(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】静水圧加圧水による2軸延伸管状インフレーションフィルム延伸機
(51)【国際特許分類】
B29C 55/28 20060101AFI20220525BHJP
B29C 48/32 20190101ALI20220525BHJP
B29C 49/46 20060101ALI20220525BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
B29C55/28
B29C48/32
B29C49/46
B29C49/04
(21)【出願番号】P 2020555492
(86)(22)【出願日】2018-04-10
(86)【国際出願番号】 TH2018000018
(87)【国際公開番号】W WO2019199240
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】519098660
【氏名又は名称】エンズパイア インダストリー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】ウィチタモーンロエ,アーソーン
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特公昭45-030230(JP,B2)
【文献】特開昭52-028556(JP,A)
【文献】米国特許第05540881(US,A)
【文献】特開昭52-146479(JP,A)
【文献】特公昭50-003790(JP,B2)
【文献】特公昭46-028669(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 55/00 - 55/30
B29C 48/00 - 48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも4組の可変速度
のニップロール
(1,2,3,4)と、
温度制御機能を有する水槽(5)と、
ウォーターポンプユニット(7)と、を備え
、
同時2軸配向プロセスにより伸ばされる基材が連続管状インフレートフィルム基材であ
り、
4組目の前記ニップロール(4)は、2組目の前記ニップロール(2)及び3組目の前記ニップロール(3)と同じ中心位置において、3組目の前記ニップロール(3)の上方に設置されている、静水圧加圧水による2軸延伸管状インフレーションフィルム延伸機。
【請求項2】
1組目の前記ニップロール(1)は、前記水槽(5)の外
側に設置されている、請求項
1に記載の静水圧加圧水による2軸延伸管状インフレーションフィルム延伸機。
【請求項3】
2組目の前記ニップロール(2)は、前記水槽(5)の底部に設置されている、請求項1
又は2に記載の静水圧加圧水による2軸延伸管状インフレーションフィルム延伸機。
【請求項4】
3組目の前記ニップロール(3)は、下方にある2組目の前記ニップロール(2)と同じ中心位置において、前記水槽(5)の上部に設置されている、請求項1~
3のいずれかに記載の静水圧加圧水による2軸延伸管状インフレーションフィルム延伸機。
【請求項5】
前記水槽(5)の外側に、少なくとも1組のヒータバンド(6)が連結されている、請求項1~
4のいずれかに記載の静水圧加圧水による2軸延伸管状インフレーションフィルム延伸機。
【請求項6】
前記水槽(5)には、50~100℃の温度の加熱水が入っている、請求項1
~5のいずれかに記載の静水圧加圧水による2軸延伸管状インフレーションフィルム延伸機。
【請求項7】
前記水槽(5)の温水の最高温度が、前記水槽(5)の温水の最低温度よりも少なくとも5℃高い、請求項1~
6のいずれかに記載の静水圧加圧水による2軸延伸管状インフレーションフィルム延伸機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静水圧加圧水による2軸延伸管状インフレーションフィルム延伸機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、管状インフレートフィルム押出成形を用いたプラスチック製造は、商品用プラスチック包装を製造するための製品であり、押出機の円形ダイは、ポリマー管の厚い壁を形成している。このプロセスにおいて、冷却された空気が、ポリマー管の内側に供給され、捕捉されて、インフレートフィルムバブルを形成する。膨張空気は、フィルムの配向を提供すべく、プラスチックバブルを延伸するために使用される。フィルムバブルは冷却された後、つぶしフレームとニップロールで挟まれ、薄いフィルムが形成される。
【0003】
一方、油吸収性フィルム及び食品保存フィルムは、キャストフィルム押出及び2軸延伸プロセスによって2軸延伸ポリプロピレン(BOPP)から製造され、押出方向(MD)及び横方向(TD)の2方向に伸ばされる。ここで、溶融プラスチックを急冷するために、プラスチック樹脂は、押出機によって平坦なダイから冷却ロール上に押し出される。続いて、急冷されたフィルムは、フィルムの厚さを減少させて薄膜を製造する一連のローラを通過させられる。
【0004】
2軸延伸プロセスは、非晶質ポリマー又は半結晶性ポリマーのいずれかから製造された熱可塑性フィルム基材を延伸するためのプロセスであり、特に引張強度における機械的強度の増加、光学特性、バリア特性又は透過性の改善などのフィルム特性を改善する。
【0005】
現在、2軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(BOPET)及び2軸延伸ポリアミド(BOPA)のような2軸延伸フィルムはほとんど、テンタリングプロセスによってキャストフィルムを延伸することにより製造されるフレキシブル包装に広く使用されている。フィルムが2軸延伸を受ける幅出し加工ラインは、2つのカテゴリに分類することができる。
【0006】
a.)逐次2軸配向延伸
b.)同時2軸配向延伸
延伸機として幅出し機を使用しない2軸配向延伸もあり、二重バブル管状インフレートフィルム延伸である。このプロセスは非常に時代遅れのものであり、PVCポリマーから作られた収縮フィルム又はラベルにのみ存在する。幅出しプロセスとは異なり、二重バブルプロセスでは、基材は管状インフレートフィルムに形成され、使用されるポリマーの種類は上述のようにPVC等の非晶質ポリマーに限定され、予熱された管状インフレートフィルムを延伸してバブルにするのに1大気圧で十分であり、加圧されたバブルを気密状態で内部に閉じ込めて横方向の延伸につなげる。
【0007】
しかしながら、高結晶化度及び異相構造を有する管状インフレートフィルム基材を2軸で延伸して微孔質フィルムを形成する場合、内部に閉じ込められた加圧空気がバブルから漏出する。
【0008】
グローバルな特許調査によると、プラスチック工業で使用される典型的なプロセスとして、2軸延伸プロセス、管状インフレートフィルム押出など、プラスチックフィルムを製造する単一プロセスが、以下のように多数存在する。
【0009】
米国特許第US09/220,983は、多層ベースシートを二方向に延伸するポリエチレンフィルムの製造について説明している。この製造では、一層を一方向に延伸し、一層の表面を樹脂でコーティングし、ベースシートを横方向から押出方向に延伸する。
【0010】
米国特許出願第20170001401Alには、管状インフレームフィルム成形を有するプラスチックバッグを製造するためのプロセスが記載されている。
【0011】
米国特許出願US3976732Aは、熱風を生成するためのプロセス及び装置を開示している。ここで、原材料は、チューブ内で半流動体にされた後、この半流動体は、冷却及び押し出しシステムを通過する。
【0012】
英国特許出願第GB202472は、管と蛇口との放熱部分に自動温度制御ユニットを設置し、温度異常があると温度制御ユニットがバルブと冷却リングに信号を送信してシステム内の空気流を制御し、より良好な特性を有するインフレートフィルムを製造するためのシステム及び方法を説明している。
【0013】
米国特許出願第US4447387には、熱可塑性樹脂からインフレートフィルムを製造するプロセスが記載されており、システム内に導入される冷気を促進して生産量を増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許出願公開第2017/0001401号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
先の関連特許において上述されているように、存在する特許は、2軸延伸プロセス又は管状インフレートフィルム押出を別々に使用する薄膜の製造であることが明らかに理解される。しかしながら、前者の方法からの生成物は、ポリ塩化ビニル(PVC)又は食品保存フィルムのような非晶質ポリマーのみが原料の伸長可能な薄膜であるが、その食品保存フィルムから放出される油による食品汚染がある。
【0016】
しかしながら、本発明によるフィルム製造は、2軸延伸法、管状インフレートフィルム押出法のような延伸可能な薄膜製造であり、特に、プラスチックビーズの溶融工程でインフレートフィルム中に安定な圧力流を加える形式より前のフィルム製造サークル中に存在しない熱間等静圧法である。
【0017】
後者では、インフレートフィルムがより延伸されて圧縮処理後の溶融プラスチックの横方向延伸を促進してより効果的であり、フィルムの細孔は食品保存産業での使用により適しており、フィルムから放出された油が食品と接触することを防ぎ、清潔な食品産業につながる。
【0018】
したがって、本発明は、同時2軸延伸プロセスである静水圧による2軸延伸管状インフレートフィルム延伸機に関するものであり、異相構造を有する高結晶性管状インフレートフィルム基材を延伸して、特に微孔質ポリプロピレンフィルムに適した微孔質フィルム基材を形成する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に記載の前記装置は、複数組の可変速度ニップロールと、温度制御機能を有する水槽と、ウォータポンプユニットとを備えている。
【0020】
複数組の可変速度ニップロールが管状インフレートフィルム基材を押出方向に延伸する一方、温水がポンプで送られ、管状インフレートフィルム基材の内部に閉じ込められてバブル内に静水圧を生成し、横方向に延伸する配向をもたらす。
【0021】
結論として、本発明による前記機械は、従来技術を超える2軸延伸、管状インフレートフィルム押出、及び熱間静水圧といった様々なプロセス及び技術の組合せが使用されるため、新規である。したがって、本発明による静水圧加圧水による2軸延伸管状インフレートフィルム延伸機は、現存する問題に対する唯一の可能かつ有効な解決策となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、静水圧加圧水による2軸延伸管状ブローンフィルム延伸システムの一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態は、添付の図面において、限定としてではなく、例として示される。図面は、本発明の原理をより完全に理解することができるように、本発明の原理を詳説する説明と共に本発明のさらなる理解を提供するために含まれる。
【0024】
このように、本発明は、静水圧による2軸延伸管状インフレートフィルム延伸機に関し、連続的な管状インフレートフィルム基材を延伸するために発明された同時2軸延伸プロセスであり、前記基材は、延伸されると特にポリプロピレンの微孔性フィルムに適した微孔性フィルムが形成される異相構造を有する高結晶性のポリマーから製造される。
【0025】
本発明に係る2軸延伸管状フィルム延伸機は、複数組の可変速ニップロール(1),(2),(3),(4)と、温度制御機能を有する水槽(5)と、ウォータポンプユニット(7)とを備える。複数組のニップロールは、基材フィルム又はバブルを引っ張り、延伸するために使用され、前方のニップロールは常に、後方のニップロールよりも速い速度で回転し、結晶化又は配向と呼ばれるポリマー鎖の再配列をもたらすが、原点長さ当たりの最終長さの割合は押出方向の延伸比として定義され、この割合は隣接するニップロール対のローラ速度に依存する。
【0026】
前記機械は、少なくとも4組のニップロールからなる。1組目のニップロール(1)は、管状インフレートフィルムを供給するために、水槽の外側、好ましくは水槽(5)の横の上部に設置されている。2組目のニップロール(2)は、水槽(5)の内側における水槽の底部に設置され、管状インフレートフィルム基材を引き下ろし、水中に沈めるために使用される。3組目のニップロール(3)は、2組目のニップロール(2)と同じ中心位置において水槽(5)の上部に設置されている。3組目のニップロール(3)は、フィルム又はバブルを上方に引き上げるために使用される。4組目のニップロール(4)は、3組目のニップロール(3)の上方に、好ましくは、2組目のニップロール(2)及び3組目のニップロール(3)と同じ中心位置に設置される。第3組目のニップロール(3)は、温水をバブル中にポンプで送る工程で、延伸された管状インフレートフィルムを引き上げるために使用される。
【0027】
ニップロールの各対の間、つまり、1組目のニップロール(1)から2組目のニップロール(2)の間、2組目のニップロール(2)から3組目のニップロール(3)の間それぞれにおいて、管状インフレートフィルム基材又はバブルが押出方向に引っぱられる。一方、横方向への引き延ばしは、2組目のニップロール(2)と3組目のニップロール(3)との間でのみ発生する。温水は、水槽(5)の外側に連結された少なくとも1組の加熱バンド(6)によって加熱され、チューブ状インフレートフィルム基材の内側にポンプで送られて閉じ込められ、静水圧バブルを作り、押出方向及び横方向の両方向で同時に2軸配向伸張させる。温度制御機能を有する水槽(5)は、温度が摂氏50~100度の範囲内にある加熱水を収容しており、温度制御機能を有する水槽の温水の最高温度は、水槽(5)の温水の最低温度よりも摂氏5度以上高くなっている。管状インフレートフィルムの原点直径当たりの膨張バブルの最終直径の割合を横方向の延伸比として定義した。延伸速度、延伸温度、延伸比のような延伸条件は、押出方向と横方向の両方で、高分子基板構造と最終膜応用に依存している。