0であるとき、A’はNHおよびN(C1~4アルキル)から選択され、
【化4】
は、単または二重結合を表すが、但し2つの二重結合が互いに隣接しないことを条件とする)
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物および/もしくはプロドラッグを含む。
【0016】
本出願はまた、式I
【化5】
(式中、RはH、C1~2アルキルおよびC1~2フルオロアルキルから選択され、
はピロリン酸生物学的等価体であり、
XはO、CH、NHおよびN(C1~4アルキル)から選択され、
ZおよびYは独立してS、O、NRおよびCR3’から選択され、
CyはC6~10アリール、C5~10ヘテロアリール、C3~10シクロアルキルおよびC3~10ヘテロシクロアルキルから選択され、これらは各々非置換であるか、または独立してハロ、シアノ、ヒドロキシル、NH、NHC1~6アルキル、N(C1~6アルキル)(C1~6アルキル)、C1~6フルオロアルキル、C1~6アルキル、C1~6フルオロアルコキシおよびC1~6アルコキシから選択される1または2個の置換基で置換されており、
CyはC3~10シクロアルキル、C3~10ヘテロシクロアルキル、C6~10アリールおよびC5~10ヘテロアリールから選択され、これらは各々非置換であるか、または独立してハロ、シアノ、ヒドロキシル、NH、NHC1~6アルキル、N(C1~6アルキル)(C1~6アルキル)、C1~6フルオロアルキル、C1~6アルキル、C1~6フルオロアルコキシおよびC1~6アルコキシから選択される1~3個の置換基で置換されており、
Lは、直接結合、C(O)、O、AC(O)(CR4’(A’)、ASO(CR4’(A’)、C(O)A(CR4’(A’)およびSOA(CR4’(A’)から選択され、
およびR3’は独立してHおよびC1~4アルキルから選択されるか、またはRが結合する原子が、sp混成している場合、Rは存在せず、
およびR4’は独立してH、ハロ、C1~4フルオロアルキル、C1~4アルキル、C1~4フルオロアルコキシおよびC1~4アルコキシから選択され、
mは0、1および2から選択され、
pは0および1から選択され、
AはNHおよびN(C1~4アルキル)から選択され、
mが1または2であるとき、A’はO、NHおよびN(C1~4アルキル)から選択され、mが0であるとき、A’はNHおよびN(C1~4アルキル)から選択され、
【化6】
は、単または二重結合を表すが、但し2つの二重結合が互いに隣接しないことを条件とする)
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物および/もしくはプロドラッグを含む。
【0017】
本出願はまた、本出願の1つ以上の化合物および担体を含む組成物を含む。一実施形態において、組成物は、本出願の1つ以上の化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【0018】
本出願の化合物はhGGPPS機能を阻害する。したがって、本出願の化合物は、hGGPPSにより媒介される疾患、障害または状態の治療に有用である。したがって、本出願はまた、治療有効量の本出願の1つ以上の化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む、hGGPPSによりまたはこれを介して媒介される疾患、障害または状態を治療する方法を含む。
【0019】
さらなる実施形態において、本出願の化合物は、薬剤として用いられる。したがって、本出願はまた、薬剤としての使用のための本出願の化合物を含む。
【0020】
本出願はまた、治療有効量の本出願の1つ以上の化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む、hGGPPSにより媒介されるか、またはゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態を治療する方法を含む。本出願はまた、hGGPPSにより媒介されるか、またはゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態の治療のための本出願の1つ以上の化合物の使用、ならびにhGGPPSにより媒介されるか、またはゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態の治療のための薬剤の調製のための本出願の1つ以上の化合物の使用を含む。本出願はさらに、hGGPPSにより媒介されるか、またはゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態の治療での使用のための本出願の1つ以上の化合物を含む。
【0021】
本出願はまた、hGGPPS阻害剤が、同等の効力およびよく似た構造的および物理化学的特性を有するhFPPS阻害剤よりもはるかに強力な抗骨髄腫効果を示すという証拠を提供する。hFPPSおよびhGGPPSのmRNAレベルは、癌細胞株百科事典[(a)癌細胞株百科事典およびGenomics of Drug Sensitivity in Cancer Investigators。2つの癌細胞株データ間でのファーマコゲノミクスにおける一致はNature 2015、528、84-87に示されている;(b)Barretina,Jら;癌細胞株百科事典は、抗癌剤感受性の予測モデリングを可能にする。Nature 2012、483、603-607参照]に報告されている様々なMM細胞株で分析された。興味深いことに、hFPPSのmRNAレベルは、すべてのMMヒト細胞においてhGGPPSのmRNAレベルよりも一貫して顕著に高いことが判明した(図2a)。さらに、hFPPSおよびhGGPPSのmRNAレベルは、大規模な臨床試験に参加したMM患者の骨髄試験片から採取した初代MM細胞で分析された(診断時に得られた724人の患者の骨髄試験片からのCD138選択MM細胞からのデータ;CoMMpass 1A10臨床試験データ)。これらの患者からの腫瘍において、hFPPSのmRNA発現はまた、hGGPPSのmRNA発現よりも顕著に高いことが確証された(図2b)。まとめて、MM細胞および骨髄腫患者におけるこれらの知見は、インビボでのヒトGGPPSの標的関与がはるかに高く(%)、したがって、等しい効力のおよび物理化学的に同等のhFPPS阻害剤で治療するよりもhGGPPS阻害剤で治療した場合、インビボでのGTPアーゼのGGPP依存的活性化がより効果的に阻害されることを示唆している。
【0022】
本出願はまた、hGGPPS阻害剤である本明細書に開示される化合物が、多剤耐性卵巣癌細胞(ADR-RES;図3b)など、ドキソルビシンなどの既存の化学療法薬に耐性を示す癌細胞株を含む多様な癌(図3c)の癌細胞増殖を抑制するという証拠を提供する。しかし、hGGPPS阻害剤である本明細書に開示される化合物は、広域スペクトル抗癌剤ドキソルビシンよりも正常なヒト気管支細胞(NHBE)に対する毒性が顕著に低い(図3a)。
【0023】
本出願はまた、hGGPPS阻害剤である本明細書に開示される化合物が、明らかな毒性を生じることなく、MM癌細胞(図8a)およびVkMYCトランスジェニックマウスの末梢血(図8b)においてRap1Aのゲラニルゲラニル化も抑制するという証拠を提供する。これらのマウスは、理想的なMM疾患モデルであり、ヒトMM疾患を臨床的に反復することが示されている。
【0024】
本出願はまた、hGGPPS阻害剤である本明細書に開示される化合物が、雄CD-1マウス肝ミクロソーム(MLM)、Sprague-Dawleyラット肝ミクロソーム(RLM)およびヒト肝ミクロソーム(HLM)において代謝的に非常に安定であるという証拠を提供する。
【0025】
一実施形態において、hGGPPSにより媒介されるか、またはゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態は、新生物障害である。一実施形態において、治療は、このような治療を必要とする対象における細胞増殖の低下、または腫瘍量、体積もしくは分布の減少など、新生物障害の少なくとも1つの症状を改善するのに有効な量で行われる。hGGPPSのビスホスホネート阻害剤も、骨における骨吸収抑制作用に直接関連する破骨細胞内のcdc42、RacおよびRhoなどのゲラニルゲラニル化タンパク質の活性を抑制することが公知である。したがって、Novartisにより公表されたH NMRに基づく方法を用いて決定されるように((a)Jahnke,W.ら、ChemMedChem 2010、5、770-776および(b)Angew.Chem.Int.Ed.2015、54、14575-14579参照)、ゾレドロン酸およびリセドロン酸として同等の親和性で骨に結合するhGGPPSのビスホスホネート阻害剤である本明細書に開示される化合物は、骨粗鬆症および癌関連溶骨性疾患などの骨障害の治療に用いられ得る。したがって、一実施形態において、hGGPPSにより媒介されるか、またはゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態は、骨粗鬆症および癌関連溶骨性疾患などの骨障害である。
【0026】
一実施形態において、hGGPPSにより媒介されるか、またはゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態は癌である。
【0027】
一実施形態において、hGGPPSにより媒介されるか、またはゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態は、hGGPPSの阻害により直接または間接的に影響を受ける無制御および/または異常な細胞活性に関連する疾患、障害または状態である。別の実施形態において、hGGPPSの阻害により直接または間接的に影響を受ける無制御および/または異常な細胞活性は、細胞の増殖活性である。
【0028】
本出願はまた、本出願の有効量の1つ以上の化合物を細胞に投与または送達することを含む、細胞の増殖活性を阻害する方法を含む。
【0029】
一実施形態において、hGGPPSにより媒介されるか、またはゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態は、神経変性をもたらすタウオパチーである。タウオパチーは、アルツハイマー病の発症および進行に強く関与している。したがって、一実施形態において、hGGPPSにより媒介されるか、またはゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態はアルツハイマー病である。
【0030】
さらなる実施形態において、hGGPPSにより媒介されるか、またはゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態は癌であり、本出願の1つ以上の化合物は、1つ以上の追加の癌治療と組み合わせて投与される。別の実施形態において、追加の癌治療は、放射線療法、化学療法、抗体療法などの標的化療法、チロシンキナーゼ阻害剤などの低分子療法、免疫療法、ホルモン療法および抗血管新生療法から選択される。
【0031】
他の実施形態において、本化合物は、癌、炎症および心血管疾患を含む、タンパク質のプレニル化により完全にまたは部分的に調節される多数の経路に関連した広範な医学的状態全体で医学的に有用である。
【0032】
他の実施形態において、本化合物は、癌の治療、特に、多発性骨髄腫の原発性悪性腫瘍とその特徴的な溶骨性疾患の両方を治療するのに最も有用であり得る。
【0033】
本出願はさらに、本出願の化合物を調製する方法を提供する。一般的および特定の方法が、以下でより詳細に考察され、以下の実施例に記載される。
【0034】
本出願の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および特定の例は、本出願の実施形態を示しているが、例示のために示されているにすぎず、特許請求の範囲は、これらの実施形態に制限されるべきではなく、全体として説明と一致する広範な解釈が与えられるべきであることが理解されるべきである。
【0035】
本出願を以下の図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】以下を示す略図である:(a)イソプレノイドの生合成;FPPおよびGGPPを含むイソプレノイドと結合した代謝産物の構造が示されている、(b)メバロン酸経路;主要な酵素(すなわち、スタチンおよびビスホスホネート)ならびに酵素hFPPSおよびhGGPSの機能を調節する既存のクラスの薬物が示されている。
図2】(a)癌細胞株百科事典に報告されている様々なMM細胞株におけるhFPPSおよびhGGPPSのmRNAレベル、ならびに(b)hFPPSのmRNA発現レベルが、多発性骨髄腫患者の骨髄試料においてhGGPPSのレベルよりも高いことを示すCoMM IA10臨床試験からのデータを示すグラフである。
図3図3a、bは、(a)正常なヒト気管支細胞(NHBE細胞)、(b)多剤耐性ポンプを高レベルで発現する卵巣癌細胞(ADR-RES細胞)に対するドキソルビシン、ならびに2つの例示的化合物I-37およびI-39の抗増殖効果の比較を示すグラフである。図3cは様々な癌細胞株における例示的化合物I-37の抗増殖効果を示すグラフである;使用した細胞株を表4に示す。
図4】慢性骨髄性白血病細胞(K562)および急性単球性白血病細胞(MOLM-13)における例示的化合物I-6およびゾレンドロネートの抗腫瘍効果を示すグラフである。
図5】多発性骨髄腫細胞(RPMI-8226)における例示的化合物I-6、I-34、I-7、I-35、I-36、I-39、I-37およびI-40の抗腫瘍効果を示すグラフである。
図6】多発性骨髄腫細胞株RPMI-8226を用いた、細胞アポトーシスの検出のためのフローサイトメトリーデータの一例を示すグラフである。未処置の多発性骨髄腫細胞および薬剤ベルケイド(多発性骨髄腫の治療のための強力な抗癌剤)で処置した細胞での対照実験を並行して行った。
図7】本出願の例示的hGGPPS阻害化合物I-5と比較した、先行技術の化合物6-I(hFPPS阻害剤;国際公開第2014/078957号)の阻害活性(IC50値)、ならびにこのClog P値およびC-18逆相HPLC保持時間を含むこれらの物理化学的特性を含有する図である;後者の特性は、2つの化合物I-5と6-Iとの間の物理化学的類似性を反映している。
図8】阻害化合物I-37で処置した場合の、Rap 1Aプレニル化の用量依存的阻害を示す、より具体的には(a)48時間にわたって阻害化合物I-37で処置した多発性骨髄腫細胞RPMI-8226における非プレニル化Rap1Aの細胞内レベル、(b)1期間または16日間(この期間内の週末の休薬期間を含む)にわたって17用量を1mg/Kgおよび5mg/Kgの用量の阻害化合物I-37で処置した後の進行性MM疾患症状を有するVkMYCトランスジェニックマウスの末梢血における非プレニル化Rap1Aの細胞内レベルを示す、ウェスタンブロットデータを含有する図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
I.定義
別段の指示のない限り、本項および他の項に記載される定義および実施形態は、当業者に理解されるように、好適であることが本明細書に記載されている本出願のすべての実施形態および態様に適用可能であることが意図される。本出願内で別段の指定のない限り、または当業者により別に理解されていない限り、本出願で使用する名称は、「有機化学命名法」(Pergamon Press、1979)、A、B、C、D、E、FおよびH項に記載される例および規則に概ね従う。任意で、化合物の名称は、ChemDraw、ACD/ChemSketch、Version 5.09/2001年9月、Advanced Chemistry Development, Inc.、Toronto、カナダなどの化学命名プログラムを用いて作製されてもよい。
【0038】
本明細書で使用する用語「本出願の化合物(compound of the applicationまたはcompound of the present application)」などは、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物および/もしくはその放射性標識形態を指す。
【0039】
本明細書で使用する用語「本出願の組成物(composition of the applicationまたはcomposition of the present application)」などは、1つ以上の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物および/もしくは放射性標識形態を含む、医薬組成物などの組成物を指す。
【0040】
本明細書で使用する用語「および/または」は、列挙された項目が、個々にまたは組み合わせて存在するか、または用いられることを意味する。実際に、この用語は、列挙される項目の「少なくとも1つ」または「1つ以上」が用いられるか、または存在することを意味する。その薬学的に許容される塩、溶媒和物および/または放射性標識形態に関する用語「および/または」は、本出願の化合物が、個々の塩、水和物または放射性標識形態、ならびに例えば、本出願の化合物の溶媒和物の塩または本出願の化合物の放射性標識形態の塩の組み合わせとして存在することを意味する。
【0041】
本出願で使用する場合、文脈で別段の明確な指示がない限り、単数形「1つの(a、an)」および「その(the)」は、複数の指示対象を含む。例えば、「化合物(a compound)」を含む一実施形態は、1つの化合物、または2つ以上の追加の化合物を有する特定の態様を提示することが理解されるべきである。
【0042】
追加のまたは第2の化合物などの「追加の」または「第2」の構成要素を含む実施形態において、本明細書で使用する第2の構成要素は、他の構成要素または第1の構成要素と化学的に異なる。「第3の」構成要素は、他の、第1のおよび第2の構成要素と異なり、さらに列挙された構成要素または「追加の」構成要素は同様に異なる。
【0043】
本出願の範囲の理解において、用語「含む(comprising)」(および「含む(compriseおよびcomprises)」など含む(comprising)の任意の形態)、「有する(having)」(および「有する(haveおよびhas)」など有する(having)の任意の形態)、「含む(including)」(および「含む(includeおよびincludes)」など含む(including)の任意の形態)または「含有する(containing)」(および「含有する(containおよびcontains)」など含有する(containing)の任意の形態)は包括的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素または方法ステップを排除しない。
【0044】
本明細書で使用する用語「からなる(consisting)」およびその派生語は、言及された特徴、要素、構成要素、群、整数および/またはステップの存在を特定し、また他の述べられていない特徴、要素、構成要素、群、整数および/またはステップの存在を排除するクローズド用語であることが意図される。
【0045】
本明細書で使用する用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、言及された特徴、要素、構成要素、群、整数および/またはステップの存在を特定し、特徴、要素、構成要素、群、整数および/またはステップの基本的および新規な特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさないものの存在を特定することが意図される。
【0046】
本明細書で使用する用語「好適な」は、特定の化合物または条件の選択が、行われる特定の合成操作、変換される分子(複数可)の同一性および/または化合物の特定の使用に依存するが、選択が当技術分野において訓練された当業者の技術の十分な範囲内であることを意味する。
【0047】
本出願の実施形態において、本明細書に記載の化合物は、少なくとも1つの不斉中心を有し得る。化合物は、1つ以上の不斉中心を保有し、これらは、ジアステレオマーとして存在し得る。すべてのこのような異性体および任意の割合でのこれらの混合物が、本出願の範囲内に包含されることが理解されるべきである。化合物の立体化学は、本明細書で命名されるかまたは示された任意の所与の化合物において示され得、このような化合物はまた、代替の立体化学を有する本出願の化合物を一定量(例えば、20%未満、好適には10%未満、より好適には5%未満)含有し得ることがさらに理解されるべきである。任意の光学異性体が、分離された、純粋または部分的に精製された光学異性体またはこれらのラセミ混合物として、本出願の範囲内に含まれることが意図される。
【0048】
本出願の化合物は、様々な互変異性形態でも存在でき、化合物が形成する任意の互変異性体ならびにこれらの混合物が本出願の範囲内に含まれることが意図される。
【0049】
本出願の化合物はさらに、様々な多形形態で存在でき、形成する任意の多形体またはその混合物が本出願の範囲内に含まれることが企図される。
【0050】
本明細書で使用する「実質的」、「約(aboutおよびapproximately)」などの程度の用語は、最終結果が大幅に変更されないように、修飾された用語の妥当な量の偏差を意味する。これらの程度の用語は、この偏差が、それが修飾する単語の意味を否定しないか、または当業者により別段の文脈上の示唆がない限り、修飾された用語の少なくとも±5%の偏差を含むとして解釈されるべきである。
【0051】
本明細書に開示される反応または方法ステップに関して本明細書で使用する表現「十分な程度まで進行する」は、反応または方法ステップが、出発物質または基質の生成物への変換が所与の反応に十分である程度まで進行することを意味する。約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100%超の出発物質または基質が生成物に変換された場合、変換は十分であり得る。
【0052】
IUPAC規則に基づき、式Iの二環式複素環コアの周りの原子の番号付けは、正確な構造に応じて異なる。便宜上、C-2およびC-4炭素についての言及は、以下に示すようなピリミジン環のみに基づいて割り当てられる:
【化7】
【0053】
本明細書で使用する用語「アルキル」は、単独で用いられるか、または別の基の一部として用いられるかにかかわらず、直鎖または分岐鎖の飽和アルキル基を意味する。言及されたアルキル基において可能な炭素原子数は、接頭辞「Cn1~n2」で示される。例えば、用語C1~10アルキルは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。
【0054】
用語「アルキレン」は、単独で用いられるか、または別の基の一部として用いられるかにかかわらず、直鎖または分岐鎖の飽和アルキレン基、すなわち、2つのその末端に置換基を含有する飽和炭素鎖を意味する。言及されたアルキレン基において可能な炭素原子数は、接頭辞「Cn1~n2」で示される。例えば、用語C0~6アルキレンは、存在しないか(「Cアルキレン」)、または1、2、3、4、5もしくは6個の炭素原子を有するアルキレン基を意味する。
【0055】
本明細書で使用する用語「アルケニル」は、単独で用いられるか、または別の基の一部として用いられるかにかかわらず、少なくとも1つの二重結合を含有する、直鎖または分岐鎖の不飽和アルキル基を意味する。言及されたアルキレン基において可能な炭素原子数は、接頭辞「Cn1~n2」で示される。例えば、用語C2~6アルケニルは、2、3、4、5または6個の炭素原子および少なくとも1つの二重結合を有するアルケニル基を意味する。
【0056】
本明細書で使用する用語「ハロアルキル」は、すべてを含む1個以上の水素原子がハロゲン原子で置き換えられているアルキル基を指す。一実施形態において、ハロゲンはフッ素であり、この場合、ハロアルキルは本明細書において「フルオロアルキル」基と称される。
【0057】
本明細書で使用する用語「アルコキシ」は、単独で用いられるか、または別の基の一部として用いられるかにかかわらず、「アルキル-O-」または「-O-アルキル」基を指す。用語C1~10アルコキシは、酸素原子に結合した1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。例示的なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t-ブトキシおよびイソブトキシが挙げられるがこれらに限定されない。
【0058】
本明細書で使用する用語「シクロアルキル」は、単独で用いられるか、または別の基の一部として用いられるかにかかわらず、いくつかの炭素原子および1つ以上の環を含有する飽和炭素環基を意味する。言及されたシクロアルキル基において可能な炭素原子数は、数的接頭辞「Cn1~n2」で示される。例えば、用語C3~10シクロアルキルは、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味する。
【0059】
本明細書で使用する用語「シクロアルコキシ」は、単独で用いられるか、または別の基の一部として用いられるかにかかわらず、「シクロアルキル-O-」または「-O-シクロアルキル」基を指す。言及されたシクロアルキル基において可能な炭素原子数は、数的接頭辞「Cn1~n2」で示される。例えば、用語C3~10シクロアルコキシは、酸素原子に結合した3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味する。
【0060】
本明細書で使用する用語「アリール」は、単独で用いられるか、または別の基の一部として用いられるかにかかわらず、少なくとも1つの芳香環を含有する炭素環基を指す。アリール基は1つまたは1つ超の環を含有する。言及されたアリール基において可能な炭素原子数は、数的接頭辞「Cn1~n2」で示される。例えば、用語C6~10アリールは、6、7、8、9または10個の炭素原子を有するアリール基を意味する。
【0061】
本明細書で使用する用語「ヘテロシクロアルキル」は、単独で用いられるか、または別の基の一部として用いられるかにかかわらず、3~10個の原子、および少なくとも1つの環を含有する非芳香環基を指し、1個以上の原子は、O、S、N、NHおよびNC1~6アルキルから選択されるヘテロ部分である。ヘテロシクロアルキル基は、飽和または不飽和(すなわち、1つ以上の二重結合を含有する)のいずれかであり、1つまたは1つ超の環を含有する。ヘテロシクロアルキル基が1つ超の環を含有する場合、環は、縮合、架橋、スピロ縮合または結合により連結され得る。ヘテロシクロアルキル基が接頭辞Cn1~n2を含有する場合、この接頭辞は対応する炭素環基における炭素原子数を示し、環原子の1個以上は、上で定義されるようなヘテロ部分で置き換えられている。
【0062】
本明細書で使用する用語「ヘテロアリール」は、5~10個の原子、少なくとも1つの芳香環およびO、S、N、NHおよびNC1~6アルキルから選択される少なくとも1つのヘテロ部分を含有する環基を指す。ヘテロアリール基は、1つまたは1つ超の環を含有する。ヘテロアリール基が1つ超の環を含有する場合、環は、縮合、架橋、スピロ縮合または結合により連結され得る。ヘテロアリール基が接頭辞Cn1~n2を含有する場合、この接頭辞は対応するアリール基における炭素原子数を示し、環原子の1個以上、好適には1~5個が、上で定義されるようなヘテロ部分で置き換えられている。
【0063】
5員ヘテロアリールは、5個の環原子を有する環を含むヘテロアリールであり、1、2または3個の環原子は、O、S、NHおよびNC1~6アルキルから選択されるヘテロ部分である。
【0064】
6員ヘテロアリールは、6個の環原子を有する環を含むヘテロアリールであり、1、2または3個の環原子は、O、S、N、NHおよびNC1~6アルキルから選択されるヘテロ部分である。
【0065】
5員ヘテロシクロアルキルは、5個の環原子を有する環を含むヘテロシクロアルキルであり、1、2または3個の環原子は、O、S、NHおよびNC1~6アルキルから選択されるヘテロ部分である。
【0066】
6員ヘテロシクロアルキルは、6個の環原子を有する環を含むヘテロシクロアルキルであり、1、2または3個の環原子は、O、S、N、NHおよびNC1~6アルキルから選択されるヘテロ部分である。
【0067】
アリールおよびシクロ基を含むすべての環基は、1つまたは1つ超の環(すなわち、多環式である)を含有する。環基が1つ超の環を含有する場合、環は、縮合、架橋またはスピロ縮合され得る。
【0068】
第1の環が第2の環と「縮合している」は、第1の環および第2の環が、これらの間の2個の隣接する原子を共有していることを意味する。
【0069】
第1の環が第2の環と「架橋している」は、第1の環および第2の環が、これらの間の2個の隣接していない原子を共有していることを意味する。
【0070】
第1の環が第2の環と「スピロ縮合している」は、第1の環および第2の環が、これらの間の1個の原子を共有していることを意味する。
【0071】
接頭辞として、本明細書で使用する用語「置換されている」は、1個以上の利用可能な水素原子が、1個以上の他の化学基で置き換えられている構造、分子または基を指す。
【0072】
接尾辞として、第1の構造、分子または基に関して本明細書で使用し、化学基の1つ以上の変数または名称がそれに続く、用語「置換されている」は、第1の構造、分子または基の1個以上の利用可能な水素を、1個以上の変数または命名された化学基で置き換えることから得られる第2の構造、分子または基を指す。
【0073】
「利用可能な水素原子」または「利用可能な原子」と同様に用語「利用可能な」は、別の原子または置換基による置き換えが可能であることが当業者に公知である原子を指す。
【0074】
用語「任意で置換されている」は、非置換であるか、または1個以上の置換基で置換されているかのいずれかである基、構造または分子を指す。
【0075】
本明細書で使用する用語「sp混成している」は、二重結合を介してその隣接する原子の1個に結合した原子を指す。
【0076】
本明細書で使用する用語「ピロリン酸生物学的等価体」は、物理的および/または化学的特性に関してピロリン酸を機能的に模倣し、ピロリン酸基に類似した生物学的特性を広くもたらす化学置換基または基を指す。
【0077】
本明細書で使用する「二リン酸」としても公知の用語「ピロリン酸」は以下に示す化学基を指し、これは、hGGPPSの天然の基質/代謝産物および生成物の一部である。このような部分は、その環境のpHに応じて、モノ、ジまたはトリアニオンにイオン化され得ることが当業者に理解されるであろう。
【化8】
【0078】
本明細書で使用する用語「アミン」または「アミノ」は、単独で用いられるか、または別の基の一部として用いられるかにかかわらず、一般式NRR’(式中、RおよびR’は互いに独立して水素、またはC1~6アルキルなどのアルキル基から選択される)の基を指す。
【0079】
本明細書で使用する用語「ハロ」または「ハロゲン」は、単独で用いられるか、または別の基の一部として用いられるかにかかわらず、ハロゲン原子を指し、フルオロ、クロロおよびブロモを含む。
【0080】
本明細書で使用する用語「保護基」または「PG」などは、分子の異なる部分を操作または反応させながら、分子のこれらの反応性部分における副反応を防止するために、分子の反応性部分を保護または遮蔽する化学部分を指す。操作または反応が完了した後、保護基は、分子の残りの部分が崩壊または分解しない条件下で除去される。好適な保護基の選択は、当業者により行われ得る。例えば、「Protective Groups in Organic Chemistry」McOmie,J.F.W.編、Plenum Press、1973、「Protective Groups in Organic Synthesis」T.W.Green、P.G.M.Wuts、Wiley-Interscience、New York、(第4版、2007)およびKocienski、P. Protecting Groups、第3版、2003、Georg Thieme Verlag(The Americas)に記載されるように、多くの従来の保護基が当技術分野で公知である。
【0081】
本明細書で使用する用語「細胞」は、単一の細胞または複数の細胞を指し、細胞培地または対象のいずれかにおける細胞を含む。
【0082】
本明細書で使用する用語「対象」は、哺乳動物を含む動物界のすべてのメンバーを含み、好適にはヒトを指す。
【0083】
用語「薬学的に許容される」は、ヒトなどの対象の治療に適合性があることを意味する。
【0084】
用語「薬学的に許容される担体」は、医薬組成物、すなわち対象への投与が可能である剤形の形成を可能にするために活性成分と混合される、無毒の溶媒、分散剤、賦形剤、補助剤、または他の物質を意味する。
【0085】
用語「薬学的に許容される塩」は、対象の治療に好適であるかまたはこれに適合性がある酸付加塩または塩基付加塩のいずれかを意味する。
【0086】
対象の治療に好適であるか、またはこれに適合性がある酸付加塩は、任意の塩基性化合物の任意の無毒の有機または無機酸付加塩である。酸付加塩を形成する塩基性化合物としては、例えば、アミン基を含む化合物が挙げられる。好適な塩を形成する例示的な無機酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸およびリン酸、ならびにオルトリン酸一水素ナトリウムおよび硫酸水素カリウムなどの酸性金属塩が挙げられる。好適な塩を形成する例示的な有機酸としては、モノ、ジおよびトリカルボン酸が挙げられる。このような有機酸の例としては、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、桂皮酸、マンデル酸、サリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、p-トルエンスルホン酸、ならびにメタンスルホン酸、エタンスルホン酸および2-ヒドロキシエタンスルホン酸などの他のスルホン酸がある。一実施形態において、一または二酸塩が形成され、このような塩は、水和、溶媒和または実質的に無水の形態のいずれかで存在する。一般に、酸付加塩は、その遊離塩基形態と比較して、水および様々な親水性有機溶媒により可溶性であり、一般により高い融点を示す。適当な塩の選択基準は当業者に公知である。それだけに限らないがシュウ酸塩などの他の薬学的に許容されない塩は、例えば、実験用の本出願の化合物の単離において、または薬学的に許容される酸付加塩へのその後の変換のために用いられ得る。
【0087】
対象の治療に好適であるか、またはこれに適合性がある塩基付加塩は、任意の酸性化合物の任意の無毒の有機または無機塩基付加塩である。塩基付加塩を形成する酸性化合物としては、例えば、カルボン酸基を含む化合物が挙げられる。好適な塩を形成する例示的な無機塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムまたは水酸化バリウム、およびアンモニアが挙げられる。好適な塩を形成する例示的な有機塩基としては、イソプロピルアミン、メチルアミン、トリメチルアミン、ピコリン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などの脂肪族、脂環式または芳香族有機アミンが挙げられる。例示的な有機塩基としては、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリンおよびカフェインがある[例えば、S.M.Bergeら、「Pharmaceutical Salts」J.Pharm.Sci.1977、66、1-19参照]。例えば、適当な塩の選択は、存在する場合、化合物中の他の箇所のエステル官能基が加水分解されないので有用であり得る。適当な塩の選択基準は当業者に公知である。
【0088】
本明細書で使用する用語「溶媒和物」は、好適な溶媒の分子が結晶格子に組み込まれた、化合物または化合物の塩を意味する。好適な溶媒は、投与される投与量で生理学的に認容性である。好適な溶媒の例としては、エタノール、水などがある。水が溶媒である場合、分子は、「水和物」と称される。本出願の化合物の溶媒和物の形成は、化合物および溶媒和物に応じて異なる。一般に、溶媒和物は、化合物を適当な溶媒に溶解し、冷却により、または貧溶媒の使用により溶媒和物を単離することによって形成される。溶媒和物は、典型的には周囲条件下で乾燥または共沸される。特定の溶媒和物を形成するのに好適な条件の選択は当業者により行われ得る。
【0089】
本明細書で使用する場合、当技術分野でよく理解されているように用語「治療する」または「治療」は、臨床結果を含む有益または所望の結果を得るための方式を意味する。有益または所望の臨床結果としては、検出可能であるか、または不可能であるかにかかわらず、1つ以上の症状または状態の軽減または改善、疾患の程度の減少、疾患の安定化した(すなわち、悪化していない)状態、疾患の蔓延の予防、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善または緩和、疾患の再発の減少、および(部分的であるか、または全体的であるかにかかわらず)緩解を含むがこれらに限定されない。「治療する」および「治療」はまた、治療を受けていない場合の予想される生存時間と比較した生存時間の延長を意味し得る。「治療する」および「治療」は防御的な治療も含む。例えば、早期癌の対象が、進行を予防するために治療され得るか、またはその代わりに緩解期の対象が、再発を予防するために本出願の化合物または組成物で治療され得る。治療方法は、治療有効量の本出願の1つ以上の化合物を対象に投与することを含み、任意で単回投与からなるか、またはその代わりに一連の投与を含む。例えば、本出願の化合物は、少なくとも週1回投与される。しかし、別の実施形態において、化合物は2週間、3週間または1ヶ月に約1回から対象に投与される。別の実施形態において、化合物は週約1回から1日約1回投与される。別の実施形態において、化合物は1日2、3、4、5または6回投与される。治療期間の長さは、疾患、障害もしくは状態の重症度、対象の年齢、本出願の化合物の濃度および/もしくは活性、ならびに/またはこれらの組み合わせなどの様々な要因に依存する。治療のために用いられる化合物の有効投与量は、特定の治療計画の期間にわたって増減し得ることも認識されるであろう。投与量の変化は、当技術分野で公知の標準的な診断アッセイによりもたらされ、明らかになり得る。場合によっては、長期投与が必要とされる。例えば、化合物は、対象を治療するのに十分な量および持続期間で対象に投与される。
【0090】
疾患、障害または状態を「緩解する」は、疾患、障害もしくは状態の程度および/もしくは望ましくない臨床発現が、障害を治療しない場合と比較して低減されるか、および/または経時的な進行が減速もしくは長期化されることを意味する。
【0091】
本明細書で使用する用語「予防する」もしくは「予防」またはこれらの同義語は、疾患、障害もしくは状態に罹患するか、または疾患、障害もしくは状態に関連する症状を現す患者のリスクまたは可能性の低下を指す。
【0092】
本明細書で使用する「疾患、障害または状態」は、hGGPPS酵素の阻害により、特に本明細書に記載される本出願の化合物などのhGGPPS酵素阻害剤を用いて治療可能な疾患、障害または状態を指す。
【0093】
本明細書で使用する用語「hGGPPSにより媒介される」または「hGGPPSの阻害により治療可能な」は、治療されるべき疾患、障害または状態が、hGGPPS活性、特に、例えば、hGGPPS遺伝子の過剰発現、またはhGGPPSタンパク質過剰蓄積、またはhGGPPS媒介遺伝子発現の産物もしくは前駆体であるタンパク質の過剰発現に起因する、hGGPPS活性の増加を含む、直接または間接的のいずれかで、いくつかの生物学的基盤により影響を受けるか、これにより調節されるか、および/またはこれを有することを意味する。より広い文脈において、「hGGPPSにより媒介される」は、異常なhGGPPS活性に起因する、タンパク質のゲラニルゲラニル化などの異常なプレニル化により引き起こされる多数の疾患を含み得る。本明細書で使用する場合、hGGPPSは、ヒトゲラニルゲラニルピロリン酸シンターゼ酵素として同定されるタンパク質を指す(Park,J.ら、Frontiers in Chemistry 2014、2、第50条;doi:10.3389/fchem.2014.00050)。
【0094】
本明細書で使用する場合、用語「有効量」または「治療有効量」は、所望の結果を達成するのに必要な投与量および期間において有効な本出願の1つ以上の化合物の量を意味する。例えば、hGGPPSにより媒介される疾患、障害または状態を治療する文脈において、有効量は、例えば、1つ以上の化合物の投与なしでの阻害と比較して、hGGPPSの阻害を増大させる量である。一実施形態において、有効量は、対象の疾患状態、年齢、性別および/または体重などの要因に応じて異なる。さらなる実施形態において、有効量に相当する所与の化合物(複数可)の量は、投与される薬物(複数可)または化合物(複数可)、医薬製剤、投与経路、状態、疾患または障害の種類、治療される対象のアイデンティティなどの要因に応じて異なるが、それにもかかわらず当業者により日常的に決定され得る。
【0095】
本明細書で使用する用語「投与された」は、治療有効量の本出願の1つ以上の化合物または組成物の細胞、組織、器官または対象への投与を意味する。
【0096】
本明細書で使用する用語「新生物障害」は、増殖性細胞増殖により特徴付けられる異常な状況または状態などの自律増殖または複製の能力を有する細胞により特徴付けられる疾患、障害または状態を指す。本明細書で使用する用語「新生物」は、新生物障害を有する対象における細胞の異常な増殖および/または分裂に起因する組織の体積を指す。新生物は、良性(子宮筋腫および色素性母斑など)、潜在的に悪性(上皮内癌など)または悪性(すなわち、癌)であり得る。例示的な新生物障害としては、癌、肉腫、転移性障害(例えば、前立腺から生じる腫瘍)、造血新生物障害(例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫および他の悪性形質細胞障害)、転移性腫瘍および他の癌が挙げられるが、これらに限定されない、いわゆる固形腫瘍および液性腫瘍が挙げられる。
【0097】
本明細書で使用する用語「癌」は、細胞増殖性疾患状態を指す。
【0098】
II.本出願の化合物および組成物
本出願の化合物が調製され、これは、hGGPPSにより直接または間接的に影響を受ける無制御および/または異常な細胞活性を阻害することが判明した。特に、本出願の化合物は、hGGPPS阻害剤としての活性を示し、したがって、癌などの新生物障害の治療のための療法に有用である。
【0099】
本出願の化合物はまた、ヒト神経細胞におけるタウタンパク質のリン酸化を減少させる活性を示し得、アルツハイマー病および他のタウオパチーに強く関連する脳におけるホスホタウ依存的神経原線維変化の進行または開始を遅らせるなどの療法に潜在的に有用であり得る。
【0100】
したがって、本出願の一態様は、式I
【化9】
(式中、RはH、C1~2アルキルおよびC1~2フルオロアルキルから選択され、
はピロリン酸生物学的等価体であり、
XはO、CH、NHおよびN(C1~4アルキル)から選択され、
ZおよびYは独立してS、O、NRおよびCR3’から選択され、
CyはC6~10アリール、C5~10ヘテロアリール、C3~10シクロアルキルおよびC3~10ヘテロシクロアルキルから選択され、これらは各々非置換であるか、または独立してハロ、シアノ、ヒドロキシル、NH、NHC1~6アルキル、NHC3~6シクロアルキル、N(C1~6アルキル)(C1~6アルキル)、C1~6フルオロアルキル、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~6フルオロアルコキシ、C3~6シクロアルコキシおよびC1~6アルコキシから選択される1または2個の置換基で置換されており、
CyはC3~10シクロアルキル、C3~10ヘテロシクロアルキル、C6~10アリールおよびC5~10ヘテロアリールから選択され、これらは各々非置換であるか、または独立してハロ、シアノ、ヒドロキシル、NH、NHC1~6アルキル、NHC3~6シクロアルキル、N(C1~6アルキル)(C1~6アルキル)、C1~6フルオロアルキル、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~6フルオロアルコキシ、C3~6シクロアルコキシ、フェニル、C3~6ヘテロシクロアルキル、C5~6ヘテロアリールおよびC1~6アルコキシから選択される1~3個の置換基で置換されており、
Lは、直接結合、C(O)、O、AC(O)(CR4’(A’)、ASO(CR4’(A’)、C(O)A(CR4’(A’)およびSOA(CR4’(A’)から選択され、
およびR3’は独立してH、C3~6シクロアルキルおよびC1~4アルキルから選択されるか、またはRが結合する原子がsp混成している場合、Rは存在せず、
およびR4’は独立してH、ハロ、C1~4フルオロアルキル、C1~4アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~4フルオロアルコキシ、C3~6シクロアルコキシおよびC1~4アルコキシから選択され、
mは0、1および2から選択され、
pは0および1から選択され、
AはNHおよびN(C1~4アルキル)から選択され、
mが1または2であるとき、A’はO、NHおよびN(C1~4アルキル)から選択され、mが0であるとき、A’はNHおよびN(C1~4アルキル)から選択され、
【化10】
は、単または二重結合を表すが、但し2つの二重結合が互いに隣接しないことを条件とする)
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物および/もしくはプロドラッグを含む。
【0101】
いくつかの実施形態において、RはH、CHまたはCFである。いくつかの実施形態において、RはHである。
【0102】
基は、任意の公知のピロリン酸生物学的等価体である。いくつかの実施形態において、ピロリン酸生物学的等価体は、以下の群の1つから選択される:
(a)ビスホスホネート、ビスホスホネートエステル、または式(CR5’)PO(OR(式中、RはPO(OR6’、ならびにCO6’、C(O)NHR、SO、SONHRから選択されるリン酸およびリン酸エステルの生物学的等価体、ならびに例えば、Elliott、T.S.ら,The use of phosphate bioisosteres inmedical chemistry and chemical biology.Chem.Med.Comm.2012、3、735-751による報告に記載されているように、当技術分野で公知の他のこのような生物学的等価体から選択され;R5’はH、OHおよびハロから選択され;RおよびR6’は独立してHおよびC1~6アルキルから選択され;RはH、OHおよびC1~6アルキルから選択される)のビスホスホネートもしくはビスホスホネートエステルの類似体もしくは生物学的等価体;ならびに
(b)α,γ-ジケト酸(以下に示す)、またはジケト酸生物学的等価体として機能し得る複素環部分、例えば、HIVインテグラーゼ活性部位阻害剤の設計に利用されるもの。例としては、欧州特許第1422218号、国際公開第2002/30426号、国際公開第2002/30930号、国際公開第2002/30931号および国際公開第2002/36734号に記載の化合物が挙げられる(がこれらに限定されない)。
【化11】
【0103】
いくつかの実施形態において、Rは、(CR5’)PO(OR(式中、RはPO(OR6’、CO6’、C(O)NHR、SO、SONHRから選択され;R5’はH、OHおよびハロから選択され;RおよびR6’は独立してHおよびC1~6アルキルから選択され;RはH、OHおよびC1~6アルキルから選択される)である。いくつかの実施形態において、Rは(CR5’)PO(OR(式中、RはPO(OR6’、CO6’、C(O)NHR、SO、SONHRから選択され;R5’はHであり;RおよびR6’は独立してHおよびCHから選択され;RはH、OHおよびCHから選択される)である。いくつかの実施形態において、Rは、(CR5’)PO(OR(式中、RはPO(OR6’であり;R5’はHであり;RおよびR6’はいずれもHである)である。
【0104】
いくつかの実施形態において、XはO、CH、NHおよびNCHから選択される。いくつかの実施形態において、XはNHである。
【0105】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、以下の構造式:
【化12】
(式中、ZはS、O、NおよびCHから選択され;YはS、O、NHおよびCHから選択され;X、R、Cy、LおよびCyは上に定義された通りである)
を有する。
【0106】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物の二環式コア構造は、以下に示す構造異性体のいずれか1つから選択される:
【化13】
【0107】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、以下の構造式:
【化14】
(式中、YはS、O、NHおよびCHから選択され;X、R、Cy、LおよびCyは上に定義された通りである)
を有する。
【0108】
いくつかの実施形態において、本出願の化合物は、チエノ[2,3-d]ピリミジンである。すなわち、ZはCHであり、YはSであり、式Iの化合物は以下の構造式:
【化15】
(式中、X、R、Cy、LおよびCyは上に定義された通りである)
を有する。
【0109】
いくつかの実施形態において、本出願の化合物は、チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-アミンである。すなわち、ZはSであり、YはCHであり、式Iの化合物は以下の構造式:
【化16】
(式中、X、R、Cy、LおよびCyは上に定義された通りである)
を有する。
【0110】
いくつかの実施形態において、本出願の化合物は、チアゾロ[5,4-d]ピリミジン-7-アミンである。すなわち、ZはNであり、YはSであり、式Iの化合物は以下の構造式:
【化17】
(式中、X、R、Cy、LおよびCyは上に定義された通りである)
を有する。
【0111】
いくつかの実施形態において、本出願の化合物は、9H-プリン-6-アミンである。すなわち、ZはNであり、YはNRであり、式Iの化合物は以下の構造式:
【化18】
(式中、X、R、R、Cy、LおよびCyは上に定義された通りである)
を有する。
【0112】
いくつかの実施形態において、本出願の化合物は、7Hピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミンである。すなわち、ZはCHであり、YはNRであり、式Iの化合物は以下の構造式:
【化19】
(式中、X、R、R、Cy、LおよびCyは上に定義された通りである)
を有する。
【0113】
いくつかの実施形態において、Cyはフェニル、C3~6シクロアルキル、C5~10ヘテロアリールおよびC5~10ヘテロシクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態において、Cyはフェニル、ナフチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、5員ヘテロアリール、6員ヘテロアリール、10員ヘテロアリール、5員ヘテロシクロアルキルおよび6員ヘテロシクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態において、CyはC6~10アリールおよびC5~10ヘテロアリールから選択される。いくつかの実施形態において、Cyはフェニル、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、1,2,3-トリアゾリル、テトラゾリル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-トリアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、トリアジニル、ピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、モルホリニルおよびピリダジニルから選択され、これらは各々非置換であるか、または1もしくは2個の置換基で置換されている。いくつかの実施形態において、Cyはフェニル、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、1,2,3-トリアゾリル、テトラゾリル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-トリアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、トリアジニルおよびピリダジニルから選択され、これらは各々非置換であるか、または1もしくは2個の置換基で置換されている。いくつかの実施形態において、Cyはフェニル、チエニル、フリル、ピロリル、ピリジニル、ピラジニル、ピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジニルおよびピリミジニルから選択され、これらは各々非置換であるか、または1個の置換基で置換されている。いくつかの実施形態において、Cyはフェニル、チエニル、フリル、ピロリル、ピリジニル、ピラジニルおよびピリミジニルから選択され、これらは各々非置換であるか、または1個の置換基で置換されている。いくつかの実施形態において、Cyは非置換フェニルである。
【0114】
いくつかの実施形態において、Lは直接結合、C(O)、O、AC(O)(CR4’(A’)、ASO(CR4’(A’)、C(O)A(CR4’(A’)およびSOA(CR4’(A’)から選択される。いくつかの実施形態において、Lは直接結合、NHC(O)(CR4’(A’)、NHSO(CR4’(A’)、C(O)NH(CR4’(A’)およびSONH(CR4’(A’)から選択される。いくつかの実施形態において、Lは直接結合、NHSO、SONH、NHC(O)、NHC(O)CHO、NHC(O)CH(OCH)、NHC(O)CH(CH)、NHC(O)CH、NHC(O)CHCH、NHC(O)C(CF)(OCH)CH、C(O)NH、C(O)およびNHC(O)NHから選択される。
【0115】
いくつかの実施形態において、RおよびR3’は独立してHおよびC1~4アルキルから選択されるか、またはRが結合する原子がsp混成している場合、Rは存在しない。いくつかの実施形態において、RおよびR3’は独立してHおよびCHから選択されるか、またはRが結合する原子がsp混成している場合、Rは存在しない。
【0116】
いくつかの実施形態において、RおよびR4’は独立してH、F、Cl、CF、CH、CFOおよびCHOから選択される。いくつかの実施形態において、RおよびR4’は独立してH、F、CF、CH、CFOおよびCHOから選択される。いくつかの実施形態において、RおよびR4’の少なくとも1つはHである。いくつかの実施形態において、RおよびR4’はいずれもHである。いくつかの実施形態において、RおよびR4’はいずれもHでない。
【0117】
いくつかの実施形態において、AはNHおよびNCHから選択される。いくつかの実施形態において、AはNHである。
【0118】
いくつかの実施形態において、mが1または2である場合、A’はO、NHおよびNCHから選択される。いくつかの実施形態において、mが1または2である場合、A’はOまたはNHである。いくつかの実施形態において、mが0である場合、A’はNHおよびNCHから選択される。いくつかの実施形態において、mが0である場合、A’はNHである。
【0119】
いくつかの実施形態において、mは0および1から選択される。いくつかの実施形態において、mは0である。
【0120】
いくつかの実施形態において、mおよびpはいずれも0である。いくつかの実施形態において、mおよびpはいずれも1である。いくつかの実施形態において、mは0であり、pは1である。
【0121】
いくつかの実施形態において、Cyはフェニル、C3~6シクロアルキル、C5~10ヘテロアリールおよびC5~10ヘテロシクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態において、Cyはフェニル、ナフチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、5員ヘテロアリール、6員ヘテロアリール、10員ヘテロアリール、5員ヘテロシクロアルキルおよび6員ヘテロシクロアルキルから選択される。いくつかの実施形態において、Cyはフェニル、ナフチル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、イソキザゾリル、1,2,3-トリアゾリル、テトラゾリル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-トリアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、トリアジニル、ピリダジニル、ピペラジニル、アジリジニル、オキシラニル、チイラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ジオキソラニル、スルホラニル、2,3-ジヒドロフラニル、2,5-ジヒドロフラニル、テトラヒドロフラニル、チオファニル、ピペリジニル、1,2,3,6-テトラヒドロピリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラニル、チオピラニル、2,3-ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、1,4-ジヒドロピリジニル、1,4-ジオキサニル、1,3-ジオキサニル、ジオキサニル、ホモピペリジニル、2,3,4,7-テトラヒドロ-1H-アゼピニル、ホモピペラジニル、1,3-ジオキセパニル、4,7-ジヒドロ-1,3-ジオキセピニル、ヘキサメチレンオキシド、ナフチルおよびキノリニルから選択される。いくつかの実施形態において、Cyはフェニル、ナフチル、シクロヘキシル、シクロプロピル、チエニル、ピペリジニル、フリル、ピロリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、モルホリニルおよびキノリニルから選択される。いくつかの実施形態において、Cyはフェニル、ナフチル、シクロヘキシル、シクロプロピル、チエニル、ピペリジニル、フリル、ピロリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニルおよびキノリニルから選択される。いくつかの実施形態において、Cyはフェニル、チエニル、ピリジニル、ピペリジニル、シクロプロピル、キノリニル、モルホニリルおよびシクロヘキシルから選択される。いくつかの実施形態において、Cyはフェニル、チエニル、ピリジニル、ピペリジニル、シクロプロピル、キノリニルおよびシクロヘキシルから選択される。
【0122】
いくつかの実施形態において、Cyは非置換であるか、またはCl、F、NHCH、N(CH、CF、CH、CHCH、(CHCH、CHO、CHCHO、(CHCHO、CFOおよびCFOから選択される1個の置換基で置換されている。いくつかの実施形態において、Cyは非置換である。
【0123】
いくつかの実施形態において、Cyは非置換であるか、または独立してCl、F、フェニル、シアノ、ヒドロキシル、NH、NHCH、N(CH、C1~4フルオロアルキル、C1~4アルキル、C1~4フルオロアルコキシおよびC1~4アルコキシから選択される1~3個の置換基で置換されている。いくつかの実施形態において、Cyは非置換であるか、または独立してCl、F、NHCH、N(CH、C1~3フルオロアルキル、C1~3アルキル、C1~3フルオロアルコキシおよびC1~3アルコキシから選択される1~2個の置換基で置換されている。いくつかの実施形態において、Cyは非置換であるか、または独立してCl、F、NHCH、N(CH、C1~3フルオロアルキル、C1~3アルキル、C1~2フルオロアルコキシおよびC1~3アルコキシから選択される1~2個の置換基で置換されている。いくつかの実施形態において、Cyは非置換であるか、または独立してCl、F、NHCH、N(CH、CF、CH、CHCH、(CHCH、CHO、CHCHO、(CHCHO、CFOおよびCFOから選択される1~2個の置換基で置換されている。
【0124】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、表2に示す化合物I-1、I-2、I-3、I-4、I-5、I-6、I-7、I-8、I-9、I-10、I-11、I-12、I-13、I-14、I-15、I-16、I-17、I-18、I-19、I-20、I-21、I-22、I-23、I-24、I-25、I-26、I-27、I-28、I-29、I-30、I-31、I-32、I-33、I-34、I-35、I-36、I-37、I-38、I-39、I-40、I-41、I-42、I-43、I-44、I-45、I-46およびI-47、またはこれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物および/もしくはプロドラッグから選択される。
【0125】
一実施形態において、本出願の化合物は、薬学的に許容される塩の形態である。
【0126】
本出願の化合物は、1つ以上の担体を用いて従来の方式で組成物に好適に製剤化される。したがって、本出願はまた、本出願の1つ以上の化合物および担体を含む組成物を含む。本出願の化合物は、インビボでの投与に好適な生物学的に適合した形態で対象に投与するための医薬組成物に好適に製剤化される。したがって、本出願はさらに、本出願の1つ以上の化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を含む。本出願の実施形態において、医薬組成物は、本明細書に記載の疾患、障害または状態のいずれかの治療で用いられる。
【0127】
本出願の化合物は、当業者に理解されるように、選択された投与経路に応じて様々な形態で対象に投与される。例えば、本出願の化合物は、経口、吸入、非経口、口腔、舌下、経鼻、直腸、膣内、パッチ、ポンプ、局所または経皮投与により投与され、それに応じて医薬組成物が製剤化される。いくつかの実施形態において、投与は、定期または連続送達用のポンプによるものである。好適な組成物の選択および調製のための従来の手順および成分は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(2000-第20版)および1999年に出版された米国薬局方:国民医薬品集(USP24 NF19)に記載されている。
【0128】
非経口投与は、消化管(GI)以外の全身送達経路を含み、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経上皮、経鼻、肺内(例えば、エアロゾルの使用による)、くも膜下腔内、直腸および局所(パッチまたは他の経皮送達デバイスの使用を含む)投与様式が挙げられる。非経口投与は、選択された期間にわたる連続注入によるものであり得る。
【0129】
いくつかの実施形態において、本出願の化合物は、例えば、不活性希釈剤もしくは吸収可能な食用担体と共に経口投与されるか、または硬質もしくは軟質シェルゼラチンカプセルに封入されるか、または錠剤に圧縮されるか、または食事と共に直接取り込まれる。いくつかの実施形態において、化合物は、賦形剤と組み合わせられ、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、カプレット、ペレット、顆粒、ロゼンジ、チューインガム、散剤、シロップ、エリキシル、オブラート、水溶液および懸濁液などの形態で用いられる。錠剤の場合、用いられる担体としては、ラクトース、トウモロコシデンプン、クエン酸ナトリウムおよびリン酸の塩が挙げられる。薬学的に許容される賦形剤としては、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロースまたはリン酸カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)が挙げられる。実施形態において、錠剤は、当技術分野で周知の方法によりコーティングされる。経口投与用の錠剤、カプセル、カプレット、ペレットまたは顆粒の場合、活性成分の放出を制御するように設計されたEudragits(商標)などのpH感受性腸溶性コーティングが任意で用いられる。経口剤形としてはまた、即時放出および時限放出などの調節放出製剤が挙げられる。調節放出製剤の例としては、例えば、コーティング錠、浸透圧送達デバイス、コーティングカプセル、マイクロカプセル化微粒子、分子篩い分け型粒子としてのものなどの凝集粒子、あるいは微細中空透過性繊維束、または繊維パケット内で凝集もしくは保持されたチョップド中空透過性繊維の形態で利用される、例えば、持続放出(SR)、長期放出(ER、XRまたはXL)、時間放出もしくは時限放出、制御放出(CR)、または連続放出(CRまたはContin)が挙げられる。時限放出組成物は、例えば、リポソームまたは活性化合物がマイクロカプセル化、複層コーティング等により差次的に分解可能なコーティングで保護されるものとして製剤化される。リポソーム送達系としては、例えば、小単層小胞、大単層小胞および多層小胞が挙げられる。いくつかの実施形態において、リポソームは、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンなどの様々なリン脂質から形成される。カプセル形態での経口投与に有用な担体または希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥トウモロコシデンプンが挙げられる。
【0130】
いくつかの実施形態において、経口投与のための液体調製物は、例えば、溶液、シロップもしくは懸濁液の形態を取るか、またはこれらは使用前に水または他の好適なビヒクルで構成するための乾燥生成物として好適には提供される。水性懸濁液および/または乳剤が経口投与される場合、本出願の化合物は、乳化剤および/または懸濁化剤と組み合わせられる油相に好適には懸濁または溶解される。所望される場合、特定の甘味剤および/または香味剤および/または着色剤が添加される。経口投与用のこのような液体調製物は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロースまたは硬化食用油);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステルまたはエチルアルコール);および保存剤(例えば、メチルまたはプロピルp-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)などの薬学的に許容される添加剤と共に従来の手段により調製される。有用な希釈剤としては、ラクトースおよび高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0131】
本出願の化合物を凍結乾燥し、得られた凍結乾燥物を、例えば、注射用生成物の調製のために使用することも可能である。
【0132】
いくつかの実施形態において、本出願の化合物は、非経口投与される。例えば、本出願の化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と好適に混合された水中で調製される。いくつかの実施形態において、分散剤は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、DMSOおよびアルコールを含むまたは含まないこれらの混合物中、ならびに油中で調製される。通常の貯蔵および使用条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防止する保存剤を含有する。当業者には、好適な製剤を調製する方法が公知である。非経口投与のために、本出願の化合物の滅菌溶液が通常調製され、溶液のpHは好適に調整および緩衝される。静脈内使用については、溶質の総濃度が、調製物を等張性にするように制御される必要がある。眼内投与については、軟膏または滴下液が、例えば、アプリケーターまたは点眼剤などの当技術分野で公知の眼内送達系により送達される。いくつかの実施形態において、このような組成物は、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはポリビニルアルコールなどの粘膜模倣物、ソルビン酸、EDTAまたは塩化ベンジルクロムなどの保存剤、ならびに通常の量の希釈剤または担体を含む。経肺投与については、希釈剤または担体が、エアロゾルの形成を可能にするのに適当であるように選択される。
【0133】
いくつかの実施形態において、本出願の化合物は、従来のカテーテル技術または点滴の使用を含む、注入による非経口投与用に製剤化される。注入用の製剤は、添加された保存剤を含む単位剤形、例えば、アンプルまたは複数回投与容器中で提供される。いくつかの実施形態において、組成物は、油性または水性ビヒクル中で滅菌懸濁液、溶液または乳剤などの形態を取り、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの配合剤を含有する。すべての場合において、形態は滅菌でなくてはならず、容易な注射可能性が存在する程度まで流体でなくてはならない。あるいは、本出願の化合物は、使用前に、滅菌パイロジェンフリー水などの好適なビヒクルで再構成するための滅菌粉末形態で好適に存在する。
【0134】
いくつかの実施形態において、経鼻投与用の組成物は、エアロゾル、ドロップ、ゲルまたは散剤として好都合に製剤化される。鼻腔内投与または吸入による投与について、本出願の化合物は、患者により圧搾されるか、もしくはポンプで押し出されるポンプスプレー容器からの溶液、乾燥粉末製剤もしくは懸濁液の形態で、または加圧容器もしくはネブライザーからエアロゾルスプレー提供物の形態として好都合に送達される。エアロゾル製剤は、典型的には生理学的に許容される水性または非水性溶媒中の活性物質の溶液または微細懸濁液を含み、例えば、噴霧デバイスでの使用のためのカートリッジまたはリフィルの形態を取る密閉容器内に滅菌形態で単回または複数回量で通常提供される。あるいは、密閉容器は、使用後の廃棄が意図された計量弁を備えた単回用量経鼻吸入器またはエアロゾルディスペンサーなどのユニタリー分注デバイスである。剤形がエアロゾルディスペンサーを含む場合、これは圧縮空気などの圧縮ガス、またはフルオロクロロ炭化水素などの有機プロペラントであるプロペラントを含有する。好適なプロペラントとしては、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ヘプタフルオロアルカン、二酸化炭素および他の好適なガスが挙げられるがこれらに限定されない。圧縮エアロゾルの場合、投与単位は、計量された量を送達する弁を備えることにより好適には決定される。いくつかの実施形態において、加圧容器またはネブライザーは、活性化合物の溶液または懸濁液を含有する。吸入器または吹送器での使用のためのカプセルおよびカートリッジ(例えば、ゼラチン製)は、例えば、本出願の化合物とラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物を含有するように製剤化される。エアロゾル剤形はまた、ポンプ噴霧器の形態を取り得る。
【0135】
口腔または舌下投与に好適な組成物としては、錠剤、ロゼンジおよびパステル剤が挙げられ、本出願の化合物は、糖、アカシア、トラガカントまたはゼラチンおよびグリセリンなどの担体と共に製剤化される。直腸投与用の組成物は、好都合には、ココアバターなどの従来の坐剤基剤を含有する坐剤の形態である。
【0136】
本出願の化合物の坐剤形態は、経膣、尿道および直腸投与に有用である。このような坐剤は一般に、室温で固体であるが、体温で溶解する物質の混合物から構築される。このようなビヒクルを作製するために一般に用いられる物質としては、カカオ脂(ココアバターとしても公知である)、グリセリン化ゼラチン、他のグリセリド、硬化植物油、様々な分子量のポリエチレングリコールとポリエチレングリコールの脂肪酸エステルとの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。坐剤剤形のさらなる考察については、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、Mack Publishing、Easton,PA、1980、1530~1533頁参照。
【0137】
いくつかの実施形態において、本出願の化合物は、標的化可能な薬物担体としての可溶性ポリマーとカップリングされる。このようなポリマーとしては、例えば、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシ-エチルアスパルトアミド-フェノール、またはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシド-ポリリジンが挙げられる。さらに、いくつかの実施形態において、本出願の化合物は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリεカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマーなど、薬物の制御放出を達成するのに有用な生物分解性ポリマーのクラスとカップリングされる。
【0138】
その薬学的に許容される塩、溶媒和物および/またはプロドラッグを含む本出願の化合物は、それ自体で好適に用いられるが、一般に、本出願の1つ以上の化合物(活性成分)が薬学的に許容される担体と結合している医薬組成物の形態で投与される。投与様式に応じて、医薬組成物は、約0.05重量%~約99重量%または約0.10重量%~約70重量%の活性成分、および約1重量%~約99.95重量%または約30重量%~約99.90重量%の薬学的に許容される担体を含み、すべての重量パーセントは、全組成物に基づくものである。
【0139】
III.本出願の方法および使用
本出願の化合物は、hGGPPS活性の選択的阻害剤であることが示された。いくつかの実施形態において、本出願の化合物は、hFPPS活性よりもhGGPPS活性の阻害により選択的である。いくつかの実施形態において、hFPPSの阻害における追加(ではあるが弱い)活性は、これらの化合物の提案された治療的価値を害するものではなく、さらなる利点となり得る。
【0140】
本出願は、有効量の本出願の1つ以上の化合物を細胞に投与することを含む、生体試料または患者のいずれかの細胞内のhGGPPS活性を阻害する方法を含む。本出願はまた、細胞内のhGGPPS活性の阻害のための本出願の1つ以上の化合物の使用、および細胞内のhGGPPS活性の阻害のための薬剤の調製のための本出願の1つ以上の化合物の使用を含む。本出願はさらに、細胞内のhGGPPS活性の阻害での使用のための本出願の1つ以上の化合物を含む。
【0141】
本出願は、有効量の本出願の1つ以上の化合物を細胞に投与することを含む、生体試料または患者のいずれかの細胞内のタンパク質のゲラニルゲラニル化を阻害する方法を含む。本出願はまた、細胞でのゲラニルゲラニル化の阻害のための本出願の1つ以上の化合物の使用、および細胞でのタンパク質のゲラニルゲラニル化の阻害のための薬剤の調製のための本出願の1つ以上の化合物の使用を含む。本出願はさらに、細胞でのタンパク質のゲラニルゲラニル化の阻害での使用のための本出願の1つ以上の化合物を含む。
【0142】
本出願の化合物は、hGGPPS活性を阻害することが可能であることが示されたため、本出願の化合物は、hGGPPSにより媒介される疾患、障害または状態を治療するのに有用である。したがって、本出願の化合物は薬剤として有用である。したがって、本出願は、薬剤としての使用のための本出願の化合物を含む。
【0143】
本出願の化合物は、hFPPS活性を阻害することが可能であることも示されたため、いくつかの実施形態において、本出願の化合物は、hFPPSにより媒介される疾患、障害または状態を治療するのに有用である。したがって、本出願の化合物は、タンパク質のファルネシル化とゲラニルゲラニル化の両方を抑制でき、したがってそれ自体薬剤として有用である。
【0144】
本出願はまた、治療有効量の本出願の1つ以上の化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む、hGGPPSにより媒介される疾患、障害または状態を治療する方法を含む。
【0145】
本出願はまた、hGGPPSにより媒介されるか、またはタンパク質のゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態の治療のための本出願の1つ以上の化合物の使用、ならびにhGGPPSにより媒介されるか、またはタンパク質のゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態の治療のための薬剤の調製のための本出願の1つ以上の化合物の使用を含む。本出願はさらに、hGGPPSにより媒介されるか、またはタンパク質のゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態の治療での使用のための本出願の1つ以上の化合物を含む。
【0146】
一実施形態において、hGGPPSにより媒介されるか、またはタンパク質のゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態は、新生物障害である。したがって、本出願はまた、治療有効量の本出願の1つ以上の化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む、新生物障害を治療する方法を含む。本出願はまた、新生物障害の治療のための本出願の1つ以上の化合物の使用、ならびに新生物障害の治療のための薬剤の調製のための本出願の1つ以上の化合物の使用を含む。本出願はさらに、新生物障害の治療での使用のための本出願の1つ以上の化合物を含む。一実施形態において、治療は、このような治療を必要とする対象における細胞増殖の低下、腫瘍量の減少、または溶骨性疾患の減少など新生物障害の少なくとも1つの症状を改善する有効量で行われる。
【0147】
本出願の別の実施形態において、hGGPPSにより媒介されるか、またはタンパク質のゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態は癌である。したがって、本出願はまた、治療有効量の本出願の1つ以上の化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む、癌を治療する方法を含む。本出願はまた、癌の治療のための本出願の1つ以上の化合物の使用、ならびに癌の治療のための薬剤の調製のための本出願の1つ以上の化合物の使用を含む。本出願はさらに、癌の治療での使用のための本出願の1つ以上の化合物を含む。一実施形態において、化合物は、癌素因を有する哺乳動物などの対象における癌の予防のために投与される。
【0148】
別の実施形態において、本出願の化合物によるhFPPS活性の阻害を考慮して、疾患、障害または状態はまた、hFPPSにより媒介されるか、またはファルネシル化の阻害により治療可能なものである。一実施形態において、疾患は癌である。
【0149】
いくつかの実施形態において、癌は、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病および急性単球性白血病などの血液癌から選択される。上述の癌の転移も本明細書に記載の方法に従って治療できる。
【0150】
いくつかの実施形態において、癌は、多剤耐性を示すものを含む卵巣癌、膵臓癌、線維肉腫、大腸癌、脳腫瘍および非小細胞肺癌などの固形腫瘍癌から選択される。上述の癌の転移も本明細書に記載の方法に従って治療できる。
【0151】
いくつかの実施形態において、hGGPPSにより媒介されるか、またはタンパク質のゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態は、骨粗鬆症または癌関連溶骨性疾患である。
【0152】
一実施形態において、hGGPPS媒介疾患、障害または状態は、hGGPPSにより直接または間接的に影響を受ける無制御および/または異常な細胞活性に関連する疾患、障害または状態である。別の実施形態において、hGGPPSにより直接または間接的に影響を受ける無制御および/または異常な細胞活性は、細胞の増殖活性である。したがって、本出願はまた、有効量の本出願の1つ以上の化合物を細胞に投与することを含む、細胞の増殖活性を阻害する方法を含む。本出願はまた、細胞の増殖活性の阻害のための本出願の1つ以上の化合物の使用、ならびに細胞の増殖活性の阻害のための薬剤の調製のための本出願の1つ以上の化合物の使用を含む。本出願はさらに、細胞の増殖活性の阻害での使用のための本出願の1つ以上の化合物を含む。
【0153】
一実施形態において、hFPPS媒介疾患、障害または状態は、hFPPSにより直接または間接的に影響を受ける無制御および/または異常な細胞活性に関連する疾患、障害または状態である。別の実施形態において、hFPPSにより直接または間接的に影響を受ける無制御および/または異常な細胞活性は、細胞の増殖活性である。
【0154】
本出願はまた、有効量の本出願の1つ以上の化合物を細胞に投与することを含む、生体試料または対象のいずれかの細胞内のhGGPPSにより直接または間接的に媒介される無制御および/または異常な細胞活性を阻害する方法を含む。本出願はまた、細胞内のhGGPPSにより直接または間接的に媒介される無制御および/または異常な細胞活性の阻害のための本出願の1つ以上の化合物の使用、ならびに細胞内のhGGPPSにより直接または間接的に媒介される無制御および/または異常な細胞活性の阻害のための薬剤の調製のための本出願の1つ以上の化合物の使用を含む。本出願はさらに、細胞内のhGGPPSにより直接または間接的に媒介される無制御および/または異常な細胞活性の阻害での使用のための本出願の1つ以上の化合物を含む。
【0155】
本出願はまた、有効量の本出願の1つ以上の化合物を細胞に投与することを含む、生体試料または対象のいずれかの細胞内のhFPPSより直接または間接的に媒介される無制御および/または異常な細胞活性を阻害する方法を含む。本出願はまた、細胞内のhFPPSにより直接または間接的に媒介される無制御および/または異常な細胞活性の阻害のための本出願の1つ以上の化合物の使用、ならびに細胞内のhFPPSにより直接または間接的に媒介される無制御および/または異常な細胞活性の阻害のための薬剤の調製のための本出願の1つ以上の化合物の使用を含む。本出願はさらに、細胞内のhFPPSにより直接または間接的に媒介される無制御および/または異常な細胞活性の阻害での使用のための本出願の1つ以上の化合物を含む。
【0156】
本出願はまた、hGGPPSにより媒介されるか、またはゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態の治療に有用な別の公知の剤と組み合わせた、治療有効量の本出願の1つ以上の化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む、hGGPPSにより媒介されるか、またはタンパク質のゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態を治療する方法を含む。本出願はまた、hGGPPSにより媒介される疾患、障害または状態の治療のための、hGGPPSにより媒介されるか、またはゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態の治療に有用な公知の剤と組み合わせた、本出願の1つ以上の化合物の使用を含む。
【0157】
本出願はまた、hFPPSにより媒介されるか、またはファルネシル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態の治療に有用な別の公知の剤と組み合わせた、治療有効量の本出願の1つ以上の化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む、hFPPSにより媒介されるか、またはタンパク質のファルネシル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態を治療する方法を含む。本出願はまた、hFPPSにより媒介される疾患、障害または状態の治療のための、hFPPSにより媒介されるか、またはファルネシル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態の治療に有用な公知の剤と組み合わせた、本出願の1つ以上の化合物の使用を含む。
【0158】
さらなる実施形態において、hGGPPSにより媒介されるか、もしくはタンパク質のゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能な、ならびに/またはhFPPSにより媒介されるか、もしくはタンパク質のファルネシル化の阻害により治療可能な疾患、障害または状態は癌であり、本出願の1つ以上の化合物は、1つ以上の追加の癌治療と組み合わせて投与される。別の実施形態において、追加の癌治療は、放射線療法、化学療法、抗体療法などの標的化療法、チロシンキナーゼ阻害剤などの低分子療法、免疫療法、ホルモン療法および抗血管新生療法から選択される。
【0159】
本出願の別の実施形態において、hGGPPS活性のアップレギュレーションに関与しており、したがってゲラニルゲラニル化の阻害により治療可能であり得る疾患、障害または状態は、アルツハイマー病である。したがって、本出願はまた、治療有効量の本出願の1つ以上の化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む、アルツハイマー病などの神経変性に関連するタウオパチーを治療する方法を含む。本出願はまた、アルツハイマー病などの神経変性に関連するタウオパチーの治療のための本出願の1つ以上の化合物の使用、およびアルツハイマー病などの神経変性に関連するタウオパチーの治療のための薬剤の調製のための本出願の1つ以上の化合物の使用を含む。本出願はさらに、アルツハイマー病などの神経変性に関連するタウオパチーの治療での使用のための本出願の1つ以上の化合物を含む。一実施形態において、化合物は、アルツハイマー病素因を有する哺乳動物などの対象において、アルツハイマー病に強く関連する、脳における高レベルのリン酸化タウタンパク質により誘導される神経原線維変化の予防のために投与されるか、または用いられる。
【0160】
本出願の化合物は、単独で、あるいはhGGPPSにより媒介される疾患、障害もしくは状態、およびhGGPPS阻害剤で治療可能な疾患、障害もしくは状態を治療するのに有用な他の公知の剤、ならびに/またはhFPPSにより媒介される疾患、障害もしくは状態、およびhFPPS阻害剤で治療可能な疾患、障害もしくは状態を治療するのに有用な他の公知の剤との組み合わせのいずれかで用いられる。本出願の化合物が、hGGPPSの阻害および/またはhFPPSの阻害により媒介される疾患、障害または状態を治療するのに有用な他の剤と組み合わせて用いられる場合、一実施形態では、本出願の化合物はこれらの剤と同時投与される。本明細書で使用する場合、対象への2つの物質の「同時投与」は、2つの物質が個体内で両方とも同時に活性であるように2つの物質各々を提供することを意味する。投与の正確な詳細は、互いの存在下での2つの物質の薬物動態に依存し、薬物動態が好適である場合、2つの物質を互いから数時間以内に投与するか、または一方の物質の投与の24時間以内に他方の物質を投与することを含み得る。好適な投与計画の設計は、当業者に日常的である。特定の実施形態において、2つの物質は、実質上同時に投与される、すなわち、互いから数分以内に投与されるか、または両方の物質を含有する単一の組成物で投与される。本出願のさらなる実施形態において、剤の組み合わせは、対象に非同時投与される。一実施形態において、本出願の化合物は、別の治療剤と同時に、または別個の単位剤形で順次に、もしくは単一の単位剤形で一緒に投与される。したがって、本出願は、本出願の1つ以上の化合物、追加の治療剤および薬学的に許容される担体を含む単一の単位剤形を提供する。
【0161】
したがって、本出願の方法は、ヒト療法と獣医学的適用の両方に適用できる。一実施形態において、対象は哺乳動物である。別の実施形態において、対象はヒトである。
【0162】
本出願の化合物の投与量は、化合物の薬力学的特性、投与方式、レシピエントの年齢、健康および体重、症状の性質および程度、治療頻度、もしあれば併用療法の種類、ならびに治療される対象の化合物のクリアランス率などの多くの要因に応じて異なる。当業者は、上記の要因に基づき適当な投与量を決定できる。いくつかの実施形態において、本出願の化合物は、最初に、臨床応答に応じて、必要に応じて調整される好適な投与量で投与される。投与量は、本出願の化合物の血清レベルを約0.01μg/cc~約1000μg/cc、または約0.1μg/cc~約100μg/ccに維持するように一般に選択される。代表的な例として、本出願の1つ以上の化合物の経口投与量は、成人1日あたり約1mg~1日あたり約2000mg、1日あたり約1mg~1日あたり約1000mg、好適には1日あたり約1mg~1日あたり約500mg、より好適には1日あたり約1mg~1日あたり約200mgの範囲である。非経口投与については、代表的な量である約0.001mg/kg~約10mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.01mg/kg~約1mg/kgまたは約0.1mg/kg~約1mg/kgが投与される。経口投与については、代表的な量は、約0.001mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、約0.01mg/kg~約1mg/kgまたは約0.1mg/kg~約1mg/kgである。坐剤形態での投与については、代表的な量は、約0.1mg/kg~約10mg/kgまたは約0.1mg/kg~約1mg/kgである。本出願の一実施形態において、組成物は、経口投与用に製剤化され、1つ以上の化合物は、好適には1錠あたり0.25、0.5、0.75、1.0、5.0、10.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、75.0、80.0、90.0、100.0、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950または1000mgの活性成分を含有する錠剤の形態である。本出願の実施形態において、本出願の1つ以上の化合物は単回の1日量、1週間量もしくは1ヶ月量で投与されるか、または全1日量が、1日2回、3回または4回量に分割される。
【0163】
上記において、用語「化合物」はまた、1つ以上の化合物が言及される実施形態を含む。
【0164】
IV.本出願の化合物の調製方法
本出願の化合物は、様々な合成方法により調製される。特定の構造的特徴および/または置換基の選択は、別の方法に勝る一方の方法の選択に影響を与え得る。本出願の所与の化合物を調製するための特定の方法の選択は、当業者の認識範囲内である。本出願の化合物を調製するためのいくつかの出発物質は、市販の化学供給源から入手可能である。例えば、以下に記載されるように、他の出発物質は、当技術分野で周知の直接的な変換を用いて入手可能な前駆体から容易に調製される。
【0165】
本出願のいくつかの実施形態において、XがNHであり、Rがビスホスホネートまたはビスホスホネートエステルであるチエノ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン足場に基づく式Iの化合物は、スキーム1、6および7に示すように調製される。いくつかの実施形態において、チオフェン中間体1は、市販のメルカプトアセトアルデヒド二量体である1,4-ジチアン-2,5-ジオールから、または既に報告されているアルデヒドから調製される[例えば、(a)Leungら、J.Med.Chem.2013、56、7939-7950。(b)Leungら、Bioorg.Med.Chem.2013、21、2229-2240。(c)Gaoら、Bioorg.Med.Chem.Lett.2013、23、1953-1956参照]。いくつかの実施形態において、スキーム1に示すように、2-アミノ-3-シアノチオフェンコア1は、塩基の存在下での様々なアリールおよびヘテロアリールニトリルとの直接環化を介して、一般構造式3の置換4a,7a-ジヒドロチエノ[2,3-d]ピリミジン-4-アミンコアに合成される(Chenら、Synthesis 2010、14、2413-2418)。いくつかの実施形態において、スキーム1に示すように、中間体1は、酸性条件下で1をチオシアン酸メチルと縮合させることにより、ピリミジン環のC-2にメチルチオエーテル部分を有するチオエーテル中間体2に環化される(Barbayら、国際公開第2010/045006A1号)。さらなる実施形態において、ビスホスホネートテトラエステルを導入する場合(すなわち、2から4への変換;R=SMe)、チオエーテル中間体4は、様々なボロン酸とのリーベスカインドスローグルクロスカップリング反応(Liebeskind and Srogl Org. Lett.、2002、4、979-981;Barbayら、国際公開第2010/045006A1号)に好適であり、様々なアリールおよびヘテロアリール基を含む、Rに顕著な構造的多様性を有する化合物5が得られる。いくつかの実施形態において、中間体5は類似体を含み、そこでRは、ニトロフェニルなどのニトロ置換基を有する芳香族もしくはヘテロ芳香族基(例えば、スキーム6の5a)、またはカルボン酸置換基を有するアリール、ヘテロアリールもしくは他の複素環(例えば、スキーム6の5b)である。いくつかの実施形態において、後者の化合物は、スキーム6および7に示すように2個のCy基とCy基の間のアミド、スルホンアミドまたは尿素リンカーLを有する化合物などの類似体にさらに合成される。いくつかの実施形態において、中間体2のチオエーテル部分は、対応するメチルスルホニル中間体にm-CPBAで酸化され、次いでSArによるメチルスルホニル部分の求核置換が行われて、一般式7の化合物が得られる。これは、スキーム1に示すように、一般構造式8を有するhGGPPS阻害剤にさらに合成され得る。阻害剤8のR部分はまた、アミン、カルボン酸、酸塩化物、ハロゲンまたはアルコールを含むが、これらに限定されない適当な官能基としてRを有する中間体7から出発して、いくつかのステップで調製され得、これは、スキーム6の中間体5a、5bおよび5cを類似体Ia、Ib、IcおよびIdなどの最終阻害剤に変換するための、スキーム6および7に示すのと同様の合成法を用いてさらに合成され得ることは、有機合成の当業者に公知である。スキーム1、5および6において、変数QおよびWは、置換もしくは非置換炭素もしくは窒素、またはOおよびSから選択されるヘテロ原子を表し、qは0、1、2、3または4であり、R~Rは、式Iに見出される様々な官能基を表すか、または公知の方法を用いて式Iに見出される官能基に変換され得る。
【化20】
スキーム1:4a,7a-ジヒドロチエノ[2,3-d]ピリミジン-4-アミンコアを有する化合物の合成のための例示的な反応条件。反応条件:(a)チオシアン酸メチル、HCl、70℃、60%~80%;(b)芳香族ニトリル、t-BuOK、iPrOH、μW、70~80℃、約27%~64%;(c)亜リン酸ジエチル、オルトギ酸トリエチル、乾燥トルエン、115℃~130℃、40%~80%;(d)アリールボロン酸、CuTC、Pd(dppf)Cl・CHCl、乾燥ジオキサン、50℃、約80%;(e)TMSBr/MeOH、室温、約60%~定量的;(f)m-CPBA、DCM、80~90%;求核(例えば、アミン)とのSAr反応、DMSO、100℃~200℃、約75%。
【0166】
式Iのチエノ[2,3-d]ピリミジン系化合物の調製のためのスキーム1、6および7に記載のものと同様の合成法はまた、チエノ[3,2-d]ピリミジン系コアを有する類似体を調製するために使用できることは有機合成の当業者に公知である。これらの化合物の調製のためのビルディングブロックの合成の例は、スキーム2に示されている。スキーム2において、変数QおよびWは、置換もしくは非置換の炭素もしくは窒素、またはOおよびSから選択されるヘテロ原子を表し、qは0、1、2、3または4であり、Rは、式Iに見出される様々な官能基を表すか、または公知の方法を用いて式Iに見出される官能基に変換され得る。
【化21】
スキーム2:4a,7a-ジヒドロチエノ[3,2-d]ピリミジン-4-アミンコアを有する化合物の合成のための例示的な反応条件。反応条件:(a)チオシアン酸メチル、4M HCl、90℃、約90%;(b)オキシ塩化リン、106℃、約70%;(c)NHOH、90℃、約90%;(d)亜リン酸ジエチル、オルトギ酸トリエチル、乾燥トルエン、130℃、約55%;(e)アリールボロン酸、CuTC、Pd(dba)、ZnOAc、乾燥ジオキサン、80℃、約55%;(f)TMSBr/MeOH、室温、約60%;(g)m-CPBA、DCM、約85%;(h)求核(例えば、アミン)とのSAr反応、DMSO、100℃~120℃、約75%。
【0167】
式Iのチエノピリミジン系化合物の調製のためのスキーム1、2、6および7に記載のものと同様の合成法はまた、式Iのチアゾロピリミジン系化合物である類似体を調製するために用いられ得ることは有機合成の当業者に公知である。チアゾロ[5,4-d]ピリミジン系化合物の調製のためのビルディングブロックの合成の例は、スキーム3に示されている。
【化22】
スキーム3:チアゾロ[5,4-d]ピリミジン-7-アミンコアを有する化合物の合成のための例示的な反応条件。反応条件:(a)t-BuOK、無水THF、-35℃~0℃、約75%;(b)NHOH、40℃~80℃、約70%;(c)t-BuOK、N,N-ジメチルアセトアミド、100℃、約85%;(d)POCl、DIPEA、還流、60%;(e)ジメトキシベンジルアミン、DIPEA、DMSO、22℃、約70%;(f)アリールボロン酸、Pd(PPh、KF、CHOH/ジオキサン(2:1)、90℃、約90%;(g)CHCl中のTFA、22℃、約75%;(h)亜リン酸ジエチル、オルトギ酸トリエチル、乾燥トルエン、130℃、約30~50%;(i)TMSBr/MeOH、室温、50~80%。
【0168】
式Iのチエノピリミジン系およびチアゾロピリミジン系化合物の調製のためのスキーム1、2、3、6および7に記載のものと同様の合成法はまた、式Iのプリン系化合物を調製するために使用できることは有機合成の当業者に公知である。これらの化合物の調製のためのビルディングブロックの合成の例は、スキーム4に示されている。
【化23】
スキーム4:9H-プリン-6-アミンコアを有する化合物の合成のための例示的な反応条件。反応条件:(a)POCl、DBU、還流、約35%;(b)CHI、KCO、アセトン、22℃、27%の28、65%の29;(c)ジメトキシベンジルアミン、DIPEA、DMF、22℃、90%;(d)アリールまたはヘテロアリールボロン酸、Pd(PPh、KF、CHOH/ジオキサン(2:1)、90℃、50~90%;(e)CHCl中のTFA、22℃、約75%;(f)亜リン酸ジエチル、オルトギ酸トリエチル、乾燥トルエン、130℃、約30~50%;(i)TMSBr/MeOH、室温、50~80%。
【0169】
式Iのチエノピリミジン系、チアゾロピリミジン系およびプリン系化合物の調製のためのスキーム1、2、3、4、6および7に記載のものと同様の合成法はまた、式Iのピロロピリミジン系化合物を調製するために用いられ得る。一例として、7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン系阻害剤の調製のためのビルディングブロックの合成は、スキーム5に示されている。
【化24】
スキーム5:7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミンコアを有する化合物の合成のための例示的な反応条件。反応条件:(a)NaOAc、HO、70℃、80~90%;(b)POCl、DIPEA、トルエン、70~106℃、約50%(その後のステップにおける使用した粗製);(c)NaH、CHI、CHCN、22℃、約60%;(d)30%NHOH水溶液、ジオキサン、90℃、約90%;(e)アリールボロン酸、Pd(PPh、KF、CHOH/ジオキサン(2:1)、90℃、約90%;(f)亜リン酸ジエチル、オルトギ酸トリエチル、乾燥トルエン、130℃、約30~50%;(g)TMSBr/MeOH、室温、50~80%。
【0170】
化合物34(スキーム5)と構造的に同等であるが、5員ピロール環の窒素が酸素原子で置き換えられているジクロロ中間体から出発する式Iのフロピリミジン系化合物の調製のための合成法は公知である(例えば、国際公開第2008/073785号およびRoeckerら、Biorg.Med.Chem.Lett.2014、24、2079-2085参照)。これらの中間体は、スキーム4、5、6および7に記載の合成法を用いて式Iの最終化合物にさらに合成され得る。同様に、オキサゾロピリミジンの合成は、既に報告されている合成中間体を用いて達成され得る。例えば、スキーム7に示す5,7-ジクロロオキサゾロ[5,4-d]ピリミジン37などの中間体(合成の一例については、国際公開第2009/013545号参照)は、スキーム4、5、6および7に記載の合成法を用いて式Iの最終化合物にさらに合成され得る。いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、例えば、2個のCy基とCy基との直接結合、またはいくつかの実施形態においては直接結合、メチレン、アミド、逆アミド、スルホンアミドまたは尿素である、Cy基とCy基との間のリンカーの組込みを介して合成される(スキーム7)。例えば、いくつかの実施形態において、最初に、スキーム6の5aのニトロ基が、塩化スズ(II)を用いてアミンに還元され、次いで、アニリン生成物5dが、標準的なペプチド化学を用いて、アシルクロリドまたはカルボン酸とカップリングされて一般構造式Icを有する類似体が得られるか、スルホニルクロリドとカップリングされて類似体Idが得られるか、またはイソシアネートとカップリングされて尿素リンカーLを有する類似体が得られる。同様に、いくつかの実施形態において、式Iの化合物が、カルボン酸5d(スキーム6)から、または4(スキーム1)と適当なボロン酸との間でのリーベスカインドスローグルクロスカップリング反応を介して調製されて、最終的に逆アミド誘導体Ibが得られる。いくつかの実施形態において、式Iの化合物が、ハロゲン化アリール(5c、スキーム6)とのPd触媒クロスカップリング反応を介して調製されて、ビアリール誘導体Iaが得られる。
【化25】
スキーム6:例示的な反応条件:(a)アリールボロン酸、KF、Pd(PPh、MeOH、μW、120℃、82%;(b)TMSBr、次いでMeOH、室温、約60%~定量的;(c)SnCl・2HO、EtOH、80℃、>80%;(d)アシルクロリド、EtN、乾燥DCM、0℃~室温またはカルボン酸、DIPEA、HBTU、乾燥DMF、室温、60%~定量的、またはイソシアネート、EtN、乾燥DMF、0℃~室温、71%;(e)スルホニルクロリド、ピリジン、乾燥DMF、0℃~室温、70%~定量的;(f)アミン、DIPEA、HBTU、乾燥DMF、室温、60~85%;
【0171】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、各ジクロロ中間体21(スキーム3)、27(スキーム4)および34(スキーム5)からの上記のもの、ならびにスキーム7に簡単に要約されているものと類似したプロトコルを用いて調製される、チアゾロ[5,4-d]ピリミジン系、9H-プリン系および7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン系のビスホスホネートである。
【化26】
スキーム7:例示的な反応条件は:(a)ジメトキシベンジルアミン;(b)鈴木、バックワルドハートウィグまたは薗頭クロスカップリングなどの金属媒介クロスカップリング、強求核試薬とのSArも可能である;(c)TFA;(d)亜リン酸ジエチル、オルトギ酸トリエチル、TMSBr/MeOHである。
【0172】
スキーム6および7において、変数QおよびWは、置換もしくは非置換の炭素もしくは窒素、またはOおよびSから選択されるヘテロ原子を表し、qは0、1、2、3または4であり、Rは、式Iに見出される様々な官能基を表すか、または公知の方法を用いて式Iに見出される官能基に変換され得る。
【0173】
有機合成の当業者は、一般式Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig、Ih、IiおよびIjのチエノピリミジン系、チアゾロピリミジン系、プリン系、ピロロピリミジン系、フロピリミジン系またはオキサゾロピリミジン系化合物である、式Iの化合物の調製のための、スキーム1~7に要約されている手順が、公表されている手順から入手できる他の重要な中間体から作成され得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態において、主な出発物質は、商業的供給源から得られるか、または以下の具体的な例の合成において提供される文献のプロトコルを用いて調製される。いくつかの実施形態において、最初に、ピリミジン環のC-4炭素の塩化物とアンモニアまたは好適な保護アミンとの求核芳香族置換(SAr)反応を行って、22(スキーム3)、30(スキーム4)、36(スキーム5)などの中間体を得、次いで、C-2クロロ部分の金属触媒クロスカップリング反応またはSAr置換を行うことにより、式21、27、34、35および37の化合物は、例Ie~Ijにさらに合成され得る。例えば、様々なアリールまたはヘテロアリールボロン酸は、鈴木クロスカップリング反応を介して中間体22、30または36と反応させる。さらに、いくつかの実施形態において、バックワルドハートウィグアミノ化が行われ、示された位置で異なる化合物の多様なライブラリーが調製される。有機合成の当業者に公知である他の金属触媒クロスカップリング反応も、式Iの一般的構造を有する化合物の構造的多様性を高めるために使用できる。
【0174】
本明細書に記載の方法を通じて、必要に応じて、好適な保護基が、当業者に容易に理解される方式で様々な反応物および中間体に添加され、その後そこから除去されることが理解されるべきである。このような保護基を使用するための従来の手順および好適な保護基の例は、例えば「Protective Groups in Organic Synthesis」、T.W.Green、P.G.M.Wuts、Wiley-Interscience、New York(第4版、2007)に記載されている。化学操作による基または置換基の別の基または置換基への変換が、最終生成物への合成経路上の任意の中間体または最終生成物に対して行われ、変換の可能な種類が、この段階で分子により保有される他の官能基の、変換で利用される条件または試薬との固有の不適合性によってのみ限定されることも理解されるべきである。このような固有の不適合性および好適な順番で適当な変換および合成ステップを行うことによりこれらを回避する方法は、当業者により容易に理解されるであろう。変換の例が本明細書に示されており、記載された変換は、変換が例証される一般的な基または置換基のみに限定されないことが理解されるべきである。他の好適な変換の言及および説明は「Comprehensive Organic Transformations-A Guide to Functional Group Preparations」R.C.Larock、VHC publishers, Inc.(1989)に示されている。他の好適な反応の言及および説明は、例えば「Advanced Organic Chemistry」3月、第4版、McGraw Hill(1992)または「Organic Synthesis」、Smith、McGraw Hill、(1994)の有機化学の教本に記載されている。中間体および最終生成物の精製のための技術としては、当業者に容易に理解される、例えば、カラムまたは回転プレート上での順相および逆相クロマトグラフィー、再結晶、蒸留および液液または固液抽出が挙げられる。
【0175】
本明細書に記載のすべての方法(process)/方法(method)ステップは、所望の生成物を得るのに十分な条件下で行われるべきである。当業者は、例えば、反応溶媒、反応時間、反応温度、反応圧力、反応体比、および反応が無水または不活性雰囲気下で行われるべきか否かを含むすべての反応条件が、所望の生成物の収率を最適化するために変更され得、これは当業者の技術の範囲内であることを理解するであろう。
【0176】
本出願を以下の非限定的実施例で例証する:
【0177】
実施例
化学薬品および溶媒を商業的供給業者から購入し、さらなる精製なしで使用した。シリカゲル上での順相カラムクロマトグラフィーが、示されるように、溶媒勾配を用いてCombiFlash装置を用いて行われた。逆相分取HPLCを、Waters Atlantis Prep T3 OBD C18 5μm 19×50mmカラムを用いて行った;溶媒A:HO、0.1%ギ酸;溶媒B:CHCN、0.1%ギ酸;移動相;取得時間17分で95%Aおよび5%Bから5%Aおよび95%Bの勾配;流速:1mL/分。Waters ALLIANCE(登録商標)装置(2489UV検出器を有するe2695、3100質量分析計、C18 5μmカラム)を用いて、逆相HPLCにより、最終化合物の均一性は≧95%であることが確認された:溶媒A:HO、0.1%ギ酸;溶媒B:CHCN、0.1%ギ酸;移動相;13分で95%Aおよび5%Bから0%Aおよび100%Bの直線勾配。重要な化合物を、H、13C、31P NMRおよびMSおよびHRMSにより十分に特徴付けた。化学シフト(δ)は、内部重水素化溶媒に対してppmで報告される。すべての最終ビスホスホネート化合物のNMRスペクトルをDO中で得た(対応するトリナトリウム塩への変換後、または約2%NDODの添加によるのいずれか)。場合によっては、ビスホスホネートに対するCαは、HSQCで確認されたように、広範であり、溶媒ピークと重複していた。最終生成物の高分解能MSスペクトルを、エレクトロスプレーイオン化(ESI+/-)およびフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計(FTMS)を用いて記録した。
【0178】
実施例1:化合物の調製
2-(メチルチオ)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン(2、R=H)(スキームI)の合成
2-アミノチオフェン-3-カルボニトリル(1、R=H;1.0等量)をジオキサン中のHCl(4M;6.0等量)、次いでチオシアン酸メチル(1.0等量)に添加した。得られた懸濁液を密閉圧力管で70℃に24時間加熱した。混合物を室温まで冷却し、得られた緑色沈殿物を真空濾過により回収した。固体をEtOAcに溶解し、飽和NaHCO水溶液で洗浄した。層を分離し、水相をEtOAcでさらに抽出した。有機抽出物を合わせ、塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、真空濃縮した。生成物を薄茶色固体として得(典型的には単離収率は60%~80%であった)、さらなる精製なしで次のステップで使用した。H NMR(500MHz、DMSO-d)δ7.55(br_s、2H)、7.47(d、J=5.9Hz、1H)、7.36(d、J=5.9Hz、1H)、2.46(s、3H)。13C NMR(126MHz、DMSO-d)δ167.5、166.5、158.3、120.7、120.2、113.4、13.8。MS[ESI]m/z:198.0[M+H]
【0179】
テトラエチル(((2-(メチルチオ)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)(4、R=H)(スキームI)
乾燥トルエン(1.0M)中の2-(メチルチオ)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン(2、R=H;1.0等量)を導入した圧力容器に、亜リン酸ジエチル(7.0等量)およびオルトギ酸トリエチル(1.7等量)を添加した。混合物を130℃で40時間加熱した(TLCおよびLC-MSにより監視した)。次いで、室温まで冷却し、真空濃縮した。粗生成物を、CombiFlash装置を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した(生成物はEtOAc中20%MeOHで溶出した)。生成物を茶色固体として単離した(収率40%)。H NMR(50MHz、DMSO-d)δ8.70(d、J=9.7Hz、-NH)、7.97(d、J=6.0Hz、1H)、7.45(d、J=6.0Hz、1H)、5.70(td、J=23.6、9.7Hz、1H)、4.14~4.02(m、8H)、2.50(s、3H)、1.22~1.12(m、12H)。31P NMR(203MHz、DMSO-d)δ16.77(s)。13C NMR(126MHz、DMSO-d)δ167.3、165.4、155.12(t、J=4.1Hz)、121.1、120.1、113.6、62.9~62.7(m)、44.4(t、J=147.3Hz)、16.2~16.1(m)、13.5.MS[ESI]m/z:484.1[M+H]
【0180】
スキーム1および2に示すリーベスカインドスローグルクロスカップリング反応のための一般的なプロトコル
手順はわずかに変更された文献(Barbay,J.K.ら、国際公開第2010/045006号;Liebeskind,L.S.;Srogl,J.Org.Lett.2002、4、979-981)に基づくものであった。したがって、テトラエチル(((2-(メチルチオ)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)(中間体4、882mg、1.8mmol)、アリールボロン酸(4.6mmol;注意:ボロン酸は商業的に得られたか、または確立された方法を用いて調製された)、CuTC(1.04g、5.5mmol)およびPd(dppf)Cl・CHCl(149mg、0.18mmol)をオーブン乾燥した丸底フラスコに導入した。フラスコをArで脱気およびパージし、次いで乾燥ジオキサン(10.0mL)を添加した。フラスコを密閉し、50℃で4~16時間加熱した(Arバルーン下;TLCおよびLC-MSにより監視)。反応混合物を室温まで冷却し、EtOAcで希釈し、セライトを通して濾過した。濾過物を回収し、10%NHOH水溶液(3回)、次いで塩水で洗浄した。合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥し、真空濃縮した。粗生成物を、ヘキサン中の25%EtOAcから100%EtOAc、次いでEtOAc中の20%MeOHの勾配でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。生成物は典型的には、EtOAc中の10%~20%MeOHで溶出する。典型的な単離収率は約80~85%であった。
【0181】
テトラエチル(((2(3-ニトロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)(5a、R=3-ニトロフェニル、R=H)(スキーム6)
テトラエチル(((2-(メチルチオ)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)(4、R=SMe、R=H;1.0等量)、3-ニトロフェニルボロン酸(2.5等量)、CuTC(3.0等量)およびPd(dppf)Cl・CHCl(0.10等量)をオーブン乾燥した丸底フラスコに導入した。フラスコをArで脱気およびパージし、次いで乾燥ジオキサン(4、1.0mmolあたり5.5mL)を添加した。フラスコを密閉し、50℃で4時間加熱した(Arバルーン下)。反応混合物を室温まで冷却し、EtOAcで希釈し、セライトを通して濾過した。濾過物を回収し、10%NHOH水溶液(3回)、次いで塩水で洗浄した。合わせた有機抽出物をNaSOで乾燥し、真空濃縮した。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した(生成物は、EtOAc中の15%MeOHで溶出した)。生成物を、薄茶色固体(収率80%)として単離した。H NMR(500MHz、DMSO-d)δ9.12(t、J=1.9Hz、1H)、8.85(d、J=9.6Hz、-NH)、8.80(d、J=7.9Hz、1H)、8.35(ddd、J=8.2、2.4、0.9Hz、1H)、8.14(d、J=6.0Hz、1H)、7.84(t、J=8.0Hz、1H)、7.72(d、J=6.0Hz、1H)、5.99(td、J=23.5、9.6Hz、1H)、4.19~4.07(m、8H)、1.22~1.11(m、12H)。31P NMR(203MHz、DMSO-d)δ16.9。13C NMR(126MHz、DMSO-d)δ167.8、156.5(t、J=4.0Hz)、156.4、148.7、139.6、134.1、130.8、125.3、124.9、122.4、120.8、116.4、63.4~63.2(m)、45.0(t、J=147.2Hz)、16.7~16.6(m)。MS[ESI]m/z:559.1[M+H]
【0182】
方法Aまたは方法Bのいずれかを用いたアミド結合形成のための一般的なプロトコル
方法A:0℃での乾燥DCM(1.5mL)中のテトラエチル(((2(3-アミノフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)(0.15mmol)などのスキーム6の5dの撹拌溶液に、乾燥EtN(0.45mmol)を添加した。次いで、酸塩化物(Ar-COCl)(0.18mmol)を滴下添加した。溶液を撹拌し室温まで昇温させた(反応の進行をTLCおよび/またはLC-MSにより監視した)。完了したら(典型的には約1時間後)、反応物を飽和NaHCO水溶液に注入し、EtOAc(2回)で抽出し、塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、真空濃縮した。粗生成物を、ヘキサン中の25%EtOAcから100%EtOAc、次いでEtOAc中の20%MeOHの勾配でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。生成物は、典型的にはEtOAc中の10%~20%MeOHで溶出する。単離収率は典型的には75%~定量的であった。あるいは、アリールカルボン酸(酸塩化物の代わり)を、方法Bについて記載したのと同様の方法に従ってカップリング試薬としてHATUまたはHBTUを用いた反応で使用した。
【0183】
方法B:乾燥DMF(2.0mL)中の3-(4-((ビス(ジエトキシホスホリル)メチル)アミノ)チエノ[2,3-d]ピリミジン-2-イル)安息香酸(0.09mmol)などのスキーム6の5bとアミン(Ar-NH)(0.1mmol)との混合物に、DIPEA(0.18mmol)、次いでHBTU(0.1mmol)を添加した。完了するまで(典型的には約1~2時間後)溶液を室温で撹拌した。塩水を、反応混合物に添加し、EtOAcで抽出した。有機層を飽和NHCl溶液、塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、真空濃縮した。粗生成物を、上記の方法Aに記載したシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。単離収率は典型的には60~80%であった。
【0184】
3-(4-((ビス(ジエトキシホスホリル)メチル)アミノ)チエノ[2,3-d]ピリミジン-2-イル)安息香酸(5b、スキーム2)
ステップ1:中間体4を、上記のリーベスカインドスローグルクロスカップリング反応のための一般的なプロトコルを用いて(3-((ベンジルオキシ)カルボニル)フェニル)ボロン酸と反応させ、ベンジル3-(4-((ビス(ジエトキシホスホリル)メチル)アミノ)チエノ[2,3-d]ピリミジン-2-イル)ベンゾエート中間体などの中間体を得た。これを黄色固体として単離した。H NMR(500MHz、CDOD)δ9.09(s、1H)、8.66(d、J=7.8Hz、1H)、8.14(dd、J=7.7、1.1Hz、1H)、7.72(d、J=6.0Hz、1H)、7.64~7.58(m、1H)、7.55(dd、J=6.0、1.5Hz、1H)、7.49(d、J=7.9Hz、2H)、7.41(t、J=7.5Hz、2H)、7.36~7.32(m、1H)、6.19(t、J=23.5Hz、1H)、5.42(s、2H)、4.24~4.18(m、8H)、1.27~1.21(m、12H)。31P NMR(203MHz、CDOD)δ17.17(s)。13C NMR(126MHz、CDOD)δ169.5、167.5、159.4、157.4(t、J=3.9Hz)、139.7、137.6、133.6、132.2、131.8、130.1、129.9、129.7、129.3、129.3、125.3、119.8、117.1、67.9、65.2~65.1(m)、45.5(t、J=150.0Hz)、16.7~16.6(m)。MS[ESI]m/z:648.3[M-H]
【0185】
ステップ2:3-(4-((ビス(ジエトキシホスホリル)メチル)アミノ)チエノ[2,3-d]ピリミジン-2-イル)安息香酸の合成(5b、スキーム2)
純粋TFA(4.6mL)中の上記の生成物、ベンジル3-(4-((ビス(ジエトキシホスホリル)メチル)アミノ)チエノ[2,3-d]ピリミジン-2-イル)ベンゾエート(271mg、0.42mmol)の溶液を80℃で14時間撹拌した(TLCにより監視)。次いで、TFAを真空蒸発により除去し、残渣をDCMに溶解し、次いで、減圧下で蒸発させた(少なくとも2回行った)。粗生成物をヘキサン中の50%EtOAcから100%EtOAc、次いでEtOAc中の15%MeOHの勾配を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。生成物を、薄茶色固体として単離した(定量的収率)。H NMR(400MHz、CDClと約0.1%CDOD)δ9.20(s、1H)、8.70(d、J=7.9Hz、1H)、8.19(d、J=7.7Hz、1H)、7.70(d、J=6.0Hz、1H)、7.59(t、J=7.8Hz、1H)、7.40(d、J=6.0Hz、1H)、6.08(t、J=22.2Hz、1H)、4.29~4.18(m、8H)、1.29(t、J=7.0Hz、6H)、1.20(t、J=7.0Hz、6H)。31P NMR(203MHz、CDCl)δ17.50(s)。13C NMR(126MHz、CDClと約0.1%CDOD)δ169.2、168.3、158.4、155.8、138.4、132.7、131.5、129.8、128.6、123.8、118.8、115.9、115.8、64.2(br)、44.1(t、J=147.0Hz、1H)、16.2(br)。MS[ESI]m/z:558.1[M+H]
【0186】
テトラエチル(((2(3-アミノフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)(5d、Q=CH、q=l;R=H)(スキーム6)
圧力容器にテトラエチル(((2(3-ニトロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)(5a、R=3-NO、Q=CH、q=l、R=H;1.0等量)およびEtOH(0.1M)を導入した。次いで、SnCl・2HO(5.0等量)を添加し、混合物を80℃で2~3時間撹拌し、室温まで冷却し、混合物を徐々に飽和NaHCO溶液(10.0mL)に添加し、次いでEtOAc(3回)で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、MgSOで乾燥し、濾過し、真空濃縮した。生成物を黄色固体として単離し(収率80%)、さらなる精製なしで次のステップで使用した。H NMR(500MHz、DMSO-d)δ8.52(d、J=9.7Hz、1H)、8.06(d、J=6.0Hz、1H)、7.64~7.62(m、1H)、7.58(d、J=6.0Hz、1H)、7.53(d、J=7.7Hz、1H)、7.14(t、J=7.8Hz、1H)、6.67(dd、J=7.9、1.5Hz、1H)、6.01(td、J=23.5、9.7Hz、1H)、5.22(s、2H)、4.15~4.05(m、8H)、1.18~1.10(m、12H)。31P NMR(203MHz、DMSO-d)δ17.18(s)。MS[ESI]m/z:529.1[M+H]
【0187】
テトラエチルビスホスホネートエステル中間体をC-4アミンから調製し、次いでエステルを脱保護して、リン酸を得るための一般的手順を、既に報告されているように行った[例として、(a)Leung,ら、J.Med.Chem.2013、56、7939-7950。(b)Leung,ら、Bioorg.Med.Chem.2013、21、2229-2240を参照]
比較例
(((2-(フラン-2-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(リン酸)C-1(表1)
スキーム1に示した方法を用いて調製した。薄茶色固体として単離した(収率73%)。H NMR(500MHz、DO):δ7.71(s、1H)、7.45(d、J=5.9Hz、1H)、7.40(d、J=5.9Hz、1H)、7.35(d、J=3.2Hz、1H)、6.63(br、1H)、5.22(t、J=20.3Hz、1H)。31P NMR(203MHz、DO):δ12.9。13C NMR(125MHz、DO):δ163.4、156.5、151.4、150.1、145.6、123.5、118.8、115.6、114.0、112.5、48.8(t、J=130.5Hz)。MS(ESI)m/z:392.1[M+H]
【0188】
(((2-(ピリジン-4-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(リン酸)(C-2)(表1)
スキーム1に示したこの方法を用いて調製した。黄色固体として単離した(収率76%)。H NMR(400MHz、DO):δ8.60(br、2H)、8.24(br、2H)、7.58(d、J=6.0Hz、1H)、7.52(d、J=5.9Hz、1H)、5.26(t、J=19.4Hz、1H)。31P NMR(162MHz、DO):δ13.7。13C NMR(100MHz、DO):δ165.4、157.4、156.9、148.5、146.5、124.4、122.8、118.8、116.5、48.8(t、J=124.0Hz)。MS(ESI)m/z:403.1[M+H]
【0189】
式Iの代表的化合物
(((2-([1,1’-ビフェニル]-3-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(リン酸)(I-1)(表2)
スキーム6に示す方法を用いて調製した。
【0190】
ステップ1:テトラエチル(((2-(3-ブロモフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)(5c、R=Br、R=H;1等量)、[1,1’-ビフェニル]-3-イルボロン酸(1.3等量)、Pd(PPh(10mol%)およびKF(2.5等量)をマイクロ波反応バイアルに入れ、混合物をアルゴン(Ar)でパージした。混合物にMeOH(5c、0.10mmolあたり2.5mL)を添加し、Arで再びパージした。反応混合物を、マイクロ波(120℃)を介して20分間加熱した。反応混合物を冷却し、セライトを通して濾過し、乾燥状態まで真空濃縮した。粗生成物を、ヘキサン中の5%~100%EtOAc、次いでEtOAc中の0%~20%MeOHの溶媒勾配を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。テトラエチル(((2-([1,1’-ビフェニル]-3-イル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)(R=[1,1’-ビフェニル]-3-イル;R=H)を薄黄色固体として単離した(収率82%)。H NMR(500MHz、CDCl)δ8.74(s、1H)、8.45(d、J=7.8Hz、1H)、7.73~7.69(m、3H)、7.57(t、J=7.7Hz、1H)、7.48(t、J=7.6Hz、2H)、7.40~7.36(m、3H)、6.02~5.91(m、2H;ビスホスホネートの-NHおよびα-CH)、4.30~4.13(m、8H)、1.29~1.22(m、12H)。31P NMR(203MHz、CDCl)δ16.76
【0191】
ステップ2:テトラエチルビスホスホネートエステルの脱保護。最終生成物(I-1)を薄茶色固体として得た(収率75%)。H NMR(500MHz、DO)δ8.52(s、1H)、8.31(d,J=7.7Hz、1H)、7.88~7.76(m、3H)、7.66(t,J=7.8Hz、1H)、7.60(d,J=5.9Hz、1H)、7.55(t,J=7.7Hz、2H)、7.48(d,J=6.0Hz、1H)、7.44(d,J=7.4Hz、1H)、5.19(t,J=17.7Hz、1H)。31P NMR(203MHz、DO):δ13.9。13C NMR(125MHz、DO)δ165.7 160.4、157.0、141.0、140.3、138.3、129.4、129.1、129.0、127.8、127.5、127.1、126.4、123.2、118.8、115.7。CαはHSQCにより観察した。HSQC(H-13C):Hのδ5.19は、13Cのδ49.0と相関している。MS(ESI)m/z:478.2[M+H]
【0192】
(((2-(3-フェニルスルホンアミド)フェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(リン酸)(I-2)(表2)
スキーム6に示す方法を用いて調製した。
【0193】
ステップ1:0℃での乾燥DCM(5d、0.1mmolあたり1.3mL)中のテトラエチル(((2-(3-アミノフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)(5d、Q=CH、q=1,3-アミノ;R=H;1.0等量)の溶液にピリジン(7.5等量)を添加した。次いで、ベンゼンスルホニルクロリド(1.2等量)を添加し、反応物を室温まで昇温させた(反応の進行をTLCで監視した)。完了したら(典型的には約1~2時間後)、反応物を飽和NaHCO溶液に注入し、EtOAc(3回)で抽出し、1M HClで洗浄し、合わせた有機層をMgSOで乾燥し、真空濃縮した。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した(生成物はEtOAc中の5%MeOHで溶出した)。テトラエチル(((2(3-フェニルスルホンアミド)フェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)をクリーム色固体として単離した(73%)。H NMR(500MHz、DMSO-d)δ10.61(s、-NH)、8.58(d、J=9.7Hz、-NH)、8.22(d、J=8.8Hz、2H)、8.05(d、J=6.0Hz、1H)、7.84~7.82(m、2H)、7.63~7.55(m、4H)、7.24(d、J=8.8Hz、2H)、5.94(td、J=23.3、9.4Hz、1H)、4.13~4.04(m、8H)、1.16~1.08(m、12H)。31P NMR(203MHz、DMSO-d)δ17.12(s)。
【0194】
ステップ2:テトラエチルビスホスホネートエステルの脱保護。最終生成物(I-2)をクリーム色固体として得た(収率88%)。H NMR(500MHz、DO)δ8.20(d、J=8.3Hz、2H)、7.87(d、J=7.6Hz、2H)、7.68~7.63(m、1H)、7.59~7.56(m、3H)、7.45(d、J=5.8Hz、1H)、7.22(d、J=8.4Hz、2H)、5.15(t、J=17.0Hz、1H)。31P NMR(203MHz、DO)δ13.87(s)。13C NMR(101MHz、DO)δ165.7、159.7、156.9、140.4、138.2、133.4(2個の炭素)、129.4(2個の炭素)、129.3、129.2、126.8、122.8、121.3、118.8、115.5。ビスホスホネートのC-αをHSQCにより観察した。HSQC(H-13C):Hのδ5.15は、13C-αのδ47.0と相関している。HRMS[ESI]m/zC1916Naの計算値622.95724;実測値622.95769[M+3Na]
【0195】
(((2-(3-(チオフェン-2-カルボキサミド)フェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(リン酸)(I-3)(表2)
スキーム6に示す方法を用いて調製した。
【0196】
ステップ1:乾燥DMF(6、0.1mmolあたり2.0mL)中のテトラエチル(((2(3-アミノフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)(5d、Z=CH、n=1,3-アミノ;R=H;1.0等量)と2-チオフェンカルボン酸(1.1等量)との混合物に、DIPEA(2.0等量)、次いでHBTU(1.1等量)をArバルーン下で添加した。溶液を室温で4時間撹拌した(TLCおよびLC-MSで監視)。次いで、反応物に塩水(10mL)を添加し、EtOAc(20.0mL;2回)で抽出した。合わせた有機相を飽和NHCl溶液(10mL)、塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、真空濃縮した。粗生成物をヘキサン中の25%EtOAcから100%EtOAc、次いでEtOAc中の20%MeOHの勾配でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した(生成物はEtOAc中の10%MeOHで溶出した)。テトラエチル(((2-(3-チオフェン-2-カルボキサミド)フェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)を黄色固体として単離した(77%)。H NMR(500MHz、DMSO-d)δ10.41(s、-NH)、8.80(t、J=1.8Hz、1H)、8.66(d、J=9.7Hz、-NH)、8.12(d、J=7.9Hz、1H)、8.10~8.09(m、2H)、7.89~7.87(m、2H)、7.64(d、J=6.0Hz、1H)、7.51(t、J=7.9Hz、1H)、7.25(dd、J=4.9、3.8Hz、1H)、6.06(td、J=23.4、9.7Hz、1H)、4.18~4.06(m、8H)、1.20~1.10(m、12H)。31P NMR(203MHz、DMSO-d)δ16.97(s)。MS[ESI]m/z:639.1[M+H]
【0197】
ステップ2:テトラエチルビスホスホネートエステルの脱保護。最終生成物(I-3)を黄色固体として得た(収率71%)。H NMR(400MHz、DO)δ8.35(s、1H)、8.17(d、J=7.9Hz、1H)、7.94(dd、J=3.7、0.8Hz、1H)、7.86(dd、J=8.0、1.2Hz、1H)、7.80(dd、J=5.0、0.9Hz、1H)、7.64~7.60(m、2H)、7.49(d、J=6.0Hz、1H)、7.27(dd、J=4.9、3.9Hz、1H)、5.14(t、J=18.8Hz、1H)。31P NMR(203MHz、DO)δ13.81(s)。13C NMR(101MHz、DO)δ165.5、163.3、159.8、156.7、138.7、137.6、137.2、132.2、130.4、129.5、128.4、125.2、124.3、123.0、121.9、119.0、115.9。ビスホスホネートのC-αをHSQCにより観察した。HSQC(H-13C):Hのδ5.14は、13C-αのδ49.5と相関している。HRMS[ESI]C1814Nam/zの計算値592.94667;実測値592.94813[M+3Na]
【0198】
(((2-(3-(シクロヘキサンカルボキサミド)フェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(リン酸)(I-4)(表2)
I-3に記載のプロトコルに従って調製した。ステップ1:中間体、テトラエチル(((2-(3-(シクロヘキサンカルボキサミド)フェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)(R=3-(シクロヘキサンカルボキサミド)フェニル;R=H)を黄色固体として単離した(収率68%)。H NMR(500MHz、DMSO-d)δ9.97(s、-NH)、8.68(t、J=1.8Hz、1H)、8.62(d、J=9.7Hz、-NH)、8.09(d、J=6.0Hz、1H)、8.03(d、J=7.9Hz、1H)、7.71(ddd、J=8.1、2.0、0.9Hz、1H)、7.62(d、J=6.0Hz、1H)、7.42(t、J=7.9Hz、1H)、6.04(td、J=23.4、9.7Hz、1H)、4.18~4.06(m、8H)、2.37(tt、J=11.6、3.4Hz、1H)、1.78~1.65(m、5H)、1.48~1.20(m、5H)、1.19~1.09(m、12H)。31P NMR(203MHz、DMSO-d)δ16.98(s)。MS[ESI]m/z:639.2[M+H]
【0199】
ステップ2:最終生成物(I-4)を黄色固体として得た(収率81%)。H NMR(500MHz、DO)δ8.25(s、1H)、8.14(d、J=7.9Hz、1H)、7.82(d、J=8.1Hz、1H)、7.64~7.59(m、2H)、7.50(d、J=5.9Hz、1H)、5.11(t、J=19.1Hz、1H)、2.49(tt、J=11.8、3.3Hz、1H)、1.99~1.73(m、5H)、1.56~1.27(m、5H)。31P NMR(203MHz、DO)δ13.77(s)。13C NMR(101MHz、DO)δ179.1、165.6、159.9、157.0、138.6、137.5、129.5、124.9、123.8、123.1、121.4、118.9、115.8、45.8、29.1、25.3、25.2。ビスホスホネートのC-αをHSQCにより観察した。HSQC(H-13C):Hのδ5.11は、13C-αのδ49.0と相関している。HRMS[ESI]C2022NaSm/zの計算値593.03720;実測値593.03804[M+3Na]
【0200】
(((2-(3-(4-メトキシベンズアミド)フェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(リン酸)(I-5)(表2)
スキーム6に示す方法を用いて調製した。
【0201】
ステップ1:0℃での乾燥DCM(5d、1mmolあたり6.5mL)中のテトラエチル(((2-(3-(アミノフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)(5d、Q=CH、q=1,3-アミノ;R=H;1.0等量)の撹拌溶液に乾燥EtN(3.0等量)を添加した。次いで、パラメトキシベンゾイルクロリド(1.2等量)をArバルーン下で滴下添加した。溶液を撹拌し、室温まで昇温させた(反応の進行をTLCまたはLC-MSで監視した)。完了したら(典型的には約1時間後)、反応混合物を飽和NaHCO溶液に注入し、EtOAc(2回)で抽出し、塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、真空濃縮した。粗生成物を、ヘキサン中の25%EtOAcから100%EtOAc、次いでEtOAc中の20%MeOHの勾配でシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した(生成物はEtOAc中の15%MeOHで溶出した)。テトラエチル(((2-(3-(4-メトキシベンズアミド)フェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)を黄色固体として単離した(定量的収率)。H NMR(500MHz、DMSO-d)δ10.27(s、-NH)、8.84(t、J=1.7Hz、1H)、8.65(d、J=9.7Hz、-NH)、8.11~8.09(m、2H)、8.02(d、J=8.8Hz、2H)、7.90(dd、J=6.9、1.2Hz、1H)、7.64(d、J=6.0Hz、1H)、7.49(t、J=7.9Hz、1H)、7.08(d、J=8.9Hz、2H)、6.06(td、J=23.4、9.7Hz、1H)、4.18~4.07(m、8H)、3.85(s、3H)、1.19~1.10(m、12H)。31P NMR(203MHz、DMSO-d)δ17.01(s)。MS[ESI]m/z:663.2[M+H]
【0202】
ステップ2:テトラエチルビスホスホネートエステルの脱保護。最終生成物(I-5)をベージュ色固体として得た(81%)。H NMR(400MHz、DO)δ8.36(s、1H)、8.19(d、J=7.8Hz、1H)、7.98(d、J=8.8Hz、2H)、7.91(d、J=8.1Hz、1H)、7.68~7.60(m、2H)、7.50(d、J=6.0Hz、1H)、7.17(d、J=8.9Hz、2H)、5.11(t、J=19.0Hz、1H)、3.94(s、3H)。31P NMR(162 MHz、DO)δ13.78(s)。13C NMR(126MHz、DO)δ169.1、165.0、162.2、160.0、156.8、138.7、137.6、129.6、129.5、126.3、125.1、124.4、122.6、122.0、119.2、116.0、114.1、55.5。ビスホスホネートのC-αをHSQCにより観察した。HSQC(H-13C):Hのδ5.11は、13C-αのδ50.0と相関している。HRMS[ESI]C2118NaSm/zの計算値617.00082;実測値617.00181[M+3Na]
【0203】
(((2-(3-(フェニルカルバモイル)フェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(リン酸)(I-34)(表2)
スキーム2に示す方法を用いて調製した。
【0204】
ステップ1:5d[テトラエチル(((2-(3-(アミノフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)]の溶液を室温で、アルゴンバルーン下で、DIPEA(2等量)およびHBTU(1.1等量)の存在下で乾燥DMF中の4-フルオロ安息香酸と反応させた。反応をTLCで追跡し、反応が完了したら、塩水(10ml)を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和塩化アンモニウム(10ml)、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空濃縮した。粗生成物を、CombiFlash装置を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。生成物は酢酸エチル中の15%メタノールで溶出し、黄色固体として得た(48mg、65%)。H NMR(500MHz、CDCl)δ8.39(s、1H)、8.28(d、J=7.9Hz、1H)、8.14(d、J=7.6Hz、1H)、8.03~7.90(m、3H)、7.52(t、J=8.0Hz、1H)、7.37(d、J=6.0Hz、1H)、7.21(t、J=8.5Hz、2H)、5.97(d、J=9.9Hz、1H)、5.78(s、1H)、4.35~4.08(m、8H)、1.29~1.19(m、12H)。31P NMR(203MHz、CDCl)δ16.84
【0205】
テトラエチルエステルの脱保護後、最終化合物I-34をベージュ色粉末として単離した(26.1mg、63%)。H NMR(400MHz、DO)δ8.37(s、1H)、8.20(d、J=7.9Hz、1H)、8.05~7.98(m、2H)、7.93(d、J=8.1Hz、1H)、7.70~7.60(m、2H)、7.51(d、J=6.0Hz、1H)、7.39~7.29(m、2H)、5.17(t、J=19.0Hz、1H)。31P NMR(162MHz、DO)δ13.93(s)。13C NMR(126MHz、DO)δ168.5、165.8、165.4、163.8、159.7、156.9、138.5、137.4、130.1、130.0、129.4、125.1、124.1、122.9、121.7、118.9、115.8、115.7、115.5、49.5(t、J=122.7Hz)。HRMS[ESI]C2015FNNaOSm/z[M-2H+Na]の計算値559.0024;実測値559.0010[M-2H+Na]
【0206】
(((2-(3-(フェニルカルバモイル)フェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(リン酸)(I-6)(表2)
テトラエチル(((2-(3-(フェニルカルバモイル)フェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)を薄黄色固体として単離した(収率84%)。H NMR(400MHz、DMSO-d)δ10.47(s、-NH)、8.95(s、1H)、8.75(d、J=9.6Hz、-NH)、8.57(d、J=7.9Hz、1H)、8.10(d、J=5.7Hz、1H)、8.07(d、J=7.9Hz、1H)、7.82(d、J=7.7Hz、2H)、7.71~7.66(m、2H)、7.39~7.35(m、2H)、7.12(t、J=7.4Hz、1H)、6.03(br、1H)、4.18~4.00(m、8H)、1.19~1.08(m、12H)。31P NMR(162MHz、DMSO-d)δ17.05(s)。13C NMR(126MHz、DMSO-d)δ167.6、165.5、157.5、156.0(t、J=3.7Hz)、139.2、137.7、135.5、130.4、129.4、128.7、128.6、127.1、123.8、123.7、120.3、120.2、115.5、62.9~62.7(m)、16.2~16.1(m)。ビスホスホネートのC-αをHSQCにより観察した。HSQC(H-13C):Hのδ6.03は、13C-αのδ45.1と相関している。MS[ESI]m/z:633.2[M+H]ステップ2:テトラエチルビスホスホネートエステルの脱保護。最終生成物(I-6)をオフホワイト固体として単離した(67%)。H NMR(400MHz、DO)δ8.81(s、1H)、8.58(d、J=7.9Hz、1H)、8.06(d、J=7.8Hz、1H)、7.76(t、J=7.8Hz、1H)、7.66~7.63(m、3H)、7.56~7.52(m、3H)、7.36(t、J=7.4Hz、1H)、5.20(t、J=19.0Hz、1H)。31P NMR(203MHz、DO)δ13.91(s)。13C NMR(126MHz、DO)δ169.4、165.5、159.7、157.0、138.3、136.9、134.4、132.0、129.4、129.3、129.2、126.9、126.0、123.2、123.0、119.0、115.9、49.3。HRMS[ESI]C2016NaSm/zの計算値586.9903;実測値586.9903[M+3Na]
【0207】
(((2-(3-(3-(4-フルオロフェニル)ウレイド)フェニルチエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(リン酸)(I-7)(表2)
スキーム6に示す方法を用いて調製した。
【0208】
ステップ1:乾燥トルエン(0.05M)中のトリホスゲン(1.0等量)の混合物に、Ar下で室温にて4-フルオロアニリン(1.5等量)を添加した。次いで、EtN(1.1等量)を滴下添加し、反応混合物を4時間還流した。溶媒を真空下で除去し、残渣を乾燥DCM(1.0~2.0mL)に再溶解した。次いで、これを、氷浴中で、乾燥DCM(5d、0.1mmolあたり1.0mL)中のテトラエチル(((2-(3-アミノフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)(5d、Q=CH、q=1,3-アミノ;R=H;0.80等量)およびEtN(1.2等量)の溶液に添加した。完了するまで(典型的には12時間後)得られた混合物を室温で撹拌した。次いで、溶媒を真空下で除去し、残渣をEtOAcに溶解し、飽和NHCl、塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、有機抽出物を回収し、真空濃縮した。粗生成物を、CombiFlash装置を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した(生成物をEtOAc中の約10%MeOHで溶出した)。テトラエチル(((2-(3-(3-(4-フルオロフェニル)ウレイド)フェニルチエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)を黄色固体として単離した(収率71%)。H NMR(500MHz、CDCl)δ8.12~8.01(m、4H)、8.08(s、1H)、7.79(s、1H)、7.42~7.37(m、3H)、7.28(d、J=7.8Hz、1H)、7.21(d、J=5.6Hz、1H)、6.91(t、J=8.7Hz、2H)、6.74(br_s、1H)、6.20(t、J=25.8Hz、1H)、4.32~4.20(m、8H)、1.29~1.24(m、12H)。31P NMR(203MHz、CDCl)δ17.14(s)。MS[ESI]m/z:666.2[M+H]
【0209】
ステップ2:テトラエチルビスホスホネートエステルの脱保護。最終生成物(I-7)を黄色固体として得た(収率74%)。H NMR(400MHz、DMSO-d)δ8.90(br_s、1H)、8.73(br_s、1H)、8.34(s、1H)、8.05(d、J=7.8Hz、1H)、7.89(br、1H)、7.73(d、J=7.5Hz、2H)、7.57(d、J=5.6Hz、1H)、7.50~7.47(m、2H)、7.41(t、J=7.9Hz、1H)、7.12(t、J=8.7Hz、2H)、5.62(br_、1H)。31P NMR(162MHz、DMSO-d)δ13.98(s)。MS[ESI]m/z:554.0[M+H]
【0210】
(((2-(3-(4-メチルベンズアミド)フェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(リン酸)(I-18)(表2)
ステップ1:テトラエチル(((2-(3-(4-メチルベンズアミド)フェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)を黄色固体として単離した。H NMR(500MHz、DMSO-d)δ10.34(s、-NH)、8.85(t、J=1.8Hz、1H)、8.65(d、J=9.7Hz、-NH)、8.12~8.09(m、2H)、7.93(d、J=8.2Hz、2H)、7.91 (ddd、J=8.1、21、1.0Hz、1H)、7.64(d、J=6.0Hz、1H)、7.50(t、J=7.9Hz、1H)、7.35(d、J=7.9Hz、2H)、6.06(td、J=23.4、9.7Hz、1H)、4.18~4.05(m、8H)、2.40(s、3H)、1.19~1.10(m、12H)。31P NMR(203MHz、DMSO-d)δ17.00(s).MS[ESI]m/z:647.2[M+H]
【0211】
ステップ2:化合物I-18を薄黄色固体として単離した。H NMR(500MHz、DO)δ8.38(s、1H)、8.20(d、J=7.6Hz、1H)、7.93(d、J=7.1Hz、1H)、7.89(d、J=7.9Hz、2H)、7.68~7.63(m、2H)、7.51(d、J=5.9Hz、1H)、7.46(d、J=7.9Hz、2H)、5.15(t、J=18.9Hz、1H)、2.47(s、3H)。31P NMR(203MHz、DO)δ13.82(s)。13C NMR(101MHz、DO)δ169.3、165.6、159.5、156.8、143.5、138.3、137.5、130.7、129.4、129.3、127.5、125.0、124.121.6、118.8、115.8、48.9(t、J=124.8Hz)、20.6。HRMS[ESI]C2118NaSm/zの計算値601.00590;実測値601.00773[M+3Na]
【0212】
(((2-(3-(4-メトキシフェニル)カルバモイル)フェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(リン酸)(I-36)(表2)
ステップ1:テトラエチル(((2-(3-(4-メトキシフェニル)カルバモイル)フェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)を薄茶色固体として単離した。H NMR(500MHz、CDClと約0.1%CDOD)δ9.01(s、1H)、8.67(br_s、1H)、8.59(d、J=7.8Hz、1H)、8.11(d、J=7.6Hz、1H)、7.68(d、J=8.8Hz、2H)、7.61(t、J=7.7Hz、1H)、7.45(d、J=5.3Hz、1H)、7.37(d、J=6.0Hz、1H)、6.92(d、J=9.0Hz、2H)、5.86(t、J=22.3Hz、1H)、4.27~4.10(m、8H)、3.82(s、3H)、1.26(t、J=7.1Hz、6H)、1.21(t、J=7.1Hz、6H)。31P NMR(203MHz、CDCl)δ17.10(s)。MS[ESI]m/z:663.4[M+H]
【0213】
ステップ2:化合物I-36をオフホワイト固体として単離した。H NMR(500MHz、DO)δ8.74(s、1H)、8.54(d、J=7.8Hz、1H)、8.00(d、J=7.7Hz、1H)、7.72(t、J=7.8Hz、1H)、7.62(d、J=5.9Hz、1H)、7.51~7.49(m、3H)、7.06(d、J=8.9Hz、2H)、5.18(t、J=18.9Hz、1H)、3.86(s、3H)。13C NMR(126MHz、DO)δ169.3、165.5、159.7、157.0、156.7、138.3、134.3、132.0、130.1、129.3、129.3、126.8、124.8、123.2、118.9、115.9、114.4、55.5。HSQC(H-13C):Hのδ5.18は、13C-αのδ49.3と相関している。31P NMR(203MHz、DO)δ13.91(s)。HRMS[ESI]C2118NaSm/zの計算値617.00082;実測値617.00090[M+3Na]
【0214】
(((2-(3-((3-フルオロ-4-メトキシフェニル)カルバモイル)フェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(リン酸)(I-37)(表2)
ステップ1:テトラエチル(((2-(3-((3-フルオロ-4-メトキシフェニル)カルバモイル)フェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)を黄色固体として単離した。H NMR(500MHz、CDCl)δ9.28(s、1H)、9.10(br_s、1H)、8.62(d、J=7.8Hz、1H)、8.14(d、J=7.7Hz、1H)、7.70(dd、J=13.1、2.3Hz、1H)、7.66(d、J=8.7Hz、1H)、7.59(t、J=7.7Hz、1H)、7.42(d、J=5.8Hz、1H)、7.27(d、J=6.0Hz、1H)、6.94(t、J=9.1Hz、1H)、6.77(br_s、1H)、5.63(td、J=22.9、7.7Hz、1H)、4.24~4.11(m、8H)、1.24~1.20(m、12H)。31P NMR(203MHz、CDCl)δ17.27(s)。13C NMR(126MHz、CDCl)δ168.4、165.3、158.5、155.8(t、J=3.3Hz)、152.2(d、J=244.1Hz)、144.3(d、J=10.9Hz)、138.0、134.7、132.6(d、J=9.4Hz)、131.1、130.2、129.1、126.8、123.9、117.9、116.3(d、J=3.4Hz)、115.5、113.7(d、J=2.5Hz)、109.7(d、J=22.6Hz)、63.9~63.7(m)、56.7、46.9(t、J=147.9Hz)、16.5~16.4(m)。MS[ESI]m/z:681.3[M+H]
【0215】
ステップ2:化合物I-37を薄黄色固体として単離した。H NMR(500MHz、DO)δ8.77(s、1H)、8.55(d、J=7.8Hz、1H)、8.03(d、J=7.8Hz、1H)、7.74(t、J=7.8Hz、1H)、7.64(d、J=5.9Hz、1H)、7.53~7.51(m、2H)、7.34(d、J=8.5Hz、1H)、7.23(t、J=9.1Hz、1H)、5.21(t、J=18.5Hz、1H)、3.95(s、3H)。31P NMR(203MHz、DO)δ13.90(s)。13C NMR(126MHz、DO)δ168.8、165.5、159.5、157.0、151.3(d、J=242.1Hz)、144.3(d、J=10.9Hz)、138.1、133.9、132.0、130.5(d、J=9.4Hz)、129.3、129.2、126.8、123.2、118.7、118.7(d、J=3.1Hz)、115.8、113.9(d、J=1.9Hz)、111.0(d、J=21.8Hz)、56.3。HSQC(H-13C):Hのδ5.19は、13C-αのδ49.0と相関している。HRMS[ESI]C2117FNaSm/zの計算値634.99140;実測値634.99164[M+3Na]
【0216】
2-(メチルチオ)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4(3H)-オンの合成(スキーム2の中間体10)
メチル-3-アミノ-2-チオフェンカルボキシレート(1.00g、6.36mmol)をジオキサン(9.5ml)中の4M塩酸、次いでチオシアン酸メチル(465mg、6.36mmol)に添加した。得られた懸濁液を密閉圧力管で90℃に24時間加熱した。反応をTLCで追跡し、完了したら、混合物を室温まで冷却し、得られた白色沈殿物を真空濾過により回収した。固体をエタノール、次いでヘキサンで洗浄した。得られた白色固体(1.19g、94%)を何らかのさらなる精製なしに次のステップで使用した。H NMR(500MHz、DMSO-d)δ8.14(d、J=5.2Hz、1H)、7.31(d、J=5.2Hz、1H)、2.54(s、3H)。13C NMR(126MHz、DMSO)δ158.2、157.7、157.3、135.1、124.5、119.1、12.9
【0217】
4-クロロ-2-(メチルチオ)チエノ[3,2-d]ピリミジン(スキーム2の中間体11)
オキシ塩化リン(17.9ml、192mmol)を、反応フラスコ中の化合物10(3.80g、19.2mmol)に添加し、106℃(還流)で12時間加熱した。反応をTLCで追跡した。反応が完了したら、オキシ塩化リンを蒸留により除去し、残りの反応混合物を0℃に冷却し、次いで、pH7になるまで、飽和重炭酸ナトリウム水溶液を滴下添加することによりクエンチした。水層をDCM(3回)で抽出し、合わせた有機層を塩水で洗浄し、次いで減圧濃縮した。生成物を白色粉末として得た(3.04g、73%)。H NMR(500MHz、CDCl)δ7.98(d、J=5.5Hz、1H)、7.45(d、J=5.5Hz、1H)、2.65(s、3H)。13C NMR(126MHz、CDCl)δ168.9、162.5、154.6、137.5、126.1、124.2、14.7。MS[ESI]m/z:217.03および219.03[M+H]
【0218】
2-(メチルチオ)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-アミン(スキーム2の中間体12)
28%水酸化アンモニウム(18.7ml、592mmol)を中間体11(1.28g、5.93mmol)に添加した。反応物を90℃に12時間(一晩)加熱した。反応をTLCで追跡した。次いで、混合物を室温まで冷却し、濾過し、水で洗浄し、空気乾燥した。生成物を薄緑色粉末として得た(1.06g、91%)。H NMR(500MHz、DMSO)δ8.06(d、J=5.4Hz、1H)、7.48(s、2H)、7.26(d、J=5.3Hz、1H)、2.46(s、3H)。13C NMR(126MHz、DMSO)δ166.7、160.5、157.7、133.7、123.6、110.8、13.3。MS[ESI]m/z:198.05[M+H]
【0219】
テトラエチル(((2-(メチルチオ)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)(スキーム2の中間体13)
トルエン(2.2ml)中の化合物12(750mg、3.79mmol)を導入した圧力容器に、亜リン酸ジエチル(3.4ml、26.5mmol)およびオルトギ酸トリエチル(1.1ml、6.45mmol)を添加した。混合物を130℃で48時間加熱し、TLCおよびLC-MSで監視した。冷却し、真空濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。生成物は酢酸エチル中の20%メタノールで溶出する。生成物を黄色固体として得た(1.00g、55%)。H NMR(500MHz、CDCl)δ7.73(d、J=5.3Hz、1H)、7.33(d、J=5.3Hz、1H)、5.70(td、J=21.9、9.8Hz、1H)、5.49(d、J=9.2Hz、1H)、4.29~4.12(m、8H)、2.58(s、3H)、1.33~1.22(m、12H)。31P NMR(203MHz、CDCl)δ16.37。13C NMR(126MHz、CDCl)δ167.9、161.4、155.1、132.4、124.6、112.1、63.9(m)、44.7(t、J=146.8Hz)、16.5(m)、14.4.MS[ESI]m/z:484.19[M+H]
【0220】
(((2-(3-((3-フルオロ-4-メトキシフェニル)カルバモイル)フェニル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(リン酸)(I-42)(表2)
テトラエチル(((2(3-((3-フルオロ-4-メトキシフェニル)カルバモイル)フェニル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4-イル)アミノ)メチレン)ビス(ホスホネート)を薄黄色固体として単離した(39.3mg、56%)。H NMR(500MHz、CDCl)δ9.37(s、1H)、9.26(s、1H)、8.56(d、J=7.8Hz、1H)、8.09(d、J=7.7Hz、1H)、7.71(d、J=5.3Hz、1H)、7.67(dd、J=13.1、2.1Hz、1H)、7.61(d、J=8.5Hz、1H)、7.51(t、J=7.7Hz、1H)、7.43(d、J=5.3Hz、1H)、6.86(t、J=9.1Hz、1H)、6.54(s、1H)、5.62(t、J=18.3Hz、1H)、4.15(dd、J=42.1、11.0Hz、8H)、3.83(s、3H)、1.18(dd、J=13.0、7.0Hz、12H)。31P NMR(203MHz、CDCl)δ17.06。13C NMR(126MHz、CDCl)δ165.4、161.4、159.7、155.9(t、J=3.78Hz)、152.9、150.9、144.0(d、J=11.34Hz)、138.1、134.6、132.5(t、J=10.08Hz)、130.9、129.8、128.8、127.0、125.3、116.2(d、J=2.52Hz)、114.2、113.5(d、J=2.52Hz)、109.5(d、J=22.68Hz)、63.7(m)、56.6、46.8(t、J=148.7Hz)、16.3(m)。MS(ESI):(m/z)[M+H]681.42;MS(ESI):(m/z)[M-H]679.30
【0221】
上記テトラエチルエステル中間体の脱保護後、化合物I-42を白色固体として単離した(15.8mg、57%)。H NMR(400MHz、DMSO-d)δ10.46(s、1H)、8.96(s、1H)、8.63(d、J=7.8Hz、1H)、8.24(d、J=5.2Hz、1H)、8.05(d、J=7.7Hz、1H)、7.79(dd、J=13.8、2.4Hz、1H)、7.69(t、J=7.8Hz、1H)、7.55(d、J=5.3Hz、2H)、7.18(t、J=9.4Hz、1H)、5.60~5.44(m、2H)、3.84(s、3H)。31P NMR(162MHz、DMSO-d)δ13.46。HRMS[ESI]C2310FN12Sm/z[M-H]の計算値567.0337;m/z実測値567.0328
【0222】
文献手順(Shu、L.ら、Heterocycles.2012、85、1721-1726)に基づくエチル5-((エトキシカルボニル)アミノ)チアゾール-4-カルボキシレート(中間体18、スキーム3)
無水THF(10ml)を、アルゴン雰囲気下でt-BuOK(546mg、4.86mmol)を含有する2首フラスコに添加した。混合物を40℃に冷却し、次いでイソシアン酢酸エチル(500mg、4.42mmol)を、温度が-35℃を超えないように滴下添加した。その後、イソチオシアン酸エトキシカルボニル(609mg、4.64mmol)も混合物に滴下添加した。温度は0℃まで自由に上昇させながら、得られた混合物を1.5時間撹拌した。反応物を、氷酢酸(2.5ml)を添加することによりクエンチした。混合物を酢酸エチルおよび水で希釈し、酢酸エチルで2回抽出し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶液を真空濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。生成物をオレンジ固体として得た(821mg、76%)。H NMR(500MHz、DMSO-d)δ10.01(s、1H)、8.59(s、1H)、4.33(q、J=7.1Hz、2H)、4.26(q、J=7.1Hz、2H)、1.31(t、J=7.1Hz、3H)、1.28(t、J=7.1Hz、3H)。13C NMR(126MHz、DMSO-d)δ163.73、152.59、146.51、145.11、126.81、62.73、60.83、14.18、14.13。MS[ESI]m/z:245.40[M+H]
【0223】
エチル(4-カルバモイルチアゾール-5-イル)カルバメート(中間体19、スキーム3);文献手順(Shu,L.ら、Heterocycles.2012、85、1721-1726)に基づく。
圧力容器中、化合物18をエタノール(0.8ml)に溶解し、固体すべてが完全に溶解するまで40℃で撹拌した。この溶液に、水(1.6ml)、次いで水酸化アンモニウム(5.8ml、84mmol)を添加し、次いで80℃で30分間加熱した。室温まで冷却した後、得られた固体を濾過により回収し、水数回分で洗浄し、真空乾燥した。生成物19を白色固体として単離した(510mg、71%)。H NMR(500MHz、DMSO-d)δ10.89(s、1H)、8.58(s、1H)、7.83(d、J=49.4Hz、2H)、4.23(q、J=7.1Hz、2H)、1.27(t、J=7.1Hz、3H)。MS[ESI]m/z:216.10[M+H]
【0224】
3a,7a-ジヒドロチアゾロ[5,4-d]ピリミジン-5,7(4H、6H)-ジオン(中間体20、スキーム3);文献手順(Shu,L.ら、Heterocycles.2012、85、1721-1726)に基づく。
丸底フラスコにt-BuOK(625.6mg、5.58mmol)およびN,N-ジメチルアセトアミド(10mL)、次いで化合物19(400mg、1.86mmol)を導入した。混合物をアルゴン雰囲気下で100℃にて1時間撹拌した。次いで、反応物を室温まで冷却し、濾過した。残渣を水で洗浄し、真空乾燥した。生成物をオフホワイト固体として単離した(267mg、85%)。H NMR(500MHz、DMSO-d)δ11.97(s、1H)、11.29(s、1H)、8.71(s、1H)。MS(ESI):(m/z)[M+H]170;MS(ESI):(m/z)[M-H]167.98
【0225】
5,7-ジクロロチアゾロ[5,4-d]ピリミジン(中間体21、スキーム3);Arnott,E.A.ら、J.Org.Chem.2011、76、1653-1661による文献手順に基づく。
コンデンサーを備えた2首フラスコに、化合物20(500mg、2.96mmol)を導入し、アルゴンでパージした。次いで、オキシ塩化リン(4.1mL、44.34mmol)を室温で添加し、次いで、DIPEA(0.7ml、3.84mmol)を徐々に添加した。混合物を室温で1時間撹拌し、次いで95℃に2.5時間加熱した。次いで、オキシ塩化リンを蒸留除去した。次いで、油性残渣を酢酸エチルに溶解し、重炭酸ナトリウム水溶液(2×)で洗浄した。有機層を回収し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空濃縮した。生成物をオフホワイト固体として単離した(353mg、58%)。H NMR(400MHz、DMSO-d)δ9.70(s、1H)。MS[ESI]m/z:205.97および207.93[M+H]
【0226】
5-クロロ-N-(2,4-ジメトキシベンジル)チアゾロ[5,4-d]ピリミジン-7-アミン(中間体22、スキーム3)
DMSO(13mL)中の化合物21(1.00g、4.85mmol)と、ジメトキシベンジルアミン(1.06g、6.31mmol)と、DIPEA(1.27mL、7.28mmol)との混合物を室温で3時間撹拌した。混合物を水(55mL)に注入し、0℃で20分間冷却し、次いで濾過した。得られた固体を水で洗浄した。次いで生成物を真空乾燥した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、薄黄色固体として単離した。H NMR(500MHz、CDCl)δ8.66(s、1H)、7.30(d、J=8.1Hz、1H)、6.81(s、1H)、6.44(d、J=10.7Hz、2H)、4.73(d、J=5.8Hz、2H)、3.84(s、3H)、3.80(s、3H)。13C NMR(126MHz、CDCl)δ161.9、160.9、158.8、156.9、156.3、150.6、131.0、130.1、117.7、104.0、98.7、55.49、55.46、40.5。MS[ESI]m/z:337.15および339.14[M+H]
【0227】
プリン系(スキーム4)およびピロロピリミジン系(スキーム5)化合物の調製のためのビルディングブロックの合成。例としては、表2の各々例I-44およびI-45が挙げられるがこれらに限定されない。
2,6-ジクロロ-7H-プリン(27、スキーム4)の合成はわずかに変更された文献手順(例えば、Zheng,Q.ら、Org.Proc.Res.Dev.、2004、8、962-963参照)に基づくものであった。
【0228】
キサンチン(26、1.00g、6.58mmol)およびPOCl(6.20mL、66.8mmol)を室温で混合し、次いでアルゴン下で50℃に徐々に加熱した。反応混合物に、DBU(5.96mL、39.9mmol)を勢いよく撹拌しながら滴下添加した。混合物を還流(108℃)まで6時間加熱した(120分後、キサンチンすべてが溶解し、反応混合物は茶色溶液になった)。次いで、反応混合物を50℃に冷却し、勢いよく撹拌しながら氷水(70g)に徐々に移した。得られた茶色溶液を、50%NaOH水溶液でpH=4に中和し、次いでセライトのパッドを通して濾過した。薄黄色水溶液を酢酸エチル(2×40mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、真空濃縮した。化合物27を黄色固体として得た(432mg、収率35%)。H NMR(400MHz、DMSO-d):δ8.74(s、1H)。MS(m/z):[M]189.01
【0229】
2,6-ジクロロ-7-メチル-7H-プリン(28)および2,6-ジクロロ-9-メチル-9H-プリン(29)(スキーム4)の合成
ジクロロプリン27(1.36g、7.20mmol)の溶液をアセトン(22.7mL)に溶解し、炭酸カリウム(1.49mg、10.8mmol)を室温で添加した。ヨウ化メチル(537μl、8.67mmol)を添加し、混合物を室温で1.5時間撹拌した。反応混合物を濃縮し、水を残渣に添加し、5分間撹拌し、次いで酢酸エチル(2×100ml)で抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。粗残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製した。化合物29は、形成された主生成物(952mg、65%)であり、オフホワイト固体として得られ、化合物28は、少量生成物(389mg、27%)であり、またオフホワイト固体として純粋に単離された。これらの結果は文献(例えば、国際公開第2010/034706号)と一致する。
化合物29:H NMR(400MHz、CDCl)δ8.01(s、1H)、3.91(s、3H)。MS(m/z):[M]203.05
化合物28:H NMR(400MHz、CDCl)δ8.20(s、1H)、4.16(s、3H)。MS(m/z):[M]203.05
【0230】
2-クロロ-N-(2,4-ジメトキシベンジル)-9-メチル-9H-プリン-6-アミン(中間体30、スキーム4)の合成
DMSO(15mL)中の化合物29(1.21g、5.96mmol)および2,4-ジメトキシベンジルアミン(1.16mL、7.74mmol)の溶液に、DIPEA(1.78mL,8.91mmol)を室温で添加し、同じ温度で6時間撹拌した。反応混合物にHO(20mL)を添加し、十分に振とうすると、白色沈殿物が観察された。混合物を0℃で20分間冷却し、濾紙を通して濾過し、固体を水(3×)で洗浄した。沈殿物を乾燥して、30を白色固体として得た(1.79g、90%)。H NMR(400MHz、CDOD)δ7.97(s、1H)、7.25(d、J=8.2Hz、1H)、6.55(d、J=2.3Hz、1H)、6.51~6.39(m、1H)、4.65(s、2H)、3.85(s、3H)、3.77(s、3H)、3.75(s、3H);LCMS(m/z)[M+H]333.24
【0231】
1,7-ジヒドロ-2H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2,4(3H)-ジオン(中間体33、スキーム5)の合成は、文献手順(Hatcher、J.M.ら、ACS Med.Chem.Lett.2015、6、584-589)に基づくものであった;33の互変異性体が7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2,4-ジオールであることは化学者には明らかであろう。
【0232】
72℃の温度でHO(50mL)中の6-アミノウラシル(32、6.35g、50.0mmol)および酢酸ナトリウム(4.10g、50.0mmol)の懸濁溶液にクロロアセトアルデヒド(水中50%、11.8g、75.2mmol)溶液を滴下添加した。反応混合物を80℃に加熱し、60分間撹拌し続けた。反応混合物を室温まで冷却した後、得られた固体を濾過により回収し、水およびアセトンで洗浄し、真空乾燥して、薄茶色固体として33を得た(6.46g、86%)。H NMR(400MHz、DMSO-d)δ11.45(s、1H)、11.10(s、1H)、10.48(s、1H)、6.64~6.51(m、1H)、6.22(t、J=2.5Hz、1H);MS(m/z)[M+H]152.06
【0233】
2,4-ジクロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(34、スキーム5)の合成
アルゴン下のトルエン(30mL)中の33(5.75g、38.0mmol)の懸濁液に、POCl(10.6mL、114mmol)を添加した。混合物DIPEA(13.3mL、76.1mmol)を70℃で2.5時間かけて滴下添加し、次いで温度を108℃に上昇させ、14時間撹拌し続けた。反応混合物を室温まで冷却し、次いで150mLの酢酸エチルと200mLの氷冷水との混合物に注入し、次いでセライトのパッドを通して濾過した。水層を酢酸エチル(3×200mL)で抽出し、合わせた有機層を塩水で洗浄し、濃縮して、34(3.42g、48%)を薄茶色固体として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d)δ12.79(s、1H)、7.94~7.24(m、1H)、6.66(ddd、J=5.3、3.5、1.7Hz、1H);MS(m/z):[M]188.03
【0234】
2,4-ジクロロ-7-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(35、スキーム5)の合成
CHCN(1mL)中の2,4-ジクロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン34(237mg、1.26mmol)の溶液にNaH(33.3mg、1.39mmol)を0℃で少量ずつ添加した。ガス発生が停止するまで、反応混合物を室温で20分間撹拌した。ヨウ化メチル(86.4μl、1.39mmol)を添加し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物に水を添加し、酢酸エチル(2×30mL)で抽出した。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、次いで真空濃縮した。得られた粗残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、35(144mg、58%)を白色固体として得た。H NMR(400MHz、DMSO-d)δ7.76(d、J=3.6Hz、1H)、6.71(d、J=3.6Hz、1H)、3.81(s、3H);MS(m/z)[M+H]204.02
【0235】
2-クロロ-7-メチル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン(36、スキーム5)の合成
圧力バイアル中、ジオキサン(0.4mL)中の35(40.6mg、0.200mmol)の溶液に、30%NHOH水溶液(1.5mL)を添加した。混合物を90℃に加熱し、23時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、次いで真空濃縮した。得られた粗残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、24を白色固体として得た(32.8mg、89%)。H NMR(400MHz、DMSO-d)δ7.45(s、2H)、7.11(d、J=3.4Hz、1H)、6.52(d、J=3.4Hz、1H)、3.64(s、3H);MS(m/z):[M+H]183.10。
【0236】
実施例2:組換えhGGPPSの発現および精製
hGGPPS酵素を、既に記載されているわずかに変更されたプロトコル(Kavanaghら、J.Biol.Chem.、2006、281、22004-22012)を介して発現させ、精製した。N末端にヘキサヒスチジン標識を含むヒトGGPPSを含有するプラスミドを、ルリアベルターニ(LB)培地中でカナマイシンを含有する大腸菌BL21(DE3)適格細胞に形質転換し、37℃で一晩増殖させた。1mLの50mMカナマイシンを含有するテリフィックブロス培地(1L)に、10mLの一晩種培養物を接種し、これを、光学密度(OD)600が1に等しくなるまで37℃で増殖させた。この時点で温度は18℃に低下した。培養を、0.5mMイソプロピル1-チオ-β-D-ガラクトピラノシドで誘導し、一晩振とうした。細胞を、遠心分離を介してペレット化し、凍結するまで、一晩冷凍庫内(-20℃)で、または-80℃でインキュベートした。凍結した細胞ペレットに、プロテアーゼ阻害剤、Complete Mini-EDTAfreeペレット(Roche Life Science)および20mLの結合緩衝液(50mM HEPES、500mM NaCl、5mMイミダゾール、5%グリセロール、10mM β-メルカプトエタノール、pH7.5に調整)を添加した。次いで細胞を超音波処理し、遠心分離し、濾過した。His標識タンパク質を、Ni-NTAアガロースカラムに充填し、結合緩衝液で洗浄し、緩衝液(50mM HEPES、500mM NaCl、250mMイミダゾール、5%グリセロール、10mM β-メルカプトエタノール、pH7.5に調整を含有)で溶出した。回収されたタンパク質を、10mM HEPES、500mM NaCl、5%~20%グリセロール、2mM β-メルカプトエタノール、pH7.5に調整を含有する緩衝液を有するSuperdex200ゲルカラムを用いてゲル濾過カラムクロマトグラフィーによりさらに精製した。タンパク質をスピンカラム濃縮器で濃縮した。
【0237】
実施例3:インビトロhGGPPS阻害アッセイ
アッセイは、わずかに変更された文献手順(Kavanaghら、J.Biol.Chem.、2006、281、22004-22012)に基づくものであった。アッセイはすべて、50mM Tris pH7.7、2mM MgCl、1mM TCEP、5μg/mL BSAおよび0.2%(w/v)Tween20を含有する、100μLの最終容量の緩衝液中で組換えヒトGGPPS(80ng)、FPP(10μM)、IPP(8.3μM;H-IPP、40mCi/mmoL)を用いて三連で行われた。酵素および試験化合物を、37℃にて80μLの容量のアッセイ緩衝液中で10分間プレインキュベートした。その後、基質(FPP、IPP)を添加して、反応を開始し、また、これにより、化合物、基質および緩衝液の含有量が上に示す所望の最終濃度になった。次いで、アッセイ混合物を37℃で15分間インキュベートした(注意:インキュベーション時間は、酵素の新しいバッチが生成される毎に決定される曲線に基づく)。200μLのHCl/MeOH(1:4)を添加することによりアッセイを完了し、37℃で10分間インキュベートした。次いで、混合物を700μLの石油エーテルで抽出し、無水MgSO栓を介して乾燥し、300μLの乾燥リグロイン相を8mLのシンチレーションカクテルと合わせた。最後に、放射能を、Beckman Coulter LS6500液体シンチレーションカウンターを用いて計数した。
【0238】
酵素アッセイ用試薬:石油エーテル(高沸点、60℃~80℃)をSigma Aldrichから購入し、液体シンチレーションカクテルをMP Biomedicals(Ecolite Cat#882475)から購入し、H-IPPをAmerican Radiolabeled Chemicals(ART 0377A;1mCi/mL)から得、非標識IPPおよびFPPをIsoprenoids,Lc.からトリアンモニウム塩として購入した。
【0239】
hGGPPS野生型酵素:野生型hGGPPS酵素を溶出緩衝液(10mM HEPES、pH7.5、500mM NaCl、5%~20%グリセロール、2.0mM β-メルカプトエタノール)中の1μg/μL貯蔵液として-80℃で貯蔵した。
【0240】
IPP溶液:H-IPPを、10mM Tris pH7.7中の40mCi/mmolの比活性度および82.7μMの濃度(放射性標識+非標識IPP)まで非標識IPP(別名 冷IPP)で希釈した。これを-10℃で貯蔵し、0℃に昇温し、アッセイ中冷凍保存した。
【0241】
FPP溶液:FPPを溶解し、10mM Tris pH7.7中100μMの濃度に希釈した。これを-10℃で貯蔵し、0℃に昇温し、アッセイ中冷凍保存した。
【0242】
インビトロhFPPSアッセイを、先に記載した方法2(M2)(Leungら、J.Med.Chem.、2013、56、7939-7950)に基づき行った。細胞培養および生存率アッセイ、ならびにヒト骨髄腫細胞株のアポトーシスも先の手順(Leungら、J.Med.Chem.、2013、56、7939-7950;Linら、J.Med.Chem.、2012、55、3201-3215)に基づくものであった。様々な濃度の試験化合物の存在下でのAD脳における総タウおよびリン酸化タウレベルの決定およびLDHアッセイも、先に記載の手順(de Schutterら、J.Med.Chem.、2014、57、5764-5776)に基づき行った。
【0243】
結果および考察
上記生物学的スクリーニングアッセイの結果を表1、2および3に報告する。本出願の代表化合物の最初の生物学的スクリーニングは、陽性対照としての文献化合物1(ZOL)と並行して、1μMおよび100nMの一定濃度で通常のhGGPPS阻害アッセイを用いて行われた。代表的な例を表3に示す。hFPPSに対する選択性および総用量IC50曲線を、式Iの選択化合物に対して決定した(表3)。先の知見(Leungら、Bioorg.Med.Chem.、2013、21、2229-2240)と一致して、C-2またはC-6(ピリミジン番号付け)での単一のフェニル基(例えば、比較化合物C-5およびC-10)での置換は、ほぼ同等の効力でhFPPSとhGGPPSの両方の酵素を阻害する。一方で、C-5フェニル置換類似体は、いずれの酵素に対しても不活性であった(データは図示せず)。また、先の構造活性相関(SAR)試験では、hFPPSの強力な選択的阻害剤の同定に重点が置かれたことに留意されるべきであり、これはC-5での他の芳香族基での置換が好ましくないことを示唆していた;したがって、C-5での置換はさらに調査されなかった。C-2フェニルの複素環基での置き換えからは、より親油性の部分[フェニル比較化合物C-5および対応するC-2チオフェン比較化合物C-2対C-2ピリジン比較化合物C-6]が概して良好なhGGPPS活性を有する(表1)ことが示された。次いで、大きなhGGPPS活性部位を考慮して、C-2およびC-6側鎖を拡張して、結合占有率を最適化すると、効力はほぼ同じであるが、より嵩高い置換基は、それがC-2に配置されている場合、hGGPPSに対する選択性を改善することが判明した(例えば、I-13対比較化合物C-5、表3)。一方で、C-6位での同じアミド置換基の組込みは、両方の酵素の阻害活性を害することが判明した(例えば、比較化合物C-11対I-13、表3)。これらの結果を考慮して、C-2位が着目された。様々な異なる置換基(例えば、フェニル系、例えばI-5、I-13、I-18、および複素環I-3およびI-14、ならびにシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル、例えば、I-4、I-15、I-30、I-46およびI-47)を有する、スルホンアミド(例えば、I-11)、尿素(例えば、I-7)およびアミドリンカーを含有する類似体の拡張の結果、hGGPPSの阻害に対して良好な活性を有する化合物が得られた(表2)。
【0244】
要約すれば、元の「hits」(例えば、チエノピリミジンコアのC-2で、フェニルで置換されている、比較化合物C-5)から出発して、化合物I-13およびI-6の場合、hGGPPS対hFPPSの阻害についての選択性は、約30倍および55倍改善された(表3)。これらの化合物の多くは、サブミクロモル範囲においてEC50値を有するMMヒト癌細胞の増殖も阻害した(表3)。
【0245】
実施例4:多発性骨髄腫(MM)細胞の培養および生存率アッセイのためのプロトコル
様々なMM癌細胞株(表3、ならびに図5および6)を、37℃にて5%CO雰囲気で10%ウシ胎児血清(Gibco BRL、Gaithesburg、Md)および2mM L-グルタミンを補足したRPMI-1640培地で培養した。各標的化合物のEC50値は、製造業者指示書に従って、市販のMTS増殖アッセイ(Promega、Madison、WI)を用いて決定した。簡単に言えば、化合物を培養培地に直接希釈し、次いで1ウェルあたり5000細胞の密度で96ウェルプレートに播種した細胞に施した。MTS試薬を添加する前に、細胞を、示された最終濃度の化合物と100μl/ウェルの総培地容量で72時間インキュベートした。Tecan Infinite M200Proマイクロプレートリーダーを用いてOD490を記録する前に、プレートを5%COの存在下で37℃にて2時間インキュベートした。結果を分析し、Macintosh用GraphPad PRISMバージョン5(GraphPad Software、San Diego、CA)を用いて用量反応曲線およびEC50計算値を得た。
【0246】
実施例5:様々な癌細胞の培養および生存率アッセイのための別のプロトコル(表4)
1)細胞培養
NCI-ADR-RES細胞を国立がん研究所(NCI)から得、他の細胞株はすべてAmerican Type Culture Collection(ATCC)から得た。NHBE細胞を、10%FBS(Multicell)および2mM L-グルタミン(Gibco/Life Technologies)を補足した気管支上皮細胞増殖培地(BEGM)中で維持した。すべての他の細胞を、10%FBS(Multicell)、ペニシリン(100U/mL)、ストレプトマイシン(100μg/mL)および2mM L-グルタミン(Gibco/Life Technologies)を補足したRoswell Park Memorial Institute(RPMI)1640培地を用いて培地中で維持した。薬物処置前に、細胞を、透明底のマルチウェルプレートの各ウェル中で対数増殖相に撒き、16~24時間培養した。適切な培地での希釈前に化合物の連続希釈をDMSO中で行い、次いで、培養した細胞に添加して、最大0.2%DMSOに到達させた。細胞を薬物と72時間インキュベートした。試験した様々な細胞株に関する情報は表4に記載されている。
【0247】
2)細胞生存率の決定
細胞生存率を、CellTiter-Glo発光細胞生存率アッセイキット(Promega Corporation、Cat.No.G7571)を用いてアデノシン三リン酸の細胞定量法により決定した。簡単に言えば、細胞透過剤とUltra-Gloルシフェラーゼの両方を含有するCellTiter-Glo(1混合測定)試薬を、製造業者指示書に従って細胞培養物に添加し、遊離ATPを生存細胞から放出させ、その後発光に変換した。反応で生じた発光は、細胞生存率に直接比例しており、光度計(PHERAstar FS、BMG Labtech)で定量した。
【0248】
3)データ分析
薬物処置により誘導された相対増殖阻害を計算するために、各用量でのCellTiter-Gloアッセイにおける複製試料の相対発光量(RLU)の平均値を、ビヒクル処置細胞から得た平均RLU値で割り、パーセント生存率を得た。シグモイド用量反応曲線およびIC50値を、非線形回帰分析(5つのパラメーターの適合度)およびGraphPad Prismバージョン6(GraphPad Software Inc.、San Diego、CA)を用いて得た。
【0249】
4)結果
本出願の化合物のEC50値を図4および5に示す。図3のパネルaおよびbは、一般的な抗腫瘍薬ドキソルビシンと比較して、I-37により例証される本出願の化合物が、様々な癌型を阻害し、正常なヒト気管支細胞(NHBE;図3a)に対する毒性が低く、ドキソルビシンに薬物耐性がある卵巣癌細胞ADR-RES(図3b)などのいくつかの癌細胞株において同等またはより有効である。さらに、図3cからは、I-37により例証される本出願の化合物が様々な癌型を阻害することが分かる。図4のデータからは、化合物I-6(パネルa)も、慢性骨髄性白血病(K562)および急性単球性白血病(MOLM-13)細胞について、ゾレドロネート(ZOL)(パネルb)と比較して、癌細胞の生存率を抑制するのにより有効であることが分かる。化合物I-6、I-34、I-7、I-35、I-36、I-39、I-37およびI-40のMM細胞RPMI-8226に対するEC50値を図5に示す。
【0250】
実施例6:多発性骨髄腫細胞アッセイにおけるアポトーシスアッセイ
MM細胞株がアポトーシスを受けるように誘導する本出願の化合物の能力を決定するために、増加した濃度の化合物(すなわち、hGGPPSを阻害する化合物)またはビヒクル単独と共に10%FBSを補足した培地に、7.5×10/mLの密度で細胞を播種した。72時間のインキュベーション後、製造業者指示書に従って、APCアネキシンV(BD Biosciences、Mississauga ON)およびeFluor780Viability色素(ThermoFischer Scientific)で二重染色することにより、アポトーシスを決定した。染色された試料をBD FACSCanto II装置(BD Biosciences、Mississauga ON)で取得し、取得後の分析をFlowJo(V10)ソフトウェアを用いて行った。細胞を、製造業者指示書(BD Biosciences、Mississauga ON)に従って、アロフィコシアニン(APC)複合アネキシンVおよびV450複合マウス抗ヒトCD138モノクローナル抗体で二重染色することにより、多発性骨髄腫細胞のアポトーシスを、フローサイトメトリーにより決定した。
【0251】
多発性骨髄腫細胞における様々な濃度(100nM、500nMおよび1μM)の化合物I-24のアポトーシスデータを図6に示す。未処置細胞および5nMベルケイドを各々陰性および陽性対照として使用した。データは、本出願の化合物がアポトーシスを誘導できることを実証している。しかし、MM細胞は、ゲラニルゲラニオール(GGOH)の添加によりアポトーシスから救済され得るが、これは、アポトーシスが、異なる作用機構を有するベルケイドではなく、本出願の化合物により誘導された場合のみである。この知見(すなわち、hGGPPSの欠損触媒生成物の外部からの代替物としてGGOHを添加することによるアポトーシスからの細胞の救済)は、本出願に開示する化合物による細胞内標的関与の特異性を確証している。
【0252】
実施例7:ウェスタンブロット分析
多発性骨髄腫細胞を、10%FBSおよびL-グルタミンを補足したRPMI-1640培地で培養し、示された濃度の試験化合物の存在下および不在下で、5%CO雰囲気で37℃にて維持した。これらの実験を行って、本出願の化合物で処置した場合のRap1Aプレニル化の細胞内ダウンレギュレーションを実証した。ゲラニルゲラニオール共処置(GGOH;10μM)は、特異性対照として機能し、hGGPPS阻害剤処置の迂回、およびhGGPPSの阻害に直接関連する細胞内での特異的な標的関与が実証された。言い換えれば、これらの細胞をhGGPPS阻害剤とGGOHで共処置した場合、細胞は、アポトーシスから救済され得る。示された処置期間後、細胞を遠心分離により採取した。採取した細胞を、氷冷PBSですぐに洗浄し、遠心分離し、次いで氷冷RIPA溶解緩衝液(Pierce Cat#89900)に再懸濁した。次いで、等量の透明なタンパク質溶解物をSDS-PAGEにより分離し、PVDF膜に移し、次いで膜を初期抗体と4℃で一晩インキュベートした。徹底的に洗浄した後、膜をHPR複合第2抗体に室温で1時間曝露した。最後に、徹底的に洗浄した後、標準的な化学発光試薬および技術を利用して、結合した第2抗体を視覚化した。
【0253】
実施例8:前臨床プロファイリング:hGGPPS阻害剤の肝ミクロソームにおける代謝安定性
一例として、阻害剤I-37の代謝安定性を、3種の肝ミクロソームで評価した。化合物を肝ミクロソームとインキュベートした後、ヒト血漿におけるビスホスホネート型薬物濃度の決定について既に報告されているプロトコルに従って(Ghassabian,S.ら、J.Chromatogr.B 2012、881-882、34-41参照)、親化合物およびビスホスホネート部分を有する任意の代謝産物を、対応するトリメチルシリルエステルにトリメチルシリルジアゾメタンで変換した。試料を、参照としてロペラミドを用いてLC-MS/MSにより分析した(全3回の肝ミクロソームインキュベーションにおいて8~15分の半減期クリアランス)。雄CD-1マウス肝ミクロソーム(MLM)、Sprague-Dawleyラット肝ミクロソーム(RLM)およびヒト肝ミクロソーム(HLM)におけるI-37の半減期クリアランスは各々、128分、187分および154分であることが判明した。既存のN-BP薬と比較して、顕著に高い親油性も、我々のチエノピリミジンhGGPPS阻害剤で観察された。例えば、化合物I-37とゾレドロン酸薬との間で、7分超の相対保持時間の違いが、C-18逆相HPLCカラムで観察され、典型的には、化合物I-37の良好な細胞膜透過性につながることが予想された(受動拡散による)。
【0254】
実施例9:インビボ試験(化合物I-37)
インビボ実験を、Canadian Council on Animal Careのガイドラインに従って行い、プロトコル番号2012-7242の下でAnimal Care Committee of the Research Institute of the McGill University Health Centreにより承認された。マウスをすべて繁殖し、12時間の明暗サイクルで、病原体を含まない標準動物施設で維持し、餌および水を自由に摂取させた。13%より高いMピークを有する(および生後52~77週の)VkMYC/KaLwRijマウスをこのインビボ試験で使用した。マウスを2つのグループに分け(1mg/kg、5mg/kgのI-37で処置)、17用量を投与した(週末2日間の休薬期間を含む15日の処置期間、次いで屠殺前に2日の再処置[1グループあたりのマウス数3、年齢および性別の一致、腹腔内投与])。最後の用量を投与した24時間後または毒性影響の場合はプロトコルの指示どおり、マウスを安楽死させた。マウスにケタミンで麻酔をかけ、末梢血を心穿刺で採取した。心穿刺では、すべてのマウスから全血を採取し、血清および末梢血単核細胞(PBMC)を得た。
【0255】
血清抽出:血液を6000rpmの微量遠心機で15分回転させ、血清を得た。血清を使用して、血清タンパク質電気泳動法(SPEP)を行い、残りの試料を-80℃の冷凍庫で貯蔵した。
【0256】
末梢血単核細胞の単離:塩化アンモニウムを使用して、赤血球細胞(RBC)を全血から溶解したが、PBMCはこのように溶解しなかった。全血を20mlの塩化アンモニウム(155mM NHCl)で希釈し、室温で静かに10分間ボルテックス混合した。細胞溶液を、400×gで5分間遠心分離し、PBSで2回洗浄して、塩化アンモニウムを除去した。PBMCを採取し、溶解し、ウェスタンブロットで分析して、未プレニル化RaplAを測定した後、上記のMM RPMI-8226細胞の場合と同じ手順で解凍した。
【0257】
実施例10:タウタンパク質のリン酸化
図7および表5で実証されるように、I-5で例証される本出願に開示される化合物は、構造的類似性およびClog P値などの非常によく似た物理化学的特性にもかかわらず、国際公開第2014/078957号の化合物6-Iなどの等しい効力のhFPPS阻害剤よりも大きな程度で、hGGPSを選択的に阻害し、ヒト不死化神経細胞(SH-SY5Y神経細胞)においてタウタンパク質(P-タウ)のリン酸化をダウンレギュレートする。ゾレドロン酸と比較して、hGGPPS-選択的I-5は、タウタンパク質のリン酸化を低減するのに同等に有効であるが、毒性ははるかに低い(表5)。表5は、本出願の例示的hGGPPS阻害化合物6-I-5と比較して、先行技術の化合物6-I(国際公開第2014/078957号のhFPPS阻害剤)で処置したヒト不死化神経細胞(SH-SY5Y)における総タウタンパク質レベルに対するリン酸化タウタンパク質の減少を反映した阻害データ、およびLDH毒性に基づくこれらの細胞に対するその対応する毒性データを含有する。これらのタイプのアッセイの実験の詳細は、De Schutterら、J.Med.Chem.2014、57、5764-5776により既に報告された。
【0258】
本出願の様々な実施形態が上記の実施例により示されている。当業者は、本出願の範囲および定義された特許請求の範囲内である上記の方法の代替法を開発できよう。
【0259】
すべての刊行物、特許および特許出願は、各々の個々の刊行物、特許または特許出願が、参照によりその全体が組み込まれることが、具体的および個々に示されている場合と同じ程度で、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本出願の用語が参照により本明細書に組み込まれる文書において異なって定義されていることが判明した場合、本明細書において提供される定義が、その用語の定義として機能するものとする。
【0260】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8(a)】
図8(b)】