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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】リバスチグミン含有経皮吸収型製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/27 20060101AFI20220525BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20220525BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220525BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20220525BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
A61K31/27
A61K9/70 401
A61K47/32
A61K47/46
A61P25/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019501861
(86)(22)【出願日】2018-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2018006929
(87)【国際公開番号】W WO2018155682
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2017035503
(32)【優先日】2017-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000215958
【氏名又は名称】帝國製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 智
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 学
(72)【発明者】
【氏名】柴田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】堀川 靖
【審査官】今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0197221(US,A1)
【文献】特表2014-508728(JP,A)
【文献】特表2012-533632(JP,A)
【文献】国際公開第2014/034939(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 31/00-31/80
A61K 33/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
リバスチグミン:5%以上、30%以下、
ゴム系粘着剤:10%以上、60%以下、及び
粘着付与樹脂:30%以上、70%以下を含有し、アクリル系粘着剤と可塑剤を含まず、
前記リバスチグミンの含有量をa(%)、前記ゴム系粘着剤の含有量をb(%)、前記粘着付与樹脂の含有量をc(%)としたとき、下記式(1)、(2)を満たすことを特徴とする経皮吸収型製剤。
a+c≧55・・・(1)
b/c≦1.00・・・(2)
【請求項2】
質量%で、
リバスチグミン:5%以上、30%以下、
ゴム系粘着剤:10%以上、60%以下、及び
粘着付与樹脂:30%以上、70%以下を含有し、アクリル系粘着剤と可塑剤を含まないことを特徴とする経皮吸収型製剤。
【請求項3】
前記ゴム系粘着剤は、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、及びスチレン-ブタジエンゴムよりなる群から選ばれる1種以上である請求項1または2に記載の経皮吸収型製剤。
【請求項4】
前記粘着付与樹脂は、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、テルペン樹脂、ロジン誘導体、及びマレイン酸レジンよりなる群から選ばれる1種以上である請求項1~のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
【請求項5】
前記可塑剤は、石油系オイル、スクワラン、スクアレン、植物系オイル、合成オイル、液状ゴム、液状脂肪酸エステル、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、サリチル酸グリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クロタミトン、二塩基酸エステル、グリセロール、及びポリブテンよりなる群から選ばれる1種以上である請求項のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リバスチグミンを含有する経皮吸収型製剤に関する。より詳細には、安定的なリバスチグミンの皮膚透過性を示し、且つ、皮膚に対する安全性の高い経皮吸収型製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー型認知症の患者においては、脳内コリン作動性神経系の障害が起きていることが報告されている。また、アセチルコリンエステラーゼやブチリルコリンエステラーゼの阻害剤によって、脳内アセチルコリンを増加させることにより脳内コリン作動性神経系を活性化できることが知られている。このような阻害作用を有する薬物としてリバスチグミンが知られており、リバスチグミンはアルツハイマー型認知症の進行を抑制する治療剤として臨床の場で使用されている。しかし、リバスチグミンは、一般的に副作用が強く、肝機能障害や消化管障害等の副作用の報告が数多くなされている。またリバスチグミンを含有する経口剤の場合、症状が進んだ患者では経口剤を服用すること自体が困難となる場合が多い。このような症状が進んだ患者に対しては、経皮吸収型製剤が適している。
【0003】
現在、医薬品市場においてリバスチグミンを含有するイクセロン(登録商標)パッチが市販されている。リバスチグミンは分子内にアミノ基とカルボニル基を有しており、経皮投与により皮膚刺激を引き起こすおそれがある。また、長時間にわたって有効成分を粘着層から放出させ続けて移行させるためには、皮膚と粘着層との接着状態を維持し続ける必要がある。そのため、貼付剤にはある程度強い粘着力が求められているが、粘着力が強すぎると貼付剤の剥離時に局所的な物理的刺激が生じる場合がある。他方、アルツハイマー型認知症の患者は高齢者が多く、高齢者の皮膚は保湿機能が低下して皮膚のバリア機能が低下していることが多いため、上記物理的刺激に起因する皮膚症状が発現しやすい。実際のところ、国内臨床試験において発現した主な皮膚症状として、適用部位の紅斑37.7%、適用部位のそう痒感36.6%、適用部位の接触性皮膚炎25.4%、適用部位の浮腫11.1%、及び適用部位の皮膚剥脱4.8%等が報告されている(非特許文献1)。また、市販後においても同様の皮膚症状が発現しており、臨床現場では保湿剤を併用して皮膚刺激を低減する等の処置がなされており、安定的な薬物の皮膚透過性と皮膚刺激の低減の両立が望まれている。
【0004】
このような事情に鑑み、例えば特許文献1には、熱可塑性エラストマー、及び不揮発性炭化水素油を含む貼付剤基剤にリバスチグミンを配合することにより皮膚刺激を低減した貼付剤が開示されている。
【0005】
また、特許文献2にはスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、粘着付与樹脂、及び可塑剤を含む貼付剤基剤にリバスチグミンを配合した貼付剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2013/187451号
【文献】特表2014-508728号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】医薬品インタビューフォーム イクセロン(登録商標)パッチ 18mg 2016年7月(改訂7版)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1は、貼付剤に粘着付与樹脂を全く配合しないか又は極微量しか配合していないため、初期粘着力が弱く、貼付剤が脱落又は一部剥離する等して薬物の皮膚透過性を十分に発揮できないおそれがある。
【0009】
また、特許文献2では、従来よりも少量のリバスチグミンを使用することにより、皮膚刺激性を改善させているため、リバスチグミンの含有量が多くなると皮膚刺激性を改善できないおそれがある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、長時間にわたって有効成分であるリバスチグミンを持続的に投与でき、且つ、皮膚刺激性の低いリバスチグミン含有経皮吸収型製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の構成は以下のとおりである。
【0012】
[1]質量%で、
リバスチグミン:5%以上、30%以下、
ゴム系粘着剤:10%以上、60%以下、及び
粘着付与樹脂:30%以上、70%以下を含有し、
前記リバスチグミンの含有量をa(%)、前記ゴム系粘着剤の含有量をb(%)、前記粘着付与樹脂の含有量をc(%)としたとき、下記式(1)、(2)を満たすことを特徴とする経皮吸収型製剤。
a+c≧55・・・(1)
b/c≦1.00・・・(2)
[2]可塑剤を含まないものである[1]に記載の経皮吸収型製剤。
[3]可塑剤:0%超2%未満を含有する[1]に記載の経皮吸収型製剤。
[4]質量%で、
リバスチグミン:5%以上、30%以下、
ゴム系粘着剤:10%以上、60%以下、及び
粘着付与樹脂:30%以上、70%以下を含有し、可塑剤を含まないことを特徴とする経皮吸収型製剤。
[5]質量%で、
リバスチグミン:5%以上、30%以下、
ゴム系粘着剤:10%以上、60%以下、
粘着付与樹脂:30%以上、70%以下、及び
可塑剤:0%超、2%未満を含有することを特徴とする経皮吸収型製剤。
[6]前記リバスチグミンの含有量をa(%)、前記ゴム系粘着剤の含有量をb(%)、前記粘着付与樹脂の含有量をc(%)としたとき、下記式(1)、(2)を満たす[4]または[5]に記載の経皮吸収型製剤。
a+c≧55・・・(1)
b/c≦1.00・・・(2)
[7]前記ゴム系粘着剤は、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、及びスチレン-ブタジエンゴムよりなる群から選ばれる1種以上である[1]~[6]のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
[8]前記粘着付与樹脂は、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、テルペン樹脂、ロジン誘導体、及びマレイン酸レジンよりなる群から選ばれる1種以上である[1]~[7]のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
[9]前記可塑剤は、石油系オイル、スクワラン、スクアレン、植物系オイル、合成オイル、液状ゴム、液状脂肪酸エステル、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、サリチル酸グリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クロタミトン、二塩基酸エステル、グリセロール、及びポリブテンよりなる群から選ばれる1種以上である[2]~[8]のいずれかに記載の経皮吸収型製剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記構成により、長時間にわたって有効成分であるリバスチグミンを持続的に投与でき、且つ、皮膚刺激性の低いリバスチグミン含有経皮吸収型製剤を提供することできる。
【0014】
本発明のリバスチグミン含有経皮吸収型製剤は、貼付時には十分な初期粘着力を有しているためリバスチグミンが薬理学的に有効な速度で経皮的に体内へ吸収される。更に、粘着層中のリバスチグミンの含有量が減少することにより粘着層の可塑性が低下して、製剤の剥離時には局所的な物理的刺激が発現しない程度の適度な粘着力となる。その結果、有効成分の有効量を持続的に投与することができ、且つ、皮膚安全性を高めることができる。
【0015】
このように本発明のリバスチグミン含有経皮吸収型製剤は、有効成分の有効量を持続的に投与することができ、且つ、皮膚刺激性を低減することができるため、皮膚のバリア機能が低下している患者が多いアルツハイマー型認知症患者のQOL向上に極めて有効である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の経皮吸収型製剤の第1の態様では、質量%で、リバスチグミン:5%以上、30%以下、ゴム系粘着剤:10%以上、60%以下、及び粘着付与樹脂:30%以上、70%以下を含有し、リバスチグミンの含有量をa(%)、ゴム系粘着剤の含有量をb(%)、粘着付与樹脂の含有量をc(%)としたとき、下記式(1)、(2)を満たすことを特徴とする。
a+c≧55・・・(1)
b/c≦1.00・・・(2)
【0017】
本発明の経皮吸収型製剤の第2の態様では、質量%で、リバスチグミン:5%以上、30%以下、ゴム系粘着剤:10%以上、60%以下、及び粘着付与樹脂:30%以上、70%以下を含有し、可塑剤を含まないことを特徴とする。
【0018】
本発明の経皮吸収型製剤の第3の態様では、質量%で、リバスチグミン:5%以上、30%以下、ゴム系粘着剤:10%以上、60%以下、粘着付与樹脂:30%以上、70%以下、及び可塑剤:0%超、2%未満を含有することを特徴とする。
【0019】
以下、本発明に到達した経緯を簡単に説明する。
【0020】
(第1の態様)
上記課題を解決するべく、本発明者らは鋭意研究を重ねた。その結果、リバスチグミン、ゴム系粘着剤、及び粘着付与樹脂の含有量を制御して、上記式(1)、(2)を満たすようにすれば、長時間にわたって有効成分の有効量を持続的に投与でき、且つ、皮膚刺激性を低減することが可能なリバスチグミン含有経皮吸収型製剤を提供できることを見出した。
【0021】
(第2の態様)
更に別の観点より、本発明者らは、鋭意研究を重ねた。詳細には、リバスチグミン含有経皮吸収型製剤の皮膚刺激性を低減するためには製剤剥離時の剥離力を一定の水準以下にする必要があるが、剥離力を一定の水準以下にするためには粘着層中の液状成分の含有量を一定の水準以下にすれば良いと考えた。しかし、貼付時の粘着層中の液状成分の含有量が低ければ、初期粘着力が不足して貼付中の製剤の脱落又は一部剥離することにより安定的な薬物放出性が得られないおそれがあった。そこで、貼付時には粘着層中の液状成分の含有量を一定量以上となるようにしつつ、製剤の剥離時には粘着層中の液状成分の含有量が一定以下となるように制御すれば、上記課題を解決できると考えた。
【0022】
この点に関し、検討を進めた結果、主薬成分であるリバスチグミンは、ゴム系粘着剤と粘着付与樹脂を含む粘着層中において室温で液状成分として存在し、意外なことに粘着層の軟化作用を担う可塑剤として作用することが分かった。即ち、製剤貼付時にはリバスチグミンが可塑剤として作用して初期粘着力を発揮するために安定的に薬物放出が行われる一方で、製剤の剥離時には、リバスチグミンは経皮吸収されて粘着層中の含有量が低下しているため剥離力を低減できることが分かった。そして、リバスチグミン、ゴム系粘着剤、及び粘着付与樹脂の含有量を所定量に制御して、リバスチグミンの可塑剤としての作用を利用することにより、可塑剤を積極的に配合しなくても、有効成分の有効量を持続的に投与でき、且つ、皮膚刺激を顕著に抑制できることを見出した。
【0023】
(第3の態様)
更に検討を進めた結果、粘着層に可塑剤を0%超、2%未満の含有量で配合すれば、可塑剤による皮膚刺激を抑制しつつ初期粘着力を向上できることも見出した。
【0024】
以下、本発明のリバスチグミン含有経皮吸収型製剤に関して、更に詳細に説明する。
【0025】
(第1の態様)
本発明の経皮吸収型製剤は、第1の態様では、質量%で、リバスチグミン:5%以上、30%以下、ゴム系粘着剤:10%以上、60%以下、及び粘着付与樹脂:30%以上、70%以下を含有し、リバスチグミンの含有量をa(%)、ゴム系粘着剤の含有量をb(%)、粘着付与樹脂の含有量をc(%)としたとき、下記式(1)、(2)を満たすことを特徴とする。
a+c≧55・・・(1)
b/c≦1.00・・・(2)
【0026】
式(1):a+c≧55
リバスチグミンの含有量a(%)と粘着付与樹脂の含有量c(%)からなる式(1)の左辺の値を55以上とすることにより、経皮吸収性及び初期粘着力を向上することができる。好ましくは58以上、より好ましくは60以上、更に好ましくは62以上である。一方、式(1)の左辺の値が大きくなり過ぎると、初期粘着力が高くなり過ぎて剥離時の皮膚刺激を引き起こすおそれがある。式(1)の左辺の値は、好ましくは90以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは70以下である。
【0027】
式(2):b/c≦1.00
ゴム系粘着剤の含有量b(%)と粘着付与樹脂の含有量c(%)からなる式(2)の左辺の値を1.00以下とすることにより、初期粘着力を向上することができる。好ましくは0.90以下、より好ましくは0.85以下、更に好ましくは0.80以下である。一方、式(2)の左辺の値が低くなり過ぎると製剤が固くなり過ぎて、却って初期粘着力が低下する場合がある。式(2)の左辺の値は、好ましくは0.16以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上、更により好ましくは0.6以上である。
【0028】
リバスチグミンは、有効成分であると共に、粘着層中で可塑化作用を示す。この可塑化作用により貼付時の付着性を向上することができ、安定した薬物供給能を発揮し易くすることができる。リバスチグミンはフリー体(遊離型)として配合することが好ましいが、必要に応じて塩として配合してもよい。
【0029】
上記塩としては、医薬として許容される塩であれば限定されないが、例えば、塩酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の医学的に許容可能な無機酸もしくは有機酸の酸付加塩が挙げられる。
【0030】
本発明の経皮吸収型製剤におけるリバスチグミンの含有量(リバスチグミン塩の場合は、リバスチグミンに換算したときの値)は、粘着層の全量を100%としたときの%として把握され、5%以上、30%以下である。リバスチグミンの含有量が5%を下回ると薬効を発揮することができず、更に、リバスチグミンによる可塑化作用が低下して初期粘着力が不足し、貼付中に製剤が剥がれたり、脱落したりする可能性がある。好ましくは7%以上、より好ましくは9%以上である。一方、リバスチグミンの含有量が30%を超えると、製剤の剥離時において、粘着層中に過剰量のリバスチグミンが残存するため、剥離力が高くなり過ぎて皮膚刺激を引き起こすおそれがある。好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である。
【0031】
本発明の経皮吸収型製剤において、貼付残存試験における24時間後の残存リバスチグミン量は初期リバスチグミン量の10%以上、60%以下であることが好ましい。より好ましくは10%以上、50%以下である。貼付残存試験は、例えばウサギの皮膚に貼付して行えば良い。
【0032】
本発明の経皮吸収型製剤における粘着剤は、ゴム系粘着剤を用いる。またゴム系粘着剤は、アクリル系粘着剤等と比較し、リバスチグミンの経皮吸収性を高めるのに適している。またゴム系粘着剤は、アクリル系粘着剤等と比較して、一般的に自己粘着力が低いので、リバスチグミンの含有量の低下による刺激性の低減に寄与するという点での有効性も期待できる。
【0033】
ゴム系粘着剤は、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、及びスチレン-ブタジエンゴムよりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。これらは、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。このうちスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体が特に好ましい。
【0034】
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体として、例えばJSRクレイトンエラストマー株式会社製のクレイトンD-KX401CS、D-1161JP、シェル化学株式会社製のカリフレックスTR-1107、TR-1111、TR-1112、TR-1117、日本合成ゴム株式会社製のJSR-5000、5002、SR-5100、日本ゼオン株式会社製のクインタック3530、3570C、3421等が挙げられる。
【0035】
ポリイソブチレンとして、例えば新日本石油化学株式会社製のテトラックス3T、BASFジャパン株式会社製のオパノールB150等が挙げられる。
【0036】
スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体として、例えばシェル化学株式会社製のカリフレックスTR-1101等が挙げられる。
【0037】
スチレン-ブタジエンゴムとして、例えば日本合成ゴム株式会社製のSBR1013H、SBR1502等が挙げられる。
【0038】
ゴム系粘着剤の含有量(単独で含むときは単独の含有量であり、2種以上を含むときはこれらの合計量である。)は、粘着層の全量を100%としたとき10%以上、60%以下である。粘着層の形成及び皮膚透過性を考慮すると、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上である。一方、ゴム系粘着剤の含有量が60%を超えると十分な経皮吸収性が得られないおそれがある。好ましくは55%以下、より好ましくは50%以下である。
【0039】
本発明の経皮吸収型製剤における粘着付与樹脂は、製剤に初期粘着力を付与できるものであれば特に限定されないが、例えば、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、テルペン樹脂、ロジン誘導体、及びマレイン酸レジンよりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。これらは、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。製剤の初期粘着力とリバスチグミンとの相溶性を考慮すると、粘着付与樹脂は、脂肪族系炭化水素樹脂、ロジン誘導体、及びテルペン樹脂よりなる群から選ばれる1種以上であることがより好ましく、脂環族飽和炭化水素樹脂であることが更に好ましい。脂環族飽和炭化水素樹脂として、例えば、荒川化学工業株式会社製のアルコンP100が挙げられる。脂肪族系炭化水素樹脂として、例えば、日本ゼオン株式会社製のクイントンB170が挙げられる。テルペン樹脂として、例えば、ヤスハラケミカル株式会社製のクリアロンP-125が挙げられる。ロジン誘導体として、例えば、ロジン、ロジングリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジングリセリンエステル、ロジンのペンタエリストールエステル等が挙げられる。
【0040】
粘着付与樹脂の含有量(単独で含むときは単独の含有量であり、2種以上を含むときはこれらの合計量である。)は、粘着層の全量を100%としたとき30%以上、70%以下である。粘着付与樹脂は初期粘着力に大きく影響し、30%を下回ると初期粘着力が弱くなって貼付剤の貼付中に製剤が剥がれたり脱落したりする可能性がある。好ましくは40%以上、より好ましくは45%以上である。一方、粘着付与樹脂の含有量が70%を超えると、製剤が固くなり過ぎて、十分な初期粘着力は得られない。好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下である。
【0041】
上記した通り、本発明では粘着剤としてゴム系粘着剤を用いるが、ゴム系粘着剤を基剤とした貼付剤の場合、初期粘着力を上げるために、通常、可塑剤が配合される。しかし本発明では、粘着層中におけるリバスチグミンの可塑剤としての作用を利用するため、可塑剤を積極的に配合しなくとも貼付剤物性と貼付剤としての初期粘着力を保持することができる。一方、粘着層中に多量の可塑剤を配合すると、貼付剤剥離時においてもその可塑剤の作用により貼付剤自身の高い粘着性が維持されてしまう。そのため、貼付剤の剥離時の皮膚刺激性を低減する観点からは、粘着層の可塑剤の量は過剰にならない様に配慮し、可塑剤を含まないことが特に好ましい。
【0042】
一方、もし皮膚刺激を誘発しない範囲で微量の可塑剤を配合するのであれば、例えば、粘着層の全量を100%としたとき、可塑剤の含有量は0%超、2%未満の含有量(単独で含むときは単独の含有量であり、2種以上を含むときはこれらの合計量である。)であることが好ましい。これにより可塑剤による皮膚刺激性を抑制しつつ初期粘着力を向上することができる。このような観点からは、可塑剤の含有量は、より好ましくは0.05%以上、0.15%以下、更に好ましくは0.07%以上、0.10%以下である。
【0043】
可塑剤は、粘着層を軟化することができる液状成分であることが好ましい。可塑剤として、例えば、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル等の石油系オイル;スクワラン;スクアレン;オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油等の植物系オイル;シリコンオイル等の合成オイル;ポリブテン等の液状ゴム;オレイン酸オレイル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル等の液状脂肪酸エステル;ジエチレングリコール;ポリエチレングリコール;サリチル酸グリコール;プロピレングリコール;ジプロピレングリコール;トリアセチン;クエン酸トリエチル;クロタミトン;ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の二塩基酸エステル;グリセロール;及びポリブテンよりなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて使用することができる。ゴム系粘着剤との相溶性の観点からは、液状脂肪酸エステル、及び石油系オイルよりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、石油系オイルが特に好ましい。
【0044】
なお、リバスチグミン、ゴム系粘着剤、粘着付与樹脂等の粘着剤の含有量は、以下に示す添加剤を加える場合、添加剤を加えた粘着層全体(支持体と剥離フィルムは含まない)に対する%(質量%)と理解すべきである。
【0045】
本発明が提供する経皮吸収型製剤は、必要に応じて、本発明の作用を阻害しない範囲で、抗酸化剤、充填剤、水溶性高分子、架橋剤、防腐剤、紫外線吸収剤を配合することができる。
【0046】
抗酸化剤として、トコフェロール及びそのエステル誘導体、アスコルビン酸、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、ノルジヒドログアヤレチン酸、ジブチルヒドロキシトルエン(以下、BHTと略記する)、及びブチルヒドロキシアニソールよりなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0047】
充填剤として、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムやケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩、ケイ酸、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、及び二酸化ケイ素よりなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0048】
水溶性高分子として、カゼイン、デキストラン、アルギン酸ナトリウム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、及びカルボキシビニルポリマーよりなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0049】
架橋剤として、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、有機系架橋剤、及び金属又は金属化合物等の無機系架橋剤よりなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0050】
防腐剤として、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、及びパラオキシ安息香酸ブチルよりなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0051】
紫外線吸収剤として、p-アミノ安息香酸誘導体、アントラニル酸誘導体、サリチル酸誘導体、アミノ酸系化合物、ジオキサン誘導体、クマリン誘導体、イミダゾリン誘導体、及びピリミジン誘導体よりなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0052】
その他、常温で固体である乳酸セチル等のエステル類、精製ラノリン、コレステロール、アラビアゴム、レシチン等を配合することができる。
【0053】
本発明の経皮吸収型製剤は、少なくとも支持体層、粘着層、及び剥離フィルムを含む経皮吸収型貼付製剤である。第1の態様では、マトリックスタイプの貼付剤であることを前提として説明したが、本発明の経皮吸収型製剤は、これに限定されるものではない。
【0054】
本発明の経皮吸収型製剤の支持体として、伸縮性又は非伸縮性の支持体を用いることができる。支持体として、布、不織布、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する)、アルミニウムシート等、又はそれらの複合素材が挙げられる。
【0055】
剥離フィルムとして、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリプロピレンフィルムをシリコンコートしたものが挙げられる。このような剥離フィルムは、経皮吸収型製剤を皮膚に貼り付けるまで粘着層を保護してリバスチグミンの変質を抑制し、且つ、容易に剥離できるため好ましい。
【0056】
粘着層(有効成分と、ゴム系粘着剤と、粘着付与樹脂と、必要に応じて他の添加剤を含む層)の厚みは、30μm以上、200μm以下であることが好ましい。粘着層の厚みが30μm未満であると、薬物放出の持続性が低下する。好ましくは30μm以上、より好ましくは50μm以上である。一方、粘着層の厚みが200μmを超えると、コストの増加を招くだけでなく、粘着層中の単位面積当たりの薬物量が増え、その結果、経時後の薬物濃度が貼付初期と比べて顕著に低下しないので剥離時の皮膚刺激が高まる。好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下である。
【0057】
(第2の態様)
本発明の経皮吸収型製剤は、第2の態様では、質量%で、リバスチグミン:5%以上、30%以下、ゴム系粘着剤:10%以上、60%以下、及び粘着付与樹脂:30%以上、70%以下を含有し、可塑剤を含まないことを特徴とする。
【0058】
本発明では粘着剤としてゴム系粘着剤を用いるが、ゴム系粘着剤を基剤とした貼付剤の場合、通常、可塑剤が配合される。しかし本発明では、リバスチグミン、ゴム系粘着剤、及び粘着付与樹脂の含有量を所定量に制御して、粘着層中におけるリバスチグミンの可塑剤としての作用を利用するため、可塑剤を積極的に配合しなくとも貼付剤物性と貼付剤の初期粘着力を保持することができる。一方、粘着層中に多量の可塑剤を配合すると、貼付剤剥離時においてもその可塑剤の作用により貼付剤自身の高い粘着性が維持されてしまうが、粘着層に可塑剤を含まないことにより、貼付剤の剥離時の皮膚刺激性を低減することができる。
【0059】
また、本発明の第2の態様において、第1の態様と同様に粘着層のリバスチグミン、ゴム系粘着剤、及び粘着付与樹脂の含有量を下記式(1)、(2)を満たすように制御することが好ましい。
【0060】
式(1):a+c≧55
具体的には、リバスチグミンの含有量a(%)と粘着付与樹脂の含有量c(%)からなる式(1)の左辺の値を、好ましくは55以上とすることにより、経皮吸収性及び初期粘着力を向上することができる。より好ましくは58以上、更に好ましくは60以上、更により好ましくは62以上である。一方、式(1)の左辺の値が大きくなり過ぎると、初期粘着力が高くなり過ぎて剥離時の皮膚刺激を引き起こすおそれがある。式(1)の左辺の値は、好ましくは90以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは70以下である。
【0061】
式(2):b/c≦1.00
また、ゴム系粘着剤の含有量b(%)と粘着付与樹脂の含有量c(%)からなる式(2)の左辺の値を、好ましくは1.00以下とすることにより、初期粘着力を向上することができる。より好ましくは0.90以下、更に好ましくは0.85以下、更により好ましくは0.80以下である。一方、式(2)の左辺の値が低くなり過ぎると却って初期粘着力が低下する場合がある。式(2)の左辺の値は、好ましくは0.16以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上、更により好ましくは0.6以上である。
【0062】
本発明の第2の態様におけるその他の構成は、本発明の第1の態様と同様である。
【0063】
(第3の態様)
本発明の経皮吸収型製剤は、第3の態様では、質量%で、リバスチグミン:5%以上、30%以下、ゴム系粘着剤:10%以上、60%以下、粘着付与樹脂:30%以上、70%以下、及び可塑剤:0%超、2%未満を含有することを特徴とする。
【0064】
本発明の第3の態様では、リバスチグミン、ゴム系粘着剤、及び粘着付与樹脂の含有量を所定量に制御して、リバスチグミンの可塑剤としての作用を利用することにより、有効成分の有効量を持続的に投与でき、且つ、皮膚刺激を顕著に抑制できる。更に、粘着層に0%超、2%未満の可塑剤を配合することにより、皮膚刺激を抑制しつつ初期粘着力を向上することができる。
【0065】
可塑剤の含有量(単独で含むときは単独の含有量であり、2種以上を含むときはこれらの合計量である。)は、粘着層の全量を100%としたとき、0%超、2%未満である。この範囲であれば、皮膚刺激を抑制しつつ初期粘着力を向上することができる。好ましくは0.05%以上、0.15%以下、より好ましくは0.07%以上、0.10%以下である。
【0066】
本発明の第3の態様におけるその他の構成は、本発明の第2の態様と同様である。
【0067】
本発明の経皮吸収型製剤は、以下の方法によって作製することができる。例えば、薬物を含む基剤組成を熱融解させて、剥離フィルム又は支持体に塗工した後、それを支持体又は剥離フィルムと貼り合わせて製剤を得る方法(ホットメルト法)、薬物を含む基剤成分をトルエン、ヘキサン、酢酸エチル等の溶媒に溶解させて、剥離フィルム又は支持体上に伸展して溶剤を乾燥除去した後、それを支持体又は剥離フィルムと貼り合わせて製剤を得る方法(溶媒法)等が挙げられる。
【0068】
本願は、2017年2月27日に出願された日本国特許出願第2017-035503号に基づく優先権の利益を主張するものである。2017年2月27日に出願された日本国特許出願第2017-035503号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例
【0069】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0070】
実施例1
スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体11.4g、脂環族飽和炭化水素樹脂15.0gを適量のトルエンに混合溶解させ、粘着基剤溶液を得た。この粘着基剤溶液にリバスチグミン4.3gを添加し、均一になるまで撹拌混合して得られた粘着剤溶液を剥離フィルム(PETフィルム)上に伸展して、溶媒を乾燥除去させ、厚さ129μmの粘着層を形成した。次いで、支持体(PETフィルム)を貼り合わせることにより貼付剤を得た。表1に各成分の含有量を示す。
【0071】
実施例2~4
各成分の含有量を表1に示す含有量とし、粘着層の厚さを表1に示す厚さとしたこと以外は、実施例1と同様の製法により実施例2~4を得た。表1に各成分の含有量を示す。
【0072】
【表1】
【0073】
比較例1、2
比較例1として、1日1回貼付用製剤として市販品の中でも優れた初期粘着力を示すものとして知られている市販のツロブテロール含有貼付剤を用いた。比較例2として、リバスチグミンの含有量が1.8mg/cm2であり、アクリル系粘着剤及びシリコン粘着剤を含有する市販のリバスチグミン含有貼付剤(イクセロン(登録商標)パッチ)を用いた。
【0074】
粘着性試験1:180°剥離試験
貼付剤の初期粘着力を検証するために、180°剥離試験を実施した。まず実施例1と比較例1の製剤を幅10mm、長さ50mmのサイズに調整し、製剤から剥離フィルムを剥がし、長さ方向の端部から5mmまでの部分にセロハンテープを貼り付けて自由端を設けた。その後、製剤をステンレス板(SUS板)に速やかに貼り付け、直ちに質量850gのゴムローラーを300mm/分の速さで製剤の上を2回通過させた。次いで室温で1分間放置した後、自由端を180°角に折り返した。その後、自由端を引張試験機(サン科学社製、CR-500DX)の上部に挟み、ステンレス板を引張試験機の下部に留め金で堅く挟んだ後に300mm/分の速さで連続して引き剥がした。ステンレス板から連続して引き剥がされた、長さ方向の端部から20mm~50mmの長さ(30mm)あたりの粘着力を測定し、剥離力(g)とした。その結果を表2に示す。
【0075】
粘着性試験2:プローブタック試験
初期粘着力を検討するためにプローブタック試験を実施した。まず、実施例1と比較例1の製剤を直径14mmの円形に打ち抜いた。次いで、試料台上に両面テープを貼り、剥離フィルムを上に向けて製剤を貼り付けた。その後、製剤から剥離フィルムを剥がし、ステンレス製球体プローブ(直径5mm)を感圧軸取付け部に取り付けた後、試料台を10mm/分の速度で上昇させた。最終的に粘着面を球体プローブに50gの力で接触させ、10秒間静止した後、引き離すのに要した力を測定し、剥離力(g)とした。その結果を表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
表2より、以下のように考察することができる。
【0078】
実施例1は本発明の要件を満足する例であり、粘着性試験1(180°剥離試験)における剥離力は、比較例1とほぼ同等であったが、粘着性試験2(プローブタック試験)における剥離力は比較例1よりも高くなった。このことより、本発明の製剤は、優れた初期粘着力を備えていることが確認できた。
【0079】
インビトロ皮膚透過性試験
実施例1~4及び比較例2におけるリバスチグミンの経皮吸収性を検討するため、インビトロ皮膚透過性試験を行った。まずヘアレスラット(HWY系、7週齢)の腹部摘出皮膚をフランツ型拡散セルにセットし、円形(φ14mm)に裁断した各製剤を貼付した。レセプター側にはリン酸緩衝生理食塩水を満たし、ウォータージャケットには、37℃の温水を還流した。経時的にレセプター液をサンプリングし、皮膚を透過したリバスチグミン量を液体クロマトグラフ法により測定した。その結果より、(i)定常状態(試験開始7~8時間後)すなわち薬物放出のピークにおける薬物吸収速度(flux:μg/cm2/時間)、(ii)製剤剥離前(試験開始23~24時間後)における薬物吸収速度(flux:μg/cm2/時間)、(iii)試験開始24時間後の累積薬物透過量(μg/cm2)を算出した。更に、持続的な薬物放出性を示すパラメーターとして、(i)に対する(ii)の比((ii)/(i))を算出した。なお、本試験では、実施例1、3、比較例2と、実施例2、4、比較例2とはそれぞれ試験の実施日が異なる。その結果を表3、4に示す。
【0080】
【表3】
【0081】
【表4】
【0082】
表3、4より、以下のように考察することができる。
【0083】
実施例1~4は本発明の要件を満足する例であり、(iii)試験開始24時間後の累積薬物透過量は、比較例2よりも多く、比較例2よりも優れた薬物放出性を示すことが分かった。
【0084】
なお実施例1~4の製剤について、試験開始24時間後に製剤の外観観察を行ったが、製剤の浮きや剥がれは認められなかった。また実施例1~4における(i)定常状態(試験開始7~8時間後)の薬物吸収速度に対する(ii)製剤剥離前(試験開始23~24時間後)の薬物吸収速度の比((ii)/(i))は、比較例2における薬物吸収速度の比((ii)/(i))と同等以上の値を示している。貼付剤が剥がれると薬物放出は低下するが、上記のように実施例1~4では、剥離直前においても比較例2(イクセロンパッチ)と同等以上の持続的な薬物放出が認められる。この点からも、実施例1~4では、薬物吸収性に支障が出るほどの剥がれや浮きは生じていないと考えられる。
【0085】
ウサギ皮膚一次刺激性試験
実施例1、実施例4及び比較例2の製剤のそれぞれについて、ウサギ6匹を一群としてウサギ皮膚一次刺激性試験を行った。除毛したウサギ背部に1匹当たり正常皮膚及び損傷皮膚の2ヶ所ずつ、それぞれの製剤を24時間貼付し、剥離1時間後、48時間後における紅斑評点と浮腫評点の合計評点を求めた。更に合計評点を貼付部位数(2)×観察時点(2)で求められる値(4)で除して皮膚一次刺激指数(Primary Irritation Index:P.I.I)を求めた。その結果を、表5、6に示す。また、安全性評価基準を表7に示す。なお24時間貼付後に各製剤を剥がしたが、実施例1、4の製剤の方が比較例2よりも剥がし易かったことを確認している。
(評価基準と評点)
紅斑及び痂皮の形成
紅斑なし:0
非常に軽度な紅斑(かろうじて識別できる):1
はっきりした紅斑:2
中等度ないし高度な紅斑:3
高度な紅斑からわずかな痂皮形成(深部損傷):4
浮腫の形成
浮腫なし:0
非常に軽度な浮腫(かろうじて識別できる):1
軽度な浮腫(はっきりとした膨隆による明確な縁が識別できる):2
中等度な浮腫(約1mmの膨隆):3
高度な浮腫(1mm以上の膨隆と曝露範囲を越えた広がり):4
【0086】
【表5】
【0087】
【表6】
【0088】
【表7】
【0089】
表5、6より、以下のように考察することができる。
【0090】
実施例1、4は本発明の要件を満足する例であり、比較例2よりも皮膚刺激性が低く、安全性の高い製剤であることが分かった。
【0091】
その他、本発明の製剤の処方例を表8に示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0092】
【表8】