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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20220525BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20220525BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C5/00 H
B60C11/03 100B
B60C11/03 B
B60C11/12 D
B60C11/12 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018108548
(22)【出願日】2018-06-06
(65)【公開番号】P2019209876
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 直也
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/159712(WO,A1)
【文献】特開2017-024454(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125814(WO,A1)
【文献】特開2017-124712(JP,A)
【文献】国際公開第2016/128085(WO,A1)
【文献】特開2015-140047(JP,A)
【文献】特開2013-043580(JP,A)
【文献】特開2015-047977(JP,A)
【文献】特開2017-074842(JP,A)
【文献】中国実用新案第205553805(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/00
B60C 11/00-11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に沿って凹状に延びる複数の周凹部と、
タイヤ周方向に対して交差するように延びる複数の幅サイプと、を備え、
前記複数の周凹部は、第1周凹部を含み、
前記第1周凹部を挟む一対の前記幅サイプは、一部がタイヤ幅方向視において互いに重なるように、配置され、
前記一対の幅サイプのそれぞれは、幅が一定であるサイプ部と、タイヤ径方向外側に向けて幅を広くする切欠部と、を備え、
前記一対の幅サイプのそれぞれの前記サイプ部は、前記第1周凹部に対して傾斜するように、一方の端部が前記第1周凹部に連接され、
前記一対の幅サイプのそれぞれの前記切欠部は、前記サイプ部が前記第1周凹部と交差する角部のうち、鋭角で交差する角部のみに、配置され、
前記一対の幅サイプのそれぞれの前記切欠部は、タイヤ幅方向視において、タイヤ周方向で離れるように配置される、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記一対の幅サイプのそれぞれの前記サイプ部は、他方の端部が前記複数の周凹部から離れる、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記複数の周凹部は、タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝と、タイヤ周方向に沿って延び、前記主溝よりも幅が狭い少なくとも一つの周サイプと、を含、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、空気入りタイヤは、タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝と、主溝をタイヤ幅方向で挟み、一部がタイヤ幅方向視において互いに重なる一対の幅サイプとを備えている(例えば、特許文献1)。これにより、一対の幅サイプが、タイヤ周方向で繋がるように配置されているため、幅サイプのエッジによるトラクションが連続して発揮される。
【0003】
ところで、幅サイプが主溝に連接されているため、幅サイプを境にしてタイヤ周方向で偏摩耗が発生し易い。特に、サイプ部が主溝と鋭角で交差する角部で、接地時に滑り等が発生し易いため、当該角部は、摩耗し易い。これにより、幅サイプを境にして、タイヤ周方向で偏摩耗(ヒールアンドトウ摩耗)が、発生し易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2016/128085号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、課題は、幅サイプを境にしてタイヤ周方向で偏摩耗が発生することを抑制することができる空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
空気入りタイヤは、タイヤ周方向に沿って凹状に延びる複数の周凹部と、タイヤ周方向に対して交差するように延びる複数の幅サイプと、を備え、前記周凹部を挟む一対の前記幅サイプは、一部がタイヤ幅方向視において互いに重なるように、配置され、前記一対の幅サイプのそれぞれは、幅が一定であるサイプ部と、タイヤ径方向外側に向けて幅を広くする切欠部と、を備え、前記サイプ部は、前記周凹部に対して傾斜するように、少なくとも一方の端部が前記周凹部に連接され、前記切欠部は、前記サイプ部が前記周凹部と鋭角で交差する角部に、配置される。
【0007】
また、空気入りタイヤにおいては、前記一対の幅サイプのそれぞれの前記切欠部は、タイヤ幅方向視において、一部が重なるように配置される、という構成でもよい。
【0008】
また、空気入りタイヤにおいては、前記複数の周凹部は、タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝と、タイヤ周方向に沿って延び、前記主溝よりも幅が狭い少なくとも一つの周サイプと、を含み、前記一対の幅サイプは、前記周サイプを挟んで配置される、という構成でもよい。
【0009】
また、空気入りタイヤにおいては、前記一対の幅サイプのそれぞれの前記切欠部は、タイヤ幅方向視において、タイヤ周方向で離れるように配置される、という構成でもよい。
【0010】
また、空気入りタイヤにおいては、前記複数の周凹部は、タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝を含み、前記幅サイプのタイヤ幅方向の内側端は、前記主溝に連接され、前記切欠部は、前記サイプ部のタイヤ幅方向の内側端が前記主溝と鋭角で交差する角部に、配置される、という構成でもよい。
【0011】
また、空気入りタイヤにおいては、前記複数の周凹部は、タイヤ周方向に沿って延びる複数の主溝を含み、前記幅サイプのタイヤ幅方向の外側端は、前記主溝から離れる、という構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午面における要部断面図である。
図2図2は、同実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面の要部展開図である。
図3図3は、同実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面の要部拡大展開図である。
図4図4は、図3のIV-IV線拡大断面図である。
図5図5は、同実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面の要部拡大展開図である。
図6図6は、同実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面の要部拡大展開図である。
図7図7は、他の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面の要部拡大展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、空気入りタイヤにおける一実施形態について、図1図6を参照しながら説明する。なお、各図(図7も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0014】
各図において、第1の方向D1は、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)1の回転中心であるタイヤ回転軸と平行であるタイヤ幅方向D1であり、第2の方向D2は、タイヤ1の直径方向であるタイヤ径方向D2であり、第3の方向D3は、タイヤ回転軸周りのタイヤ周方向D3である。
【0015】
なお、タイヤ幅方向D1のうち、第1側D11は、第1幅方向側D11ともいい、第2側D12は、第2幅方向側D12ともいう。また、タイヤ周方向D3のうち、第1側D31は、第1周方向側D31ともいい、第2側D32は、第2周方向側D32ともいう。
【0016】
タイヤ赤道面S1とは、タイヤ回転軸に直交する面で且つタイヤ1のタイヤ幅方向D1の中心に位置する面のことであり、タイヤ子午面とは、タイヤ回転軸を含む面で且つタイヤ赤道面S1と直交する面のことである。また、タイヤ赤道線とは、タイヤ1のタイヤ径方向D2の外表面(後述する、トレッド面2a)とタイヤ赤道面S1とが交差する線のことである。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ1は、ビードを有する一対のビード部1aと、各ビード部1aからタイヤ径方向D2の外側に延びるサイドウォール部1bと、一対のサイドウォール部1bのタイヤ径方向D2の外端部に連接され、タイヤ径方向D2の外表面が路面に接地するトレッド部2とを備えている。本実施形態においては、タイヤ1は、内部に空気が入れられる空気入りタイヤ1であって、リム20に装着される。
【0018】
また、タイヤ1は、一対のビードの間に架け渡されるカーカス層1cと、カーカス層1cの内側に配置され、空気圧を保持するために、気体の透過を阻止する機能に優れるインナーライナ層1dとを備えている。カーカス層1c及びインナーライナ層1dは、ビード部1a、サイドウォール部1b、及びトレッド部2に亘って、タイヤ内周に沿って配置されている。
【0019】
タイヤ1は、タイヤ赤道面S1に対して非対称となる構造である。本実施形態においては、タイヤ1は、車両への装着向きを指定されたタイヤであり、リム20に装着する際に、タイヤ1の左右何れを車両に対面するかを指定されたタイヤである。なお、トレッド部2のトレッド面2aに形成されるトレッドパターンは、タイヤ赤道面S1に対して非対称となる形状としている。
【0020】
車両への装着の向きは、サイドウォール部1bに表示されている。具体的には、サイドウォール部1bは、タイヤ外表面を構成すべく、カーカス層1cのタイヤ幅方向D1の外側に配置されるサイドウォールゴム1eを備え、該サイドウォールゴム1eは、表面に、車両への装着の向きを表示する表示部を有している。
【0021】
例えば、車両装着時に内側(以下「車両内側」ともいう)に配置される一方のサイドウォール部1bは、車両内側となる旨の表示(例えば、「INSIDE」等)を付されている。また、例えば、車両装着時に外側(以下「車両外側」ともいう)に配置される他方のサイドウォール部1bは、車両外側となる旨の表示(例えば、「OUTSIDE」等)を付されている。本実施形態においては、第1幅方向側D11は、車両内側であり、第2幅方向側D12は、車両外側である。
【0022】
トレッド部2は、路面に接地するトレッド面2aを有するトレッドゴム2bと、トレッドゴム2bとカーカス層1cとの間に配置されるベルト層2cとを備えている。そして、トレッド面2aは、実際に路面に接地する接地面を有しており、当該接地面のうち、タイヤ幅方向D1の外側端は、接地端2d,2eという。なお、該接地面は、タイヤ1を正規リム20にリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤ1を平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えたときの路面に接地するトレッド面2aを指す。
【0023】
正規リム20は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ1ごとに定めるリム20であり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば「Design Rim」、ETRTOであれば「Measuring Rim」となる。
【0024】
正規内圧は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ1ごとに定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATIONPRESSURE」であるが、タイヤ1が乗用車用である場合には180kPaとする。
【0025】
正規荷重は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ1ごとに定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」であるが、タイヤ1が乗用車用である場合には内圧180kPaの対応荷重の85%とする。
【0026】
図1及び図2に示すように、トレッドゴム2bは、タイヤ周方向D3に延びる複数の主溝3a~3dを備えている。主溝3a~3dは、タイヤ周方向D3に連続して延びている。本実施形態においては、主溝3a~3dは、タイヤ周方向D3に沿ってストレート状に延びている、という構成であるが、斯かる構成に限られず、例えば、屈折を繰り返してジグザグ状に延びている、という構成でもよく、また、例えば、湾曲を繰り返して波状に延びている、という構成でもよい。
【0027】
主溝3a~3dは、例えば、摩耗するにしたがって露出することで摩耗度合が分かるように、溝を浅くしてある部分、所謂、トレッドウエアインジケータ(図示していない)を備えている。また、例えば、主溝3a~3dは、接地端2d,2e間の距離(タイヤ幅方向D1の寸法)の3%以上の溝幅を有している。また、例えば、主溝3a~3dは、5mm以上の溝幅を有している。
【0028】
タイヤ幅方向D1の最も外側に配置される一対の主溝3a,3bは、ショルダー主溝3a,3bといい、また、一対のショルダー主溝3a,3b間に配置される主溝3c,3dは、センター主溝3c,3dという。なお、主溝3a~3dの数は、特に限定されないが、本実施形態においては、四つとしている。
【0029】
トレッドゴム2bは、複数の主溝3a~3d及び一対の接地端2d,2eによって区画される複数の陸部4a~4eを備えている。なお、陸部4a~4eの数は、特に限定されないが、本実施形態においては、五つとしている。
【0030】
ショルダー主溝3a,3bと接地端2d,2eによって区画される陸部4a,4bは、ショルダー陸部4a,4bといい、隣接される一対の主溝3a~3dによって区画される陸部4c~4eは、ミドル陸部4c~4eという。なお、ショルダー主溝3a,3bとセンター主溝3c,3dとによって区画される陸部4c,4dは、クオーター陸部(「メディエイト陸部」ともいう)4c,4dともいい、一対のセンター主溝3c,3dによって区画される陸部4eは、センター陸部4eともいう。
【0031】
センター陸部4eは、タイヤ赤道面S1を含むように配置されている。そして、車両内側D11のショルダー陸部4a及びクオーター陸部4cの全体は、タイヤ赤道面S1よりも車両内側D11に配置され、車両外側D12のショルダー陸部4b及びクオーター陸部4dの全体は、タイヤ赤道面S1よりも車両外側D12に配置されている。
【0032】
陸部4a~4eは、幅が2.0mmよりも広い陸溝5と、幅(後述する「サイプ部6a~10a」の幅)が2.0mm以下であるサイプ6~11とを備えている。サイプ6~11は、タイヤ周方向D3に沿って延びる周サイプ6と、タイヤ周方向D3に対して交差するように延びる幅サイプ7~11とを備えている。
【0033】
本実施形態においては、陸溝5は、車両内側D11のショルダー陸部4aに設けられ、周サイプ6は、車両外側D12のショルダー陸部4b及びクオーター陸部4dに設けられ、幅サイプ7~11は、全ての陸部4a~4eに設けられている。なお、陸溝5及びサイプ6~11が設けられる陸部4a~4eは、斯かる構成に限定されない。また、周凹部3a~3d,6とは、タイヤ周方向D3に沿って凹状に延びる凹部のことであり、主溝3a~3d及び周サイプ6のことである。
【0034】
ところで、第1~第4幅サイプ7~10は、タイヤ幅方向D1及びタイヤ周方向D3で連なるように、幅サイプ群12を構成している。第1幅サイプ7は、センター陸部4eに配置され、第2幅サイプ8は、車両外側D12のクオーター陸部4dの、周サイプ6よりも車両内側D11に配置され、第3幅サイプ9は、車両外側D12のクオーター陸部4dの、周サイプ6よりも車両外側D12に配置され、第4幅サイプ10は、車両外側D12のショルダー陸部4bに配置されている。
【0035】
ここで、まず、第2及び第3幅サイプ8,9の構成について、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0036】
図3及び図4に示すように、第2及び第3幅サイプ8,9のそれぞれは、幅が一定であるサイプ部8a,9aと、タイヤ径方向D2の外側に向けて幅を広くする切欠部8b,9bとを備えている。そして、それぞれの切欠部8b,9b(図4においては、第2幅サイプ8の切欠部8bのみ図示している)は、トレッド面2aに対して傾斜する傾斜面8cを備えている。
【0037】
なお、車両外側D12のクオーター陸部4dに設けられる周サイプ6も、幅が一定であるサイプ部6aと、タイヤ径方向D2の外側に向けて幅を広くする切欠部6bとを備えている。また、車両外側D12のセンター主溝3dも、タイヤ径方向D2の外側に向けて幅を広くする切欠部3eを備えている。
【0038】
幅サイプ8,9のサイプ部8a,9aは、周凹部3d,6に対して傾斜している。具体的には、幅サイプ8,9のサイプ部8a,9aは、車両外側D12にいくにつれて第1周方向側D31に向かうように(図3において、右上がりの向きに)、傾斜している。
【0039】
したがって、幅サイプ8,9のサイプ部8a,9aは、タイヤ周方向D3に対して同じ向き(図3において、右上がりの向き)に傾斜している。なお、「タイヤ周方向D3に対して同じ向きに傾斜する」とは、タイヤ周方向D3に対する傾斜角度が異なっていても、傾斜する向き(図3において、右上がり又は左上がりの向き)が同じであれば、含まれる。
【0040】
そして、幅サイプ8,9のサイプ部8a,9aのそれぞれは、車両内側D11の端部で周凹部3d,6に連接されている。これにより、クオーター陸部4dは、幅サイプ8,9のサイプ部8a,9aが周凹部3d,6と鋭角θ1,θ2で交差する角部4f,4gを備えている。
【0041】
ところで、鋭角である角部4f,4gの剛性は、低くなる。これにより、接地時に、角部4f,4gで滑り等が発生し易いため、角部4f,4gは、摩耗し易い。そこで、第2及び第3幅サイプ8,9の切欠部8b,9bは、角部4f,4gに配置されている。
【0042】
これにより、接地時に、角部4f,4gで滑り等が発生することを抑制することができるため、角部4f,4gが摩耗し過ぎることを抑制することができる。したがって、角部4f,4gの位置において、幅サイプ8,9を境にしてタイヤ周方向D3で偏摩耗(所謂、ヒールアンドトウ摩耗)が発生することを抑制することができる。
【0043】
また、第2及び第3幅サイプ8,9の一部は、タイヤ幅方向D1視において、互いに重なっている。これにより、幅サイプ8,9が、タイヤ周方向D3で繋がるように配置されているため、幅サイプ8,9のエッジによるトラクションが連続して発揮される。
【0044】
しかも、第2及び第3幅サイプ8,9の切欠部8b,9bの一部は、タイヤ幅方向D1視において、重なっている。具体的には、第2幅サイプ8の切欠部8bの第1周方向側D31の端点P1は、第3幅サイプ9の切欠部9bの第2周方向側D32の端点P2よりも、第1周方向側D31に位置している。これにより、それぞれの切欠部8b,9bが、タイヤ周方向D3で繋がるように配置されているため、切欠部8b,9bのエッジによるトラクションが連続して発揮される。
【0045】
さらに、第2及び第3幅サイプ8,9は、周サイプ6をタイヤ幅方向D1で挟んで隣接されている。これにより、第2及び第3幅サイプ8,9がタイヤ幅方向D1で離れることを抑制することができるため、幅サイプ8,9のエッジによるトラクションが連続して発揮される。このように、さまざまな構成によって、幅サイプ8,9(サイプ部8a,9a、切欠部8b,9b)のエッジによるトラクションが連続して発揮されることによって、ドライ路面やウエット路面に対する操縦安定性能を向上させることができる。
【0046】
ところで、旋回時に、タイヤ幅方向D1の外側の接地長が大きくなるため、クオーター陸部4dのタイヤ幅方向D1の外側と内側とにおいて、接地長の差が大きくなり易い。そこで、第2幅サイプ8の切欠部8bは、車両外側D12のセンター主溝3dに連接されている。これにより、クオーター陸部4dの剛性が、タイヤ幅方向D1の内側で低くなるため、タイヤ幅方向D1の内側の接地長が長くなる。
【0047】
しかも、第3幅サイプ9のタイヤ幅方向D1の外側端は、車両外側D12のショルダー主溝3bから離れている。これにより、クオーター陸部4dの剛性が、タイヤ幅方向D1の外側で高くなるため、タイヤ幅方向D1の外側の接地長が短くなる。したがって、旋回時に、クオーター陸部4dのタイヤ幅方向D1の外側と内側とにおいて、接地長の差が大きくなることを抑制することができるため、旋回時の操縦安定性能を向上させることができる。
【0048】
次に、第1及び第2幅サイプ7,8の構成について、図5を参照しながら説明する。
【0049】
図5に示すように、第1幅サイプ7は、幅が一定であるサイプ部7aと、タイヤ径方向D2の外側に向けて幅を広くする切欠部7bとを備えている。第1幅サイプ7のサイプ部7aは、周凹部3dに対して傾斜している。具体的には、第1及び第2幅サイプ7,8のサイプ部7a,8aは、タイヤ周方向D3に対して同じ向き(図5において、右上がりの向き)に傾斜している。
【0050】
そして、第1幅サイプ7のサイプ部7aは、車両外側D12の端部で周凹部3dに連接されている。これにより、センター陸部4eは、第1幅サイプ7のサイプ部7aが周凹部3dと鋭角θ3で交差する角部4hを備えている。
【0051】
そこで、第1幅サイプ7の切欠部7bは、角部4hに配置されている。なお、上述したように、第2幅サイプ8の切欠部8bも、角部4fに配置されている。これにより、接地時に、角部4f,4hで滑り等が発生することを抑制することができるため、角部4f,4hが摩耗し過ぎることを抑制することができる。
【0052】
また、第1及び第2幅サイプ7,8の一部は、タイヤ幅方向D1視において、互いに重なっている。これにより、幅サイプ7,8が、タイヤ周方向D3で繋がるように配置されているため、幅サイプ7,8のエッジによるトラクションが連続して発揮される。
【0053】
そして、第1及び第2幅サイプ7,8の切欠部7b,8bは、タイヤ幅方向D1視において、タイヤ周方向D3で離れている。具体的には、第1幅サイプ7の切欠部7bの第1周方向側D31の端点P3は、第2幅サイプ8の切欠部8bの第2周方向側D32の端点P2よりも、第2周方向側D32に位置している。これにより、切欠部7b,8bで発生する騒音が大きいものの、切欠部7b,8bにより発生する騒音が断続的になるため、走行時に発生する騒音が大きくなることを抑制することができる。
【0054】
次に、第3及び第4幅サイプ9,10の構成について、図6を参照しながら説明する。
【0055】
図6に示すように、第4幅サイプ10は、幅が一定であるサイプ部10aと、タイヤ径方向D2の外側に向けて幅を広くする切欠部10bとを備えている。なお、車両外側D12のショルダー陸部4bに設けられる周サイプ6も、幅が一定であるサイプ部6aと、タイヤ径方向D2の外側に向けて幅を広くする切欠部6bとを備えている。また、車両外側D12のショルダー主溝3bも、タイヤ径方向D2の外側に向けて幅を広くする切欠部3fを備えている。
【0056】
第4幅サイプ10のサイプ部10aは、周凹部3bに対して傾斜している。具体的には、第3及び第4幅サイプ9,10のサイプ部9a,10aは、タイヤ周方向D3に対して同じ向き(図6において、右上がりの向き)に傾斜している。
【0057】
そして、第4幅サイプ10のサイプ部10aは、車両内側D11の端部で周凹部3bに連接されている。これにより、ショルダー陸部4bは、第4幅サイプ10のサイプ部10aが周凹部3bと鋭角θ4で交差する角部4iを備えている。
【0058】
そこで、第4幅サイプ10の切欠部10bは、角部4iに配置されている。なお、上述したように、第3幅サイプ9の切欠部9bも、角部4gに配置されている。これにより、接地時に、角部4g,4iで滑り等が発生することを抑制することができるため、角部4g,4iが摩耗し過ぎることを抑制することができる。
【0059】
また、第3及び第4幅サイプ9,10の一部は、タイヤ幅方向D1視において、互いに重なっている。これにより、幅サイプ9,10が、タイヤ周方向D3で繋がるように配置されているため、幅サイプ9,10のエッジによるトラクションが連続して発揮される。
【0060】
そして、第3及び第4幅サイプ9,10の切欠部9b,10bは、タイヤ幅方向D1視において、タイヤ周方向D3で離れている。具体的には、第3幅サイプ9の切欠部9bの第1周方向側D31の端点P5は、第4幅サイプ10の切欠部10bの第2周方向側D32の端点P6よりも、第2周方向側D32に位置している。これにより、切欠部9b,10bにより発生する騒音が断続的になる。
【0061】
このように、幅サイプ群12においては、第1及び第2幅サイプ7,8が、タイヤ幅方向D1視において重なり、第2及び第3幅サイプ8,9が、タイヤ幅方向D1視において重なり、第3及び第4幅サイプ9,10が、タイヤ幅方向D1視において重なっている。これにより、第1~第4幅サイプ7~10が、タイヤ周方向D3で繋がるように配置されているため、幅サイプ7~10のエッジによるトラクションが連続して発揮される。
【0062】
以上より、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ周方向D3に沿って凹状に延びる複数の周凹部3a~3d,6と、タイヤ周方向D3に対して交差するように延びる複数の幅サイプ7~11と、を備え、前記周凹部3d(6;3b)を挟む一対の前記幅サイプ7,8(8,9;9,10)は、一部がタイヤ幅方向D1視において互いに重なるように、配置され、前記一対の幅サイプ7,8(8,9;9,10)のそれぞれは、幅が一定であるサイプ部7a,8a(8a,9a;9a,10a)と、タイヤ径方向D2外側に向けて幅を広くする切欠部7b,8b(8b,9b;9b,10b)と、を備え、前記サイプ部7a,8a(8a,9a;9a,10a)は、前記周凹部3d(6;3b)に対して傾斜するように、少なくとも一方の端部が前記周凹部3d(3d,6;6,3b)に連接され、前記切欠部7b,8b(8b,9b;9b,10b)は、前記サイプ部7a,8a(8a,9a;9a,10a)が前記周凹部3d(3d,6;6,3b)と鋭角θ3,θ1(θ1,θ2;θ2,θ4)で交差する角部4h,4f(4f,4g;4g,4i)に、配置される。
【0063】
斯かる構成によれば、一対の幅サイプ7,8(8,9;9,10)の一部が、タイヤ幅方向D1視において、互いに重なっているため、一対の幅サイプ7,8(8,9;9,10)が、タイヤ周方向D3で繋がるように配置されている。これにより、幅サイプ7~10のエッジによるトラクションが連続して発揮される。
【0064】
また、接地時に、角部4f~4iが滑ることによって摩耗し易いことに対して、切欠部7b~10bは、角部4f~4iに配置されている。これにより、角部4f~4iが摩耗し過ぎることを抑制することができるため、角部4f~4iの位置において、幅サイプ7~10を境にしてタイヤ周方向D3で偏摩耗(所謂、ヒールアンドトウ摩耗)が発生することを抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記一対の幅サイプ8,9のそれぞれの前記切欠部8b,9bは、タイヤ幅方向D1視において、一部が重なるように配置される、という構成である。
【0066】
斯かる構成によれば、一対の幅サイプ8,9の切欠部8b,9bの一部が、タイヤ幅方向D1視において、重なっているため、切欠部8b,9bが、タイヤ周方向D3で繋がるように配置されている。これにより、切欠部8b,9bのエッジによるトラクションが連続して発揮される。
【0067】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記複数の周凹部3a~3d,6は、タイヤ周方向D3に沿って延びる複数の主溝3a~3dと、タイヤ周方向D3に沿って延び、前記主溝3a~3dよりも幅が狭い少なくとも一つの周サイプ6と、を含み、前記一対の幅サイプ8,9は、前記周サイプ6を挟んで配置される、という構成である。
【0068】
斯かる構成によれば、一対の幅サイプ8,9が、周サイプ6を挟んで配置されているため、一対の幅サイプ8,9がタイヤ幅方向D1で離れることを抑制することができる。これにより、一対の幅サイプ8,9のエッジによるトラクションが連続して発揮される。
【0069】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記一対の幅サイプ7,8(9,10)のそれぞれの前記切欠部7b,8b(9b,10b)は、タイヤ幅方向D1視において、タイヤ周方向D3で離れるように配置される、という構成である。
【0070】
斯かる構成によれば、切欠部7b~10bが接地する際に、騒音が大きくなり易いことに対して、一対の切欠部7b,8b(9b,10b)は、タイヤ幅方向D1視において、タイヤ周方向D3で離れている。これにより、切欠部7b~10bにより発生する騒音が断続的になる。
【0071】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記複数の周凹部3a~3d,6は、タイヤ周方向D3に沿って延びる複数の主溝3a~3dを含み、前記幅サイプ8のタイヤ幅方向D1の内側端は、前記主溝3dに連接され、前記切欠部8bは、前記サイプ部8aのタイヤ幅方向D1の内側端が前記主溝3dと鋭角θ1で交差する角部4fに、配置される、という構成である。
【0072】
斯かる構成によれば、切欠部8bが、陸部4dのタイヤ幅方向D1の内側端に配置されることになるため、当該陸部4dの剛性は、タイヤ幅方向D1の内側で低くなる。これにより、当該陸部4dのタイヤ幅方向D1の内側における、接地長が長くなる。したがって、旋回時に、陸部4dのタイヤ幅方向D1の外側の接地長が大きくなり易いことに対して、タイヤ幅方向D1の外側と内側との接地長の差が大きくなることを抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、前記複数の周凹部3a~3d,6は、タイヤ周方向D3に沿って延びる複数の主溝3a~3dを含み、前記幅サイプ9のタイヤ幅方向D1の外側端は、前記主溝3bから離れる、という構成である。
【0074】
斯かる構成によれば、幅サイプ9のタイヤ幅方向D1の外側端が、主溝3bから離れているため、陸部4dの剛性は、タイヤ幅方向D1の外側で高くなる。これにより、当該陸部4dのタイヤ幅方向D1の外側における、接地長が短くなる。したがって、旋回時に、陸部4dのタイヤ幅方向D1の外側の接地長が大きくなり易いことに対して、タイヤ幅方向D1の外側と内側との接地長の差が大きくなることを抑制することができる。
【0075】
なお、空気入りタイヤ1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、空気入りタイヤ1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0076】
(1)上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、幅サイプ7~10のサイプ部7a~10aは、一方の端部のみで、周凹部3b,3d,6に連接されている、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、図7に示すように、幅サイプ8,9のサイプ部8a,9aは、両方の端部で、周凹部3b,3d,6に連接されている、という構成でもよい。
【0077】
斯かる構成においては、図7の第2幅サイプ8のように、切欠部8bは、サイプ部8aが周凹部3d,6と鋭角θ1,θ5で交差する二つの角部4f,4jの両方に、配置されている、という構成でもよい。また、図7の第3幅サイプ9のように、切欠部9bは、サイプ部9aが周凹部6,3bと鋭角θ2,θ6で交差する二つの角部4g,4kのうち一方4gのみに、配置されている、という構成でもよい。要するに、切欠部7b~10bは、サイプ部7a~10aが周凹部3a~3d,6と鋭角θ1~θ6で交差する少なくとも一つの角部4f~4kに配置されている、という構成であればよい。
【0078】
(2)また、上記実施形態に係る空気入りタイヤ1は、車両への装着向きを指定されたタイヤである、という構成である。しかしながら、空気入りタイヤ1は、斯かる構成に限られない。例えば、空気入りタイヤ1は、車両への装着向きを指定されていないタイヤである、という構成でもよい。具体的には、トレッドパターンは、タイヤ赤道線上の任意点に対して点対称となるトレッドパターンでもよく、また、タイヤ赤道線に対して線対称となるトレッドパターンでもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…空気入りタイヤ、1a…ビード部、1b…サイドウォール部、1c…カーカス層、1d…インナーライナ層、1e…サイドウォールゴム、2…トレッド部、2a…トレッド面、2b…トレッドゴム、2c…ベルト層、2d…接地端、2e…接地端、3a…ショルダー主溝(周凹部)、3b…ショルダー主溝(周凹部)、3c…センター主溝(周凹部)、3d…センター主溝(周凹部)、3e…切欠部、3f…切欠部、4a…ショルダー陸部、4b…ショルダー陸部、4c…クオーター陸部(ミドル陸部)、4d…クオーター陸部(ミドル陸部)、4e…センター陸部(ミドル陸部)、4f…角部、4g…角部、4h…角部、4i…角部、4j…角部、4k…角部、5…陸溝、6…周サイプ(周凹部)、6a…サイプ部、6b…切欠部、7…第1幅サイプ、7a…サイプ部、7b…切欠部、8…第2幅サイプ、8a…サイプ部、8b…切欠部、8c…傾斜面、9…第3幅サイプ、9a…サイプ部、9b…切欠部、10…第4幅サイプ、10a…サイプ部、10b…切欠部、11…幅サイプ、12…幅サイプ群、20…リム、D1…タイヤ幅方向、D2…タイヤ径方向、D3…タイヤ周方向、D11…第1幅方向側(車両内側)、D12…第2幅方向側(車両外側)、D31…第1周方向側、D32…第2周方向側、S1…タイヤ赤道面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7