(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】ナノプラズモニック計装、材料、方法、及びシステムインテグレーション
(51)【国際特許分類】
G01N 21/41 20060101AFI20220525BHJP
【FI】
G01N21/41 102
(21)【出願番号】P 2019555708
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2018016893
(87)【国際公開番号】W WO2018194184
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-03-01
(32)【優先日】2017-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512155478
【氏名又は名称】学校法人沖縄科学技術大学院大学学園
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】ニキル バーラ
(72)【発明者】
【氏名】エイミー シェン フリード
(72)【発明者】
【氏名】カンユ チュー
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-101308(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0223467(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0169886(US,A1)
【文献】Process optimization of CF4/Ar plasma etching of Au using I-optimal design,Thin Solid Films,Elsevier B. V.,2009年02月08日,Vol. 517,pp. 3919-3922,doi: 10.1016/j.stf.2009.01.176
【文献】Sensitive Localized Surface Plasmon Resonance Multiplexing Protocols,Analytical Chemisctry,米国,American Chemical Society,2012年08月15日,Vol. 84,pp. 8020-8027,doi: 10.1021/ac301825a
【文献】Development of localized surface plasmon resonance biosensors for the detection of Brettanomyces bruxellensis in wine,Sensors and Actuators B: Chemical,Elsevier B. V.,2015年09月25日,Vol. 223,pp. 295-300,doi: 10.1016/j.snb.2015.09.099
【文献】Annealing of gold nanostructures sputtered on glass substrate,Applied Physics A,Springer,2010年12月31日,Vol. 102,pp. 605-610,doi: 10.1007/s00339-010-6167-1
【文献】Microwave Heating of Thin Au Film,Materials Transactions,日本,The Japan Institute of Metals,2007年02月25日,Vol. 48, No. 3,pp. 531-537,doi: 10.2320/matertrans.48.531
【文献】Localized Surface Plasmon Resonance as a Biosensing Platform for Developing Countries,Biosensors,2014年06月20日,Vol. 4,pp. 172-188,doi: 10.3390/bios4020172
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/74
G01J 3/00-G01J 3/52
B82B 1/00-B82B 3/00
B82Y 5/00-B82Y 99/00
C23C 14/00-C23C 16/56
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
PubMed
Science Direct
IEEE Xplore
Wiley Online Library
ACS PUBLICATIONS
nature.Com
SCIENCE
Scitation
SPIE Digital Library
JJAP
APEX
KAKEN
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれナノメートル領域の寸法を有する複数の金属ナノアイランドをガラス基板の表面上に形成し、
前記複数の金属ナノアイランドが複数のキノコ型構造に変換されるように、前記複数の金属ナノアイランドが形成された前記ガラス基板を、前記ガラス基板が
前記複数の金属ナノアイランドより速い速度でエッチングされ、前記
複数の金属ナノアイランド
の表面からエッチングされた金属粒子が前記ガラス基板上
における前記複数の金属ナノアイランドの間に堆積し、堆積された金属粒子が蓄積して
、複数のキノコ型構造のうち一部のキノコ型構造の金属の笠を形成するように反応性イオンエッチングにかける、
処理を含み、
前記複数のキノコ型構造はそれぞれ、前記ガラス基板の材料からなる軸によって支持された前記金属の笠を有し、
前記金属の笠は前記
金属ナノアイランドの寸法よりも小さい寸法を有し、
前記複数のキノコ型構造は、前記
金属ナノアイランド間の平均間隔よりも小さな間隔で略規則的なパターンに配置され、
前記金属ナノアイランドより密集し、それにより、前記ガラス基板上に局在表面プラズモン共鳴を示すことができる前記複数のナノスケールのキノコ型構造を形成する、
プラズモニックマッシュルームアレイの作製方法。
【請求項2】
前記複数の金属ナノアイランドを形成する処理は、
金属の層を前記ガラス基板の前記表面上に堆積させ、
前記金属の層が形成された前記ガラス基板をアニーリングし、前記複数の金属ナノアイランドが前記ガラス基板の前記表面上に略規則的な間隔で形成されるように前記金属のディウェッティングを引き起こす、
処理を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属は金であり、前記金属の層の厚みは4nmであり、前記ガラス基板はSiO
2基板であり、前記アニーリングは560℃で3時間行われ、
前記反応性イオンエッチングはSF
6のガスを用いて5℃で行われる、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の金属ナノアイランドを形成する処理は、
金属の層を前記ガラス基板の前記表面上に堆積させ、
前記金属の層をフォトリソグラフィによってパターニングし、前記複数の金属ナノアイランドを形成する、
処理を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の金属ナノアイランドを形成する処理は、前記複数の金属ナノアイランドがそれぞれ100nm以下の直径を有し、前記金属ナノアイランド間の間隔が100nm以下となるように実行される、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記金属は金であり、前記ガラス基板はSiO
2基板であり、
前記複数の金属ナノアイランドを形成する処理は、前記複数の金属ナノアイランドがそれぞれ、前記
金属ナノアイランド間の間隔が2nm~80nmであり、直径5nm~70nm、高さ20nm~25nmの高さを有する金からなる金属アイランドを有するように実行され、
前記反応性イオンエッチングは、結果として得られる前記複数のキノコ型構造がそれぞれ、高さ30nm~40nmを有するSiO
2からなる軸によって支持された、直径10nm~30nm、高さ15nm~20nmの金からなる金属の笠を有し、前記キノコ型構造間の間隔が5nm~20nmとなるように実行される、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記金属は金であり、前記ガラス基板はSiO
2基板であり、
前記複数の金属ナノアイランドを形成する処理は、前記複数の金属ナノアイランドがそれぞれ、平均直径35nm、高さ20nm~25nmの金からなる金属アイランドを有し、前記
金属ナノアイランド間の平均間隔が25nmとなるように実行され、
前記反応性イオンエッチングは、結果として得られる前記複数のキノコ型構造がそれぞれ、高さ30nm~40nmを有するSiO
2からなる軸によって支持された、平均直径25nm、高さ15nm~20nmの金からなる金属の笠を有し、前記キノコ型構造間の平均間隔が10nmとなるように実行される、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ガラス基板と、
前記ガラス基板上に、それぞれが前記ガラス基板の材料からなる軸によって支持された金属の笠を有し、ナノスケール寸法を有する複数のキノコ型構造と、
を備え、
前記複数のキノコ型構造は、表面にそれぞれナノメートル領域の寸法を有する複数の金属ナノアイランドが形成された前記ガラス基板を、前記ガラス基板が
前記金属ナノアイランドより速い速度でエッチングされ、前記金属ナノアイランド
の表面からエッチングされた金属粒子が前記ガラス基板上
における前記複数の金属ナノアイランドの間に堆積し、堆積された金属粒子が蓄積して
、複数のキノコ型構造のうち一部のキノコ型構造の金属の笠を形成
し、前記金属ナノアイランド間の平均間隔より小さい間隔で前記金属ナノアイランドより密集するように反応性イオンエッチングにかけることで形成され、局在表面プラズモン共鳴を示すように、略規則的なパターンで配置されている、
プラズモニックプレート。
【請求項9】
前記ガラス基板はSiO
2基板であり、
前記複数のキノコ型構造はそれぞれ、高さ30nm~40nmのSiO
2からなる軸によって支持された、直径10nm~30nm、高さ15nm~20nmの金からなる金属の笠を有し、前記キノコ型構造間の間隔は、5nm~20nmである、
請求項8に記載のプラズモニックプレート。
【請求項10】
前記ガラス基板はSiO
2基板であり、
前記複数のキノコ型構造はそれぞれ、高さ30nm~40nmのSiO
2からなる軸によって支持された、平均直径25nm、高さ15nm~20nmの金からなる金属の笠を有し、前記キノコ型構造間の平均間隔は10nmである、
請求項8記載のプラズモニックプレート。
【請求項11】
複数のプラズモン領域を備え、前記プラズモン領域はそれぞれ、請求項8に記載の前記プラズモニックプレートである、
プラズモンチップ。
【請求項12】
複数のプラズモン領域を備え、前記プラズモン領域はそれぞれ、請求項9に記載の前記プラズモニックプレートである、
プラズモンチップ。
【請求項13】
複数のプラズモン領域を備え、前記プラズモン領域はそれぞれ、請求項10に記載の前記プラズモニックプレートである、
プラズモンチップ。
【請求項14】
下向きに発光する発光ダイオードを含むLED回路と、
前記LED回路の下に設けられ、請求項8に記載のプラズモニックプレートを含み、前記発光ダイオードからの光を受光するように前記発光ダイオードに対向するプラズモンチップと、
流体ステージに供給された流体が前記プラズモニックプレートと動作可能に結合することができるよう前記LED回路の下に設けられた流体ステージと、
前記プラズモンチップの下に設けられ、受光した光のスペクトルを分析するように前記プラズモニックプレートと相互作用した光を受光する分光計と、
を備える局在表面プラズモン共鳴装置。
【請求項15】
下向きに発光する発光ダイオードを含むLED回路と、
前記LED回路の下に設けられ、請求項9に記載のプラズモニックプレートを含み、前記発光ダイオードからの光を受光するように前記発光ダイオードに対向するプラズモンチップと、
流体ステージに供給された流体が前記プラズモニックプレートと動作可能に結合することができるよう前記LED回路の下に設けられた流体ステージと、
前記プラズモンチップの下に設けられ、受光した光のスペクトルを分析するように前記プラズモニックプレートと相互作用した光を受光する分光計と、
を備える局在表面プラズモン共鳴装置。
【請求項16】
下向きに発光する発光ダイオードを含むLED回路と、
前記LED回路の下に設けられ、請求項10に記載のプラズモニックプレートを含み、前記発光ダイオードからの光を受光するように前記発光ダイオードに対向するプラズモンチップと、
流体ステージに供給された流体が前記プラズモニックプレートと動作可能に結合することができるよう前記LED回路の下に設けられた流体ステージと、
前記プラズモンチップの下に設けられ、受光した光のスペクトルを分析するように前記プラズモニックプレートと相互作用した光を受光する分光計と、
を備える局在表面プラズモン共鳴装置。
【請求項17】
前記金属ナノアイランドは金ナノアイランドであり、前記ガラス基板はSiO
2基板であり、前記反応性イオンエッチングはSF
6ガスを用い実行される請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノプラズモニック計装、材料、方法、及びシステムインテグレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ構造を低コストおよび高スループットで作り出すことが可能な技術に対する需要と同様に、高感度プラズモニックナノ構造に対する需要が増え続けている。現在の技術は、マイクロ/ナノリソグラフィ技術に限定されており、これらは時間がかかり、限られたスループットかつ低い再現性で構造を産出する(非特許文献4)。
【0003】
ナノプラズモンバイオセンサは、疾患の早期検出およびポイントオブケア(point-of-care:POC)臨床評価に不可欠な特徴である、リアルタイムでの生体分子相互作用の高感度なラベルフリー検出を可能にする。ナノプラズモニクスは、局在表面プラズモン共鳴(localized surface plasmon resonance:LSPR)として知られる現象に関連する貴金属ナノ構造の独特の物理的および光学的性質を調査する。LSPRは、入射光子と貴金属ナノ構造の伝導帯との間の相互作用に起因する、非局在化電子のコヒーレント振動およびそれに続く紫外可視(UV-Vis)帯内での吸収である。トップダウンファブリケーション及びボトムアップアセンブリという2つの基本的な方式を使用して、生体適合性ナノプラズモニック材料を開発する。基本的に、トップダウンファブリケーション方式が基板からビルディングユニットを取り除いてナノ構造を作成するのに対して、ボトムアップアセンブリは、基板に物理的にビルディングユニットを追加するものである。トップダウンファブリケーションは、通常、様々なリソグラフィ方法に依存しているのに対し、ボトムアップ方式は、分子合成、コロイド化学、およびポリマー科学を採用してナノメートル寸法の構造を開発する。ボトムアップ方式の固有の性質により細かい分解能が可能になるが、トップダウン方式の方が大規模で高スループットのナノ構造生産にはるかに適している。両方式の既存の方法は、ナノ構造のサイズ、形状、および分離に対する優れた制御を可能にした。しかしながら、材料科学には、高スループットかつ作製コストが低い高感度ナノプラズモンセンサの合成を達成するために両方式を統合する有効な手段がまだ欠けている。
【0004】
プラズマ支援ナノファブリケーションは新たな学際的研究分野であり、ナノワイヤ、ナノチューブ、ナノ粒子、およびナノテクスチャコーティングを含む、多様なナノ材料の作製に対するエキサイティングで新しい特定分野を提供する。プラズマ環境で開発されたナノ材料は、それらの伝統的なものとは一線を画す顕著なプラズマ誘起特性を有するが、標準的なリソグラフィ、電子ビームリソグラフィおよびナノインプリンティングのような従来の技術を用いてそれらを作製することは困難であることが判明している(非特許文献5,6)。プラズマ支援ナノファブリケーションのプロセスは、自然界で起こるいくつかのプロセスと多くの類似点を有する。具体的には、宇宙空間では99%の物質がプラズマ状態で存在している。例えば、星間ガス、彗星の尾、惑星大気の上層、及び恒星環境は、原子、分子、及びイオン等のサブナノスケール粒子(ビルディングユニット)が様々な形や構成に自己組織化するプラズマ環境を含んでいる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Ostrikov, K. "Colloquium: Reactive plasmas as a versatile nanofabrication tool." Reviews of modern physics 77.2 (2005): 489.
【文献】Vladimirov, Sergey V., Kostya Ostrikov, and Alex A. Samarian. Physics and applications of complex plasmas. World Scientific, 2005.
【文献】Ostrikov, Kostya, Plasma nanoscience: from nature's mastery to deterministic plasma-aided nanofabrication." IEEE transactions on plasma science 35.2 (2007): 127-136.
【文献】Hammond, Jules L., et al. "Localized surface plasmon resonance as a biosensing platform for developing countries." Biosensors 4.2 (2014): 172-188.
【文献】Anker, Jeffrey N., et al. "Biosensing with plasmonic nanosensors." Nature materials 7.6 (2008): 442-453.
【文献】Willets, Katherine A., and Richard P. Van Duyne. "Localized surface plasmon resonance spectroscopy and sensing." Annu. Rev. Phys. Chem. 58 (2007): 267-297.
【文献】Kang, Tae Yoon, et al. "Process optimization of CF 4/Ar plasma etching of Au using I-optimal design." Thin Solid Films 517.14 (2009): 3919-3922.
【文献】Knizikevicius, Rimantas. "Simulations of Si and SiO2 etching in SF6+ O2 plasma." Vacuum 83.6 (2009): 953-957.
【文献】Jia, Kun, et al. "Sensitive localized surface plasmon resonance multiplexing protocols." Analytical chemistry 84.18 (2012): 8020-8027.
【文献】Svorcik, V., et al. "Annealing of gold nanostructures sputtered on glass substrate." Applied Physics A 102.3 (2011): 605-610.
【文献】Manzano, Marisa, et al. "Development of localized surface plasmon resonance biosensors for the detection of Brettanomyces bruxellensis in wine." Sensors and Actuators B: Chemical 223 (2016): 295-300.
【文献】Ou, Y. et al. Broadband antireflection silicon carbide surface by self-assembled nanopatterned reactive-ion etching. Optical Materials Express 3, 86-94 (2013).
【文献】Kitabayashi, H., Fujii, H. & Ooishi, T., Charging of glass substrate by plasma exposure, Japanese journal of applied physics 38, 2964 (1999).
【文献】Becker, J., Tru¨gler, A., Jakab, A., Hohenester, U. & So¨nnichsen, C. The optimal aspect ratio of gold nanorods for plasmonic bio-sensing. Plasmonics 5, 161-167 (2010).
【文献】Paivanranta, B. et al., High aspect ratio plasmonic nanostructures for sensing applications, ACS nano 5, 6374-6382 (2011).
【文献】Parsons, J. et al. Localized surface-plasmon resonances in periodic nondiffracting metallic nanoparticle and nanohole arrays. Physical Review B 79, 073412 (2009)
【文献】Willets, K. A. & Van Duyne, R. P. Localized surface plasmon resonance spectroscopy and sensing. Annu. Rev. Phys. Chem. 58, 267-297 (2007).
【文献】Abbas, A., Tian, L., Morrissey, J. J., Kharasch, E. D. & Singamaneni, S. Hot spot-localized artificial antibodies for label-free plasmonic biosensing. Advanced functional materials 23, 1789-1797 (2013).
【文献】Sepu´lveda, B., Angelome´, P. C., Lechuga, L. M. & Liz-Marza´n, L. M. Lspr-based nanobiosen- sors. Nano Today 4, 244-251 (2009).
【文献】Wilkinson, C., Riehle, M., Wood, M., Gallagher, J. & Curtis, A. The use of materials patterned on a nano-and micro-metric scale in cellular engineering. Materials Science and Engineering: C 19, 263-269 (2002).
【文献】Armbruster, D. A. & Pry, T. Limit of blank, limit of detection and limit of quantitation. Clin Biochem Rev 29, S49-52 (2008).
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明はナノプラズモニック計装、材料、方法、及びシステムインテグレーションに関する。
【0007】
発明の追加の又は別の特徴及び利点は、以下の明細書に記載されており、一部分において、明細書から明らかであるか、又は、発明の実施によって習得される。発明の目的及び他の利点は、記載された明細書および請求の範囲、並びに添付の図面において特に指摘されている構造によって実現及び達成されるであろう。
【0008】
本発明の目的に従ってこれらの及び他の優位性を達成するために、具体化され、広く説明されるように、1つの側面において、本発明は、それぞれナノメートル領域の寸法を有する複数の金属ナノアイランドをガラス基板の表面上に形成し、前記複数の金属ナノアイランドが複数のキノコ型構造に変換されるように、前記複数の金属ナノアイランドが形成された前記ガラス基板を反応性イオンエッチングにかける、処理を含み、前記複数のキノコ型構造はそれぞれ、前記ガラス基板の材料からなる軸によって支持された金属の笠を有し、前記ナノアイランドの寸法よりも小さい寸法を有し、前記複数のキノコ型構造は、前記ナノアイランド間の平均間隔よりも小さな間隔で略規則的なパターンに配置され、それにより、前記ガラス基板上に局在表面プラズモン共鳴を示すことができる前記複数のナノスケールのキノコ型構造を形成する、プラズモニックマッシュルームアレイの作製方法を提供する。
【0009】
別の側面において、本発明は、ガラス基板と、前記ガラス基板上に、それぞれが前記ガラス基板の材料からなる軸によって支持された金属の笠を有し、ナノスケール寸法を有する複数のキノコ型構造と、を備え、前記複数のキノコ型構造は、局在表面プラズモン共鳴を示すように、略規則的なパターンで配置されている、プラズモニックプレートを提供する。
【0010】
別の側面において、本発明は、下向きに発光する発光ダイオードを含むLED回路と、前記LED回路の下に設けられ、上記のプラズモニックプレートを含み、前記発光ダイオードからの光を受光するように前記発光ダイオードに対向するプラズモンチップと、流体ステージに供給された流体が前記プラズモニックプレートと動作可能に結合することができるよう前記LED回路の下に設けられた流体ステージと、前記プラズモンチップの下に設けられ、受光した光のスペクトルを分析するように前記プラズモニックプレートと相互作用した光を受光する分光計と、を備える局在表面プラズモン共鳴装置を提供する。
【0011】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、例示的かつ説明的なものであり、特許請求の範囲に記載された本発明のさらなる説明を提供することが意図されていることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、Auナノアイランド(nanoisland:NI)からAuナノマッシュルーム(nanomushroom:NM)構造を作製するプラズマプロセスを概略的に示す図である。(a)は、NIの略図と並べた走査電子顕微鏡法(scanning electron microscopy:SEM)画像である。挿入図は、NIの画像を拡大している。(b)は、プラズマ曝露下のNIの概略図である。(c)は、プラズマへのプラズマ曝露後に形成されたNMである。挿入図はNMの断面を示している。
【
図2】
図2は、ナノマッシュルーム状構造(NM)の作製工程を概略的に示す図である。概略図は、ナノアイランド(NI)からのビルディングユニット(building unit:BU)の生成、それに続く、より密集したNMへのBUのアセンブリを示している。
【
図3】
図3は、本発明に適用されるように、ビルディングユニット(BU)のコンセプトを概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、電子ビームリソグフラフィ(e-beam lithography:EBL)を使用して作製された、100nm間隔で、直径200nmを有するNIの写真である。
【
図5】
図5は、
図4に示すNI構造に対してICP-RIE処理を行った後の構造の写真である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係るNM製造プロセスのプロセスフローチャートである。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る高スループットのNM構造を達成するためのプロセスを概略的に示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係るNM構造の寸法及び間隔を概略的に示す図である。
【
図9a】
図9aは、NI及びNMについて、波長の関数としての吸光度プロットであり、NI(LSPRピーク波長540nm)構造及びNM(LSPRピーク波長533nm)構造の典型的な共振特性を示す。
【
図9b】
図9bは、NM構造及びNI構造近傍の局所的な屈折率の変化に伴うNM構造及びNI構造それぞれのLSPRピーク波長の変化を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明のNM基板上での細胞増殖(NIH/3T3線維芽細胞)を概略的に示す図である。
【
図11a】
図11は、細胞増殖時の本発明の実施例NM構造のLSPRを示す図であり、
図11aは、24時間にわたる波長応答を示す図である。
【
図11h】
図11hは、細胞数の変化に対するセンサ応答の変化を示している。
【
図12】
図12は、CNC機を使用し、アルミニウムで作製したステンシルハードマスクを示す写真である。
【
図13】
図13は、
図12のマスクを使用した、スポット内での金の堆積を概略的に示す図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施例に従って製造されたナノマッシュルームスポットの配列を有するNMチップを示す写真である。
【
図15】
図15は、本発明の一実施例に従って製造されたマイクロチャンネルを有するパッケージ化されたナノマッシュルームチップを示す写真である。
【
図16】
図16は、ナノマッシュルーム状構造(NM)の作製メカニズムを示す図であり、(a)は、ナノアイランド(NI)からのビルディングユニット(BU)の生成及びそれに続くより密集したNMへのビルディングユニットのアセンブリを概略的に示し、(b)は、NIからのNMのプラズマ指向性アセンブリにとって好ましいサイズおよびピッチ要件を示し、(c)~(e)は、NIに対するプラズマ効果の走査型電子顕微鏡法(SEM)画像であり、(c)は直径200nm、ピッチ200nm、(d)は直径200nm、ピッチ100nm、(e)はサイズ100nm、
ピッチ100nmである。
【
図17a】
図17は、検証実験の構成および結果を示す図であり、
図17aはイオンの勾配を生成するためのプラズマシールドの概略図である。
【
図17b】
図17b~
図17gは、スタンプ下の領域のSEMスキャンであり、プラズマイオンの強度への曝露は、
図17bから
図17gに向かって増加している。各画像の内側において、挿入図は、ナノ構造のサイズ分布を示す。
【
図17c】
図17b~
図17gは、スタンプ下の領域のSEMスキャンであり、プラズマイオンの強度への曝露は、
図17bから
図17gに向かって増加している。各画像の内側において、挿入図は、ナノ構造のサイズ分布を示す。
【
図17d】
図17b~
図17gは、スタンプ下の領域のSEMスキャンであり、プラズマイオンの強度への曝露は、
図17bから
図17gに向かって増加している。各画像の内側において、挿入図は、ナノ構造のサイズ分布を示す。
【
図17e】
図17b~
図17gは、スタンプ下の領域のSEMスキャンであり、プラズマイオンの強度への曝露は、
図17bから
図17gに向かって増加している。各画像の内側において、挿入図は、ナノ構造のサイズ分布を示す。
【
図17f】
図17b~
図17gは、スタンプ下の領域のSEMスキャンであり、プラズマイオンの強度への曝露は、
図17bから
図17gに向かって増加している。各画像の内側において、挿入図は、ナノ構造のサイズ分布を示す。
【
図17g】
図17b~
図17gは、スタンプ下の領域のSEMスキャンであり、プラズマイオンの強度への曝露は、
図17bから
図17gに向かって増加している。各画像の内側において、挿入図は、ナノ構造のサイズ分布を示す。
【
図17h】
図17hおよび
図17iは電子ビームリソグラフィを使用して作成されたナノアイランドを示す図である。
【
図17i】
図17hおよび
図17iは電子ビームリソグラフィを使用して作成されたナノアイランドを示す図である。
【
図18a】
図18aは、LSPRピークの特性を示す図である。挿入図は、屈折率の変化に対するNI,NM構造のLSPRピークの感度を示している。
【
図18b】
図18b~
図18eは、NM上のマイクロコンタクトプリント抗体を示す図であり、
図18bは、NM上のマイクロコンタクトプリント抗体を示す図である。
【
図18c】
図18cは、NI上のマイクロコンタクトプリント抗体を示す図である。
【
図18d】
図18dは、OISTロゴのような複雑な形状のマイクロコンタクトプリント抗体を示す図である。
【
図18e】
図18eは、NIが複雑な形の抗体をプリントできないことを示す図である。
【
図18f】
図18fは、マイクロコンタクトプリント抗体上の相補的抗体の結合に対するLSPR応答を示す図である。
【
図18g】
図18g及び
図18hは、様々な濃度の相補的抗体を付着させたときの波長および吸光の変化を示すLSPRの用量反応を示す図である。
【
図18h】
図18g及び
図18hは、様々な濃度の相補的抗体を付着させたときの波長および吸収の変化を示すLSPRの用量反応を示す図である。
【
図19】
図19は、本発明の一実施形態に係るマッシュルームLSPRチップを有するLSPRセンサデバイスの主要構成要素を示す図である。
【
図21】
図21~
図23は、
図19に示すLSPRセンサデバイスの実施形態に含まれる光源パネルの側面図、上面図および底面図、ならびに正面図および背面図を含む様々な図である。
【
図22】
図21~
図23は、
図19に示すLSPRセンサデバイスの実施形態に含まれる光源パネルの側面図、上面図および底面図、ならびに正面図および背面図を含む様々な図である。
【
図23】
図21~
図23は、
図19に示すLSPRセンサデバイスの実施形態に含まれる光源パネルの側面図、上面図および底面図、ならびに正面図および背面図を含む様々な図である。
【
図25】
図25は、
図19に示すLSPRセンサデバイスの実施形態における分光計モジュールのブロック図である。
【
図26b】
図26bは、LSPRシステムに組み込まれた流体チャネルの側面図およびその拡大図である。
【
図27】
図27(a)は、光源パネルに取り付けられたステージホルダを概略的に示す図であり、
図27(b)は、ドーナツ型加圧器を概略的に示す図であり、
図27(c)は、
図19に示すLSPRセンサデバイスの実施形態においてステージ上に加圧器を取り付けるための取り外し可能なキーを概略的に示す図である。
【
図28】
図28は、
図19に示すLSPRセンサデバイスの実施形態において分光計からの信号の読み出しおよび表示に関わる全てのステップのフローチャートを示す図である。
【
図29】
図29は、
図19に示すLSPRセンサデバイスの実施形態においてLSPRシグナルをリアルタイムで表示するためにMatlabで開発されたグラフィックユーザインタフェースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
自然界のナノファブリケーションプロセスに着想を得て、本開示は、LSPR素子として使用可能である、上部を金属で覆われたキノコ状ナノ構造の非常に効果的で製造が容易な新しいプラズモニック構造を提示し、
図1に示すように、六フッ化硫黄(SF
6)のプラズマ環境内での、上部が金属で覆われたキノコ状ナノ構造の簡易な、実験室ベースの形成方法を示す。簡潔には、一実施形態では、不均一分布金(Au)ナノアイランド(NI)を有する二酸化ケイ素(SiO
2)基板を六フッ化硫黄(SF
6)のプラズマに曝露した。Au NIを、ガラス上の(4nm厚の)薄い金フィルムをディウェッティングすることによって準備した。SF
6のイオンは、SiO
2を選択的にエッチングする一方、Au NIは、下地のSiO
2のナノマスクとして機能する。これにより、各ナノ構造がAuの笠を有するSiO
2の軸からなる、Auナノマッシュルーム構造(NM)の新規構造が形成された。
【0014】
図1は、Auナノアイランド(NI)からAuナノマッシュルーム(NM)構造を作製するプラズマプロセスを概略的に示す図である。(a)は、NIの略図と並べた走査電子顕微鏡法(scanning electron microscopy:SEM)画像である。挿入図は、NIの画像を拡大している。(b)は、プラズマ曝露下のNIの概略図である。(c)は、プラズマへのプラズマ曝露後に形成されたNMである。挿入図はNMの断面を示している。
【0015】
図1に示すように、NMの形成中に金ナノ構造の興味深い表面再分布が観察された。ICPーRIE(inductive coupled plasma-reactive ion etching)処理後、NMはNI構造と比較してより均質であることがわかった。ICPーRIEプロセスでプラズマ環境が金の再分布、結果として得られるこの新規の微細構造にどのように寄与するかを明らかにするための実験的証拠を以下に示す。以下に説明するように、この新規な構造は高感度なプラズモン特性を有し、そしてLSPRを利用する種々の用途に使用可能である。しかし、まずは、この新規なナノ構造を作成するためのメカニズムについて説明する。
【0016】
AUナノ構造再分布メカニズム
この驚くべき発見のメカニズムを調べるために、電子ビーム(eビーム)蒸着によってSiO
2表面上にAuのナノ層を堆積させることによってAu NIを作成し、その後、構造を560℃で3時間アニールする。次に、Au NIは、SiO
2基板のナノマスクとして機能しつつ、SF
6プラズマ環境において反応性イオンエッチング(ICP-RIE)される。SF
6は、Auよりもはるかに速い速度でSiO
2をエッチングし、各NIの周囲のSiO
2が除去されるにつれて、NMの形成を可能にする。SiO
2のSF
6エッチングはSiO
2がプラズマ環境に溶解する化学的プロセスである一方、Auは物理的プロセスによって表面からエッチングされる。(原子、原子のクラスタおよびAuの分子の形での)これらの物理的にエッチングされたAu粒子は本質的には不揮発性であり、したがって、エッチングされたSiO
2表面上でのさらなるアセンブリのためのビルディングユニット(BU)として機能できる(非特許文献7)。対照的に、SiO
2の化学エッチングの生成物はオキシケイ素-フッ素であり、これはプラズマ環境で蒸発する(非特許文献7)。このAu BUの分布は、1)プラズマ環境内でのSiO
2基板の帯電、および2)プラズマ束とNIマスクの空間分布との相互作用に起因する。フッ素のプラズマは本来、電気陰性度が高く、SiO
2の表面上に正電荷を誘導する。SF
6プラズマ環境での表面電荷とフッ素イオンとの間の相互作用は、Au BUを次々に基板表面上に引きつける。これらの新しく堆積されたBUが蓄積して、新しいより小さなNIを形成する一方、エッチングプロセスは継続する。
図1に示すように、NMの最終的な分布は、元々のNI分布よりも密集する。
図2に、プロセスの概略説明を示す。
図2は、ナノマッシュルーム状構造(NM)の作製プロセスを概略的に示す図である。概略図は、ナノアイランド(NI)からのビルディングユニット(BU)の生成と、それに続くBUのより密集したNMへのアセンブリと、を示している。
【0017】
上述したビルディングユニット(BU)は、それらがプラズマ環境内に載置された場合にAuナノアイランド(NI)からスパッタアウトする小さな金片(単一原子、原子のクラスタ、金の核集塊)を指す。ガラス表面上の金のビルディングユニットの生成および再分布は、プラズマと材料の金との相互作用に起因する。ビルディングユニットのコンセプトは、
図3および非特許文献1~3のOstrikovの研究からより詳細に理解することができる。
図3は、非特許文献3から転載した写真である。
【0018】
我々の元のナノアイランド基板における金の分布はランダムであるので、最初にランダムに配置された構造からBU効果を明確に検証することは困難である。したがって、調査の目的で、我々はまず電子ビームリソグラフィ(EBL)を使用して、
図4に示されるように、制御されたサイズおよび分布(規則構造)のナノ構造を含む基板を作成した。
図4は、電子ビームリソグラフィ(EBL)を使用して作られた、100nm間隔で、直径200nmを有するNIの写真である。
【0019】
NIのICP-RIE処理の後、小さいナノマッシュルームがより大きなナノマッシュルーム構造の間に観察される。
図5は、
図4に示すNI構造にICPーRIE処理を施した後の構造の写真である。
図5に示すように、NM構造が観察される。これらの小さなナノマッシュルームは、プラズマ環境においてナノアイランドから金を物理的にスパッタリングすることによって形成され、このことは上述した我々のビルディングブロック理論を立証している。
【0020】
製造方法
本発明の実施形態は、概して以下のように製造することができる。
【0021】
ステップ1:ガラス基板上に上部が金属で覆われたナノアイランド(NI)を形成する。好ましい金属は金である。これらのNIはNMの前駆体である。NIは、標準的なリソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、またはディウェッティングなどの様々な方法によって作成することができる。しかしながら、以下に詳細に記載するように、その単純さおよび経済性から、ディウェッティングが好ましい場合がある。
【0022】
ステップ2:上記のステップ1におけるガラス基板をIC-ICP-RIEにかけ、ガラス基板上にナノマッシュルーム(NM)を作成する。(NMを含む)基板サイズの精密寸法は、電子ビーム蒸発器を使用する場合、基板を処理する電子ビーム蒸発器のサイズによって制限される。本発明の実施例を作製するのに使用される電子ビーム蒸発器によって、長さ25mmおよび幅75mmのサンプル(NMを有するガラス基板)を作成することができた。
【0023】
図6のフローチャートは、本実施形態の製造プロセスの工程を示している。
図7は、本発明の一実施形態に係る製造プロセスの主要工程を示す図である。それぞれがNI基板から作成されたガラスの軸および金の笠(
図8参照)からなるNMは新しいものであり、これまでに達成されたことはないと考えられる。
図6は、NM製造プロセスのプロセスフローチャートである。
図6に示すように、本実施形態において、金からなるNIは、ディウェッティングまたは電子ビームリソグラフィまたは標準的なフォトリソグラフィによって作製される。ガラス基板上での金NIの大規模な高スループット生産のために、ディウェッティング、すなわち、金層を堆積した後に、アニーリングによって、NIを作成することが好ましい。
【0024】
次に、ガラス基板上にそれぞれがガラスの軸と金の笠とからなる(
図8)ナノマッシュルーム(NM)を作成するように、ガラス基板上の金NIを誘導結合反応性イオンエッチング(ICPーRIE)にかける。
【0025】
図7は、本発明の実施形態に係る高スループットNM構造を達成するためのプロセスを概略的に示す図である。
図7に示すように、まずガラス基板を用意し、ガラス基板上に金層を堆積する。金が堆積された基板のアニーリングを実施し、ディウェッティングにより基板上にそれぞれ金からなる複数のナノアイランド(NI)を作成する。次に、得られた基板をRIEにかけて、複数のより微細でより小さいナノマッシュルーム(NM)を作成する。
【0026】
実施例
金NIを作成する際にディウェッティングを使用する場合、例えば、Au層の厚み、アニーリング温度およびアニーリングの時間を変えることによって、異なる製造条件下で金ナノアイランドを作成することが可能である(非特許文献5~7)。本発明の実施例にとって好ましいプロセスパラメータを、下記の表1に示す。
【0027】
【0028】
実施例は以下のステップを使用して製造した。
ステップ1:電子ビーム蒸着法を使用してガラス/SiO2基板上に4nmの金(Au)層を堆積する。(注:Auは、金属の熱蒸着、化学気相成長法、又はマグネトロンスパッタリング法などの標準的な金属堆積法で堆積できる。)
ステップ2:高温炉において560℃で3時間、ガラス上のAuをアニールし、Au NIを形成する。
ステップ3:SF6ガスを使用して、5℃、10W/150Wの電力で5分間、Auの反応性イオンエッチングを行う。その結果、金ナノアイランド(Au NI)はナノマッシュルーム(Au NM)に転換した。
【0029】
図8は、本発明の実施例である上記条件で作製したNM構造の寸法及び間隔を模式的に示す図である。各NMは、Auの笠とSiO
2の軸とからなる。以下の表2は、本実施例において計測された寸法をより詳細に示している。
【0030】
【0031】
図8及び上記の表に示すように、各マッシュルーム構造は、直径10~30nmのAuの笠を有し、45~60nmの高さを有し、そのうち、Auの高さは15~20nmであり、SiO
2の高さは30~40nmである。マッシュルーム構造間の間隔は平均10nmであり、これは注目しているNI構造よりもはるかに細かい。既存の材料と比較して、この実施例のNMの新たな微細なナノ構造は、以下に記載されるように、優れたプラズモン特性を有する。
【0032】
実施形態/実施例のLSPRセンシング性能の評価
図9aは、NIおよびNMについて、波長の関数としての吸光度プロットである。NI(LSPRピーク波長540nm)構造およびNM(LSPRピーク波長533nm)構造の典型的な共鳴特性を示している。一般に、ナノ構造のアスペクト比(幅/高さ)を小さくすると、LSPRに起因するピーク波長(すなわち、LSPRピーク波長)の青方偏移が生じる。したがって、NM構造における平均7nmの青方偏移は、NI(5~70nm)と比較してより小さいサイズのNM(10~30nm)に起因する。
【0033】
図9bは、NM構造およびNI構造近傍の局所的な屈折率の変化に伴うNM構造およびNI構造それぞれのLSPRピーク波長の変化を示す。水、アセトン、イソプロパノールおよびエタノールを用いてセンサの屈折率の特性を明らかにした。線の傾きはそれぞれのナノ構造の感度を提供し、本発明の実施例に係るNMはNI(21.1nm/RIU)の4倍の感度(80.2nm/RIU)であることが観察される。NMの準均一分布に起因する周期性の増加は、NM構造の感度の向上に主に寄与する。さらに、NMの先端はNIよりはるかに小さい。より小さなナノ構造の特徴は、局所的な屈折率の変化に対する感度を高め、LSPRのような表面増強現象を増幅する、電磁場内のホットスポットを生じさせる。
【0034】
NM構造の用途及び実施例
本発明のNM構造の様々な用途が期待される。NM構造の上記の基本的なLSPR特性をさらに確認し、その用途をいくつかの方法で以下に実証する。
【0035】
細胞増殖の検出
図10は、本発明の実施例に係る、NM基板上で行われた細胞増殖(NIH/3T3線維芽細胞)実験/実証を概略的に実証する図である。
【0036】
それぞれ上記のように製造されたNM基板を、35mm(9cm2)のコーニング細胞培養皿に載置した。NMを、イソプロパノール、70%エタノールを使用して滅菌し、そして最後に細胞培養バイオセーフティキャビネット内でUV光下で乾燥させた。PDL溶液は、PBS中0.003%で、NM基板当たり容量500lを作製した。デバイスをPDL溶液でコーティングし、5%のCO2を含む375℃の加湿環境である細胞培養インキュベータ内に30分間載置した。次に、皿を、10%子牛血清を添加した1mLのDulbeccos Modified Eagle Medium high glucose(DMEM)で事前に満たした。ここで、我々は我々の細胞研究に関してNIH/3T3線維芽細胞を使用する。次に、NIH/3T3線維芽細胞を低密度(1皿当たり約0.2×106細胞)で皿に播種した。次に、細胞培養液を添加して、最終的な体積を2mLとした。LSPRの読み取りをすぐに行った。次に、細胞を細胞培養インキュベータ内で指示された時間増殖させた。実験期間中、新しい細胞培養培液を皿に加えたり、皿から取り除いたりはしなかった。細胞数実験のために、LSPR測定を行った後、Au NMデバイスを1×PBSを使用して2回洗浄した。この後、1mLのトリプシンを添加して細胞を剥がした。血球計数器を用いて細胞数を数えた。
【0037】
図11は、線維芽細胞の増殖時のNMプラズモンセンサのLSPR応答を示す図である。
図11aは、実験の最初の24時間でのNM中のLSPRの波長の変化を示す図である。細胞が分裂し始めると、NMのLSPRピークは、15時間の間、UV可視スペクトルの左(青方偏移)側に向かって直線的にシフトする。最初の15時間の間、2~3nmの変化が観察され、その後LSPRシグナルは次の6~8時間安定する。これらのシフトは、1)増殖開始時の細胞数の増加、および2)細胞によって分泌されるタンパク質および他の増殖因子の吸着に起因する。細胞増殖の初期変化によるNMのマスキングが、15時間後のLSPR波長応答の安定化に主に寄与している。
図11bは、LSPRの吸収強度を示す図である。NM表面は、細胞増殖および分泌によって継続的にマスクされており、これにより、NMに達する入射光の強度が減少するにつれて、NMの吸収強度が低下する。
図11cにおいて、波長変化を屈折率の変化に置き換えた。
図11cに示すように、最初の24時間の間、細胞増殖時に、25~30mRIU(milli refractive index unit)の最大変化が観察される。
図11d~
図11fは、7日間にわたるLSPRの波長応答、吸収強度応答、および屈折率変化応答をそれぞれ示す図である。興味深いことに、1日後のLSPRの波長ピークはUV-visスペクトルの右側に向かってシフトし(赤方偏移)、これにより、
図11dに示すように、青方偏移の変化のグラフにおける波長変化応答が低下する。波長応答の変化が観察されている一方、
図11eに示すように、LSPR吸収の強度の変化は0.1単位未満である。周波数は波長に反比例するので、LSPRピークシフトの変化の全体的な観察は、LSPRの周波数変化に関して単純化することができる。細胞増殖の初期段階(15時間未満)の間、NM上の細胞分泌および細胞数の増加は、共鳴周波数でのNMの消光係数を上昇させる。これにより、NM構造の表面上の誘電場の形で電磁エネルギの閉じ込めおよび集中が生じる。これ以降、LSPRの周波数の増加、すなわち、波長の減少(青方偏移)がLSPRピークにおいて観察される。しかしながら、7日間にわたってセル数が増え続けると、電荷局在化効果(セル数の増加に起因するNM上の表面電荷の蓄積)によってLSPRの周波数が低下し、波長が増加する(赤方偏移)。
図11gは、増殖実験中の7日間にわたるNM上の細胞の画像を示す。この図は、本発明の実施例によって適切に検出された細胞増殖を実際に示している。
【0038】
表面上の細胞数についてLSPRの波長応答もまた定量した。
図11hに示すように、LSPR応答は細胞数の増加とともに直線的に変化することが観察された。より少ない細胞では、青方偏移が観察される一方、細胞数の増加は、LSPRピークの赤方偏移の観察に対応する。したがって、実用的なLSPR細胞増殖バイオセンサを、さまざまな数の細胞に対する様々な波長を用いて較正することが可能である。
【0039】
NM LSPRチップ
本発明の実施形態のナノマッシュルーム(NM)を任意の一般的なバイオアッセイ用途に使用するためには、標準的な96ウェルELISAプレート等のナノ構造用のアッセイプレートを作ることが重要である。上記の2段階(ディウェッティングおよびICP-RIE)NM製造プロセスにより、100万個を超えるナノマッシュルーム構造からなるプラズモニックスポットを作ることが可能になる。各スポットは、標準的なELSIAプレートの個々のウェルのようなものである。それを作成するために、ステンシル(ハードマスク)を使用して、予め定義されたアレイフォーマットからナノマッシュルームのスポットを作成してもよい。まず、
図13に示すように、金の蒸発中に、
図12に示すハードマスクをガラス基板上に載置する。次に、ガラス基板上に形成されたAu層に対して、ホットオーブン炉内で560℃で3時間アニーリングを行い、Au NIを形成する。続いて、NIの反応性イオンエッチング(RIE)を、SF
6ガスを用いて、5℃、10W/150Wの電力で5分間行う。その結果、金ナノアイランド(Au NI)がナノマッシュルーム(Au NM)に変わる。
【0040】
図14は、この日製造された、開発されたスポッテッドプラズモンチップを示す図である。各スポットは10
6~10
7個を超えるナノマッシュルームを有し、各スポットは単一のアッセイに使用することができる。スポット直径は3mmであったが、ユーザの必要に応じてスポットのサイズを変えることが可能である。これは、ハードマスクのサイズを調整することによって実行できる。また、マスクは再利用可能である。
【0041】
NMプラズモンチップのパッケージ化:ナノマッシュルーム上のマイクロチャネル
ナノマッシュルームチップをパッケージ化することで、開発したスポット上での正確な液体ハンドリングが可能になる。本発明のNM構造をマイクロチャネルと一体化した。
図15は、本発明の一実施例に係る、製造されたマイクロチャネルを有するパッケージ化されたナノマッシュルームチップを示す写真である。チップをパッケージ化する方法は以下のステップを含む。
【0042】
1)標準的なソフトリソグラフィプロトコルを用いてシリコンマスタを作製する。マイクロチャネルはAutoCADを使用して設計されている。スライドガラスを、1050RPMで30秒間、負のフォトレジスト(mr-DWL、マイクロレジストテクノロジー社)でスピンコートして、厚さ100μmのマスタを作製する。
2)マスタを50℃で5分間、そして80℃で30分間ホットプレート上でプリベークする。
3)マスクレスリソグラフィシステム(Dlight DL-1000、ナノシステムソリューションズ社)を用いて500mJ/cm2の強度でLED光の下でマスタを露光する。次に、マスタをホットプレート上で50℃で5分間、そして80℃で30分間ソフトベークする。
4)マスタをフォトレジスト現像液で5分間現像し、続いてホットプレート上で50℃で5分間、そして80℃で30分間ハードベークする。
【0043】
<マイクロチャネル作製>
1)10:1の混合比を有するPDMSのベース剤および硬化剤(Sylgard 184、ダウコーニング社)をシリコンマスタ上に注ぎ、真空デシケータ中で脱気し、そしてオーブン内で70℃で6時間硬化させた。
2)PDMSデバイスをマスタから切り取り、尖った、先端が平らな針で打ち抜き、入口と出口を作る。
3)PDMSデバイスと金ナノアイランドを有するスライドガラスとを40秒間酸素プラズマで処理し、続いてそれらを手でしっかりと接合する。
4)接合強度を高めるために、デバイスをホットプレート上に120℃で20分間載置する。
【0044】
上述したように、本開示は、幅25mm、長さ75mmの大きさのガラス基板上に金属の笠を有するナノマッシュルーム構造を作る方法を提供する。このプロセスは、高スループットのNM生産プロセスである。得られた金属の笠を有するナノマッシュルーム構造は、高感度で生体適合性のLSPRセンサを作成する上で新しく、非常に効果的である。高められた感度および高められた生体適合性は生細胞の生存に特に有用である。これは、例えば細胞生物学における多数の未知の用途のためのLSPRセンシングを開発する新たな機会を生み出す。
【0045】
複数のNMスポットを有する多重化LSPRチップ、マイクロフルイディクスと統合されたNMチップを含む、新規なNM構造の様々な用途が開示される。以下の表3は、既存の技術に対する本発明の様々な利点を要約している。
【0046】
【0047】
発明の実施形態の追加の詳細
上記の開示の特定のさらなる詳細を以下に提供する。以下の説明のいくつかは、上記の説明と重複する。
【0048】
上記の反応性イオンエッチング(RIE)は、5℃の温度で、45sccmのSF6流量、10Wのイオンステアリングパワーおよび150Wの電力強度で、NMを適切に形成するために実行され得る。
【0049】
準ランダムなアイランドから生じる準周期構造の驚くべき結果:上述したように、Auの準ランダムなアイランドからAuナノマッシュルーム準周期構造への遷移は、適切な動作条件でSF6プラズマを使用することによって促進される。電気陰性のSF6プラズマは、SiO2に対する周知のエッチャントである。しかしながら、SiO2のエッチング中に、プラズマ環境においてAuもエッチングされるが、はるかに遅いエッチング速度である。1~2オングストローム/分未満のAuエッチングと比較して、SiO2は10nm/分(層厚)の速度でエッチングされる(すなわち、SiO2は、Auよりも少なくとも100倍速くエッチングされる)(非特許文献8)。ナノアイランド(NI)のサイズおよびギャップサイズが100nm未満である場合、SiO2表面上のAuの再分布が体系的実験から観察される。この結果は、NM形成に必要とされるNIの好ましいそしておそらく臨界的なサイズおよびギャップサイズがいずれも約100nmであることを示している。
【0050】
上記のNIおよびNMのサイズおよび間隔寸法の分布および平均を決定する際、すなわち、これらのナノ構造の表面分布分析を実行する際に、ImageJソフトウェアを使用してFFT(高速フーリエ変換)プロファイルプロット分析を使用した。
【0051】
ナノアイランド(NI)を作成するためのプロセスパラメータの臨界:上述したように、例えば初期Au厚み、アニーリング温度およびアニーリング時間等の製造条件を変えることによって、異なるサイズおよび間隔を有するAu NIを作成することが可能である。これは文献に報告されている(非特許文献9~11)。本発明者らによって行われた広範囲な研究に基づけば、平均サイズおよび間隔が100nm未満のAu NIが、その後の適切なプラズマエッチング工程を伴うNM形成にとって好ましい。所望のNIを作成するための好ましいプロセスパラメータの例は上述の通りである。すなわち、Auの厚みが4nm、アニーリング温度が560℃、及びアニーリング時間が3時間である。
【0052】
<プラズマ支援ナノマッシュルーム作製の評価>
ナノマッシュルームのプラズマ支援作製をさらに調査するために、電子ビーム蒸着を用いて、SiO
2表面上にAuのナノ層を堆積させ、560℃で5時間アニーリングしてAu NIを形成する。その後のSF
6プラズマ環境でのRIEの間、これらのAu NIはSiO
2基板のナノマスクとして機能する。SF
6はAuよりもはるかに速くSiO
2をエッチングし(非特許文献12)、各NIの周囲のSiO
2が除去されるにつれてNMの形成を可能にする。SF
6エッチングは、SiO
2及びAuのサブナノメートル粒子を表面から取り出す。したがって、これらの粒子は、ナノアセンブリにおいてビルディングユニット(BU)として機能できる。このアセンブリは、SiO
2のBUが基板から取り出される一方、Au BUがその代わりに表面上に再分布して新しいNMを形成することによって促進される。Au BU再分布は、1)プラズマ環境内でのSiO
2基板の帯電(非特許文献13)、および2)プラズマ束とNIマスクの空間分布との相互作用に起因する。フッ素のプラズマは本来は電気陰性度が高く、SiO
2の表面上に正電荷を誘導する。SF
6プラズマ環境における表面電荷とフッ素イオンとの間の相互作用により、Au BUは基板表面上に押し戻される。これらの新たに堆積されたBUは蓄積して新しいより小さなNIを形成し、そしてエッチングが継続する。したがって、
図16に示すように、NMの最終的な分布は、元のNIの分布よりも密集したものになる。
【0053】
図16は、ナノマッシュルーム状構造(NM)の作製メカニズムを示す図である。(a)は、ナノアイランド(NI)からのビルディングユニット(BU)の生成およびそれに続くBUのより密集したNMへのアセンブリを概略的に示し、(b)は、NIからのNMのプラズマ指向性アセンブリにとって好ましいサイズおよびピッチ要件を示し、(c)~(e)は、NIに対するプラズマ効果の走査型電子顕微鏡法(SEM)画像であり、(c)は、直径200nm、ピッチ200
nmであり、(d)は直径200nm、ピッチ100
nmであり、(e)は、サイズ100nm
、ピッチ100
nmである。
【0054】
NIマスクの空間分布もプラズマ束と干渉し、エッチング速度を変化させる。金属のプラズマ指向性再組織化に対するNIサイズおよび間隔(ピッチ)の役割を評価するために、均一なサイズのNIグリッドの3つのセット(第1セット:直径200nm、ピッチ200
nm、
図16(c)、第2セット:直径200nm、ピッチ100
nm、
図16(d)、第3セット:サイズ100nm、ピッチ100
nm、
図16(e))を電子ビームリソグラフィ(EBL)を使用して作製した。
【0055】
NIのサイズが減少するにつれて粒子の再堆積および再組織化に起因して、エッチング中に無秩序性が増大することが観察される。
図16(e)における第3セットから、Au NIは再配向を開始し(遷移段階)、作製プロセスが完了すると、その前駆体であるNIと比較して、NMの分布が乱されることを観察できる。しかしながら、ディウェッティングを用いて作製した不均一に分布したNIを考慮すると、上述のように、NI間のギャップを新しい構造が埋めるので、NMの形成時に分布は最終的に準均一になる。したがって、NI上のサイズおよび間隔が減少するにつれて、エッチングにより誘導された無秩序性が増加する。これらの観察に基づいて、
図16(b)に示すように、Auの特徴サイズおよびそれらの間のピッチのいずれもが100nm未満である場合にのみ、Auの再分布および再組織化がプラズマによって駆動されることが好ましい。
【0056】
<金属のプラズマ支援再組織化>
金属の再組織化がプラズマによって駆動されたことを確認するために、2つの実験を行った。第1の実験では、
図17aに示すように、プラズマの勾配を作り出すためのゴムのシールドを開発した。シールドはプラズマ処理中に基板の表面上に反応性イオンの勾配を発生させる。シールドの入り口でイオンの濃度が最も高く、シールドの端で濃度が最も低い。反応性イオンのこの勾配はプラズマの勾配を生み出し、それによりNIの表面をエッチング速度の勾配に曝露する。シールドはガラスからのSiO
2のエッチング速度も遅くし、その結果、NMは目に見えないことが観察された。このエッチング速度の低下は、主に、反応性イオンがシールドされた領域に入った後のプラズマのエネルギ損失に起因する。興味深いことに、プラズマシールドの異なる領域下で観察されたAuの分布の差から明らかなように、我々はプラズマの再組織化特性が失われていなかったことに気づく。したがって、これらの勾配により、NIからのNMの形成に寄与するプラズマの再組織化特性のいくつかを捉えることが可能になる。
図17b~
図17gは、反応性イオンの最低濃度から最高濃度の順に、5分間プラズマに曝露されたシールド下のNI基板の異なる領域を示す図である。
図17e及び
図17fに示すように、より高濃度の反応性イオンに曝露された領域においてAuの再分布が観察された。驚くべきことに、これらの領域におけるAuの再分布は表面上にその均一な分布をもたらした。
図17eおよび
図17fにおけるAu構造は、
図17b~
図17dに見られる不均一なNI分布と比較して、明確な形状を有する。
図17gは、シールドの入り口におけるNIの領域を示す。この領域では、シールドがなく、その結果としてSiO
2のエッチング速度が減少しないため、プラズマ曝露の期間に、基板が過剰にエッチングされる。このようなオーバーエッチングは、
図17fに示す領域がより長くエッチングされると、Auのいくつかの構造が完全に取り出され、再堆積して粗く分布したより大きな構造を形成することを暗示している。さらに、所定の領域内のAuの質量は、新しい構造をアセンブリしている間保存される。
図17hは、
図17b~
図17gの画像におけるAuの総面積をプロットしたものである。各領域におけるわずかな違いは、NIの不均一分布に起因しており、これはプラズマ曝露前に各表面領域に存在するAuの量を変化させる。これらの結果は、上述したように、BU生成およびセルフアセンブリへの移動のプロセスをサポートする。
【0057】
第2の実験は、プラズマ再組織化中の質量保存をより詳細に観察するために行われた。この実験では、
図17iに示すように、電子ビームリソグラフィ(EBL)を使用して、サイズ100nmおよびピッチ100nmの規則正しいAu NIをシリコン(Si)基板上に作製した。Si上のAuの付着力は弱く、プラズマへの曝露時、Au NIが基板から剥離して空のSi表面を生成すると予想される。NIはその初期の堆積点から剥離する一方、
図17j~
図17mに示すように、堆積の全領域に閉じ込められたままであり、Au NI上のプラズマの強い再組織化特性をサポートする。
【0058】
さらに、エッチングが5分を超えて長引いた場合、NIは依然としてそれらが最初に堆積された全領域内に閉じ込められたままである。除去の代わりに、NIのプラズマ再組織化は、タンパク質構造に似ている短いAu NI鎖のナノアセンブリをもたらす。
図17iから分かるように、長時間のプラズマ曝露は、NIをさらに硬いタンパク質様鎖にさらに押し込む。これらの鎖の継続的な形成は、プラズマが金属の再組織化を支援するという我々の主張の実験的証拠をさらに確立するものである。プラズマ再組織化のこれらの特性は、前駆体であるNIと比較してNMの準均一分布に主によるものである。
【0059】
<マイクロコンタクトプリンティング及びバイオアッセイ>
図18aは、NI(540nm)およびNM(533nm)構造の典型的な共振特性をそれぞれ示す図である。一般に、ナノ構造のアスペクト比(幅/高さ)を小さくすると、LSPRの波長の青方偏移が生じる(非特許文献14,15)。したがって、NM構造における平均7nmの青方偏移は、NIと比較してより小さいサイズのNMに起因する。
図18aの挿入図は、NM構造およびNI構造近傍の局所的な屈折率の変化に伴うNM構造およびNI構造の波長の変化を示す。センサの屈折率は、水、アセトン、イソプロパノールおよびエタノールを用いて特性を明らかにした。線の傾きはナノ構造の感度を提供し、NMはNI(21.1nm/RIU)の4倍の感度(80.2nm/RIU)であることが観察される。NMの準均一分布に起因する周期性の増加は、NM構造の感度の向上に主に寄与している(非特許文献16)。さらに、NMの先端はNIよりもはるかに鋭い。鋭いナノ構造の特徴は、局所的な屈折率の変化に対する感度を高め、LSPRのような表面増強現象を増幅する、電磁場内のホットスポットを生じさせる(非特許文献17~19)。
【0060】
結合試験にNMを使用することを検証するために、我々は抗体の相補対の選択的結合を検出した。抗体は、マイクロコンタクトプリンティング(CP)を用いてナノ構造(NMおよびNI)上に固定化した。続いて、相補的抗体対を特異的に付着させた。
図18bおよび
図18cは、NM(
図18b)およびNI(
図18c)への抗体のプリントを示す。NMへの抗体のプリントはNIへの抗体のプリントよりも均一かつ均質であることが観察され、NM分布の表面はNIのそれと比較して平坦かつ均質であることを実証している。さらに、複雑な形状のタンパク質で表面をパターニングすることは、細胞のミクロ/ナノ環境を作成するのに有用である(非特許文献20)。
図18d及び
図18eは、NIの粗い表面モルフォロジに起因する不完全なプリントと比較して(
図18e)、NM上にうまくプリントされたタンパク質の複雑なパターン(OISTロゴ)(
図18d)を示している。これらの結果は、生体分子を有するナノスケール表面のセンシング及びパターニングについて、その前駆体であるNIよりも優れているナノ構造としてのプラズマ組立NMの有用性を強調している。
図18fは、10ag/ml~1000ng/mlの相補的抗体の結合を伴う、濃度依存性のLSPR用量反応を示す。
図18g及び
図18hにおいて、1)NM上でパターニングされたその相補的対への抗体の特異的結合、及び2)(パターニングされた抗体を有さない)ブランクのNM表面上の相補的抗体の吸着についてのLSPR応答(波長の変化、
図18gおよび吸光度強度、
図18h)をプロットしている。二次抗体の濃度を変化させると、標準的なバイオアッセイ応答(S字型)が、LSPRシグナルの波長および吸光度強度の両方において観察される。パターニングされたNM表面上に10ag/mlの相補的抗体を付着させると、平均5nmのLSPR赤方偏移及び0.1単位未満の吸光度強度の変化が観察される。LSPR応答は、最大で100fm/mlの濃度までの抗体のさらなる添加の際に2nm未満および0.1Uの変化を示す。100fm/mlを超えると、100fm/mlから100pm/mlまでの範囲の抗体濃度を添加すると、LSPRシグナルにおける線形応答が観察され、その後、LSPRシグナルは飽和する。したがって、我々は、100fm/ml~100pm/mlをこの特定の実施形態/実施例のNM LSPRセンサのダイナミックレンジとみなす。吸収された抗体に起因するLSPRシグナル変化は、3nm未満および0.1UのLSPR応答の変化を示した。これらの変化は、NM表面上の高濃度での抗体の非特異的付着に起因する。我々はさらに、パターニングされたNM上の抗体付着の検出限界(非特許文献21)を計算し、それは65zMであることがわかった。これらの結果は、NMが一般的なバイオアッセイ用途およびパターニングされた表面上の生体分子結合事象の検出のための高感度なプラットフォームとして使用できることを確認している。
【0061】
<上記の製造及び評価実験における詳細事項>
上記の製造および評価実験の詳細事項を以下に提供するが、いくつかは上記に提供された情報と重複する場合がある。
【0062】
<ナノマッシュルーム作製>
クラス1000のクリーンルーム内でKawasaki Science KE604TT1-TKF1電子ビーム蒸着装置を使用して、SiO2基板およびSi基板の両方にAuのナノ層を堆積させた。堆積前に基板をアセトンおよびイソプロパノールで洗浄した。4nmのAu膜を0.3nm/秒の速度で堆積した。次に、試料を560℃で3時間アニールし、基板の表面全体にAu NIの分布を生成した。次に、オックスフォードインスツルメンツ社のPlasmalab 100 Inductively Coupled Plasma Chemical Vapor Deposition(ICP CVD)装置を使用して、試料に反応性イオンエッチング(RIE)を行い、NMを生成した。SF6ガスをRIEチャンバ内に導入し、内圧10mtorr、流速45sccm(Standard Cubic Centimeters per Minute)に維持した。RF電力コイルおよびRFバイアスコイルをそれぞれ150Wおよび10Wに固定し、プラズマチャンバ内の温度を5℃に維持した。
【0063】
<材料特性評価>
試料をSEMを用いて画像化した。ダイヤモンドチップガラスカッターを使用して元の試料から基板の一部を小さく切り取り、カーボンテープを使用してSEMマウントに取り付けた。5eV~30eVの間で動作するFEI Quanta 250 FEG SEMを使用して測定を行い、少なくとも175kの倍率で高解像度画像を得た。
【0064】
<再組織化に対するプラズマ効果の測定>
プラズマ処理中に基材表面にわたって反応性イオンの勾配を生じさせるためのシールドを、Objet 500 3Dプリンタ(ストラタシス社)を用いてプリントした。プラズマシールドを、特許ポリマー材料(ストラタシス社)を使用してプリントした。これらのプラズマシールドは、高さHEIGHTmm、幅10mm、長さ15mmの内部寸法を有していた。反応性イオンがシールドの正面入口からのみ入ることができるようにシールドの端を閉じ、それにより基板を横切る反応性イオン束の一方向勾配をもたらした。シールドへの開口がスライドのほぼ中央になるようにシールドをNI基板の上部に置いた。この配置により、NI表面の遮蔽されていない部分を比較対照試料として使用できた。プラズマチャンバの装填および排気中に移動しないように、カーボンテープを使用してシールドを適切な位置で支えた。プラズマ処理後、シールドを取り除き、表面を上述のようにSEMにより分析した。
【0065】
<電子ビームリソグラフィ及び再組織化に対するサイズ効果の特性評価>
電子ビームリソグラフィ(EBL)を用いて一連の均一サイズのNIアレイを作製した。EBLを、天然酸化物の薄い(10nm)層を有するSiウェハ、及び、よりロバストな、SiO2の500nm層でコーティングされたウェハに対して実行した。試料を、500rpmで10秒間、その後、6000rpmで50秒間、正の電子ビームレジストAR-P 6200でスピンコートした。その後、150℃で3分間ソフトベークした。EBLは、0.8~1.55秒のピクセル露光シリーズにおいて16回複製されたアレイを用いて、150の視野サイズで10pAで行われた。IPA中で洗浄する前に、酢酸アミル中で30秒間EBLパターンの現像を行った。現像の大規模な解像度は、オリンパスBX51光学顕微鏡で確認した。
【0066】
EBLの後、電子ビーム蒸着を用いて10nmのチタン(Ti)層を堆積し、続いて30nmのAu層を堆積した。Tiを添加して、表面粗さを増加させ、SiO2表面へのAuのより強い付着を確実にした。両方の材料を0.3nm/秒の速度で堆積した。
【0067】
蒸着後、試料をホットプレート上で50℃で20分間EBRPGに浸漬することによってリフトオフを行った。次に、ピペットを使用して、試料をEBRPGから取り除くことなく過剰の金を吹き飛ばした。このプロセスによって、EBLパターンの配置にのみ構造が残った。次に、これらの構造を上記のようにSEMで画像化した。これらの試料に対してRIEを実施して、上記のようにNIをNMに変化させた。
【0068】
<LSPR計装及び測定>
LSPR応答を研究するために使用される機器は、照明および試料からの光の収集に必要な個別の光学部品を組み合わせることによって実験室で組み立てた。装置は私達が以前に出版した研究30,31で使用された装置と同一である。アセンブリには、反射プローブ(R400-7UV-VIS)、ハロゲン光源(LS-1-LL)、および分光器(USB4000-UV-VIS-ES)が含まれる。分光器からの信号を取得する前に、システムを暗スペクトルモードおよび明スペクトルモードについて較正した。次に、OceanViewソフトウェア(オーシャンオプティクス社製のクロスプラットフォーム分光操作ソフトウェア)によって、ナノ粒子によって吸収された光の波長依存性を観察することによって、LSPRシグナルを吸収モードで記録した。
【0069】
<細胞増殖検出>
NM基板を35mm(9cm2)のコーニング細胞培養皿に配置した。NMを、イソプロパノール、70%エタノールを使用して滅菌し、そして最後に細胞培養バイオセーフティキャビネット内でUV光下で乾燥させた。PDL溶液は、PBS中0.003%で、NM基板当たり500lの体積で作製した。デバイスをPDL溶液でコーティングし、37℃で5%のCO2を有する加湿環境である細胞培養インキュベータ内に30分間載置した。次に、皿に、10%子牛血清を添加した1mLのDulbeccos Modified Eagle Medium high glucose(DMEM)を予め充填した。次に、NIH/3T3線維芽細胞を低密度(1皿当たり約0.2×106細胞)で皿に播種した。次に、細胞培養液を添加して最終的な体積を2mLにした。LSPRの読み取りを即座に行った。次に、細胞を細胞培養インキュベータ内で指示された時間増殖させた。実験期間中、新しい細胞培養液を皿に加えたり、皿から取り除いたりはしなかった。細胞数実験のために、LSPR測定を行った後、Au NMデバイスを1×PBSで2回洗浄した。この後、1mLのトリプシンを添加して細胞を剥がした。血球計数器を用いて細胞数を数えた。
【0070】
<マイクロコンタクトプリンティング及びバイオアッセイ>
(i)50mの間隔を有する50m×50mの正方形の配列、(ii)大学のロゴ(厚さ50mm、総直径1mm)を含むスタンプデザインを、AutoCAD(オートデスク社、米国)を用いて設計した。スタンプのマスタを作製するために、シリコンウェハ(直径4インチ、EM Corp.Ltd.、日本)を50mのmr-DWL 40フォトレジスト(マイクロレジストテクノロジー社、ドイツ)層でコーティングし、外観をDL1000マスクレスライタ(ナノシステムソリューションズ社、日本)を使用してフォトリソグラフィによってパターニングし、mr-Dev 600現像液(マイクロレジストテクノロジー社、ドイツ)を使用して現像した。完全なベーキングおよび洗浄の後、デシケータ内で気相でのトリクロロ(1H,1H,2H 2H-ペルフルオロオクチル)シラン(シグマアルドリッチ社、日本)に曝露することによって、ウェハを付着防止層で被覆した。Siウェハ上に存在するパターンの逆コピーを有するPDMSスタンプは、ウェハ上に10:1ポリ-(ジメチルシロキサン)(PDMS)(ダウコーニング社、日本)を流し込み、気泡を除去するために脱気した後60℃で24時間プレポリマーを硬化させることによって得た。
【0071】
マイクロコンタクトプリンティングプロセスの前に、NI基板およびNM基板をエタノールで洗浄し、よく乾燥させた。プラズマ活性化(HarrickPlasma社、米国)カバースリップ下で5-7分間、パターニングしたスタンプに、1×PBS中10g/mlの濃度で10LのAlexaFluor546 conjugated goat anti-chicken Immunoglobulins(IgGs)(アブカム社、日本)を塗布した。N2ガスの強いパルスで急速乾燥させる前に、スタンプを1×PBS、そのあとにミリQ水(ミリポア社、日本)でそれぞれ5秒間すすいだ。次に、インクを塗ったPDMSスタンプを予め洗浄した基板と5秒間接触させた。続いて、蛍光標識されたIgGsのマイクロパターンを、Ti-EEclipse倒立蛍光顕微鏡(ニコン社、日本)で、全サンプルについて10秒間の固定露光時間で画像化した。印刷された一次抗体の存在を確認した後、パターニングされた抗体を用量反応バイオアッセイ研究のために様々な濃度の二次抗体に曝露した。
【0072】
ポータブルLSPRデバイス
本発明の追加の実施形態として、ポータブルLSPRデバイスを以下に説明する。
図19は、製造されたLSPRセンサデバイスの主要構成要素を示す図である。
図19に示すように、デバイスは、A)LEDベースの光源パネル、B)本発明のLSPRチップ、C)流体ステージ、D)分光計パネル、およびE)読み出し部品の5つの部品を備える。これらの部品はまとめられ、ナノマッシュルーム(NM)LSPRチップからのナノプラズモン共鳴を測定するデバイスを形成する。開示されたデバイス設計は、LSPRチップの高感度のために、本発明のナノマッシュルームLSPRチップと組み合わされるときに特に有用であるが、デバイスは類似の寸法を有するより一般的なLSPRチップを使用してもよい。
【0073】
本実施形態の光源は、白色発光ダイオードを含む。LED用の回路の回路図を
図20に示す。
図20に示すように、回路は、1.LED、2.電圧ブースタ、3.電池パック、4.太陽電池、5.逆バイアスが低いダイオード、及び6.スイッチの6つの構成要素から構成されている。このようにして、太陽電池および/または電池パックからの電力を使用して、LEDが発光するようにLEDに電圧を加えることができる。
【0074】
図21~
図23は、側面図、上面図および底面図、ならびに正面図および背面図を含む、本実施形態に含まれる光源パネルの様々な図である。これらの図に示すように、上部にはソーラーパネルが取り付けられており、LEDが底部に下向きに設けられている。反射器がLEDを囲んで設けられている。LEDに隣接してPCBが設けられる。パネル背面にスイッチが設けられている。
図24は光源パネル全体の写真である。PCBは、光の強度を制御するための可変抵抗器等の様々な追加の電子部品を備え、タッチスクリーンも光の強度を制御するために設けられている。
【0075】
このポータブルLSPRデバイスに内蔵されるLSPRチップとして、上述のNMチップを用いた。
【0076】
この実施形態では、LSPRチップのスペクトル応答を捕捉するために、浜松製のC12666MA分光計およびC12880MA分光計を使用した。これらの分光計はLSPR応答を取得するためにArduino基板を使用して制御される。様々な構成要素内のロジック、エレクトロニクス、および接続を説明するブロック図が
図25に記載されている。
【0077】
分光計のさまざまな部品を以下に記載する。
1)電力供給装置:1つの電源バンクが、マイクロコントローラ、ディスプレイ、およびマイクロ分光計からなる完全な分光計モジュールに電力を供給するのに必要なエネルギを供給する。分光器には5Vの電力供給が必要である。この5Vの電位は、ソーラーパネルまたは直接電力供給のいずれかを電力源とする充電式電池によって供給される。
2)マイクロコントローラ:これは分光計のメインコントロールユニットである。マイクロコントローラによって実行される重要な3つのタスクがある。第1に、分光計が光に曝露される期間を制御するために、分光計へのクロック信号(分光計への入力)を提供する。この期間は分光計の積分時間としても知られている。第2に、マイクロコントローラは分光計と通信し、積分時間中に分光計によって取得された信号(分光計の出力)を受信する。最後に、マイクロコントローラは、取得したスペクトルを表示するためにディスプレイユニットまたはグラフィックユーザインタフェースと通信する。
【0078】
本実施形態のポータブルLSPRデバイスの流体ステージは以下のように構成されている。デバイスは、流体がプラズモンチップを通過することを可能にする流体チャネルを有する。流体チャネルはアクリル材料からなる。それは透明であり、光がLSPRチップ上のナノ構造に到達することを可能にする。
図26a~
図26cは、流体ステージの設計図を示す図である。
図26aは、流体チャネルの鳥瞰図であり、
図26bは、LSPRシステムに統合された流体チャネルの側面図およびその拡大図を示し、
図26cは、流体チャネルの上面図および断面図を示す。矢印はチャネル内の流体の方向を示す。
【0079】
流体チャネルは、流体漏れを回避するためにプラズモンチップとの気密接続を形成するOリングからなる。例えば、チャネルのサイズ(長さ5mm)および形状(円形、直径1.2mm)は、10ミクロンから10mmの範囲で装飾されることができる(
図26参照)。取り外し可能なキーを使用してホルダ内に取り付けることができるドーナツ型加圧器を使用して、流体チャネルをプラズモンチップと接触して保持した。
図27(a)は、光源パネルに取り付けられたステージホルダを概略的に示す図であり、
図27(b)はドーナツ型加圧器を概略的に示す図であり、
図27(c)は、加圧器をステージに取り付けるための取り外し可能なキーを概略的に示している。すべての主要な機械的構造は、3Dプリンタを使用して光路を一直線にするために同心円状の穴で設計されている。
【0080】
図28は、実施形態に係る、分光計からの信号の読み出しおよび表示に関係するすべてのステップのフローチャートを示す。読み出しの目的タスクは3つある。最初のタスクは、正確な波長振動パラメータを取得するためのマイクロコントローラとのシリアル通信を含むソフトウェアの初期化である。初期化後、ソフトウェアは背景信号および基準信号を取得し、これらは後に信号の吸光度を表示するために処理される。
【0081】
図29は、LSPRシグナルをリアルタイムで表示するためにMatlabで開発されたグラフィックユーザインタフェースを示す図である。パネルは、ユーザが監視時間を変更し、取得時間を固定し、そしてプラズモン共鳴における波長シフトおよび吸光度シフトを観察することにより測定の動態を追跡することを可能にするパネルからなる。読み出しは、タッチスクリーンディスプレイパネルとも統合されている。
【0082】
上述したように、本発明の実施形態として、本発明のLSPRチップを利用して携帯可能で非常に効果的なLSPRデバイスが実現された。本開示のLSPRチップ及び構造の高感度かつ有効な性質により、結果として得られるLSPRデバイスもまた非常に有効かつ信頼性を有していた。
【0083】
本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本発明に様々な修正および変更を加えることができることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内にある修正および変形を網羅することが意図されている。特に、上記の任意の2つ以上の実施形態の任意の部分または全体、およびそれらの変更は、本発明の範囲内で組み合わせて考慮することができることが明示的に企図されている。