(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】長物資材収納棚
(51)【国際特許分類】
B65G 1/14 20060101AFI20220525BHJP
【FI】
B65G1/14 G
(21)【出願番号】P 2017236541
(22)【出願日】2017-12-09
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】596173193
【氏名又は名称】石丸 武三
(74)【代理人】
【識別番号】100119367
【氏名又は名称】松島 理
(74)【代理人】
【識別番号】100142217
【氏名又は名称】小笠原 宜紀
(72)【発明者】
【氏名】石丸 武三
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-142211(JP,U)
【文献】特開平09-272604(JP,A)
【文献】特開平08-252154(JP,A)
【文献】特開平07-157023(JP,A)
【文献】特開2003-035791(JP,A)
【文献】米国特許第3708074(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00 - 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔をあけて平行に設けられた水平支持部材と、
水平支持部材を所定の高さに支持する垂直支持部材と、
それぞれの水平支持部材に対してその長さ方向に沿って移動可能に設けられた資材支持部材を有し、
それぞれの垂直支持部材は所定の間隔を置いて設けられた前部支柱と後部支柱の組み合わせになっており、
前部支柱には、それぞれの高さの水平支持部材の直下に水平なシャフトが回転自在に設けられ、
それぞれのシャフトには垂直支持部材と同数のピニオンが設けられ
資材支持部材の下面には長さ方向に沿ってラックが設けられて
シャフトに設けられたそれぞれのピニオンは資材支持部材のラックにかみ合っていて、
各シャフトはシャフトを回転させるための駆動部材に接続されていて、
水平支持部材は概ね長方形の断面形状の殻部によって形成される中空の筒状の部材で、その長さ方向に沿って上面に開口部を有し、
資材支持部材は水平支持部材の内部に入れ子に収められる部分と、水平支持部材の開口部を介して水平支持部材の外部に出ている部分を有し、
水平支持部材の内部にはローラが設けられており、
資材支持部材の奥側の端部付近には水平支持部材の上面壁の内面に接触するローラが設けられており、
資材支持部材は水平支持部材の内部においてローラを介して水平支持部材に対して移動可能に支持されている長物資材収納棚。
【請求項2】
前部支柱と後部支柱の下端部は基礎部に接続されていて
前部支柱と後部支柱には水平支持部材の断面形状にくり抜かれた穴が形成されていて、この穴を通して水平支持部材は前部支柱と後部支柱の中に収納されて支持されていて、
資材支持部材の手前側の端部から中間部の間に資材支持部が形成され
、
水平支持部材の下面の一部に設けられたラック露出窓部
を有する請求項1に記載の長物資材収納棚。
【請求項3】
後部支柱を建屋の壁に沿って設置するようになした請求項1または請求項2に記載の長物資材収納棚。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、長尺物の資材を収納・保管する置場となる棚に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の機械の架台などを製造するとき、長尺物の資材を所定の長さに切り出して、それを溶接やねじ止めなどで接続して骨格を形成していく。長尺物の資材は形状や大きさが規格化されたものが使用される。複数種の長尺資材を予め取り寄せておき、使用する箇所に合あった種類のものを選択し、適切な長さに切断して使用していく。したがって、製造現場では必要な種類の長尺資材が十分な本数だけ常時準備されていなければならない。これらの資材は、現場の床に平積みされている。
【0003】
また、特許文献1には、簡単な構造で容易に長尺物の出し入れができ、かつスペースの有効利用が図れることを目的とした長尺物の保管棚が提案されている。複数の支分棚を有する棚本体とその正面に対して平行に移動できる移載機とで構成し、支分棚の底部には保管される長尺物の進退用のローラを定間隔で配し、その外端の駆動ローラには同一の電動モータを結合する。移載機は、先端のローラを駆動ローラとした搬送ローラ列及びアーム本体を進退自在とした支持アームを備えたテーブル部材と、テーブル部材を昇降させる昇降機構を備えた移動装置とで構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで現場でなされているような資材を床に平積みするやりかたでは、それによって大きな面積が占有されてしまう。現場においても作業スペースは限定されており、無制限に資材置場に場所をさくことはできない。そこで、多くの現場では、多くの長尺資材が重なった状態で積まれている。このような状態では、下の方にある資材を使用する場合、その上にある資材をすべて取り除かなければならない。重量が大きい資材であれば、その度にクレーンで吊り上げて移動させる必要がある。
【0006】
多段の棚を使用してスペースを節約することが考えられるが、重量の大きい長尺資材はクレーンにより吊り下げて出し入れする必要があるので、横方向から出し入れすることはできない。したがって、最上段以外の段の棚は資材置場として使用できない。特許文献1の長尺物の保管棚であれば、正面側から資材の出し入れをすることができる。しかし、この保管棚ではすべての支分棚に対して複数の進退用のローラを定間隔で配する必要があり、複雑かつ高価なものになる。また、長尺物の長さ方向に移動させて出し入れするので、長い距離を移動させる必要があり、移動時間が大きくなる。さらに、この保管棚の前には、資材の長さ分だけのスペースが出し入れ作業のために必要となり、大きな面積が取られることになる。
【0007】
この発明は、小さな占有面積で多くの長尺資材を収納でき、簡単に資材の出し入れができる長物資材収納棚を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、この発明の長物資材収納棚は、所定の間隔をあけて平行に設けられた水平支持部材と、
水平支持部材を所定の高さに支持する垂直支持部材と、
それぞれの水平支持部材に対してその長さ方向に沿って移動可能に設けられた資材支持部材を有する。そして、水平支持部材はその長さ方向に沿って上面に開口部を有する筒状の部材であり、
資材支持部材は水平支持部材の内部に入れ子に収められる部分と、水平支持部材の開口部を介して水平支持部材の外部に出ている部分を有し、
水平支持部材の内部にはローラが設けられており、資材支持部材は水平支持部材の内部においてローラを介して水平支持部材に対して移動可能に支持されているが好ましく、また、資材支持部材の長さ方向に沿って下面に設けられたラックと、水平支持部材の下面の一部に設けられたラック露出窓部と、ラックに係合するピニオンと、ピニオンを駆動する駆動部材を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
この発明の長物資材収納棚は小さいスペースで多くの長尺資材を収納でき、しかも、それらの資材を簡単に出し入れすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】水平支持部材と資材支持部材を示す斜視図である。
【
図7】水平支持部材と資材支持部材の詳細を示す拡大右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
図1は長物資材収納棚を示す正面図、
図2は同右側面図、
図3は同平面図である。
【0012】
長物資材収納棚1は所定の間隔をあけて平行に設けられた水平支持部材2と、水平支持部材を所定の高さに支持する垂直支持部材3と、それぞれの水平支持部材3に対してその長さ方向に沿って移動可能に設けられた資材支持部材4を有する。また、床部には装置全体を支える基礎部5が設けられいる。
【0013】
図面に基いて本例の長物資材収納棚の構造を詳細に説明する。本例では、垂直支持部材3は一定の間隔をあけて、3体が設けられている。それぞれの垂直支持部材3は前部支柱6と後部支柱7の組み合わせになっており、それぞれが所定の間隔を置いて設けられており、その下端部は基礎部5に接続されている。
【0014】
図4は水平支持部材と資材支持部材を示す斜視図、
図5は水平支持部材を示す斜視図、
図6は資材支持部材を示す斜視図である。
図5と
図6では内部の一部も表示している。水平支持部材2は垂直支持部材3に固定されており、資材支持部材4を長さ方向に沿って移動可能に支持する。
【0015】
水平支持部材2は概ね長方形の断面形状の殻部によって形成される中空の筒状の部材であるが、その長さ方向に沿って上面に細い開口部8を有する。水平支持部材2の手前側の先端部において筒内に資材支持部材4を支持するためのローラ9が設けられている。このローラ9は、水平支持部材2の両側壁に1個ずつ、互いに対向して設けられている。ローラ9がある位置において水平支持部材2の上面にはローラ露出窓10が設けられていて、ローラ9が水平支持部材2の上面よりもわずかに上に出ている。また、中間部の下面には開口部があり、ラック露出窓11を形成している。
【0016】
資材支持部材4は水平支持部材2と概ね同じ長さを有する棒状の部材である。垂直板部12と、この垂直板部12の上の上部水平板部13と、垂直板部12の下の下部水平板部14より成り、略I字の断面を有する鋼材であり、たとえばI型鋼を用いることができる。
【0017】
資材支持部材4の奥側の端部付近には、ローラ15,16が設けられている。水平支持部材2の上面壁の内面に接触する上側ローラ15と、水平支持部材2の下面壁の内面に接触する下側ローラ16の組み合わせであり、垂直板部12の両面にそれぞれが取り付けられている。
【0018】
資材支持部材4の下部水平板部14の下面には、奥側の端部から中間部にかけてラック17が設けられている。また、資材支持部材4の手前側の端部と中間部には垂直板18,19が上部水平板部13の上に突き出すように設けられ、この間に資材支持部20が形成される。手前側の垂直板19は上に突き出した部分に加えてI型鋼の前面を覆うようにもなっている。
【0019】
資材支持部材4のI型鋼の高さは、水平支持部材2の高さと概ね同じになっている。また、資材支持部材4の下部水平板部14の幅は、水平支持部材2の両側壁の内面間の距離と概ね同じであるが若干狭い寸法になっている。さらに、水平支持部材2の開口部8は、資材支持部材4の垂直板部12より若干広い幅になっている。したがって、資材支持部材4と水平支持部材2は入れ子の構造となっており、資材支持部材4の大部分は水平支持部材2の筒体の中に収容される。このとき、上部水平板部14のみが水平支持部材2の筒体の上に現れる。
【0020】
水平支持部材2のローラ9が資材支持部材4の上部水平板部13の下面を支持する。また、水平支持部材2の内部では資材支持部材4の上側ローラ15が上面壁の内面に接触し、下側ローラ16が下面壁の内面に接触する。こうして、資材支持部材4は水平支持部材2に対してその長さ方向に沿って移動可能に支持される。水平支持部材2のラック露出窓部11からは、資材支持部材4の下側に形成されたラック17が露出している。
【0021】
垂直支持部材3のそれぞれについて、水平支持部材2および資材支持部材4が同一高さに設けられる。本例では垂直支持部材3が3体設けられているので、3本の水平支持部材2および資材支持部材4が同一水平面で平行に設けられている。さらに、水平支持部材2と資材支持部材4は複数の高さに設けることもできる。本例では、3つの高さに水平支持部材2および資材支持部材4が設けられている。さらに、最上段にも、最上部資材支持部材21が垂直支持部材3の上端部に設けられている。この最上部資材支持部材21は水平支持部材2とほぼ同じ長さであり、垂直支持部材3に固定されている。そして、最上部資材支持部材21および3つの高さの水平支持部材2は、その高さの間隔が等しくなっている。
【0022】
前部支柱6には、水平なシャフト22が回転自在に設けられている。このシャフト22は、それぞれの高さの水平支持部材2の直下に設けられている。そして、それぞれのシャフト22には垂直支持部材3と同数のピニオン23が設けられ、それぞれのピニオン23は資材支持部材4のラック17にかみ合っている。さらに、各シャフト22は、このシャフト22を回転させるための駆動部材24に接続されている。本例では、変速機を内蔵したギアードモータが使用されている。それぞれの高さの駆動部材24は相互に独立して回転を制御できるようになっている。
【0023】
駆動部材24が回転することによってシャフト22が回転し、ピニオン23の回転が資材支持部材4のラック17に伝達されて、その高さにある全ての資材支持部材4が連動して前後動する。駆動部材24の回転方向により、資材支持部材4は水平支持部材に対してその長さ方向に沿って前進または後退する。
【0024】
図7は資材支持部材および水平支持部材の一部を拡大した右側面図であり、真中にある資材支持部材および水平支持部材とシャフトの連結部付近の詳細を示す。
図8は同平面図、
図9は断面図である。前部支柱6と後部支柱7はそれぞれ断面が概ね長方形の中空四角柱の形状であるが、側面の一つには長さ方向に沿った開口があるので、断面はC字形状といえる。前部支柱6の開口部と後部支柱7の開口部は互いに向き合うように配置されている。
【0025】
前部支柱6と後部支柱7には、水平支持部材2の断面形状にくり抜かれた穴が形成されていて、この穴を通して水平支持部材2は前部支柱6と後部支柱7の中に収納され、支持されている。この中央部の前部支柱6には駆動部材であるギヤードモーター24も支持される。
【0026】
水平支持部材2の後端部付近の上面にはボルトが上に突き出すように設けられ、基準点25となっている。また、前部支柱6には前部リミットスイッチ26が、後部支柱7には後部リミットスイッチ27がそれぞれ設けられており、基準点25であるボルトが接触したら、それに応じた信号を発生する。
【0027】
次に、長物資材収納棚1の作用に基いて、長物収納方法を説明する。
図10は長物資材の収納方法を模式的に示す概念図である。通常は、資材支持部材4は奥に後退している。この状態では資材支持部材4の先端部は水平支持部材2の先端部とほぼ同じ位置になる。このときでも、最上部資材支持部材21の上部を塞ぐものは存在しないので、最上部資材支持部材21に対してはクレーンなどを使用して、上から長物資材の収納や取り出しを行うことができる。しかし、最上部資材支持部材21以外の資材支持部材4では、そのままでは長物資材の出し入れはできない。資材支持部材4の上には最上部資材支持部材21または他の資材支持部材4があるので、これが障害となってクレーンによる資材の上げ下げができないからである。
【0028】
そこで、資材の出し入れを行いたい段の水平支持部材2の資材支持部材4を手前側に進出させることになる。その段の資材支持部材4に資材を収納したいときは、その段のシャフト22に連結された駆動部材24を資材支持部材4が手前に進出する方向に回転させる。駆動部材24の回転はシャフト22およびピニオン23を介して伝達され、資材支持部材4を移動させる。1本のシャフト22にはその段のすべての水平支持部材4のラックに係合するピニオン23が設けられているので、その段の水平支持部材4は連動して一斉に移動する。資材支持部材4はローラ9,15,16を介して水平支持部材2に支持されているので、資材支持部材4は水平支持部材2に対してその長さ方向に沿って滑らかに移動する。
【0029】
資材支持部材4の中間部の垂直板18が水平支持部材4の先端部付近に達したら、前部リミットスイッチ26が基準点25であるボルトに接触し、信号を発生する。この信号に基いて駆動部材24を止めることにより資材支持部材4は停止する。このとき、2つの垂直板18,19の間の資材支持部20の大部分は、最上部資材支持部材21よりも外側に突き出した状態となり、資材支持部16の上は開放空間になる。したがって、クレーンを使用して自由に長尺資材xの出し入れを行うことができる。資材xの出し入れを終了したら駆動部材を逆方向に回転させ、資材支持部20を最上部資材支持部材21の下まで後退させる。後部リミットスイッチ27が基準点25であるボルトに接触し、信号を発生する。この信号に基いて駆動部材24を止めることにより資材支持部材4は奥側の位置で停止する。
【0030】
水平支持部材2と資材支持部材4は設置する建屋の高さ等に応じて任意の段数で設けることができる。段数が増えても、床の占有面積は変わらない。したがって、狭い場所に多種類の長尺資材を多数収納することができ、作業現場の空間を効率よく活用できる。
【0031】
この発明の長物資材収納棚においては、資材支持部材4が移動しても後部支柱7よりも奥側に侵入することはない。また、後部支柱7よりも奥側に作業員が入る必要もない。したがって、後部支柱7を建屋の壁に沿って設置することができ、建屋の空間を有効に利用できる。
【0032】
なお、本例では垂直支持部材2を形成している2本の支柱の間には資材支持部20は進入しないので、この空間では資材支持部材4による長尺資材の収納は行われない。しかし、支柱の間には資材支持板を設けることにより、収納空間を形成することができもできる。この部分は可動式ではないので、人力で持ち上げることができるような軽量な資材を側方から出し入れすることになる。また、各種工具類など置くこともできる。こうして、支柱の間の空間も有効に活用できる。
【符号の説明】
【0033】
1.長物資材収納棚
2.水平支持部材
3.垂直支持部材
4.資材支持部材
5.基礎部
6.前部支柱
7.後部支柱
8.開口部
9.ローラ
10.ローラ露出窓
11.ラック露出窓
12.垂直板部
13.上部水平板部
14.下部水平板部
15.上側ローラ
16.下側ローラ
17.ラック
18.垂直板
19.垂直板
20.資材支持部
21.最上部資材支持部材
22.シャフト
23.ピニオン
24.駆動部材