(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/86 20060101AFI20220525BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20220525BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20220525BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20220525BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/365
A61K8/92
A61K8/06
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2017111566
(22)【出願日】2017-06-06
【審査請求日】2020-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】397063833
【氏名又は名称】株式会社シーボン
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】小瀧 瑠奈
【審査官】寺▲崎▼ 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-094811(JP,A)
【文献】特開2004-035420(JP,A)
【文献】特開2002-241219(JP,A)
【文献】特開2003-095844(JP,A)
【文献】特開2010-280643(JP,A)
【文献】特開昭56-037040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、クエン酸ナトリウム及び液状油を含有する非水乳化組成物を含み、
2種類以上のポリグリセリン脂肪酸エステルは、オレイン酸ポリグリセリル及びイソステアリン酸ポリグリセリルを含み、
前記オレイン酸ポリグリセリルはオレイン酸ポリグリセリル-10であり、
前記イソステアリン酸ポリグリセリルはイソステアリン酸ポリグリセリル-10であり、
前記非水乳化組成物は5重量%以下で含まれ、
前記非水乳化組成物内に前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが20重量%以下で含まれることを特徴とする化粧料。
【請求項2】
2種類以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、クエン酸ナトリウム及び液状油を含有する非水乳化組成物を含み、
2種類以上のポリグリセリン脂肪酸エステルは、オレイン酸ポリグリセリル及びイソステアリン酸ポリグリセリルを含み、
前記オレイン酸ポリグリセリルはオレイン酸ポリグリセリル-10であり、
前記イソステアリン酸ポリグリセリルはイソステアリン酸ポリグリセリル-10であり、
前記非水乳化組成物内に、
前記クエン酸ナトリウムが1.5重量%以上2.5重量%以下含まれ、
オレイン酸ポリグリセリル-10が4.5重量%以上11.0重量%以下含まれ、
イソステアリン酸ポリグリセリル-10が9.0重量%以上15.0重量%以下含まれ
、
前記非水乳化組成物が5重量%以下で含まれることを特徴とする化粧料。
【請求項3】
化粧水からなることを特徴とする請求項
1又は2に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状油を含む非水乳化組成物を含む化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、皮膚又は毛髪に対して有益な効果を有することから、ヒアルロン酸塩のような保湿剤やNMF(天然保湿因子)成分が化粧品の分野において広く活用されている。しかし、これらの成分は電解質であることが多く、O/Wエマルション製剤に多量に配合すると、可溶化状態にある粒子が凝集するため経時安定性が低下することが知られている。そのため、化粧水のような低粘度の製品にこれらの成分と液体油を同時に配合することは難しく、応用が制限されていた。
【0003】
水に液体油を均一に溶解させるための可溶化剤として、従来から、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤が広く利用されてきた。しかしながら、ポリオキシエチレン誘導体の中には、配合量によっては皮膚刺激性がある等、安全性の面で問題があった。一方で、安全性の高い乳化剤として知られるポリグリセリン脂肪酸エステルは、上記界面活性剤と比べて可溶化力が弱く、安定な乳化物を得ることはなかなか困難であった。従って、これらの問題点の解消が強く望まれていた。
【0004】
これまでのエマルション製剤への電解質配合技術としては、耐塩性の水溶性高分子を利用した技術が報告されている(特許文献1)。しかし、この方法は乳液やクリーム等の粘度が高い剤型に限定されており、化粧水のような低粘度製品には適していない。
【0005】
また、これまでに、乳化剤の選択と無関係に可溶化できる技術が報告されている(特許文献2)。この方法では、用いる乳化剤がエチレンオキシドを含んでいなくても可溶化が可能である。しかしこの可溶化技術では、高圧ホモジナイザーによる外部からの機械的ネルギーの負荷が必要不可欠であり、このようなプロセスでは、多大なエネルギーを消費しなければ、安定な可溶化が困難であるという問題があった。このため、強度の機械的エネルギーに依存しない温和な条件で、電解質配合条件においても安定な組成物を得る可溶化法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許3165377
【文献】特表2005-506274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、液体油を含有する化粧料に関して、強度の機械的外力を負荷することなく長期間にわたって安定な化粧料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による化粧料は、
2種類以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、クエン酸ナトリウム及び液状油を含有する非水乳化組成物を含んでもよい。
【0009】
本発明による化粧料において、
2種類以上のポリグリセリン脂肪酸エステルは、オレイン酸ポリグリセリル及びイソステアリン酸ポリグリセリルを含んでもよい。
【0010】
本発明による化粧料において、
前記オレイン酸ポリグリセリルはオレイン酸ポリグリセリル-10であり、
前記イソステアリン酸ポリグリセリルはイソステアリン酸ポリグリセリル-10であってもよい。
【0011】
本発明による化粧料において、
前記非水乳化組成物内に、
前記クエン酸ナトリウムが1.5重量%以上2.5重量%以下含まれ、
オレイン酸ポリグリセリル-10が4.5重量%以上11.0重量%以下含まれ、
イソステアリン酸ポリグリセリル-10が9.0重量%以上15.0重量%以下含まれてもよい。
【0012】
本発明による化粧料内に前記非水乳化組成物が5重量%以下含まれ、
前記非水乳化組成物内に前記ポリグリセリン脂肪酸エステルが20重量%以下含まれ、
化粧料が化粧水からなってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液体油を含有する化粧料に関して、強度の機械的外力を負荷することなく長期間にわたって安定な化粧料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施の形態の化粧料は、皮膚に利用される皮膚外用品であってもよく、化粧水であってもよい。本実施の形態の化粧料は、非水乳化組成物と水相成分を含有してもよい。非水乳化組成物は、2種類以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、クエン酸ナトリウム及び液状油を含んでもよい。ポリグリセリン脂肪酸エステルは活性剤の一種である。水相成分の主成分は精製水等の水であり、その他の成分として、電解質を含むことができ、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、グリチルリチン酸ジカリウム、乳酸ナトリウム等を含むことができる。また、水相成分は、パラオキシ安息香酸メチル、1,3-ブチレングリコール等を含むこともできる。
【0015】
本実施の形態による化粧料は、本願出願時において知られている、一般的な化粧水に含まれる添加剤等の成分を含有してもよい。このような添加剤としては、増粘剤、界面活性剤、保存剤、pH調整剤、キレート剤、安定剤、刺激軽減剤、防腐剤、着色剤、分散剤、香料、酸化防止剤、植物抽出液、ビタミン類、アミノ酸等を挙げることができる。
【0016】
非水乳化組成物に含まれる2種類以上のポリグリセリン脂肪酸エステルは、オレイン酸ポリグリセリル及びイソステアリン酸ポリグリセリルを含んでもよい。オレイン酸ポリグリセリル及びイソステアリン酸ポリグリセリルは同じ濃度であってもよいし、オレイン酸ポリグリセリル及びイソステアリン酸ポリグリセリルの一方が他方の3倍以下の濃度であってもよい。つまり、オレイン酸ポリグリセリルとイソステアリン酸ポリグリセリルは1:3~3:1の濃度比で混合されてもよい。
【0017】
化粧料のうち非水乳化組成物は5重量%以下で含有されることが好ましく、4重量%以下で含有されることがより好ましく、3%以下で含有されることがさらにより好ましい。
【0018】
非水乳化組成物のうちポリグリセリン脂肪酸エステルは30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。なお、化粧料が化粧水である場合には、活性剤の量を増やすことが好ましくないことから、ポリグリセリン脂肪酸エステルは非水乳化組成物のうち20重量%以下であることがより好ましい。
【0019】
非水乳化組成物のうち液体油は30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。液体油を安定に溶解させることは一般的には困難である。本実施の形態を採用することで、後述するように液体油を安定した状態で溶解させることができる点で有益である。
【0020】
液状油はスクワランを含んでもよい。その他には、液状油としては、例えば、流動パラフィン、ワセリン等の炭化水素油類;大豆油、小麦胚芽油、ツバキ油、杏仁油、オリーブ油、サフラワー油、グレープシード油、アボガド油、サザンカ油、アルモンド油、トウモロコシ胚芽油、ヒマワリ油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、ホホバ種子油、ローズヒップ油、ヒマシ油、ベルガモット果実油、レモン果皮油、オレンジ果皮油、アトラスシーダー樹皮油、イタリアイトスギ葉/実/茎油、チョウジ葉油、ニオイテンジクアオイ油等の植物油類;ラノリン、ミンク油等の動物油類;2-エチルヘキサン酸セチル、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸パルミチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリカプリル・カプリン酸グリセリル等の合成油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシリコーン油類;パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤等が挙げられ、目的に応じてこれらの一種又は二種以上を適宜、選択又は組み合わせて使用することができる。
【0021】
本実施の形態の化粧料は、溶媒を含有してもよく、溶媒としては例えば水を用いることができる。
【0022】
[実施例]
次に、本発明の実施例について説明する。
【0023】
(実施例1)
以下の重量比(質量比)になるようにして化粧料を生成した。
DL-ピロリドンカルボン酸ナトリウム液 5.0(重量%)
パラオキシ安息香酸メチル 0.2(重量%)
1,3-ブチレングリコール 3.0(重量%)
非水乳化組成物 3.0(重量%)
精製水 88.8(重量%)
【0024】
なお、DL-ピロリドンカルボン酸ナトリウム液としては味の素株式会社製のAJIDEW N‐50を利用し、パラオキシ安息香酸メチルとしては上野製薬株式会社製のメッキンス‐Mを利用し、1,3-ブチレングリコールとしては株式会社ダイセル 有機合成カンパニーの1,3-BG UKグレードを利用した。なお、実際には総量100gの化粧料を生成し、後述する安定性の試験を行った。
【0025】
非水乳化組成物は以下の重量比(質量比)になるようにして生成した。
クエン酸三ナトリウム 2.0(重量%)
オレイン酸ポリグリセリル-10 9.8(重量%)
イソステアリン酸ポリグリセリル-10 9.8(重量%)
濃グリセリン 58.4(重量%)
スクワラン 20.0(重量%)
【0026】
なお、クエン酸三ナトリウムとしては昭和化工株式会社製のクエン酸三ナトリウム(結晶)50Mを利用し、オレイン酸ポリグリセリル-10としては日本サーファクタント工業株式会社製のNIKKOL Decaglyn 1-OVを利用し、イソステアリン酸ポリグリセリル-10としては阪本薬品工業株式会社製のSフェイス10G-ISを利用し、濃グリセリンとしては坂本薬品工業株式会社の化粧品用濃グリセリンを利用し、スクワランとしてはマルハニチロ株式会社製のスクワランを利用した。本実施例の非水乳化組成物では、クエン酸三ナトリウム、オレイン酸ポリグリセリル-10、イソステアリン酸ポリグリセリル-10及びスクワラン以外の残量を濃グリセリンが占める態様となっている。この点は、後述する他の実施例及び比較例でも同様である。
【0027】
(実施例2)
実施例2として実施例1の非水乳化組成物に含まれるクエン酸三ナトリウムの量を0.44重量%とし、濃グリセリンを59.96重量%とした以外は実施例1と同じ成分からなる化粧料を生成した。
【0028】
(実施例3)
実施例3として実施例1の非水乳化組成物に含まれるクエン酸三ナトリウムの量を0.88重量%とし、濃グリセリンを59.52重量%とした以外は実施例1と同じ成分からなる化粧料を生成した。
【0029】
(実施例4)
実施例4として実施例1の非水乳化組成物に含まれるオレイン酸ポリグリセリル-10の量を14.7重量%とし、イソステアリン酸ポリグリセリル-10の量を4.9重量%とした以外は実施例1と同じ成分からなる化粧料を生成した。
【0030】
(実施例5)
実施例5として実施例1の非水乳化組成物に含まれるオレイン酸ポリグリセリル-10の量を4.9重量%とし、イソステアリン酸ポリグリセリル-10の量を14.7重量%とした以外は実施例1と同じ成分からなる化粧料を生成した。
【0031】
実施例1乃至5における非水乳化組成物の組成を示すと以下の表1で示すとおりである。なお、表1では、非水乳化組成物に含まれる各成分を重量%(質量%)で示している。
【表1】
【0032】
(比較例1)
比較例1として、非水乳化組成物を以下の重量比(質量比)になるようにして生成した。その他については実施例1と同じ成分として、化粧料を準備した。
クエン酸三ナトリウム 0.44(重量%)
オレイン酸ポリグリセリル-10 19.6(重量%)
濃グリセリン 59.96(重量%)
スクワラン 20.0(重量%)
【0033】
(比較例2)
比較例2として比較例1の非水乳化組成物に含まれるクエン酸三ナトリウムを0.88重量%とし、濃グリセリンを59.52重量%とした以外は比較例1と同じ成分からなる化粧料を生成した。
【0034】
(比較例3)
比較例3として比較例1の非水乳化組成物に含まれるクエン酸三ナトリウムを0.22重量%とし、濃グリセリンを60.18重量%とした以外は比較例1と同じ成分からなる化粧料を生成した。
【0035】
(比較例4)
比較例4として比較例1の非水乳化組成物に含まれるクエン酸三ナトリウムを0.11重量%とし、濃グリセリンを60.29重量%とした以外は比較例1と同じ成分からなる化粧料を生成した。
【0036】
(比較例5)
比較例5として、非水乳化組成物を以下の重量比(質量比)になるようにして生成した。その他については実施例1と同じ成分として、化粧料を準備した。
クエン酸三ナトリウム 2.0(重量%)
イソステアリン酸ポリグリセリル-10 19.6(重量%)
濃グリセリン 58.4(重量%)
スクワラン 20.0(重量%)
【0037】
比較例1乃至5における非水乳化組成物の組成を示すと以下の表2で示すとおりである。表2でも、非水乳化組成物に含まれる各成分を重量%(質量%)で示している。
【表2】
【0038】
(比較例6)
比較例6として、非水乳化組成物を以下の重量比(質量比)になるようにして生成した。その他については実施例1と同じ成分として、化粧料を準備した。
グリチルリチン酸ジカリウム 2.0(重量%)
オレイン酸ポリグリセリル-10 9.8(重量%)
イソステアリン酸ポリグリセリル-10 9.8(重量%)
濃グリセリン 58.4(重量%)
スクワラン 20.0(重量%)
【0039】
(比較例7)
比較例7として比較例6の非水乳化組成物に含まれるイソステアリン酸ポリグリセリル-10の代わりにオレイン酸ポリグリセリル-5を用いた以外は比較例6と同じ成分からなる化粧料を生成した。
【0040】
(比較例8)
比較例8として比較例6の非水乳化組成物に含まれるイソステアリン酸ポリグリセリル-10を用いず、オレイン酸ポリグリセリル-10を19.6重量%とした。それ以外は比較例6と同じ成分からなる化粧料を生成した。
【0041】
(比較例9)
比較例9として、非水乳化組成物を以下の重量比(質量比)になるようにして生成した。その他については実施例1と同じ成分として、化粧料を準備した。
クエン酸三カリウム 0.48(重量%)
オレイン酸ポリグリセリル-10 19.6(重量%)
濃グリセリン 59.92(重量%)
スクワラン 20.0(重量%)
【0042】
比較例6乃至9における非水乳化組成物の組成を示すと以下の表3で示すとおりである。表3でも、非水乳化組成物に含まれる各成分を重量%(質量%)で示している。
【表3】
【0043】
実施例1乃至5及び比較例1乃至9に関する、水相成分を配合したときの安定性の結果を以下の表4に示す。「+」(プラス)が多いほど安定性が高い。「±」(プラスマイナス)は安定性がやや不良であり、「-」(マイナス)は安定性が不良である。安定性試験は50度の環境下で1か月放置して観察して行った。安定性が不良又はやや不良のものは液体が白濁してしまったり液体油が分離してしまったりするものとなった。なお、白濁よりも悪い状態となると液体油が分離することになる。他方、安定性が良好なものは濁りが緩やかであり、「+」が多いほど透明度が高く、かつ長期間安定なものとなった。
【表4】
【0044】
実施例及び比較例で示されるように、クエン酸塩を用いることだけでは足りず、クエン酸塩のうちクエン酸ナトリウムが含まれることが重要な要素となっている。つまり、クエン酸ナトリウムを用いずに、同じクエン酸塩であっても他の塩、例えばクエン酸三カリウムを用いた場合には、安定性が劣ることを確認できる。例えば、実施例1と比較例6では、クエン酸三ナトリウムを用いるのかグリチルリチン酸ジカリウムを用いるのかが異なるだけであるが、実施例1の結果は比較例6と比べて安定性の点で顕著に優れた効果を示している。
【0045】
実施例及び比較例で示されるように、2種類以上のポリグリセリン脂肪酸エステルが含まれることも重要な要素となっている。例えば、実施例1ではオレイン酸ポリグリセリル-10及びイソステアリン酸ポリグリセリル-10の2種類のポリグリセリン脂肪酸エステルが用いられているのに対して、比較例5ではポリグリセリン脂肪酸エステルとして1種類のイソステアリン酸ポリグリセリル-10が用いられており、その他は基本的に同じ構成になっている。両者の結果を比較すると、実施例1の結果は比較例5の結果と比べて安定性の点で顕著に優れた効果を示している。また、実施例2ではオレイン酸ポリグリセリル-10及びイソステアリン酸ポリグリセリル-10の2種類のポリグリセリン脂肪酸エステルが用いられているのに対して、比較例1ではポリグリセリン脂肪酸エステルとして1種類のオレイン酸ポリグリセリル-10が用いられており、その他は基本的に同じ構成になっている。同様に、実施例3でもオレイン酸ポリグリセリル-10及びイソステアリン酸ポリグリセリル-10の2種類のポリグリセリン脂肪酸エステルが用いられているのに対して、比較例2ではポリグリセリン脂肪酸エステルとして1種類のオレイン酸ポリグリセリル-10が用いられており、その他は基本的に同じ構成になっている。実施例2の結果は比較例1の結果と比べて安定性の点で顕著に優れた効果を示しており、実施例3の結果と比較例2の結果と比べて安定性の点で顕著に優れた効果を示している。
【0046】
また、本願の発明者らの検討によれば、ポリグリセリン脂肪酸エステルを2種類以上組み合わせる場合でも、特にオレイン酸ポリグリセリル-10及びイソステアリン酸ポリグリセリル-10の組み合わせが極めて有益であるとの結論に至った。
【0047】
なお、化粧水の場合には粘度が小さい。このように粘度が小さい場合には、液体油が分離しやすいが、本実施の形態の態様を採用することで、粘度の小さな化粧水であっても液体油が分離することを防止できる点で有益である。
【0048】
一般に化粧料に含まれる電解質の量が多いほど液体油が分離しやすい傾向にある。このため、実施例で示すように電解質であるDL-ピロリドンカルボン酸ナトリウム液が5.0重量%も含まれ、液体油であるスクワランが0.60重量%(非水乳化組成物:3.0重量%×スクワラン:20.0重量%)も含まれる場合には、液体油が分離しやすくなり、液体が白濁化したり、液体油が完全に分離したりするのが一般的な傾向である。なお、ピロリドンカルボン酸ナトリウムはあくまでも一例であり、その他の電解質であっても本実施の形態によれば液体油の分離を抑制できる。その他の電解質としては、前述したように、ヒアルロン酸ナトリウム、グリチルリチン酸ジカリウム、乳酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0049】
また、本実施の形態の態様を採用した場合には透明性の高い液体を得ることができる。とりわけ、クエン酸ナトリウム、オレイン酸ポリグリセリル及びイソステアリン酸ポリグリセリルの組み合わせを用いることで高い透明性を実現でき、クエン酸三ナトリウム、オレイン酸ポリグリセリル-10及びイソステアリン酸ポリグリセリル-10の組み合わせを用いることがとりわけ有益であった。
【0050】
化粧量が化粧水である場合には透明性の観点等から活性剤の量をあまり多くすることができない。この点、本実施の形態のように、クエン酸ナトリウム、オレイン酸ポリグリセリル及びイソステアリン酸ポリグリセリルの組み合わせを用いることで、非水乳化組成物の中で20重量%以下の活性剤の量であっても液体油の分離を抑制することができ、高い安定性を実現できる点で有益である。この効果に関しても、クエン酸三ナトリウム、オレイン酸ポリグリセリル-10及びイソステアリン酸ポリグリセリル-10の組み合わせを用いることがとりわけ有益であった。
【0051】
実施例1及び実施例5で示される結果からすると、安定性の観点より、クエン酸三ナトリウムが1.5重量%以上2.5重量%以下であり、オレイン酸ポリグリセリル-10が4.5重量%以上11.0重量%以下であり、イソステアリン酸ポリグリセリル-10が9.0重量%以上15.0重量%以下である態様が有益である。
【0052】
このように実施例5と実施例1では安定性の点では同一結果となっており、ともに優れた結果となっている。しかしながら、本願発明者が確認したところによると、実施例5の態様は実施例1の態様と比較して若干粘性が高くなっていた。このため、実施例5によって生成されたものは実施例1によって生成されたものと比較すると取り扱いが若干難しいものとなっている。このことも鑑みると、非水乳化組成物内において、クエン酸三ナトリウムが1.5重量%以上2.5重量%以下であり、オレイン酸ポリグリセリル-10が9.0重量%以上11.0重量%以下であり、イソステアリン酸ポリグリセリル-10が9.0重量%以上11.0重量%以下である態様が有益である。より限定するならば、非水乳化組成物内において、クエン酸三ナトリウムが1.8重量%以上2.2重量%以下であり、オレイン酸ポリグリセリル-10が9.5重量%以上10.5重量%以下であり、イソステアリン酸ポリグリセリル-10が9.5重量%以上10.5重量%以下である態様がより有益である。
【0053】
化粧品では保湿成分には溶解性を挙げるためにナトリウム塩が含まれることが多い。また、美白剤を利用する場合には、美白剤とともに緩衝液や中和剤を入れることも多い。この点、本実施の形態によれば、塩濃度が高くても比較的多い液体油を安定させて溶解させることができ、その応用分野が広い点で非常に有益なものである。なお、電解質の濃度が高くなると界面に影響が与えられることになり乳化粒子を壊す、つまり液体油が分離することもあるが、本実施の形態ではそのような事態が発生することを防止できる。
【0054】
なお、本実施の形態では、特許文献2で示されるような機械的ネルギーを加えることなく、液体油を長期間にわたり安定な状態で溶解させることができる点で有益である。
【0055】
上述した実施の形態及び実施例の記載は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎない。また、出願当初の特許請求の範囲の記載は本件特許明細書の範囲内で適宜変更することもでき、その範囲を拡張及び変更することもできる。