(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】滴下装置および方法
(51)【国際特許分類】
B05B 1/14 20060101AFI20220525BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20220525BHJP
B01J 4/02 20060101ALI20220525BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
B05B1/14 Z
B05D3/00 B
B01J4/02 B
B05C5/00 101
(21)【出願番号】P 2018183873
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】野中 潔
(72)【発明者】
【氏名】増田 賢太
(72)【発明者】
【氏名】一坪 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】松井 克己
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-043939(JP,A)
【文献】特開2011-235507(JP,A)
【文献】特開2004-347695(JP,A)
【文献】特開昭55-035945(JP,A)
【文献】特開2004-313974(JP,A)
【文献】特開2017-023934(JP,A)
【文献】特開2017-023935(JP,A)
【文献】特開2012-061417(JP,A)
【文献】特開2006-062886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 4/00-7/02
B05B 1/00-3/18
7/00-9/08
B05C 5/00-21/00
B05D 1/00-7/26
C01G25/00-47/00
49/10-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルから液体を滴下する滴下装置であって、
前記液体を貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクの底面に配置された複数の前記ノズルと、
前記貯留タンクに前記液体を供給する液体供給部と、
前記ノズルが配置された底面の対向面に配置された空気抜き用バルブと、を備え、
前記貯留タンクは、前記複数のノズル、前記液体供給部、および前記空気抜き用バルブを閉塞することで密閉状態とな
り、
前記液体供給部は、前記貯留タンクに前記液体が貯留され、前記液体供給部および前記空気抜きバルブが閉塞され、前記複数のノズルが下向きに解放された状態で前記液体が自然に排出されない低真空状態において、所定の速度の供給量で前記貯留タンクに前記液体を供給でき、前記複数のノズルから前記供給量に応じた液滴が滴下されることを特徴とする滴下装置。
【請求項2】
前記複数のノズルは、最も狭い部分の直径が1.2mm以上4.0mm以下であることを特徴とする請求項1記載の滴下装置。
【請求項3】
前記複数のノズルは、長さが50mm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の滴下装置。
【請求項4】
貯留タンクが複数のノズル、液体供給部、および空気抜き用バルブを閉塞することで密閉状態となる滴下装置に適用される液体の滴下方法であって、
前記液体供給部から粘度が1cp以上1000cp以下の前記液体を供給し、前記空気抜き用バルブから空気を排出しつつ、前記複数のノズルが閉塞された前記貯留タンクに前記液体を貯留する工程と、
前記空気抜き用バルブを閉塞する工程と、
前記複数のノズルを開放し、前記複数のノズルからの前記液体の排出が自然に停止するまで待機する工程と、
前記液体供給部から前記貯留タンクに、前記複数のノズルの個数および前記各ノズルから滴下する前記液体の量に応じて、前記液体を調節し供給する工程と、を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の滴下装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を液滴の状態で滴下させる工程は、工業的にいくつもの例が見られる。例えば、液晶パネルに液晶を滴下する工程、薬剤を含む液体を滴下・乾燥させて顆粒状にする工程、半導体ウェハに溶媒で溶解させた高粘度コーティング剤を滴下しスピンナにより塗布する工程、ケイ酸アルカリ水溶液を酸性溶液中に滴下し沈降シリカを得る工程、などがある。
【0003】
これらの工程においては、滴下装置に、滴下量を定量的に制御できることや、液の停止時の液だれや糸曳きを防げることが求められる。また、コスト面から、一つの液供給機構で複数ノズルからの滴下を可能とするなど、機構を簡便にすることが望まれる。例えば、チューブポンプを用いてチューブから滴下を行う方法は、定量性は高いが、一本のチューブごとに一基の液供給機構が必要となることから、工業的な利用には適していない。
【0004】
特許文献1には、密閉されたタンクに高粘性コーティング剤を充填し、これを天地反転させ、電磁弁による開閉制御を行うことで重力による滴下を行い、配管中に残液が残ることを防ぐことが可能な滴下装置が記載されている。特許文献2には、ノズル内部に高圧エアー噴射装置を付け、ノズルからの糸曳きを防ぐことが可能な滴下装置が記載されている。特許文献3には、構造上の工夫によりタンク内の液面が常に一定高さで保たれるようにし、送液機構を要さずに重力のみで定量性の高い滴下が可能な滴下装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平05-138101号公報
【文献】特開昭54-058360号公報
【文献】特開平11-156178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~3は、いずれも、比較的簡便な機構で定量性の高い滴下を可能とし、また、配管中に残液を残さないようにしている。一方、工業的に使用する場合にはそれぞれ以下の課題がある。特許文献1に記載の滴下装置は、各ノズルの開閉を電磁弁で制御する必要があるため、多数のノズルから同時に滴下を行いたい場合、経済的に不利である。特許文献2に記載の滴下装置は、液だれはしにくいものの、細いノズル部に複雑な機構を有しており、ノズル内で粘性の高い液が固化した際にはメンテナンスが困難である。特許文献3に記載の滴下装置は、滴下速度が装置の機械的構造に依存するため定量性に難があり、また、複数ノズルからの均等な滴下は難しい。
【0007】
この他、複数ノズルからの滴下が可能な方法としては、液体を加圧下で供給し、各ノズルに分岐させる方法がある。この方法で液滴状に滴下するためには、液が噴射状態にならないよう加圧の程度を低く抑えて運転するか、ノズル口径を小さくして運転する必要がある。しかし、微加圧下で運転するのは滴下量を一定にするような圧力コントロールが難しく、ノズル口径を小さくする場合は液がノズル内で固化した場合、詰まりを除去することが非常に難しくなる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、複雑な機構を必要とせずに、複数のノズルからの定量的で均一な滴下が容易にでき、かつメンテナンスが容易である滴下装置およびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の滴下装置は、複数のノズルから液体を滴下する滴下装置であって、前記液体を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクの底面に配置された複数の前記ノズルと、前記貯留タンクに前記液体を供給する液体供給部と、前記ノズルが配置された底面の対向面に配置された空気抜き用バルブと、を備え、前記貯留タンクは、前記複数のノズル、前記液体供給部、および前記空気抜き用バルブを閉塞することで密閉状態となることを特徴としている。
【0010】
このように、貯留タンクが、複数のノズル、液体供給部、および空気抜き用バルブを閉塞することで密閉状態となる滴下装置とすることで、真空による力の釣り合いによって滴下速度を制御でき、各ノズルから定量的で均一な滴下ができる。また、簡易な構造の滴下装置とすることができ、メンテナンスが容易となる。
【0011】
(2)また、本発明の滴下装置において、前記複数のノズルは、最も狭い部分の直径が1.2mm以上4.0mm以下であることを特徴としている。これにより、ノズル径が十分大きいため、メンテナンスがより容易となる。
【0012】
(3)また、本発明の滴下装置において、前記複数のノズルは、長さが50mm以下であることを特徴としている。これにより、ノズルの長さが長くなりすぎないため、メンテナンスがより容易となる。
【0013】
(4)また、本発明の方法は、貯留タンクが複数のノズル、液体供給部、および空気抜き用バルブを閉塞することで密閉状態となる滴下装置に適用される液体の滴下方法であって、前記液体供給部から粘度が1cp以上1000cp以下の前記液体を供給し、前記空気抜き用バルブから空気を排出しつつ、前記複数のノズルが閉塞された前記貯留タンクに前記液体を貯留する工程と、前記空気抜き用バルブを閉塞する工程と、前記複数のノズルを開放し、前記複数のノズルからの前記液体の排出が自然に停止するまで待機する工程と、前記液体供給部から前記貯留タンクに、前記複数のノズルの個数および前記各ノズルから滴下する前記液体の量に応じて、前記液体を調節し供給する工程と、を含むことを特徴としている。これにより、真空による力の釣り合いによって滴下速度を制御でき、各ノズルから定量的で均一な滴下ができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の滴下装置およびその方法は、複雑な機構を必要とせずに複数ノズルからの定量性が高い滴下が可能であり、また、粘性の高い液や固化しやすい液などを滴下する場合でもあっても、ノズルが閉塞しにくく容易にメンテナンスを行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る滴下装置の概略構成を示す概念図である。
【
図2】実施例の滴下装置の液体供給量を一定にして、ノズルをグループ分けした場合のそれぞれのグループの滴下量と時間の関係を示したグラフである。
【
図3】実施例の滴下装置の液体供給量を変更した場合の液体供給量毎の滴下量と時間の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、鋭意研究の結果、滴下装置の貯留タンクを、複数のノズル、液体供給部、および空気抜き用バルブを閉塞することで密閉状態となる構造とし、真空による力の釣り合いによって滴下速度を制御することで、各ノズルから定量的で均一な滴下ができ、また、簡易な構造の滴下装置とすることができ、メンテナンスが容易となることを見出し、本発明を完成させた。以下に、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
[滴下装置の構成]
図1は、本実施形態に係る滴下装置の概略構成を示す概念図である。本実施形態に係る滴下装置1は、貯留タンク3、ノズル5、液体供給部7、および空気抜き用バルブ9を備える。
【0018】
貯留タンク3は、滴下される液体が貯留される。貯留タンク3は、ノズル5、液体供給部7、および空気抜き用バルブ9を閉塞することで密閉される。このように、貯留タンク3を、ノズル5、液体供給部7、および空気抜き用バルブ9を閉塞することで密閉される構造とすることで、真空による力の釣り合いによって滴下速度を制御することが可能となる。その原理は後述する。貯留タンク3は、大気圧による圧力を受けるため、容易に変形しない材質であることが好ましい。例えば、銅、鉄、ステンレス、陶磁器等で作製することができる。
【0019】
ノズル5は、貯留タンク3に設けられ、貯留タンク3に貯留された液体の液滴が放出される。ノズル5は、複数設けられる。複数のノズル5は、各ノズル5から定量的で均一な滴下をするために、液滴を生成する際の貯留タンク3に貯留された液体の液面からの距離が略同一となる位置に設けられることが好ましい。例えば、貯留タンク3が液面と平行になる底面を有する場合、複数のノズル5は底面に設けることが簡便である。また、液面からの距離が略同一となる貯留タンク3の側面の位置に設けることもできる。
【0020】
ノズル5は、最も狭い部分の直径(ノズル径)が1.2mm以上4.0mm以下であることが好ましい。なお、ノズル5の孔の形状は、円形以外に楕円や正多角形等であってもよいが、メンテナンス性を考えると円形が好ましい。また、ノズル径とはノズル5の内径であり、ノズル5の孔の形状が円形の場合は直径、楕円の場合は長径、正多角形の場合はその中心を通る最大の長さである。また、ノズル5は、長さが50mm以下であることが好ましい。ノズル径が1.2mmより小さいか、または、ノズルの長さが50mmより長いと、メンテナンス性が悪くなる場合がある。また、ノズル径が4.0mmより大きいと、ノズル5を介して貯留タンク3内に空気が入ってしまいやすく、真空状態が崩れやすくなる場合がある。また、複数のノズル5は、各ノズル5から定量的で均一な滴下をするために、同一のノズル径、ノズルの長さ、およびノズルの形状を有することが好ましい。
【0021】
なお、ノズル径、ノズルの長さ、およびノズルの形状は、貯留する液体の粘度および生成する液滴の大きさによって調整可能としてもよい。ノズルの形状は、例えば、先端が円筒形状のものやテーパー形状のものを使用できる。また、例えば、貯留タンク3に形成された凸状で中央に孔の空いたノズル5に、樹脂などで作製された補助ノズルを装着することで、装着する補助ノズルごとにノズル径、ノズルの長さ、およびノズルの形状を調整してもよい。
【0022】
ノズル5の個数は、貯留タンク3やノズル5の大きさにより上限があるが、液滴の生成効率を向上させる観点、および、液滴の生成中に一部のノズル5が液体の固化等により閉塞した場合に他のノズル5から生成される液滴の定量性に影響を与えにくくする観点から、多い方が好ましい。例えば、n個のノズルのうち1個が閉塞した場合、液体供給部7から貯留タンク3に供給する液体の量を変更しないときには、残りのn-1個のノズル5から生成される液滴の量は、閉塞前と比較して、n/(n-1)倍になる。このため、nが大きいほど影響は小さくなる。
【0023】
液体供給部7は、貯留タンク3に設けられ、貯留タンク3に液体を供給する。液体供給部7は、定量性に優れた液体供給ができ、液体供給時に供給する液体以外の空気等が混入しにくい構造であることが好ましい。例えば、チューブポンプ、ダイヤフラムポンプ等を使用できる。複数のノズル5の個数および各ノズル5から滴下する液体の量に応じて、液体供給部7から液体を調節し供給することで、各ノズル5から定量的で均一な滴下をすることができる。
【0024】
空気抜き用バルブ9は、貯留タンク3に液体を供給する際に開放することで、貯留タンク3内の空気を抜く。また、空気抜き用バルブ9は、液滴の生成中は閉塞される。また、空気抜き用バルブ9は、液滴の生成終了後に開放することで、貯留タンク3内に残った液体をノズル5から排出することができる。なお、貯留タンク3に液抜き用のバルブを別途設け、そこを通して排出してもよい。
【0025】
[滴下装置を用いた滴下方法と原理]
次に、滴下装置を用いた滴下方法とその原理を説明する。ここでは
図1の滴下装置を用いた方法について述べるが、発明の範囲をこれに制限するものではない。
【0026】
(1)運転準備
まず、空気抜き用バルブ9を開とし、ノズル5のそれぞれにキャップをした状態で液体供給部7より液滴の材料となる液体を供給し、貯留タンク3を液体で満たす。
【0027】
その後、空気抜き用バルブ9を閉とし、ノズル5のキャップを全て外す。すると、それぞれのノズル5から液体が排出され、貯留されている液体11の液面が下がる。ここで排出された液体は液滴としては使用しない。
【0028】
貯留されている液体11の液面が下がることにより、タンク内の空間13の体積が大きくなる。液体を充填した状態(空間13がほぼ無い状態)から液が下がって、気体の量が変わらないまま空間13は膨張するため、空間13は低真空状態となる。
【0029】
液体が排出されていくと、液体には、低真空による上向きの力、液体の自重による下向きの力がかかり、両者が釣り合って液体の排出が止まる。
【0030】
(2)運転
液体供給部7より、滴下したい速度(全ノズル合計)にて、液体を供給する。すると、液体の自重が増加し、供給した分だけ液体がノズル5から液滴15として滴下される。
【0031】
(3)停止
空気抜き用バルブ9を開とすると、液体の全量がノズル5を通して排出される。ここで排出される液体は液滴としては使用せず、他の容器などに受ける。あるいは、液抜き用のバルブを装置底部に設け、そこを通して排出してもよい。
【0032】
(原理の補足)
本滴下装置では、真空による上向きの力と液体の自重による下向きの力を釣り合わせることで滴下速度を制御している。仮に大気開放であった場合、滴下速度は液体の自重と、液体とノズルの摩擦によって制御されるが、この場合、わずかな傾きによってノズルに対する液体の高さが変わるため、液体にかかる下向きの力が一律にならず、全ノズルから均一に滴下することがきわめて難しい。この現象はノズルを細長くすることによって液体とノズルの摩擦を増加させることである程度軽減できるが、ノズルを細長くすることは、メンテナンスを難しくすることにつながる。
【0033】
また、貯留タンクを加圧にする場合はノズルごとの液量がばらつく問題は軽減できるが、液体とノズルの摩擦を更に大きくする必要が生じ、やはりメンテナンス性が悪くなる。
【0034】
本発明の滴下装置では、流量の調整に、液体とノズルの摩擦ではなく、真空による力の釣り合いを活用しており、これによって、ノズル口径を数mmまで大きく取り、メンテナンス性に優れた構造としても、良好な定量性をもった滴下が可能である。また、液面が高くなるため、装置の傾きに対しても大気開放の場合より遥かに許容範囲が広い。
【0035】
なお、本発明の滴下装置は、流量の調整を真空による力の釣り合いによって行うことによって、粘度によらず、装置内への液体の供給量で、滴下する流量をコントロールすることができるため、1~1000cpまで幅広い液体に適用できる。また、この特徴は高粘度溶液の滴下において有利であることから、本発明の装置で滴下する液体の粘度としては、特に50~750cp程度の比較的高粘度の液体の滴下に好適である。なお、粘度がこれ以上に高い液体に対しては、力の釣り合いにおけるノズルと液体の摩擦の寄与が相対的に大きくなり、滴下が不安定となる。
【0036】
また、本発明の滴下装置は、複数のノズルから質量、体積、形状等のバラツキの少ない液滴を多量に得ることが容易であるため、液滴自体が製品または製品の材料となり、それを多量に製造する必要があるものの製造における滴下の工程に好適に使用される。例えば、薬剤を含む液体を滴下・乾燥させて顆粒状にする薬剤の製造工程、ケイ酸アルカリ水溶液を酸性溶液中に滴下し沈降シリカを得るシリカの製造工程等に好適に使用される。このような製造工程で使用することで、粒状または粉状の製品または製品の材料を短時間に低コストで得ることができる。
【0037】
[実施例]
以下に本発明を適用した例を記載するが、本発明は実施例の滴下装置およびその用途に限定されるものではない。底面200×200mm、高さ100mmの直方体の貯留タンクの底部に、口径2mm、長さ15mmのノズル36本(互いに30mmの間隔を空け、6×6の格子状に配置)、上部に液体注入口(液体供給部)と空気抜き用バルブを設けた滴下装置を作製した。材質はステンレス製とした。この滴下装置を用い、室温25℃、湿度60%の室内にて以下の実験を行った。
【0038】
まず、この装置のノズルにキャップをし、空気抜き用バルブを開いた上で、液体注入口から3号ケイ酸ソーダ(粘度370cp)をチューブポンプにより満水になるまで注入した。その上で、空気抜き用バルブを閉めて、キャップを外し、液体の排出が止まるまで待機した。
【0039】
(試験1)
この装置を底面が水平になるよう固定し、滴下装置の下に、それぞれノズル9本からの液滴を受けられるような、4つの受け皿(A~Dと呼称)を設置した。
【0040】
チューブポンプを運転し、滴下装置内に3号ケイ酸ソーダを導入すると、全てのノズルから3号ケイ酸ソーダが滴下された。
【0041】
チューブポンプの流量を150mL/minとなるようにし、1分間、5分間、10分間の運転を行い、運転前後の受け皿の重量を測定することで滴下された液体の量を計測した。
図2は、その結果を示すグラフである。横軸に運転時間、縦軸に各受け皿の液体量をプロットした。
【0042】
滴下量は滴下時間に比例して増加し、各受け皿に均一に滴下されていた。このことから運転時間によらず、各ノズルから均一に滴下が行えていることが分かった。
【0043】
(試験2)
また、チューブポンプの流量を30mL/min、60mL/min、150mL/min、300mL/minと変え、1分間、5分間、10分間の運転を行い、運転前後の受け皿Aの重量を測定して滴下された液体の量を計測した。
図3は、その結果を示すグラフである。
【0044】
いずれの滴下量においても滴下時間に比例した滴下量が得られており、幅広い滴下量範囲で定量的な滴下が可能であることが分かった。
【0045】
(試験3)
また、使用後、10%苛性ソーダ溶液(粘度3.2cp)を、同じ方法で、150mL/minの速度で15分間滴下し、続いて上水で同じく150mL/minの速度で15分間滴下することで滴下装置の洗浄を行った。24時間置いてから再度3号ケイ酸ソーダの滴下実験を行ったが、同様の結果が得られ、3号ケイ酸ソーダの滴下装置内部への残留・固化は見られなかった。したがって、メンテナンスが容易であることが分かった。
【0046】
また、別途、10%苛性ソーダ溶液および上水についても試験1と同様の試験を行なった。いずれも、滴下量は滴下時間に比例して増加し、各受け皿に均一に滴下されていた。このことから、本発明の滴下装置は、液体の粘度によらず、各ノズルから均一に滴下が行えることが分かった。
【0047】
以上の結果から、本発明の滴下装置は、簡便な機構で複数ノズルからの均一な滴下が可能であり、また、ノズル口径が大きく洗浄が容易であることからメンテナンス性に優れる滴下装置である。
【符号の説明】
【0048】
1 滴下装置
3 貯留タンク
5 ノズル
7 液体供給部
9 空気抜き用バルブ
11 貯留されている液体
13 タンク内の空間
15 滴下された液体(液滴)
17 供給される液体