(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】医療用エアゾール送達装置を制御するための装置、方法、システム、コンピュータプログラム、及びコンピュータ読み取り可能媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20220525BHJP
A61M 11/00 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
A61B5/08
A61M11/00 A
(21)【出願番号】P 2017567361
(86)(22)【出願日】2016-06-29
(86)【国際出願番号】 EP2016065188
(87)【国際公開番号】W WO2017001509
(87)【国際公開日】2017-01-05
【審査請求日】2019-06-26
(32)【優先日】2015-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】プリンス,アイヴァン
(72)【発明者】
【氏名】マクローリン,ニール
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-528185(JP,A)
【文献】特表2003-522003(JP,A)
【文献】特表平11-514556(JP,A)
【文献】特開2009-045446(JP,A)
【文献】特表2013-501566(JP,A)
【文献】米国特許第5201322(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/08-5/097
A61M 11/00-11/08
A61M 15/00-15/08
A61M 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用エアゾール送達装置を制御するように構成された制御装置であって、
供給ユニットと、
処理ユニットと、
制御ユニットとを有し、
前記供給ユニットは、呼吸ごとの吸入持続時間データを提供するように構成され、
前記処理ユニットは、提供された吸入持続時間データを処理して、呼吸ごとの移動平均値にし、提供された吸入持続時間データを所定吸入持続時間閾値と比較し、さらに、前記所定吸入持続時間閾値未満の提供された吸入持続時間データをフィルタリングするように構成され、
前記フィルタリングは、前記所定吸入持続時間閾値未満の提供された吸入持続時間データの除去、及び、前記所定吸入持続時間閾値未満の提供された吸入持続時間データの、前の呼吸の移動平均値による置換を含み、
前記制御ユニットは、フィルタリングされた吸入持続時間データに基づいて、ユーザのその後の吸入の予測吸入持続時間及び/又はユーザのその後の吸入の目標エアゾール送達期間を計算し、計算された前記予測吸入持続時間及び/又は前記目標エアゾール送達期間に基づき、前記医療用エアゾール送達装置によるエアゾール送達期間を制御するように構成される、
制御装置。
【請求項2】
前記所定吸入持続時間閾値は、50msと1000msとの間である、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記所定吸入持続時間閾値は、100msと400msとの間である、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記所定吸入持続時間閾値は250msである、
請求項1ないし3いずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記供給ユニットはさらに吸入フローデータを提供するように構成され、前記処理ユニットはさらに、提供されたフローデータがゼロであるときをフィルタリングするように構成される、
請求項1ないし4いずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
医療用エアゾール送達装置と、
請求項1ないし5いずれか一項に記載の制御装置とを有し、
前記
医療用エアゾール送達装置は、エアゾールをユーザに送達するように構成される、
医療用エアゾール送達システム。
【請求項7】
前記医療用エアゾール送達装置はメッシュベースの噴霧器である、
請求項6に記載の医療用エアゾール送達システム。
【請求項8】
医療用エアゾール送達装置を制御する方法であって、
呼吸ごとの吸入持続時間データを提供するステップと、
提供された吸入持続時間データを処理して、呼吸ごとの移動平均値にし、提供された吸入持続時間データを所定吸入持続時間閾値と比較するステップと、
前記所定吸入持続時間閾値未満の提供された吸入持続時間データをフィルタリングするステップであって、前記フィルタリングは、前記所定吸入持続時間閾値未満の提供された吸入持続時間データの除去、及び、前記所定吸入持続時間閾値未満の提供された吸入持続時間データの、前の呼吸の移動平均値による置換を含む、ステップと、
フィルタリングされた吸入持続時間データに基づいて、ユーザのその後の吸入の予測吸入持続時間及び/又はユーザのその後の吸入の目標エアゾール送達期間を計算し、計算された前記予測吸入持続時間及び/又は前記目標エアゾール送達期間に基づき、前記医療用エアゾール送達装置によるエアゾール送達期間を制御するステップとを有する方法。
【請求項9】
コンピュータプログラムであって、医療用エアゾール送達装
置を制御するコンピュータにより当該コンピュータプログラムが実行されたときに前記コンピュータに請求項8に記載の方法のステップを実行させるように構成された、コンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のコンピュータプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用エアゾール送達装置の制御装置、医療用エアゾール送達システム、医療用エアゾール送達装置を制御する方法、かかる装置またはシステムを制御するためのコンピュータプログラム要素、およびかかるコンピュータプログラム要素を格納したコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、噴霧器の形態の薬物送達装置を開示している。噴霧器は、吸息中の霧化のパルスの持続時間を決定する手段を含み、かかる手段は、患者の一回換気量を測定する手段、吸息の持続時間を測定するタイミング手段、患者の上気道の容積の推定値を記憶する手段、測定値及び記憶された推定値に基づいてパルスの持続時間を計算する手段とを含む。別の噴霧器は、患者のピーク流量を測定する手段、吸息の持続時間を測定する手段、および測定値に基づいて1回換気量を計算する手段を含む、1回換気量を予測する手段と、医薬を霧化する手段と、患者の呼吸パターンを監視する手段と、呼吸パターンに応じて吸入相の長さおよび比率が変化するパルスを提供するように霧化手段を制御する手段とを含む。
【0003】
かかる従来の噴霧器または医療用エアゾール送達装置は、ユーザまたは患者の呼吸パターンへのエアゾール薬物送達のタイミングを制御する適応型エアゾール送達アルゴリズムを実施する制御ユニットを含む。従来の適応型エアゾール送達アルゴリズムは、次の呼吸の長さを予測する目的で、短時間の吸入フローを呼吸として処理する。しかしながら、吸入フローの短い期間は、例えば、患者が、吸入と呼気との間の移行を意識的に制御しようとすること、または真の吸入の開始前にマウスピース内で舌を動かすことによって引き起こされ得る呼吸パターンの異常であり得る。
【0004】
患者の呼吸パターンがこうした呼吸異常を有するようなものである場合、エアゾールを送達するのに費やされる呼吸ごとの時間の割合が減少し、全体的な治療時間が増加する。しかし、治療時間の増加は、治療レジメンの遵守不良を伴う。
【0005】
特許文献2は、空気フローが通る第1と第2の開口を有する通路を通る空気フローの存在および方向を検出するための装置を開示している。この装置は、流路内に配置された圧電センサを備える。センサは、空気が第1の方向に通路を通って流れるとき、第1の電気信号を発生し、空気が第1の方向と反対の第2の方向に通路を通って流れるとき、第2の電気信号を発生する。
【0006】
特許文献3は、吸入装置の様々な構成要素を作動及び制御する流体センサを開示している。センサは、吸入装置内に配置され、吸入装置内の流体を検出し、流体の周波数、方向および/または振幅を表す信号を出力する音響素子を含む。これらの信号は、静電プレートおよび/または高周波バイブレータを制御および作動させる。
【0007】
特許文献4は、患者の呼吸における臨界点を予測する方法を開示している。本方法は、患者の呼吸努力波形の少なくとも1つの特性を監視して呼吸イベントを検出するステップを含む。呼吸イベントは吸入の始まりであってもよく、監視される呼吸努力波形の特性は勾配および振幅の少なくとも1つである。検出された吸入の始まりに応じて刺激を与えてもよい。
【0008】
特許文献5は、患者の呼吸を監視する装置を開示している。この装置は、患者の呼吸ならびに呼吸アーティファクトを表す振幅変調を有する呼吸信号を生成する生成手段と、生成手段に結合されかつ呼吸信号に応答する処理手段とを含む。
【0009】
特許文献6は、インピーダンスニューモグラフィック呼吸信号および患者の心拍数を監視する無呼吸検出器の方法および装置を開示している。呼吸事象、すなわち呼吸、吸入および呼気を解像するために、呼吸信号のエクスカーションの大きさが監視される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】欧州特許出願公開第EP1525893A2号
【文献】米国特許第5,201,322号公報
【文献】米国特許出願公開第2005/0183725 A1号
【文献】米国特許第5,944,680号
【文献】欧州特許出願公開第EP765631A2号公報
【文献】米国特許第6,537,228B1号
【発明の概要】
【0011】
したがって、特に治療時間を短縮することができる、医療用エアゾール送達装置のための改良された制御装置を提供する必要があり得る。
本発明の問題は、独立請求項の主題により解決され、さらに別の実施形態は従属請求項に記載されている。
【0012】
留意点として、以下に記載される本発明の態様は、医療用エアゾール送達装置の制御装置、医療用エアゾール送達システム、医療用エアゾール送達装置を制御する方法、コンピュータプログラム要素、およびコンピュータ可読媒体にも適用される。
【0013】
本発明によれば、医療用エアゾール送達装置の制御装置が提示される。制御装置は、供給ユニットと、処理ユニットと、制御ユニットとを備える。供給ユニットは、呼吸ごとの吸入長データを提供するように構成される。処理ユニットは、提供された吸入長データを所定の吸入長閾値と比較し、所定の吸入長閾値未満の吸入長データをフィルタリングするように構成される。制御ユニットは、フィルタリングされた吸入長データに基づいて医療用エアゾール送達装置2を制御するように構成される。
【0014】
呼吸ごとに提供される吸入長データは、1つまたは複数の測定された呼吸信号、呼吸値、吸入持続時間、吸入長さまたは吸入時間を含む、またはそれらとして理解することができる。
【0015】
提供される吸入長さデータと所定の吸入長さ閾値との比較は、吸入長データにおけるアーティファクトおよび/またはスパイクの検出として理解され得る。アーティファクトおよび/またはスパイクは、例えば、ユーザが吸入と呼気との間の移行を意識的に制御しようとすることによって、または本当の吸入の開始前にマウスピースを内で舌を動かすことによって生じる、短い呼吸および/または呼吸パターンの異常として理解され得る。
【0016】
所定の吸入長閾値は、50msと1000msの間、または100msと400msの間であってもよく、または約250msであってもよい。
【0017】
フィルタリングされた吸入長データは、提供された吸入長データがフィルタリングされて得られるデータである。
【0018】
本発明による医療用エアゾール送達装置の制御装置により、治療時間を短縮できる。これの達成は、制御装置が、ユーザの呼吸パターンへのエアゾール薬物送達のタイミングを制御するアルゴリズムを実施することによる。これにより、制御装置は、短時間の吸入フローが患者の呼吸に霧化するのに費やす時間を短縮させ、それによって全体の治療時間を増加させることを防止することができる。言い換えれば、本発明は、例えば、吸入と呼息との間の遷移を意識的に制御することにより、または医療用エアゾール送達装置のマウスピースの中で舌を動かすことにより生じる短い吸入期間および/または呼吸パターンの異常の結果として、アルゴリズムがエアゾール送達期間を短縮することを防止する。利点は、全体の治療時間が短く保たれ、良好な治療レジメンのコンプライアンスが促進されることである。
【0019】
これは、吸入長データのアーティファクトおよび/またはスパイクが改善された方法で管理されるので、達成される。つまり、これらのアーティファクトが検出され、フィルタリングされる。このようなアーティファクトは、吸入長データが、例えば、50msないし1000msの範囲であり、好ましくは250msになるときに、検出され得る。フィルタリングは、吸入長データの無視、または吸入長データの以前の移動平均値による置換を含むことができる。換言すれば、本発明は、例えば250ms未満の吸入フローの期間が次の呼吸の長さの予測および次の呼吸へのエアゾール送達期間の設定に含まれることを防止する。
【0020】
フィルタリングは、前記所定吸入長閾値未満の提供された吸入長データを除去または無視することであり得る。また、フィルタリングは、データベース値、平均値、または以前の呼吸の移動平均値によって、所定の吸入長さ閾値より下の提供された吸入長データを置き換えることであってもよい。したがって、処理ユニットは、提供された吸入長データを処理して、呼吸ごとの前回の移動平均値にするように構成されてもよい。所定の吸入長さ閾値よりも低い与えられた吸入長さのデータを前の呼吸の移動平均値で置き換えることにより、閾値未満の連続呼吸があった場合に計算がクラッシュする可能性が排除される。
【0021】
以前の移動平均値は、例えば、3回呼吸移動平均値であり得る。移動平均値は、他の任意の回数の呼吸に基づくこともでき、例えば、5回呼吸移動平均値、またはより古い呼吸の影響を除去するように重み付けされた、例えば指数的加重移動平均とすることができる。例えば、吸入数nが3より大きい場合、3回呼吸移動平均τは、前の3回の呼吸の吸入長を足して3で割ることによって計算され得る。例えば、吸入長が所定の吸入長閾値が250ms未満である場合、この吸入長は前の移動平均値τjに置き換えられる。下記の例では、すべての時間が250msより長く取られる:
【0022】
【0023】
提供または測定された吸入長τが250ms未満、例えばtn-2である場合、3回呼吸移動平均は、
【0024】
【数2】
を用いて計算される。吸入番号n-2における3回呼吸移動平均値τを用いて、250ミリ秒未満の測定吸入長を置き換える。
【0025】
3回呼吸移動平均τを用いて、エアゾールが次の呼吸に送達される時間の長さを計算する。本発明による制御装置は、Philips Inebのようなハイエンド噴霧器の適応エアゾール送達のために使用することができる。医療用エアゾール送達装置は、メッシュベースの噴霧器であってもよい。
【0026】
一例では、前記制御装置は、フィルタリングされた吸入長データに基づいてユーザのその後の吸入の予測吸入時間を計算するように構成される。
【0027】
一例では、前記制御装置は、フィルタリングされた吸入長データに基づいてユーザのその後の吸入の目標エアゾールパルス長を計算するように構成される。
【0028】
一例では、前記供給ユニットはさらに吸入フローデータを提供するように構成され、前記処理ユニットはさらに、提供されたフローデータがほぼゼロであるときをフィルタし、フローデータを平均するように構成される。
【0029】
本発明によれば、医療用エアゾール送達システムが提供される。医療用エアゾール送達システムは、上記の通り、エアゾール送達装置および制御装置を含む。制御装置は、エアゾール送達装置2を制御するように構成される。エアゾール送達装置は、エアゾールをユーザに送達するように構成される。エアゾール送達装置は、Philips Inebのようなハイエンド噴霧器の適応型エアゾール送達装置であってもよい。医療用エアゾール送達装置は、メッシュベースの噴霧器であってもよい。
【0030】
本発明によれば、医療用エアゾール送達装置を制御する方法も提示される。この方法は、必ずしもこの順序ではないが、以下のステップを含む:
- 呼吸ごとの吸入長データを提供するステップと、
- 提供される吸入長データを所定吸入長閾値と比較するステップと、
- 前記所定吸入長閾値より低い提供される吸入長データをフィルタリングするステップと、
- フィルタリングされた吸入長データに基づいて前記医療用エアゾール送達装置を制御するステップ。
【0031】
本発明による医療用エアゾール送達装置の制御方法により、治療時間を短縮でき、よい治療レジメン遵守が可能となる。これは、吸入長データのアーティファクトおよび/またはスパイクが検出及びフィルタリングされるので、達成される。このようなアーティファクトは、吸入長データが、例えば、50msないし1000msの範囲であるときに、検出され得る。フィルタリングは、吸入長データの無視、または吸入長データの以前の移動平均値による置換を含むことができる。これにより、制御装置は、短時間の吸入フローが患者の呼吸に霧化するのに費やす時間を短縮させ、それによって全体の治療時間を増加させることを防止することができる。
【0032】
また、本発明によれば、コンピュータプログラム要素が提示される。前記コンピュータプログラム要素は、コンピュータプログラムが、医療用エアゾール送達装置または医療用エアゾール送達システムの制御装置を制御するコンピュータ上で実行されるときに、独立した装置の請求項に定義された医療用エアゾール送達装置または前記医療用エアゾール送達システムの制御装置に、独立請求項に記載の医療用エアゾール送達装置を制御する方法のステップを実行させるプログラムコード手段を含む。
【0033】
言うまでもなく、独立請求項に記載した、医療用エアゾール送達装置の制御装置、医療用エアゾール送達システム、医療用エアゾール送達装置を制御する方法、そのような装置またはシステムを制御するコンピュータプログラム要素、およびそのようなコンピュータプログラムを格納したコンピュータ可読媒体は、特に、従属請求項に規定されているように、同様のおよび/または同一の好ましい実施形態を有する。言うまでもなく、本発明の好ましい実施形態はさらに、従属項の、各独立項との任意の組合せであり得る。
【0034】
本発明のこれらの態様等は、以下に説明する実施形態から明らかであり、これらの実施形態を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明の例示的な実施形態を、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】医療用エアゾール送達システムの一例を示す概略図である。
【
図2】各呼吸がtx秒の吸入長さを有し、これらの全てが250msよりも長い、4回の呼吸のシーケンスを示す。
【
図3】250ms未満の吸入長を有する1回の呼吸を伴う5回の呼吸のシーケンスを示す。
【
図4】医療用エアゾール送達装置を制御する方法の一例の基本的ステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、医療用エアゾール送達システム1の一実施形態を概略的かつ例示的に示す。医療用エアゾール送達システム1は、エアゾール送達装置2および制御装置10を含む。エアゾール送達装置2は、エアゾールをユーザに送達するように構成される。制御装置10は、エアゾール送達装置2を制御するように構成される。したがって、制御装置10は、供給ユニット11、処理ユニット12、および制御ユニット13を備える。供給ユニット11は、呼吸ごとの吸入長データを提供するように構成される。処理ユニット12は、提供された吸入長データを所定の吸入長閾値と比較し、所定の吸入長閾値未満の吸入長データをフィルタリングするように構成される。制御ユニット13は、フィルタリングされた吸入長データに基づいて医療用エアゾール送達装置2を制御するように構成される。
【0037】
本発明による医療用エアゾール送達システム1および医療用エアゾール送達装置2用の制御装置10は、治療時間を短縮することを可能にする。これの達成は、制御装置10が、ユーザの呼吸パターンへのエアゾール薬物送達のタイミングを制御するアルゴリズムを実施することによる。これにより、制御装置10は、短時間の吸入フローが患者の呼吸に霧化するのに費やす時間を短縮させ、それによって全体の治療時間を増加させることを防止することができる。
【0038】
一例では、所定の吸入長閾値は、50msと1000msとの間である。さらに別の例では、所定の吸入長閾値は、100msないし400msである。別の例では、所定の吸入長閾値は250msである。
【0039】
一例では、フィルタリングは、所定の吸入長閾値よりも低い、与えられた吸入長データを除去することである。
【0040】
別の例では、処理ユニット12は、与えられた吸入長データを処理して、呼吸ごとの3呼吸移動平均値にするようにさらに構成される。フィルタリングは、所定の吸入長閾値未満の、提供吸入長データを前の3呼吸移動平均値による置換である。
【0041】
図2及び
図3において、前の移動平均値は3呼吸移動平均値である。例えば、吸入数nが3より大きい場合、3回呼吸移動平均τは、前の3回の呼吸の吸入長を足して3で割ることによって計算される。この例では、吸入長が所定の吸入長閾値250ms未満である場合、この吸入長は前の移動平均値τ
jに置き換えられる。
図2の例では、すべての時間が250msより長く取られる:
【0042】
【0043】
図3において、提供された吸入長または測定された吸入長t
n-2が250ms未満である場合、3回呼吸移動平均は、
【0044】
【数4】
を用いて計算される。吸入番号n-2における3回呼吸移動平均値τを用いて、250ミリ秒未満の測定吸入長を置き換える。
【0045】
3回呼吸移動平均τを用いて、エアゾールが次の呼吸に送達される時間の長さを計算する。
【0046】
図4は、医療用エアゾール送達装置2を制御する方法のステップの概要を示す図である。この方法は、必ずしもこの順序ではないが、以下のステップを含む:
- 第1のステップS1において、1呼吸ごとの吸入長データを提供する。
- 第2のステップS2において、提供された吸入長データを所定の吸入長閾値と比較する。
- 第3のステップS3において、所定の吸入長閾値未満の吸入長データをフィルタリングする。
- 第4のステップS4において、フィルタリングされた吸入長データに基づいて、医療用エアゾール送達装置2を制御する。
【0047】
一例では、医療用エアゾール送達装置2は、フィルタリングされた吸入長データに基づいて、ユーザのその後の吸入の予測吸入時間を計算する。一例では、医療用エアゾール送達装置2は、フィルタリングされた吸入長データに基づいて、ユーザのその後の吸入の目標エアゾールパルス長を計算する。
【0048】
本発明の他の一実施形態では、適切なシステムにおいて、上記の実施形態の一つによる方法の方法ステップを実行するように較正されたことを特徴とするコンピュータプログラムまたはコンピュータプログラム要素が提供される。
【0049】
コンピュータプログラム要素は、コンピュータユニットに記憶されてもよい。コンピュータユニットも本発明の一実施形態の一部であってもよい。このコンピューティングユニットは、上記の方法のステップを実行するまたは実行を誘起するように構成され得る。さらに、上記の装置のコンポーネントを動作させるように構成されていてもよい。コンピューティングユニットは、自動的に動作し、及び/またはユーザの命令を実行するように構成されている。コンピュータプログラムはデータプロセッサのワーキングメモリにロードされる。データプロセッサは、本発明の方法を実行するように構成されている。
【0050】
本発明のこの実施形態は、初めから本発明を用いるコンピュータプログラムと、アップデートにより本発明を用いるプログラムになる既存のプログラムとの両方をカバーする。
【0051】
さらに、コンピュータプログラム要素は、上記の方法の実施形態の手順を満たす必要なすべてのステップを提供できる。
【0052】
本発明のさらに別の一実施形態によると、CD-ROMなどのコンピュータ読み取り可能媒体が提供され、そのコンピュータ読み取り可能媒体は、前のセクションで説明したコンピュータプログラム要素を記憶したものである。
【0053】
コンピュータプログラムは、光記憶媒体や他のハードウェアとともに、またはその一部として供給される固体媒体などの適切な媒体に記憶及び/または配布することができ、インターネットや有線または無線の電気通信システムなどを介して他の形式で配信することもできる。
【0054】
しかし、コンピュータプログラムは、ワールドワイドウェブ等のネットワーク上で提供されてもよく、そのようなネットワークからデータプロセッサのワーキングメモリにダウンロードされてもよい。本発明のさらにべつの実施形態では、コンピュータプログラム要素をダウンロードできるようにする媒体が提供され、そのコンピュータプログラム要素は本発明の上記の実施形態の一つによる方法を実行するように構成されている。
【0055】
留意すべき点として、本発明の実施形態を、異なる主題を参照して説明する。具体的に、一部の実施形態を方法の請求項を参照して説明し、他の一部の実施形態を装置の請求項を参照して説明する。しかし、本技術分野の当業者は、上記の説明と以下の説明から、特に断らないかぎり、一種類の主題に属する特徴の任意の組み合わせに加えて、異なる複数の主題に関係する特徴の間の任意の組み合わせも本出願で開示されていると考えられることが分かるであろう。しかし、すべての特徴は組み合わせて、特徴の単なる和以上のシナジー効果を提供することができる。
【0056】
図面と上記の説明に詳しく示し本発明を説明したが、かかる例示と説明は例であり限定ではない。本発明は開示した実施形態には限定されない。請求項に記載した発明を実施する際、図面、本開示、及び従属項を研究して、開示した実施形態のその他のバリエーションを、当業者は理解して実施することができるであろう。
【0057】
請求項において、「有する(comprising)」という用語は他の要素やステップを排除するものではなく、「1つの(“a” or “an”)」という表現は複数ある場合を排除するものではない。単一のプロセッサまたはその他のアイテムが請求項に記載した複数のユニットの機能を満たすこともできる。相異なる従属クレームに手段が記載されているからといって、その手段を組み合わせて有利に使用することができないということではない。請求項に含まれる参照符号は、その請求項の範囲を限定するものと解してはならない。