(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】固定治具およびこれを用いた固定方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20220525BHJP
【FI】
E04G21/02
(21)【出願番号】P 2018063018
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2020-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】工藤 正智
(72)【発明者】
【氏名】江里口 玲
(72)【発明者】
【氏名】井坂 幸俊
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-198987(JP,A)
【文献】特開2008-138452(JP,A)
【文献】特開2014-065145(JP,A)
【文献】特開2008-256596(JP,A)
【文献】特開2008-137284(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0072978(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0218614(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の鉄筋に沿って一対で取り付けられ、コンクリートが打設される位置において一対で対象物を挟み込んで固定する固定治具であって、
無機化合物で形成され、対象物に当接する当接体と、
鉄筋に対して前記当接体を取り付ける取り付け具と、を備え
、
前記当接体は、対象物が当接する面に、対象物の形状に嵌合する有底穴が形成されていることを特徴とする固定治具。
【請求項2】
コンクリートが打設される位置において一対で対象物を挟み込んで固定する固定治具であって、
無機化合物で形成され、対象物に当接する当接体と、
鉄筋に対して前記当接体を取り付ける取り付け具と、を備え、
前記当接体は、対象物が当接する面に、対象物の形状に嵌合する有底穴が形成されており、
前記有底穴は、前記対象物が当接する面上の一定方向に沿って段階的に複数の位置に設けられていることを特徴とする固定治具。
【請求項3】
コンクリートが打設される位置において一対で対象物を挟み込んで固定する固定治具であって、
無機化合物で形成され、対象物に当接する当接体と、
鉄筋に対して前記当接体を取り付ける取り付け具と、を備え、
前記当接体は、対象物に当接する面から反対側の面までケーブルを挿通するために設けられた貫通孔が形成されていることを特徴とする固定治具。
【請求項4】
前記当接体は、対象物における前記当接体に接する面を覆うことを特徴とする請求項1
から請求項3のいずれかに記載の固定治具。
【請求項5】
前記当接体は、対象物に当接する面以外の面にワイヤを配置するための凹部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれかに記載の固定治具。
【請求項6】
前記取り付け具は、前記当接体が嵌る嵌着部および鉄筋を挟み込む挟持部を有することを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれかに記載の固定治具。
【請求項7】
前記当接体は、コンクリートと同等以上の強度を有するセメント硬化体またはセラミックス材料で形成されることを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれかに記載の固定治具。
【請求項8】
請求項1から請求項
7のいずれかに記載の固定治具を用いた対象物の固定方法であって、
前記当接体で対象物を挟み込む工程と、
前記取り付け具を鉄筋に固定させる工程と、を含むことを特徴とする対象物の固定方法。
【請求項9】
前記挟み込みの工程後に、硬化材料で対象物を被覆して硬化させる工程を更に含むことを特徴とする請求項
8記載の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートが打設される位置において一対で対象物を挟み込んで固定する固定治具およびこれを用いた固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物においては、塩害や中性化等の影響により鉄筋が腐食し、構造物の耐荷力および長期耐久性が損なわれることがある。そこで、近年、コンクリート構造物の維持管理が注目を集めており、コンクリート構造物に対する腐食環境や内部ひずみのモニタリング技術が求められている。
【0003】
このようなモニタリングの一手法として、コンクリート構造物中に予めセンサおよびセンサに接続されたRFIDタグを配置する方法が知られている。
図12は、センサS1およびRFIDタグT1を示す概略図である。
図12に示すように、センサS1は通信ケーブルC1でRFIDタグT1に接続されており、これらがコンクリート構造物中に埋設された状態においてセンサS1で検出された情報はRFIDタグT1へ送信され、コンクリート構造物の外部から非接触で読み取られる。このようなセンサやRFIDタグの取り付け方法が、従来、提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、RFIDタグをコの字形金具の結合面に接着し、コの字形金具とネジで鉄筋を挟んで締結する方法が記載されている。特許文献2には、センサに凹部を設け、凹部を金属製取り付け治具で挟み込み、鉄筋に取り付ける方法が記載されている。特許文献3には、座繰り部が形成された位置調整用のセラミックス部材を噛ませてICタグを鉄筋に取り付ける方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献4には、型枠の内面との間隔を一定に保持するために水平方向外方へ延びる一対の板状のスペーサを、格子状に配置された鉄筋に固定し、スペーサの間隔を一定に保持する板状の接続部の外側にICタグを取り付けることでICタグを位置決めする方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-348538号公報
【文献】特開2016-023119号公報
【文献】特開2016-141591号公報
【文献】特開2008-138452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のようなRFIDタグやセンサを埋設する手法は、コンクリートを打設する現場での作業となることから、できる限り素早く簡便にRFIDタグおよびセンサを固定することが望まれている。また、上記のような方法では、ワイヤや固定用バンドにより、センサやRFIDタグを複数個所に取り付けるため、通常、埋設位置やセンサの方向などを正確に設置しなければならず取付けに時間とノウハウが必要となる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、コンクリートの打設現場において、対象物を所望の位置に素早く簡便に固定できる固定治具およびこれを用いた固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の固定治具は、コンクリートが打設される位置において一対で対象物を挟み込んで固定する固定治具であって、無機化合物で形成され、対象物に当接する当接体と、鉄筋に対して前記当接体を取り付ける取り付け具と、を備えることを特徴としている。
【0010】
これにより、コンクリート打設現場において、対象物としてセンサまたはRFIDタグを所望の位置に素早く簡便に固定できる。また、技術的な知識や経験がなくても、誰でも対象物の位置、向きをずらすことなく、固定することができる。
【0011】
(2)また、本発明の固定治具は、前記当接体が、対象物における前記当接体に接する面を覆うことを特徴としている。これにより、対象物の当接体に接する面が固定治具で覆われるので、より対象物の位置や角度が安定し、ずれたりすることがない。さらに、エポキシ等で封印するだけよりも腐食因子が対象物に侵入しない。特に対象物が腐食センサの場合に有効である。
【0012】
(3)また、本発明の固定治具は、前記当接体が、対象物が当接する面に、対象物の形状に嵌合する有底穴が形成されていることを特徴としている。これにより、対象物が当接面に平行な方向へずれるのを防止できる。
【0013】
(4)また、本発明の固定治具は、前記有底穴が、前記対象物が当接する面上の一定方向に沿って段階的に複数の位置に設けられていることを特徴としている。これにより、複数の有底穴のいずれかを使用することで一種類の固定治具を用いて段階的な所望の位置で対象物を固定できる。
【0014】
(5)また、本発明の固定治具は、前記当接体が、対象物に当接する面から反対側の面までケーブルを挿通するために設けられた貫通孔が形成されていることを特徴としている。これにより、センサを対象物として取り付ける際には当接体にケーブルを挿通できる。その結果、ケーブルが固定の障害になることなく当接体でセンサを挟み込める。
【0015】
(6)また、本発明の固定治具は、前記当接体が、対象物に当接する面以外の面にワイヤを配置するための凹部が形成されていることを特徴としている。これにより、当接体で対象物を挟み込み、ワイヤで外側から縛って強固に対象物を固定できる。
【0016】
(7)また、本発明の固定治具は、前記取り付け具が、前記当接体が嵌る嵌着部および鉄筋を挟み込む挟持部を有することを特徴としている。これにより、当接体を簡易かつ強固に鉄筋に取り付けることができる。
【0017】
(8)また、本発明の固定治具は、前記当接体が、コンクリートと同等以上の強度を有するセメント硬化体またはセラミックス材料で形成されることを特徴としている。これにより、構造物の耐力を維持し、無線通信の阻害を抑制できる。
【0018】
(9)また、本発明の固定方法は、上記(1)~(8)のいずれかに記載の固定治具を用いた対象物の固定方法であって、前記当接体で対象物を挟み込む工程と、前記取り付け具を鉄筋に固定させる工程と、を含むことを特徴としている。これにより、コンクリート打設現場において、対象物としてRFIDタグまたはセンサを所望の位置に素早く簡便に固定できる。また、技術的な知識や経験がなくても、誰でも対象物の位置、向きをずらすことなく、固定することができる。
【0019】
(10)また、本発明の固定方法は、前記挟み込みの工程後に、硬化材料で対象物を被覆して硬化させる工程を更に含むことを特徴としている。このように予め対象物をコンクリート等の硬化材料で被覆することでコンクリート打設現場での作業が容易になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コンクリートの打設現場において、対象物を所望の位置に素早く簡便に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(a)、(b)それぞれ第1実施形態における固定治具を示す斜視図および正面図である。
【
図2】(a)、(b)それぞれ第1実施形態における固定治具の使用態様を示す斜視図である。
【
図3】(a)、(b)それぞれ第2実施形態における有底穴を有する固定治具を示す斜視図である。
【
図4】第3実施形態における複数の有底穴が設けられた固定治具を示す斜視図である。
【
図5】第4実施形態における三角板状の当接体を有する固定治具を示す正面図である。
【
図6】(a)、(b)それぞれ五角板状および台形板状の当接体を示す斜視図である。
【
図7】(a)、(b)それぞれ第4実施形態における当接面の狭い固定治具およびその使用態様を示す正面図および斜視図である。
【
図8】(a)、(b)それぞれ第5実施形態における貫通孔を有する固定治具およびその使用態様を示す斜視図である。
【
図9】第6実施形態におけるワイヤで縛った固定治具の使用態様を示す斜視図である。
【
図10】(a)、(b)それぞれ第8実施形態における溝を有する当接体および固定治具を示す斜視図である。
【
図11】第7実施形態における硬化材料で被覆した固定治具の使用態様を示す斜視図である。
【
図12】センサおよびRFIDタグを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0023】
[第1実施形態]
(固定治具の構成)
図1(a)、(b)は、それぞれ固定治具100を示す斜視図および正面図である。
図1(a)、(b)に示すように、固定治具100は、当接体110および取り付け具120を備えており、コンクリートが打設される現場の所望の位置において用いられ、一対で対象物を挟み込んで固定する。
図1(a)、(b)では、固定治具100単体の構成を示しているが、使用時には2つの固定治具100を用いて対象物を挟み込む。
図2(a)、(b)は、それぞれ固定治具100の使用態様を示す斜視図である。
図2(a)は、対象物としてセンサS1を固定する場面を示しており、
図2(b)は、対象物としてRFIDタグT1を固定する場面を示している。対象物としてはその他、アンテナも用いることができる。
【0024】
当接体110は、対象物を挟み込める硬さを有する材料で形成され、対象物に当接する。当接体110は、樹脂や金属で形成されてもよいが、固定の確実性、コスト、腐食因子の侵入防止等の観点からセメント硬化体またはセラミックスのような無機化合物で形成されることが好ましい。セメント硬化体には、コンクリート、モルタル、セメントペースト等を含む。セメント硬化体である場合には、セメントと骨材とを混錬した材料またはセメントペーストからなる硬化材料を設計された形状の型枠に流し込み養生することで製造できる。また、セラミックスである場合には、粉末の材料を設計された形状に成形し、焼成することで製造できる。当接体110は、打設面に対するかぶりを一定にするためのスペーサとしても用いることができる。
【0025】
図1(a)、(b)に示す例では、当接体110は、丸い4つの角と窪んだ辺を有する四角板状に形成されている。
図2(a)、(b)に示すように、板状体の主面(最も広い面)が対象物に当接する面112として用いられる。当接体110は、板形状の辺が窪んでいることで側面には凹部が形成されており、鉄筋が取り付けやすくなっている。この凹部は、後述するようにワイヤの配置にも利用可能である。後述するように、当接体110の形状は、図示する例に限定されないが、凹凸を利用して取り付け具120を嵌め込みやすい形状であることが好ましい。
【0026】
また、当接体110は、コンクリートと同等以上の強度を有するセメント硬化体またはセラミックス材料で形成されることが好ましい。これにより、コンクリート構造物の耐力低下につながらず、無線通信の阻害を抑制できる。当接体110は、対象物における当接体110に接する面S1a、T1aを覆うことが好ましい。すなわち、当接体110がセンサS1またはRFIDタグT1の側面を覆っていることが好ましい。これにより、対象物の側面をエポキシ等で接着、封印するだけよりも、側面方向から腐食因子が対象物に侵入しない。このような構成は、特に対象物が腐食を検知するセンサS1である場合に、正確な検出を確保するのに有効である。当接体110は、対象物における当接体110に接する面S1a、T1aの全てを覆うことがさらに好ましい。
【0027】
取り付け具120は、当接体110が嵌る嵌着部123および鉄筋R1を挟み込む挟持部126を有し、鉄筋R1に対して当接体110を取り付ける。これにより、コンクリート打設現場において、対象物としてセンサS1またはRFIDタグT1を所望の位置に素早く簡便に固定できる。また、技術的な知識や経験がなくても、誰でも対象物の位置、向きをずらすことなく、固定することができる。なお、現場で用いる際には、当接体110と取り付け具120との嵌着がすでに完了していることが好ましい。
【0028】
取り付け具120は、弾性力を有する金属板で形成され、嵌着部123および挟持部126が一体で形成されていることが好ましい。例えば、SUS板を切り出し、必要があれば加熱し、加工することで製造できる。嵌着部123は、開口部が当接体110の側面長さよりわずかに小さい概略コ字状に形成されている。嵌着部123は、開口部を広げて2つの爪部を当接体110の窪みに入れて当接体110の側面に嵌め込めるようになっている。
【0029】
挟持部126は、バランスを維持して鉄筋R1を挟持できるように嵌着部123の両側に1つずつ設けられている。したがって、取り付け具120は、交互に嵌着部123と挟持部126の開口部が形成されている。挟持部126は、鉄筋R1を本体部(挟持の際に鉄筋R1に接し押圧する部分)に導きやすいように開口部がハの字状に形成されており、本体部は鉄筋R1の径よりわずかに狭く形成され、開いた本体部が弾性力で鉄筋R1を挟み込めるように形成されている。
【0030】
(固定治具を用いた固定方法)
上記のように構成された固定治具100を用いた対象物の固定方法を説明する。まず、予め当接体110に取り付け具120が嵌着された固定治具100を2つ準備し、それぞれの当接体110の当接面112を対象物に当てて挟み込む。そして、挟み込んだ状態を維持しつつ、コンクリート打設現場の所望の位置において、組み上げられた鉄筋R1に取り付ける。取り付けの際には、取り付け具120の挟持部126で鉄筋R1を挟み込む。対象物を2つの当接体110で挟み込んだ状態を維持するためには、例えば固定治具100の外側からワイヤで縛ることができる。ワイヤを用いる場合の詳細は後述する。なお、上記の順番の方が作業の簡便性からは好ましいが、先に2つの固定治具100を鉄筋R1に取り付けてから、その後、対象物を挟み込んで位置を固定することも可能である。
【0031】
[第2実施形態]
上記の実施形態では、当接体110の当接面112が平面であるが、有底穴が設けられていてもよい。
図3(a)、(b)は、それぞれ有底穴215、315を有する固定治具200、300を示す斜視図である。
図3(a)に示す例では、当接体210の当接面212にセンサS1の側面形状に合った円形の有底穴215が形成されている。なお、有底穴は、対象物を受け止める底を有する穴を指し、必ずしも穴の全面に底があるものだけに限定されない。例えば、有底穴には座繰りのように部分的に底があるものや、すり鉢状の受け止め面を有するものも含む。
【0032】
また、
図3(b)に示す例では、当接体310の当接面312にRFIDタグT1の側面形状に合った長方形の有底穴315が形成されている。このように当接体210、310は、対象物が当接する面212、312に、対象物の形状に嵌合する有底穴215、315が形成されていることが好ましい。これにより、対象物が当接面212、312に平行な方向へずれるのを防止でき、鉄筋R1に固定治具300を取り付ける作業が容易になり、取り付け後も対象物を強固に固定できる。
【0033】
[第3実施形態]
上記の実施形態では、当接体210、310に有底穴215、315が一つだけ設けられているが、複数の有底穴が設けられていてもよい。
図4は、複数の有底穴415a、415bが設けられた固定治具400を示す斜視図である。
【0034】
図4に示す例では、有底穴415a、415bが、対象物が当接する面上の一定方向(鉄筋R1の径方向)に沿って段階的に2つの位置に設けられている。これにより、有底穴415a、415bのいずれかを使用することで一種類の固定治具400を用いて段階的な位置で対象物を固定できる。その結果、例えば、打設面のような基準位置からRFIDタグT1までの距離(かぶり)を調整できる。
【0035】
[第4実施形態]
上記の実施形態では、当接体110の形状が丸い4つの角と窪んだ辺を有する四角板状であるが、その他の形状であってもよい。
図5は、三角板状の当接体510を有する固定治具500を示す正面図である。
図5に示す例では、当接体510は、丸い3つの角と窪んだ辺を有する三角板状に形成されている。3つの角のうち1つが最も大きく形成され、他の2つの角の凸部と窪みに取り付け具120の嵌着部123が嵌め込まれている。なお、当接体110の四角板状は、鉄筋取り付け側を底面として底面の長い長方板形状であってもよいし、側面の長い長方板形状であってもよい。また、正方板形状であってもよいし、後述のように台形板状であってもよい。
【0036】
図6(a)、(b)は、それぞれ五角板状および台形板状の当接体を示す斜視図である。
図6(a)に示す例では、当接体510aが五角板状に形成されている。また、当接体510aの側面中央には厚み方向に沿って溝511aが形成され、一本の金属のロッドを曲げて形成した取り付け具520aが嵌められている。このような当接体510aおよび取り付け具520aで固定治具500aが構成されている。この場合、鉄筋が当接体510aの底面515aの長手方向に平行な配置で取り付けが可能となり、例えば2本の鉄筋に取り付けた固定治具500aで対象物を挟むことが可能になる。一方、
図6(b)に示す例では、当接体510bが台形板状に形成されている。この場合には、台形の最も長い辺に当たる底面に形成された凹部515bを利用して並行に設けられた複数の鉄筋に当接体510bを取り付ける態様が可能となる。
【0037】
図7(a)、(b)は、それぞれ当接面612の狭い固定治具600およびその使用態様を示す正面図および斜視図である。
図7(a)、(b)に示す例では、当接体610が中央の両側面に凹部614を有する正方板状に形成され、当接体610の主面に対して取り付け具120が嵌着している。そして、凹部614を有する側面に隣り合う側面(主面側から見たときの一辺に相当)が当接面612となっており、
図7(b)に示す使用態様では、対象物としてRFIDタグT1が固定されている。このような使用態様では、特に鉄筋R1の軸方向について強固に対象物を固定できる。
【0038】
[第5実施形態]
上記の例では、当接体210に貫通孔は設けられていないが、対象物が有するケーブルを通す貫通孔が設けられていてもよい。
図8(a)、(b)は、それぞれ貫通孔717を有する固定治具700およびその使用態様を示す斜視図である。
図8(a)、(b)に示すように、固定治具700は、当接体710を備えている。
【0039】
当接体710には、有底穴715と有底穴715の中央に対象物に当接する面712から反対側の面713まで通信ケーブルC1を挿通するために設けられた貫通孔717が形成されている。これにより、センサS1を対象物として取り付ける際には当接体710に通信ケーブルC1を挿通できる。その結果、通信ケーブルC1が固定の障害になることなく容易に当接体710でセンサS1を挟み込める。
【0040】
なお、貫通孔717の位置は、当接面712の中央でなくてもよく、有底穴715にセンサS1を当接させたときのセンサS1の側面より外側であってもよい。例えば、センサS1が光ファイバーを利用した歪みセンサであったときには、センサS1の側面より外側に貫通孔717がある方が設計上好ましい。なお、光ファイバーを用いる場合には、光ファイバーが通信ケーブルC1に相当する。また、ケーブルは必ずしも通信ケーブルに限定されず、電線も含む。
【0041】
[第6実施形態]
上記の実施形態では、一対の固定治具100により対象物を挟む力は取り付け具120による鉄筋R1を挟持する弾性力のみであるが、固定治具100の使用時には、別途、対象物を挟む力を与えておくことが好ましい。
図9は、ワイヤ800で縛った固定治具100の使用態様を示す斜視図である。
【0042】
当接体110は、辺が窪んだ四角板状に形成されていることから、その窪みがワイヤ800を配置するための凹部となっている。すなわち、凹部は対象物に当接する面112以外の面に形成されている。これにより、当接体110で対象物を挟み込み、ワイヤ800で外側から縛って強固に対象物を固定できる。なお、
図9に示す例は一例であり、当接体110の対象物に当接する面112以外の面にワイヤ800を這わせるための溝を設けてもよい。
【0043】
[第7実施形態]
上記の実施形態では、対象物を挟むためにワイヤが用いられているが、鉄筋への取り付けのためにワイヤが用いられてもよい。
図10(a)、(b)は、それぞれ溝を有する当接体および固定治具900を示す斜視図である。
図10(a)に示すように当接体910は、側面に側面長手方向に沿った溝915を有する。そのため、
図10(b)に示すように当接体910の凹部に鉄筋R1を当てて溝915にワイヤ800を這わせ当接体910をワイヤ800で鉄筋R1にくくりつけることができる。このようにして対象物を当接体910で挟んだ状態を維持しつつワイヤ800で当接体910を鉄筋R1に取り付けることができる。
【0044】
[第8実施形態]
上記の使用態様では、固定治具の使用時に対象物を何らかの材料で被覆することはないが、当接体で対象物を挟み込んだ状態において硬化体で被覆してもよい。
図11は、硬化材料で被覆した固定治具100の使用態様を示す斜視図である。硬化材料には、例えばコンクリート、モルタル、セメントペースト等のセメント硬化材料がある。また、熱硬化性の樹脂等を硬化材料として用いてもよい。この場合には、当接体110で対象物を挟み込んでから、その状態において硬化材料で対象物を被覆し、硬化材料を硬化させて被覆部D1を形成する。このように予め対象物をコンクリート等で被覆することで対象物を完全に固定治具100に固定した状態にでき、保管、運搬も一括でできるので部品の間違った選択や紛失を防止でき、かつコンクリート打設現場での作業が容易になる。また、打設までの保管時の劣化や打設時の衝撃からに対象物を保護することもできる。被覆作業も側面は当接体110が型枠代わりになるので、容易となる。
【0045】
対象物がセンサである場合は、腐食因子の浸透を妨げることのないペーストやモルタルで被覆して使用すればよい。腐食因子の浸透を妨げない被覆部は、塩分等に代表される腐食因子の浸透が周囲のコンクリートより遅くならないよう、周囲のコンクリートと同等の強度かやや低い強度のセメント硬化体とする。また、当該セメント硬化体で被覆されたセンサは、導体パターン部がアルカリ環境になるため不動態被膜が形成され、大気中で安定であり、かつコンクリートの打設に耐える十分な強度を有する。
【符号の説明】
【0046】
100、200、300、400、500、500a、600、700 固定治具
110、210、310、510、510a、510b、610、710、910 当接体
112、212、312、612、712 当接面
120、520a 取り付け具
123 嵌着部
126 挟持部
215、315、415a、415b、715 有底穴
511a 溝
515b、614 凹部
713 当接面とは反対側の面
717 貫通孔
800 ワイヤ
915 溝
C1 通信ケーブル
D1 被覆部
R1 鉄筋
S1 センサ
T1 RFIDタグ
S1a、T1a 当接体に当接する面