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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】遠赤外線反射フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/26 20060101AFI20220525BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220525BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
G02B5/26
B32B7/023
B60R13/02 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017250055
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2019117228
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 勉
(72)【発明者】
【氏名】熊本 貴之
(72)【発明者】
【氏名】竹林 賢三
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 信吉
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 弘志
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/010532(WO,A1)
【文献】特開2014-091442(JP,A)
【文献】特開2013-129308(JP,A)
【文献】国際公開第2015/104981(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/024873(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/26
B32B 7/023
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用天井材の車室外側表面に貼付けられ、表面側遠赤外線反射層と、裏面側遠赤外線反射層と、該表面側遠赤外線反射層及び該裏面側遠赤外線反射層の間の中間層とを備え、前記表面側遠赤外線反射層及び前記裏面側遠赤外線反射層は、反射する光の波長領域が互いに異なり、前記表面側遠赤外線反射層及び前記裏面側遠赤外線反射層が反射する光の波長領域が非対称となるように配置されており、前記裏面側遠赤外線反射層が車室内側を向くように配される遠赤外線反射フィルムであって、
前記表面側遠赤外線反射層は、最表面側から、樹脂を含む第1樹脂層と、樹脂を含み、該第1樹脂層と異なる屈折率を有する第2樹脂層とが交互に積層された多層構造を有し、
前記第1樹脂層の厚さ及び前記第2樹脂層の厚さは、1.10~1.30μmの範囲にあり、
前記裏面側遠赤外線反射層は、最表面側から、樹脂を含む第3樹脂層と、樹脂を含み、該第3樹脂層と異なる屈折率を有する第4樹脂層とが交互に積層された多層構造を有し、
前記第3樹脂層の厚さ及び前記第4樹脂層の厚さは、1.30~1.60μmの範囲にあり、
前記第1樹脂層の厚さ及び前記第2樹脂層の厚さは、前記第3樹脂層の厚さ及び前記第4樹脂層の厚さと同一であるか又はそれより薄く、
前記中間層は、樹脂を含み、
前記第1樹脂層に含まれる前記樹脂、前記第2樹脂層に含まれる前記樹脂、前記第3樹脂層に含まれる前記樹脂、前記第4樹脂層に含まれる前記樹脂、及び、前記中間層に含まれる前記樹脂が、いずれも、熱可塑性樹脂であり、且つ、該熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である遠赤外線反射フィルム。
【請求項2】
車両用天井材の車室外側表面に貼付けられ、表面側遠赤外線反射層と、裏面側遠赤外線反射層と、該表面側遠赤外線反射層及び該裏面側遠赤外線反射層の間の中間層とを備え、前記表面側遠赤外線反射層及び前記裏面側遠赤外線反射層は、反射する光の波長領域が互いに異なり、前記表面側遠赤外線反射層及び前記裏面側遠赤外線反射層が反射する光の波長領域が非対称となるように配置されており、前記裏面側遠赤外線反射層が車室内側を向くように配される遠赤外線反射フィルムであって、
前記表面側遠赤外線反射層は、最表面側から、樹脂を含む第1樹脂層と、樹脂を含み、該第1樹脂層と異なる屈折率を有する第2樹脂層とが交互に積層された多層構造を有し、
前記第1樹脂層の厚さ及び前記第2樹脂層の厚さは、同じであり、且つ、1.10~1.30μmの範囲にあり、
前記裏面側遠赤外線反射層は、最表面側から、樹脂を含む第3樹脂層と、樹脂を含み、該第3樹脂層と異なる屈折率を有する第4樹脂層とが交互に積層された多層構造を有し、
前記第3樹脂層の厚さ及び前記第4樹脂層の厚さは、同じであり、且つ、1.30~1.60μmの範囲にあり、
前記第1樹脂層の厚さ及び前記第2樹脂層の厚さは、前記第3樹脂層の厚さ及び前記第4樹脂層の厚さと同一であるか又はそれより薄く、
前記中間層は、樹脂を含み、
前記第1樹脂層に含まれる前記樹脂、前記第2樹脂層に含まれる前記樹脂、前記第3樹脂層に含まれる前記樹脂、前記第4樹脂層に含まれる前記樹脂、及び、前記中間層に含まれる前記樹脂が、いずれも、同一の熱可塑性樹脂であり、且つ、該熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である遠赤外線反射フィルム。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレンである請求項1又は2に記載の遠赤外線反射フィルム。
【請求項4】
前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層のいずれか一方が屈折率調整用フィラーを含み、
前記第3樹脂層及び前記第4樹脂層のいずれか一方が屈折率調整用フィラーを含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載の遠赤外線反射フィルム。
【請求項5】
前記第1樹脂層及び前記第3樹脂層が前記屈折率調整用フィラーを含まず、前記第2樹脂層及び前記第4樹脂層が前記屈折率調整用フィラーを含み、該屈折率調整用フィラーの含有割合が、1つの樹脂層において15~70質量%である請求項4に記載の遠赤外線反射フィルム。
【請求項6】
前記屈折率調整用フィラーが、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化亜鉛、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、酸化錫及び窒化ケイ素から選ばれた化合物からなる粒子である請求項4又は5に記載の遠赤外線反射フィルム。
【請求項7】
前記第1樹脂層の屈折率と前記第2樹脂層の屈折率との差(絶対値)が0.07以上であり、
前記第3樹脂層の屈折率と前記第4樹脂層の屈折率との差(絶対値)が0.07以上である請求項乃至のいずれか一項に記載の遠赤外線反射フィルム。
【請求項8】
前記第1樹脂層の屈折率が、前記第2樹脂層の屈折率より低く、
前記第3樹脂層の屈折率が、前記第4樹脂層の屈折率より低い請求項乃至のいずれか一項に記載の遠赤外線反射フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面側で、互いに異なるピーク波長を有する遠赤外線の反射効果に優れた遠赤外線反射フィルムであって、車両用天井材の車室外側表面に貼付けられる遠赤外線反射フィルムに関する。本発明の遠赤外線反射フィルムは、自動車の天井に配設される車両天井材の形成に好適である。
【背景技術】
【0002】
熱暑期の自動車においては、車内の温度が高くなるため、この状態で自動車を駆動させる場合には、エアコンを使用することが多くなる。エアコンの使用頻度が高くなると、ガソリンの消費量が増加し、結果として、二酸化炭素ガスの排出量も増加するため、車内の温度上昇を抑制するために消費するエネルギー量が膨大となることが懸念されている。
自動車には、通常、天井を構成する鋼板の内側に、断熱、緩衝等の作用を得るために、車両天井材が配設されている。近年、車内の温度上昇を抑制するために、長波長の赤外線である遠赤外線を反射させる構造を有する車両天井材の開発が盛んである。例えば、特許文献1には、半硬質ウレタンフォーム等の発泡材料からなる基材と、基材の表面側に設けられる補強用の第1繊維層と、第1繊維層の表面に付着された第1接着剤と、第1接着剤により第1繊維層に接着される車室内の天井面を形成する表皮層と、基材の裏面側に設けられる補強用の第2繊維層と、第2繊維層の表面に付着させた第2接着剤と、第2接着剤により第2繊維層に接着された、アルミニウム蒸着膜等からなる赤外線反射層と、を有し、赤外線反射層の表面に樹脂からなる透明の保護層が形成され、保護層の厚さは、5~25μmの範囲に設定された車両用天井材が開示されている。また、特許文献2には、基材と、基材の車室側に設けられる表皮層と、基材の車体パネル側に設けられる裏面層と、を有する車両用内装材であって、裏面層は、基材側に配置されるベース層と、ベース層の車体パネル(天井パネル)側に配置される無機質材料からなる赤外線反射層とを有し、赤外線反射層は、厚みが0.01~0.09μmの範囲内に設定され、且つ、4000~16000nmの波長領域における光線反射率が80%以上である車両用内装材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-129308号
【文献】特開2014-91442号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、熱暑期対策の赤外線反射層が知られているが、近年、寒冷期における車内の暖房効果の低下抑制をも要望されている。即ち、一方面側で80℃~120℃の温度を与える遠赤外線の反射効果を有し、他面側で15℃~80℃程度の温度を与える遠赤外線の反射効果を有する遠赤外線反射材料が求められている。
本発明の目的は、車両用天井材の形成に用いられ、その両面側で異なる波長の遠赤外線を反射する積層フィルムであって、一方面側で80℃~120℃の温度を与える遠赤外線の反射効果を有し、他面側で15℃~80℃程度の温度を与える遠赤外線の反射効果を有する遠赤外線反射フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、互いに屈折率の異なる2つの樹脂層を同じ厚さで交互に積層した一方面側と、同様に、互いに屈折率の異なる2つの樹脂層を同じ厚さで交互に積層した他面側とを構成させ、一方面側の1つの樹脂層の厚さ、及び、他面側の1つの樹脂層の厚さを異なるようにしたことにより、上記課題を解決することができた。
本発明の遠赤外線反射フィルムは、車両用天井材の車室外側表面に貼付けられる遠赤外線反射フィルムであって、表面側遠赤外線反射層と、裏面側遠赤外線反射層とを備え、上記表面側遠赤外線反射層及び上記裏面側遠赤外線反射層は、反射する光の波長領域が互いに異なり、上記表面側遠赤外線反射層及び上記裏面側遠赤外線反射層が反射する光の波長領域が非対称となるように配置されており、上記裏面側遠赤外線反射層が車室内側を向くように配される遠赤外線反射フィルムである。
本発明において、上記表面側遠赤外線反射層は、最表面側から、樹脂を含む第1樹脂層と、樹脂を含み、該第1樹脂層と異なる屈折率を有する第2樹脂層とが交互に積層された多層構造を有し、上記第1樹脂層の厚さ及び上記第2樹脂層の厚さは、同じであり、且つ、1.10~1.30μmの範囲にあり、上記裏面側遠赤外線反射層は、最表面側から、樹脂を含む第3樹脂層と、樹脂を含み、該第3樹脂層と異なる屈折率を有する第4樹脂層とが交互に積層された多層構造を有し、上記第3樹脂層の厚さ及び上記第4樹脂層の厚さは、同じであり、且つ、1.30~1.60μmの範囲にあり、上記第1樹脂層の厚さ及び上記第2樹脂層の厚さは、上記第3樹脂層の厚さ及び上記第4樹脂層の厚さより薄いことが好ましい。
本発明において、上記第1樹脂層に含まれる上記樹脂、上記第2樹脂層に含まれる上記樹脂、上記第3樹脂層に含まれる上記樹脂、及び、上記第4樹脂層に含まれる上記樹脂は、いずれも、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
本発明において、上記第1樹脂層に含まれる上記熱可塑性樹脂、上記第2樹脂層に含まれる上記熱可塑性樹脂、上記第3樹脂層に含まれる上記熱可塑性樹脂、及び、上記第4樹脂層に含まれる上記熱可塑性樹脂は、いずれも、ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。
本発明において、上記第1樹脂層及び上記第2樹脂層のいずれか一方が屈折率調整用フィラーを含み、上記第3樹脂層及び上記第4樹脂層のいずれか一方が屈折率調整用フィラーを含むことが好ましい。
本発明において、上記第1樹脂層の屈折率と上記第2樹脂層の屈折率との差(絶対値)が0.07以上であり、上記第3樹脂層の屈折率と上記第4樹脂層の屈折率との差(絶対値)が0.07以上であることが好ましい。
本発明において、上記第1樹脂層の屈折率は、上記第2樹脂層の屈折率より低く、上記第3樹脂層の屈折率は、上記第4樹脂層の屈折率より低いことが好ましい。
本発明において、上記第2樹脂層は上記屈折率調整用フィラーを含み、上記第4樹脂層は上記屈折率調整用フィラーを含むことが好ましい。
【0006】
本明細書において、「1の樹脂層の厚さt1、及び、他の樹脂層の厚さt2が同じである」とは、t1及びt2が略同じであることを意味し、0.95×t1≦t2≦1.05×t1であることを意味する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の遠赤外線反射フィルムは、表面側遠赤外線反射層において、80℃~120℃の温度を与える遠赤外線を効率よく反射することができ、裏面側遠赤外線反射層で15℃~80℃程度の温度を与える遠赤外線を効率よく反射することができる。また、互いに、受光した遠赤外線がフィルムを透過することなく、遠赤外線の反射性能に優れる。従って、表面側遠赤外線反射層により、熱暑期における自動車内の温度上昇を抑制することができ、裏面側遠赤外線反射層により、寒冷期における車内の暖房効果の低下を抑制することができる。
上記第1樹脂層に含まれる上記樹脂、上記第2樹脂層に含まれる上記樹脂、上記第3樹脂層に含まれる上記樹脂、及び、上記第4樹脂層に含まれる上記樹脂が、いずれも、熱可塑性樹脂である場合には、可撓性を有するフィルムとすることができ、広い用途に適用することができる。
上記第1樹脂層に含まれる上記熱可塑性樹脂、上記第2樹脂層に含まれる上記熱可塑性樹脂、上記第3樹脂層に含まれる上記熱可塑性樹脂、及び、上記第4樹脂層に含まれる上記熱可塑性樹脂が、いずれも、ポリオレフィン系樹脂を含む場合には、このポリオレフィン系樹脂が遠赤外線を吸収しにくく、遠赤外線を、表面側遠赤外線反射層及び裏面側遠赤外線反射層からそれぞれ外側に効率よく反射させることができる。
従来、基材と赤外線反射層とを備え、赤外線反射性能を有する車両天井材において、上記特許文献に記載されたように、赤外線反射層は、基材のほぼ全面に形成されており、アルミニウム層を赤外線反射層とする態様では、1端側から他端側に導通性を有することとなる。そして、この赤外線反射層を天井側に向けて、車両天井材を天井パネルに固定する場合には、慎重な操作が必要となる。
ところで、自動車の製造工程において用いられる車両天井材は、通常、車両天井材を天井パネルに固定するための取り付け部品が基材の周縁等に配設されたものである。このような構造の車両天井材を配設する際には、例えば、取り付け部品により、天井パネルに敷設された電気配線の被覆部を破損させ、金属配線を露出させてしまうことがあった。そして、これに気づかずに、車両天井材を配設して、金属配線露出部と、赤外線反射層を構成するアルミニウム層とを接触状態にさせてしまうと、自動車の駆動時にショートする等の不具合をまねく場合があった。しかしながら、本発明の遠赤外線反射フィルムは、通電する材料を含まないため、上記不具合を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】遠赤外線反射フィルムの1例を示す概略断面図である。
図2図1の遠赤外線反射フィルムの拡大断面図である。
図3】遠赤外線反射フィルムの他例を示す概略断面図である。
図4】基材及び遠赤外線反射フィルムが一体化されてなる車両天井材を、自動車の天井(天井パネルP)に配設する前の構造の1例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで示される事項は、例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって、本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0010】
以下、車両用天井材の車室外側表面に貼付けられる、本発明の遠赤外線反射フィルムについて、図面を参照しながら説明する。
【0011】
本発明の遠赤外線反射フィルムは、図1に示されるように、表面側遠赤外線反射層20と、裏面側遠赤外線反射層40とを備える。表面側遠赤外線反射層20及び裏面側遠赤外線反射層40は、反射する光の波長領域が互いに異なり、表面側遠赤外線反射層20及び裏面側遠赤外線反射層40が反射する光の波長領域が非対称となるように配置されている。即ち、表面側遠赤外線反射層20は、好ましくは7.30~8.20μmにピーク波長を有する遠赤外線に対する反射作用を有する層であり、裏面側遠赤外線反射層40は、好ましくは8.20~10.05μmにピーク波長を有する遠赤外線に対する反射作用を有する層である。尚、「表面側遠赤外線反射層20及び裏面側遠赤外線反射層40は、反射する光の波長領域が互いに異なる」とは、反射する遠赤外線のピーク波長の領域が表面側遠赤外線反射層20及び裏面側遠赤外線反射層40では異なっていることを意味し、また、「表面側遠赤外線反射層20及び裏面側遠赤外線反射層40が反射する光の波長領域が非対称となるように配置」とは、本発明の遠赤外線反射フィルムが表裏で反射する光の波長領域が異なることを意味する。本発明において、好ましい遠赤外線反射フィルム10を構成する表面側遠赤外線反射層20及び裏面側遠赤外線反射層40は、図2に示されるように、いずれも、多層構造を有し、表面側遠赤外線反射層20は、その最表面側(図2の上方側)から、樹脂を含む第1樹脂層21と、樹脂を含み、該第1樹脂層21と異なる屈折率を有する第2樹脂層23とが交互に積層された構造を有し、裏面側遠赤外線反射層40は、その最表面側(図2の下方側)から、樹脂を含む第3樹脂層41と、樹脂を含み、該第3樹脂層41と異なる屈折率を有する第4樹脂層43とが交互に積層された構造を有する。尚、本発明の遠赤外線反射フィルム10は、図2に示される構造に限定されない。
【0012】
上記表面側遠赤外線反射層20における、第1樹脂層21の構成材料、及び、第2樹脂層23の構成材料、並びに、上記裏面側遠赤外線反射層40における、第3樹脂層41の構成材料、及び、第4樹脂層43の構成材料は、いずれも、樹脂を含むものであれば、特に限定されない。樹脂は、熱可塑性樹脂及び硬化樹脂のいずれでもよいが、フィルムの可撓性の観点から、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
上記熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ビニル系樹脂等が挙げられる。これらのうち、遠赤外線を吸収しにくいポリオレフィン系樹脂が特に好ましい。
【0013】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
上記ポリエチレン系樹脂としては、フィルム形成可能な性質を有するものであれば、特に限定されず、従来、公知のポリエチレン等であってもよい。このポリエチレン系樹脂の密度は、好ましくは960kg/m以下、より好ましくは930kg/m以下である。
【0014】
第1樹脂層21、第2樹脂層23、第3樹脂層41及び第4樹脂層43は、従来、公知の熱可塑性樹脂フィルムに含まれる添加剤を含有することができる。本発明の遠赤外線反射フィルム10は、複数の第1樹脂層21、複数の第2樹脂層23、複数の第3樹脂層41及び複数の第4樹脂層43を備えるが、遠赤外線領域の波長の光の反射を阻害しないものであれば、添加剤は、どの樹脂層に含まれてもよい。
【0015】
上記添加剤としては、フィラー(充填剤)、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、防曇剤、抗菌剤、防黴剤、着色剤等が挙げられる。
【0016】
上記フィラーとしては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化
ニオブ、酸化タンタル、酸化亜鉛、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、酸化錫、窒化ケイ素、硫酸カルシウム、石膏、硫酸バリウム、タルク、カオリナイト、クレー、マイカ、ワラストナイト、カーボンブラック、グラファイト、鉄粉、銅粉、二硫化モリブデン、炭化ケイ素等を含む、粒状、繊維状等を有する粉末又は粒子を用いることができる。これらのうち、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化亜鉛、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、酸化錫及び窒化ケイ素からなる粒子は、第1樹脂層21及び第2樹脂層23の屈折率差、又は、第3樹脂層41及び第4樹脂層43の屈折率差を形成させる屈折率調整用フィラーとして好適である。屈折率調整用フィラーの形状は、好ましくは球状である。また、上記屈折率調整用フィラーの粒子径は、各層の厚さより小さければよく、数平均粒子径は、好ましくは1μm以下である。
本発明の遠赤外線反射フィルムは、屈折率調整用フィラーを含む樹脂層を備えることが好ましく、上記屈折率調整用フィラーは、酸化チタンを含む粒子であることが好ましい。尚、1つの樹脂層に含まれる屈折率調整用フィラーの含有割合は、好ましくは15~70質量%、より好ましくは15~55質量%である。
【0017】
上記可塑剤としては、フタル酸エステル、脂肪酸エステル、芳香族多価カルボン酸エステル等が挙げられる。
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、キノン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアゾール系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
上記帯電防止剤としては、アンモニウム塩構造、ホスホニウム塩構造等を有するカチオン型帯電防止剤;スルホン酸、リン酸、カルボン酸等のアルカリ金属塩の構造を有するアニオン型帯電防止剤;同一分子中に、カチオン型の帯電防止剤及びアニオン型の帯電防止剤の両方の構造を含有する両性型帯電防止剤;アルキレンオキシド構造を有するエチレンオキシド重合体、エチレンオキシド重合成分を分子鎖中に有する重合体等のノニオン型帯電防止剤等が挙げられる。
上記難燃剤としては、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤等が挙げられる。
【0018】
上記表面側遠赤外線反射層20は、ピーク波長が好ましくは7.30~8.20μmの範囲にある遠赤外線(短波長遠赤外線)2に対する反射作用を有する層であり、80℃~120℃の温度を与える遠赤外線を効率よく反射する(図1参照)。
このような性能を十分に発揮させるために、本発明においては、更に、第1樹脂層21の屈折率及び第2樹脂層23の屈折率を異なるものとし、更に、第1樹脂層21の厚さ及び第2樹脂層23の厚さを同じとし、且つ、第1樹脂層21の合計厚さ、及び、第2樹脂層23の合計厚さを、いずれも、好ましくは40~200μmとする。また、第1樹脂層21及び第2樹脂層23の各層の厚さは、第3樹脂層41及び第4樹脂層43の各層の厚さより薄いことが好ましい。
第1樹脂層21の屈折率及び第2樹脂層23の屈折率は、特に限定されず、いずれか一方の層が高い屈折率を有してもよい。尚、両者の屈折率の差(絶対値)は、好ましくは0.07以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上である。
また、第1樹脂層21の厚さ及び第2樹脂層23の厚さは、いずれも、好ましくは1.10~1.30μmである。
【0019】
上記表面側遠赤外線反射層20は、図2に示すように、第1樹脂層21及び第2樹脂層23が同数ずつ含まれるものであってよいし、図示していないが、更に第1樹脂層21が裏面側遠赤外線反射層40側に面して、第1樹脂層21が第2樹脂層23より1層多い構造であってもよい。
第2樹脂層23の総数は、好ましくは15以上、より好ましくは15~70、更に好ましくは17~65である。
【0020】
上記表面側遠赤外線反射層20の表面における、ピーク波長が7.30~8.20μmの範囲にある遠赤外線(短波長遠赤外線)2に対する反射率は、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上である。
【0021】
上記裏面側遠赤外線反射層40は、ピーク波長が8.20~10.05μmの範囲にある遠赤外線(長波長遠赤外線)4に対する反射作用を有する層であり、15℃~80℃の温度を与える遠赤外線を効率よく反射する(図1参照)。
このような性能を十分に発揮させるために、本発明においては、更に、第3樹脂層41の屈折率及び第4樹脂層43の屈折率を異なるものとし、更に、第3樹脂層41の厚さ及び第4樹脂層43の厚さを同じとし、且つ、第3樹脂層41の合計厚さ、及び、第4樹脂層43の合計厚さを、いずれも、好ましくは40~200μmとする。また、前述したように第3樹脂層41及び第4樹脂層43の各層の厚さは、第1樹脂層21及び第2樹脂層23の各層の厚さより厚いことが好ましい。
第3樹脂層41の屈折率及び第4樹脂層43の屈折率は、特に限定されず、いずれか一方の層が高い屈折率を有してもよい。尚、両者の屈折率の差(絶対値)は、好ましくは0.07以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上である。
また、第3樹脂層41の厚さ及び第4樹脂層43の厚さは、いずれも、好ましくは1.30~1.60μmである。
【0022】
上記裏面側遠赤外線反射層40は、図2に示すように、第3樹脂層41及び第4樹脂層43が同数ずつ含まれるものであってよいし、図示していないが、更に第3樹脂層41が表面側遠赤外線反射層20側に面して、第3樹脂層41が第4樹脂層43より1層多い構造であってもよい。
第4樹脂層43の総数は、好ましくは15以上、より好ましくは15~70、更に好ましくは17~65である。
【0023】
上記裏面側遠赤外線反射層40の表面における、ピーク波長が8.20~10.05μmの範囲にある遠赤外線(長波長遠赤外線)4に対する反射率は、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上である。
【0024】
本発明において、表面側遠赤外線反射層20の厚さ及び裏面側遠赤外線反射層40の厚さは、同じであってよいし、異なってもよい。
【0025】
本発明の遠赤外線反射フィルム10は、表面側遠赤外線反射層20及び裏面側遠赤外線反射層40からなるものであってよいし、更に、他の層を備えるものであってもよい。例えば、図3に示すように、表面側遠赤外線反射層20及び裏面側遠赤外線反射層40の間に、中間層60を備えることができる。また、図示していないが、表面側遠赤外線反射層20及び裏面側遠赤外線反射層40の少なくとも一方の表面に保護層、粘着層等を備えることができる。
図3の中間層60は、遠赤外線領域の波長の光の反射を阻害せず、また、フィルムの可撓性を損なわない限りにおいて、単層及び複層のいずれでもよく、また、その構成材料も特に限定されない。この中間層60は、好ましくは樹脂層であり、含まれる樹脂は、上記第1樹脂層に含まれる樹脂、第2樹脂層に含まれる樹脂、第3樹脂層に含まれる樹脂及び第4樹脂層に含まれる樹脂のいずれであってもよく、他の樹脂であってもよい。また、中間層60は、発泡樹脂層であってもよい。
【0026】
本発明の遠赤外線反射フィルムにおける好ましい構成を、図2を用いて説明すると、以下の通りである。
上記表面側遠赤外線反射層20は、ピーク波長が7.30~8.20μmの範囲にある遠赤外線(短波長遠赤外線)2に対する反射効果により優れることから、最表面(図2の上面側)に位置する第1樹脂層21の屈折率を、第2樹脂層23の屈折率より高くする。この態様を反映する好ましい構成は、第1樹脂層21がフィラーを含み、第2樹脂層23がフィラーを含まないか、あるいは、含む場合、第1樹脂層21におけるより高い含有割合とする。
また、上記裏面側遠赤外線反射層40は、ピーク波長が8.20~10.05μmの範囲にある遠赤外線(長波長遠赤外線)4に対する反射効果により優れることから、最表面(図2の下面側)に位置する第3樹脂層41の屈折率を、第4樹脂層43の屈折率より高くする。この態様を反映する好ましい構成は、第3樹脂層41がフィラーを含み、第4樹脂層43がフィラーを含まないか、あるいは、含む場合、第3樹脂層41におけるより高い含有割合とする。
【0027】
上記好ましい構成は、表面側遠赤外線反射層20の最表面に位置する第1樹脂層21の屈折率を、第2樹脂層23の屈折率より低くし、裏面側遠赤外線反射層40の最表面に位置する第3樹脂層41の屈折率を、第4樹脂層43の屈折率より低くするものであるが、以下に示す構成を有する遠赤外線反射フィルムとすることもできる。
(1)表面側遠赤外線反射層20の最表面に位置する第1樹脂層21の屈折率が、第2樹脂層23の屈折率より高く、裏面側遠赤外線反射層40の最表面に位置する第3樹脂層41の屈折率が、第4樹脂層43の屈折率より低い遠赤外線反射フィルム
(2)表面側遠赤外線反射層20の最表面に位置する第1樹脂層21の屈折率が、第2樹脂層23の屈折率より低く、裏面側遠赤外線反射層40の最表面に位置する第3樹脂層41の屈折率が、第4樹脂層43の屈折率より高い遠赤外線反射フィルム
(3)表面側遠赤外線反射層20の最表面に位置する第1樹脂層21の屈折率が、第2樹脂層23の屈折率より高く、裏面側遠赤外線反射層40の最表面に位置する第3樹脂層41の屈折率が、第4樹脂層43の屈折率より高い遠赤外線反射フィルム
【0028】
本発明の遠赤外線反射フィルムを製造する方法は、特に限定されない。
図2の構造を有する遠赤外線反射フィルムを製造する場合、以下の方法を適用することができる。
(A)第1樹脂層を形成する樹脂組成物、第2樹脂層を形成する樹脂組成物、第3樹脂層を形成する樹脂組成物、及び、第4樹脂層を形成する樹脂組成物を、Tダイ多層共押出成形、インフレーション成形等に供する方法
(B)第1樹脂層を形成する樹脂組成物を用いて得られたフィルム、第2樹脂層を形成する樹脂組成物を用いて得られたフィルム、第3樹脂層を形成する樹脂組成物を用いて得られたフィルム、及び、第4樹脂層を形成する樹脂組成物を用いて得られたフィルムを、サーマルラミネーション、ドライラミネーション等に供する方法
(C)第1樹脂層を形成する樹脂組成物を有機溶媒に溶解して得られた溶液を、ドラム又は無端ベルトの上に流延した後、塗膜から有機溶媒を蒸発させて、長尺状のフィルムを形成させ、次いで、このフィルムの上に、第2樹脂層を形成する樹脂組成物を有機溶媒に溶解して得られた溶液を、ドラム又は無端ベルトの上に流延し、乾燥する操作を、繰り返し行って、第1樹脂層及び第2樹脂層が交互に形成された積層フィルムを作製し、この積層フィルムに対して、第3樹脂層を形成する樹脂組成物を有機溶媒に溶解して得られた溶液、及び、第4樹脂層を形成する樹脂組成物を有機溶媒に溶解して得られた溶液を、上記と同様にして用いて、第3樹脂層及び第4樹脂層を交互に形成させる方法
本発明においては、各層の厚さを制御しやすいことから、方法(A)が好ましい。更に、各方法により多層フィルムを形成した後、延伸処理することが好ましい。
【0029】
図3の構造を有し、樹脂層からなる中間層60を備える遠赤外線反射フィルムを製造する場合、以下の方法を適用することができる。
(D)第1樹脂層を形成する樹脂組成物、第2樹脂層を形成する樹脂組成物、中間層60を形成する樹脂組成物、第3樹脂層を形成する樹脂組成物、及び、第4樹脂層を形成する樹脂組成物を、Tダイ多層共押出成形、インフレーション成形等に供する方法
(E)第1樹脂層を形成する樹脂組成物及び第2樹脂層を形成する樹脂組成物を、Tダイ多層共押出成形、インフレーション成形等に供して、例えば、両面側の最表層を第1樹脂層として、第1樹脂層及び第2樹脂層が交互に積層されたフィルム(表面側遠赤外線反射層20形成用フィルム)を得て、同様に、第3樹脂層を形成する樹脂組成物及び第4樹脂層を形成する樹脂組成物を、Tダイ多層共押出成形、インフレーション成形等に供して、例えば、両面側の最表層を第3樹脂層として、第3樹脂層及び第4樹脂層が交互に積層されたフィルム(裏面側遠赤外線反射層40形成用フィルム)を得て、その後、中間層60を形成する樹脂組成物の溶融物を、押出機から、表面側遠赤外線反射層20形成用フィルムの第1樹脂層、及び、裏面側遠赤外線反射層40形成用フィルムの第3樹脂層の間に、フィルム状に押出且つ圧着(押出ラミネーション成形)して、表面側遠赤外線反射層20、中間層60及び裏面側遠赤外線反射層40を、この順に備えるフィルムを形成する方法
(F)中間層60を構成することとなるフィルム(又は発泡樹脂フィルム)を供給しながら、このフィルムの表面に、第1樹脂層を形成する樹脂組成物、及び、第2樹脂層を形成する樹脂組成物を用いて、押出ラミネーション成形を行い、次いで、得られた積層フィルムにおける中間層60の表面に、第3樹脂層を形成する樹脂組成物、及び、第4樹脂層を形成する樹脂組成物を用いて、押出ラミネーション成形を行う方法
【0030】
本発明の遠赤外線反射フィルムは、車両天井材の形成に用いられる(図4参照)。図4は、遠赤外線反射フィルム10が基材80に接合されてなる車両天井材100を、自動車の天井(天井パネルP)に配設する態様を示す。
上記車両天井材100は、基材80と、この基材80の表面に配された遠赤外線反射フィルム10とからなる複合物である。図4に示すように、基材80上の遠赤外線反射フィルム10では、表面側遠赤外線反射層20が図4の上面側にあり、裏面側遠赤外線反射層40が基材80に面している。尚、図4に示していないが、上記車両天井材100は、通常、基材80の下面側(基材80の車室内側)に表皮層を備える。
【0031】
上記のように、遠赤外線反射フィルム10は、表面側遠赤外線反射層20において、80℃~120℃の温度を与える遠赤外線を効率よく反射することができ、裏面側遠赤外線反射層40において、15℃~80℃程度の温度を与える遠赤外線を効率よく反射することができるため、この遠赤外線反射フィルム10を備える自動車では、太陽からの熱に由来する遠赤外線が、自動車内の天井面から放射されても、熱は表面側遠赤外線反射層20で反射され車室内側には伝わりにくい。そのため、熱暑期において、室内温度の上昇を抑制することができる。また、寒冷期に、エアコンディショナーを駆動させて暖気を車内に導入した場合、裏面側遠赤外線反射層40により、車内の暖房効果を持続させることができる。従って、いずれの場合も、エアコンディショナーの使用頻度を減少させることができ、無駄なエネルギー消費を防ぐことができる。
【実施例
【0032】
実験例1
下記の方法で得られた、表面側遠赤外線反射層形成用フィルム(f1)及び裏面側遠赤外線反射層形成用フィルム(f2)と、中間層形成用樹脂組成物(r1)とを用いて、図3で表される遠赤外線反射フィルム10を製造した。
(f1)表面側遠赤外線反射層形成用フィルム
第1樹脂層を形成する樹脂原料として、ポリエチレン(密度:924kg/m、屈折率:1.54)を用いた。また、第2樹脂層を形成する樹脂原料として、ポリエチレン(密度:924kg/m、屈折率:1.54)と、屈折率調整用フィラーとして酸化チタン粒子(数平均粒子径:200nm、屈折率:2.72)とを含有する樹脂組成物(以下、「樹脂組成物(R1)」という)を用いた。尚、この酸化チタン粒子の含有量は、樹脂組成物(R1)の全体に対して35質量%である。
これらの樹脂原料を、第1樹脂層及び第2樹脂層が交互に積層されるように、Tダイ多層共押出成形に供して、合計33層の第1樹脂層(1層の厚さ:1.20μm、屈折率:1.54)と、合計32層の第2樹脂層(1層の厚さ:1.20μm、屈折率:1.64)とからなる、表裏いずれも最表面が第1樹脂層である表面側遠赤外線反射層形成用フィルム(厚さ:78μm)を得た。
(f2)裏面側遠赤外線反射層形成用フィルム
第3樹脂層を形成する樹脂原料として、ポリエチレン(密度:924kg/m、屈折率:1.54)を用いた。また、第4樹脂層を形成する樹脂原料として、樹脂組成物(R1)を用いた。
これらの樹脂原料を、第3樹脂層及び第4樹脂層が交互に積層されるように、Tダイ多層共押出成形に供して、合計33層の第3樹脂層(1層の厚さ:1.40μm、屈折率:1.54)と、合計32層の第4樹脂層(1層の厚さ:1.40μm、屈折率:1.64)とからなる、表裏いずれも最表面が第3樹脂層である裏面側遠赤外線反射層形成用フィルム(厚さ:91μm)を得た。
(r1)中間層形成用樹脂組成物
ポリエチレン(密度:924kg/m、屈折率:1.54)を用いた。
【0033】
表面側遠赤外線反射層形成用フィルム(f1)及び裏面側遠赤外線反射層形成用フィルム(f2)の間に、中間層形成用樹脂組成物(r1)の溶融物を押出機から樹脂フィルムを押出すと同時に、押出ラミネーション成形を行うことにより、表面側遠赤外線反射層形成用フィルム(f1)からなる表面側遠赤外線反射層20と、厚さ15μmの中間層60と、裏面側遠赤外線反射層形成用フィルム(f2)からなる裏面側遠赤外線反射層40とを、順次、備える、厚さ184μmの遠赤外線反射フィルム10を得た(図3参照)。
【0034】
得られた遠赤外線反射フィルム10について、下記の反射率測定を行い、表面側遠赤外線反射層の表面において反射率55%が得られ、裏面側遠赤外線反射層の表面において反射率46%を得た。
<赤外分光による反射率測定>
フーリエ変換赤外分光光度計に金コーティング積分球を装着し、サンプルサイズを40mm×40mmとしたサンプルフィルム又は基準反射板を積分球に10°の位置に取り付けて、測定波長範囲2μm~20μmの全反射測定を、表面側遠赤外線反射層及び裏面側遠赤外線反射層の両方の表面に対して行い、それぞれのピーク波長において、基準反射板として金コーティング表面鏡(平滑)の反射率を100%としたときの相対反射率を得た。尚、測定環境条件は、温度25℃±2℃、湿度50±20%RHである。
【0035】
実験例2
表面側遠赤外線反射層形成用フィルム(f1)を、第1樹脂層及び第2樹脂層の1層厚さが1.15μmであるものとし、裏面側遠赤外線反射層形成用フィルム(f2)を、第3樹脂層及び第4樹脂層の1層厚さが1.15μmであるものとした以外は、実験例1と同様にして、遠赤外線反射フィルムを製造した。そして、反射率測定を行ったところ、表面側遠赤外線反射層の表面における反射率は73%であり、裏面側遠赤外線反射層の表面における反射率は71%であった。
【0036】
実験例3
第2樹脂層及び第4樹脂層を形成する樹脂原料として、ポリエチレン(密度:924kg/m、屈折率:1.54)と、屈折率調整用フィラーとして酸化チタン粒子(数平均粒子径:200nm、屈折率:2.72)とを含有する樹脂組成物(以下、「樹脂組成物(R2)」という)を用いた。尚、この酸化チタン粒子の含有量は、樹脂組成物(R2)の全体に対して17.5質量%である。
樹脂組成物(R1)に代えて、樹脂組成物(R2)を用い、また、裏面側遠赤外線反射層形成用フィルム(f2)を、第3樹脂層及び第4樹脂層の1層厚さが1.20μmであるものとした以外は、実験例1と同様にして、遠赤外線反射フィルムを製造した。そして、反射率測定を行ったが、表面側遠赤外線反射層及び裏面側遠赤外線反射層の各表面において、反射のピークが現れなかった。
【0037】
実験例1~3の結果を表1に示す。表1より、表面側遠赤外線反射層と裏面側遠赤外線反射層の各層の厚みが異なることによって、反射する遠赤外線波長のピーク波長が異なる。これにより、表面側遠赤外線反射層は高温(80℃~120℃)の温度を与える赤外線の波長を反射し、裏面側遠赤外線反射層は低温(15℃~80℃)の温度を与える赤外線の波長を反射していることが分かる。従って、実験例1の遠赤外線反射フィルムは、裏面側遠赤外線反射層が車室内側を向くように、自動車のルーフの内側に配される車両用天井材の形成に有用である。
【表1】
【0038】
尚、前述の記載は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施態様を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく、説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その態様において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施態様を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、寧ろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の遠赤外線反射フィルムは、自動車のルーフの内側に配される車両用天井材の形成に好適である。
【符号の説明】
【0040】
2:短波長遠赤外線、4:長波長遠赤外線、10:赤外線反射フィルム、20:表面側赤外線反射層、21:第1樹脂層、23:第2樹脂層、40:裏面側赤外線反射層、41:第3樹脂層、43:第4樹脂層、60:中間層、80:基材、100:車両天井材、P:天井パネル
図1
図2
図3
図4