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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】加熱装置および加熱方法
(51)【国際特許分類】
   F27B 17/00 20060101AFI20220525BHJP
   F27D 5/00 20060101ALI20220525BHJP
   F27D 19/00 20060101ALI20220525BHJP
   F27D 11/02 20060101ALI20220525BHJP
   F27D 3/12 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
F27B17/00 B
F27D5/00
F27D19/00 A
F27D11/02 A
F27D3/12 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021522313
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(86)【国際出願番号】 JP2020020286
(87)【国際公開番号】W WO2020241490
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2019102739
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594067195
【氏名又は名称】株式会社九州日昌
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】特許業務法人KEN知財総合事務所
(72)【発明者】
【氏名】神吉 利彰
(72)【発明者】
【氏名】木邊 貴大
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特許第6388041(JP,B2)
【文献】特開2009-115425(JP,A)
【文献】特公昭48-008653(JP,B1)
【文献】特開2003-245591(JP,A)
【文献】特表2011-528501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 17/00
F27D 5/00
F27D 19/00
F27D 11/02
F27D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
距離を隔てて対向配置された複数の加熱用壁体と、
前記複数の加熱用壁体の各々に設けられた複数の発熱手段と、
複数の前記加熱用壁体の対向領域に上下方向に距離を隔てて棚状に配置されて前記加熱用壁体からの熱を伝導させる金属製の複数の熱放射部材と、を備え、
前記複数の加熱用壁体と前記複数の熱放射部材とは、被加熱物をそれぞれ収容するための複数の収容スペースを上下方向に画定し、
前記複数の収容スペースは、前記加熱用壁体と前記熱放射部材とにより画定される開口部を前面側および背面側に有し、前記背面側の開口部は、閉塞部材により閉塞されており、
前記前面側の開口部を閉塞する閉塞部と、
収容スペース内に挿入され、前記加熱用壁体または前記熱放射部材と直接接触する挿入部と、を有する金属製の引き出し機構をさらに有する、加熱装置。
【請求項2】
前記閉塞部は、前記前面側の開口部を閉じた際に、当該開口部との間に所定の隙間が形成されるように形成されている、請求項に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記所定の隙間は、前記開口部の上端側に形成される、請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記所定の隙間は、前記開口部の下端側に形成される、請求項2に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記挿入部は、被加熱物を搭載可能に形成されている、請求項に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記挿入部には、立体構造物からなる被加熱物を搭載するための保持部材が設けられている、請求項に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記挿入部には、立体構造物からなる被加熱物を搭載するための切り欠きが形成されている、請求項に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記挿入部は、前記熱放射部材上に直接載置される、請求項に記載の加熱装置。
【請求項9】
対向する前記複数の加熱用壁体は、各々の前記収容スペースに面する側の各壁面の互いに対応する位置に直接形成された前記収容スペースの奥行方向に延在する支持面をそれぞれ有し、
前記挿入部は、両端部が前記支持面によって受け止められる、請求項に記載の加熱装置。
【請求項10】
前記複数の加熱用壁体の各々に設けられた少なくとも一の温度センサーと、
前記複数の加熱用壁体の各々に設けられた少なくとも一の温度センサーの検出温度が目標温度の追従するように、前記複数の加熱用壁体にそれぞれ設けられた複数の発熱手段の発熱量を個々に制御する、または、複数にグループ化された前記複数の発熱手段をグループ毎に発熱量を独立に制御する温調手段と、を有する請求項1ないし9のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の加熱装置を用いて被加熱物を加熱する、加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置および加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、液晶表示パネルなどの構成部材であるガラス基板等の板状物を熱処理する加熱気体循環方式のクリーンオーブンが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。このクリーンオーブンは、ガラス基板などの被熱処理物を恒温槽内に収容し、この恒温槽内においてファンによって循環する加熱気体を用いて被加熱物の熱処理を行うものである。
加熱気体循環方式のクリーンオーブンの場合、ガラス基板などの被加熱物を多段状に収容する構造を採用しやすいので、スペース効率に優れている反面、加熱温度分布を均一化することが困難であり、加熱気体の攪拌によりクリーン度が低下する可能性が高い。また、被加熱物が比較的軽量である場合、加熱気体の循環対流によって被加熱物が所定の位置から移動することがある。
【0003】
特許文献2は、内部に発熱体を有する放熱板の両面に遠赤外線放射セラミックスの薄層が被覆され、この放熱板の加熱によって両面から遠赤外線を放射する両面加熱式の遠赤外線パネルヒータからなる多数の棚状ヒータが、炉本体内に上下方向に一定間隔で多段配置され、これらの棚状ヒータの間に形成される各空間部分をそれぞれ乾燥室とした加熱炉を開示している。
特許文献2記載の加熱炉の場合、上下方向に配置された多数の棚状ヒータから発される熱は、加熱炉内を上昇して炉内の天壁寄りの領域に集まる傾向があるため、炉内上部領域の温度は、炉内下部領域の温度より高くなっており、このような炉内上部領域と炉内下部領域との間の温度差をなくすことは極めて困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-56141号公報
【文献】特開2001-317872号公報
【文献】特開2013-200077号公報
【文献】特開2005-352306号公報
【文献】特開2005-055152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3-5は、温度分布の均一性及びクリーン度を改善するための加熱装置を開示している。
従来においては、さらなる温度分布の均一性及びクリーン度の向上に対する要請が存在した。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、温度分布の均一性及びクリーン度に優れた加熱装置および加熱方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加熱装置は、距離を隔てて対向配置された複数の加熱用壁体と、
前記複数の加熱用壁体の各々に設けられた複数の発熱手段と、
複数の前記加熱用壁体の対向領域に上下方向に距離を隔てて棚状に配置されて前記加熱用壁体からの熱を伝導させる金属製の複数の熱放射部材と、を備え、
前記複数の加熱用壁体と前記複数の熱放射部材とは、被加熱物をそれぞれ収容するための複数の収容スペースを上下方向に画定し、
前記複数の収容スペースは、前記加熱用壁体と前記熱放射部材とにより画定される開口部を前面側および背面側に有し、前記背面側の開口部は、閉塞部材により閉塞されている。
【0008】
好適には、前記前面側の開口部を閉塞する閉塞部と、前記収容スペース内に挿入され、前記加熱用壁体または前記熱放射部材と直接接触する挿入部と、を有する金属製の引き出し機構をさらに有する。
【0009】
さらに好適には、前記挿入部は、被加熱物を搭載可能に形成されている。
【0010】
本発明の加熱方法は、上記の加熱装置を用いて被加熱物を加熱する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、温度分布の均一性及びクリーン度に優れた加熱装置およびこの加熱装置を用いた加熱方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る加熱装置を示す正面図。
図2図1の加熱装置の側面図。
図3】コイル状ヒータの構成を示す図。
図4図1の加熱装置の断面図であって、コイル状ヒータの配置を示す断面図。
図5】本発明の第2実施形態に係る加熱装置の要部拡大図。
図6図5の加熱装置の側面図。
図7】本発明の第3実施形態に係る加熱装置の要部拡大図。
図8図7の加熱装置の側面図。
図9】本発明の第4実施形態に係る加熱装置の上面図。
図10図9の加熱装置の側面図。
図11】本発明の第5実施形態に係る加熱装置の上面図。
図12図11の加熱装置の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態である加熱装置100について説明する。
図1に示すように、加熱装置100は、距離を隔てて対向配置された複数の加熱用壁体10(10A~10C)と、加熱用壁体10に設けられた発熱手段である複数のコイル状ヒータ11と、複数の加熱用壁体10の対向領域に上下方向A1,A2に距離を隔てて棚状に配置された複数の熱放射部材12と、上下方向に隣り合う熱放射部材12の間に設けられた被加熱物Wの収容スペース14と、両端部に配置された左側加熱用壁体10Aおよび右側加熱用壁体10Cの外壁面を覆うように設けられた断熱材23と、左側加熱用壁体10Aおよび右側加熱用壁体10Cの外壁面に断熱材23を介して設けられた複数の突起部材50(50A,50B)と、を備えている。
【0014】
加熱用壁体10の上端側及び下端側はそれぞれ天板16及び底板17によって連結され、底板17の下面は、架台ユニット30によって支持されている。
【0015】
加熱用壁体10は、アルミニウム合金やステンレス鋼等の金属で形成され、箱型の本加熱装置100の両側面及び中央の仕切り壁をなす構造部材であるとともに、加熱装置の熱源となる部材である。本実施形態では、左側加熱用壁体10A、中央加熱用壁体10B、右側加熱用壁体10Cの3枚からなる。各加熱用壁体10には、正面側から背面側まで水平方向に複数の貫通孔24が開設され、これらの貫通孔24内にそれぞれコイル状ヒータ11が着脱可能に挿入されている。
【0016】
コイル状ヒータ11は、詳細を図3に示すように、金属管(シース)11sの内部にコイル状に巻いた発熱線11wを収容した構造になっている。図3では簡略化して示しているが、コイル状に巻いた発熱線11wは右端から左端へ往復し、右端から2本のリード線が延出している。往復の発熱線11wの間及び発熱線11wと金属管11sの間は、粉末状の酸化マグネシウムを固めた絶縁層で絶縁されている。
コイル状ヒータ11は、発熱線11wの巻き線ピッチが、両端部W1,W1では小さく、中央部W2では大きくし、両端部での発熱量が中央部の発熱量よりも大きくなるように形成されている。
【0017】
各加熱用壁体10におけるコイル状ヒータ11の配置は、図4に示すように、下部で間隔が狭く上部で間隔が広く配置された全ての貫通孔24にそれぞれ挿入されている。これにより、各加熱用壁体10の上下方向A1,A2については、コイル状ヒータ11の配置間隔の小さい下部で発熱量が大きくなるので、温度が低くなりがちな下部の温度を高めている。また、奥行方向B1,B2については、温度が低下しがちな奥行方向両端部の発熱量を大きくし、温度分布が均一になるようにしている。
【0018】
各加熱用壁体10には、また図1に示すように、正面側から水平方向に別の複数の貫通孔25が開設され、温度センサー15が挿入されている。温度センサー15の検出温度が目標温度に追従するように、各加熱用壁体10にそれぞれ設けられた複数のコイル状ヒータ11の各々の発熱量が、温調手段(図示省略)により独立に制御されている。または、複数のコイル状ヒータ11が複数にグループ化され、グループ毎に発熱量が独立に制御される。
なお、上記したコイル状ヒータ11の構成や配置は、温調手段により発熱手段を制御した際に、加熱用壁体10の温度の均一化を実現するためのものである。言い換えると、外乱等が原因で温調手段のみでは加熱用壁体10の温度の均一化を実現するのは難しいので、コイル状ヒータ11の構成や配置を工夫することで加熱用壁体10の温度の均一化を実現する。
【0019】
熱放射部材12は、加熱用壁体10の対向領域に上下方向に距離を隔てて棚状に配置されて前記加熱用壁体10からの熱を伝導させる部材である。本実施形態では、両側の加熱用壁体10に形成された溝に嵌め込まれて棚状に配置されている。各熱放射部材12は、表面に黒色メッキを施したアルミニウム板で形成され、すぐれた熱放射機能が得られるようになっている。
【0020】
各収容スペース14は、両側の加熱用壁体10と、上下の熱放射部材12とで画定されたスペースで、被加熱物を1枚ずつ収容して、上下の熱放射部材12からの放射熱で加熱処理するようになっている。加熱用壁体10は、各々の収容スペース14に面する側の各壁面の互いに対応する位置に、収容スペースの奥行方向B1,B2に延在する溝10tが形成され、その溝10tの下側内面が、平板状の被加熱物Wの幅方向の各側縁部の裏面を受け止める支持面となっている。所定の搬送装置を用いて、被加熱物をその左右方向両端部が各溝10tに入るように搬入し、前記支持面に載置することができる。被加熱物Wの両側縁部が熱的に開放されていると被加熱物Wの温度が両側縁部で不均一となりやすい。このため、溝10tの支持面を通じて被加熱物Wの両側縁部に直接伝熱することで、被加熱物Wの温度の均一化を図っている。
【0021】
各収容スペース14の前面側には開口部14a(図2参照)が形成されている。各収容スペース14の背面側の開口部14bは、閉塞部材としての背壁部材26により閉塞されている。すなわち、各収容スペース14は、前面側の開口部14aでのみ開口している。前面側に開口部14aを設けることで、収容スペースの内部で加熱されて膨張した空気が外部に逃げられるようになっている。背面側の開口部14bが閉塞されているので、収容スペースの内部で加熱されて膨張した空気やガスが外部に逃げたとしても、外部から収容スペース14内に空気が流入しにくい構造となっている。
【0022】
最上部の2枚の熱放射部材12の間及び最底部の2枚の熱放射部材12の間は、それぞれ被加熱物Wを導入しない空きスペースで、空気の断熱層を形成するための断熱スペース20T,20Bである。
【0023】
架台ユニット30は、加熱装置100が設置される床面に配置され、底板17及びその上の加熱装置本体を搭載している。加熱装置100の熱が床面に伝達しないようにする断熱機能や、床面の振動が加熱装置本体に伝達しないようにする防振機能等を備えている。
【0024】
断熱材23は、外気からの左側加熱用壁体10Aおよび右側加熱用壁体10Cへの熱的外乱を最小限に抑えるために設けられており、ガラス繊維等の熱絶縁性の材料で形成されている。
【0025】
次に、本発明の加熱装置100の動作について説明する。
加熱装置100を使用する場合、所定の搬送装置を用いて、各収容スペース14の前面側の開口部14aを通じて各被加熱物をそれぞれの収容スペース14に搬入する。コイル状ヒータ11に通電を開始すれば、所定のプログラムに従って熱処理を行うことができる。
図示しない温調手段により、各温度センサー15の検出温度が目標温度になるように、複数のコイル状ヒータ11の発熱量が個々にまたはグループ毎に独立に制御される。
【0026】
各収容スペース14の左右には、加熱用壁体10が配置され、上下には、熱放射部材12が配置されているので、コイル状ヒータ11の熱によって昇温した左右の加熱用壁体10から放射される熱と、これらの加熱用壁体からの熱伝導により発熱する熱放射部材12から上下に放射される熱とによって加熱される。
各加熱用壁体10が目標温度になるように加熱され、各熱放射部材12も加熱用壁体10と同じ温度に加熱されるため、収容スペース14の相互間の温度均一性が高い。
ここで、コイル状ヒータ11として、発熱線11wの巻き線ピッチが、両端部で小さく、中央部で大きいので、加熱用壁体10の奥行方向において、温度が低下しがちな奥行方向B1,B2の両端部の発熱量が大きくなり、温度分布が均一化されている。このため、各収容スペース14内の奥行方向の温度分布も均一化されている。
このため、それぞれの収容スペース14内はむらなく均等に加熱され、加熱装置100全体における温度分布の均一性も良好である。
【0027】
また、各収容スペース14は、上記構成により、熱気の上昇に起因する上部空間における熱蓄積現象及び過熱現象が発生しない。また、ファンによって加熱気体を攪拌したり、循環させたりすることもないので、クリーン度も優れており、気体流によって被加熱物が移動することもない。
【0028】
なお、前述した加熱装置100は本発明に係る加熱装置を例示するものであり、本発明は加熱装置100に限定されない。
発熱手段はコイル状ヒータに限られず、その他のヒータや、ヒートパイプでもよい。
【0029】
第2実施形態
図5および図6に第2実施形態に係る加熱装置を示す。
図5および図6に示す加熱装置100Aは、引き出し機構80を備えている以外は、第1実施形態と同様の構成である。
引き出し機構80は、金属プレートで形成され、前面側の開口部14aを閉塞する閉塞部81と、収容スペース14内に挿入されるプレート状に形成された挿入部82を有する。
閉塞部81は、前面側の開口部14aを閉じた際に、図5および図6に示すように、閉塞部81の上端部と開口部14aの上端側との間に所定の隙間Gpが形成されるように形成されている。
挿入部82は、熱放射部材12上に直接接触するように載置される。
【0030】
被加熱物Wは、上記した溝10tに装着されてもよいし、引き出し機構80の挿入部82に直接載置又は治具を介して載置してもよい。挿入部82は、熱放射部材12上に直接接触しているので、熱放射部材12や加熱用壁体10と同じ温度に加熱される。このため、挿入部82に載置された被加熱物Wも熱放射部材12や加熱用壁体10と同様の温度に加熱される。
【0031】
閉塞部81の所定の隙間Gpは、開口部14aの開口面積が大きすぎるような場合には、開口部14aを開放していると、収容スペース14内に外部から大量の空気が流入し、被加熱物Wの温度均一性を低下させる可能性がある。このため、閉塞部81で開口部14aを閉じると、収容スペース14内に外部から大量の空気が流入するのを防ぐことができる。所定の隙間Gpを設けるのは、加熱されて膨張した空気が収容スペース14の外部に逃げられるようにするためである。隙間Gpが小さすぎると外部への空気の流れが速くなり、隙間のGp付近の被加熱物Wの温度均一性が低下すると考えられる。また収容スペース14が完全に密閉していると、加熱された空気の流れが収容スペース14内に生じるため、空気循環が低下するので熱伝達が弱くなり、長時間の加熱時間が必要となる。すなわち、所定の隙間Gpで開口部14aの開口面積を最適化することで、被加熱物Wの温度均一性を良好に保つことができるかつ加熱時間の最適化を図ることができる。また、所定の隙間Gpを設けることにより、被加熱物Wから出るアウターガスの排出にも効果的である。
なお、所定の隙間Gpを形成しない構成も採用可能である。
【0032】
第3実施形態
図7および図8に第3実施形態に係る加熱装置を示す。
図7および図8に示す加熱装置100Bは、引き出し機構180を備えている以外は、第1実施形態と同様の構成である。
引き出し機構180は、上記の引き出し機構80と同様に、閉塞部181と挿入部182とを備えているが、挿入部182は、溝10tに装着される点で、上記の挿入部82と異なる。この場合には、被加熱物Wは、挿入部182上に直接又は治具を介して載置される。
閉塞部181と開口部14aとの間には、上記と同様、所定の隙間Gpが形成される。
挿入部182を溝10tに保持させることで、加熱用壁体10と挿入部182とが直接接触することになり、挿入部182は加熱用壁体10と同様の温度に保たれる。したがって、被加熱物Wの温度均一性を良好に保つことができかつ加熱時間の最適化を図ることができる。
【0033】
第4実施形態
図9および図10に第4実施形態に係る加熱装置を示す。
図9および図10に示す加熱装置100Cは、引き出し機構280を備えている以外は、第1実施形態と同様の構成である。また、引き出し機構280の構造は、基本的には、上記した引き出し機構80と同じである。しかし、引き出し機構280は、立体構造物からなる被加熱物Wを挿入部282に搭載するための複数の保持部材283が設けられている。保持部材283を設けることで、立体構造物からなる被加熱物Wの姿勢を保ったままで加熱することができる。
【0034】
第5実施形態
図11および図12に第5の実施形態に係る加熱装置を示す。
図11および図12に示す引き出し機構380は、開口部14aを閉塞する閉塞部381と、溝10tに装着される挿入部382とを有する。
閉塞部381の下端側と開口部14aの下端側との間には、所定の隙間Gpが形成される。
挿入部382には、立体構造物の被加熱物Wをセットするための複数の切り欠き部384が一列に配列されている。この切り欠き部384に被加熱物Wの一部が嵌ることにより、被加熱物Wが挿入部382にセットされる。
一列に形成された切り欠き部384の両側には、ガス排出孔383が配列されている。
【0035】
この実施形態では、切り欠き部384にセットされた被加熱物Wが加熱されてアウターガスが放出されると、アウターガスは通常空気よりも重いので、ガス排出孔383を通じて挿入部382の裏面側へ排出される。挿入部382の裏面側へ排出されたアウターガスは、開口部14aの下端部に形成された所定の隙間Gpを通じて外部に排出される。
【0036】
上記した実施形態では、所定の隙間Gpを開口部14aと閉塞部381の間に形成したが、これに限定されるわけではなく、閉塞部381に開口を設けることも可能である。
また、上記加熱装置100においては、加熱用壁体10、天板16、底板17は、ステンレス鋼で形成され、熱放射部材12は、表面に黒色メッキを施したアルミニウム板で形成されている。ただし、これらの材料に限られず、加熱用壁体10A~10C、天板16、底板17などをアルミニウムやアルミニウム合金(あるいは輻射熱の発散を抑制するため光沢のない表面処理を施したアルミニウムやアルミニウム合金)で形成することもできる。また、熱放射部材12の表面処理についても黒色メッキに限定されず、輻射熱の発散を抑制することのできる表面処理、例えば、光沢のない表面処理を施したものを採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る加熱装置は、ガラス基板や半導体リードフレームあるいはその他の金属板や合成樹脂板などの各種板状部材や立体形状物を含むあらゆる被加熱物の熱処理を行う産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 :加熱用壁体
10A :左側加熱用壁体
10B :中央加熱用壁体
10C :右側加熱用壁体
10t :溝
11 :コイル状ヒータ
11s :金属管
11w :発熱線
12 :熱放射部材
14 :収容スペース
14a :開口部
14b :背面
15 :温度センサー
16 :天板
17 :底板
20B :断熱スペース
20T :断熱スペース
23 :断熱材
24 :貫通孔
25 :貫通孔
26 :背壁部材
30 :架台ユニット
50 :突起部材
80 :引き出し機構
81 :閉塞部
82 :挿入部
100 :加熱装置
100A :加熱装置
100B :加熱装置
100C :加熱装置
180 :引き出し機構
181 :閉塞部
182 :挿入部
280 :引き出し機構
282 :挿入部
283 :保持部材
380 :引き出し機構
381 :閉塞部
382 :挿入部
383 :ガス排出孔
384 :切り欠き部
Gp :隙間
W :被加熱物
W1 :端部
W2 :中央部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12