(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】ボーリングロボット
(51)【国際特許分類】
E21B 19/20 20060101AFI20220525BHJP
【FI】
E21B19/20
(21)【出願番号】P 2017207997
(22)【出願日】2017-10-27
【審査請求日】2020-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000168506
【氏名又は名称】鉱研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐 藤 直 史
(72)【発明者】
【氏名】深 澤 徹 弥
(72)【発明者】
【氏名】前 田 勉
(72)【発明者】
【氏名】高 橋 祥 一 朗
(72)【発明者】
【氏名】大 久 保 彰
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-101086(JP,A)
【文献】特開2017-089150(JP,A)
【文献】特開2016-030462(JP,A)
【文献】特開平09-096196(JP,A)
【文献】特開2003-064974(JP,A)
【文献】特開平10-252090(JP,A)
【文献】米国特許第06164391(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボーリングロッドがドリルヘッドに着脱可能に取り付けられ前記ボーリングロッドを回転及び給進させるドリルユニットと、
前記ドリルヘッドへのボーリングロッドの供給及び回収のために前記ドリルユニットに近接配置されるロッドチェンジャと、
クローラを有するロボット本体と、
全体の駆動源となるパワーユニットと、から形成されるボーリングロボットであって、
前記ロッドチェンジャは、地盤安定化のために掘削穴に埋め込まれるロックボルトを前記ボーリングロッドと共に保持可能となっており、
前記ドリルヘッドは前記ボーリングロッドの装着部及び前記ロックボルトの装着部が一体に形成され、
前記ロボット本体の前後から張り出して地盤に接地する前側アウトリガー及び後側アウトリガーと、前記ロボット本体の前後位置で地盤に差し込まれる前側アンカー及び後側アンカーとがロボット本体に取り付けられており、
前記前側アウトリガー及び前側アンカーと、後側アウトリガー及び後側アンカーとが交互に駆動することにより前記ロボット本体が尺取り式に移動可能となっていることを特徴とするボーリングロボット。
【請求項2】
前記ドリルヘッドは、前記ボーリングロッドの装着部と前記ロックボルトの装着部とが同軸上に形成されていることを特徴とする請求項1記載のボーリングロボット。
【請求項3】
前記クローラは地盤に食い込むスパイクを備えていることを特徴とする
請求項1または2記載のボーリングロボット。
【請求項4】
前記ドリルユニットは、前記ドリルヘッドと、前記ボーリングロッドの継ぎ足し及び切り離しのためボーリングロッドをクランプするロッドクランプ及びロッドブレーカと、前記ドリルヘッドを前記ロッドチェンジャの方向にスライドさせるスライド機構とを備えていることを特徴とする請求項
1乃至3のいずれか1項記載のボーリングロボット。
【請求項5】
前記ロッドチェンジャは、前記ボーリングロッド及び前記ロックボルトを共に立ち上がり状に保持する回転可能な保持テーブルと、前記保持テーブルを回転させるテーブル回転部材とを備えていることを特徴とする請求項
1乃至4のいずれか1項記載のボーリングロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の傾斜した斜面に対する防災化や土砂崩れ等の斜面の土砂災害への応急対策のために用いるボーリングロボットに関し、特に遠隔操作を可能な構造とすることにより作業員を危険な作業環境から解放させることが可能なボーリングロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3には、斜めとなっている地盤の斜面に対する土木作業を行う作業車が開示されている。これらの作業車はワイヤロープによって地盤の斜面上に支持された状態でクローラにより斜面を移動しながらバケット等の作業具により作業を行うものである。しかしながら、これらの作業車は、土砂崩れした不安定な斜面に対する足場の設置や地盤へのロックボルトの埋め込み等の復旧作業を行うことができない。
【0003】
一方、土砂崩れした斜面に対する復旧のための土木工事では、足場の設置及びロックボルト埋め込みによる地盤の安定化、足場の撤去が必要であるが、土砂崩れ後の地盤が不安定であるため、これらの作業に危険を伴っている。特に、急斜面では、地盤が崩れ易いため大きな危険性を伴うものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-160948号公報
【文献】特開2005-36472号公報
【文献】特開平10-252090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであり、無線等の遠隔操作による斜面の復旧工事に対応することが可能な構造とすることにより、無人化による作業を可能とし、これにより危険な作業環境から作業員を解放させることが可能なボーリングロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のボーリングロボットは、ボーリングロッドがドリルヘッドに着脱可能に取り付けられ前記ボーリングロッドを回転及び給進させるドリルユニットと、前記ドリルヘッドへのボーリングロッドの供給及び回収のために前記ドリルユニットに近接配置されるロッドチェンジャと、クローラを有し前記ドリルユニット及び前記ロッドチェンジャが取り付けられるロボット本体とを備え、前記ロッドチェンジャは、地盤安定化のために掘削穴に埋め込まれるロックボルトを前記ボーリングロッドと共に保持可能となっており、前記ドリルヘッドは前記ボーリングロッドの装着部及び前記ロックボルトの装着部が一体に形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、前記ドリルヘッドは、前記ボーリングロッドの装着部と前記ロックボルトの装着部とが同軸上に形成されている。
又、前記ロボット本体の前後から張り出して地盤に接地する前側アウトリガー及び後側アウトリガーと、前記ロボット本体の前後位置で地盤に差し込まれる前側アンカー及び後側アンカーとがロボット本体に取り付けられており、前記前側アウトリガー及び前側アンカーと、後側アウトリガー及び後側アンカーとが交互に駆動することにより前記ロボット本体が尺取り式に移動可能となっている。
又、前記クローラは地盤に食い込むスパイクを備えている。
又、前記ドリルユニットは、前記ドリルヘッドと、前記ボーリングロッドの継ぎ足し及び切り離しのためボーリングロッドをクランプするロッドクランプ及びロッドブレーカと、前記ドリルヘッドを前記ロッドチェンジャの方向にスライドさせるスライド機構とを備えている。
又、前記ロッドチェンジャは、前記ボーリングロッド及び前記ロックボルトを共に立ち上がり状に保持する回転可能な保持テーブルと、前記保持テーブルを回転させるテーブル回転部材とを備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のボーリングロボットによれば、無線等の遠隔操作による斜面の復旧工事に対応することが可能となり、無人化による作業により危険な作業環境から作業員を解放させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態のボーリングロボットの側面図である。
【
図6】ロッドチェンジャに対するボーリングロッド及びロックボルトの配置を示す平面図である。
【
図7】スパイクが取り付けられたクローラを示す断面図である。
【
図9】ボーリングロッドの継ぎ足し手順を示す図である。
【
図10】地盤の斜面になされる復旧工事を示す断面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態のボーリングロッドを示す斜視図である。
【
図12】第2実施形態のボーリングロッドの移動状態を示す斜視図である。
【
図13】アウトリガー及びアンカーの取り付け状態を示す断面図である。
【
図14】第2実施形態のアウトリガー及びアンカーを用いた尺取り式移動手順を示す側面図である。
【
図15】第2実施形態のボーリングロッドの遠隔制御を行うためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図示する実施形態により具体的に説明する。
[第1実施形態]
図1~
図9は、本発明の第1実施形態のボーリングロボット1を示す。
図10は、ボーリングロボット1によってなされる地盤13の斜面14への復旧工事の状態を示す。
ボーリングロボット1はロボット本体2と、ドリルユニット3と、ロッドチェンジャ4とを備えている。
【0011】
図1及び
図2に示すように、ロボット本体2は左右の両サイドにクローラ5を備えており、クローラ5が駆動することによりロボット本体2(すなわちボーリングロボット1)の移動及び方向転換が行われる。ロボット本体2上には、クローラ5、ドリルユニット3、ロッドチェンジャ4等のボーリングロボット1全体の駆動源となるパワーユニット6が搭載されている。ドリルユニット3及びロッドチェンジャ4はロボット本体2に取り付けられる。
【0012】
ドリルユニット3はロボット本体2に取り付けられた状態でボーリングロッド7(
図5参照)によって地盤13の斜面14(
図10参照)に掘削穴を掘削する。ドリルユニット3は
図1に示すように、ロボット本体2に取り付けられた傾斜シリンダ8に連結され、傾斜シリンダ8の駆動によって直立状態及び傾斜状態への変更が可能なガイドセル9と、ガイドセル9の長さ方向(上下方向)に沿って往復方向へスライド移動するドリルヘッド10とを備えている。ドリルヘッド10にはボーリングロッド7が着脱可能に取り付けられ、ドリルヘッド10の駆動によってボーリングロッド7が回転する。
【0013】
図1~
図4に示すように、ドリルヘッド10はガイドセル9に取り付けられた給進用オイルモータ11にチェーンを介して連結されており、給進用オイルモータ11の駆動によって給進する。ドリルヘッド10はボーリングロッド7に掘削水を供給するウォータスイベル12を備えており、ウォータスイベル12からロッドサブ15が垂下している。ロッドサブ15にはボーリングロッド7が取り付けられる。この実施形態のロッドサブ15はボーリングロッド7に加えて地盤13に埋め込まれるロックボルト16(
図5、
図10参照)が直に取り付けられるものである。ロッドサブ15の構造については、
図8により後述する。なお、ボーリングロッド7に対してはドリルヘッド10から打撃力を作用させることも可能であり、打撃力を併用した掘削も可能となっている。
【0014】
ドリルユニット3はドリルヘッド10をロッドチェンジャ4の方向に横スライドさせるスライド機構17を備えている。スライド機構17はガイドセル9の上部に取り付けられており、スライド機構17が横方向にスライドすることによりドリルヘッド10がロッドチェンジャ4側に移動する。これによりロッドチェンジャ4に対するボーリングロッド7の取り出し及び回収、さらにロッドチェンジャ4からのロックボルト16の取り出しが可能となる。
【0015】
ドリルユニット3はロッドクランプ18及びロッドブレーカ19を備えている。これらの部材はガイドセル9の下部に取り付けられており、ロッドクランプ18はボーリングロッド7の継ぎ足し及び切り離しの際にボーリングロッド7をクランプする。ロッドブレーカ19はボーリングロッド7の切り離しの際にロッドセル15をクランプした状態で所定角度旋回し、ボーリングロッド7のねじ結合を緩めるように作用する。
【0016】
図1~
図4に示すように、ロッドチェンジャ4はドリルユニット3との近接位置に配置される。
図1~
図4及び
図5に示すように、ロッドチェンジャ4は長さ(上下)方向の両端部がガイドセル9からの取付ブラケット20に連結されたポスト21と、ポスト21の一端部(下端部)に取り付けられた保持テーブル22とを備えている。下側の取付ブラケット20には、電動モータからなるテーブル回転部材23が取り付けられており、テーブル回転部材23の駆動によってポスト21及び保持テーブル22が一体的に回転する。
【0017】
保持テーブル22は、ボーリングロッド7とロックボルト16とを立ち上がり状に保持する部材である。ロックボルト16は地盤13に掘削された掘削穴にボーリングロッド7の引き抜き後に挿入されるものである。ロックボルト16は掘削穴内に挿入されることによりグラウト等と共に掘削穴内に埋め込まれる(
図10参照)。これにより地盤13を強化するため、地盤13の崩れ、滑り等を防止して地盤13を安定化することができる。
【0018】
図6に示すように、ボーリングロッド7及びロックボルト16は保持テーブル22に交互に保持される。保持テーブル22は円周上の等分位置にボーリングロッド7及びロックボルト16の下部が挿入されることによりこれらを立ち上がり状に保持する(
図5参照)。そして、テーブル回転部材23の駆動によって所定角度ずつ回転してボーリングロッド7及びロックボルト16をドリルヘッド10への供給位置に移動させる。かかる供給位置にはマガジンクランプ24が設けられており、ボーリングロッド7及びロックボルト16(図示例ではロックボルト16)をドリルヘッド10への供給位置に固定して、これらの位置ずれを防止している。
なお、保持テーブル22の空位となっている保持位置に対しては、ボーリングロッド7の回収が行われる。
【0019】
図1及び
図2に示すように、ロボット本体2のクローラ5の外周には平板状のスパイク25が適宜間隔で取り付けられる。
図7に示すように、スパイク25はクローラ5を構成する軌道板26から突出しており、ロボット本体2(ボーリングロボット1)の移動時に地盤13に食い込むように作用する。これにより、地盤13の斜面14に対する滑りを抑制することができる。このため、ボーリングロボット1は傾斜角度25~35°の斜面を確実に登ることができる。
【0020】
図8に示すように、ロッドサブ15はウォータスイベル12から垂下しており、この状態でボーリングロッド7及びロックボルト16が装着される。ロッドサブ15はボーリングロッド7にねじ込むことによりボーリングロッド7を装着する上部のボーリングロッド装着部27と、ロックボルト16にねじ込むことによりロックボルト16を装着する下部のロックボルト装着部28とが同軸上に形成されている。従って、ロックボルト16を装着するための装着部材が不要となり、単一のロッドサブ15だけでボーリングロッド7及びロックボルト16の双方を直に取り付けることができる。又、ボーリングロッド装着部27とロックボルト装着部28とがロッドサブ16に同軸上に形成されるため、ロッドサブ16の突出部分を少なくでき、簡単な構造とすることができる。
【0021】
ロックボルト装着部28は強度保持のために中実構造となっているが、このロックボルト装着部28には平行カットが施されており、平行カットされた状態でボーリングロッド装着部27にねじ結合している。この平行カット部分により、ロックボルト装着部28とボーリングロッド装着部27との間に隙間が形成され、この隙間がウォータスイベル12からの掘削水の通水路29となる。このように通水路29が形成されることにより、ボーリングロッド7を取り付けた掘削時にウォータスイベル12からの掘削水をボーリングロッド7に確実に供給することができる。
【0022】
図9(A)~(H)はボーリングロッド7の継ぎ足し手順を示し、(A)はドリルロッド10が駆動して掘削穴を掘削している状態であり、(B)は掘削が完了した状態である。(B)では、ロッドクランプ18がボーリングロッド7をクランプし、この状態でロッドブレーカ19がロッドサブ15をクランプして反ねじ方向に所定角度旋回し、ねじ結合を緩めてボーリングロッドをロッドサブ15(ドリルヘッド10)から切り離す。そして(C)で示すようにドリルヘッド10が上昇した後、(D)で示すようにロッドチェンジャ4の方向に移動し、(E)で示すように次段のボーリングロッド7にロッドサブ15がねじ込んでドリルヘッド10にボーリングロッド7を装着する。(F)では、ドリルヘッド10が上昇して、次段のボーリングロッド7をロッドチェンジャ4から取り出し、(G)では、ドリルヘッド10が先行のボーリングロッド7まで移動した後、(H)で示すように、ドリルヘッド10が下降して先行のボーリングロッド7との結合を行う。
図示を省略するが、ロックボルト16の継ぎ足しも
図9と同様な手順で行われるものである。
【0023】
図10は、この実施形態のボーリングロボット1による地盤13への復旧工事を示す。地盤に食い込むスパイク25を有したクローラ5が駆動することによりボーリングロボット1が地盤13の斜面14を確実に登ることができると共に所定位置で滑ることなく停止することができる。そして、斜面14の所定位置で停止した状態でボーリングロッド7による所定深さの掘削穴の掘削を行う。掘削穴の掘削の後、ボーリングロッド7をロッドチェンジャ4に順次回収し、次に、ロッドチェンジャ4からロックボルト16を順次取り出して掘削穴に差し込んで埋め込む。ロックボルト16の埋め込みに際してはグラウトを掘削穴に注入して固化させる。そして、全てのロックボルト16の埋め込みの後、最終のロックボルト16に押えプレートナット30を取り付ける。以上の動作を斜面14に沿って順次行うことにより
図10の状態となる。
図10の復旧工事を行うことにより地盤13が強化され、安定化させることができる。
【0024】
このような実施形態のボーリングロボット1では、ロッドチェンジャ4がボーリングロッド7に加えてロックボルト16を保持することにより、これらのドリルヘッド10への供給が可能となる。従って、作業員によるボーリングロッド7及びロックボルト16の供給作業が不要となる。
又、クローラ5が地盤13に食い込むスパイク25を備えるため、ボーリングロボット1が安定して地盤13の斜面14を移動することができると共に斜面14の所定位置で滑ることなく停止することができる。このため作業員による足場の設置及びその撤去作業が不要となる。
さらにドリルヘッド10のロッドサブ15においては、ボーリングロッド7に加えてロックボルト16を直に装着する構造となっているため、ロックボルト装着のための装着部材を作業員がロッドサブ15に取り付ける必要がなくなる。
従って、これらにより無人化による作業が可能となり、遠隔操作での作業ができ、作業員を危険な作業環境から開放することができる。
【0025】
[第2実施形態]
図11~
図15は、本発明の第2実施形態のボーリングロボット1Aを示し、第1実施形態の部材と同一の部材には同一の符号を付して対応させてある。この実施形態のボーリングロボット1Aでは、第1実施形態と同様に、ドリルユニット3に対してボーリングロッド7及びロックボルト16を供給するロッドチェンジャ4を備えると共に、ドリルヘッド10のロッドサブ15はボーリングロッド装着部27及びロックボルト装着部28を一体に有している。
【0026】
図11に示すように、この実施形態のボーリングロボット1Aでは、ロボット本体2の左右の前方側にウインチ31が配置されている。そして、
図12に示すように、ウインチ31からワイヤロープ32を繰り出して地盤13上に存在する木々やブロック構造物、重機等に引っ掛けることにより、ロボット本体2がこれらと連結されてロボット本体2が斜面14に支持される。これにより地盤13の斜面14に対してボーリングロボット1Aを安定させることができる。
【0027】
図11に示すように、ロボット本体2の左右両サイドから前方に張り出した2つの前側アウトリガー33、33と、ロボット本体2の左右両サイドから後方に張り出した2つの後側アウトリガー34、34とを備えている。
図13に示すように、それぞれのアウトリガー33、34は地盤13に接地するフロート35、36と、フロート35、36を下方に押し出す油圧モータからなる押圧モータ37、38とを有している。押圧モータ37、38のモータ軸37a、38aは伸縮動作すると共に回転動作するようになっており、フロート35、36はこのモータ軸37a、38aに取り付けられることにより地盤13への接地時に回転させることもできる。さらに、フロート35、36の下面には、地盤に食い込む食い込み歯39、40が突出している。
【0028】
又、前側アウトリガー33、33及び後側アウトリガー34、34には、前側アンカー41、41及び後側アンカー42、42が取り付けられている。これらのアンカー41、42は油圧によって伸縮駆動し、その伸張動作によって地盤13に差し込まれる。
【0029】
図13はロボット本体2の左右における前後のアウトリガー33、34の連結構造を示す。横長のトラックフレーム43がロボット本体2に取り付けられ、このトラックフレーム43に対して伸縮ビーム44が伸縮可能に設けられている。そしてトラックフレーム43の先端に前側アウトリガー33及び前側アンカー41が取り付けられ、伸縮ビーム44の後端に後側アウトリガー34及び後側アンカー42が取り付けられている。トラックフレーム43内には、伸縮ビーム44を短縮させて後側アウトリガー34及び後側アンカー42をロボット本体2側に移動させる後側ジャッキ伸縮シリンダ45が設けられている。
【0030】
この実施形態のアウトリガー33、34は、地盤13に接地することにより斜面14との滑りを防止する。このため、ボーリングロボット1Aが斜面14から滑り落ちることがなくなる。地盤13が硬い場合には、アウトリガー33、34を回転させて食い込み歯39を地盤13に食い込ませることにより確実に滑りを防止することができる。又、アンカー41、42が地盤13に差し込まれるため、地盤13に対する不用意な移動を防止することができる。
【0031】
以上の前側のアウトリガー33とアンカー41とが対となり、後側のアウトリガー34とアンカー42とが対となっており、これらの対が前後で交互に駆動することによってロボット本体2(ボーリングロボット1A)が尺取り式に移動する。
【0032】
図14(A)~(F)は尺取り式移動の手順の一例を示す。(A)では、後側アンカー42及び後側アウトリガー34によってロボット本体2の斜面14への固定がなされており、このとき、前側アンカー41を引き抜くと共に前側アウトリガー33の接地を解除する。
(B)では、クローラ5を駆動してロボット本体2を所定距離前進させる。この前進によって伸縮ビーム44がトラックフレーム43から引き出される。ロボット本体2の所定距離移動の後、(C)では、前側アウトリガー33を接地させると共に前側アンカー41を斜面14に差し込む。
その後の(D)では、後側アンカー42を引き抜くと共に、後側アウトリガー34の接地を解除する。(E)では、後側ジャッキ伸縮シリンダ45が駆動して伸縮ビーム44をトラックフレーム43に引き込んで後側アウトリガー34及び後側アンカー42をロボット本体2側に引きつける。
その後の(F)では、後側アウトリガー34の接地及び後側アンカー42の差し込みを行い、(A)に戻る。これによりロボット本体2は滑る落ちることなく斜面14を尺取り式に移動することができる。
このような構造では、ロボット本体2が確実に斜面14を登り、且つ斜面で停止することができる。このため傾斜角度35~45°の急勾配の斜面14であっても足場を設置することなく土木作業を行うことができる。
【0033】
この実施形態のボーリングロボット1Aでは、第1実施形態と同様に、ロッドチェンジャ4がボーリングロッド7に加えてロックボルト16を保持しており、このことにより、これらのドリルヘッド10への供給が可能となるため、作業員によるボーリングロッド7及びロックボルト16の供給作業が不要となる。
又、第1実施形態と同様に、ロッドサブ15がボーリングロッド7に加えてロックボルト16を直に装着する構造となっているため、作業員によるロックボルト16装着のための装着部材のロッドサブ15への取り付けが不要となる。
さらに、この実施形態では、前側アウトリガー33及び前側アンカー41と、後側アウトリガー34及び後側アンカー42とが交互に駆動することにより斜面14を確実に上ることできると共に、斜面14の所定位置で滑り落ちることなく停止することができる。このため、作業員による足場の設置及びその撤去作業が不要となる。従って、この実施形態においても、無人化による作業が可能となり、遠隔操作での作業ができ、作業員を危険な作業環境から開放することができる。
【0034】
図15は、この実施形態のボーリングロボット1Aを自動的に遠隔操作するためのブロック図の一例を示す。ボーリングヘッド10によってパーカッション(打撃)、回転及びフィード(給進)がなされ、クローラ5によって左右の走行がなされ、ガイドセル9が傾斜、直立することにより姿勢制御がなされる。ボーリングヘッド10、クローラ5、ロッドクランプ18、ロッドブレーカ19、マガジンクランプ24、ガイドセル9、アウトリガー33、34、アンカー41、42は電気油圧制御バルブ46によって駆動が制御される。電気油圧制御バルブ46はコンピュータ制御盤47によって制御される。このコンピュータ制御盤47を系外の操作盤48から遠隔操作するようになっている。これにより無人による復旧作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0035】
1、1A・・ボーリングロボット、2・・ロボット本体、3・・ドリルユニット、4・・ロッドチェンジャ、5・・クローラ、7・・ボーリングロッド、10・・ドリルヘッド、13・・地盤、14・・斜面、15・・ロッドサブ、16・・ロックボルト、17・・スライド機構、18・・ロッドクランプ、19・・ロッドブレーカ、22・・保持テーブル、23・・テーブル回転部材、25・・スパイク、27・・ボーリングロッド装着部、28・・ロックボルト装着部、33・・前側アウトリガー、34・・後側アウトリガー、41・・前側アンカー、42・・後側アンカー