(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】少量の液体サンプルを入れるためのサンプル容器
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20220525BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
G01N1/10 N
G01N1/00 101N
(21)【出願番号】P 2017233048
(22)【出願日】2017-12-05
【審査請求日】2020-11-13
(31)【優先権主張番号】10 2016 014 457.2
(32)【優先日】2016-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507402864
【氏名又は名称】ペーファウアー テプラ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベイクラー ローベルト
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/167277(WO,A2)
【文献】特表2006-528545(JP,A)
【文献】実開昭52-131093(JP,U)
【文献】実開昭51-024991(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
B01L 1/00-99/00
G01N 35/00-35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少量の液体サンプルを入れるためのサンプル容器であって、
上方に開口する受け部を備え、
上記受け部は、その最下点に、閉塞面を有するアクチュエータによって可逆的に液密態様で閉じられる流出口を備え
、
上記受け部は円錐状であって最下点が円錐頂点によって形成され、該円錐頂点に上記流出口が位置しており、
上記アクチュエータは、上記流出口の完全に下側に位置していて該流出口を交互に閉じ又は開放する上記閉塞面を有し、
上記受け部は、その開口上部において、オーバーフロー凹部によって囲まれており、
サンプル容器のウェブが上記オーバーフロー凹部を環状に囲むように設けられ、
上記ウェブは、上記受け部内に突出する液滴分離用の排出ノズルを保持する複数のレシーバを有する充填および除去ステーションを備え、
上記流出口は、真空を作り出す排出装置に接続されている
ことを特徴とするサンプル容器。
【請求項2】
請求項
1において、
上記流出口は、上記円錐頂点において始まっていて、上記円錐頂点から始まって上記円錐の面の方にのみ延びている
ことを特徴とするサンプル容器。
【請求項3】
請求項
1または
2において、
上記アクチュエータの上記閉塞面は、上記受け部の輪郭にしたがっている
ことを特徴とするサンプル容器。
【請求項4】
請求項
1~
3のいずれか1項において、
上記アクチュエータは、上記閉塞面を上記円錐の面の範囲から可逆的に引っ張って上記流出口を可逆的に開放するように上記円錐の軸に沿って移動可能なプランジャである
ことを特徴とするサンプル容器。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のサンプル容器を使用する方法であって、
上記受け部を、サンプルの除去後であって新しいサンプルの充填前のアイドリング段階において置換液で満たす
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のサンプル容器を使用する方法であって、
サンプルの除去後に、上記受け部をフラッシュ液でフラッシュする少なくとも1つのフラッシュサイクルであって、各上記フラッシュサイクルにおいて上記流出口を閉じて上記受け部の少なくとも一部をフラッシュ液で満たし、その後に上記流出口を開いてフラッシュ液を流出させる少なくとも1つのフラッシュサイクルを行う
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項
6において、
上記サンプルの除去後であって上記フラッシュサイクルの実行前に、上記流出口を閉じて上記受け部の少なくとも一部を洗浄液で満たし、そして洗浄時間が経過してから上記流出口を開いて洗浄液を流出させる
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のサンプル容器を使用する方法であって、
上記受け部をサンプルで満たす前に、フラッシュ液または置換液が完全に流出するまで上記流出口を開いておき、その開いている間、上記流出口に真空を適用し、および/または上記受け部内にフラッシュガスを導入する
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少量の液体サンプルを入れるためのサンプル容器、および当該サンプル容器を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
少量の液体サンプルを入れるためのサンプル容器は、様々な技術および科学分野で使用される。例えば分析化学のサンプル調製方法では、得られた液体サンプルは実際の分析に先立って、例えば測定の準備に役立つコンディショニング(希釈)のために、サンプル容器に蓄えられる。
【0003】
ここで、先行技術においては、使用後に適用箇所から除去されて新しいラック(すなわち、バッチ用の入れ物)あるいは洗浄されたラックと交換されるラック内のいわゆるバイアルが一般に用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、適用箇所で静止状態を保つことができ、かつ使用後に除去または交換する必要のないサンプル容器を提供することである。本発明の別の課題は、そのようなサンプル容器を使用するための適当な方法を提示することを含む。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような背景に対して、本発明は、少量の液体サンプル、好ましくは気相分解によって得られるサンプルを入れるためのサンプル容器であって、上方に開口する受け部を備え、当該受け部は、その最下点に、閉塞面を含むアクチュエータによって可逆的に液密態様で閉じられる流出口を有するサンプル容器に関する。
【0006】
上記受け部は、円錐状であって、当該受け部の最下点は、円錐頂点によって形成されている。本発明を理解する上で、曲がった案内部を有する受け部も円錐状として考えられる。しかしながら、受け部は、まっすぐな案内部を有する円錐状であることが好ましい。まっすぐなあるいは曲がった円錐が、概して考えられる。円錐の開き角は、例えば、60~100°、好ましくは70~90°であってもよい。
上記流出口は円錐頂点に位置しており、アクチュエータは、流出口の完全に下側に位置していて該流出口を交互に閉じ又は開放する上記閉塞面を有する。
上記受け部は、その開口上部において、オーバーフロー領域によって囲まれている。サンプル容器のウェブが上記オーバーフロー凹部を環状に囲むように設けられ、このウェブは、受け部内に突出する液滴分離用の排出ノズルを保持する複数のレシーバを有する充填および除去ステーションを備えており、上記流出口は、真空を作り出すことのできる排出装置、好ましくはポンプに接続されている。これにより、流出口が開いた状態で、液体が下方に抜き取られ得る。
【0007】
ある実施形態では、流出口は、円錐頂点において始まっていて、当該円錐頂点から始まって、円錐の面の方へのみ延びている。これにより、円錐に対する流出口の非対称設計が作り出され、円錐頂点は流出口の中心または内部に位置しないが、流出口の縁部は円錐頂点を直接的に通って延びる。
【0008】
流出口は、例えば、円形または楕円形もしくは長円形であってもよい。
【0009】
ある実施形態では、アクチュエータの閉塞面は、受け部の輪郭にしたがっている。よって、受け部のジャケット面は、閉じた流出口との整合性を有する。
【0010】
ある実施形態では、アクチュエータは、好ましくは、閉塞面を円錐の面の範囲から可逆的に下方に引っ張って流出口を可逆的に開放するように円錐の軸と平行に移動可能なプランジャである。プランジャは、例えば、空気圧で動作するものであってもよい。
【0011】
受け部は、フッ素樹脂から作られていてもよく、またはフッ素樹脂で被覆されていてもよい。適当なフッ素樹脂は、例えば、PTFE/PPVE共重合体を含む。同様のことが、アクチュエータまたは少なくともその閉塞面、およびオーバーフロー領域や流出部または流出空間にも当てはまる。フッ素樹脂は、一般に、顕著な耐薬品性ならびに疎水性および疎油性を有する。しかしながら、例えば、アクチュエータおよび必要に応じてその閉塞面が、PEEKから作られていてもよい。ステンレス鋼やセラミックなどの様々な材料が、特定の適用領域において使用されてもよい。
【0012】
最初に述べた背景に対して、本発明は、また、本発明に係るサンプル容器を使用する方法であって、受け部を、サンプルの除去後であって新しいサンプルの充填前であるアイドリング段階において、置換液で満たすことを特徴とする方法に関する。
【0013】
ある実施形態では、サンプル容器の受け部を、アイドリング段階において覆っておく。
【0014】
ある実施形態では、アイドリング段階において所定の期間が経過した後、および/または所定の液面高さを下回った後に、追加的な置換液を受け部に補充する。
【0015】
流出口は、アイドリング段階の間、閉じられたままであってもよい。
【0016】
置換液は、例えば、必要に応じて希釈されたサンプルのキャリア液に相当していてもよい。当該キャリア液が、例えば気相分解の場合のように酸である場合、フラッシュ液の酸濃度は、キャリア液よりも低くてもよい。ある適用例では、置換液は、希釈フッ化水素酸である。
【0017】
最初に述べた背景に対して、本発明は、また、本発明に係るサンプル容器を使用する方法であって、サンプルの除去後に、受け部をフラッシュ液でフラッシュする少なくとも1つのフラッシュサイクル、好ましくは複数のフラッシュサイクルであって、各当該フラッシュサイクルにおいて流出口を閉じて受け部の少なくとも一部をフラッシュ液で満たし、そして流出口を開いてフラッシュ液を流出させる少なくとも1つのフラッシュサイクルを行うことを特徴とする方法に関する。しかしながら、逆方向のフラッシュも、流出口を開いた状態で流出空間を介してオーバーフロー領域へ向かうものが可能である。
【0018】
必要に応じて、流出口を開いた状態で、フラッシュ液を能動的に吸い出してもよい。
【0019】
複数のフラッシュサイクルを行うことが有利である。なぜなら、界面で壁部を繰り返し洗浄することによって洗浄効果が高められるためである。
【0020】
複数のフラッシュサイクルが行われる場合、異なるフラッシュサイクルに対して、受け部の充填量を異ならせてもよい。最後のフラッシュサイクルでは、例えば受け部が溢れるまで充填されてもよい。これにより、受け部の壁部に付着した液滴を除去することができる。
【0021】
フラッシュ液は、例えば、水、またはキャリア液のベースとなり得る他の溶媒であってもよい。
【0022】
ある実施形態では、サンプルの除去後であってフラッシュサイクルの実行前に、流出口を閉じて受け部の少なくとも一部を洗浄液で満たし、そして洗浄時間が経過してから流出口を開いて洗浄液を流出させる。
【0023】
このステップは、受け部内に存在する任意のサンプル残留物を溶かすのに役立つ。
【0024】
洗浄液は、例えば、サンプルのキャリア液に相当するものであってもよい。ある適用例では、洗浄液は、濃縮フッ化水素酸であってもよい。
【0025】
最初に述べた背景に対して、本発明は、また、本発明に係るサンプル容器を使用する方法であって、受け部をサンプルで満たす前に、フラッシュ液または置換液が完全に流出するまで流出口を開いておき、その開いている間、流出口に真空を適用し、および/または受け部内にフラッシュガスを導入することを特徴とする方法に関する。
【0026】
これにより、残留物を伴わないフラッシュ液または置換液の流出が実現される。
【0027】
ある実施形態では、フラッシュ液または置換液の流出後に少なくとも1回は流出口を再び閉じて開いてもよく、繰り返し開く間、流出口に真空を適用し、および/または受け部内にフラッシュガスを導入してもよい。
【0028】
これにより、閉塞面とジャケット面との間のギャップ領域に存在する何らかの液体残留物が、残らず除去され得る。
【0029】
本発明に係る方法の2つまたは3つ以上が、少量の液体サンプルを取り扱う共通の方法を構成するべく互いに組み合わせて利用されてもよい。
【0030】
ある実施形態では、本発明に係る方法は、サンプル分析方法の一部を構成し、液体サンプルは、続けて、質量分析計またはガスクロマトグラフィー柱(Gaschromatographiesaule)などの分析装置に加えられる。サンプル分析方法は、例えば、好ましくは、シリコン基板などの基板上で汚染物質を濃縮させるための気相分解を含む。
【0031】
しかしながら、様々なサンプル調製方法が、調整および/または処理/調節のための液体の緩衝が含まれる様々な分野において、本発明と共に実行されてもよい。
【0032】
本発明の別の細部および利点は、以下の図面を参照した実施形態の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明に係るサンプル容器の斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明に係るサンプル容器において実行可能な複数の方法ステップの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0035】
図1~
図4は、参照番号1によって示される、本発明に係るサンプル容器の実施形態を示している。
【0036】
容器1は、上方に開口した受け部2を備える。受け部2は、80°の開き角を伴うまっすぐな案内部を有する直円錐の形状を有しており、その最下点は円錐頂点3によって形成されている。
【0037】
その最下点において、受け部2は、プランジャ6の閉塞面5によって可逆的な液密態様で閉じることのできる楕円形の流出口4を有する。プランジャ6は、閉塞面5を円錐面の範囲から下方へ可逆的に引っ張って流出口4を可逆的に開放するように、円錐軸に沿って移動可能である。
【0038】
プランジャ6の閉塞面5は、円錐面の輪郭にしたがっており、そのため当該円錐面は閉じた流出口4と整合する。流出口4は、円錐頂点3から始まりかつ、そこから始まって円錐面の方へのみ延びている。これにより、円錐に対する流出口4の非対称設計が作り出され、また円錐頂点3は流出口4の中心または内部に位置しないが、流出口4の縁部は円錐頂点3を直接的に通って延びている。
【0039】
受け円錐2は、サンプル容器1の中心軸上に位置している一方、プランジャ6および流出口4は、サンプル容器1の中心軸に対してオフセットしている。円錐頂点3に対する流出口4の非対称配置は、したがってプランジャ6のオフセットによって実現される。
【0040】
流出空間7は、流出口4の反対側に存在していて、コネクタ14を介して吸引ラインに接続されている。そのため、流出口4および流出空間7において真空を作り出すことができる。
【0041】
受け部2は、開口上部において、環状のオーバーフロー凹部9によって外周を囲まれている。
【0042】
また、複数のレシーバ12を有する充填および除去ステーション11が、環状態様でオーバーフロー凹部9を囲むサンプル容器のウェブ10に設けられていて、受け部2内に突出またはつながる液滴分離用の排出ノズル13を保持している。
【0043】
液体と接触する部品の全ては、PTFE/PPVE共重合体から作られている。
図4に示す空気圧アクチュエータ15は、PEEKから作られていて、対応するシリンダに回転しないように支持されている。
【0044】
したがって、図示のサンプル容器1は、例えば、気相分解プロセス(VPD)における調製およびスキャン工程の後に生じるサンプルを入れるのに役立ち得る。サンプルは、受け円錐2内で希釈されてもよく、そして各測定装置(例えば、プラズマ発光-質量分析計)に送られてもよい。サンプル容器1は、そのような目的のために一般に使用されるバイアルラックと置換可能であるが、装置内で静止したままでありかつ交換する必要がなく、それにより人的介入が回避される。バイアルの外部洗浄やその輸送といった複雑かつ責任のあるタスクが省略される。さらなる汚染のリスクが最小化される。これらの目的は、特定の設計によって、使用する材料によって、対応する媒体の供給によって、および関連するプロセス方法によって達成される。静止供給容器のモデルによると、静止サンプル容器は、毎回の使用後に装置内で洗浄されてもよく、また次回の使用前に効率的に乾かされてもよい。また、それは、VPDサンプルで必要とされるようなごく少量のものにも適している。
【0045】
本発明に係る装置の利点は、バイアルを挿入するために設備を開く必要がないことである。これにより、密閉されたハウジング内に汚染物質が入り込むおそれがない。したがって、汚染物質などの検出限界が非常に低い。システムによると、言うなれば分析に使用可能なバイアルが無限に供給されるようなものである。正確に同じ洗浄プロセスが常に実行されてもよく、そのため分析精度の変動をほとんど受けなくてもよい。当該装置は、長時間のテストや遠隔テストに特に適している。
【0046】
以下の(部分)プロセスは、例えば、本発明に係るサンプル容器1を用いる場合に使用可能である。
【0047】
〈アイドリング段階〉
第1のプロセス群に関して、受け円錐2は、待機状態(基本状態またはアイドリング段階)において、閉じられ、希釈VPD溶液(例えば、希釈フッ化水素酸)で満たされる。独立したプロセスが、また、より長い待機時間(例えば、6時間以上またはシステムの停止時)による蒸発を補償するために補充を提供する。よって、乾き切ることが抑止され、VPDマトリクスによる表面調整が実行される(マトリクス安定性)。
【0048】
〈測定前〉
サンプル測定またはブランク測定が行われるとすぐ、受け円錐2は、空にされ、またマトリクス変化を避けるために超純水(UPW)でフラッシュされはしない。残りの液体は、流出口4の領域に滴下し、そしてコネクタ17を通じて提供される真空によって流出空間7へと吸引される。その後、プランジャ6が再び上に動き、流出口4の縁部と閉塞面5との間のギャップ領域にまだ存在し得るごく少量(1μl程度)の液体を、流出口4の縁部をまたいで押し上げる。それらの液体は、第2のおよび最後の開放および吸引サイクルで除去される。これらのプロセスは、受け部2内に窒素を吹き込むことによって補助される。こうして、受け部2は、乾いてサンプルを受ける準備が整う。
【0049】
〈測定後〉
測定プロセスの後には、受け部2の壁部を調整および保護するための希釈VPD溶液で、洗浄および初期充填が行われる(測定後)。これにより、サンプル容器1は、再び基本状態となる。そのようなプロセスは、概して、基本状態に移るために調整および未知の状態の後に実行されるべきである。少量の濃縮VPD溶液(例えば、1%のフッ化水素酸)が、この部分プロセスの開始時に、低pHに到達するために受け円錐2の下側領域に射出される。よって、残留物に溶けた汚染物質の析出が抑止され、またサンプル溶液の残留物のより良好な溶解が実現される。ここで、複数のUPWフラッシュサイクルが、排出方向における上方から、およびオーバーフロー方向における下方から実行される。プランジャ6の開閉期間の切替えによって、液体界面により受け部2の壁部が繰り返し洗浄される。これによって、洗浄の効率がよくなる。最後に、受け部2は、オーバーフロー9まで満たされ、そして壁部に付着した残りの液滴を除去するために空にされる。この最終ステップでは、希釈VPD溶液による充填が行われる。希釈は、水の流入を介した時間制御によって設定され、よって測定マトリクスに厳密には対応しない。この要求は、この点において必要ではなく、全プロセス時間を優先しつつ高価なマトリクス成分を節約するために放棄された。
【0050】
〈乾燥に対する保護〉
乾燥を阻止するための時間制御を伴う別の(部分)プロセスが使用されてもよい。このプロセスは、補充プロセスを実行しない特定の期間が経過すると開始される。測定の準備プロセスが最後に実行されかつ受け部2が乾いている場合、例外ルールが適用される。設定可能な時間(例えば1時間)にわたって洗浄が行われていない場合、システムが停止していることが想定される。壁部を汚染から保護するために、受け部2の充填が実施され、サンプル容器1は再び基本状態(アイドリング段階)となる。ここでまた、全プロセス時間を優先してマトリクス安定性が放棄される。
【0051】
〈較正基準の確立〉
較正基準を確立するために、受け円錐2は、測定前などの洗浄プロセスの後に、(的確な)測定マトリクスで補充されてもよい。これは、濃度に関して正確になされる。
【0052】
【0053】
同図において、サンプル容器1の状態は、参照番号100によって概ね示されている。参照番号101は、受け部2がマトリクス安定希釈VPD溶液またはサンプルで満たされる待機状態を示している。参照番号102は、サンプルが受け部2内にある状態を示している。そして、参照番号103は、使用されずに数時間が経過した後のアイドリング状態を示している。
【0054】
(部分)プロセスは、参照番号200によって概ね示されている。参照番号201は、上記「測定前」の記載に係る準備ステップを示している。参照番号202は、上記「測定後」の記載に係る洗浄ステップを示している。参照番号203は、上記「乾燥に対する保護」の記載に係るルーチンを示している。
【符号の説明】
【0055】
1 サンプル容器
2 受け部
3 円錐頂点
4 流出口
5 閉塞面
6 プランジャ(アクチュエータ)
9 オーバーフロー凹部(オーバーフロー領域)